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1949-04-19 第5回国会 衆議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年四月十九日(火曜日)  議事日程 第十七号     午後一時開議  第一 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 日本國憲法八條規定による議決案内閣提出)  第三 貿易特別会計法案内閣提出)  第四 米國対日援助見返資金特別会計法案内閣提出)  第五 米國対日援助見返資金運営に関する決議案川野芳滿君外二十二名提出)(委員会審査省略要求事件)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  議員林百郎君を懲罰委員会に付するの動議椎熊三郎提出)  議員椎熊三郎君を懲罰委員会に付するの動議梨木作次郎提出)  日程第一 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 日本國憲法八條規定による議決案内閣提出)  日程第三 貿易特別会計法案内閣提出)  日程第四 米國対日援助見返資金特別会計法案内閣提出)  日程第五 米國対日援助見返資金運営に関する決議案川野芳滿君外二十二名提出)  國会会期延長の件(議長発議)     午後一時十五分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員林百郎君を懲罰委員会に付するの動議椎熊三郎提出
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 椎熊三郎君より、成規賛成を得て、議員林百郎君を懲罰委員会に付するの動議提出せられました。右動議議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。提出者椎熊三郎君。    [椎熊三郎登壇
  4. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 去る十六日の本会議におきまして、本年度予算案審議する重大なる会 議進行途上共産党に属する林百郎君は、委員長報告に対する質疑行つたのでございます。その際、林君の質疑内容に驚くべき虚僞の事実を発言しておるのであります。これはその当時も私は申し上げて置きましたが、國会権威を傷つけ、議員品位をそこない、ことに國会運営の基礎となるべき運営委員会における権威ある事務当局参考資料などに重大な虚の発言をなしておるので、國会といたしましては断じて默過することができない。(拍手)この事実によつて、当時私は成規賛成を得て、手続きをもつて懲罰委員会に付すべしとの動議提出しております。懲罰動議が出ましたとき、当然これはすべての議論に先んじて即刻論議せられるのが当然でございましようけれども、当日の議題予算案審議という重大な問題でございましたので、交渉委員との院内交渉の結果、これは予算審議終了後に讓ることに私も納得いたしまして、その日はそのままに済んだのでございます。そして、昨日の議院運営委員会でこの取り扱いが正式に取上げられまして、本日ただいま上程せられて議題となつておるのであります。そこで私は、いかなる点が懲罰問題の対象になるか、このことを申し上げまして、諸君のご批判に訴えたい。  林百郎君は——ここに林君の当日の演説速記録の全部もございます。根本において当予算案憲法違反予算だということを言つておる。林百郎くんの演説の冒頭に、「國会権威のために、本年度審議憲法法律に違反しておる、從つて予算國会審議すること自体が憲法に違反し、さらにかりにこれが多数決をもつて國会通過しても本予算は無効であると信ずる」という重大なる発言をしている。しかもその次には、「從つて、この責任——無効なる予算審議責任は明らかに政府が負うべきものであつて」ということを言つておる。  そこで、これは林君の意見であるならば当然それでよろしいのです。林君の意見であるならば当然それでよろしい。しかるに林君は、自分意見の裏づけとして、運営委員会において國会法制局長かくのごときを言つておるという言明をしておるのです。これが私は許すべからざる点です。  もともと憲法違反だとする彼の思想は、それだけで彼の責任において言うならよろしい。彼はこれを裏づけするために虚の事実を報告しておる。議院運営委員会におきましては、この重大問題を解決するために、入江法制局長のこの問題に対する解釈を質問したのであります。その際、議院運営委員会の一員である共産党の神山君は、特に注意せられて、良心的なる答弁をなせよと、まことに失礼な発言をしておる。入江君は非常に憤慨せられたような樣子で、私は良心的なる答弁をすると冒頭してこの答えをなしておるのであります。  そこで、入江君の答弁内容をご参考までに申し上げますると、第一回はこう言つておる。「私は純粹の立場から意見を申し述べたいと思います。私の考えるところによりますと、予算はとにかく歳入歳出とも一つ財政計画見積もりである。しかして歳入予算がありましても、その通り実行するというような計画でありまして、その実体法規法律その他のものできまつて来ると考えております。それから歳出につきましては、これはやはり見積もりでありますが、その歳出の金額を超えては支出することができないという拘束があるだけでありまして、その歳出がいかなる場合に行われるかという実体法律その他の根拠によつてきまつて来ると思うのであります。そういう趣旨から申しますと、予算一つ財政計画見積もりでありますから、その内容たる実体法規と相伴つて同時的に議決されるならばけつこうであります。けれども、一つ財政見積もりとして考えるときは、予算だけが先に議決されるということがありましても、これは憲法上可能なものでないかと存じます。」と、こう言つておるのです。  そうして、第二回の答弁がもつとも重要な点でございまして、「ただいまのご質問に対しまして私の見解を申し上げます。先ほど申し上げたことと同じことだと思いますけれども、歳入はやはり予算見積もりであります。從つて、これを実際実行する場合に、税法であるとかその他根拠法規、すなわち実体法規が通つていなければ、その部分についてはさらに実行できません。それは明らかであります。しかしながら、予算は実行できない部分がかりにあつたとしても、実行できる部分はもちろん実行できるのであります。それだけ申し上げればいいかと思います。」  そこで、こう言つておるのに、この通り林君が言つてくだされば問題は起らない。林君は、「法制局長意見を問いただしましたところが、法制局長も、予算を裏付けるところの実定法がない限り、かりに本予算國会通過したとしても、その執行は不可能であるということを明言されたのであります。しからばわれわれは、執行不可能な予算審議するということは明らかに國会権威を傷つけることだと思うのであります。」と、明らかに違つておるのであります。(拍手)そこで私は、これは故意であるか過失であるか、故意であるならば当然許すことは出來ない。過失であつても私は許すことはできないと思う。(拍手)  諸君、思うに共産党常日ごろにやつておる行動は、おおよそかくのごとき行動が多い。(拍手)しかし、これが議会外において、大衆の面前などで、ゼスチユアを使つて、赤旗を振つたりなどしてやる場合なら、まあこれもやむを得なかろうと思うふしもある。大衆欺瞞することはできても、申請なる國会を彼らは欺瞞することはできない。(拍手)しかも、この明らかな事実、この証拠を諸君の力をもつてしては隠蔽することはできないのです。(拍手)  國会などにおきましても、ことに私は、今回この懲罰動議を出すにあたつて、もつとも共産党の不信行爲について参考までに述べたい。これに関連してです。この十六日の議院運営委員会におきまして、共産党反対討論をすることを認容された。しかるに、委員長報告に対して質疑を行うということになつた。そうすると、共産党はわずか三十五名で、あの未かい時間に二人まで登壇せしむるということになるので、それはいかぬでないかという議論が出ました。そこで共産党は遠慮して、しからばその質疑労農党に讓るということに相なりまして、われわれ委員が了承したのであります。その通り決定しておつたのに、議場に入つたら、何ら院内交渉係との折衝もなく、無断で突如林百郎君が登壇した。この不信の行爲をいつたい何と思う。われわれ運営委員を無視するもはなはだしい。  常に彼らのこの本会議場でなさるる言動は、徳田君などもしかりでありますが、大体傍聽席に対する演説である。(拍手アジ演説である。これが共産党戰術でございましよう。そんな戰術は、日本國会では通りませんぞ。(拍手)われわれは、言論の府ですから、言論にかんすることは、たいていがまんしておきたいと思つて、今日までもたびたび機会はあつたが、國会権威のために、しばらくわれわれがまんしようと思つてつた。しかるに、あらゆる法案に対して、やること、なすこと、実に見るにたえないこの醜状を、断じてこれは許すことができない。(拍手)  しかも、林君のごときは何たる自信のない行動をとつているか。諸君は、昨日の議院運営委員会を傍聽せられた方にはよくわかるだろう。共産党の闘士といわれるほどの林君が、眼に涙さえためて哀訴嘆願しておる、この事実を何と見るか。(拍手)そんなことぐらいが恐ろしくて國会に入つたのか君は——(拍手)実に卑怯千万ではないか。何らの自信もなく、一たび正しき方法をもつて糾彈せらるるならば、涙を流して哀訴嘆願するがごとき卑怯未練なふるまいである。