○風早八十二君 私は、
日本共産党を代表して、今上程されました
米國対日援助見返
資金特別会計法案並びに貿易特別会計の二案に対して反対の
意見を述べるものであります。今、どうしても反対しなければならないその
理由を申し述べたいと思います。
まず、
米國対日援助見返
資金特別会計法案に対する
意見を述べたいと思います。大体この
法案の
趣旨は、新しく千七百五十億円という会計を設置するというにあるのでありますが、この千七百五十億というものはどこから出てくるのか、まずこれから問題があるのであります。これは決して天から降
つて來るものでもなければ、また地からわいて來るものでもなく、また外からもらうものでもないのであります。しかしながら
政府当局は、この千七百五十億円につきましては、これをまるで万能藥のごとくに、いろいろ二十四
年度予算案の困難な事情に対しまして常にこの千七百五十億の見返勘定を引合いに出しております。
たとえば、長期資金が今回の
予算では足りない、これは特に民自党の
諸君も大いに熱を入れられた点でありますが、この二十四
年度予算はと
かくデフレ的な傾向がある、そうして産業の建設面に金が出て來ないであろう、この金詰りに対して非常なる不安を感じておられる、これらの方面から、しばしば長期資金はどうするという
質問が
政府に対しても出てお
つたのであります。しかし、これに対して
政府は常に、これは大藏大臣にいたしましても安本長官にいたしましてもま
つたく同樣でありましたが、常に、いや千七百五十億円の見返勘定があるから何とかなるであろう、こういう、きわめてあいまいなる
答弁をや
つておりました。しかも、きわめてあいまいなる
答弁をや
つておりました。しかも、これがある程度ききまして、民自党の
諸君も結局は默
つてしまわれた。
また公共土木事業費は、今回ははなはだしく節減せられておりまして、これは全
國民が今
年度におきましては非常な難澁をしなければならない、たとえば災害防止費におきましても、あるいは六・三制の建設費におきましても、その他構成関係の建設費におきましても、さしずめ今度問題にな
つております國立病院などのいろいろな建設資金につきましても非常な金詰りである、これをどうしてくれるか、こういう
質問を
政府に出します場合に、これまた
政府は必ず、いや最後においては千七百五十億円があるから、これが何とか融通されないでもない、こういうような
答弁であ
つたのであります。
最後におきまして、いよいよ地方配付金の問題が、致命的な問題として各
委員会に出て参りました。このときにもまた、
予算委員会におきましても、あるいは地方行政
委員会におきましても同樣でありますが、この地方配付金の不足というものに対しては、やはり千七百五十億円で何とかなるであろうという、はかない望みを與えておる。そして、これによりまして
質問を封じて参
つたのであります。
さて、このようにして私は、最後の決といたしまして大藏大臣に聞いたのです。一体この千七百五十億というのは、今日
政府にと
つて、あるいはこの二十四
年度予算案にと
つて、それは打出の小づちであるのか。これに対しまして池田大藏大臣は、その通りでありますと認めたのであります。しかしながら、はたしてこれが打出の小づちであるかどうか。ここに根本の問題がある。これが打出の小づちであ
つて、これを打ちさえすれば何でも足りないものが出て來るというのであれば、これは問題ではない。しかしながら、この打出の小づちというものは、実は
内容のないものである。これは、今これから詳細に申し上げるところであります。
大体千七百五十億円というものは、最初にも申しましたように、天から降
つて來るものでなければ地からわいて來るものでもない。またこれは外から頂戴するものでもない。これは結局、われわれがわれわれの労働力をしぼり上げて生み出されなければならないものなんです。(
拍手)今、その千七百五十億のからくりを皆樣方に申し述べて、われわれがいかにしてこの
法律に反対しなければならないかということを論証したいと思うのであります。
千七百五十億円の新しい会計は、結局ひとりにできるものではなくして、貿易特別会計からそのままそつくりもら
つて來るものであります。しからば、貿易特別会計におきまして、この千七百五十億円というものはいかにして生み出されるか。問題は、ここにおきましてか貿易特別会計の事業勘定の分析に移るのであります。ところで、この事業勘定におきまして、その
歳入は何であるか、
歳出は何であるか、この点を明らかにしたいと思うのであります。
まず
