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1949-05-23 第5回国会 衆議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月二十三日(月曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 金原 舜二君 理事 田嶋 好文君    理事 石川金次郎君 理事 並木 芳雄君    理事 梨木作次郎君       鍛冶 良作君    佐瀬 昌三君       眞鍋  勝君    猪俣 浩三君       田万 廣文君    上村  進君       大西 正男君    世耕 弘一君  委員外出席者         証     人         (明治商会社         長)      岩山 明正君         証     人         (元防犯新聞社          記者)     鈴木 茂雄君         証     人         (檢事)    橋本千代雄君         証     人         (檢事)    香取 博史君         証     人         (檢事)    横山 唯志君         証     人         (檢察事務官) 望月 正身君         証     人         (檢察事務官) 荒木 和雄君         証     人         (横浜巡査) 酒寄 久市君         証     人         (横浜巡査) 榊  清史君         証     人         (横浜巡査) 平林  昇君         証     人         (元檢事)   富田 正典君         証     人         (檢事)    吉積 春雄君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  委員派遣承認申請に関する件  横浜地檢問題に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日は去る十九日に引続きまして、横浜地檢問題について証言を求めたいと存じますが、本日出頭された証人方々は、岩山明正君、鈴木茂雄君、橋本千代雄君、望月正身君、香取博史君、吉積春雄君、横山唯志君、荒木和雄君、酒寄久市君、平林昇君、富田正典君、榊清史君、以上十二名であります。  証人となられる方々に申します。皆さん、本日は御苦労でした。本調査は御承知のように、憲法第六十二條に基く國政調査として行うものでありまして、横浜地方檢察廳職員に、はたして世に宣傳せられるように綱紀紊乱があつたかどうか、もしあつたとすればその原因は何であるか、またその行政上の責任はどこにあるかを調査し、もつて取締官憲のこの種不祥事件の発生を未然に防止し、檢察の威信保持に資せんとするものであります。從いまして、職員の犯罪を捜査、摘発することをその主たる目的とするものでないことを、あらかじめお断りしておきます。事柄は檢察権行使明朗化民主化ないしは治安維持の根本にかかわる問題でありますから、証人の自由な良心的御協力を望んでやまない次第であります。  それではこれより証人方々証言を求めることといたしますが、証言を求める前に、各証人に一言申し上げます。  昭和二十二年十二月二十三日に公布になりました昭和二十三年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことになつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、一般の人については、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族、または証人とこれらの親族関係ありたる者、及び証人の後見人、または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項、あるいはこれらの者の恥辱に帰するべき事項に関するときに限られ、医師歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祈祷の職にある者、またはこれらの職にあつた者については、その職務上知つた事実であつて、默祕すべきものについて尋問を受けたときに限られております。それ以外には、何人も宣誓または証言を拒むことができないことになつております。  なお、証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。  一應このことを御承知になつていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。  御起立を願います。岩山明正君に代表して宣誓書の朗読をお願いいたします。     〔証人岩山明正君各証人を代表して宣誓
  3. 花村四郎

    花村委員長 それではお手元にお配りしてある宣誓書署名捺印をお願いいたします。     〔各証人宣誓書署名捺印
  4. 花村四郎

    花村委員長 なお、吉積春雄君はまだお見えになつておりませんので、現在お見えになつているのは十一名ですから、先ほどの十二名と申し上げた点は訂正いたします。また後藤つぎ君は、膽石症で本日は出頭できぬ旨、医師診断書を添えて届出がありますから、御報告いたします。  次に、証言を求める証人順序を申し上げます。    岩山 明正君  鈴木 茂雄君    橋本千代雄君  香取 博史君    横山 唯志君  望月 正身君    荒木 和雄君  酒寄 久市君    榊  清史君  平林  昇君    富田 正典君 の順序証言を求めることといたしますから、岩山明正君以外の方は、証人控室においてお待ちをお願ひいたします。  それではこれより岩山明正君から証言を求めることといたします。岩山明正君。  お名前は。
  5. 岩山明正

  6. 花村四郎

  7. 岩山明正

    岩山證人 三十七歳。
  8. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  9. 岩山明正

  10. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  11. 岩山明正

    岩山證人 横浜市南区西仲町一丁目二十三番地。
  12. 花村四郎

    花村委員長 あなたは明治商会の社長をやられておりますか。
  13. 岩山明正

    岩山證人 專務取締役であります。
  14. 花村四郎

    花村委員長 いつからいつまでおやりになつておりますか。
  15. 岩山明正

    岩山證人 昭和二十一年三月七日より現在までやつております。
  16. 花村四郎

    花村委員長 明治商会について何か事件が起きたことがございますね。
  17. 岩山明正

    岩山證人 あります。
  18. 花村四郎

    花村委員長 それはどういう事件ですか。
  19. 岩山明正

    岩山證人 先ほど昭和二十一年三月と申し上げましたのは間違いで、二十二年三月七日から現在まで專務取締役の仕事についております。昭和二十二年七月の八日の日に、横浜市の壽警察署より私の不在中に押收捜査令状を持つて、帳簿並びに証拠書類を押收されまして、経済事犯のかどで取調べを受けました。
  20. 花村四郎

    花村委員長 その経済事犯というのは、どういう事案ですか。
  21. 岩山明正

    岩山證人 私の取扱つておりますのは、主として塗料でありますが、並びにそれの原料も取扱つております。これはみな臨時物資需給調整法指定生産資材でありまして、それを扱うには割当切符をもつて品物の授受をやらなければならないところを、一部無切符で動かし、またそれぞれ統制價格があるのにかかわらず、それを一部無視して販賣したということであります。
  22. 花村四郎

    花村委員長 そこであなたは鈴木茂雄という人を御承知ですか。
  23. 岩山明正

    岩山證人 知つております。
  24. 花村四郎

    花村委員長 どういう関係で御承知ですか。
  25. 岩山明正

    岩山證人 鈴木茂雄君は、当時防犯新聞横浜支局長をやつておりまして、父の友人に長谷川何がしという人がありましたが、その人が父を頼つて、私のところへ防犯新聞廣告をとりに來たのでありますが、それは七月の八日、壽署から手入れを食う以前のことでありました。それで私が手入れを受けたときに、ちようど大阪へ出張中でありましたが、浜松から引返して参りまして、事のしさいを聞きましたので、実はこういうことを初めて受けたので、びつくりぎようてんしまして、何とか手を打たなければ会社がつぶれるかもしれないし、事務員も解雇しなければならぬというので、どうしたらよいかということで、家中で相談したのでありますが、いい手がなかつたので、煩悶しておりました。毎日壽署取調べを受けに出頭しておりました。たしか二週間くらいだつたと思いますが、父が、防犯新聞というのが廣告をとりに來たということを思出しまして、それで私が取調べを受けている部屋に、鈴木さんがよく毎日のように來られまして、係りの人あるいは調べる主任さんやなんかと親しそうに見えておりましたので、これはたいへん顏のきく人らしいということで、注意しておりました。ところが、たまたま鈴木さんの抱えている何か書類でもつて防犯新聞の人であるということがわかつたものですから、家へ帰つて参りまして、父に、実はきようこういうぐあいに取調べを受けているときに、今までずつと部屋毎日のように見えていた人が、防犯新聞の人らしいということを話しましたら、それではそういう人はきつと顏がきくだろうから、ちようどこの前に長谷川という人が防犯新聞記者をやつておりまして、家へ廣告をとりに來たから、じやひとつその長谷川さんに電話をかけて來てもらつて、何かいい知惠を借りたらどうかというようなことを聞いたものですから、さつそく長谷川さんの名刺を頼りに電話をかけまして、長谷川さんいるかと申しましたら、ちようど長谷川さんはいなかつた。それで女の人も出て來たと思いますが、実は明治商会の者ですが、長谷川さんにちよいとお話したいことがあるから、会わしていただきたいということを申し上げました。そうしましたら、その夕方鈴木さんが見えられました。まさしく取調室毎日のように会つていた人なので、その名刺を見ますと、防犯新聞横浜支局長鈴木茂雄と書いてありますので、そこで初めて鈴木さんが防犯新聞支局長であるということを知つたわけであります。
  26. 花村四郎

    花村委員長 それからその鈴木茂雄さんに、あなたが十万五千円をお渡しになつたことがありますね。
  27. 岩山明正

    岩山證人 ございます。
  28. 花村四郎

    花村委員長 その金は、それはどういう意味でお渡しになつたのですか。
  29. 岩山明正

    岩山證人 鈴木さんが参られまして、あいさつしたときに、実はこういうわけでもつて非常に困つている。收拾がつかないで、このままこれの罰を受けるとすると、えらいことになつて会社がつぶれるかもしれないから、何とか鈴木さん、うまい知惠はないでしようか、こう申し上げましたら、鈴木さんが、何をぐずぐずしているのだ。早く手を打たなければだめじやないか。まあ私にまかせなさい、何とかしてあげましよう。こう言いますので、当時私も二十一年に復員して來たばかりでありまして、統制経済云々というようなことはよくわかつておりませんので、統制経済経驗がないものですから、実は警察から手入れを食うなどというようなことで、肝をつぶしておりましたものですから、ひとつお願いいたしますというので、全面的に頼つたわけであります。それについて、まあ運動費も何かといるでしようから、とりあえずここに金が、たしか一万か一万五千円あつたと思いますが、とにかく使つてもらいたいと言つて渡したわけであります。
  30. 花村四郎

    花村委員長 そして……。
  31. 岩山明正

    岩山證人 それからほとんど毎日のように当分の間連絡に來てくれまして、いろいろなことを言つたと思いますが、その都度金がいるようなことを言うものですから、七月の下旬から九月のたしか上旬にかけてだつたと思いますが、五、六回にわつて一万円ないし一万五千円、最高二万円くらいまで、合計十万五千円渡したわけであります。
  32. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、十万五千円というのは数回に渡しておるわけですね。
  33. 岩山明正

    岩山證人 記憶によりますと、大体十日ごとに渡したと思つております。
  34. 花村四郎

    花村委員長 その金はどういう意味のところへ使う話であつたのですか。
  35. 岩山明正

    岩山證人 まず警察の方に接待するとかいう話でありまして、それから壽署で食い止められなかつたら、檢察廳の方へ手を打たなければならない。それには平沼に後藤つぎさんという非常に檢察廳へ顏のきくおばさんがいる。いよいよとなつたらその人にすがれば何とかなるから、あらかじめその方へ手を打つておく必要があるというのがおもでありまして、壽署の方に使つた金は二回だと思いました。第一回目に一万円渡して、第二回目に來たときに一万円では足りなかつたというので、たしか一万五千円くらい渡したと思つておりますが、それ以後の金の使い道については、後藤さんの方へ手を打つという話で出しておりました。
  36. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、壽署の方へ出したのは饗應費ですか。
  37. 岩山明正

    岩山證人 饗應費のようです。
  38. 花村四郎

    花村委員長 それから後藤つぎの方へその残りの金を渡すというのは、どういう性質のものですか。
  39. 岩山明正

    岩山證人 後藤さんの家では、毎日のように檢事さんが飲んでいる。だれ彼となく來て飲んでいるから、明治商会係檢事の人も來ておるのだろう。それは調べればわかるけれども、まずそこは私の方から後藤さんにうまく話す。とにかく後藤さんの方へまわしておけば、後藤さんがうまくやつてくれるというので、渡しました。
  40. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、それは後藤の宅で檢察官を饗應する金という意味渡したのですか。
  41. 岩山明正

    岩山證人 そうでございます。——饗應というよりも、後藤さんに渡しておけばうまくやつてくれるから、後藤さんの方へ渡すということでした。
  42. 花村四郎

    花村委員長 そのうまくやつてくれるというのは、檢察官が出入りしておるから……。
  43. 岩山明正

    岩山證人 後藤さんの顏でもつて、裏面からうまく話をつけてやるという話をしておりました。
  44. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、それは後藤つぎに渡すという意味なのか。
  45. 岩山明正

    岩山證人 後藤つぎさんに渡すと言つておりました。特定の檢事さんの名前言つて、その人に渡すと言つたことは一回もございません。
  46. 花村四郎

    花村委員長 それからあなたは鈴木茂雄より手紙受取つたことがございますか。
  47. 岩山明正

    岩山證人 あります。
  48. 花村四郎

    花村委員長 その手紙の内容はどういうものですか。
  49. 岩山明正

    岩山證人 手紙受取つたといいますのは、たしか一番最後に金を渡したときに、私は営業をやつて行く上において、新聞に出ることは非常に信用問題になり、今後の会社の運営において非常に問題になるものですから、新聞に出ることを非常におそれたものであります。それで最後に私がそのことを話しましたら、鈴木君がそれは司法記者倶樂部の方へ金を包んで出せば、私の方からうまく話をつけて、新聞に出さないようにするという話でありました。それからもう一つ檢察懇話会というのがある。その人があくる日ですか、箱根の方へ旅行するから、その方へ金一封届けて飲んでもらえばさらにいいと思うから、出してくれ。いくら出すのとか、言いましたら、記者倶樂部の方へは五千円、檢察懇話会の方へ一万円出してくれと言うので、私が封筒に入れまして、表書きを司法記者倶樂部だと思いましたが、あるいは檢察廳記者か、冐頭は忘れましたが、記者倶樂部という名前でありました。そこへ五千円渡しました。たしか封筒の裏に五千と書いたはずです。それからもう一つ封筒には檢察懇話会殿と書いて、裏へ一万と書いて渡しました。それはたしか九月の上旬か中旬だと思つております。それからしばらくしますと、たしか数日後だと思いますが、後藤さんという人から電話がかかりまして、岩山さんですか。そうです。明日の朝九時ごろ私の家に來てください。何か、あなたのうち鈴木へ金を出して、私に渡したというようなうわさがあるけれども、たいへん迷惑だ。それについて話したいことがあるから來てくれ。こう言いますものですから、私はあくる日の朝後藤さんの家を探してたずねたのです。
  50. 花村四郎

    花村委員長 それはいつごろですか。
  51. 岩山明正

    岩山證人 ちよつと忘れましたが、最後に金を渡してから二、三日後だつたと思います。まだ上着を着て歩いていて、暑くて汗が出る日でしたから、たしか九月の上旬じやないかと思います。それで家に行きますと、後藤さんがおりまして、あなたの家ではたいへん金を出して、一体鈴木とはどういう関係だ、こういうものですから、前に話したことを申しました。そうしたら、とんでもない、私なんか一銭ももらつていない。第一、鈴木なんて人間はよく知らない。こう言うわけです。あなたは一体いくらぐらい出しているのだ、と申しますものですから、今申しましたようなことを話しました。そうしましたら、後藤さんはびつくりしまして、とんでもない話だ。そんな旅行なんか行かない。お金なんか二、三日前に一万円もらつた覚えがない。鈴木なんかにだまされて、岩山さん金を使つてはだめだ。こう言われますものですから、私もきつねにつままれたような氣持で、これはえらいことになつた鈴木さんに全部まかしていて、出した金がそちらに入つていない。それでそのときに、たしか宮崎檢事さんという人がおりました。宮崎さんからも、たいへん私たち檢事として、つまらない評判を立てられているので、憤慨している。とんでもない話だ。ああいうやつがいるから、われわれが迷惑するのだ、というようなことで、おしかりをこうむりまして、私もその日は帰つたのであります。
  52. 花村四郎

    花村委員長 そのときおつたの宮崎檢事だけですか。富田檢事は……。
  53. 岩山明正

    岩山證人 おりません。後藤さんが、宮崎さんというようなことを言つたものですから、ああそうかと思つたのです。
  54. 花村四郎

    花村委員長 それからその後どうしましたか。
  55. 岩山明正

    岩山證人 それから帰つて参りましたら、たしかその日かあくる日の夕方だと思いますが、鈴木さんが見えまして、後藤さんから電話があつたそうだが、私があなたから金をもらつているということについてしかられた。そして後藤さんにその金を返せと言われたと、鈴木がそういうのです。私も出した金をもらうわけに行かないし、困つたことと思いましたが、そのときの話はちよつと今忘れました。それが済みますと、後藤さんからまた電話がありまして、鈴木があなたに金を返したかというわけなんです。いやもらいません。じや私が鈴木を呼んでよく言つて、金を返すようにするから、もし返さなかつたら、証文を入れさせるようにするから、こういうわけなんです。それからまた一日、二日たつたと思いますが、後藤さんから電話があつて証文を持つて來たかという。いや持つて來ません。ふといやつだ。すぐ呼んで話をつけてやる。その日かそのあくる日に、鈴木さんが妹さんという人をよこしまして、お金をたしか二千円か三千円だと思いますが、同封し、借用証として二万五千円の借用証を書いて届けて來ました。私も女の人でありますから、とにかくこの金を受取つていいかどうかわからないけれども、あなたが御婦人だから、一應お預かりしておきましようというので、受取書を出さずにそのまま預かつておきました。そうしますと、また後藤さんから電話がありましたので、実はきようこういう鈴木さんのお使いの人が見えて、お金がたしか三千円だと思いますが、それと証文二万五千円を書いて届けてよこしました。こう返事しますと、二万五千円じや少いじやないか、あなたの出した金と違う。ええ違います。もう一ぺんひとつそれでは鈴木を呼んで言つてやるから。こういう話がありまして、また一日、二日たちますと、今度は六万五千円という証文を届けて参りました。やはり女の人でありましたがそのときにはお金は持つて來ません。二万五千円と六万五千円、九万円の証書が入つたわけです。後藤さんがまた電話がありましたので、私は六万五千円の証書を持つて参りました。こう話しましたら、足りないから、もつとあなたの力で鈴木さんから取りなさい。こういうように言われたのであります。それでその前に、その証文を持つて來ないと後藤さんに返事したときに、それからあくる日だと思いますが、鈴木さんを連れて後藤さんがうち見えました。それで、こういうわけでもつて、あなたのところから金が出ているとうわさが飛んでいるから、私らも迷惑するし、あなたも迷惑する。ここは鈴木に出した金はまあ貸したものとして証書を取りなさい。鈴木さん、あなたも悪いことをしたのだから、証書を入れて、これから金を返すようにしなさいということを言つたように覚えております。
  56. 花村四郎