実に私は、日本再建途上において、かくのごとき者ども國会の一部に議席を占めるなどということは遺憾千万、日本將來のために嘆き悲しんでおる。(拍手)  かつて吉田総理大臣は、日本労働連合を指導すると称して日本再建に妨害を與うる一部の者に対して、不逞やからという言葉を使つたことがある。今にして思う。なるほど彼らは不逞やからであるかもしれぬ。(拍手かくのごとき虚の事実を流布して、神聖なる議政壇上から大衆欺瞞せんとするがごときこの行爲を、われわれは断じて許すことは相なりません。  しかも諸君、もつとも卑怯千万な点は、私は成規賛成を得て林百郎君を懲罰委員会に付すべしとの動議提出いたしましたところ、林君はただちに私を懲罰委員会に付すべしとの動議を出した。諸君、たとえば、すりが巡査につかまつて、つかまつたすりが、たびたびおれをつかまえるから、それが職権乱用だともし言うなら、それはナンセンスもはなはだしいではないか。(拍手)彼らの行動は、まさにかくのことし。今私の提議した動議が週末を告げるや、私に対する懲罰動議が出ますから、その際一身上弁明に立つて、この林君の私を懲罰委員会に付すべしとの動議に対する一身上弁明は相当具体的に詳しく申し上げるつもりでございます。(拍手)  そこで私は、この問題は単に林君を責めるにあらず、私はこの事実、真相を明らかにするところに重点を持つております。提案者がこの懲罰委員会の刑の量定などまで発言することは越権でございましよう。しかし、私はなるべく軽きをもつて処断せられたい。まあ除名などという重刑ではありますまい。少なくとも三十日以内の登院停止くらいが、ちようどいいのではなかろうかと、参考までに申し上げます。(拍手)なお、この決定に從わざるにおいては、最高の極刑をもつて臨むもまたやむを得ぬ点であると私は思う。  以上、林百郎君を懲罰委員会に付すべしとの動議提出趣旨弁明をいたしました。満場諸君の御賛同を願いたいと思います。(拍手
  5. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 懲罰事犯ありと告げられたる議員より弁明の申し出があります。これを許します。林百郎君。     〔林百郎君登壇
  6. 林百郎

    ○林百郎君 ただいま問題になつております、十六日における私の本会議場における発言は、予算違憲性を論じたのであります。そして私は、かりにこの予算そのもの違憲性とは別に、実際問題としてこの予算國会通過したとしても、その執行の面において重大な支障を來すものであるということを論じたのであります。その際、議院運営委員会における入江法制局長説明参考までに一例として引用したのであります。懲罰動議趣旨弁明によりますれば、その引用曲解もはなはだしいというのであります。そこで、今私の発言入江法制局長発言速記録によつて対照してみたいと思うのであります。  入江法制局長言葉、これはもちろん長いのでありますが、十分間の私の発言の範囲内では、入江法制局長言葉を全部言うことのできないことは、御了解願えると思うのであります。そこで私は、自分の論旨にもつとも必要なる部分だけをここで申し上げたことは、御了解願いたいと思うのであります。そこで、入江法制局長の言は「ただいまの御質問に対しまして私の見解を申し上げます。先ほど申し上げたことと同じことだと思いますけれども、歳入はやはり予算見積りであります。從つて、これを実際実行する場合に、違法であるとかその他根拠法規、すなわち実体法規が通つていなければ、その部分については更に実行できません。それは明らかであります。しかしながら、予算は実行できない部分がかりにあつたとしても、実行できる部分はもちろん実行できるのであります。それだけ申し上げればいいかと思います。」これが法制局長の言であります。  そこで私の言を見ますと、「実は先刻議院運営委員会でこのことが問題になりまして、参考までに國会法制局長意見を問いただしましたところが、法制局長も、予算を裏づけるところの実定法がない限り、かりに本予算國会通過したとしてもその執行は不可能であるということを名言されたのであります。しからばわれわれは、執行不可能な予算審議するということは明らかに國会権威を傷つけることだと思うのであります。」、これが私の言であります。  そこで、以上申し上ぐるごとく、私の十六日の本会議における発言入江法制局長との説明との差は、予算を裏づける実体法通過を見ない限りはその部分について予算執行は不可能であるとの「その部分」の四字がないということであります。その点、私の表現が正確を欠いていた点は率直に認めます。ただしかし、ここで考えていただきたいことは、それだけの理由をもつてして、ただちに懲罰に値するかどうかという点であります。椎熊君は、私が故意曲解をしたと言つておるが、それは同僚議員を侮辱するもはなはだしいと思うのであります。  第二は、十六日の本会議における私の発言眞意は、速記録にもありますように、「しからばわれわれは、執行不可能な予算審議するということは明らかに國会権威を傷つけることだと思うのであります。」というがごとく、國会権威を傷つけたくないという私の眞意に出たことは、御了解願えると思うのであります。この國会権威を傷つけたくないと思つた私の発言に対して、國会が私を懲罰するということは、私了解に苦しむのであります。  すなわち第三としまして、しからばなぜ私が國会権威を傷つけることになるのではないかと心配したかという理由を述べてみたいと思うのであります。政府は、予算を裏づける実体法であるべき税に関する諸法案、すなわちガソリン税の新設、あるいは織物消費税税率引き上げ酒税法税率引き上げ鉄道運賃郵便料金の値上げ、法人税取引高税所得税等税率の変更については、全然國会にその法案提出がないのであります。同時審議ならまだしも、全然法案提出がないということになれば、このたびの予算に対し、國会審議に対する違憲性の有無は別としても、國会通過したところで、入江法制局長の言をもつてしても、その重要な部分執行不可能になつてしまいます。このことは、事実上また予算執行全体に大きな支障を来すことになるのであります。そうした予算國会通過させるということは、國会権威のためにもなしたくないということが、私の眞意であつたのであります。(拍手)  次にまた、かかる状態のままで予算通過させることは——憲法の八十四條に「あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める條件によることを必要とする。」ということが書いてあるのであります。(拍手憲法のこの國会尊重精神——予算通過という規制事実をつくつてしまうことによつて、せつかく憲法で保証されている法律審議権を蹂躙されるということになるならば、これまた國会権威のために好ましくないと思うのであります。こういう意味で、私は政府に重大な警告を発し、國権最高機関である國会権威を保持し、國会審議権を保持したいという眞意から出たのであります。このことは、先般の暫定予算提出の際の組織別目的別の新たなる組かえの際にも、政府は、財政法改正を当然先議すべきであるが、このたび限りはということで出したのであります。またその後、地方配布税法や対日援助見返り資金特別会計法についても、國会の「要求に基づいて急遽提出した事例もあるのであります。最近政府は、國会要求によつて初めて必要な法案國会提出するということが、ひんぴんとしてあるのであります。國会としては、当然政府のなすべきことに対しては忌憚のない警告をし、要求をすべきものであると私は信じたからであります。  以上、私の十六日の本会議における発言精神は、ひたすら國会権威保持のために政府の怠慢をつくということにあつたことは明らかであります。しかるに、この怠慢な政府警告を発し、國会権威を保持せんとした私が、何ゆえ懲罰に付されなければならないのでしようか。國会権威議員品位の侮辱というならば、あの囹圄に引かれるような、刑務所に引かれるような人すらも國会懲罰しないのに、國会権威を守りたいという私が、何ゆえわずかに四字の引用の差で懲罰されなければならないのでしようか。  しかも、椎熊君は玉井君の例をあげましたが、私が玉井君に、どうか君やつてくれ、やつてくれと言つたところが、あのときは労働新党発言の問題で玉井君はどうしてもできないから、林君頼むと言われて、私がやむを得ず出た事情は、玉井君自身に聞いていただきたいと思うのであります。しかも、昨日の運営委員会においては、野党派諸君が、どうか林君、つらいところをがまんして、ここではあやまつておいてくれという同僚議員の切実なる忠告に対して、私は心から感激して私の不明を謝したのであります。これをしも何ゆえ僞りの涙というようなことを同僚議員椎熊君が私に言うことができるでしようか。これこそ、人間の心情を知らない、あたたかい血も肉もない冷血の動物だと私は言いたくなるのであります(拍手)  しかも、私がこの入江局長の言を引用した際には、わずか十分間の時間の余裕しかないことと、次には入江法制局長発言が、まだ速記録ができておらなかつたという点も、重要な点だと思うのであります。從つて、もしかかる懲罰ということになれば、將来少数会派よりの発言は、常にその発言に関し多数派の懲罰動議という心理的の脅迫を受けることになつてかくては國会において、國民の負託を受けている國会議員審議権が剥奪されることになるのであります。しかも議員懲罰に関しては、成規手続きを経て慎重になさるべきものが、單なる議事進行に名をかりて、かかることがなされるということは、明らかに懲罰権濫用だと思うのであります。私は、私の良心と國会権威のために、かかる懲罰に対して断じて承服しがたいのであります。  以上が私の身上弁明であります。(拍手
