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1949-04-04 第5回国会 衆議院 本会議 第11号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十四年四月四日(月曜日)
議事日程
第九号 午後一時
開議
一
國務大臣
の
演説
————————————— ●本日の
会議
に付した事件
吉田内閣総理大臣
の
施政方針
に関する
演説
青木國務大臣
の
経済
に関する
演説
池田大藏大臣
の
財政
に関する
演説
午後一時十四分
開議
幣原喜重郎
1
○
議長
(
幣原喜重郎
君) これより
会議
を開きます。 ————◇—————
幣原喜重郎
2
○
議長
(
幣原喜重郎
君)
内閣総理大臣
より
施政
の
方針
に関し、また
青木國務大臣
より
経済
に関し、
池田大藏大臣
より
財政
に関してそれぞれ発言を求められております。これを許します。
内閣総理大臣吉田茂
君。 〔
國務大臣吉田茂
君
登壇
〕
吉田茂
3
○
國務大臣
(
吉田茂
君) ここに現
内閣
の
施政
の
方針
に関して一言する
機会
を得ましたことは、私のまことに欣快とするところであります。 思うに、
國民
は今回の総選挙におきまして、
終戰以來
の苦しき経験にかんがみ、安定せる
政局
のもとに、わが國の
再建
を健全なる
保守政党
に託さんとして、われわれ
保守政党
を圧倒的に支持したものと考えるのであります。(
拍手
)ここに
政府
は着々所信を断行いたしまして、も
つて
國家
の
復興再建
を成就し、外は
連合國
の好意と
援助
にこたえ、内は
國民
の輿望と負託にこたえんとするものであります。(
拍手
) 十年間にわたる無謀なる
戰爭
による、名状し難い破壊と
混乱
の跡始末をなし、わが國の
復興再建
をはかるために、
挙國一致協力
、この痛ましき
現状
を直視して、
一大決心
と
覚悟
のもとに、敢然として
將來
の大計を立つべきときと考えるのであります。(
拍手
) 昨年十二月二十九日、
マツカーサー元帥
の私にあてた九
原則
を含む書簡及び最近におけるド
ツジ
氏
声明
は、すべて右の趣意に出でたものであります。私も、この線によるにあらずんば、わが國の
再建
はできがたしと
衷心
より信ずるものであります。 今回提出せんとする
予算
は、この九
原則
及びド
ツジ
氏の
声明
を了承いたしまして、
政府
の
責任
において——
政府
の
責任
においてこれを具体化したものであります。
政府
は、
幾多
の困難なる
事情
あるにかかわらず、まずも
つて
均衡予算
を作成し、眞の
自立再建
をはかる
決心
であります。(
拍手
)しかしながら、
敗戰後今日
に至る間、わが
経済
は非常に縮小し、わが財源は極端に枯渇し、重税に
國民
はいまだか
つて
見ざる苦痛を感じつつあるのであります。まことに憂慮にたえざる
事態
であります。ゆえに
政府
は、根本的に
行政財政等
の改革を断行し、
均衡予算案実施
の
途上
においても
税制
及び
徴税方法
の
改善
をはかり、他面、
歳出
の面におきましても、さらに現実に
節約
を期し、でき得る限り
國有財産
を処分し、その実績を得るに
從つて臨時國会
を召集し、
予算
の補正、
國民
の
負担軽減
をはからんとするものであります。(
拍手
) 眞の安定と進歩とは、
國家
的諸問題を健全なる
財政通貨
の
政策
により処理することに立脚しなければならないのであります。有効な安定をもたらすためには、
財政政策
の
基本的手段
たる
政府予算
とすべての
政策決定
とを関連せしむることが必要なのであります。過去において
インフレーション
を激化せしめたものは、主として
政府
であります。今日の
段階
においてこれを終熄せしめなければ、
國家経済
の破滅を來すほかないのであります。
補給金
、
投資
その他
一般費目
から
支出
を削ることは、
政府
にと
つて
はなはだ困難なことでありまするが、これは必ず実行しなければならないのであります。 また、わが國の
現状
を見まするに、
日本
の
生産指数
は、
米國
の
援助資金
の大幅な
累進的増加
によりまして
上昇
しており、
輸入超過額
も
増加
し、輸出入の不
均衡
は年々激増しつつあるのでありますが、わずかに
米國
の
援助資金
によ
つて
、つじつまを合せておるような次第であります。この
現状
は、
國家経済
上看過しがたきところであります。
経済
の終局的安定をはかり、徹底的に
インフレーション
を終熄せしめ、さらにゆたかなる
経済的発展
を
途げ
、
祖國
を
自立再建
するためには、
國民生活
にたとい一時容易ならざる
影響
があるといたしましても、
國民最大
多数の究極における幸福のために断じて行わねばならぬところであります。(
拍手
)でき得る限り早く光明のある未來を招來するためには、
手術
は早きを必要とし、
國家
をしてこの
手術
に耐えしむるためには、一に
國民諸君
の不動の
信念
と熱烈なる
愛國心
の
協力
にまたねばならないのであります。(
拍手
)
連合國
、特に
米國
の
日本
に対する深い理解と厖大なる
援助
はわれわれの
衷心感謝
にたえないところであります。しかしながら、われわれとして最も大切なることは、でき得るだけ早くこれらの
援助
なくして
自立
し、
祖國
を復興することであります。私は、
連合國
の
恩惠
のみに依存することなく、
國民
みずから強烈な
自主的精神
と、
耐乏生活
に徹した
努力
とによ
つて
、すみやかに
再建
を成就する
決心
を、八千万
國民
がこぞ
つて
固うせられることを切望してやまないのであります。(
拍手
)
英國國民
が非常なる
決心
のもとに
経済的自立
を目ざして
協力一致
の
態度
は、まことにも
つて
われわれが最も学ぶべきところと信ずるのであります。(
拍手
)私は、現
内閣
が今後遂行せんとする強力にして
責任
ある
政策
に対し、
國民諸君
が全幅の後援と鞭撻を與えられんことを切望してやまないのであります。(
拍手
) ここに一言いたしたいことは、近く
設定
を見る運びにな
つて
おります單一為替についてであります。單一
為替レート
は、申すまでもなく
貿易振興
、
外資導入
のため必要欠くべからざるものであります。現在の
日本経済
は、一應表面的には安定の
段階
に達したように見えまするが、その実は
自力
によるものでなく、
米國
の
援助
を支援によ
つて