    花村委員長 そうするとあなたは、この証書を入れたのは、世間がうるさいから、後藤にいいようにやつてもらうという金ではあるのだが、それを証書名義にしておく方がいいというような意味ではないのですか。
  57. 岩山明正

    岩山證人 そうではございません。後藤さんは、金は鈴木から一銭ももらわない。しかしうるさいからと言つて……。
  58. 花村四郎

    花村委員長 それでその証書を入れる入れないの話を、後藤つぎうちでやつたことはありませんか。
  59. 岩山明正

    岩山證人 私が最初後藤さんのうちを尋ねて行つたときに、証書にした方がいいと言われたか、後藤さんがうちへ來たときに言われたか、ちよつとその点がはつきりしないのですが、後藤さんが私のうちへ來て言つたことは間違いないのです。
  60. 花村四郎

    花村委員長 それからあなたは富田檢事会つたことはございませんか。
  61. 岩山明正

    岩山證人 去年の暮に地檢から呼出しを受けまして行つたときに、初めて富田さんに会いました。
  62. 花村四郎

    花村委員長 後藤のところで会つたことはありませんか。
  63. 岩山明正

    岩山證人 ございません。
  64. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質疑がありますか。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 今委員長があなたにお尋ねしたのだが、それきりになつたのでありますが、手紙であるか、あるいは鈴木の手記であるかわからぬが、そういうものがあなたに鈴木から渡されましたか。
  66. 岩山明正

    岩山證人 いただきました。
  67. 猪俣浩三

    猪俣委員 何通。
  68. 岩山明正

    岩山證人 三通だと思います。
  69. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはそれをごらんになりましたね。
  70. 岩山明正

    岩山證人 拜見しました。
  71. 猪俣浩三

    猪俣委員 大体どういう趣旨のものですか。
  72. 岩山明正

    岩山證人 大体私一人が悪者になつているけれども、私はみんなのために自分だけが犠牲になります。情勢が悪くなると、こうも人情が悪くなつて來るかというようなことを書いてありました。
  73. 花村四郎

    花村委員長 私一人が悪者になるが、しかし自分一人が使つたのではない、こういう意味ですか。
  74. 岩山明正

    岩山證人 使つたのではないというようなことは文中にないと思います。
  75. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかしあなたがそれを読んで、自分一人がみんなのために悪者になるということは、どういう意味——自分でもらつて自分使つたのなら、自分悪者になるのはあたりまえだが、自分一人が悪者になる、他に迷惑をかけるから自分一人が悪者になるとか、情勢が悪くなると、こうも人情を欠くというような趣旨は、あなたはどういう意味に解釈しましたか。
  76. 岩山明正

    岩山證人 趣旨はとにかく、つまり事件ブローカーといいますか、つまりそういうものが横行しているので、何が何だかわからないけれども、とにかく鈴木も全部が全部自分だけで使つたのではあるまいというようなふうに思いました。
  77. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると鈴木が全部使つたのではないとすれば、ほかの金はどこへ行つたということになりますか。
  78. 岩山明正

    岩山證人 それは壽署人たちを接待したということを前に聞いておりましたから……。
  79. 猪俣浩三

    猪俣委員 壽警察接待費に使われたと思つたのですね。
  80. 岩山明正

    岩山證人 そうです。全部でなくて、そのうちはつきり持つて行つたのが二回、最初とその次に出したのが、壽警察の方に使つたということは前に申し上げましたが、その金はほんとうだろう、こう思つたのであります。あとの金は実際どうなつたのかわからないと、こう思いました。
  81. 猪俣浩三

    猪俣委員 九月の上旬、あなたは後藤つぎうちへ、彼に招かれて行つた際に、宮崎檢事後藤つぎうちにいたというのは事実ですね。
  82. 岩山明正

    岩山證人 事実です。
  83. 猪俣浩三

    猪俣委員 その当時、その金の話が出ましたね。
  84. 岩山明正

    岩山證人 出ました。
  85. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしてそのときに、借用証文にした方がいいという話が出たかどうかははつきりしない、こういうのですか。
  86. 岩山明正

    岩山證人 ちよつとはつきりしないのですが、私のうち後藤さんが來て言つたことは間違いないのですが、そのときに言つたかどうか、ただいまちよつと冷靜に考えませんとわかりません。
  87. 猪俣浩三

    猪俣委員 先ほど、富田檢事ちよつと呼ばれて、檢察廳会つたと言いましたね。そのときに富田檢事から、借用証文にちやんとしておいた方がいいという注意を受けませんでしたか。
  88. 岩山明正

    岩山證人 いいというよりも、そういうふうに処理した方がいいだろう。お前たちの間だから、われわれの関知しないことだし、そんなことでもつて世間からどうこう言われるのははなはだ迷惑だ。きみはそういう金を出したならば、借用証をとつておいた方がいいだろうから、貸借関係にしてはつきりしておいた方がいいということを言われたと思います。
  89. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、後藤つぎの家で宮崎檢事会つたときは、そういう話が出たかどうか、今あなたは出たかどうかわからぬが、ただ金の話は出たんだね。
  90. 岩山明正

    岩山證人 出ました。
  91. 猪俣浩三

    猪俣委員 その金は、鈴木がこういうふうに自分に申し出したために出したということは、宮崎檢事の前で話されたわけでしよう。
  92. 岩山明正

    岩山證人 そうです。
  93. 猪俣浩三

    猪俣委員 たとえば自分の違反事件を、何とかうまくやつてもらいたいということで出した。
  94. 岩山明正

    岩山證人 そういうことは言いません。ただあなたの方から金が出ているというようなことを言つたと思つております。
  95. 猪俣浩三

    猪俣委員 宮崎檢事にいつたことじやないが、あなたが何のためにそういう金を出したかということは、そのとき話したわけでしよう。今委員長の言うたような趣旨で金を出したということは……。
  96. 岩山明正

    岩山證人 そういう趣旨で金を出したという言葉は使いませんが、金を出したということは言いました。
  97. 猪俣浩三

    猪俣委員 警察懇話会に一万円出したという話もしましたか。
  98. 岩山明正

    岩山證人 しました。
  99. 猪俣浩三

    猪俣委員 しましたね。宮崎檢事の前で。
  100. 岩山明正

    岩山證人 しました。
  101. 猪俣浩三

    猪俣委員 ところが、そんな金はさつぱり入つていないということだね。
  102. 岩山明正

    岩山證人 後藤さんが言うのです。
  103. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると富田檢事も、そういう趣旨で金を出したということを知つておるはずだね。
  104. 岩山明正

    岩山證人 知つているはずです。
  105. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこでお前たちのことだから、貸借関係にしておけというような話があつた
  106. 岩山明正

    岩山證人 そうでございます。
  107. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからあなたは、例の鈴木防犯新聞記者に同道せられて、つたのやといううち行つたことがありますか。
  108. 岩山明正

    岩山證人 ございます。
  109. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいつごろです。
  110. 岩山明正

    岩山證人 たしか七月の下旬か八月の上旬だと思つております。
  111. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはことしですか。
  112. 岩山明正

    岩山證人 二十二年です。この事件の年です。
  113. 猪俣浩三

    猪俣委員 事件が起つた後の話だね。
  114. 岩山明正

    岩山證人 そうでございます。
  115. 猪俣浩三

    猪俣委員 つたのやへ行つたのはそうだね。鈴木に金を渡す前の話かね。
  116. 岩山明正

    岩山證人 渡した後です。
  117. 猪俣浩三

    猪俣委員 渡したのはいつだつたかね。
  118. 岩山明正

    岩山證人 七月のたしか十五、六日か、二十日ごろです。
  119. 猪俣浩三

    猪俣委員 十五、六日か二十日ごろだね、七月の下旬ですか。
  120. 岩山明正

    岩山證人 七月の下旬か、八月の上旬だろうと思います。とにかく暑い日だつたのであります。
  121. 猪俣浩三

  122. 岩山明正

    岩山證人 はい。
  123. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこにはだれとだれがいましたか。
  124. 岩山明正

    岩山證人 その行つた趣旨は、鈴木さんが後藤さんと平林さんと親しいから、後藤さんからひとつ平林さんに話をつけてもろうから、後藤さんが平林さんをつたのやへ呼び出すから、あなたもそこへ行つて話をしたらどうかということで、つたのやというところはここだから、いついつ日、たしか警察のひけた時間で、四時半ごろだと思いますが、四時半ごろにあそこへ來てくださいというわけで、私がその時間ちよつと前に行つたわけです。そうしまして、鈴木さんという人が來ていますか、こう言いましたらば、ちようど女中がふき掃除をしていたと思いました。ちよつとお待ちくださいというので奧へ入りましたが、間もなく鈴木さんが出て参りまして、今來ておるから、ちよつとこつちへ來てくれ、今会わなくてもいいから、ちよつとここで待つていてくれ、こう言うので、玄関を上つて、左の四疊半の部屋で私は待たされました。それから約三十分ばかりたつたと思いますが、鈴木さんが出て來まして、話が終つたからこつちへ來てくれ、こういうわけなのです。それから奧の部屋へ行きましたら、後藤さんがおられまして、そこで私も初めて後藤さんという人に会つたわけです。この人が後藤さんだ。私名刺を出しまして、あいさつをしたわけです。そうしたら、まあ岩山さん、今話をしたから、あまりくよくよしないで、元氣をつけておりなさいと言われまして、よろしくお願いしますと言つただけで、私は帰つてつた
  125. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、そのときには後藤つぎ会つただけですね。
  126. 岩山明正

    岩山證人 そうです。
  127. 猪俣浩三

    猪俣委員 平林に話をしたからというわけですね。
  128. 岩山明正

    岩山證人 私はそういうふうにとりました。
  129. 猪俣浩三

    猪俣委員 平林とあなたをそこで会わせることになつてつたからね。
  130. 岩山明正

    岩山證人 そうです。
  131. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは後藤つぎ会つただけで、だれにも会わないわけですね。
  132. 岩山明正

    岩山證人 そうです。
  133. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからこの問題が起きてから香取檢事、あるいは吉積檢事に調べられたことがございますか。
  134. 岩山明正

    岩山證人 最近ございます。
  135. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういうことを調べられましたか。
  136. 岩山明正

    岩山證人 三月だつたと思いますが、大分新聞紙上へ出てから、私呼出しを受けまして、呼出しは香取檢事の呼出しでしたけれども、香取檢事さんのところへ行きましたら、吉積檢事さんのところへ行つてくれというので、私が吉積檢事さんに呼ばれて、分室の会議室の疊のある部屋で調べられました。そうして、きみの事件について聞きたい。私の犯した違反事件についてのお尋ねは、ちよつと概略だけでございました。それからすぐ、きみのところから、鈴木という新聞記者に金が出ておる。幾ら出ておるかというようなことで、今話したようなこともお話いたしました。
  137. 猪俣浩三

    猪俣委員 わかりました。ではあなたは、親戚に山野という警部がありますね。
  138. 岩山明正

    岩山證人 あります。
  139. 猪俣浩三

    猪俣委員 その警部の人に、何かあなたはぐちをこぼされたことはないですか。
  140. 岩山明正

    岩山證人 あります。
  141. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう話をしましたか。
  142. 岩山明正

    岩山證人 この事件のことについて話をしたのです。困つたよ。帰つて來たばかりでこんなことになつちやつたというような、泣言を言つたと思つております。
  143. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただそれだけですか。
  144. 岩山明正

    岩山證人 それだけです。
  145. 猪俣浩三

    猪俣委員 わかりました。
  146. 梨木作次郎

    ○梨木委員 警察で食いとめられなかつた場合には、檢察廳へも手を打たなければならぬということで、あなたの方から鈴木さんが金を引出していると言われましたですね。
  147. 岩山明正

    岩山證人 はい。
  148. 猪俣浩三

    猪俣委員 その後あなたの方では、この事件警察だけでは食いとめられなくなつたというような話を、鈴木から聞いたことはありますか。
  149. 岩山明正

    岩山證人 私も自分のやつたことを逐一調べられておるうちに、これはとうてい警察なんかでとめられるものじやない。いずれは罪にきまるものだ。ただこの罪をなるべく情状を——私もある程度復興のためにやつたことでありまして、資材のいわゆる配給物を横流ししたとか、ごまかしたとかいうことをやつたつもりじやなくて、ただ進駐軍のいろいろな復興工事のために、その間いろいろな資材の需給関係のギヤツプを少くとも埋めて行くというようなつもりでやつたことですから、あまりいわゆる一般の横流しというような考えで調べられたのではたまらぬ。私もこういう人間だからというようなことを話しましたけれども、しかしやつたことは違反に違いがありませんから、これは必ず罰が來るものだ。しかし情状だけはよく見ていただきたい。需給関係のずれなんかもよく見ていただきたいというような氣持があつたものですから、罰は受けるけれども、その間の事情を見ていただきたいという氣持のために、なるほど警察では、とうてい私出るようにすることはできませんけれども、檢事局の方にでも行つたならば、よく考えていただきたいと思つておりましたところが、鈴木さんからもそういう話が出たものですから、もつともだと思つて出したわけです。
  150. 花村四郎

    花村委員長 そうすると檢察廳に行くことを知つて、そのための運動費と思つて出したわけですか。
  151. 岩山明正

    岩山證人 はあ、そうです。
  152. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今猪俣委員からもお伺いしたように、あなたが後藤の家に呼ばれる前に、つたのやで一度後藤に会つているのですね、後藤つぎに。
  153. 岩山明正

    岩山證人 はあ、そうです。
  154. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そこで、そのときによろしく頼むということを言つておるわけですね。
  155. 岩山明正

    岩山證人 はあそうです。
  156. 梨木作次郎

    ○梨木委員 鈴木へは、後藤に渡すべき金がその前に渡つておるはずですね。
  157. 岩山明正

    岩山證人 渡つてつたはずです。
  158. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから檢察懇和会というのを、これはどんなものか、あなたは内容について聞いたことがありますか。
  159. 岩山明正

    岩山證人 たしか檢事さんの親睦團体だというようなことを、鈴木さんから聞いて知つておりました。
  160. 梨木作次郎

    ○梨木委員 檢事さんだけですか。
  161. 岩山明正

    岩山證人 はあ。
  162. 花村四郎

    花村委員長 そうしますと、その金のうち警察の方の側を饗應したというような話を聞きましたか。
  163. 岩山明正

    岩山證人 後藤さんに呼ばれて、宮崎檢事さんの前でおしかりを受けた。あくる日に平林さんのところで、例の通り調べられるために出頭しておりましたら、終つてから平林さんに言われまして、岩山さん、あんたお金鈴木という新聞記者に出しているそうだけれども、あんな者に出したところで、われわれは決して動かされるものではない。鈴木があんたから金をとつて、われわれをおごつたとかなんとかいうけれども、とんでもない話だ。あんな者に今後だまされて金を出すのじやない。われわれはわれわれでもつてちやんと仕事をするんだからというようなことを言われましたので、これは鈴木最初壽警察の人を饗應したということはうそかと思つたのですけれども、確かめもしません。
  164. 花村四郎

    花村委員長 そこであんたの事件の結末はどうなりましたか。まだそのままですか。
  165. 岩山明正

    岩山證人 判決を受けました。
  166. 花村四郎

    花村委員長 どうなりました、判決は。
  167. 岩山明正

    岩山證人 会社は罰金十五万円。当事者の專務取締役岩山明正は罰金三万円という判決を受けました。
  168. 猪俣浩三

    猪俣委員 その鈴木記者から受取つた三通の書面は、今どこに行つているのですか。
  169. 花村四郎

    花村委員長 鈴木から受取つた三通の書面はどこにありますか。
  170. 岩山明正

    岩山證人 それは家内に預けてありますから、持つておるだろうと思います。
  171. 花村四郎

    花村委員長 あんたの家内に。
  172. 岩山明正

    岩山證人 はあ。
  173. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは香取檢事が持つておるのじやないか。香取檢事渡したのじやないか。
  174. 花村四郎

    花村委員長 あんたのうちにありますか。
  175. 岩山明正

    岩山證人 渡さなかつたと思います。
  176. 猪俣浩三

    猪俣委員 香取檢事はそれを出せと言わなかつたのですか。
  177. 岩山明正

    岩山證人 言いません。
  178. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとうちにあるのですか。
  179. 岩山明正