  7. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 重懲罰動議討論を用いずして裁決をいたすのであります。よつて、ただちに裁決いたします。椎熊三郎君の動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。よつて議員林百郎君を懲罰委員会に付するに決しました。(拍手)      ————◇—————
  9. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 次に梨木作次郎君より、成規賛成を得て、議員椎熊三郎君を懲罰委員会に付するの動議提出せられております。右動議議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。提出者梨木作次郎君。     〔梨木作次郎登壇
  10. 梨木作次郎

    梨木作次郎君 議員椎熊三郎君を懲罰委員会に付するの動議提出理由説明いたします。  去る十六日の本会議におきまして、昭和二十四年度予算案が上程された際、わが党の林百郎君が、予算案の前提となつておる税法その他の收入目的とする法律の制定もしくは改正がないのにこれを審議することは、國会が持つておる財政処理権限に関し憲法上重大なる疑義があるから政府に対し質問を試みたいということで、その発言中に入江衆議院法制局長法的見解引用したのであります。この引用が事実と相違しておつたということをとらえて、椎熊三郎君は、林百郎君が降壇した後、議事進行に名をかりて演壇に上り、次のように発言したのであります。すなわち、前の方は省きますが、「うそ虚僞を本会議場に披瀝して審議に重大なる過誤を生ぜしめるがごとき惡例を残すことは、新憲法下断じて許されないから、私はあらためてここに、議院神聖保持のために、同僚林百郎君を懲罰委員会に付することを要求するものであります。諸君、この私の懲罰動議に対しては討論は用いられないのであります。ただちに賛否を御決定願いたい。」、こう発言しておるのであります。そうして椎熊君は、この発言が終ると間もなく、成規手続きを経て林百郎君の懲罰動議を本院に提出したのであります。  そこで、われわれが問題にしたい点は、まず第一に、議事進行に名をかりて、議員一身上の重大問題を——成規手続きを経ることなく、突如として懲罰動議提出した件であります。御案内のごとく、國会法第百二十一條においては「議員は、二十人以上の賛成懲罰動議提出することが出來る。」とあつて、二十名以上の賛成がなければ懲罰動議提出できないことになつておるのであります。椎熊君は、まず本会議懲罰要求しておきながら、そのあとで成規手続きをふんだにすぎないのであります。これは國会法を蹂躙し、國会権威秩序保持のために許し得ないものであると思うのであります。  第二の理由は、林百郎君の発言を、本人の一言の弁明も聞かないで、独断的に曲解にあるいは欺瞞したとか、うそ虚僞を本会議場に披瀝したとかいうような言葉使つて同僚議員を不当に侮辱するがごとき発言をしておるのであります。林百郎君の引用した入江局長見解内容と、同氏が議院運営委員会発言したその内容とは、いささか正確を欠いておる点はあるのであります。しかし、これを目してただちに曲解あるいは欺瞞と断ずることは、少なくとも同僚議員に対し礼を失した言動であると私は考えるのであります。発言内容を誤り傳えたことについて、それが善意であつた惡意であつたかは、本人弁明を待つて判断することが望ましい態度であろうと思います。昨日の議院運営委員会における、また先ほどの林君の弁明によつても明らかのように、林君が惡意ではなく、あやまつてあのような発言をしたのであり、不徳のいたすところであつた言つて、その過失を認めておるのであります。かかる態度をもつて臨んでいる林百郎君を、曲解欺瞞うそ虚僞というごとき言葉をもつて非難するが如きことは、議院としてあるまじき言動であると私は認定せざるを得ないのであります。(拍手)  第三の理由といたしましては、議員に対する懲罰動議提出は、議員の身分に関する重大問題であります。從いまして、最も慎重な配慮が行わるべきであります。しかるに、椎熊君がなされた林百郎君に対する懲罰動議提出の経過を見ますと、まず人の弁明も聞かず、正式の懲罰動議提出手続きも経ず、あの本会議場におけるところの興奮した空氣の中で、突如として動議提出しておるのであります。これは懲罰のための懲罰動議と言われても弁解の辞はないでありましよう。(拍手議員懲罰動議提出する権限を有することは國会法の認めておるところでありますが、しかし、いかなる権利といえども、その濫用は許されないのであります。民法第一條におきましても、「権利行使及ヒ義務履行ハ信義ニ從ヒ誠実ニヲ爲スコトヲ要ス」とあり、「権利濫用ハヲ許サス」と民法第二條は規定しております。懲罰動議の行使も、また信義誠実の原則に從つて行使されねばなりません。濫用は許されないのであります。椎熊三郎君の林百郎君に対する懲罰動議は、懲罰動議権の濫用と考えます。かかる動議権の濫用を許しますならば、ささいなことで懲罰動議提出されることによりまして、國会内の言論が不当に束縛せられることになるのであります。われわれは、國会権威保持のために、かかる軽率乱暴な動議提出は許されないと信じます。  私は、以上三つの理由によりまして、椎熊三郎君を懲罰委員会に付すべきものであると信じて本案を提出した次第であります。(拍手
  11. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 懲罰事犯ありと告げられたる議員より弁明の申出があります。これを許します。椎熊三郎君。     〔椎熊三郎登壇
  12. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 このたびは、遺憾ながら被告の立場をもつて一身上弁明をいたしたいと思います。  ただいま私に対する懲罰動議提出者は、三つの論拠をもつて私を懲罰委員会の議に付すべしとの動議提出せられました。ただいま趣旨弁明を承りますと、第一の点は議事進行発言懲罰動議を出したる点が不当であるという、第二は同僚議員に対する侮辱行爲があつたという、第三は議員権利濫用であるという、この三点によつて私を懲罰委員会の議に付せようというのであります。  諸君議事進行発言によつて懲罰動議を出すということを発言することが何で不当なのでしよう。あなたは知らない。あの際動議を出しても不当ではございませんぞ。動議を出しても不当ではない。それから動議とは……(発言する者多し)よく聞きなさい。教えて上げますから——提案者が一人だけではできることではないのです。これに賛成者がなければいかぬのです。それですから、成規賛成者とは、あなたも引用せられた國会法によるところの二十名以上の賛成者、それがなければいかぬ。ところが、國会の議場内における各党の院内交渉係が、一たび事務総長のところへ申し出るとき、わが党賛成なりとの言明だけでその党全体が賛成者となつておる慣例が、今までずつと続いておる。言葉でいい。そこで、私の方は実は三十七名あります。私以外に三十六名、当日の登院者三十二、三名が賛成者ということでございますから、これは成規手続き……(発言する者多し)それは突然でいいんですよ。そこで、なお念のため、その発言をすると同時に書面をもつて出しておる。それから議事進行発言に、林百郎君を懲罰動議に付さざればこの予算審議に重大なる障害を與えるということが私の発言である。これを默認しておつたのでは、林君の言動を信頼して、憲法違反予算政府と多数党がむりじいにしいたという印象を受ける人があるかもしれません。それはたいへんなことではないか、それだから議事進行上默つてはおかれません。議事進行上まず彼を懲罰委員会の議に付せよ、こういうことを言つて、私はこの予算審議の結果に支障なきを期待したのでございます。  第二は、同僚議員を侮辱したということは——國会議員として同僚議員を侮辱しては相ならぬことは議事規則等にもございます。よつて私は、慎重の上にも慎重を期して、この林君の発言そのものが虚僞であるということ——この私の言つたことが間違いであるならば、あなたが指摘せられるように侮辱ということになりましよう。しかるに、本人が認めておる通り、速記録にも明らかな通り、彼はまつた虚僞の事実を発言したということには間違いない。(拍手)これでは同僚議員の侮辱と相なりません。  なお第三の権利濫用に至りましては、実にこつけい千万でございます。諸君も常に権利の主張をなさるが、われわれといえども國会議員権利を尊重いたします。諸君、われわれが道議を提出するの権利は、國会議員として重大な権利である。しかも成規手続きをもつてこれをなす、だれがこれを制肘することができるか。しかるに諸君濫用とは何ぞや。権利濫用とは権利の不当行使なのであります。正当なる権利の行使は、権利濫用では断じてございません。(拍手)たとえば交通整理の巡査が、交通違反者を何百回、何千回取締つても、これは違反者に対しては権利濫用ではない。(拍手)たとえば、もつと具体的の例は、すりが電車の中で刑事につかまるや、何回もつかまつたというので、そのつかまつたすりが刑事に向つて、お前は何度もわしをつかまえるから権利濫用だと言つたら、諸君はどうして承知できる。(拍手、笑声)正当なる権利の行使は濫用では断じてない。  そこで、私の権利が正当なる権利の行使なりやいなやが問題になる。議事進行発言を求めて議長が許せば、議事進行に関する発言ができます。