支えられてある安定でありまして、内面に
幾多
の
不安定要素
を包含しておるのであります。また、たとい單一
為替レート
の
設定
を見ましても、健全なる
経済力
の
回復
がなければ、これを維持し得ることはできないのであります。また、
経済復興
に必要なる
外資
の
導入
も期しがたいのであります。なおその他
輸出産業
の
刷新
とか、
農業
の
振興改良
とか、
失業対策
、
災害対策
、文教の
刷新
、
科学技術
の
振興
、道義の
高揚等
、これことごとくみな重要な問題でありまするが、これらの
施策
については、順次
所管大臣
から説明があるはずであります。 なお、
海外
同
胞引揚げ
について、
外務大臣
として一言いたします。これまで約六百十余万の
引揚げ
を了しておりますが、いまだなお四十余万の同胞が嚴寒の地に四たび越冬を余儀なくせられておることは、まことに遺憾なことでありまして、その
親戚故旧
及び家族に対しては、まことに
同情
にたえないのであります。
連合軍司令部
も非常なる
同情
をも
つて
引揚げ完了
に盡力し、
相手國
との交渉に不断の
努力
を
拂つて
おらるる結果、
相手國
もわが國の
事情
は深くこれを了としておりますから、本年中には
引揚げ
を完了し得ると私は考えるのであります。(
拍手
) この
機会
に一言つけ加えまするが、近ごろ、わが國の
國際情勢
より來る
將來
の危險性に関連し、いろいろなうわさが生じておるのでありますが、これは大戰後常に生ずる
状態
でありまして、いずれの國も、今日
戰爭
の記憶は今なお新たなるものがあるのであり、いずれの國も、平和を欲する國はあれ、
戰爭
を欲する國はないのでありますから、
國民諸君
におかれても軽々しく
海外
の情報に迷わされることなきよう希望してやまないのであります。(
拍手
) また最近、学術、宗教、赤十字、労働、
通商等
の諸
会議
にわが國の招請せられるものようやく多く、また
通商使節
として
海外渡航
を許される者のだんだん多きに至
つて
おりますことは、まことに喜ぶべき現象であります。 また
國内事情
において、極右、極左というような言葉がよく使われるのでありまするが、これはためにするむのの言うところであ
つて
、現在
國民
の大多数は、安定せる
政局
のもとに
経済再建
を強力に
衷心
よりこいねが
つて
、その道に万進
協力
して行こうと
決心
しておる
國民
であることは、私は信じて疑わないのであります。(
拍手
)しかしながら、またあらゆる
手段
を弄して
祖國
の
再建
を妨害するものがあることは、(発言する者多し)これまた遺憾ながら明らかなる事実であります。少数でありましても、とに
かく
それの存在することは事実であることを認めなければならぬのであります。 〔発言する者多し〕
幣原喜重郎
4
○
議長
(
幣原喜重郎
君) 静粛に願います。
吉田茂
5
○
國務大臣
(
吉田茂
君)(続) これを要するに、このたび提出の
予算案
は、戰後のわが
政府
が当然実行しなければならなかつこととでありますのを、今日までゆるがせにしてお
つた
ものであります。(発言する者あり)
政府
は、
ポツダム宣言
及び九
原則
を含むその他の
管理政策
を
熱意
をも
つて
誠実に遵守履行し、
國民
はこぞ
つて経済的愛國心
により
自主経済
並びに
民主政治
を確立し、
世界列國
が一日も早く栄誉ある
國際社会
の
一員
としてわが國を迎え入れるに至らんことを、私は切に
國民諸君
とともに希望するものであります。(
拍手
) ここに
政府
の
施策大綱
と私の衷情とを披瀝し、あえて
國民諸君
の
協力
と
奮起
とを
衷心
より切望いたすものであります。(
拍手
)
幣原喜重郎
6
○
議長
(
幣原喜重郎
君)
國務大臣青木孝義
君。 〔
國務大臣青木孝義
君
登壇
〕
青木孝義
7
○
國務大臣
(
青木孝義
君)
終戰以來
五星霜、苦難の道をたど
つて
参りました
日本
の
経済
も、最近に至りまして、ようやく
生産
も比較的順調な上昇を來し、
インフレーション
は
緩慢化
し、
勤労者
の
実質賃金
も漸次向上するに至りまして、ここに
経済
安定へのきざしを示し始めて参りましたのであります。その
基礎
は、いまたいわゆる
竹馬経済たる
を免れないのでありますが、それには、もとよりこの間一面において
連合國側
の理解ある
援助
と指導とに負うところまことに大なるものがあるのでありますが、他面において、食糧の供出、石炭の
増産等経済
の各分野において拂われた全
國民
の
再建
への
努力
と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表するものであります。(
拍手
) しかしながら、今や
経済
九
原則
に從い、
健全財政
を樹立して
國家再建
の
基礎
を固むるにつきましては、わが
國経済
の実態を洞察いたしまして、そのうちに包藏している不健全な要素を的確に認識しなければならないと思います。 すなわち、まずその最大のものは、年間数億ドルに上る
外國援助
を受けている事実でありまして、わが
國経済
安定のきざしも、実は
米國
の市民と
企業
の
負担
による
援助
に支えられているものであることを忘れてはならないのであります。次にまた、
経済活動
のにない手たる
企業
においては、その
生産設備
は荒廃し、かつ老朽して、いわゆる
企業実態資本損耗
の傾向は著しく、
企業
の
経営
は多額の
價格調整費
の
支出
に依存し、
赤字金融
は累積する等その
健全性
と
自主性
とを著しく喪失するに至
つて
いるのであります。さらに、
河川災害
の累増、山林の
消耗等國土
の荒廃、
國富
の食いつぶしの傾向もまた憂うべきものがあるのでありまして、インフレーシヨンの
緩慢化
と
生産水準
の上昇の背後には、まことに憂慮すべき実態が隠されていることを、指摘せざるを得ないのであります。換言すれば、
米國
の
援助
と
補助金政策
とによ
つて衰乏経済
の上に実力以上の
経済運営
が行われているというのが
日本経済
の
現状
であると申さなければなりません。このまま推移して行くならば、脆弱な
経済基盤
の上に不安定なる
経済繁栄
を築く結果となるのおそれがあるのでありまして、今後の
経済施策
の根本は
経済
の眞の安定から再出発すべきであることを痛感する次第であります。 昨年十二月、
連合國最高司令部
から発せられた
経済
九
原則
の指令も、まさにこの趣旨を明確にしたものでありまして、
連合國
の対
日政策
が今や