    岩山證人 家内が持つていると思います。
  180. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうですか。それを提出するように委員長から……。
  181. 岩山明正

    岩山證人 これはどうしたかわかりませんが、私は家内に、こういうものは、また何かあるといけないから、持つておくようにと言つて渡してあります。
  182. 花村四郎

    花村委員長 それではその手紙三通を当委員会に提出してください。
  183. 岩山明正

    岩山證人 家内に一應聞いてみますから……。
  184. 花村四郎

    花村委員長 それでは済みました。御苦労でした。  次は鈴木茂雄鈴木茂雄君ですか。
  185. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はい。
  186. 花村四郎

  187. 鈴木茂雄

    鈴木證人 四十九歳。
  188. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  189. 鈴木茂雄

    鈴木證人 新聞記者です。
  190. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  191. 鈴木茂雄

    鈴木證人 横浜市南区中島町二丁目二十七。
  192. 花村四郎

    花村委員長 大きい声をしてください。それで新聞記者はいつからおやりになつて、何新聞に入つておられますか。
  193. 鈴木茂雄

    鈴木證人 昭和八年からであります。最初に報知新聞におりました。その後國民新聞に轉じまして、都に入社いたしました。東京新聞に合併になりまして、一年間にして退職いたしました。
  194. 花村四郎

    花村委員長 なるべく大きい声でやつてください。念のために申し上げておきますが、前に申し上げたように、もし証人にお尋ねする過程において、自己の刑事責任を問われるような点に触れる場合には、もちろん証人証言を拒絶し默祕することができるのでありますから、御注意しておきます。  そこであなたは岩山というのを御承知ですか。
  195. 鈴木茂雄

    鈴木證人 知つております。
  196. 花村四郎

    花村委員長 どういう動機でお知りになつたのです。なるべくお答えは簡單に願います。
  197. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私がちようど防犯新聞を始めた当時、うちの社員が岩山氏のところに出入りしておりましたので、その関係で知つております。
  198. 花村四郎

    花村委員長 その岩山というのが、明治商会の專務をやつているのですが、明治商会の経済違反事件ができたことを御承知ですね。
  199. 鈴木茂雄

    鈴木證人 知つております。
  200. 花村四郎

    花村委員長 岩山警察へ行つて取調べを受けておつたときに、あなたがそこへ出入りしておつたので、知るようになつたのじやないですか。
  201. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは、警察でも岩山さんには再三会つておりますけれども、社員が出入りして、社員の紹介で知ることになりました。
  202. 花村四郎

    花村委員長 それからそこで岩山專務からあなたに対して、この経済違反事件のもみ消し運動を頼まれたことがありましたね。
  203. 鈴木茂雄

    鈴木證人 もみ消し運動ではなくして、岩山君の関係で日産化学という会社がございますが、その会社が表面に出ますと、岩山が営業が潰れてしまう。そのためにぜひ日産化学を出さぬように骨折つてもらいたいというので、当人の事件とは関係ない方面であります。
  204. 花村四郎

    花村委員長 それではもみ消し運動でなくして、日産化学をその事件に出さぬようにということなんですね。
  205. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  206. 花村四郎

    花村委員長 その出さぬようにということは、その取調べの衝に当つておる者に、なんとか運動してもらいたいという意味なんですね。
  207. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  208. 花村四郎

    花村委員長 そうでなくて、明治商会の経済違反事件についてもみ消し運動をやつてくれというので、岩山が頼んだということを今ここで供述しておりますが、それはあんたの考え違いじやありませんか。
  209. 鈴木茂雄

    鈴木證人 岩山さんのうちに参りましたときに、夫婦で話がありまして、現在違反にかかつている。しかしながら日産化学が出かかつているので、これが出てしまうと私の店はつぶれてしまうから、ぜひこの点を頼みたいというのが主であります。
  210. 花村四郎

    花村委員長 それでその運動の費用として金を渡されましたか。
  211. 鈴木茂雄

    鈴木證人 もらいました。
  212. 花村四郎

    花村委員長 それは何回に幾ら渡されましたか。
  213. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ちよつと日付は記憶しておりませんが、私の記憶としては九万円と記憶しておりましたが、当人から十万五千円と言われましたので、私の記憶違いだと思いまして、その通り陳述しております。
  214. 花村四郎

    花村委員長 そのほかに警察懇話会に一万円、もう一つ記者倶樂部に五千円渡されましたね。
  215. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは総合したものが十万五千円です。
  216. 花村四郎

    花村委員長 十万五千円のほかに一万五千円を渡された、こう岩山は言うているが、違いますか。
  217. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私はその金は預つておりません。
  218. 花村四郎

    花村委員長 それからその金はどうしましたか。
  219. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それはタバコと水菓子、そういう方面へ使いました。
  220. 花村四郎

    花村委員長 水菓子やタバコをどうしましたか。
  221. 鈴木茂雄

    鈴木證人 買い集めて、これは長期間にわたつてのことでありますけれども、壽の方に始終おせわになつておりますので、各署員に渡しております。
  222. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、岩山の問題に関して渡したのじやありませんね。
  223. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私も各警察に七、八年出入りしておりますので、特に岩山という名前を出さずに、私は品物を渡しております。
  224. 花村四郎

    花村委員長 ごちそうしたようなことはありませんか。
  225. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは岩山がやりましたけれども、私はやりません。その勘定を私が拂いました。
  226. 花村四郎

    花村委員長 それはいつどこでやりましたか。
  227. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それはつたのやで岩山が一回友人とやつたと思います。その後に後藤氏と岩山、私、平林とで飲んだときに、女中からでなく、後藤氏から聞いたことですが、岩山が友人をつれて來て飲んだときには、勘定が不拂いであつたということで、それを女中から請求されたので、私はそれを支拂いました。
  228. 花村四郎

    花村委員長 そうすると岩山の言うのには、その金は壽署に対する饗應費用、並びに後藤つぎ渡して、そして檢察廳の方をしかるべくやつてもらうという金で渡した。こうはつきり申しておりますが、それは違いますか。
  229. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私に当時話しましたのは、後藤さんに一應会わせてもらいたいという話がありましたので、私は岩山君の細君をつれて後藤氏の自宅を訪問いたしました。岩山氏はつたのやで一回後藤氏に会つたと思います。
  230. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、結局その金の性格はどういうものですか。
  231. 鈴木茂雄

    鈴木證人 やはり岩山としては、運動費として私に渡したと思つております。
  232. 花村四郎

    花村委員長 その運動費というのはどういうのですか。
  233. 鈴木茂雄

    鈴木證人 要するに日産化学が出ないために骨を折つてもらうための金だと思つております。
  234. 花村四郎

    花村委員長 その骨を折つてもらう金だが、その骨を折つてもらうというのはどういうことですか。
  235. 鈴木茂雄

    鈴木證人 警察方面でぜひ小範囲にとどめてもらいたい、また日産化学が警察取調べに乘らぬようにというのが趣旨であります。
  236. 花村四郎

    花村委員長 その趣旨はわかりますが、そうすると、そういう事柄に奔走するあなたの車代という意味か、あるいはまたそれによつて取調べの衝にあたつている者にごちそう等をして、その取調べを緩和して行くというような意味ですか、どちらですか。
  237. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私の経費もありましようし、また私といたしましても、警察の方に多少のつかい物もしなければならぬということを考えておりましたから、それで使うことは使つておりますが、その意味を含んでおります。
  238. 花村四郎

    花村委員長 両方の費用ですか。
  239. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  240. 花村四郎

    花村委員長 そこでお尋ねいたしますが、あなたが受取つたその金に対して、借用証書を入れられましたね。その借用証書を入れるに至つたいきさつはどういうものですか。
  241. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その借用証書でありますけれども、十万五千円預かりました中で、やはり自分の生活に使つた点もありますし、また金額も多過ぎるので後藤氏に話ましたが、一應それは自分でお借りしたということにして、借用証書にすべきではないか。また事実借りる際には、岩山にその都度お借りしますという言葉を使つてつたので、その点話ましたところ、後藤氏は、それは借用証書にすべきであるというので、後藤氏と一緒に行つて借用証書にしました。
  242. 花村四郎

    花村委員長 そうすると後藤には、その金は行つておりませんね。
  243. 鈴木茂雄

    鈴木證人 つたのやの支拂いの五千円は渡してあります。
  244. 花村四郎

    花村委員長 それ以外には行つておりませんか。
  245. 鈴木茂雄

    鈴木證人 行つておりません。
  246. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎの宅で檢事にお会いになつたことがありますか。
  247. 鈴木茂雄

    鈴木證人 後藤さんの家に出入りしておりますので、宮崎檢事さんにお会いしております。
  248. 花村四郎

    花村委員長 宮崎檢事だけですか。ほかの檢事にはお会いしておりませんか。
  249. 鈴木茂雄

    鈴木證人 会いません。
  250. 花村四郎

    花村委員長 どういう檢事が出入りしておるということは、わかりませんか。
  251. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は大体晝間に参りますので、どなたが出入りしておるか一回もお目にかかつておりません。
  252. 花村四郎

    花村委員長 それで富田檢事にお会いしませんでしたか。
  253. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは最後電話で呼び出しがあつたときに、富田檢事さんに会いました。
  254. 花村四郎

    花村委員長 それは檢察廳でですか。
  255. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  256. 花村四郎

    花村委員長 それはこの事件についてですか、あるいはほかの事件についてですか。
  257. 鈴木茂雄

    鈴木證人 この金の件につきまして、その理由を問われましたので、事情を述べまして、こういうわけで借用証書になつておるということを申し上げましたところ、富田檢事さんから、借用証書になつておるものは、できるだけ一日も早く解決すべきだというお話がありました。
  258. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、あなたの岩山からとつた金について不正があるということで、この事件富田檢事が取上げて取調べをしたのか、あるいは富田檢事個人の考えであなたと岩山との間の事件について注意を與えた、こういうのですか、どちらですか。
  259. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは事件に対して、富田檢事さんが私的でなしに、公的に私を取調べました。
  260. 花村四郎

    花村委員長 そうして取調べてから調書をつくりましたか。
  261. 鈴木茂雄

    鈴木證人 聽取書は書きません。
  262. 花村四郎

    花村委員長 そうすると口で聞いて聞きつぱなしですね。
  263. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その折に富田檢事さんから、上司に報告するというお話がありました。
  264. 花村四郎

    花村委員長 それだけのことで、事件はそのままになつてしまつたわけですか。
  265. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その当時岩山に支拂つてつた受取書その他を持つて行きましたところ、富田檢事さんからは、借用書になつておるのだから、今後正確に支拂つてもらいたいという話があつて、いずれ上司に報告するという話がありました。
  266. 花村四郎

    花村委員長 それで済んでしまつたのですね。
  267. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その後呼出しはありません。
  268. 花村四郎

    花村委員長 それであなたが後藤つぎのところに行つたときに、ちようど富田檢事も來ておつて、そこで岩山から受取つた金に対して借用証にする方がよいというような忠告を與えたことはありませんか。
  269. 鈴木茂雄

    鈴木證人 富田檢事さんからはありません。
  270. 花村四郎

    花村委員長 それから宮崎檢事からはありますか。
  271. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは後藤さんのところで私が話をしておりましたときに、宮崎檢事さんと同一場所におりましたから、宮崎檢事さんから、それは一番よい方法だということを申されました。
  272. 花村四郎

    花村委員長 その方がよいと言うて、宮崎檢事が勧めたわけではありませんね。
  273. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうではありません。
  274. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質疑がありますか。
  275. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは岩山に対して、手紙であるか手記であるか、出されたことがありますか。
  276. 鈴木茂雄

    鈴木證人 あります。
  277. 猪俣浩三

    猪俣委員 何回ですか。
  278. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二回です。
  279. 猪俣浩三

    猪俣委員 三回じやないのですか。
  280. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二回だと思つております。
  281. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはどういう趣旨のものですか。
  282. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私が借用証書を入れる前のことで、家庭的に非常に苦しみましたから、この問題が他に累を及ぼすようなことがあつては困る。私は私として解決づけたいと思つておるということを、一回書いたと思います。
  283. 猪俣浩三

    猪俣委員 自分一人が悪者になつて、犠牲になるというような意味ではなかつたのですか。
  284. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その点はちよつと記憶しておりませんが。
  285. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからどうも事がぐあいが悪くなると、義理も人情も欠くやつばかりだというようなことを書いておらぬですか。
  286. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういう点は書いたかもしれませんが、ここではつきり記憶を持つておりません。
  287. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういうことを書いたとすると、結局はこの十万五千円というものは、あなたの自宅の金として費消したばかりではない。岩山の願いによつて、相当やはり他に運動した金であるのに、あなた一人が使つてしまつたように思われるのが心外という意味ではないのですか。
  288. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういう意味ではありません。
  289. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう意味ですか、自分一人が悪者になるということは。
  290. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その悪者になることは、その点は話はありませんが、自分としてはそういう文面を書いたことはないように記憶しております。これは檢察廳で申されたので古い話でありまして、はつきりと記憶しておりません。
  291. 猪俣浩三

    猪俣委員 手記というのは、どういう動機でそういう手記をお書きになつたのですか。
  292. 鈴木茂雄

    鈴木證人 手記というものではありません。私は單に岩山氏に手紙を書いただけでありまして、手記ではありません。
  293. 猪俣浩三

    猪俣委員 手紙を書いた動機はどういうものですか。
  294. 鈴木茂雄

    鈴木證人 やはり私としては家庭で使つておりましたので、申訳ないので、その意味をその中に書いていたと思います。
  295. 猪俣浩三

    猪俣委員 十万五千円を全部運動費に使わぬで、幾分かを自分の家庭の費用に使つたのが、どうもいささかぐあいが悪いのでお書きになつたのですか。
  296. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。その点をわびてあります。
  297. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると大体十万五千円のうち、何ぼぐらいが運動費に使われましたか。
  298. 鈴木茂雄

    鈴木證人 岩山氏の支拂いその他をしまして、約六万円ぐらいになるのではないかと思います。
  299. 猪俣浩三

    猪俣委員 六万円ぐらい運動費にお使いになつたと言いますが、それはどういう方面にお使いになりましたか。
  300. 鈴木茂雄

    鈴木證人 カフエー・ライオンで使いましたのが一万円。
  301. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはだれとだれでお使いになつたのですか。
  302. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは岩山氏が行つておりましたが、私はその場に行つておりません。
  303. 猪俣浩三

    猪俣委員 岩山氏とだれか……。
  304. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はあ。
  305. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは警察関係の人ですか。
  306. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは岩山さんに聞きましたところ、警察の方だと言つておりました。
  307. 猪俣浩三

    猪俣委員 警察の方と岩山氏が行つてライオンで一万円だが、それから……。
  308. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それからつたのやで岩山氏が友人と飲んだ勘定が五千円。
  309. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから。
  310. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それだけであります。
  311. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、一万五千円ではありませんか。
  312. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  313. 猪俣浩三

    猪俣委員 あとの四万五千円はどうしましたか。
  314. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ここで申し上げてどうかと思いますが、進駐軍のタバコを買つたので、この金額が相当多額に上りました。
  315. 猪俣浩三

    猪俣委員 それをどこへやつたのですか。
  316. 鈴木茂雄

    鈴木委員 壽警察署へやりました。
  317. 猪俣浩三

    猪俣委員 大体何人くらいにやりましたか。
  318. 鈴木茂雄

    鈴木證人 大体何人といいますと……。
  319. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはだれに渡しましたか。
  320. 鈴木茂雄

    鈴木證人 個人々々であります。
  321. 猪俣浩三

    猪俣委員 その中には平林君、榊君が入つておりますか。
  322. 鈴木茂雄

    鈴木證人 榊君は知りません。平林さんには一個か二個渡しております。
  323. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると四万何ぼタバコになつたのですか。
  324. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そのほかに水菓子があります。
  325. 猪俣浩三

    猪俣委員 タバコと水菓子をお買いの割合は、どれくらいになつておりますか。
  326. 鈴木茂雄

    鈴木證人 タバコが約八割以上になつております。
  327. 猪俣浩三

    猪俣委員 タバコが八割以上、そうすると四万の八割、三万何ぼがタバコになつておりますね。三万何ぼというと、どれくらいのタバコですか。
  328. 鈴木茂雄

    鈴木證人 百七、八十箇です。
  329. 猪俣浩三

    猪俣委員 それを壽署にやつたのですか。
  330. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そのうち私も吸つておりますから、壽署に百箇ほどではないかと思います。全部ではありません。
  331. 猪俣浩三

    猪俣委員 つたのやに後藤つぎがおつて後藤平林を呼んで話をつけるからということで、あなたが岩山を案内してつたのやへ行つたのではありませんか。
  332. 鈴木茂雄

    鈴木證人 行きました。
  333. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときにだれがつたのやにおりましたか。
  334. 鈴木茂雄

    鈴木證人 後藤氏、私、岩山氏、平林氏の四人であります。
  335. 猪俣浩三

    猪俣委員 平林岩山後藤にあなたですか。
  336. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  337. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときに平林岩山は会見しましたか。
  338. 鈴木茂雄