私は議事進行発言をなしたつもりであります。それから、懲罰動議を出すのは議員たるわれわれの権利であつて成規手続きをもつて事務局がこれを受理するにおいては、断じて権利の不当濫用ではございません。しかも、この権利濫用がこの動議提出にあつたとあらば、懲罰動議というものは提出者ただ一人では出來るものではない。これに二十名以上の賛成者がなければならぬ。従つて動議提出権利濫用だとならば、提出者だけをもつて懲罰動議の対象とすることはできないのです。提出者だけでは成立たないことなんです。二十名以上の賛成がなければいかぬ。現に、わが党は三十名以上、大会派と称せられる民主自由党にすら三十名近い賛成者がある。これかを何であなたが称する権利濫用の一部分をなしているものとして指摘しないのか。あなたの理論構成は、この点においても矛盾撞着でございます。(拍手)  諸君、なお私は一言したいことがある。旧來の國会にもしばしばございましたが、一度他の会派から懲罰動議が出ると、何もないのに、その者に向かつて反対側から懲罰動議を出す。そうして陰にまわつて、これはおれの方もひつこめるからお前の方もひつこめろという一つの取引が間々行われたことも、私は見て参りました。そういうやみ取引は、新國会、新憲法のもとでは断じて排除しようではないか。(拍手)私が懲罰動議を出すや、林君は急遽あの行爲に出て、昨日以來本朝に至るまで、わが共産党椎熊君に対する懲罰動議をひつこめるから、何とか林の懲罰動議をひつこめてくれと頼んでおる。私は、共産党としては共産党らしくないやり方だと思う。彼らに自信があるならば堂々と戰え。私は、昨日の國会運営委員会の際にも一身上弁明をいたしまして、同僚諸君は、椎熊に対する懲罰動議は要旨を欠いておるから、懲罰動議の成立にはならぬではないかという意見が多数であつたが、私はあえて発言を求めて、こといやしくも共産党に関する問題であるから、本会議の席上、多数の傍聴者の前で、いかに共産党が卑劣な行爲、卑怯な行動を持つて闘爭しつつあるかを爭つて見たい、よつて私は、どちらが政党であるか、どちらが正々堂々たる態度であるかを本会議の席上で明らかに決定していただきたい。あわれむべし、私は指摘したい。林君のごときは、うろたえさわいで、目に涙して泣訴嘆願しておる状態は、断じて許すことができません。  諸君、私はそもそも終戰以來國会に議席を有し、今日まで國会議員としての職にあるゆえんのものも、日本再建復興のために重大なる支障を來す彼ら共産主義者一味の者どもと命にかけて対抗したいということが私の念願であるからでございます。よつて、この絶好の機会にあたつて、林君の懲罰動議が正しいか、椎熊三郎提案の懲罰動議が是なりや、諸君の公正なる判断をお願いしたい。すなわち、日本國会神聖保持議員品位堅持のため、しかももう一つ付加して、共産主義者一派らの議会における闘爭戰術がいかに卑劣陰險きわまるものであるかという点を暴露いたしまして、諸君の賢明なる御判断に訴えたいのでございます。いささか言葉はそまつではございましたが、この際一身上弁明のために、しばらく清聽を煩わした次第でございます。(拍手
  13. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 懲罰動議討論を用いず採決をいたすのであります。よつて、ただちに採決をいたします。梨木作次郎君の動議賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  14. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立少数。よつて梨木作次郎君の動議は否決されました。(拍手)      ————◇—————
  15. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 日程第一、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案日程第二、日本國憲法八條規定による議決案、右両案は同一の委員に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長齋藤隆夫君。
  16. 齋藤隆夫

    ○齋藤隆夫君 ただいま議題となつておりますところの皇室経済法施行法の一部を改正する法律並びに日本國憲法八條規定による議決案、これに関する内閣委員会の審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず本法律案並びに本議決案の要旨を申し上げますると、本法律案は、皇室諸般の費用のうち内廷費及び皇族費は、皇室経済法施行法第七條、第八條によりまして、昨年度内それぞれ二千万円及び三十六万円となつておるのであります。ところが、経済情勢並びに物價水準等にかんがみまして、本年度はそれぞれこれを二千八百万円及び六十五万円に増額せんとするものであります。また本議決案は、天皇その他内廷にある皇族が、災害その他のお見舞あるいは各種の御奬励等のためになされる賜與額、これが一箇年間に二百五十万円近くに上る見込でありますので、これらの場合、その都度國会の議決を要することが事実上困難でありまするのみならず、その目的も定まつておりまするので、例年のごとく、あらかじめ價格を限つて一括議決することとして、昨年度は百八十万円でありましたのを、本年度は物價情勢に照應いたしまして、これを二百五十万円に定めようとするものであります。  この法律案ならびに本議決案は、去る十四日に内閣委員会に付託されまして、十五日、増田官房長官より提案理由説明を聞き質問を行い、十六日、共産党の木村榮君より反対の討論があり、民自党の小川原政信君より賛成討論がありました後、採決の結果、多数をもつて両案とも原案の通り可決いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  17. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 別に御発言がなければ、両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  18. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決されました。(拍手)      ————◇—————
  19. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 日程第三、貿易特別会計法案日程第四、米國対日援助見返資金特別会計法案、右両案は同一の委員会に付託された議案でありまするから、一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大藏委員長川野芳滿君。     ———————————————     〔川野芳滿登壇
  20. 川野芳滿

    川野芳滿君 ただいま議題となりました貿易特別会計法案について、大藏委員会における審議の経過ならびに結果を概略御報告申し上げます。  この法案提出されました趣旨は、貿易及びこれに準ずる取引に関する政府の経理を明確にしようとするものでありまして、この点について不十分でありました從來の貿易資金特別会計法を廃止いたしまして、新たにこの貿易特別会計法を設置しようとするものであります。すなわち從來の貿易資金特別会計法におきましては、資金運用益金、公團納付金、雜收入等を歳入とし、事務取扱費、資金運用手数料、付属諸経費を歳出としておりますが、貿易資金の運用として行つております貿易物資の買入れ及び賣拂い外貨請求権の買い入れ及び賣拂い等貿易及びこれに準ずる取引に関する資金の受入れ、拂い出しについては、これらを歳入歳出といたしておりませんので、今回これらを歳入歳出といたしますように、貿易特別会計法を設置し、これに伴う必要な取扱いを規定しようとするものであります。     〔議長退席、副議長着席〕  次に、この法案規定しようといたしておりますおもなる点について申し上げますと、第一に、この会計は事務費勘定、経理勘定及び清算勘定の三勘定に区分いたしまして、事務費勘定において貿易及びこれに準ずる取引に関する資金の受入れ、拂い出しを経理することといたしております。第二に、事務費勘定において、支拂い上現金に不足があるときは一時借入金をなし、または融通証劵を発行することができることといたしております。但し、その最高限度は二百億円とし、かつその年度内に償還しなければならないことといたしております。第三に、政府は貿易公團に対し、その運営資金をこの会計の事業費勘定から貸しつけることができることといたしております。  この法案は、去る一四日、本委員会に付託されたものでありまするが、十五日提案理由説明を聽取し、十六日及び十八日質疑を行いましたが、田中委員よりは、二十四年度における貿易計画、輸入総額と補給金との関係につき、風早委員よりは、輸出に関する対策、貿易資材面及び金融面についての施策、貿易特別会計における資金の内容、貿易計画等について、内藤委員よりは、最近における貿易取引の実際についてそれぞれ質疑があり、政府委員より應答がありました。  次いで、十八日討論に入りましたところ、宮幡委員は民主自由党を代表して、予算実体面の一環をなす重要なるものであるとして賛成の意を表せられ、風早委員共産党を代表して、援助資金の実際があいまいであり、また貿易計画が厖大であつて、飢餓輸出となるおそれがあるとして反対の意を表せられ、荒木委員は、從前の貿易資金特別会計法の不備を補うところ適切なる新立法と考えるとして賛成の意を表せられました。