日本経済
の安定と
自立
とを要求する段階に到達したことを物語るものであります。
從つて
、九
原則
のねらいとするところは、將來における
経済
の
自立
を目標として、当面何よりも
経済
安定を目途とする
施策
を強力に
実施
し、
経済性
に徹した合理的な
経済運営
を期すべしとするにあります。これがため、單一
為替レート
設定
の準備として九項目の
施策
を
実施
すべきことを内容としているのであります。 思うに、
経済自立
の
基礎
となるべき健全な
経済力
の回復は、
経済
の安定なくしては期待され得ないのであります。
從つて
、強力な
インフレ対策
の
実施
を遷延すればするほど現在の不健全な状態をさらに長く続けることとなるのでありまして、かくては、たとい
為替レート
を
設定
しても、これを維持することは困難となり、
國民経済
にかえ
つて
有害な
影響
を及ぼすものでありましようし、また待望の
民間外國投資
も、
経済
の安定なくしてはその
本格的導入
を期待し得べくもないのであります。 私は、かかる情勢のもとにおいては、九
原則指令
の線に沿い、耐えがたきを忍んで、
経済自立
のための
第一歩
である
経済
の安定を万難を排して達成するにあらずんば、わが國の
再建
は期しがたいと
衷心
より信じておるものであります。(
拍手
)
政府
といたしましても、かかる信念のもとに、
企業
に対しては強力な
合理化施策
を強く要求するとともに、
國民生活
に対してもあえて一段の耐乏を要請することとし、諸般の
経済施策
を強力に推進して行く
方針
であります。 かかる
方針
のもとに、
政府
はまず二十四年度
予算
の編成に当面いたしたのでありますが、その内容の詳細につきましては
大藏大臣
の
演説
に譲ることといたしまして、ここには、その基本的な構想と総合的な
経済施策
との関連につき、簡單に申し述べたいと存じます。 まず、
経済
安定九
原則
に掲げられた
総合予算
の眞の
均衡
ということでありますが、その趣旨とするところは、
財政方面
から來る
インフレ要因
の徹底的な排除ということにあるのでありまして、そのためには、
一般会計
、
特別会計
はもちろん、その他の
政府関係
諸機関の
收支一切
を
予算
に網羅し、この
收支全体
にわた
つて
実質的な
均衡
を
確保
することがまず必要となるのであります。しかしながら、
均衡予算
の編成にあた
つて
は、あらゆる
経済的要求
がことごとくこの面に現われて來る結果、その間の調整は
政府
の最も苦心いたしておるところであります。 すなわち、まず歳出につきましては、まことに切実な
公共事業費
の要求に対しても、あえてこれを削減せざるを得なかつたのみならず、
行政整理
の断行、
特別会計
の
経常合理化
の強行、その他あらゆる
経費節減
を強行いたしまして、さらにまた、
物價安定
のための
價格調整費
についてもその
支出範囲
を縮小し、
支出單價
に思い切
つた削減
を加えて
企業
に極度の
合理化
を要求するとともに、同じく、
輸入補給金
についても、
企業経理
と
國民生計費
の耐え得る極限まで、できる限り
圧縮節約
をはかつたのであります。 他面歳入につきましては、
実質的均衡財政実現
のためには
租税收入
の
増加
と
確保
にまつほかなく、
政府
といたしましても、
現行税制
のもとに、もつ
ぱら税收
の
確保
に万全の
努力
をいたす覚悟であります。現在
國民
の
租税負担
の決して軽いものでないことは、もとより
政府
の十分承知しているところでありまして、
均衡予算実施途上
においても
徴税方法
の改善をはかり、
負担
の
公平化
について一段と
努力
を拂う
所存
でありまするとともに、
予算
に計上せられた経費につきましても、
実施
上さらにその削減に努め、
國有財産
の処分を行う等
國民負担
の軽減に資する
所存
でありますが、
國民各位
におかれましても、わが
國経済
の
自立
のために拂わなければならない
負担
として、この税收の
確保
に進んで
協力
くだされんことをお願いする次第であります(
拍手
) 次に
米國
の
援助資金
についてでありますが、從來その使途について明確を欠いていた結果、
せつかく
の好意ある
援助
も、その本來の趣旨に沿いがたいうらみがあつたのでありまして、
政府
はこの際、これを円價として明確に
予算
化することによ
つて
最も効果的な運営を期したいと存ずるのであります。すなわち、今後この
援助資金
は、これを
米國
対
日援助見返り資金特別会計
に繰入れて、
経済復興
の
資金
や
國債
の
買上げ等
最も有効適切な方途に使用することにいたしたいと存ずる次第であります。(
拍手
) 次に
金融
の問題についてでありますが、
健全金融方策
の確立とその徹底的な途行を期すべきことを、ここにあらためて宣明したいのであります。すなわち、
資金
の給源は
蓄積資金
の範囲内でまかなう
原則
のもとに、
國民
に対しては、極力その消費を節約して貯蓄の増強に努めるよう
協力
を要望するとともに、
企業
に対しては、
企業
三
原則
のわく内において、みずからの
生産努力
と
資本蓄積
とにより所要の
資金
を調達すべきことを要請せられるのであります。さらに
政府
といたしましても、今回の
予算編成
にあた
つて
は
財政
の
負担
すべきものは率直にこれを
財政
の
負担
とすることによ
つて
、ややもすれば
財政
の
負担
を
金融
に轉嫁するがごとき從來の行き方を嚴に是正する態度を明白にいたした次第であります。 かくして、
財政
及び
金融
の両面を通じて
インフレ要因
の
徹底的除去
を期したのでありますが、他面、
生産活動
の維持、
経済復興
のため眞に必要な
資金
については、かような
健全金融
の
方針
のもとにおいて、その調達に遺憾なきを期さなければならぬことは申すまでもないところでありまして、これを
資金
の
供給面
について見ますならば、幸いに
米國
の
援助資金
の
相当部分
を
建設資金
及び
復興資金
の使途に充て、さらに
國債
、
復金債等
の償還を通じて
産業資金
に充てることになりましたので、当面二十四年度の
産業資金
は、
運轉資金
においても、
設備資金
においても、計算上その額としては必ずしも
事業活動
を著しく阻害するがごときものではないと考えられるのであります。(
拍手
)しかしながら、今後
復興金融金庫
の
事業
が縮小せられ、
市中金融機関
の任務が
國債
、
復金債等
の償還による
手元資金
の
増加