    鈴木證人 知りません。
  339. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときにはどんな話をしましたか。
  340. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私もその席に長くおりませんのではつきりわかつておりませんが、後藤氏から平林氏に日産化学の話をすることになつておりました。ところが平林氏は、現在の立場ではおもわしくないので、いずれということで、二十分間くらいで別れて帰りました。
  341. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときは飲食しませんでしたか。
  342. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その際に後藤さんから、暑いからというのでビール一本をたしか出してくれました。
  343. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると五千円というのは、そのときの勘定ではないのですか。
  344. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そのときではない、別な勘定です。
  345. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは岩山が友人をつたのやへ連れて行つて飲んだ勘定ですか。
  346. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。女中に聞きました。
  347. 猪俣浩三

    猪俣委員 それをあなたが拂うというのは、おかしいのではないですか。
  348. 鈴木茂雄

    鈴木證人 宴会で飲んだ帰りに、おれは岩山だから、あとで拂うということになつたままなのです。後藤さんが岩山を知つておるので、後藤さんに電話をかけましたところが、後藤さんは何が何だかわからぬ。それは鈴木が拂うべきだというので私が拂つたのです。
  349. 猪俣浩三

    猪俣委員 岩山岩山の友人を連れて行つて飲んだのを、あなたが拂うのはおかしいではないですか。
  350. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは後日のことで、その当時はわかりませんでした。
  351. 猪俣浩三

    猪俣委員 わからないけれども、あなたというものはそれには関係のないことでしよう。それをあなたが拂うことを後藤が直感するのは、どういう意味ですか。
  352. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは檢事さんに申し上げましたのですが、私は当時ビール一本で五千円の勘定は高過ぎるからと言うと、檢事さんは、それは宴会の費用ではないかという話がありましたので、私は違うと申しておりました。ところが証拠がありませんので困つておりましたときに、女中から話がありまして、当時は岩山さんと知らない方が三、四人來て飲んだ勘定であるのだ、ところが鈴木さんが関係しておつたから……。
  353. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは正直に言つていただきたいのだが、岩山の友人が飲んだものを、後藤つぎ鈴木が拂うべきだと言つて鈴木に拂わせる道理はないと思う、あなたはいなかつたのだから。その岩山さんと一緒に飲んだという人は、警察関係の人か、檢察関係の人かわからないのですか。
  354. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それはわかりません。私は立ち会つておりませんから。
  355. 猪俣浩三

    猪俣委員 岩山が友人と飲んだものを、鈴木が拂うべきだと言うことは……。
  356. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時私は知らずに後藤さんに拂いました。それは最近でございました。女中から聞きまして……。
  357. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは、岩山が飲んだというのは、きつと檢察檢事関係の人だろうと思つてつたのですか。
  358. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうではありません。後藤平林岩山、私の四人で飲んだ勘定を請求されたと思つて檢事さんに申し上げたように——檢事さんもビール一本の勘定では高過ぎるから、ほかの意味も含んでおるのではないかと申されましたけれども、そういう意味ではないと私ははつきり申し上げておきました。最近一箇月前に女中から私が聞きましたところが、当時と意味が違う、こういう話でありまして、岩山さんの勘定は拂うべきではなかつたということを申し上げておきました。
  359. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今の尋問でほぼ外廓はわかりましたが、一、二点お尋ねしておきたいと思います。あなたはこの岩山事件に関連いたしまして、お金をもらつた。このお金のことで檢事取調べを受けたと言うのですが、この檢事取調べをお受けになるときは、何か勾引状でも参りましたか。それとも電話か何か。
  360. 鈴木茂雄

    鈴木證人 電話であります。
  361. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 どういう電話でありましたか。
  362. 鈴木茂雄

    鈴木證人 檢察廳に出頭するようにという電話でした。
  363. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 ただそれだけの電話ですか。
  364. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  365. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そのときにあなたは、どう感じましたか。
  366. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は何の意味かわからずに、富田檢事さんの所に参りました。
  367. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 何の意味かわからずに行つた
  368. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  369. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 聞くところによると、この事件についてあなたは相当良心にとがめておつたというか、相当に苦慮なさつておる。檢事さんから電話があると同時に、今夜はとめられるのだということを覚悟して行くということを、あなたの知人なんかにお漏らしになつたということはありませんか。
  370. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは最後富田檢事さんからお話がありましたが、そういう観念は持つておりません。
  371. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それであなたとしては、この事件について調書もとられなかつたと言うのですね。
  372. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。富田檢事さんからは、とられておりません。
  373. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうして処罰も受けなかつた
  374. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ええ。
  375. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたも防犯新聞記者ですから、この事件の内容は、法律のしろうとであつても多少おわかりでありましようが、調書もとられないで、とがめも受けなくて、この事件がこのまま済んだということに対して、自分自体としてどういうふうにお考えになりましたか。
  376. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私としては借用証書は貸借関係になつてつたので、処罰されずに済んだものと思つております。
  377. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そう單純にお考えになつておるのですか。
  378. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  379. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 おかしいじやないですか。十万五千円というのはたいへんな金額ですね。しかもあなたの手段たるや、社会的な責任から言つて檢事警察に対して非常な汚点をつけた。そうして新聞記者の名誉というものを非常に汚した。これは何の事件よりも私たちから考えると重い事件だと考える。檢察に傷をつけ、不名誉を與へ、警察を疑惑の眼で見させ、新聞記者の体面を汚した。その重大事件が調書一本もとられずに、そのまま帰されたということが、ただ借用証書一本で済んだというのは、ほんとうにおかしいじやないですか。
  380. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時の富田檢事さんの取調べのときには、そういう考えを自分で持つたのであります。
  381. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今はどうですか。
  382. 鈴木茂雄

    鈴木證人 今は持ておりません。私としては実際申訳ないと考えております。またこれが実際警察でどういうように処分されるか、私はまだ考えておりません。
  383. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 香取檢事のところでは調書をとられたか。
  384. 鈴木茂雄

    鈴木證人 とられました。
  385. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 どういう調査を……。
  386. 鈴木茂雄

    鈴木證人 最初から最後まで申し上げて、調書にとつて捺印しております。
  387. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そのとき岩山香取檢事に調書をとられておりますか。
  388. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私同日に会つておりませんから……。吉積檢事さんのときには会つたと思いますが、香取檢事のときには会つたことはありません。
  389. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 吉積檢事取調べを受けて、香取檢事取調べを受けるまでには、どれくらいの期間がありましたか。
  390. 鈴木茂雄

    鈴木證人 約二十日間以上ありました。
  391. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 高田檢事はなぜ調書をとらなかつたと思いますか。
  392. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その当時は私はそう深い考えは持つておりませんでした。
  393. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この人はやめたのですね、富田さんというのは……。
  394. 鈴木茂雄

    鈴木證人 どこかへ轉任なさつたということを聞いております。
  395. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 その後やめたということは聞いておりませんか。
  396. 鈴木茂雄

    鈴木證人 聞きません。
  397. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 轉任になつた理由は御存じないですか。
  398. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ありません。ただ私は異動表でわかりました。
  399. 田万廣文

    ○田万委員 問題の借用証書の内容について、ちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  400. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ただ普通の借用証書に、家屋が担保に入つております。
  401. 田万廣文

    ○田万委員 具体的な内容は……。
  402. 鈴木茂雄

    鈴木證人 右まさに借用候なりとして、担保物件に井戸ケ谷下町百二十七番地の家屋が担保に入つております。
  403. 田万廣文

    ○田万委員 支拂期間……。
  404. 鈴木茂雄

    鈴木證人 一年ちよつとであります。
  405. 田万廣文

    ○田万委員 正確に言うと、いつが支拂期日ですか。
  406. 鈴木茂雄

    鈴木證人 去年の暮れだと思います。
  407. 田万廣文

    ○田万委員 この金は全部拂つておりますか、その暮れに。
  408. 鈴木茂雄

    鈴木證人 いいえ、拂つておりません。
  409. 田万廣文

    ○田万委員 なぜ拂わないか。
  410. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私の方で、これはちよつと家庭的の話になりますけれども、家内がずつと入院しておりましたので、現在まだ病氣にかかつておりまして、その関係でとうてい私ども拂えません。私ばかりじやありません。子供等の金ではとうてい支拂いができなかつた
  411. 田万廣文

    ○田万委員 全部拂つておりませんか。
  412. 鈴木茂雄

    鈴木證人 小さくは支拂つております。約二万ちよつとになつております。
  413. 田万廣文

    ○田万委員 なお尋ねますが、今の委員長取調べに対して、問題にならぬのは貸借関係になつておるから問題にならなかつた。問題にならなかつたのが当然だと思うというような陳述があつたように思うが……。
  414. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういう意味ではありません。富田檢事さんからお取調べを受けて、そのまま帰されたのは、借用証書の観点ではなかつたかという観念を持つたのであつて、そのために処罰されないとは考えておりません。
  415. 田万廣文

    ○田万委員 なかつたかという観念……、それでは十万五千円の使途については、猪俣委員その他からお尋ねがあつたに対して、あなたが答えておるところは、車代とか運動費にいつたということですね。
  416. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はあ。
  417. 田万廣文

    ○田万委員 そうすると今あなたが供述なさつた中に、金を数回受取るときに、一々お借りするということで借りたというが、これはどういうことになるのですか。
  418. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういう貸借関係にするための意味ではありません。ただ私はそういう言葉を常に使つてつたというだけのことです。
  419. 田万廣文

    ○田万委員 それを使うという意味は、どういう意味で使うと言つたのか。自分のために使うというのならば、自分が借りるということは言えるが、人の運動費に使うための金を、自分が借りるということはおかしい。
  420. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私としては深い考えは持ておりません。
  421. 田万廣文

    ○田万委員 深い考えは持つてないというが、借りたというのが正しいのか、運動費に充てたというのが正しいのか。
  422. 鈴木茂雄

    鈴木證人 運動費が正しい。
  423. 田万廣文

    ○田万委員 具体的には運動費使つておりますか。
  424. 鈴木茂雄

    鈴木證人 言葉でお借りしますと言つただけであります。
  425. 田万廣文

    ○田万委員 実際法律的な関係においては、貸借関係でなかつたというように聞いてよいわけなんですね。
  426. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  427. 花村四郎

    花村委員長 証人に念のために御注意をいたしておきますが、先ほども申し上げたように、事実を述べず、虚偽の陳述をいたしますると、制裁を受くることがありますから、御注意を願いたいと思います。
  428. 金原舜二

    ○金原委員 これは私ども非常に不審に思うのですが、先ほどから伺いますと、猪俣さんからもいろいろお話があつたが、あなたが人の飲んだやつを支拂う。カフエー・ライオンで一万幾ら、これも岩山さんが飲んだのを、やはりあなたが支拂つた。それだけでも一万五千円からを拂つた。しかも運動費に六万円以上使つておるあなたが、どうして借用証書を入れなければならぬかということが、私にはふしぎにたえないのですが、どういうわけですか。運動を頼まれて、あなたが運動なさつた。しかも六万円以上使つて、残りの四万幾らになるものに対して、どうして九万円の借用証書を入れなければならぬか。
  429. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私としては家庭に使いましたのと、病人のために使いましたので、非常に苦しみまして、やはり全般的に借用証書にした方がいいという考えを自分で持ちました。
  430. 金原舜二

    ○金原委員 した方がいいと言うけれども、それは自分でお使いになつたということもあるだろう。というのは今お話のように、大部分六万円以上も現に運動費使つておられるのだから、九万円の借用証書を入れたということはどうもおかしいと思う。結局事実運動費使つたけれども、そういうことを言つて人に迷惑をかけてはいかぬから、自分が背負おうというようなことではないですか。私ども常識的に考えると、それが非常におかしいのです。ここではあなたの刑事責任の問題を論議するのでも追究するのでも何でもない。全体のいわゆる官廳の綱紀を粛正する意味で、あなた方に協力を願うという意味だから、そういう意味でお答え願いたい。
  431. 鈴木茂雄

    鈴木證人 借用証書の点につきましては、ただいまのお問いの九万円の云々でありますけれども、私としては総合的な借用証書を入れるのが一番いいという考えを持つておりました。それで運動費として使つたから、その運動費を差引いた金額を入れるのが妥当だと考えております。しかしながら私としては使つたものが、その結果が警察官に多少でも流れたということに対して私も考えておりましたので、先々のことを考えた結果が、総合的な借用証書を入れるという考えを持つたのであります。
  432. 金原舜二

    ○金原委員 そうすると、大体においてあなたは、この運動をなさるということよりも、檢察廳とか警察で使うということよりも、自分が奔走してやる。その謝礼としてひとつとろうという頭で最初にお話になつたのですか。
  433. 鈴木茂雄

    鈴木證人 違います。
  434. 金原舜二

    ○金原委員 そうでないと、これはりくつに合わない。
  435. 鈴木茂雄

    鈴木證人 今申し上げた通り、私としては後日官廳関係の方に迷惑をかけることをきらいましたので、総合的に借用証書を入れたのです。本來ならば自分の家庭に使つたものを借用証書に書けばよいのですが、官廳方面に多少使つておりますから、それが後日問題化いたとき御迷惑をかける、そういう関係からであります。
  436. 金原舜二

    ○金原委員 それは結局壽警察だけですか、檢察廳の方に多少使いましたか。
  437. 鈴木茂雄

    鈴木證人 檢察廳には私全然出入りしておりません。
  438. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この借用書を入れるという場合は、どういうきつかけからこんな問題が起つたのですか。
  439. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私さつき申し上げた家庭の方、病人の方へ使いましたので、非常に苦しんでおりました。その関係で……。
  440. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうしてだれかから証書を入れた方がよかろうというような話が、最初のきつかけになつたのですか、それともあなたが自発的に証書を入れようということでやつたのですか、その点は……。
  441. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私からであります。
  442. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたからですか。
  443. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  444. 梨木作次郎

    ○梨木委員 だれからも言われておりませんか。
  445. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私からその考えをもちまして、相当苦しみましたものですから、自分一人だけの考えとしてはどうかと思いまして、お世話になつておりました後藤さんのところに参りまして、その点を話しましたところが、後藤さんも借りておるかどうかということを確かめようということで、後藤さんと私と岩山さんのところに参りまして、間違いなく岩山さんが貸してやろうというお話がありましたので、それではなおさら借用書を入れるのが妥当であるという話になりました。
  446. 梨木作次郎

    ○梨木委員 こういうことはございませんか。あなたは後藤さんに金を渡すのだと言つて岩山さんから金をもらつて、しかも後藤さんは一銭ももらつておらないので、後藤さんは非常に迷惑をしておるということで、後藤さんが困るから、あなたは岩山の方に証書を入れてもらいたいというように言われたのじやないですか。
  447. 鈴木茂雄

    鈴木證人 後藤さんからそんな話はありません。
  448. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうですか。先ほどの岩山さんの話ではそういうことになつております。
  449. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それですから私が、後藤さんに配したのです。そうしたら後藤さんが、それは借用証書にするのが一番よいと言うので、後藤さんと私と岩山さんの家に参りましてその話をいたしました。
  450. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それはよろしい。そこであなたが相談に行つたときに、どういう機会に宮崎檢事に会つたのでありますか。
  451. 鈴木茂雄

    鈴木證人 宮崎檢事は当時後藤さんの家に住まつておりました。朝参りましたら、檢事さんがちようど朝食時で、御出勤前であつたのでお目にかかりました。
  452. 梨木作次郎

    ○梨木委員 どこで。
  453. 鈴木茂雄

    鈴木證人 その部屋であります。
  454. 梨木作次郎

    ○梨木委員 宮崎檢事の……。
  455. 鈴木茂雄

    鈴木證人 いや、後藤さんの部屋であります。
  456. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたがそこに入る前に、宮崎檢事はそこにおつたのですか。
  457. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  458. 梨木作次郎

    ○梨木委員 宮崎檢事とあなたはその前から顏見知りですか。
  459. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二、三回お目にかかつておりますけれども、何にも話をしたことはありません。
  460. 梨木作次郎

    ○梨木委員 しかし宮崎檢事ということを紹介しないのに、なぜ宮崎檢事だということがあなたにわかつたのですか。
  461. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは家族の方が宮崎さんとおつしやつたから、宮崎さんだと思います。
  462. 梨木作次郎

    ○梨木委員 宮崎さんと言つても、宮崎檢事だということがどういうことでわかつたのですか。
  463. 鈴木茂雄

    鈴木證人 檢事さんが同居しておるということを聞いておりました。
  464. 梨木作次郎

    ○梨木委員 檢事さんが同居しており、宮崎さんということを言われたから、宮崎檢事思つたのですね。
  465. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  466. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたがこの問題で苦しんで後藤さんに相談されたわけですが、その一部始終は宮崎檢事は聞いておりましたか。
  467. 鈴木茂雄

    鈴木證人 わきにおりましたから、聞いておつたと思います。
  468. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それで最初あなたは二万五千円の証書を何か使いの者をして岩山さんに届けさせたということはあるのですか。
  469. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは私が身体が悪いので、家内が持つてつたのであります。
  470. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういうことはありますね。
  471. 鈴木茂雄

    鈴木證人 あります。
  472. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そのとき二万五千円、そうしてその後また六万円の証書を入れておりますね。
  473. 鈴木茂雄

    鈴木委員 そうです。
  474. 梨木作次郎

    ○梨木委員 最初二万五千円の証書を入れて、なぜあとから六万五千円の証書を入れたのですか。
  475. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時の私の考えはちよつと記憶にありませんけれども、私の考えとしては、家庭の方に使うことが先決だということで二万円出しました。
  476. 梨木作次郎