続いて採決に入りましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決いたした次第であります。  以上、はなはだ簡單ではございますが、御報告申し上げます。(拍手)  続いて、ただいま議題となりました米國対日援助見返資金特別会計法案について、大藏委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法律を制定せんとする趣旨について申し上げます。ガリオア及びイロア資金による対日援助の見返り資金をもつて、わが國の通貨及び財政の安定、輸出の促進その他介在の再建に資せしめようというのが本基金の趣旨目的であり、この資金の運営に関して特別会計として経理しようというのがこの特別会計であります。終戰以來、わが國はガリオアその他の資金による巨額な米國の対日援助物資を受け、從つて貿易ははなはだしい入超となつてつたのでありますが、それにもかかわらず、貿易資金は常に円資金の不足を示しておるのであります。このことは、援助物資の見返りたるべき資金が、國内の價格政策等により不明確な形で輸出及び輸入補給金の充当せられていた結果であります。この資金特別会計は、かかる補給金充当の状態を脱却し、貿易特別会計を通じて繰入れられるこれらの援助物資の見返り円資金を積立て、これを國債及び公私企業に対する資金に運用し、また國債の償環に関する費途及び公企業に対する資金に使用することによつて援助の状況を明確にしつつ、見返り円資金の有効適切な活用によつて九原則下における日本の財政経済の安定と再建をはかろうとするのであります。  右が本基金設置の趣旨の大体でありますが、さらに法案の條項に從つてその内容の概略を申し上げますと、まず第一條、第二條は、この特別会計の設置と大藏大臣の管理を規定しております。次に第三條は、この資金の構成についての規定であります。すなわち米國対日援助物資にかかる貿易特別会計からの繰入金、運用資産の回收処分による受入金及び資金運用收益金をもつて本資金に充てること、及び貿易特別会計からの繰入金額は米國対日援助物資のドル價格を一定の換算率で円價格に換算して定められることが規定されております。次に第四條は、資金の運用、使用等についての規定であります。すなわち、先に述べた目的のためにする援助資金の使用、運用等の方途を規定しております。なお本條においては特に注意すべきは、この援助資金の特質上、運用及び使用または國債の償却について連合國最高司令官の承認を要すること、またその実行したる際は監査を受くべきこと、また最高司令官に対して報告の責を有することを規定しております。次に第六條はこの会計の歳出及び歳入規定し、第七條ないし第十二條は、歳入歳出予定計算書及び予算支出残額の繰越し、歳入歳出決定計算書及び決算に関する諸規定であります。次に第十三條は、援助資金の経理について、この資金は日本銀行に特別の預金勘定として、他の預金勘定と区分して経理すること及び余裕金ある場合の政府短期証劵による一時保有の規定であり、第十四條は資金運用等に関する事務を日本銀行に取扱わせ得る規定であり、第十五條は所属がえ國債及び償却國債額の決算上の明示の責について、また第十六條は施行に関する制令について定めてあります。最後に附則はこの法律の施行期日の規定であつて、この特別会計の昭和二十四年度予算の成立の日からしくすることになつております。以上がこの法律案内容であります。  この法律案は、四月十二日大藏委員会に付託せられ、同日政府委員より提案理由説明を聽取し、次いで十三日、十四日、十五日の三日にわたり熱心に質疑を行い、大藏大臣、政府委員答弁を聽取しました。そのうち、十四日は特に祕密会として愼重に審議を重ねた次第であります。質疑の詳細については、ここにその報告を省略し、速記録を参照願うことにいたしたいと思いますが、そのうち問題となつた重要な点を二、三あげますれば次の通りであります。  第一は、本特別会計法案の性格いかん、特に第四條第六項、第七項の問題であります。すなわち、政府と連合國最高指令官との関係を國内法に挿入することは前例があるか、また適当でないではないか、デイレクテイヴまたはメモランダムによるべきではないか。また國会審議権との関係いかん等の質疑に対し、政府委員よりは、必ずしも同様のものではないが、類似の前例はないではない、この規定米國より援助を受ける欧州諸國の例においては双務協定において規定されている事項であるが、今日占領下においてはこの規定のごとくなくなる、またその規定の有無にかかわらず実質的には同じであるが、米國納税者に対する関係上はつきり書いた方がよろしい、また國会の自由審議は当然であるとの答弁がございました。  第二は、本基金運用の機関の問題であります。これに関する質疑に対しては、政府側の答弁は次の通りでありました。第一は、本資金運用計画は総合資金計画の一環として安本長官が定める。本資金の運用計画は年間計画及び四半期計画ととして作成する。なお産業投資及び融資については、企業別細分計画を立て具体的に定める。第二は、支出の関係はもつぱら財政法第三十四條の問題であり、大藏大臣が支出計画をきめる。大藏大臣はこの資金を管理し、右運用計画に基いて資金の運用を実行する。大藏大臣は予算責任大臣として、本資金運用に当つて予算執行上必要な調整を加える。第三は、安本及び大藏省との関係は緊密な連繋を保ち、齟齬のないように努める。安本に関係各省担当官吏をもつて援助資金運用協議会をつくる。但しこれは諮問であつて責任は安本にあり、閣議にかけて決定する。民間意見については特別の機関を設けず、復興計画委員会を勝つようしたい。第四は、日銀との関係については、大藏省の責任において、日銀は事務を取扱わせるのである。日銀の政策委員会は対日援助資金とは直接関係はない。以上がその答弁の大体の内容であります。  第三は、この資金の運用による日本経済の今後の進路との関連の問題であります。特に千七百五十億の基礎、資金計画内容、復興融資の停止と本基金活動との間のギヤツプとしての四月、五月における融資問題が質疑されました。これに対して政府側よりは、一、この基金の基礎となる対日援助の一部分はすでに一九四九年度予算としてアメリカ議会で決定したものが入つているのであるが、大部分は次年度のものであり、決定したものではない。二、この資金に関する資金運用計画は、鉄道、通信両会計間接公債のほかは、いまだ確定していない。三月、四月、五月におけるギヤツプに関しては、政府支拂い促進その他の方法によつて万全の考慮を拂う等の答弁がありました。  かくて十五日質疑を終り、十六日討論に入りました。まず民主自由党宮幡委員は、討論に入るにあたりまして、共産党を除く各派共同提案として次の修正動議提出されました。修正案は「米國対日援助見返資金特別会計法案の一部を次のように修正する。第四條第六項及び第七項を削る。」その修正理由として同委員は、本資金は米國の好意的援助によるものであつて、その内容つてはとかく意見は差控えるべきではあるが、立法関係について見るに、第四條第六項、第七項のごとき條項を國内法たる法律規定することは前例に乏しく、かかる條項のない方がよろしいであろうと思うとともに、その存置するといなとにかかわらず、管理下にあるわが國の現状において、その効果においてかわりはない、かかる規定は、むしろとかく議論を紛淆せしめるおそれがあるゆえに削除したいと考える、しかしながら、われわれがこの基金設置の趣旨に忠実に驀進する意味において、この削除しようとする條項の趣旨にかわるべきかつ議案を上程したい、そして、その決議案の取扱いについては委員長に一任したいとの修正動議提出されました。右の修正を除く他の部分については同委員は全面的に賛成の意を表されました。次いで、社会党を代表して田中委員は修正案に賛成する旨を述べられました。なお続いて、共産党を代表して風早委員は原案に反対の意を述べられました。続いて、國民共同党を代表して内藤委員は修正案に賛成するとともに、他の部分については若干の希望を付して賛成する旨を述べられました。かく討論を終局し、右の修正動議を含む本法律案につき採決いたしましたところ、多数をもつて修正可決した次第でございます。  右、はなはだ簡単でございますが、御報告申し上げます。(拍手
  21. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。風早八十二君。     〔風早八十二君登壇
  22. 風早八十二