歳入におきましては、輸入援助物資関係の
收入といたしまして千七百五十億円が見積られております。さらに輸入一般物資関係といたしまして千三百八十五億円というものが見積られております。合計して三千百三十五億円というものが
歳入であります。これに対して
歳出はどうであるか。もちろん第一には、その
米國対日援助見返資金特別会計に繰入れるべき千七百五十億円、これが第一であります。さらに輸出向きの物資に対する賃上げ代金の支拂い、こういうものが千八百八十六億円あるのであります。この二つを合せますと三千六百三十六億円になります。これがすなわち
歳出になります。そうして見ますと、この三千六百三十六億円から三千百三十五億円を引いた残りの五百一億円というものは、黒字ではなくて実に赤字になる。この貿易を実際にやり、それから物を生み出してこれを買
つたり賣
つたりして、差引きするところは五百一億円の赤字を何とかしなければ千七百五十億円というものは生まれない勘定になる。
しかるに、この千七百五十億円、及び一般物資の輸入の面におきましても補給金がいりますが、それらを合わせて八百三十三億円という輸入補給金を一般会計から
政府は出しております。しかもそれだけではなく、さらに一般会計から貿易会計に向か
つて四百億円という、またこれも
理由なしに一般会計からの繰入金を繰入れておるのであります。これらの八百三十三億円ならびに四百億円、しめて千三百三十三億円というものは、もうだれが何と申しましても、そのまま
國民の税金負担であります。
國民の税金から取上げて、これを補助金にしておる。この千二百三十三億円がなければ、千七百五十億円というものは出て來ないという勘定になるのであります。(
拍手)してみれば、千七百五十億円というものは外から與えられたものでもなく、どこから出て來るものでもない、結局はわれわれ
國民の税金負担として出て來るということがきわめて明瞭ではありませんか。(
拍手)
私は、この千七百五十億円というものは、もはや打出の小づちではなく、いわば張子のとらであると申したい。この張子のとらは、中身はからつぽであります。しかしながら、これをでんと置いておけば、張り子のとらの威力によりましていろいろなことができる。これはま
つたく空から有を生み出すという、きわめておもしろい手品ができるしろものでありまして、その張子のとらにこれが値しておる。しかしながら、その中身がない。その中身がある限りは
——これに内実があり、
内容がある限りは
國民の税金である。それ以外に何ものもない。こういうものを
使つて政府は今回の二十四
年度の全
予算を動かそう、あるいはまた足りないところもこれでみなまかなおうと言う。
議員諸君は、このインチキなるからくりを御承知になりますれば、今にしてあの二十四
年度予算案をうのみにされたことを、さぞかしほぞをかまれることであろうと私は信ずるのであります。(
拍手)
次に、この
米國対日援助見返
資金特別会計法案に対する反対
理由といたしまして、この資金の運営には、いささかも自主性がないという重大なる一転であります。(
拍手)御承知のように、この原案におきましては、その第四條第六項におきまして、この資金の運営あるいはまた使用につきましては連合軍
最高指令官の承認を経なければならないと、はつきり書いてある。いやしくも
國会におきまして、
憲法に第八十三條ないし八十
八條において認められておりますところのわれわれの
予算審議権、われわれの
國会の
審議権というものは一体どうなるのか。これがあらかじめ連合軍司令官の承認を得なければならない、しかもわれわれはこれを自由に討議しなければならない、もしもこの両者が食い違
つた場合に、これをどうするか。こういう困難なる條文をこの中に平氣ではさんでお
つたのであります。その
政府の
趣旨たるや、結局現在與党として多数を持
つておる、だからして、どんなむりなことでもできる、どんなむりなことでもやれるから、こういうふうなことがあ
つても、それは初めから何ら問題にならないであろう、これはもううのみにするだけであろう、
國民の
國会の
審議権などというものは初めから放棄してかかるだろう、こうい
つたような頭を
政府が持ちまして、平氣でこういう
法案を出してきた。さすがにこの点につきましては、民自党の
諸君の側からも猛烈なる疑義が起
つて來たのであります。
私は、大藏
委員会におきまする討議の若干を皆樣方にお知らせしたい。それは、私が今度の大藏
委員会の金議の経過におきまして、この條文の削除についきましては積極的なる主張を持ち、これは当然削除されるべきである、私は今まで長い間