    ○梨木委員 つまり二万円ですか、二万五千円ですか。
  477. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はつきり記憶しておりませんが、二万五千円じやないかと思つております。
  478. 梨木作次郎

    ○梨木委員 二万円か二万五千円の証書を入れたのはそれだけですか。家計費に使つたからこれだけ入れよう、そういう氣持になつたのでありますか。
  479. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  480. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その後さらに六万五千円入れれたあなたの氣持は……。
  481. 鈴木茂雄

    鈴木證人 先ほど申し上げた通りであります。官廳その他警察に流れておりますので、御迷惑のかかることをおそれまして、私の借用証書にしたわけであります。
  482. 梨木作次郎

    ○梨木委員 最初の分は、純然たる家計費に使つたので、その分として入れる。あとの六万五千というのは、これは運動費として使つたのであるが、迷惑をかけては悪いということで、さらに六万五千円の証書を入れたということになるのですね。
  483. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  484. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたは岩山さんとは、何かものを頼まれれば一はだ脱いでやらなければならないような義理はあるでしようか、ないでしようか。
  485. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時の会社の方では、相当社員が毎月のように営業廣告その他で御援助願つております。
  486. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうするとこういうことを、岩山から今の事件の問題の運動を頼まれて、ただでいろいろ運動してやらなければならないような義理合いになるのですか、ならないのですか。
  487. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時私としては警察のもみ消し運動が、日産化学が出れば岩山さんの商賣が破滅するというので、奥さんと二人で泣いて頼まれたのが動機であります。
  488. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると、そういうぐあいに頼まれれば、一銭ももらわなくとも運動をやらなければならないという筋合いになるのですか。
  489. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういう考えを持ちまして、金をいただきましたのは相当日がたつてからいただいております。
  490. 梨木作次郎

    ○梨木委員 次にもう一点伺いますが、警察懇話会というのがあるのですが、横浜地檢内にあるのを御承知ですか。
  491. 鈴木茂雄

    鈴木證人 知りません。
  492. 花村四郎

    花村委員長 最後ちよつとお尋ねしますが、あなたの今までの供述によると、結局岩山から金をとつたのではあるが、岩山事件に関して使つたのじやないのですね。警察にタバコを持つて行つたというのであるが、それは岩山事件関係して持つて行つたという意味じやないのですね。
  493. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は岩山名前を出せば警察官はとりませんから。岩山名前を出さないでも、私はもみ消しをやつておることは、警察官が動いておることは知つておりますから、岩山名前は使わずに私は出しております。
  494. 花村四郎

    花村委員長 そうすると岩山という人から離れて、あなた個人の立場で持つて行つたというわけでありますね。
  495. 鈴木茂雄

    鈴木證人 表面上はそういうふうにしておきたいから、そういう行動をとつております。
  496. 花村四郎

    花村委員長 取調べは初め富田檢事から受けて、その次は香取檢事ですね。
  497. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二番目は吉積檢事です。
  498. 花村四郎

    花村委員長 三番目は……。
  499. 鈴木茂雄

    鈴木證人 三番目は香取檢事です。
  500. 花村四郎

    花村委員長 吉積檢事は調書をとつたのですか。
  501. 鈴木茂雄

    鈴木證人 とりました。
  502. 花村四郎

    花村委員長 香取檢事はとりましたか。
  503. 鈴木茂雄

    鈴木證人 香取檢事も書かれております。
  504. 花村四郎

    花村委員長 とつたのですか。
  505. 鈴木茂雄

    鈴木證人 とつております。
  506. 花村四郎

    花村委員長 その事件の結末はどういうふうになりましたか。
  507. 鈴木茂雄

    鈴木證人 まだ呼び出しがございますから、結果はわかりません。
  508. 花村四郎

    花村委員長 今まだ調べられておるのですか。
  509. 鈴木茂雄

    鈴木證人 おるのです。
  510. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、初めの富田檢事から調べを受けたのはいつですか。
  511. 鈴木茂雄

    鈴木證人 一昨年の暮だと思います。
  512. 花村四郎

    花村委員長 一昨年というと二十二年ですね。
  513. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二十二年の暮だと思います。
  514. 花村四郎

    花村委員長 十二月ですね。
  515. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はい。
  516. 花村四郎

    花村委員長 それから吉積檢事取調べを受けたのはいつですか。
  517. 鈴木茂雄

    鈴木證人 本年の三月からであります。
  518. 花村四郎

    花村委員長 二十四年ですね。
  519. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  520. 花村四郎

  521. 鈴木茂雄

    鈴木證人 連続的にやられております。
  522. 花村四郎

    花村委員長 三月以降——そうするとこの吉積檢事からかわつたわけでありますね。係りが二人でやつておりますね。
  523. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二人でやつております。
  524. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 單刀直入にお聞きしますが、さつき岩山にお聞きいたしましたところによりますと、あなたの方から、委員長も申されておりましたように、警察懇話会に一万円、それから記者倶樂部に、新聞に載ると困るからというので五千円ということで金を請求されて出したと言つておりますが、そういう請求はなされないと言うですか。
  525. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私はもちろん、新聞記者倶樂部でどうこうということを申し上げたことはないと思つております。
  526. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 しかし岩山さんはうそは言わぬだろうと思いますね。
  527. 鈴木茂雄

    鈴木證人 ちよつと変な話ですが、岩山氏が先ほど話したのは、一万円を飲食代にしましたのを、とことんまで突張るのであります。私にはわかつておるのですが、自分のことになるとお互いにどういうふうになるかわかりませんが、そういうふうに逃げられますので、非常に迷惑しております。
  528. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この警察懇話会というのは檢事局にあるのですね。
  529. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は出入りしておりませんから知りません。
  530. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたは出入りしていない……。さつきの岩山の話を聞きますると、岩山檢事取調べておつたその席上に、あなたが出入りしておつた、そういうことは警察ですか。
  531. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そういうことは警察です。
  532. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 警察ですか。それではよろしゆうございます。
  533. 花村四郎

    花村委員長 それではこれで済みましたが、なおお尋ねする場合があるかもしれませんから、最後まで残つていていただきたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後一時二十五分開議
  534. 花村四郎

    花村委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  この際後藤つぎ君は病氣のため來られませんので、委員派遣の申請を議長に提出いたし、委員派遣の承認を得られましたら、委員を後藤つぎ君のところへ派遣して本問題の調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  535. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。  会期は本日終了しますので、かねて議長に申し出てあります閉会中の審査が承認され、議院より本問題を付託された場合に、ただいまの委員派遣が行われるということを念のため申し上げておきます。また先日委員派遣の申請をいたしました徳島縣の派遣に加えまして、長野縣の刑務所における受刑者の取扱いに関して、委員派遣の申請をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  536. 花村四郎

    花村委員長 御異議なしと認めて、さようにとりはからいます。なお随行として村專門員及び小木專門員を随行させたいと思いますが、さよう御了承を願います。  ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  537. 花村四郎

    花村委員長 速記を始めてください。     —————————————
  538. 花村四郎

    花村委員長 次は橋本証人橋本千代雄君ですか。
  539. 橋本千代雄

    ○橋本證人 そうです。
  540. 花村四郎

  541. 橋本千代雄

    ○橋本證人 当四十八年。
  542. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  543. 橋本千代雄

    ○橋本證人 官吏。横浜地方檢察廳檢事です。
  544. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  545. 橋本千代雄

    ○橋本證人 現住所は横浜市南区中里町二百四十番地。葛谷一郎方。
  546. 花村四郎

    花村委員長 現在の横浜檢察廳檢察官になられたのはいつですか。
  547. 橋本千代雄

    ○橋本證人 昭和二十二年四月——日は忘れましたが、下旬に関西の姫路から轉任して参りました。四月下旬であります。
  548. 花村四郎

    花村委員長 そして現在奉職しておりますね。
  549. 橋本千代雄

    ○橋本證人 奉職しております。
  550. 花村四郎

    花村委員長 花園纖維株式会社というガラ紡横流し事件が起きたことを御承知ですか。
  551. 橋本千代雄

    ○橋本證人 承知しております。
  552. 花村四郎

    花村委員長 その事件はあなたが担当されたわけですか。
  553. 橋本千代雄

    ○橋本證人 事件警察が立件した当時という意味でございましようか。今度の捜査については私が担当いたしました。
  554. 花村四郎

    花村委員長 今度ですね。そうすると初まりはだれかほかの檢事檢察官がやつておられたのですか。
  555. 橋本千代雄

    ○橋本證人 初まりは富田檢事が、昭和二十三年の四月下旬ごろに担当したと聞いております。
  556. 花村四郎

    花村委員長 それで現在はこれはどうなつておりますか。
  557. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは現在未処理だそうです。
  558. 花村四郎

    花村委員長 記録が紛失したというような話がありますが、そういう事実をお知りですか。
  559. 橋本千代雄

    ○橋本證人 そういう話を知つております。これは今回の木船事務官を私が取調べるにあたつて、その自分の被疑事実のほかに、木船事務官が供述したことの一つでありまして、今回木船事務官の供述したことによつて、初めて記録紛失のことがあるということを知りましたし、またそういうことが廳内にもつぱらの評判であるということを私が知りました。
  560. 花村四郎

    花村委員長 それで花園纖維事件というのは大体どういう事案ですか。
  561. 橋本千代雄

    ○橋本證人 資料を見てよろしゆうございましようか。
  562. 花村四郎

    花村委員長 はい。——概略をおつしやつてください。
  563. 橋本千代雄

    ○橋本證人 愛知縣岡崎市の元能見町にある纖維製品を生産をしておる某株式会社でありますが、昭和二十年の二月ごろから二十三年の五。六月ごろにかけてガラ紡の賣物生地四万三千六百八十ヤールを東京筋の地方檢察廳にあたる司法省の廳員組合、それから警視廳の刑事部、東京の中央電話局、厚生省、それから横浜市の交通局從業員組合等にチケツトなしで、無切府でやみ流ししたという事件であります。そしてそのチケツトなしというのも、これらの数官廳が、形の上ではボロきれを前もつて提供して、そうしてそのボロきれを加工賃を拂つて再製してもらうという形の契約書を事前に入れて、それによつて加工賃だけ拂つて再製品をもらうのであるという契約書が入つてつたのであるけれども、事実その契約書に基いてボロの洋服またはその他これに該当するこれを事前に提供したものはなく、中途で出したものが、横浜の市電從業員組合が一部分提出しただけであつて、あとは全部提出してない。いわば俗に言うインチキ的な無切府の讓渡であるということであります。
  564. 花村四郎

    花村委員長 この事件檢事局で捜査を始められることになつたのですが、最初に担当した檢察官はどなたですか。
  565. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私もこれは今回木船事件を調べて初めて知つたのですが、富田檢事であるということを聞き知りました。
  566. 花村四郎

    花村委員長 宮田檢事で、それは取調べが進められたわけですか。取調べの進行並びにその結果について、知れる範囲においてお述べを願いたいと思います。
  567. 橋本千代雄

    ○橋本證人 横浜の市電從業員組合にこのガラ紡の無切府讓渡の現物を自動車で輸錯して來る途中、檢問所にひつかかつて、そうして横浜壽警察署が檢挙した。  なんでも自動車一台分の現品があつたそうです。それによつて現場を押えたわけでありますから、だんだん調べて行きますと、横浜市電從業員組合に無切府で販賣しているということがわかつた上に、花園纖維側のいわくには、ここばかりじやないのだ、東京筋の数官廳に品物を入れているのだということを言明して、いかにも信用があるかのごとくに話をしたというので、壽署がだんだん調べて見ると、まさにその通りであるというので、これは横浜の市電從業員組合ばかりでなく、東京の地檢の組合、あるいは警視廳の刑事部その他の官廳にまで及んでいるということで、容易な事件じやないという関係からいたしまして、管轄の横浜地檢にその指示を壽署員が求めたということを、私は聞き知つております。実際当時私は当つておりませんが、後日に木船事件をやつて、初めてこれを聞き知つております。そしてこれは私が木船事件をやつたとき、部下であります本間、小沢の両事務官が調べてくれたものですから、それらの事務官からのまた聞きになりますが、壽署の阿部部長に会つて話をしたところ、これは深いいわくがあるので、今申し上げましたようないわくであつて地檢に指示を仰いだところ——その指示は林次席檢事並びに市島檢事正に仰いだところ、これは主任檢事を命じて、何分の指揮をするから待てということであつて、その後富田檢事が主任檢事に命ぜられましたので、富田主任檢事の指揮を受けて事件を処理しようといたところ、まずこの事件横浜市電從業員組合のみにとどめて、君の方では送致しろ、あとのことはおれの方でしかるべく処置するからという指示が、富田檢事から壽署の方にあつたということを私は聞いております。その結果この事件が花園纖維側の違反のみとして檢察廳に送られて來たのでありますが、その意見書記載の犯罪事実が、まことに妙な、わけのわからぬような形の犯罪事実になつているということになつているのであります。
  568. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、これは富田檢事がずつとしまいまで担任しておられたわけですか。
  569. 橋本千代雄

    ○橋本證人 年月日は存じませんが、結局最後まで担当しておられたのじやないかと思う節があります。
  570. 花村四郎

    花村委員長 それからこの事件の記録が名古屋へ、名古屋から浜松へまわり、それからまた横浜地檢へもどつて來たというような径路を経て、その記録が紛失したというような話ですが、それはどうでしようか。
  571. 橋本千代雄

    ○橋本證人 この記録は、私が聞くところによると、初め何の都合であるか知りませんが、どこへ行つたかわけのわからぬようなぐあいになつている。とにかく送致してから一年余も放つておいた事件ですから、事件簿もどこにあるかわからぬというふうに、各檢事たちが部内の檢事の食堂会議の席上話しておつたことを聞きました。そしてその後氣にもとめておりませんでしたが、今回木船事件取調べるに当つてこれも聞いたことでありますが、これは岡崎の方へ移送したという説もあるし、東京へ移送したという説もあるし、実際移送されておるのかどうかわらからぬというようなうわさがもつぱら飛んだのであります。そうして今回木船事件取調べている間に、名古屋の地方檢察廳へ移送した記録が、名古屋の檢察廳から管内の岡崎支部へ移送して、岡崎支部からさらにこちらの横浜地檢の方へ逆移送されて來たものであるということを知つたのであります。そうしてその間どういうわけでそういうことになつたのかということは、われわれふしぎに思つてつたのでありますが、これは事務官の間違いであるというように、今回の木船事件の際に檢事正と林次席檢事が言うておられまして、しかし私として……。
  572. 花村四郎

    花村委員長 その記録のそうしたいきさつについて、証人はどうお考えになつておりますか。
  573. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私は当初のにらみとしては、あるいは当らなかつたかも知れませんが、事件の受理簿が二つにわかれております。のみならず一方を抹消した形跡もありましたから、これは結局やみからやみに葬つてしまうような関係にあるじやないかというような第一印象を得たのであります。
  574. 花村四郎

    花村委員長 そうですか、よくわかりました。  次に明治商会事件というのを御承知ですか。
  575. 橋本千代雄

    ○橋本證人 存じております。
  576. 花村四郎

    花村委員長 その内容をひとつ述べていただきたいですが……。
  577. 橋本千代雄

    ○橋本證人 横浜市南区西中町にありまする株式会社明治商会という商号の会社でありますが、この会社は油脂塗料及びその原料等の賣買や加工等の仕事をして、またこれに附帶する業務をしておる会社でありますが、昭和二十二年の三月十二日ころから昭和二十二年七、八月ころにわたる間、塗料類及び石油類、黄鉛、亞鉛華、植物油、変性アルコール、コールタール、その他合計十品の重要物資を統制額を超過して買入れ賣却した事件でありまして、その買入れ並びに賣却等総計しました超過額が百万円足らずの、いわゆる物價統制令違反の事件であつたのであります。
  578. 花村四郎

    花村委員長 その事件について取扱われた係檢察官はどなただつたでしようか。
  579. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは花園事件のように立件当初に関與したかどうか、その点は存じませんが、所轄の壽警察署から送致された記録の写しを私とつたのでありますが、これには符箋がついております。富田檢事殿という符箋がついておりますところを見ますると、立件当初から富田檢事が立件の指揮をされたのではないかと思つております。なお送致を受けてから後、檢察廳においてこれを担任されたのは富田檢事であり、終局まで、起訴するまで富田檢事が担任されておりました。
  580. 花村四郎

    花村委員長 そうして起訴後はたれですか。
  581. 橋本千代雄

    ○橋本證人 起訴後は、また裁判所が略式命令を発しかけて、中止しておりますがゆえに、起訴後のいわゆる略式命令に服從するかどうか、從つて公判請求関係がなるかどうかわかりませんから、起訴後の関係は不明であります。
  582. 花村四郎

    花村委員長 そうすると起訴されて求刑があつて、裁判の言い渡しがあつたじやございませんか、それは略式ですか。
  583. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは略式命令による罰金の請求であります。その後裁判所は略式命令をまだ出しておりませんから、被疑者には略式命令の謄本が交付になつていないと思います。
  584. 花村四郎