    ○風早八十二君 私は、日本共産党を代表して、今上程されました米國対日援助見返資金特別会計法案並びに貿易特別会計の二案に対して反対の意見を述べるものであります。今、どうしても反対しなければならないその理由を申し述べたいと思います。  まず、米國対日援助見返資金特別会計法案に対する意見を述べたいと思います。大体この法案趣旨は、新しく千七百五十億円という会計を設置するというにあるのでありますが、この千七百五十億というものはどこから出てくるのか、まずこれから問題があるのであります。これは決して天から降つて來るものでもなければ、また地からわいて來るものでもなく、また外からもらうものでもないのであります。しかしながら政府当局は、この千七百五十億円につきましては、これをまるで万能藥のごとくに、いろいろ二十四年度予算案の困難な事情に対しまして常にこの千七百五十億の見返勘定を引合いに出しております。  たとえば、長期資金が今回の予算では足りない、これは特に民自党の諸君も大いに熱を入れられた点でありますが、この二十四年度予算はとかくデフレ的な傾向がある、そうして産業の建設面に金が出て來ないであろう、この金詰りに対して非常なる不安を感じておられる、これらの方面から、しばしば長期資金はどうするという質問政府に対しても出ておつたのであります。しかし、これに対して政府は常に、これは大藏大臣にいたしましても安本長官にいたしましてもまつたく同樣でありましたが、常に、いや千七百五十億円の見返勘定があるから何とかなるであろう、こういう、きわめてあいまいなる答弁をやつておりました。しかも、きわめてあいまいなる答弁をやつておりました。しかも、これがある程度ききまして、民自党の諸君も結局は默つてしまわれた。  また公共土木事業費は、今回ははなはだしく節減せられておりまして、これは全國民が今年度におきましては非常な難澁をしなければならない、たとえば災害防止費におきましても、あるいは六・三制の建設費におきましても、その他構成関係の建設費におきましても、さしずめ今度問題になつております國立病院などのいろいろな建設資金につきましても非常な金詰りである、これをどうしてくれるか、こういう質問政府に出します場合に、これまた政府は必ず、いや最後においては千七百五十億円があるから、これが何とか融通されないでもない、こういうような答弁であつたのであります。  最後におきまして、いよいよ地方配付金の問題が、致命的な問題として各委員会に出て参りました。このときにもまた、予算委員会におきましても、あるいは地方行政委員会におきましても同樣でありますが、この地方配付金の不足というものに対しては、やはり千七百五十億円で何とかなるであろうという、はかない望みを與えておる。そして、これによりまして質問を封じて参つたのであります。  さて、このようにして私は、最後の決といたしまして大藏大臣に聞いたのです。一体この千七百五十億というのは、今日政府にとつて、あるいはこの二十四年度予算案にとつて、それは打出の小づちであるのか。これに対しまして池田大藏大臣は、その通りでありますと認めたのであります。しかしながら、はたしてこれが打出の小づちであるかどうか。ここに根本の問題がある。これが打出の小づちであつて、これを打ちさえすれば何でも足りないものが出て來るというのであれば、これは問題ではない。しかしながら、この打出の小づちというものは、実は内容のないものである。これは、今これから詳細に申し上げるところであります。  大体千七百五十億円というものは、最初にも申しましたように、天から降つて來るものでなければ地からわいて來るものでもない。またこれは外から頂戴するものでもない。これは結局、われわれがわれわれの労働力をしぼり上げて生み出されなければならないものなんです。(拍手)今、その千七百五十億のからくりを皆樣方に申し述べて、われわれがいかにしてこの法律に反対しなければならないかということを論証したいと思うのであります。  千七百五十億円の新しい会計は、結局ひとりにできるものではなくして、貿易特別会計からそのままそつくりもらつて來るものであります。しからば、貿易特別会計におきまして、この千七百五十億円というものはいかにして生み出されるか。問題は、ここにおきましてか貿易特別会計の事業勘定の分析に移るのであります。ところで、この事業勘定におきまして、その歳入は何であるか、歳出は何であるか、この点を明らかにしたいと思うのであります。  まず歳入におきましては、輸入援助物資関係の收入といたしまして千七百五十億円が見積られております。さらに輸入一般物資関係といたしまして千三百八十五億円というものが見積られております。合計して三千百三十五億円というものが歳入であります。これに対して歳出はどうであるか。もちろん第一には、その米國対日援助見返資金特別会計に繰入れるべき千七百五十億円、これが第一であります。さらに輸出向きの物資に対する賃上げ代金の支拂い、こういうものが千八百八十六億円あるのであります。この二つを合せますと三千六百三十六億円になります。これがすなわち歳出になります。そうして見ますと、この三千六百三十六億円から三千百三十五億円を引いた残りの五百一億円というものは、黒字ではなくて実に赤字になる。この貿易を実際にやり、それから物を生み出してこれを買つたり賣つたりして、差引きするところは五百一億円の赤字を何とかしなければ千七百五十億円というものは生まれない勘定になる。  しかるに、この千七百五十億円、及び一般物資の輸入の面におきましても補給金がいりますが、それらを合わせて八百三十三億円という輸入補給金を一般会計から政府は出しております。しかもそれだけではなく、さらに一般会計から貿易会計に向かつて四百億円という、またこれも理由なしに一般会計からの繰入金を繰入れておるのであります。これらの八百三十三億円ならびに四百億円、しめて千三百三十三億円というものは、もうだれが何と申しましても、そのまま國民の税金負担であります。國民の税金から取上げて、これを補助金にしておる。この千二百三十三億円がなければ、千七百五十億円というものは出て來ないという勘定になるのであります。(拍手)してみれば、千七百五十億円というものは外から與えられたものでもなく、どこから出て來るものでもない、結局はわれわれ國民の税金負担として出て來るということがきわめて明瞭ではありませんか。(拍手)  私は、この千七百五十億円というものは、もはや打出の小づちではなく、いわば張子のとらであると申したい。この張子のとらは、中身はからつぽであります。しかしながら、これをでんと置いておけば、張り子のとらの威力によりましていろいろなことができる。これはまつたく空から有を生み出すという、きわめておもしろい手品ができるしろものでありまして、その張子のとらにこれが値しておる。しかしながら、その中身がない。その中身がある限りは——これに内実があり、内容がある限りは國民の税金である。それ以外に何ものもない。こういうものを使つて政府は今回の二十四年度の全予算を動かそう、あるいはまた足りないところもこれでみなまかなおうと言う。議員諸君は、このインチキなるからくりを御承知になりますれば、今にしてあの二十四年度予算案をうのみにされたことを、さぞかしほぞをかまれることであろうと私は信ずるのであります。(拍手)  次に、この米國対日援助見返資金特別会計法案に対する反対理由といたしまして、この資金の運営には、いささかも自主性がないという重大なる一転であります。(拍手)御承知のように、この原案におきましては、その第四條第六項におきまして、この資金の運営あるいはまた使用につきましては連合軍最高指令官の承認を経なければならないと、はつきり書いてある。いやしくも國会におきまして、憲法に第八十三條ないし八十八條において認められておりますところのわれわれの予算審議権、われわれの國会審議権というものは一体どうなるのか。これがあらかじめ連合軍司令官の承認を得なければならない、しかもわれわれはこれを自由に討議しなければならない、もしもこの両者が食い違つた場合に、これをどうするか。こういう困難なる條文をこの中に平氣ではさんでおつたのであります。その政府趣旨たるや、結局現在與党として多数を持つておる、だからして、どんなむりなことでもできる、どんなむりなことでもやれるから、こういうふうなことがあつても、それは初めから何ら問題にならないであろう、これはもううのみにするだけであろう、國民國会審議権などというものは初めから放棄してかかるだろう、こういつたような頭を政府が持ちまして、平氣でこういう法案を出してきた。さすがにこの点につきましては、民自党の諸君の側からも猛烈なる疑義が起つて來たのであります。  私は、大藏委員会におきまする討議の若干を皆樣方にお知らせしたい。それは、私が今度の大藏委員会の金議の経過におきまして、この條文の削除についきましては積極的なる主張を持ち、これは当然削除されるべきである、私は今まで長い間法律学もやりましたが、日本の法制史をずつとひもといてみても、かりに明治の初年におきまして、あの條約改正に対して全國民が熱中しておるとき、治外法権撤廃のために皆樣方の祖先であるところの自由民権の運動者が大いに闘つておるとき、つまり日本におきまして、まだ民族の独立が完全に達成せられておらなかつたその際におきましても、この汚辱的なる條文は絶対になかつたのであります。(拍手)こういうものは、いまだかつてなかつたのであります。われわれは、戰後の民主主義のもとにおきまして、新しくこういう汚辱的なる條文を差入れて、これによりまして、われわれみずからがわれわれみずからの首をくくるような、予算審議権を否定するような、そういうふらちなことはやりたくない、これはわれわれの祖先に対しても申訳ないことであり、またわれわれの子孫に対しても申訳ないことであるという趣旨のことを、われわれはしばしば繰返し主張したのでありますが、幸いにして、この点に関しては民自党の諸君も大いに賛成してくださつた。これによりまして、遂にこの二項の削除については、ほとんど全会一致で認められたのであります。やがて今修正決議も出ると思いますが、こういう点につきましても、われわれは常に民族の独立、せめてわれわれ自信國会審議権の独立、ひいては國民の自主権の回復というこの一線をどこまでもわれわれがめらわなければならないというそ趣旨が、十分におわかりになると思うのであります。(拍手)  さてしかしながら、この修正の決議案なるものは、不幸にしてただ單に表向き、この條文からこの二項の汚辱的なるものを削除しただけでありまして、なおこの法案の実質に対して変更を加えるものではなかつた。