とも相ま
つて
ますます尊
重要性
を加えて参りますにかんがみまして、
國民経済
上の
見地
から
所要資金
を所要の
事業
に
確保
するためには、
金融機関
の自主的な
協力
を得ることが絶対の要請とな
つて
來る次第であります。さらに
政府
といたしましても、今後の事態の推移ともにらみ合せまして、必要な
資金
の規制についでは実情に即した措置を講じたい
所存
でありますとともに、
企業
の
自己資本調達
を極力促進する
見地
から、
証券市場
の健全な発達を期するほか、從來の資本の食いつぶしを防止するため、
減債償却
の
合理的実施
を可能ならしめるための
施策
を檢討いたしておる次第であります。 次に、現段階における
物價改策
についてでありますが、その重点は、前述のごとき
財政金融
の強い
健全化方策
に対應いたしまして
物價
の低位安定を期するにありまして、さらに
單一レート
の
設定
を契機とする
國際経済
への参加を目捷の間に控えて
國内物價
の
國際物價
への
さや寄せ
をはかるにあるのでありまして、これを起点として
均衡
ある
経済
の安定を進めて参る
所存
であります。すなわち、昨年六月に発足しました
現行價格体系
は、その後の
経済條件
の変化によりまして若干のひずみを生じ、このため
経済
の合理的な運行が阻害される面も見受けられますので、これが調整は必要に應じて行う
方針
ではありますが、全体としての
價格水準
の
引上げ
は、この際避ける
方針
であります。時に
貨物運賃
、
安定帶物資價格
はこれをすえ置くことといたしまして、これに対應して、
操業條件
の好轉している
消費財
につきましては、その
價格引下げ
をも考慮し、家計の安定と
價格バランス
の
確保
に資したい
所存
であります。 しかして、この
物價
の低位安定をはかりますために、今回の
予算編成
に際しましても相当多額の
價格調整補給金
を用意しているのでありますが、本來かかる
補給金制度
は、
経済
の
合理性
と
企業
の
自立性
の要請の
見地
からは必ずしも好ましからぬものであります。しかしながら、
日本経済
の脆弱なる
現状
において、一挙にその解決をはかろうとすることは、かえ
つて
いたずらなる混乱を惹起するおそれもあり、この際この程度の
補給金
の計上はまことにやむを得なかつた次第であります。しかしながら、この
補給金
の
支出
に際しましては、
補給金單價
の
切下げ
を行いますとともに、今後の
企業努力
及び
企業合理化促進措置
の強行によりましてこれが節約をはかり、いやしくも不合理な
経営
に対し漫然これが支柱となるような
補給金
の使い方は絶対に避ける
方針
であります。(
拍手
)さらに
國内價格
の
國際價格
への
さや寄せ
及び
為替要因
からの
國内價格
との
影響調整
の問題につきましては、まず久しく
國際経済
から隔離されたわが國の
孤立物價体系
から
國際價格体系
の一環としての合理的かつ自然な
價格体系
へ移行することが、今後の
日本経済
の正常な発展のために強く要請せられるところであります。(
拍手
)換言いたしますれば、
日本経済
が
國際経済
の一員として
自立
の道を開いて行くためには、まず
國際價格体系
の中におのずから融和するごとく
経済的努力
を進めることが当面重要なる課題であると信ずるのであります。しかしながら、他面
單一レート
の
設定
と
國際價格
への
さや寄せ
により
企業
、
家計等
にあまり急激なる
影響
を與えることもまた
物價安定
の
見地
からはあとう限り避くべきものでありますので、
政府
におきましては、さしあたり過渡的な方策として
輸入補給金
によるその
緩和策
をとつたのでありますが、この
輸入補給金
の
支出
に際しましても、
生産費切下げ
の
努力
によりこれが節減に努めて参る
方針
であります。 以上申し述べました低位安定を目途とする
物價政策
にもかかわらず、
農業パリテイー指数
の上昇に伴い近く主食の
消費者價格
を若干
引上げ
る見込みであり、また
特別会計
の
独立採算制堅持
のため、
旅客運賃
、
通信料金
についてもある程度の
引上げ
が不可避であります。なおまた
輸入物資
に対する
補給金
が若干廃止される結果、ひいては
消費物資
についても多少の
價格改訂
を余儀なくせられますが、
國民経済自立
のためには消費を節約して蓄積を行わざるを得ず、しかも、國も
企業
も家計もすべてが節約耐乏する以外に自力による
日本経済
の
再建
は期しがたいのでありまして、
國民諸君
におかれては、この際耐えがたきを忍んで
耐乏生活
を克服せられるよう、念願する次第であります。(
拍手
)
日本経済
の眞の安定を期するための根本的な方策が
生産
の
確保増強
をはかるにあることは、あらためて申すまでもないところでありまして、これがため
政府
は、まず全
企業
、全
勤労者
の奮起を要望するのでありますが、かかる
生産
の
増加
も、合理的な
経済運営
の基盤の上に立
つて
こそ初めて力強い
経済発展
の
基礎
たり得るものと信ずるのであります。この
見地
から
政府
は、さきに
企業
三
原則
の
方針
を明示し、今回重ねて九
原則
の線に沿う
施策
を講じて、
企業
の
合理化
を強力に推進し、
合理化
された基盤の上に健全な
民間外資
の導入を期待せんとするものであります。 これをまず
價格
の面から見ますならば、第一に石炭、
電力等
の
基幹産業
については現在の
價格
をすえ置き、その範囲内において
收支相償
う
合理的経営
を行い、所期の
生産要請
を充足すべきことの要求であります。從來これらの産業にあ
つて
は、
生産
第一主義のやむを得ざる要請から、ややもすれは
補給金
、
赤字融資等政府援助
に依存する傾向が強く、その
経営
に幾多の不合理かつ不健全な要素を内包しつつ今日に
至つたの
でありますが、今後はまず
経営
の
合理化
を強行して確固たる
経済的経営
を行い得る
基礎
を確立し、所期の増産を正常な
経済的基盤
の上に遂行せしめることこそ、
日本経済
の
自立
と
健全化
の
第一歩
をなすものでありまして、これにはまず
企業
三
原則
の線を強く貫徹しなければならぬのであります。この結果行われる
合理化
は相当熾烈なものがあると予想されるのでありますが、
経済
の安定と
自立達成
のためには、かかる
基幹産業
が正常な
経済的運営
に立ち直ることが急務であると信ずる次第であります。(
拍手
) しかして、石炭、
電力等
の
基礎資材
の
價格