    花村委員長 そうすると略式命令によつて罰金の求刑があつたわけでございますね。
  585. 橋本千代雄

    ○橋本證人 ございました。
  586. 花村四郎

    花村委員長 そうして求刑したままになつて今日に及んでおる、そういうわけでありますか。
  587. 橋本千代雄

    ○橋本證人 さようでございます。
  588. 花村四郎

    花村委員長 そこで罰金の求刑が会社に対して十五万円、岩山專務に対して三万円というような求刑をしたようですが、この事件の性質等から見まして、この求刑が著しく安きに失するのみならず、略式をもつて扱うということも不当であるというような声もあるのですが、それはいかがでしよう、あなたの御意見は……。
  589. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私は会社に対する罰金十五万円、その代表者個人岩山明正に対する三万円、いずれもはなはだしく軽いと考えます。その理由は、まず端的に申しますと、昭和二十三年八月十二日付の最高檢察廳檢事総長の通牒によりまして、超過額の三倍程度の罰金をとるようにという指示がありましたから、この指示には、古い事件についてはそうしなくてもいいという但書もありませんし、またその通牒指示の中に、過去数箇月の間の最高檢察廳あての報告によると、はなはだしく低いのであるから、爾今注意するようにという趣旨であるところを見ますると、古い事件であるがゆえに、利益を本位にして、利益額の何倍かにしなければならぬという点はないのでありまして、結局この罰金の十八万円の求刑は、この最高檢察廳檢事総長の趣旨に反するものでありまするのみならず、たとい古い事件でありましても、あるいは利益額を標準にしましても、十八万円というところはだれが何と見ましても安いと私は感じます。それから略式を請求したことについては、これも今の通牒の精神にも反しますのみならず、部内において、ただいま申し上げました昭和二十三年八月二十三日の通牒に基く、昭和二十三年九月四日の横浜地檢管内の檢事檢事会議の際に、檢事正、次席その他多くの檢事が列席した席上、檢事正を代理して村山経済部長が指示をしたその趣旨に反すると思うのであります。その村山部長の指示した事項の中に、一項目としまして、超過額三十万円以上の罰金は、その超過額の三倍以上にし、あわせて体刑を併科すること、こういう指示をされております。そういたしますると、本件は体刑を請求すべきものであります。超過額三十万円以上の場合は、体刑をあわせて請求すべきものです。略式では体刑は請求できません。從つてこの略式請求は妥当でないと私は考えます。のみならず私は鈴木茂雄取調べませんけれども、木船手記に出て來た檢事名前富田君一人であります。その手記から見ましても、これについてかれこれ言われておりまするところから、富田檢事鈴木茂雄君を起訴前に取調べにあたつてつたとするならば、それらの関係がいわくつきのような形になつて出ますから、公明を期する上においても、堂々としてなぜ公判を請求しなかつたかと私は思うのであります。しかもこの点について、私は林次席檢事並びに檢事正と論議をしましたが、それはまさしく君の言う通りである。どうして公判を請求しなかつたか。この点は黒星である。また檢事正は、富田君に間違いがなければよいが、おれは心配しておるという述懐談をせられたことによつてもわかると私は思うのであります。
  590. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、あなたが言われる、こういう不当な処置をとつたという裏には、何かあられるということですが、もしあられるとするならば、その眞相を忌憚なくおつしやつていただきたいと思います。
  591. 橋本千代雄

    ○橋本證人 その点はわれわれは先入観念を持たずに、木船手記に出て來た一つの大きな頭として、これを捜査して行きたい。それについては、とにかく木船手記の中に出て來る檢事名前は一人である。しかもそれに関連して後藤氏の名前も出て來るというところから、これはとても私一個の手には負えない。どうしても地方檢察廳あるいは最高檢察廳の方から來ていただいて、そうして合同に捜査するという形にして行かなければ、私には手に負えないと考えまして、その点を檢事正に進言いたしたのでありますが、それはともかくとして、どういう容疑があるかということについて、いわゆる核心に触れるだけの捜査の手を入れることができませんでした。というのは、御承知かもしれませんが、木船手記が二月の二、三日から始めて、二月の二十八日ごろに終つておりまするが、それに基いて拡大捜査をすることを進言しましたが、荏苒その方針を幹部が決定してくれない間に、三月の八日に私と正面衝突するに至るようになりましたものですから、ただ單に傍証状況を集めたり捜査する程度にとどまつて、ひとつも人に触れるという関係に至つておりませんでしたから、いわゆる先入観念としていかなるあれがあつたかということは、私にはちよつと申し上げかねますが、とにかくこの事実については、いずれにしても解明しなければならぬ事案であるということは、私は考えておりました。
  592. 花村四郎

    花村委員長 それからこの明治商会事件に関連しまして、岩山專務から鈴木茂雄に対して十万五千円の金を渡して、もみ消し運動を依頼したというような事実を御承知でしようか。
  593. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは木船手記にそれらしいことが出ております。但し木船手記には八万円という金額が載つてつたと思いますが、これについては、はたしてもみ消し運動として出たのであるかどうか、これから着手してみなければわからぬことであつたのですが、途中から香取君、吉積君がその方の捜査に入りましたので、その後の経過については、今日まで正式には何ら聞いておりませんから、はたしてその実体がどうであつたかということは、私にはわかりません。ことにこれについては高等檢察廳から行政監査に來られました浜田檢事に向つて、どういうふうになつておられますかと聞きましたところ、いや実はこの明治商会の点についても、高檢で調べたいのであるが、何といつて地檢がおれの方でやるからと言つて渡してくれない。どうも仕方がないから地檢の方にまかせてあるのだ。從つて香取檢事並びに吉積檢事からまだ調べの内容を聞いておらないというお話でした。私としては高檢が行政監査に來られた以上、どうして上級監督官廳として、最もこの木船事件から見て解明しなくちやならぬ事件を、なぜ高檢が取上げないのでしようかと聞きましたところ、渡さないんだからどうもしようがないのだ、こういうお話でありましたので、私どもとしてはその間の事情についてどうしても納得が行かないような氣がいたしてしようがないのであります。
  594. 花村四郎

    花村委員長 そこでこの事件については、昭和二十二年の十二月に富田檢事鈴木某を呼んで事件として取上げたのではなくして、ある意味の注意をしたようでありますが、その後二十四年の三月から吉積檢事香取檢事が共同で、鈴木茂雄を調べておるという話ですが、その辺のことはおわかりになりませんか。
  595. 橋本千代雄

    ○橋本證人 大体調べておる話をまた聞きいたしました。ことに吉積檢事の述懐談を、これはまた聞きしたのでありますが、どうしても五万円の金の行方については、何としてもふに落ちない。いまだにこの点で解決がつかないのだということを漏らしておるということを、また聞きいたしましたが、二人の檢事からは直接何も話は聞いておりません。また聞きの程度であります。
  596. 花村四郎

    花村委員長 二十二年の十月に問題がすでに起きておるようでありまするが、それを二十四年の三月まで、長い間ほうつておいたというような関係はどういう事情があるか、あなたにはおわかりになりませんか。
  597. 橋本千代雄

    ○橋本證人 その間の事情は実のところ私にはわかりません。と申しますのは、私は昭和二十二年の四月下旬横浜に赴任して來て以來、こまかい事件はやりませんでした。大きい特殊事件を六つやつた。しかも別の部屋にとじこもつておりました関係上、廳内の経済事件、こまかい事件等についてはあまりタツチいたしませんので、どういう経路をとつてそれが遷延されたものであるかということについては、実のところ私も詳しく聞いておりません。
  598. 花村四郎

    花村委員長 この事件について、岩山專務から鈴木茂雄に十万五千円の金を渡されて、そうしてこの事件のもみ消し運動を頼まれたというのでありますが、この渡された金について後に宮崎檢事や、後藤つぎが中へ入つて、それは借用証書にしておく方がよかろうということで、借用証書に改めたというような話がありますが、その辺の事情は御承知ありませんか。
  599. 橋本千代雄

    ○橋本證人 この十万五千円が出たことも、それから借用証書に改めたというような話、御質問のような話は間接に聞いております。しかしその間の事情については、私個人の先入観金を申し上げるわけにもいきませんし、とにかくふに落ちない点もあるかと思いますが、どういう事情でそういう事情になつたかということは、私にはよくわかりかねます。
  600. 花村四郎

    花村委員長 そうしますと、次に日本タイヤーの事件についてお尋ねいたしたいと思いますが、日本タイヤーの事件について、簡單にひとつおつしやつていただきたい。
  601. 橋本千代雄

    ○橋本證人 横浜市戸塚区柏尾町にあります日本タイヤー株式会社でありますが、この会社が神奈川縣にある配炭公團、東京配炭局横浜支局との間に、昭和二十三年一月十五日ごろから四月六日ごろまでの間、約十回にわたつて、粉炭四十三トンとチユーブつきの自轉車タイヤ三十九組と物々交換した、物交の指定生産資材割当違反の事件であります。日本タイヤー側ではタイヤ、チユーブを、配炭公團では石炭を物交した事件であります。
  602. 花村四郎

    花村委員長 この事件の搜査に当つた警察署並びに檢察官はどなたですか。
  603. 橋本千代雄

    ○橋本證人 横浜市の加賀町警察がこれの搜査に当りました。
  604. 花村四郎

    花村委員長 檢察官は……。
  605. 橋本千代雄

    ○橋本證人 檢察官は、当初と途中でかわつたかどうか、ちよつと記憶いたしておりませんが、とにかく富田君も途中で入つたのではなかつたかと記憶しております。
  606. 花村四郎

    花村委員長 そうしてこの事件はどういうことになりましたか、御承知ですか、その取調べの経過並びにその結果はどうなりましたか。
  607. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは結果から申し上げますと、配炭公團の方は起訴済みであり、日本タイヤーの方は未処理であつたと記憶しております。その搜査に当つた加賀町警察署の方で、昭和二十三年の四月ごろから搜査に着手しておりましたが、同年の十月ごろまでそれを未処理にしておいて、途中から戸塚警察署がその事件の中に入つて來たという筋合いになつておると思います。
  608. 花村四郎

    花村委員長 そうして結果はどうなつたか御承知ですか。
  609. 橋本千代雄

    ○橋本證人 この結果は、日本タイヤー側は現在未処理であると存じます。配炭公團側が処理されたのではなかつたかと思つておりますが、判決または略式命令、いずれであつたか、調べまでに至らぬ途中で私が手を引きましたから、まだ詳しく存じておりません。
  610. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、証人もこの事件取調べを担当したことがございますか。
  611. 橋本千代雄

    ○橋本證人 立件当初でございますが、今度の搜査ではこの取調べをいたしました。但し日本タイヤーの事件警察に命じて立件する当時のことは、私は存じません。
  612. 花村四郎

    花村委員長 そうするとこの事件について、日本タイヤーが未処理になつたというようなことは、どうお考えになりますか。
  613. 橋本千代雄

    ○橋本證人 まことに私としては不可解でありまして、こういう事件は同時処理が元來檢察廳の処理方針でありまして、一方だけ処理して一方を残すということは、後日求刑の点においてはなはだしく食い違いを生じやすいものです。片手落ちな処理になりがちなものでありますから、一方を残しておいた理由が奈辺にあるのであるかということは、不可解ではありますが、その実体はどういうふうな関係にあるか、忘れておつたといえばそれまででございましようが、よく私もわからないのであります。
  614. 花村四郎

    花村委員長 それからこの事件に牽連して木船事件というのが起きたのですが、その事件の内容の大体をお知らせください。
  615. 橋本千代雄

    ○橋本證人 木船事件から起きた最も具体的な事実は、日本タイヤーに関するものであります。木船君が昭和二十二年の十一月か十月ころであつたと思いますが、望月事務官に頼まれて、日本タイヤーの馬場次長のところへ手紙を持つて行つた。その手紙によつてタイヤーを二つ受取つて望月事務官の指示する小田原の鈴木自轉車店にその自轉車のタイヤーを、一本七千円でありましたか八千円でしたか、とにかく賣り込みまして、そのお金望月君に交付し、一部分を自分がもらつたというのが、木船事件では一番確実に出て來た山であつたと思います。
  616. 花村四郎

    花村委員長 二回ありますね。
  617. 橋本千代雄

    ○橋本證人 二回あります。
  618. 花村四郎

    花村委員長 それは要するに、日本タイヤー事件に牽連を持つた涜職事件というようなことになるわけですか。
  619. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私はそう考えます。これは要するに調べ方の問題でありましようが、私は職務に関しと考えておりますが、香取檢事の調べでは、職務に関することにならぬ。事件檢察廳にあつたことを知らなかつたのだという結果になるのみならず、言訳として、もうけるつもりがなかつたのだ。いわゆる業態としての形がないから処罰のしようがないのだということを香取檢事が申しておられましたが、私はりつぱにこれは涜職として立つのみならず、いわゆる配給違反の問題にも関連し、経済事犯も両方立つのではないかと私は考えましたが、その点では意見が衝突してしまつたのであります。要するに調べ方の問題であり、そのつつ込み方の足らない点で、私はそういうような調べになつてしまつたのではないかと考えております。
  620. 花村四郎

    花村委員長 望月、木船は何かこの事件取調べ関係はしておりませんでしたか。
  621. 橋本千代雄

    ○橋本證人 木船の手記によりますと、望月君はこの事件が経済部にあることを知つてつて取調べ調書をつくつたかどうか知りませんが、取調べをしていた形跡があるというような手記の文言、またはその口吻ではなかつたかと記憶しております。それからこの事件で派生的な問題として申し上げたいことは……。
  622. 花村四郎

    花村委員長 それはまたあとで御質問しますが、そこでこの木船の事件はどうなつておりますか。
  623. 橋本千代雄

    ○橋本證人 木船事件は今月の三十日が公判の第三回か四回の期日であつたと聞いております。
  624. 花村四郎

    花村委員長 それでこの事件の搜査に関する取調べ等の主任檢事はどなたですか。
  625. 橋本千代雄

    ○橋本證人 木船事件の公判は私が主任檢事であります。
  626. 花村四郎

    花村委員長 主任檢事として、取調べをずつと初まりからおやりになつたわけですね。
  627. 橋本千代雄

    ○橋本證人 初まりからやりました。
  628. 花村四郎

    花村委員長 そこでお尋ねしますが、この木船事件に牽連して、木船の手記なるものが出て参りましたね。
  629. 橋本千代雄

    ○橋本證人 出ています。
  630. 花村四郎

    花村委員長 その手記に基いて取調べが行われたようでありまするが、その手記の内容と取調べの係檢察官はだれですか。
  631. 橋本千代雄

    ○橋本證人 三月の七日までは、終始一貫木船手記に基く木船及びそれから派生いる檢事、事務官等の取調べをするのは、私であると誤が考えておりましたのみならず、周囲の状況がまたそうでありました。
  632. 花村四郎

    花村委員長 その後はたれがやられたわけですか。
  633. 橋本千代雄

    ○橋本證人 三月の八日にわかつたのでありますが、三月の二、三日ごろから檢事正を、次席の命令によつて香取檢事が受持つているということを知りました。そして爾來香取檢事が主任であり、吉積檢事がその補佐をしておるということでありました。いまだに続いているかのごとく聞いております。
  634. 花村四郎

