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花村委員長 御異議なしと認めて、さようにはからいます。
調査につき報告等をいたしまするのに、調査報告書をつくる必要があるのでございまするが、調査報告書はここに起草してありまするが、これは大体前
委員会において派遣
委員が報告いたしておりまするのと大同小異であります。ただここにおはかりいたしたいことは、結論として本
事件に対しまする
委員会の
意見をまとめたいと存じます。その
意見に関しまする文案ができておりまするから、朗讀をここでいたします。
第五 結 論
一、本
事件に対する
意見
警察側としては道路使用許可申請を受理するにあたり、將來交通妨害を生ずるおそれがあるかいなかにつき、十分な調査をなすべきであつた。掲示板として簡單に事を片付けすぎたきらいがある。また使用許可を取消すにあた
つては、一貫した理由を示し
——傳達者が
関係方面の命令だと傳えたということであるが
——ゆとりのある、しかも明確な期限を付して通達すべきであつたと思われる。矢郷炭鉱における賃金不拂い等から生じた労務者及びその家族の窮乏生活には同情に値いするものがあるが、平市における本件掲示板撤去に対する反対示威は
労働爭議ではなく、一種の政治鬪爭である。しかも掲示板設置を許可されたものは労働組合でもなく、また共産党地区
委員会でもない。たまたま矢郷炭鉱の
労働爭議の
記事が掲載されるに至
つて、交通妨害の
状態が発生したため使用許可が取消されたというにすぎない。すなわち労務者側には、
記事掲載という点において利害
関係がないとは言えないが、本件の道路使用の許可は、平市署長から申請者長江久雄個人に与えられたものである。しからばその取消しに対する救済手段には、おのずから限界があるはずである。許可取消しの撤去
応援と称して、
警察の警備力の十倍に匹敵する多数が許可なくして
警察署に闖入し
——当日降雨が相当激しかつたことも事実であるが、單純な雨宿りでないことも事実である。
——器物を破壞し、六尺四方の赤旗二流を
警察署正面玄関に交叉掲揚し、留置場の入口ドアを破壞して、看守巡査からピストルを奪取して同志を留置場から解放せしめ、逆に看守巡査を一時たりとも監禁する等、多衆の威力と暴力に訴えて問題の解決を迫るがごときは、その動機ないしは目的のいかんにかかわらず、またいかなる団体によるものであろうとも、民主日本においては断じて許さるべき事柄ではない。
前述三十日内郷
警察署における状況等に徴し、本件が共産党地区
委員会の計画的指導のもとに行われたものであることも否定できないものと思う。
しかし縣民に与えた社会的不安の大であつたことも調査の結果明白である。さらに本平
事件発生の日に、隣接都市たる福島市、郡山市、若松市において類似のデモンストレーシヨンが行われており、本調査においても相互間の関連性につきその片鱗を伺うに足るものがあつたが、徹底的調査を行う必要を認める。
二、対策問題
労働問題、失業対策等は他の
委員会に讓らなければならないが、当
委員会としては、現下重大問題である
治安維持の面から、現行檢察制度及びこれに密接な
関係を持つ現行
警察制度につき檢討すべきものがあると思う。
福島縣は地理的條件によれば浜通、中通、会津の三地区に区分できるが、福島市所在の
國家地方警察福島縣本部から
応援を得るには、八時間を要するに反し、水戸所在
國警茨域縣本部から
応援を得るには、わずか三時間で足りるが、しかし
國警茨城縣本部に
応援を求めるには、
國警福島縣本部から仙台
警察管区を通じ、さらに東京
警察管区から
國警茨城縣本部に連絡することとな
つているため、その手数が複雜である。自治
警察と
國家警察の現行制度とその機動力発揮につき檢討をする要があると思う。しかも
警察電話は昨年夏ごろから
各地に傍受事故が頻々と起り、電話連絡は全然その利用價値を失い、現在飛脚と同じ連絡員を派している状況である。
警察電話の傍受は重大問題である。
警察裝備の充実必要性を痛感する。本平
事件の捜査の実務を通じ、当
委員会は
警察と檢察との
犯罪捜査に関する一体性、ないし総合性を強く要望する次第である。
最後に社会不安に関連する問題であるが、過ぐる七月七日、本調査の最中、平市及びその隣接市町九箇所の
消防団長、
公安委員が会合し、平
事件にかんがみ市町村民の生命財産を保護するため、互いに
協力すべきことを協議し、これを契機として戰時中警防団類似の、または大震災後の自警団復活の声があると同時に、右翼的暴力団再建の兆候が喧傳されている。
警察の威信保持、
國民の社会的不安除去のため、共産党の暴力主義に対しては、
政府はすみやかに適切な対策を講ずべきであると信ずる。政治的ボスに直結する自警団や暴力団のごとき、暴に報いるに暴をも
つてする非民主的団体発生の兆候のある点について、特に注意を拂わなければならぬものと思う。以上。
この二点を決定するに御異議ありませんか。