が、すえ置かれることと対照いたしますと、來年度において
操業度
の上昇が期待される
製造工業
については、相当
経営
上の余裕が生ずるものと認められますので、前に申し述べましたごとき
物價政策
に対應しまして、これに対しては、
企業合理化
の
見地
から、
輸入補給金
の廃止に伴う
輸入原材料
の値上りを吸收せしめるほか、
價格調整補給金單價
の削減、
公定價格引下げ等
の
可能性
につき実情に應じた檢討を加えまして、
物價
の安定、コストの引下げによる
企業合理化
の推進に資して参りたいと存じております。ことに
輸出産業
については、熾烈なる
國際競爭場裡
に立ち向うべき
合理化
が当面火急の問題として要求せられるのでありまして、
政府
といたしましても、
為替レート
設定
への一段階として、さしあたり四月一日から輸出の
價格
比率を四百二十五円で打切るとともに、
為替レート
実施
の際には、輸出補助金はこれを全廃する
方針
のもとに、
企業
の
合理化
を強力に推進して行く
方針
であります。 次に、
資金
の供給の面から
企業
の
経営
に及ぼす
影響
としての対策について一言いたします。前述のごとき強固なる
均衡
財政
、
健全金融
方針
の確立の結果、
産業資金
は主として
蓄積資金
の範囲内でまかなわざるを得ざることとなるのであります。
從つて
企業
に対しては、
企業
三
原則
の建前からも赤字融資を行わざるはもちろんのこと、
健全金融
の
方針
のもとに圧縮された一定の
資金
のわく内で所要の増産と建設とを行うよう強く要請されることとなるのでありますゆえ、
企業
は何よりもまず
生産
費の
切下げ
による
合理化
の力強い遂行を要求せらるるのでありますが、
政府
といたしましても、これに應ずる
資金
確保
の対策を講ずる
所存
であります。 以上、
企業
一般に対する
施策
とそのあり方を示したのでありますが、かかる
施策
遂行が特に中小
企業
に及ぼす
影響
については、
政府
といたしましても重大なる関心を抱いている次第であります。すなわち、中小
企業
が
日本経済
の発展に果すべき特殊の役割を自覚して
経営
の改善、
合理化
を推進し、前述いたしましたごとき
経済
九
原則
の趣旨に沿う
努力
を盡されるならば、
政府
は必ずや中小
企業
がその窮境を打開して
日本経済
に確固たる地歩を占めることを信ずるとともに、この線に沿う育成に努めたい
所存
であります。(
拍手
) 以上
経済
安定の基本方策を強力に遂行する結果、今後における
実質賃金
の上昇は、労資一体の
企業努力
による
生産
の
増加
にまつ以外にはないのであります。(
拍手
)言うまでもなく、
政府
におきましても、
日本経済
再建
のために、そのにない手たる
勤労者
の生活安定が必要であるとの認識のもとにおきまして、流通秩序の確立、生活必需物資の
確保
につきましては一段と強力に
努力
を傾ける
所存
であります。(
拍手
)從來赤字融資、國庫
補給金
の
支出
、
價格
の
引上げ
により甘やかされた
経済
がそのまま推移すれば、その結果はインフレーシヨンの進行を激化せしめ、
日本経済
の
自立
と安定は百年河清を待つに等しく、
勤労者
の生活は不断に脅かされ、かくしては
勤労者
の眞の利益たり得ないと信じまして、(
拍手
)ここに
政府
は、断固として、口に苦き良藥の
施策
を案施せんと決意しておる次第であります。
企業
及び
勤労者
各位におかれては、この試練と耐乏と勤儉力行の実践を経てこそ
日本経済
の
再建
と生活水準の向上が期待せられるものであることを理解せられ、
政府
の微衷の存するところに御
協力
を願いたいと存じます。(
拍手
) なお
政府
におきましては、かくのごとき
施策
強行により不幸にして生ずることあるべき失業者の発生に対しましては、今後発展して行く産業、ことに
輸出産業
部門及び
援助資金
の活用による新投資
事業
等に吸收いたしますとともに、失業保險等の円滑なる運用と充実につきましても、國力の許す限り
努力
して参る決意をいたしております。(
拍手
) 今や
日本経済
の重大なる岐路に立ち、
政府
は健全なる労働組合の発展を希求するとともに、
勤労者
諸君の自覚と
努力
に多大の期待を寄せている次第であります。(
拍手
) 翻
つて
農業の面を見ますれば、その
生産
を増強することが
経済
安定の基盤を確立し、食糧の輸入を減少する
見地
からも現下の
日本経済
にと
つて
根本的な
重要性
を持
つて
いる事実にかんがみまして、この際農民諸君の食糧増産への一層の
努力
を要請する次第であります。(
拍手
)
終戰以來
の未曽有の食糧危機を切り抜けて参りましたのも主として農民諸君の
努力
に負うところが多く、まことに感謝にたえないところでありますが、
政府
はさらに供出制度の効率化と
公平化
とをはかるための
施策
を講ずることとし、すでに
実施
しました昭和二十四年産主要食糧の事前割当による
生産
と供出の完遂を期するとともに、それ以上の増産と供出とを期待することとした次第であります。
政府
といたしましては、農業
生産
力の増強に欠くべからざる土地改良等
生産
條件の改善につきましては、國力の許す限りその促進につき今後の
努力
を期するとともに、前述のごとき
物價
水準維持により、農家の
経営
と家計への
影響
を極力阻止し、肥料その他再
生産
資材を可能な限り
確保
する措置を講じ、また米麦等の
價格
については、昨年における
價格
決定後の農家パリテイーの上昇分についても追拂いをする等、農業再
生産
確保
の
見地
から所要の措置をとる
方針
であります。しかしながら、農民諸君もまたいたずらに
政府
の
施策
にのみ頼ることなく、消費を節約し、農民みずからの手で、みずからの組織によ
つて
資本を農業内部に蓄積し、これを
生産
的投資に振向けて將來の農業
生産
の維持発展への萌芽を育成して行かなくてはならぬと考えるのであります。(
拍手
) 次に輸出振興対策について申し述べます。以上主として國内
経済
の安定
施策
について申し述べて來たのでありまするが、
日本経済
の
現状
、特に貧困なる風土資源のもとに過剰なる八千万の人口を擁し、
米國
からの巨額の
援助資金
及び物資によ
つて
辛うじて現在の
生産水準
及び生活水準を保ち得ている
現状
にかんがみまして、
日本経済
の
自立
と復興を期しますためには、輸出の振興とこれによる
経済
循環の拡大をはかることが刻下最大の喫緊事であります。竹馬
経済
の汚名を拂拭し、自力による