    花村委員長 その事件当時の檢事正はだれでしたか。
  635. 橋本千代雄

    ○橋本證人 市島成一檢事正であります。
  636. 花村四郎

    花村委員長 市島成一の前はどなたです。
  637. 橋本千代雄

    ○橋本證人 前任檢事正は堀忠嗣檢事正であります。
  638. 花村四郎

    花村委員長 その前はどなたですか。
  639. 橋本千代雄

    ○橋本證人 その前は福尾彌太郎檢事正であります。
  640. 花村四郎

    花村委員長 そこでこの木船の手記に基いてのあなたのお取調べの内容について、概略を述べていただきたいと思います。
  641. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私は本年の一月からもつぱら公判立会いの方の檢事になりました。公判課を担当することになり、捜査はいたさないことに事務分担できめられまして、一月から公判の方をもつぱら担当いたしておりました。ところが二月二十二日に、突然正午ごろ林次席檢事が公判を中止して來い、至急用事があるからということであつたものですから、越川副檢事にかわつてもらいまして、公判を中止して次席のところへ参りましたところ、この木船の事件を担当するような命令を受けまして、その翌日からこの捜査にあたりました。ただし極祕を要するということでありますので、自分一人で受件簿を全部繰つて、みなに氣づかれないように受件簿から始めて行こうとしたのでありますが、とにかくあまりに間口が廣いのでありまして、受件簿からではとても入りにくいということがわかりましたから、まず至るところの端緒から入つて行こうという考えのもとに、もつぱら傍証の收集に從事しようといたしましたけれども、経済部の事件記録をいきなり持つて参りますると、かぎつけられてしまうおそれがあるため、多少時間を要することになりましたので、一月の三十一日になつて、初めて得たる端緒、すなわち若林和雄、木下三雄の二人の被害者を証人として調べまして、間違いのない確証を握りましたので、二月の一日に逮捕状を請求いたしまして、逮捕状によつて、二月一日の正午ごろだつたと思いますが、木船君を逮捕して、その夜調書をつくつて、逮捕状による拘留をし、その翌日から、得たる端緒、すなわち二つの犯罪事実のほかに、なほ木船君自身犯罪を自供いたしましたので、それを手記に認めてもらいました。その手記が二月の二十七、八日ごろまで続いたと思いますが、ともかく当初木船君を逮捕いたしましたときに、事務官の不正だけを洗つて檢事の不正を洗わないのはけしからんという氣勢が上つているということを聞きまして、檢事に不正があるならばいくらでも洗おうじやないかと、私は憤慨したような次第であります。それは人を通じて氣勢が上つているということを聞いたのでありますが、たまたま木船君を調べている際で、私も憤慨したような形になつたものでありますから、木船君としても、たいへん自分自身の非行を後悔しておりまして、自分には今檢事に申し述べた二つのほかに、さらに続けて申し上げたい非行がある。そのほかいろいろなうわさを聞いておるから、これらも続いて申し上げたいというような話がありました。ちようど時刻は九時過ぎころだつたと記憶しておりますが、あまり遅いので、調書にはとどめられませんでしたから、第一回の供述調書に、なお引続きいろいろ申し上げたい点がありますが、それは明日にいたします、と結んでおきまして、翌日から木船君の希望するそのほかの自分の非行、あるいは他人のことということを述べてもらうことにいたしておきました。ところが翌日になりますと、約束はしたけれども、一晩考えてみたが、言いたくないというような話だつたのですが、考えてみると、それまで私も顏を知りませんでしたが、たまたま同縣人であることがわかりました。男と男の約束をしておきながら、前言を飜えすことはみつともないだろうというようなことを私が話しましたところ、それでは私はこのほかにたくさんありますからということで、続々と自分の非行を約束通りに手記に認めて、私に出したのであります。そうして、二月十一日が起訴の日であつたと思いますが、最終の日に至つて自分以外の他の事務官のこと、他の檢事のことの総締めくくりの手記を木船君が本間事務官に対して書いてくれたのであります。当時私が起訴、不起訴の整理に忙しくて、最後の締めくくりは本間事務官にまかせまして、その手記はできる都度一部分ずつ上司に見せて指揮を仰ぐつもりでありましたが、とりまとめて出そうという考えがあつたほかに、部内におけるはなはだしい不安動搖、恫喝に近い妙な情勢があつたものですから、まとめてあとで出そうというように考えまして、二月十一日に木船君の十件ぐらいの犯行を列記して公判を請求し、起訴状を提出した翌日、二月十二日になつて、次席及び檢事正にこの手記を提出して、私としては今後の拡大方針についてお話し、その指示を求めた次第であります。そうして二月十三日ごろだつたと思いますが、檢事正、林次席檢事、私、それから本間事務官の四人が、檢事正室で木船事件の木船手記に基く拡大会議をやりました。その席上、私は当時借家難で家が明渡しにあつてつたのですが、そんなこんなで非常に忙しいから、高檢にも介在してもらわなければならぬ、のみならず一應私の役目も終つたようなものだからというようなことを言つて、形の上で一應遠慮するようなことを申しましたら、たいへんしかられました。家のことは檢事正が心配してやる。氣の弱いことじやいかぬから、今本はどんどん拡大強化しろ、ことに橋本檢事の捜査は一個所に停滯しすぎるという批評があるから、とにかく橋本檢事式になつてはいけない。木船個人に集中することはない。木船の供述書は雜駁であつてよろしい。上下左右に大いに延ばせ。こういう話があつたものでありますから、木船手記を中心にして傍証のかき集めに從事しました。その前に、檢事正室の四人の会議の席上に香取檢事も來られましたので、橋本檢事に協力して、経済の記録、たとえば明治製糖、日本タイヤー、花園纖維などの記録を祕密に出すようにという話があつたのですが、なぜか香取君は終始一貫その記録を出してくれませんでした。やむを得ず苦心惨胆して、各警察署の犯罪摘示録を見てまわつたのであります。それはどこにあるかわかりませんので、加賀町、伊勢崎町、壽町その他の警察署を順繰りに繰つて、犯罪摘示録、俗に犯摘と申しますが、この犯摘をずつと集めるとともに、その当時それらの事件を担当した、たとえば阿部主任とか、その他の主任の話を聞いて、この傍証を固めて行つた。そうしてどうしても解明しなければならぬ事案があるのみならず、木船手記にはこの三つの事件以外の日化工業とか何とか、たくさん十件ぐらい書いてありますので、これらの方もずつとやろうということになりまして、その傍証固めが大体二月一ぱいかかつたと思います。そういう経過で捜査に從事して参つたのであります。
  642. 花村四郎

    花村委員長 この木船手記によると、一名の檢事並びに十八名の事務官に不正があるということが書かれておるようですが、そのお取調べをなさいましたか。
  643. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは木船君以外には、私は全然当つておりません。
  644. 花村四郎

    花村委員長 五人の事務官が、取調べの結果俎上に上つておるような話を聞いておりますが、いかがですか。
  645. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これはその後香取君が調べて、その結果を昭和二十二年の三月二十二日ごろ、部課長会議の席上、五人の容疑者にとどまるという発表を聞きまして、知つております。
  646. 花村四郎

    花村委員長 そうするとその五人の非行の内容はおわかりになりませんか。
  647. 橋本千代雄

    ○橋本證人 それは香取君の発表の内容はどの程度であつたか、詳しいことは今は忘れましたが、大体の説明は承りました。
  648. 花村四郎

    花村委員長 それはどういうことですか。
  649. 橋本千代雄

    ○橋本證人 望月君と木船君に関するのは、日本タイヤー関係、それから岡本事務官に対する関係は、兵器処理関係の生ゴムを某会社に賣却あつせん方を周旋して、そのごちそうになつたという岡本事務官の事件、それから浜田、相原の両君ではなかつたかと思いますが、これが木材の違反事件に関して不起訴になつた後、その違反容疑者である相原事務官の兄さんであつたかと思いますが、その人のごちそうになつたという、この大体三つの事件にわかれておつたと思います。
  650. 花村四郎

    花村委員長 そこであなたが担当せられておりましたただいま述べられた事件を、香取檢事にかえたというそのいきさつはどういう事情でありますか、それをひとつお述べ願いたいと思います。
  651. 橋本千代雄

    ○橋本證人 それは先ほどもちよつと述べました通り、本年の二月の十二、三日ごろ、檢事正、次席、私、本間君、この四人が拡大強化の会議をしておりました席上に、別の要件で香取君が参られまして、その席上香取君も話の中にまじつたのでありますが、たまたま香取君がその木船の手記を見て、一部をリストされました。リストすると二、三日たちまして、山森事務官が木船手記によると、こういうことが書いてあるが、どうなんだということを私のところに言いわけに來ました。また望月事務官はやはりそのころ犬の遠ぼえで、これはタイヤのことが書いてあるが、おれは何でもないのだという話をしておるということを聞きましたので、どこから一体漏れておるのか私にはわかりませんでしたが、とにかく部内が非常に妙な空氣になつて参りました。何と申しましようか、要するに部内の檢事の非行は少しも洗わずに、事務官の非行のみを洗うということは、はなはだけしからぬというような空氣があるように見られましたので、どうしても私としては、これは一人では手に負えないから、高檢のさしずを仰いで、高檢の方から來てもらつて共同捜査にしたい。ついてはその手配をとつてもらいたいということを再三、再四次席並びに檢事正に具申いたしましたところ、追つて考慮する、しばらく待てということで荏苒日が延びている間に、ますます妙な空氣になつて参りました。そうしてその間左右前後に拡大強化せよと仰せられた首脳部が二、三日で豹変してしまつて、もうたいていのところで打切つてしまおうじやないかというような話もいろいろありましたので、不可解な氣持でおりますうちに、いよいよ木船手記のことを傳え聞いた強硬事務官は、三月の八日上申書を提出するような運びになつてしまつたので、結局橋本檢事にやらしておいたのでは、どうもあまり積極的過ぎていかぬというような考えのもとに、私には何らの話もなく、檢事正、次席が香取君に命じて、三月二、三日ごろから香取君が直接調べるようになつたのであろうと私は推測しております。
  652. 花村四郎

    花村委員長 そこで香取檢事に主任をあなたからかえたということは、要するにこの事件をうやむやに葬つてしまおうというような魂胆のように考えられませんか。
  653. 橋本千代雄

    ○橋本證人 全然うやむやに葬るかどうかは考えられませんが、その片鱗のことは、もつと露骨な言葉をたびたび次席からも檢事正からも聞きました。その例としては、やはり二月十二、三日の拡大会議の後から四、五日たつて、次席檢事から、あれは打切ろうという言葉があつたこと、それからその後においても二月中に、檢事正が、君犯罪捜査をやるのかい。行政調査だけにとどめておいて、あまりけが人を出さぬようにする方法はないか。けが人はだれも出したくないのだがどうだねという話がたびたびありましたところを見ると、すでにいわゆるこの木船手記に基く捜査を消極的にされたいという意思が動いたことは爭われない事実であります。
  654. 花村四郎

    花村委員長 そこで一つ事件について、ただいま言つた木船の手記に関する事件のように、主任をとりかえるというようなことは、往々そういう例があるわけですか。ありませんか。
  655. 橋本千代雄

    ○橋本證人 例は少いと思います。ことにこういうふうな特殊な事件でありますと、大体その人の手のうちというものがわからない。主任がかわればかわるだけ事件が遅く処理される。内容をのみ込むまでに非常な骨を折ります。またかわらせられた方でも迷惑をするという関係から、特殊な重要な事件については、途中で突然、主任をかえるという前例はあまり聞いておりません。
  656. 花村四郎

    花村委員長 そこで香取檢事が調べたという五人の事務官に関する問題は、結論においては今日もはつきりせず、うやむやになつておる。こういうわけですか。
  657. 橋本千代雄

    ○橋本證人 その点についてはいかなる報告を檢事正が上級官廳になされたか、それは存じませんけれども、ともかく現在では、最高檢及び高檢の指示を待つて適当な処分をする。その処分がどういうふうになるかしれませんが、適当な行政処分があるはずだということをほのかに聞いておりますが、それがいつごろになるか、私としては存じません。
  658. 花村四郎

    花村委員長 それから横浜檢察廳の受件簿が非常に乱脈だというのですが、そうですか。
  659. 橋本千代雄

    ○橋本證人 まさにさようであります。たとえば件ページがあるいは二重に記載される。あるいは番号が飛んでおる。番号と被疑者の名前が交互に入れかわつておるというような記載の仕方がたくさんありまして、とてもこれを調べようといたしましたが、手がつきません。
  660. 花村四郎

    花村委員長 なお横浜檢察廳では、その内部で革正派であるとか、非革正派であるとかいうような空氣が流れておるという話ですが、それはいかがですか。
  661. 橋本千代雄

    ○橋本證人 別段名前の上で革正派、非革正派というような名前にはなつておりませんが、自然類は友を呼ぶ。おのずから自分の主義、主張によつて集まる人ができて來るのだろうと思いますが、この際徹底的に粛清すべしという方面の意見と、灰色の意見、要するに部内の不正はある程度許し合つて、そうしてこれを外部にさらさないのが現在の檢察廳のためであると考えられておつた、いわゆる革正に反対する人たちと、この三つのグループにわかれておるのではないかと思いますが、それは正義派とか革正派とか、特別の名称は用いておりません。しかし外部から見られましたら、たとえば報道機関のごときは、そういうような名前をおつけになるかもわかりません。われわれの方としてはそういう名称は使つておりませんが、自然そういう形になるかもしれません。
  662. 花村四郎

    花村委員長 そしてあなたは革正すべしという議論のなかなか強い方面の人だと承つてつて、まことにけつこうだと思いますが、そのあなたと志を同じうする檢事は、どういう方でしようか。
  663. 橋本千代雄

    ○橋本證人 大体二月二十八日の有志檢事会議の席の空氣から見ましたならば、私に賛成の者の筆頭は紺野檢事であつたと思います。それから横山檢事、田川檢事、岡村檢事、それから守谷檢事。まず積極的に賛成だという方はそれくらいで、あとは適当にというような程度の話だつたと思います。
  664. 花村四郎

    花村委員長 それから積極的に反対だという檢事は、どういう人でしようか。
  665. 橋本千代雄

    ○橋本證人 大どころから言いますれば檢事正、次席。
  666. 花村四郎

    花村委員長 市島さんですね。
  667. 橋本千代雄

    ○橋本證人 はあ。それから要するに部内は互いに許し合つて、いろいろなボロを外部に出さないのが檢事廳のためである。臭い物にはふたをしろというような言動を漏らされましたから、香取君も消極的であつたと私は思います。それから特にその他の方々は、積極的に反対であるという意向を私にほのめかした人はないと思います。腹ではどうか知れません。陰では……。
  668. 花村四郎

    花村委員長 その他は大体中立のような人ですね。
  669. 橋本千代雄

    ○橋本證人 むしろ中立よりも、消極派に近いでしよう。
  670. 花村四郎

    花村委員長 そうですか。何か御質問がありますか。
  671. 猪俣浩三

    猪俣委員 大分委員長が詳しく聞かれましたので、大してありませんが、あなたが木船事件を取上げて捜査するようになりますと、横浜檢察廳の内部がたいへん動搖して、ある事務官が脅迫的言辞を弄した者があつたのですが、あなた自身は、何かそんなふうな言動を動けたことはありますか。
  672. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私が直接受けましたのは、先ほど申しました山森事務官から、日は忘れましたが、二月の二十日前かと思つておりますが、突然橋本檢事さん、いいかげんにしませんか。あんまりやるとあんた自身のしりが出まつせというような、言葉はやわらかいけれども、私のそのときの感じとしては、相当に部内に、私にそう言つた山森事務官たちと結ぶ人たちがあるかのごとく受けた。すこぶる意味のこもつた、言葉はやわらかいが強い言葉であつたことを印象に残しております。のみならず、前に申し上げましたように、木船君を逮捕すると、即時に横浜地檢の職組の幹事長である加藤正元事務官が、事務官たちの不正を洗つて、明らかに檢事に非行がありながらこれを看過することはけしからぬと言つて大憤慨して、かんかんになつてつているということを、本間事務官を通じて聞き知りました。それから二月十一日、私が木船君を起訴するために、起訴の決裁を林次席檢事のところへ持つて行つた際に、たまたまそこへ來合せた先ほど申しました加藤正元事務官に向つて林次席檢事が、本船事務官はこの通り十件ぐらい、七万六、七千円の涜職事件及び恐喝事件をしているじやないか。これは起訴するのもやむを得ないじやないか。どうだ、お前どう思う。しかるにお前たちは、事務官の行跡を洗うならば、檢事正、次席檢事以下全檢事のしりを洗うぞと言うことはけしからぬじやないかと言つて、林次席檢事が加藤正元事務官をたしなめたことがあります。かような実例からいたしまして、私に対する威迫的な言辞のみならず、上層部へも同樣の威迫的な言辞が及んでいることを、実例をもつてつたのであります。
  673. 猪俣浩三

    猪俣委員 紺野檢事が何人かにやはり脅迫的な言動を受けたということは、聞いておりませんか。
  674. 橋本千代雄

    ○橋本證人 紺野檢事はその部下に望月君がおりますから、とくと心境を当つたそうであります。これも紺野君からの又聞きであります。ところが望月君としては、おれをやるならやつてみろ。おれは檢事正以下全檢事の非行を握つているから、おれは檢事正以下みな道連れだ。だからおれをやれはしまいと言つて、盛んに遠ぼえしておつて、非常な勢いであるということを聞きました。從つて私としては、その当時、それならば全檢事の非行材料を出してくれ。そうしてそれを洗おうじやないか。なかつたら寃をそそぐべし、あつたらそれ相当の処分をすべしということを、私の持論として終始一貫述べておりました。
  675. 猪俣浩三

    猪俣委員 横浜後藤つぎという、俗称檢事正というのがある。その後藤つぎから、あなたは一ぱいのみに行こうといつて誘われたことはありませんか。
  676. 橋本千代雄

    ○橋本證人 つぎから誘われたことはありません。但し昭和二十二年の多分六月ごろと記憶するのですが、私が赴任して來てから二箇月足らず、あるいは二箇月過ぎたかもしれませんが、とにかく部内の事情が何もわからぬとき、私はその当時参議院議員の細川嘉六氏初め三十二、三名が告訴された、あの横浜拷問事件を別室で一人で捜査しておりましたので、部内の事情はあまりわからなかつたのですが、あの日の退廳時間後に玉木檢事から、きようこれから檢事部と経済部でしたか、とにかく部会があるのだが行かないか、私は別室に立てこもつて捜査しておりましたような事情からして、何の部会であるかわかりませんでした。どこで何があるかわかりませんでしたが、とにかく部会があるから行こうというので、道もわからないのに玉木檢事に案内されて、平沼の後藤つぎの自宅に行つたところが、すでに檢事多数、事務官多数が行つておられまして、そこで飲みました。私は全然事情を知らないで行つたのですが、どうも変だと思いまして、一番早く帰りました。その後会費をとつてくれと言つたら、そのうちにきめるからと言つて、二箇月ぐらいたつて玉木君を通じて、富田檢事に二百六十五円かの会費を拂つたと記憶しておりますが、これは後藤つぎに誘われたのではなくして、わけがわからず行つて会費を拂つた次第でありまして、そのほかには誘われたことはありません。
  677. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたの同僚である檢事は、後藤つぎうちかあるいは後藤つぎ関係している「つたのや」といううちでしよつちゆう宴会をやつたということを聞いておりませんか。
  678. 橋本千代雄