われわれは、むしろこの形式と同時に、この法案の持つておりますその実質、これがすなわち日本の自主性を失わせる、少くもわが國の二十四年度予算案の、從つて國民経済の実際の運行の自主性を失わせるというこの重大なる一転について、さらに指摘せざるを得ないのであります。  大体この点につきまして、もはや詳しく述べる必要がないのでありますが、日本の経済再建に対しまして、この法案が実際に実施せられた場合におきましてどういう影響があるか、われわれの國民生活に対してどういう影響があるか、これがすなわち、われわれもこれから問題にしなければならない一点であります。(「運営はこつちにまかせたらいい」と呼ぶ者あり)諸君に運営をまかせた結果は一体どういうことになるか。今、それをこれから立証せんとするものであります。  まず第一に、この法案にありますところの会計の千七百五十億円というもののその一部分、特に二百七十億円というものは建設公債の引受けに使われるという、第二には、長期資金あるいは産業設備資金として使われるということであります。第三には國債の償環、この三つのそれぞれの役割というものが、実際にはどういう影響を國民経済に及ぼすか。建設公債の場合にあきまして注意しなければならないのは、これは事は日本國有鉄道ならびに國営でありますところの通信業務に関係しておるということであります。この二つの事業会計というものに新しく外貨が入つて來る。これによりまして、その運営というものの方向がどこに行くかということは、おのずからこれは察知せられるところではないでありましようか。  今までわれわれの國におきまして、この建設面において、特に國鉄並びに通信事業の面におきまして、こういう外資が入らなかつた、またこれを入れることはなかつたというこの歴史は、これは決してむだな歴史ではなかつたのであります。これはすなわち、事業の性質上どうしても日本民族の独立に関係しておる事業である。これはわが日本の産業の一つの動脈であり、一つは神経系統である。これをもしも外貨の導入によつて從つてまたその背後にあるところの外國資本の利益によつて左右せられることになるならば、この二百七十億の外資をただおめおめと受取つておくわけにはいかないのであります。  さて、それだけではなく、皆樣方は、大体千七百五十億円という見返勘定は、これはアメリカならアメリカからただでもらうのもであるというふうに考えたならば、これはたいへんな間違いである。私は委員会におきまして、しばしばこの点について大藏当局に確かめたのですが、各局それは、大藏委員会における答弁によりますれば、大藏大臣はただでもらうかのごとくに予想しておられる。將來において、講和会議の際には何とかなしくずしができるであろうというようなことまでも予想しておられる。しかしこれは‥‥。
  23. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 風早君に申し上げますが、時間がもうあと三分でありますから、結論をお急ぎ願います。
  24. 風早八十二

    ○風早八十二君(続) この建設公債の対象になつておりますところの鉄道事業並びに通信事業というものは、幾多の貴重なる固定施設から成り立つておるわけであります。  さて、この千七百五十億円が贈與であるかどうかという点につきましては、だれよりもかれよりも最も権威のありますところのマツカーサー元帥が、一昨年二月二十二日にあのアメリカのコングレスあてに送りました書簡の中ではつきりと言つておる。これは決して慈善をやつておるわけではない、これは結局先取特権として、われわれは場合によつては特定の物件に対してこれをとることもできるのだということを、はつきりと述べておるのであります。しからば、講和会議の際におきまして、日本の鉄道なり、あるいは通信事業なりが、その先取特権の対象にならないとは、だれも今から保証できないのであります。  第二には、この長期資金の問題であります。この点につきましては、今日まで私は、この資金の問題につきましてはたびたび述べたところでありますから、一應省きますが、要するに集中生産方式という物が今日までとられておる関係上、これは長期資金と申しましても、結局はきわめて一部の限られたる巨大な資本家の手にだけ資金が與えられるのでありまして多くの民族産業を初め中小の企業に対しては、決して資金は來るものではない。  さらに第三の國債償還におきましても同樣でありまして、これはもう露骨に金融機関の救済にすぎないのである。われわれは、こういう点を考えまして‥‥
  25. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 風早君、時間が参りましたから‥‥
  26. 風早八十二

    ○風早八十二君(続) どうしても本案に対しましては、法理的な面からも、また実質的な面からも絶対に反対せざるを得ないことを申し上げましてこの壇を降りたいと思います。(拍手
  27. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの風早君の発言中、すでに削除された字句に触れられたようでありますが、この点は速記録を取調べた上適当な処置を講じます。  次は宮幡君。     〔宮幡靖君登壇
  28. 宮幡靖

    ○宮幡靖君 ただいま議題となりました米國対日援助見返資金特別会計法案につきまして、民主自由党を代表して、委員会において修正可決せられました原案に賛成の意を表するものであります。その理由をきわめて簡單に申し上げます。  本特別会計の設定は、米國の対日援助の友好的実施を法定して、これを具体化したものでありまして、この特別会計の資金運営のいかんは日本経済自立に重大な影響をもたらすものでありますことは、多言を要しないところであります。まず本案を性格的に見ますれば、明らかに國際條約あるいは協定または協約に属すべきものでありまして、米國の一九四八年経済協力法、いわゆるマーシヤル援助計画に基づきまして米國から援助を受けている措置が含まれているものでありまして、本來ならば、欧州緒國の例に見るごとく、條約に基づく國内的措置法として立法すべきものでありますが、占領下にある現在としては、本法の形式をとることはまことにやむを得ざることと思料せられる次第であります。  御承知の通り、終戰以來継続せられている米國の対日援助は、アメリカ市民の税の犠牲によつて生み出されているものであります。從いまして、米國から対日援助資金が最大の効果を発揮できることを要求せられましても、これを否定しないわけには参りません。これが経済安定九原則を通じての勧告となつた次第であります。すでに申し上げるまでもなく、経済安定九原則の目標は、経済、財政、價格及び賃金の安定を実現し、輸出用生産を最大限に引上げる点に置かれておるものでありまして、その第一前提はインフレの高騰に終止符を打つことにあることは言をまたないところであります。すなわち、九原則の忠実な推進と本法の制定実施とによつて日本経済のインフレの根元を除きつつ、やがて日本の経済自立、独立達成への行進が期待せられるところであります。  次に、本法案を大藏委員会において審議した過程において、この援助資金は名目的のものであつて、いわば見せ金であると断定し、その断定のもとに種々なる論議が展開せられたのでありまして、その論旨に対しては必ずしも批判の限りでないと思考するものでありますが、米國の援助そのものは、日本が自力でやるべきことを米國市民が一時かわつてやることであつて、この援助資金を名目的見せ金に終らせるのも、これに実質的最大の効果を発揮せしむるのも、要は日本民族の経済自立へ精進せんとする熱意いかんにかかつておるものでありまして、軽々しく一党一派の政策や宣傳のためにこれを論断すべきものではないと確信する次第であります。(拍手)  さらに、この援助費は借款であるか贈與であるかの点について、現在これを明らかにすべきであるとの強い要求が数次にわたつて繰返されたのでありますが、かかる問題は、日本の現状に照らし、かつまた米國の好意ある援助の性格のかんがみまして、はたして日本人側から理論攻勢をなすべきものであるかないかは、本院議員各位並びに廣く國民大衆の判断に訴えればきわめて明快なる解答が與えられるものと信ずるのでありまして、從いまして、かかる議論をせられました御主張に対しては、遺憾ながら賛意を表しがたい次第であります。  今や経済安定九原則を忠実に履行する構想のもとに組み立てられた昭和二十四年度歳入歳出予算は本院を通過し、成立すべき段階にありまして、これを実施に移し、かつ援助資金をその目的に向かつて有効に活用せんがためには、必然的に國民全般にわたつて耐久生活が要請せられるわけでありまして、日本國民は一人々々容易ならない苦心を努力を要するところでありますが、かつて片山内閣成立当時「要請せられた希望なき耐久生活と異なり、前途に光明を望む希望ある耐久生活であることに深き思いをいたしまして、本法案の成立実施こそ日本経済自立への明確なスタートであることを確認し、日本國民の誠意と熱意とを傾け米國の好意にこたえるべきであると信ずる次第であります。すなわちわが民主自由党は、米國に対し滿腔の敬意と感謝をささげつつ、委員会において修正議決されました原案に対しまして挙党一致賛成の意を表する次第であります。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 田中織之進君。     〔田中織之進君登壇
  30. 田中織之進