経済
の
再建
をはかりますためには、國内需要はできるだけ節約し、コストの引下げに
努力
し、輸出の伸展、貿易外收入の増大を期しますため、
政府
におきましては輸出最優先
原則
を確立し、輸出用資材の優先
確保
をはかりますとともに、貿易
金融
の円滑化等に
努力
を拂ひつつある次第であります。(
拍手
)なお貿易手続の簡素化を行い、民間貿易の拡大をはかり、正常貿易の復帰に努めておりますとともに、輸出市場の積極的開拓及び貿易條件の改善等対外的関係の調整を懇請している次第であります。
政府
におきましては、以上のごとき輸出最重点
方針
を採用し、これがためには、あらゆる
努力
を傾注いたす
所存
ではありまするが、
單一レート
の
設定
に際しまして、輸出補助金の交付による輸出助成措置は國際的にも許容せられないところであり、
從つて
、
日本経済
が激烈なる世界
経済
の競爭場裡に伍してその地歩を
確保
するためには、峻嚴なる
企業合理化
の推進、
科学技術
の振興による技術水準の向上に努めることが絶対の要請とな
つて
参つたわけであります。
輸出産業
関係業界の特段の
努力
を強調する次第であります。 以上申し述べましたことく、
企業
の
合理化
と閥民生活の耐乏とを要請する
施策
が強力に
実施
せられます結果、購買力は一般に相当圧縮され、有効需要の減退が予想されるとともに、物資の需給状況も漸次改善されつつある状況にかんがみまして、この際物資の割当配給、
價格
統制等物の面からの
経済
統制は極力これを簡素化し、縮減された領域に対しては実効ある取締りを行い、流通秩序の確立に資する
所存
であります。(
拍手
)しかして、前述のごとき
企業合理化
の推進にあたりましては、何よりも
企業
の
自主性
と
経済性
を回復せしめる
施策
が要講せられるのでありまして、この面から、ややもすればいたずらに煩瑣に堕するがごとき統制はこれを撤廃いたしますとともに、(
拍手
)必要なる統制の
実施
にあた
つて
は、競爭原理の導入を目途とする強力性ある方策をくふうして参りたいと存ずる次第であります。今般配給公團制度を整理し、指定
生産
資材の品目を減少せんとし、蔬菜類の配給統制を撤廃いたしましたのも、以上のごとき
見地
に基くものでありまして、また懸案の料飲店問題につきましても、実情に應じた再開措置が講ぜられる予定であります。(
拍手
) 以上、
経済
安定九
原則
の趣旨にのつとり、まず國内
経済
の安定措置を断行し、この
経済
の安定の基盤の上に輸出の振興をはかり、
日本経済
復興の萌芽をつちか
つて
参りましたならば、
為替レート
の
設定
も早期に実現し、これを堅持する見通しのもとに内外の信用を得て、
民間外資
の導入も促進せられ、雇用機会は増大し、生活水準は向上し、
日本経済
の
自立
は達成せられるであろうことを確信いたすものであります。かくてこそ初めて
國際社会
の友誼的な一員として認められ、独立と平和への道は開かれるものと信ずるものであります。(
拍手
)
幣原喜重郎
8
○
議長
(
幣原喜重郎
君)
大藏大臣
池田勇人君。 〔
國務大臣
池田勇人君
登壇
〕
池田勇人
9
○
國務大臣
(池田勇人君) わが
國民経済
は、敗戰による國土の荒廃、
生産
規模の縮小に加えて、
財政
に基因するインフレーシヨンの結果極度の
混乱
に陥り、今日まで
連合國
の
援助
により辛うじて
國民生活
を維持して参
つた
のであります。 〔
議長
退席、副
議長
着席〕 すなわち、これを
財政
について見ますれば、
一般会計
予算
は
從來
も一應の收支
均衡
を得てお
つた
のでありますが、各
特別会計
及び
復興金融金庫
等を含む
政府
もろもろの
機関
を通て見た場合におきましては、公債及び借入金は年々
増加
いたしまして、巨額に上る復金
資金
の大部分は
日本
銀行の引受けによ
つて
まかなわれ、通貨増発の主因とな
つて
來たのでありまして、今昭和二十三年中の実績を見ましても、千三百億円を越える通貨増発高のうち八割以上が
財政
に起因するものであ
つた
のであります。このような
状態
を一変するのでなければ、
財政
は
將來
長くインフレーシヨンの根源となり、眞の通貨の安定は百年河清を待つにひとしいものであります。 他方、
生産
の復興状況は、最近表面的には好調をたど
つて
おりまするが、その実体は毎年数億ドルに上るアメリカからの
援助
のたまものでありまして、わが
國民経済
自身の力によるものではなく、むしろいたずらに
生産
の復興を焦慮するの余り
資金
の濫費を招き、インフレーシヨンを高進せしめるとともに、他方、不自然かつ煩瑣なる統制によりいわば温室
経済
的な保護に堕しまして、
企業
の
自立
心を失わしめ、
國民経済
は年とともに
國際経済
の圏外に取残されるに
至つたの
であります。 こうした
状態
を継続することは、もはや許されません。昨年末
マツカーサー元帥
が述べられたように、
経済
的に眞の
自立
がないところには、永遠に政治の自由と独立とは期待し得ないのであります。また、表面的な
生産
上昇
に目を奪われ、ともすれば健全な
生産
の
基礎
と
資本
の
蓄積
とをおろそかにする結果は、わが國の
企業
を弱体化し、
將來
各國
企業
との自由競爭場裡に立ち得ないものとするおそれが多く、わが國百年の大計として、とり得ないところであります。(
拍手
) 以上の観点に立
つて
、わが党
内閣
は、今回の
予算案
を
編成
するにあたり、
從來
の一時を糊塗するがごとき
方針
を一擲したのであります。 すなわち第一に、
一般会計
、
特別会計
並びに
政府関係
諸
機関
を通じて眞に総合的に
予算
の
均衡
をはかり、インフレーシヨンをこれ以上進行させないよう断然これを抑制せんとするものであります。(
拍手
) 第二に、非
経済
的な放漫なる
生産
第一主義から轉じて、健全にして効率的なる
生産
の
基礎
と
資本
の
蓄積
とを長期にわた
つて
築き上げるため、
國民
の
耐乏
と
節約
とによる各般の
施策
を講ずるとともに、
米國
からの
援助
はこれを明確に区分して、
経済復興
のため最も効率的な活用をはかることといたしたのであります。 第三に、輸出補助金を廃止する等の
措置
によ
つて
、わが國内
経済
が、除々にではあ
つて
も
國際経済
への参加に向
つて
一歩々々着実に前進することを
目途
としたのであります。 次に、ただいまの三大目的が今回の
予算
にいかに具体的に表現せられたかについて御説明いたします。 第一に、
財政