法律学もやりましたが、
日本の法制史をずつとひもといてみても、かりに明治の初年におきまして、あの條約
改正に対して全
國民が熱中しておるとき、治外法権撤廃のために皆樣方の祖先であるところの自由民権の運動者が大いに闘
つておるとき、つまり
日本におきまして、まだ民族の独立が完全に達成せられておらなか
つたその際におきましても、この汚辱的なる條文は絶対になか
つたのであります。(
拍手)こういうものは、いまだか
つてなか
つたのであります。われわれは、戰後の民主主義のもとにおきまして、新しくこういう汚辱的なる條文を差入れて、これによりまして、われわれみずからがわれわれみずからの首をくくるような、
予算審議権を否定するような、そういうふらちなことはやりたくない、これはわれわれの祖先に対しても申訳ないことであり、またわれわれの子孫に対しても申訳ないことであるという
趣旨のことを、われわれはしばしば繰返し主張したのでありますが、幸いにして、この点に関しては民自党の
諸君も大いに
賛成してくださ
つた。これによりまして、遂にこの二項の削除については、ほとんど全会一致で認められたのであります。やがて今修正決議も出ると思いますが、こういう点につきましても、われわれは常に民族の独立、せめてわれわれ
自信の
國会の
審議権の独立、ひいては
國民の自主権の回復というこの一線をどこまでもわれわれがめらわなければならないとい
うその
趣旨が、十分におわかりになると思うのであります。(
拍手)
さてしかしながら、この修正の
決議案なるものは、不幸にしてただ單に表向き、この條文からこの二項の汚辱的なるものを削除しただけでありまして、なおこの
法案の実質に対して変更を加えるものではなか
つた。われわれは、むしろこの形式と同時に、この
法案の持
つておりますその実質、これがすなわち
日本の自主性を失わせる、少くもわが國の二十四
年度予算案の、
從つて國民経済の実際の運行の自主性を失わせるというこの重大なる一転について、さらに指摘せざるを得ないのであります。
大体この点につきまして、もはや詳しく述べる必要がないのでありますが、
日本の経済
再建に対しまして、この
法案が実際に実施せられた場合におきましてどういう影響があるか、われわれの
國民生活に対してどういう影響があるか、これがすなわち、われわれもこれから問題にしなければならない一点であります。(「運営はこつちにまかせたらいい」と呼ぶ者あり)
諸君に運営をまかせた結果は一体どういうことになるか。今、それをこれから立証せんとするものであります。
まず第一に、この
法案にありますところの会計の千七百五十億円というもののその一
部分、特に二百七十億円というものは建設公債の引受けに使われるという、第二には、長期資金あるいは産業設備資金として使われるということであります。第三には國債の償環、この三つのそれぞれの役割というものが、実際にはどういう影響を
國民経済に及ぼすか。建設公債の場合にあきまして注意しなければならないのは、これは事は
日本國有鉄道ならびに國営でありますところの通信業務に関係しておるということであります。この二つの事業会計というものに新しく外貨が入
つて來る。これによりまして、その運営というものの方向がどこに行くかということは、おのずからこれは察知せられるところではないでありましようか。
今までわれわれの國におきまして、この建設面において、特に國鉄並びに通信事業の面におきまして、こういう外資が入らなか
つた、またこれを入れることはなか
つたというこの歴史は、これは決してむだな歴史ではなか
つたのであります。これはすなわち、事業の性質上どうしても
日本民族の独立に関係しておる事業である。これはわが
日本の産業の
一つの動脈であり、
一つは神経系統である。これをもしも外貨の導入によ
つて、
從つてまたその背後にあるところの外國資本の利益によ
つて左右せられることになるならば、この二百七十億の外資をただおめおめと受取
つておくわけにはいかないのであります。
さて、それだけではなく、皆樣方は、大体千七百五十億円という見返勘定は、これはアメリカならアメリカからただでもらうのもであるというふうに考えたならば、これはたいへんな間違いである。私は
委員会におきまして、しばしばこの点について大藏当局に確かめたのですが、各局それは、大藏
委員会における
答弁によりますれば、大藏大臣はただでもらうかのごとくに予想しておられる。將來において、講和
会議の際には何とかなしくずしができるであろうというようなことまでも予想しておられる。しかしこれは‥‥。