    ○田中織之進君 私は、ただいま上程に相なつておりまする米國対日援助資金特別会計法案に対しまして、日本社会党を代表して三つの条件を付して賛成の意を表明せんとする物であります。  われわれは、米国を初めとする連合国の新しい日本建設のために與えられるところの援助に対しましては、心からこれに感謝の意を表するものであります。しかしながら、一たびこれが日本に入れられました以上、これが資金の運用につきましては、われわれは最高限度の自主性を確保するために全力をあげなければならないという点が條件の第一点であります。その意味におきまして、委員会の努力によりまして第四條の六項、七項が削除せられまして、ここに法文の上における自主性が認められたことは、まことに喜ばしいことであります。問題は、これが実質的な自主性をいかに資金運用の面において確保するかということであります。  最近ともすれば、わが國の自主性がとかく論議せられるような事態が発生いたしております。先般本院を通過いたしました昭和二十四年度予算編成にあたりましても、政府当局がつくりました原案が、総司令部より公然と指示せられました予算内示案に基づいて根本的に組みかえをしなければならなかつたというようなことも、われわれは目下占領下にありますために、当然連合國総司令部と日本政府とが緊密なる連絡をとつて進まなければならないことはもちろんでございますが、そうした努力が欠如しておるところに、ともすれば日本の自主性を疑わしめるがごとき結果が生まれて來ると信ずるのでありまして、今後この資金の運用にあたりまして、政府政府責任においてこれが眞に日本の建設のために使われるように、その自主性を確保するために努力しなければならないということが條件の第一であります。  第二の問題は、政府が予定しております本資金の運用の方向は、徹底的な金融資本擁護の立場で進められておるということであります。千七百五十億のうちで、すでに國有鉄道、通信事業の建設公債に二百七十億、また特別会計公債の引受け及び貸付金が二百七十億、政府出資金交付公債收入六百二十四億六千七百万円、その残りが経済再建のための資金に使われるということに相なつておるのでありますが、委員会の審議において政府当局が説明したところは、わずかにこの二百七十億の建設する公債の引受けだけが予定せられておる、かように申しておりますが、今申しましたように、すでに復金債の償還に充てるために六百二十四億六千七百万円というものが予定せられており、この二つを差引ますと、あとは一千億そこそこであります。しかも、この中からさらに公債償却に振り向けられるというようなことは、ともすれば金融機関の救済になるというわれわれの主張は当然であるとかんがえるのであります。  昨年末示された経済九原則にも、この特別会計のごとき蓄積資本は社会化されなければならないということを指摘しております。從つて本資金は、いわゆる日本経済再建五箇年計画の線に沿いまして、まず災害の復旧、土地改良、國土の保全並びに生産的な産業進行に使われなければならないのでありまして、このなけなしの資金をもつて公債の償却に大部分を使うというがごとき運用方法に対しましては、われわれは絶対に反対するものであります。公債の償却は、今日の状態のもとにおいてはこれを延期いたしまして、利子の補給程度に止める。ことに軍事公債の利子が今日なお支拂われておりますが、われわれは軍事公債の利子のごときは本資金から絶対に支拂われるべきでないということを主張するものであります。ことに、この資金の大きな部分がいわゆる食糧輸入関係から出て参りまするならば、当然國内食糧自給態勢の確率、日本経済の自立の基礎といたしましての農業生産の確保のために、土地改良、災害復旧等々の方面にこの資金が全部的に活用されなければならないということをわれわれは主張するものであります。  第三の條件は、この資金の運用が法規によりますと大藏大臣の官吏に属し、安本に運用委員会がつくられるということでありますが、大藏省や安本の官僚によつてこの資金が運用せられることには、われわれは反対であります。この点につきましては、当然蓄積資本の社会化という点から、経済的愛國主義という新造語が出るように、労働者農民に協力が要請せられておるのであります。從いまして、この資金の運用にあたりましては、私は当然組織労働者、組織農民、これを含め、さらに國会の代表を加えたところの眞に民主的な運用委員会を設置いたしまして、これが新日本の建設に役立つように使われなければならないという以上、三つの條件を付しまして、本案に対して賛成の意を表する者でございます。(拍手
  31. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  兩案を一括して採決いたします。日程第三、貿易特別会計法案委員長報告は可決であります。また日程第四、米國対日援助見返資金特別会計法案委員長報告は修正であります。兩案を委員長報告の通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  32. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて兩案は委員長報告の通り決しました。(拍手)      ————◇—————
  33. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 日程第五は提出者より委員会の審査省略の申し出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。  日程第五、米國対日援助見返資金運営に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を求めます。島村一郎君。     ———————————————     〔島村一郎君登壇
  35. 島村一郎

    ○島村一郎君 ただいま議題となりました米國対日援助見返資金運営に関する決議案の趣 旨を御説明申し上げます。  まず決議案を朗読いたします。    米國対日援助見返資金運営に関する決議   米國の特別の厚意により、わが國における通貨及び財政の安定、輸出の促進その他経済の再建に資せしめるため、米國対日援助見返資金を設置せんとする趣旨に鑑み、政府は右資金の運営に当り、次の條項を遵守しなければならない。  一 政府は、米國対日援助見返資金特別会計法第四條第一項の規定による運用若しくは使用又は同條第一項の規定による運用若しくは使用又は同條第五項の規定による國債の償却については、連合國最高司令官の承認を経なければならない。  二 政府は、右の承認を経て行つた運用、使用又は償却については、連合國最高司令官の監査を受け、また必要な報告を行わなければならない。   右決議する。  今回米國の特別の厚意により、わが國における通貨及び財政の安定、輸出の促進をはかり、わが國の経済再建に資せしめる目的をもつて米國対日援助見返資金を設置するため、先ほど同法案の修正可決を見たのであります。われら日本國民は、終戰以來の絶大なる援助に対し米國民に感謝しつつあることは申すまでもありません。この法案修正及びその修正理由に関しましては、先ほど委員長報告においても述べられました通りで、その修正は同法案第四條第六項、第七項を削除することであります。その修正理由は、同項の規定が本來日本政府と連合國最高司令官との関係を規定するものであり、かかる規定は、國内法として挿入することはむしろ適当とは称しがたいと考えられたからであります。すなわち、かかる規定を國内法として規定することは、前例も乏しいのみならず、連合國最高司令官に行政責任を轉嫁するごとき誤解を生ぜしめることとなり、かえつて米國日本占領政策に沿わない結果となるおそれがあるとともに、内閣の責任を不明確にする懸念があると考えられたからであります。  しかしながら、同項に記されたる事実は、同規定の存置すると否とにかかわらず、連合國軍の管理下にあり、また米國の援助を受けている現下の情勢において、まことに必然の事項であるのであります。大藏委員会におきましては、これらの事項を勘案し、かかる議論の紛淆を生じやすい規定を削除するとともに、これにかわるべき処置として、同規定に盛られたる事実を本院の決議として議決することが適当かつ必要と考えたのであります。よつて、大藏委員会に属する共産党を除く各派の委員は、共同提案としてこの決議案提出することといたしたのであります。  以上がこの決議案提出いたしました理由であります。何とぞこの趣旨に御賛同くだされ、満場一致御賛成あらんことを切望する次第であります。(拍手
  36. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案に賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  37. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  38. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) お諮りいたします。今回の会期は明後二十一日をもつて終了することになつておりますが、各常任委員長意見を聞き、さらに議院運営委員会にも諮つた上、参議院議長と協議の結果、來る二十二日より五月十六日まで二十五日間会期を延長したいと思います。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて会期は來る二十二日より五月十六日まで二十五日間延長するに決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十二分散会