インフレーシヨンを排除するため、すべての
政府
支出
を收入に
均衡
せしめるのはもちろん、進んで既存の債務の減少をはか
つた
のであります。このため、
経費
のすべてについて極力圧縮に努め、新規
事業
をとりやめることはもとより、規定の
経費
についても、眞に緊急やむを得ないもののほかはこれを
削減
し、しかもこれら
歳出
は、すべて租税を大宗とする実質的な國庫收入をも
つて
まかなうことといたしました。 次に、
予算
の実行にあた
つて
は
支出
を極力
節約
せんとする
所存
であります。すなわち
從來
は、
歳出
予算
に計上された金額は当然全額を使用すべきものと考えて、その合理的な
節約
について十分な配慮が欠けていたきらいがあるのでありますが、今回は、この
予算
に計上せられた金額といえども、その使用にあた
つて
嚴重な審査を励行し、年度末にできる限り
多額
の剰余を残し、も
つて
國民
の
租税負担
の
軽減
に資したいと考えるのであります。(
拍手
) 第三に、
政府
みずから
節約
の範を示すため徹底的な
行政整理
を断行いたします。思うに、行政機構が厖大な組織と人員とを擁している結果、
國民
の
租税負担
を不当に増大する一方、しばしば
経済
統制の名のもとに無用かつ煩瑣な拘束を
國民経済
に課し、活溌な
経済活動
を阻害し、かついわゆる官僚独善の氣風を助長し來
つた
のであります。 〔発言する者多し〕
岩本信行
10
○副
議長
(岩本信行君) 静粛に願います。
池田勇人
11
○
國務大臣
(池田勇人君)
政府
はこの際、断然行政の規模を縮小
合理化
し、冗費を
節約
するとともに、かかる弊風を一掃せんとするものでございます。(
拍手
) 第四に、長期にわた
つて
健全なる
生産
の
基礎
と
資本
の
蓄積
とを築き上げるためには、一方において、
從來
ともすれば
経済
界に対しいたずらなる安易感を與えてお
つた
復金の貸出を、
原則
として停止することといたしました。他方において、画期的な
措置
として、一千七百五十億円に上る
米國
からの対日
援助
を
特別会計
として明確に区分経理せんとするものであります。すなわち、
從來
米國
からの
援助
はきわめてあいまいな姿で、輸出入物資に対する実質上の
價格
差
補給金
などに漫然使用せられていたのでありますが、今後はこれを内外に明確にし、
経済再建
に必要なる方面に対する長期
資金
の供給、
國債
等の
償還
に活用して、市中
金融
の緩和に資したいと存じます。わが
國民経済自立
のために、なおしばらく
米國
からの
援助
を必要とする現在、今回の対日
援助資金
に関するこの
措置
は、
援助
の
趣旨
を
最大
限に実現するがための最も時宜に適したものであると信ずるものであります。(
拍手
) 第五に、今回の
予算案
は、わが
國民経済
を
國際経済
へ参加せしめるために具体的な一歩を進めんとするものであります。すなわち
政府
は、輸出に対する補助金を一切撤廃して温室的保護を排し、
輸出産業
をしていたずらに
政府
に頼ることなく、
將來
國際場裡における自由競走に耐え得るよう
企業
の整理、
合理化
を促進せんとするものであります。また輸入補助金及び
價格
調整
金につきましても、これをすべて
予算
面に計上するとともに、極力その
削減
に努めました。もつとも、現下の不安定なる
國民生活
、労働條件等にかんがみ、現行
物價
水準を急激に変更することは適当でないと考えられ、一挙に大幅に
削減
することをなし得なか
つた
のでありますが、きわめて近き
將來
に予想せられる單一
為替レート
の
設定
と相ま
つて
、
政府
はなるべくすみやかにこれらの補助金を撤廃し、も
つて
わが國内
経済
が
自力
によ
つて
國際経済
に参加する日の早からんことを期待するものであります。(
拍手
) 以上の
方針
によ
つて
作成せられた
一般会計
予算
は、歳入総額七千四十九億円、
歳出
総額七千四十六億円でありますが、その
内容
のおもなるものについて御説明いたします。 まず
歳出
予算
のうち、終戰処理関係諸費は一千二百九十六億余万円でありまして、前年度に比し、
事業
量において相当な減少とな
つて
おるのであります。これは終戰処理費に含まれる建設工事の縮小その他各種
経費
の
節約
に基くものであります。 次に
公共事業費
は五百億円余でありまして、前年度に比し、その全体の
事業
量において若干の減少となるのでありますが、その
使途
に格別の考慮を加え、最も喫緊な方面に重点的に使用することによ
つて
その不足を補いたいと存じます。地方配付税配付金五百七十七億円余は、地方
財政
の
現状
にかんがみ、この金額は必ずしも十分とは申しがたいのでありますが、中央地方を通ずる
財政
の総合的
調整
をはかるため、この程度の金額を地方公共團体に配付することといたしました。 次に出資及び投
資金
八百十八億円余は、
復興金融金庫
の既発行債券の
償還
に充てるもの三百億、貿易
特別会計
の
資金
に充足するもの四百億円等を包含しております。 次に
價格調整費
は二千二十二億余万円であります。前年度六百二十五億円に対して大幅の
増加
とな
つて
おるのであります。これは、
從來
の貿易
資金
の操作によ
つて
まかなわれていた実質上の
補給金
を
價格調整費
中に計上したことと、
價格
補給金
の対象となる物資の
生産
量の
増加
を見込んだことによるものであります。しかしながら、その
範囲
及び單價については極力これが圧縮に努め、安定帶物資に対する本年度分一千二億円、前年度からの繰越分百五十億円、
輸入物資
補給金
八百三十三億円等を計上いたしたのであります。 なお今回の
予算編成
に際し、
物價
については
旅客運賃
、郵便料金及び食糧について若干の
引上げ
を予定しておりますが‥‥ 〔「公約はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
岩本信行
12
○副
議長
(岩本信行君) 御靜粛に願います。
池田勇人
13
○
國務大臣
(池田勇人君)
物價
水準としては
現状
を堅持することを建前としております。 次に歳入について申し上げます。今回の
歳出
予算
は、わが
國民経済
力に相当重い
負担
を負わせることになるのでありますが、歳入
歳出
の実質的
均衡
をはかることが絶対の
要請
である現在、その財源はすべて租税その他の実質的な收入をも
つて
まかなうことといたしました。なかんずく
租税收入
は五千百四十六億円余に上り、全歳入中に占めるその割合は七三%となり、前年度に比し相当
増加
しているのでありますが、しかし本年度
予算編成
にあたりましては、
原則
として現行の
税制
をそのまま踏襲することといたしました。ただ取引高税については、特に納税方法等について大幅な改正を行い、世上の最も非難の多か
つた
印紙納税の制度を廃止するとともに、非課税
範囲
を拡張し、また一定額以下の零細な取引高税については免税することといたしました。(
拍手
)これにより、取引高税の納税者数は約三十万人程度減少することとなり、本税の納税は今後円滑に行われるものと信じます。なお新たにガソリン税を創設し、歳入
増加
の一助とした次第であります。 ひるがえ
つて
、わが國現在の
税制
を檢討いたしますと、現在の
経済
情勢
の推移に十分適應しないきらいがあるのであります。
從つて
政府
といたしましては、徴税事務
運営
を
改善
し、できるだけ適正な課税を行うことに全力を傾注する
所存
であります。(
拍手
)納税者各位の
協力
によ
つて
租税の徴收率が向上いたしますならば、
歳出
の実行上の
節約
と相ま
つて
、近き
將來
なるべくすみやかな
機会
にぜひとも
税制
の
合理化
をはかり、
國民負担
の
軽減
と
公平化
を行いたいと考えておるのであります。(
拍手
) 次に、タバコ專賣益金は千二百億円を計上いたしました。本年度においては約六百六十億本の製造を予定しております。 次に
政府
は、この際
國有財産
の賣拂いを促進し、
連合國
軍の解除物件についても、賣却の可能なものはこの際極力民間に賣却することとし、も
つて
これらの物件の
経済
的効用を高めるとともに、歳入
増加
をはかることといたしたのであります。 なお國有鉄道
事業
及び通信
事業
の
特別会計
については、現行鉄道運賃及び郵便料金をすえ置くときは鉄道二百三十五億円、通信四十九億円の收入不足を生ずる見込みでありますので、本年五月から
旅客運賃
について約六割、郵便料金について平均約四割の
引上げ
を行い、も
つて
これら会計の独立採算制の確立を期することといたしました。 さきに申し述べました通り、眞に総合的に
財政
の
均衡
を
確保
する結果、
從來
と異なり
政府
の
財政
需要が
金融
面を圧迫することはほとんど解消し、今後は
金融
の自主的活動が大いに期待せられることとな
つた
のであります。しかして、
金融
面において最も意を用うべきは通貨の安定と
金融
の正常化を期することであります。これがためには、
日本
銀行の信用造出による
資金
供給は極力これを避けねばならないのでありまして、新しい状況のもとにおける信用統制については、眞に
國民経済
全体の
要請
に應じ得るような
措置
を考究することが必要であります。すなわち、わが
國民経済
の
自立
復興をはかるためには、
産業資金
の需要は依然相当巨額に上るものと考えられるのみならず、輸出の
振興
、正常取引の
増加
に伴う
運轉資金
の供給を
確保
することもまた肝要でございます。このため、一面において
企業
自身が自己の信用によ
つて
所要資金
の
蓄積
に
努力
することはもちろん、
國民
の
耐乏
と
節約
とにより貯蓄の
増加
をはかり、
かく
して
蓄積
せられた
資金
を
経済再建
のため眞に必要とする面に限り効率的に配分せられるよう一段の
努力
を拂う
所存
であります。特に長期
設備資金
の供給については、
復興金融金庫
が
從來
の融資方式を廃止することといたしました関係上、この方面の
資金
供給に対する一般
金融機関
の積極的活動を促進するとともに、農林
金融
、中小商工
金融
等については、その特殊性にかんがみ、必要なる
資金
の供給に遺憾なきを期したいと存じます。(
拍手
) また
政府
は、今回新たに
國民
金融
公社を設立し、一般の
金融機関
から
資金
の供給を受けることが困難な者に対しまして生業
資金
の融通を行わしむることといたしたのでございます。 また
政府
は、一日も早く証券取引所を再開を行うことができるよう
努力
いたしております。 なお、このような
情勢
のもとにおいて、
金融機関
の使命はきわめて重大でありますので、この際
金融機関
としては任務の公共性を自覚し、その
運営
に万遺憾なきを期するよう特に切望する次第であります。 最後に私は、ここに
國民各位
に対し、敗戰の日、すなわち昭和二十年八月十五日、その日を回想せられることを切望いたします。当時
國民
のすべては、前途の希望を失い、
祖國
の滅亡を憂えたのであります。近々三箇年半にして、とも
かく
も今日の程度にまで
経済復興
をなし遂げようとは、当時何人が予想し得たでありましようか。 冒頭に述べました通り、わが
國経済
が今日の
状態
をとりもどしたことは、
連合國
、なかんずく
米國
の
援助
によるものであります。ことに、わが國はいまだ講和條約の締結を見ざる
状態
にあるにかかわらず、
米國
はこれに対して、
連合國
であ
つた
西ヨーロツパ諸國に対するとま
つた
く同樣の
援助
を供與いたしておるのであります。(
拍手
)この事実を、われわれはえりを正して再思三省すべきであります。(
拍手
) 同時に、さきに引用いたしました通り、
経済
上の
自立
なきところ眞の政治の自由と独立とは望み得ないのであります。われわれ
日本
國民
が、みずから額に汗することなく、いたずらに他國の
援助
によ
つて
徒食するならば、われわれは祖先と子孫とをはずかしめるものといわなければなりません。(
拍手
) 諸君、私は、
國民各位
が本
予算案
を通じて鮮明せられましたわが党の
政策
を十分了解せられまして、
耐乏
と勤勉とを通じ全幅の
協力
を寄せられんことをかたく信じて疑わないところでございます。(
拍手
)
今村忠助
14
○今村忠助君
國務大臣
の
演説
に対する質疑は延期し、明五日定刻より本
会議
を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
岩本信行
15
○副
議長
(岩本信行君) 今村君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
岩本信行
16
○副
議長
(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よ
つて
動議のごとく決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時三十三分散会 ————◇—————