    ○橋本證人 うわさには聞いておりまするが、実はその実態はなかなかつかみ得ません。しかし今回の木船事件に関して、それに関する投書二つを受けとつています。またこれは今回の木船事件に関して、三月八日私が首脳部と衝突して以來、三人ぐらいの弁護士さんからそういうことを聞いております。投書二つの中にそれらしいことが書いてございます。
  679. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからこれは檢事としてのあなたの意見を私聞きたいのですが、明治商会事件に関して、防犯新聞鈴木英雄が專務の岩山から十万五千円もらつたことは明白な事実でありますが、これがもし鈴木が他に運動すると称してとつて何ら運動しなかつたならば、一種の詐欺であろう。また事実それをばらまいて運動したとするならば、これはいろいろの犯罪がまた起ると思いますが、鈴木それ自体を今日一年有半も何ら取調べない、あるいは取調べてもこれに対して何らの起訴、不起訴をしないということについて、あなたはどうお考えになりますか。
  680. 橋本千代雄

    ○橋本證人 まことに不公明な態度であつたと私は考えますが、時機を失して今日調べることは、はたして実体的な眞実を突き得るかどうかということについては、疑いなきを得ません。
  681. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかしその金を受けとつたことは事実であることがわかつた際に、その鈴木は全然犯罪責任はないでしようか。
  682. 橋本千代雄

    ○橋本證人 それは今申しましたように、御質問のように詐欺になる場合もありましようし、詐欺にならない場合もありましようが、とにかく私としては、鈴木取調べた内容をあまりよく存じておらないので、その基本がない関係上、私自身の推測的なことはちよつと申し上げかねると思うのですが、とにかくまことに不明朗、不公明であつたことは免れないと思います。
  683. 猪俣浩三

    猪俣委員 横浜地檢の中に檢察懇話会というものはありますか。
  684. 橋本千代雄

    ○橋本證人 実は私初めて本日この言葉を伺いました。私は何回も申し上げまする通り、赴任して二年以來、特殊事件六つをやつたばかりで、部屋を隔てて、昨年のごときは、十箇月間伊勢佐木警察署の三階を借りて分室をつくつておりました関係上、廳内事情については燈台元暗しで、たいていはうわさを聞いたりなんかするのですが、檢事仲間の檢察懇話会というものは私は存じません。
  685. 猪俣浩三

    猪俣委員 最後後藤つぎなる婦人はしばしば檢察廳内を訪問したそうですが、あなたはそれを見ておりますか。
  686. 橋本千代雄

    ○橋本證人 見ております。それは事件がありますが、私が赴任して二、三箇月後、あの人が後藤さんであるということを知つて、それが昭和二十二年の八、九月ごろ、それ以後——大体私があれが後藤であるということを知つて後ですが、前からも來ておつたようですが、十一月ごろまでは出入りしておつた模樣です。檢察廳の合同監査があつたのがその年の十二月ごろではなかつたかと思います。その後は姿は見ませんが、電話がかかつて來るということを聞いております。
  687. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは後藤つぎにじかに話をしたことがありますか。
  688. 橋本千代雄

    ○橋本證人 一回話をしました。
  689. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう話をしましたか。
  690. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私は実は家を追い出されて困つてつた。今のうちを引越すまで、二年間に七回も引越しております。何かかんかいわくがあつてはいかぬというので、私はこういう潔癖なものだから、七回引越しておりますが、二十三年の二、三月ごろ、家の問題で困つているということが、どういうわけか私の動靜がことごとく後藤にわかるらしいのですが、渉外部長の小幡檢事部屋に行つてつたとき、たまたま後藤が來ておつたと記憶しますが、私の向つて、お前家がなくて困つているそうだが、おれのところへ頭を下げて來い、いつでも家をせわしてやる、そうして、おれが家をつくつたから、今までいる家をあけるから、おれのところへ頼みに來るか。今までの家はいつでも貸してやるからどうだい。何だ、お前このごろつんつんしやがつて、こういう話をしたことが一回あつただけです。
  691. 猪俣浩三

    猪俣委員 今あなたのおつしやつたその言葉は、後藤つぎがそういうお前とか、つんつんしやがつてとかいう言葉を使いましたか。
  692. 橋本千代雄

    ○橋本證人 お前とは言いませんが、このごろつんつんしているということは言いました。
  693. 猪俣浩三

    猪俣委員 おれに家のことなんか頼めということなのですか。
  694. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私のところへ頼みに來れば、いつでもせわをしてやる、今度私は家を建てたから、そこへ移るから、今までのところへ入らないかと言つたのです。
  695. 猪俣浩三

    猪俣委員 このごろいやにつんつんしているなという話があつたのですか。
  696. 橋本千代雄

    ○橋本證人 隠匿物資の摘発で、青柳商店の方まで手を入れるような形になつたものですから、多少警戒したように、あとから考えております。
  697. 猪俣浩三

    猪俣委員 つんつんしているなという言葉はあつたのですか。
  698. 橋本千代雄

    ○橋本證人 ありました。つんつんしているなと言つたのです。別にそれについて私は感情的に動いたわけではないのですが、事実はその通りなのです。
  699. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎ檢事のことをあの子、この子という言葉を使つておるということは聞きませんか。
  700. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これはまた聞きでありますが、直接は聞きませんが、おれのところの子供らというような、あるいはそれに類した言葉を使つていたということはまた聞きをしております。
  701. 花村四郎

    花村委員長 その後藤つぎのところに檢事が住まつてつたようですが、だれですか。
  702. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは私公然の事実だろうと思いますが、実際見たことはないのです。皆さん知つているらしいのですが、まず、今やめておりますが、石寺檢事がおられました。それから今小田原におるが、宮崎檢事がそのあとに、二人ともあそこのおせわになつてつたということを聞いております。
  703. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質疑はありませんか。
  704. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど有志檢事の会同を二月二十八日に開いた。こういうお話がありましたが、これはどういう趣旨の会合でありますか。
  705. 橋本千代雄

    ○橋本證人 大体紺野君が主唱したのだろうと思いますが、はなはだ廳内が不明朗で、恫喝が横行して困る。今日徹底的に粛正しなければならぬのに、首脳部の態度まことに不明朗で、中途にしてこれを消しつぶしてしまうのじやないか、これは困つたことだというので、紺野君が一應皆に集まつてもらおうという意思で、紺野君が集めたものと思います。その席上いろいろな話が出ましたが、要するに私としては、皆さんにその手記の内容を告げるわけに行きませんから、手の内がわからぬ。わからぬ以上は橋本檢事に全責任を持つて一任して、徹底的にやつてもらう以外はないだろうということを紺野君が主張され、そうして大体そこに集まつた十一人かと思いますが、檢事がそれを承諾されたと思うのですが、それについては紺野檢事が、実例をもつて言われました。昭和二十三年の八月、木船事件とは違いますが、隠退藏にからむ大原事務官と新倉事務官の部内の不正を香取檢事取調べた際に、あれを不起訴にしたのみならず、相手にほかに述ぶべき事実があつたのを伏せたという話であるが、どうかということを紺野君が香取君に質問しました。香取君としては語るに落ちて、いや実はそうなんだ、あの際もつと事実があつたのであるけれども、実はこれを出さないのは、檢察廳のためを思うて、それを上司に不正直ではあつたが、言わないでしまつたということを、何もだれが質問したわけでもないのに、香取君が述懐された。紺野君としては、そういうことがあるから、ますます部内が不明瞭になつて行くのだ。そういう前例があるならば、この際徹底的に粛正し、解明して行つた方がいいのではないかという強硬な紺野君の意見であつて、その結果全部橋本檢事にまかせよう、それはよかろうというような話合いができたものであります。
  706. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その有志会同というのは、先ほどちよつとお話がありましたいわゆる木船事件の契機として、徹底的に部内粛正のための捜査をすべしということに賛成しそうな傾向の人たちだけ集まつたのですか。そうではないのですか。
  707. 橋本千代雄

    ○橋本證人 その現場の空氣上、やはり粛正に反対する勇氣のある人はないかのごとく見られました。多少ぐずぐず言つた人もあつたようですが、大体空氣に押されたと思います。
  708. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その会合に招待といいますか、呼んだ人は、特にそういう人たちだけ呼んだというわけではなかつたのですか。
  709. 橋本千代雄

    ○橋本證人 いいえ、都合のつく人は全部集まつてもらいました。但し出張していたり、次席檢事正のところには、そういう会議をやるということは知らせませんでした。
  710. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから檢事正が、この木船事件についていろいろ世間の誤解を生んでおるというので、それを解明するために声明書を出しましたね。その声明書は私よく覚えておらないのですが、五名の檢察事務官に非行があつたような木船事務官の手記が出ているが、これを調べた結果は、そういう節もあつたようだが、結局において、そのために檢察事務が不公正に行われたような形跡はないというような趣旨の声明書だつたように私記憶しておるのでありますが、そうでありましたでしようか。
  711. 橋本千代雄

    ○橋本證人 この点は、私ももう少し捜査を進めてみなければ実はわからないのでありますが、どうもにおいはあると考えておりましたが、実際もう少し深く突き込んで進んでみないと、よつて不正をなしたかどうかという点は、よくその眞相を把握するに至りませんでした。
  712. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうしますと、その当時まで大体わかつてつた事実だけをつかまえてみても、あなたの先ほどのお話からみても、たとえば明治商会事件については十万五千円の金が運動費として出ておる事実があり、しかも一方におきましては、その求刑が不当に低いということになれば、檢察事務が公正に行われておつたということは言えないと思うのでありますが、そういう点から見て、この檢事正の声明というものは、少くとも妥当を欠いておるように私は思うのでありますが、あなたの御見解はいかがでありましようか。
  713. 橋本千代雄

    ○橋本證人 私は檢事正の声明に対しては、実のところ腹では全部不満であります。しかしこれを十万五千円の金に結びつけて、よつて不公正な結果に至つたのだという結論を得るまでの実体をつかんでおりませんから、まことに残念ではありまするが、非常にものを思わせることでありまして、何とも申し上げかねます。
  714. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その次に、日本タイヤー事件について、望月事務官がタイヤを受取つておりますが、これは先ほどのお話で大体わかりましたが、あなたが檢察官としてこの事件を扱われるとするならば、あなたは涜職と断定されませんか。
  715. 橋本千代雄

    ○橋本證人 仮定論になりますが、捜査を香取君にまかせず、私が捜査したならば、そこに落ちつきませず、実は経済事件まで立てる予定であつたのです。
  716. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから檢察廳内において檢察事務を扱う場合に、事件の主任がきまるわけでありますが、その主任以外の人たちが、他の人の扱つている事件について、いろいろと捜査に有力な事実を探知した場合に、これを提供するとかいうような、捜査についての協力関係というものはどの程度に行われているのでありますか。
  717. 橋本千代雄

    ○橋本證人 特殊の極祕事件のような場合でしたら、事情がわからないから無関心ではおりまするが、事この木船事件のような場合には、積極的に廳内の明朗化をはかるために、各檢事が資料を私に提供してしかるべきだと思います。また從來犯罪——特殊犯罪でない場合も、こちらで知つている限り、その主任檢事に協力するというのが通例であります。ことに隠匿物資の摘発に当つては、隠匿物資班の主任檢事でない者まで、相協力し合つて情報を蒐集し、かたわらからこれを補助し、盛り立てるというような実際のやり方をやつて來たのであります。
  718. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ところがこの事件については、そういう協力関係はきわめて不円滑であつたようでありますね。
  719. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは確かにそうでありまするが、結局廳内のボロを出してしまうことは、檢察廳のためにならぬという根本的な腹がわれわれと違うのですから、やむを得ないのです。
  720. 梨木作次郎

    ○梨木委員 わかりました。もう一点伺いますが、高等檢察廳から、この事件を特別に捜査するために來ておつた人たちに対して、資料を提供しなかつたために、高等檢察廳の人が実は手も足も出ないというような実情にあつたように伺つたのでありますが、一体そういう上級官廳から來た場合に、下級官廳の人たちがそんなことをしても、そういうことが実際上平氣で行われておるのですか。
  721. 橋本千代雄

    ○橋本證人 これは私どもはそういうつもりはありませんが、要するに高等檢察廳が來ても、香取檢事の方でも明治商会のあれを渡さないということもありましたし、私どもも手持ち資料を出さないことがありましたけれども、私どもの方から見れば、高等檢察廳の監査なるものははなはだ低調で、堀下げがもう一歩というところで足りません。しかも消極的な人たちが向うにおつて、それを探つておるような形で、実を言えば三重捜査になつておるようなかつこうになつておる。こういう事件で今でも手持ちをしておるのがありますが、こういうのがあるといつてフツト・ライトを向ければ、向うにも焦点が何かということがちやんとわかるが、それがすつと消えてしまうということになるから、どうにもわれわれとしては合点が行かぬという点がありまして、單なるデマとか何とかいう点で、もつと解明しなければならぬような点があるにしても、われわれ自身ですら、全部が全部まで高檢の人には言わないことがあります。
  722. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうするとつまり現在の檢察廳の幹部が非常に腐敗しておつて、そこに材料を提供しても、その材料を基礎にして徹底的に捜査を進めるのではなく、実はもみ消しをやるという危險があるために、その不信のために材料を渡さないということがあるのですか。
  723. 橋本千代雄

    ○橋本證人 もみ消しをやるという程度まで考えで行つておるかどうか知りませんが、要するに堀下げが足りないということは、部内の同僚または下僚をかばおうという意識が無意識的に動いておるのみならず、人手が足りない、ごく貧弱な編成の監査機関を持つて來るのみならず、要するに議会のような強制監査とは違いまして、宣誓によらないところの証人調べをしても何にもならぬ。私はそう思いますので、從つて高檢の濱田檢事も述懐しておりましたが、みんな口を合せてしまつてどうにもならぬというのです。それですから、そういうふうに部内に漏れるということ、堀下げが足りないということ、無意識的に部内のあらを外部に出すのは考えものだということ、この考えを上の方から下の方まで相当な数の檢事が持つておりますから、そういうような氣分に動かされて、要するに徹底的な監査はできないものと私は思つております。
  724. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 簡單に二点お伺いいたします。結局今までの御陳述によりまして、われわれが考えまして横浜事件の不正事件と思われますのは、花園纖維事件明治商会事件、日本タイヤー事件、こうしたものがおもだつたものと思われますが、今なお横浜檢察廳内におきまして、もう少し粛正しなければならぬという空氣と、この程度おにいてあまり大きな火にならないうちに適当に收めたいと希望する空氣と二つある。こういうふうに伺いますが、もう少し横浜檢察廳を粛正しなければならぬという空氣があるということは、結局まだこれを洗えば粛正の余地があるということを前提にしての考えでなければ成立たぬ問題であります。聞くところによりますと、あなたの証言を聞いておりますと、あなた自体としては、やはり横浜地檢はもう少し洗わなければならぬ、粛正しなければならぬというお気氣のようですが、どういうところに粛正しなければならぬという具体的の問題がひそんでおりましようか、それをはつきり伺いたい。
  725. 橋本千代雄

    ○橋本證人 ごもつともです。まず第一に申し上げたいのは、本船事件の手記の掘り下げが足りない。手記には日本タイヤー、花園纖維、もう一つ明治商会のそのほかにこれを克明に洞察いたしますとなお七つくらいありましよう。どこからこの手口に入つて行くかというやり方の問題、熱の問題、それらを解明しなければ粛正にならぬと思います。それから第二には、何としても私は了解ができないことがあります。何ゆえに廳内においてからみ合い、つぶし合いみたいな空氣が横行するか、まことにきたない言葉でありますが、他人のしりを洗う。自分が摘発された場合には、おれはあの檢事のしりを洗う。そうすればこれが中和してしまうということの言葉がここ一、二年來流行して、そうして何か他人のことをつかんでおつたのは決して出さない。自分がポケツトにしまつてつて、万一自分が不正を摘発された場合、あれもあるのだということを出して、つぶし合いにしようというからみ合いの状況が呈されておることが第一、それは先ほど申し上げましたように、加戸正元君や山森君がそういう片鱗を見せておるのみならず、またうわさによると過去二年來、たとえば諸星事件の際まだ伸びるべきものが伸びなかつた。その他の事件があつたけれども、そのたびにいわゆる職組の強力な反撥があつたということを、ほのかながらもうわさに聞いておりますので、かような檢察廳内における紳士の集まりのところに、取引によつて不正を中和し合うというような空氣があつたならば、檢察廳五千人のためにならぬ。それからこの木船手記以外にも受件簿その他によつて堀り下げてみれば、解明して明らかにすべき点がまだいろいろあると思うのであります。
  726. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今言つた二つですね。そういたしますと、その二つのことを明らかにして、横浜地方檢察廳を粛正する最もよい方法というものを、あなたはどうお考えになりますか。今までこれができていない……。
  727. 橋本千代雄

    ○橋本證人 現在の木船手記に基く点を克明に取調べる、あるいはその他弁護士会から言われておること、あるいは判事側からもあれこれ言われておりますすべて、たとえば後藤問題にしろ、あるいは西派、後藤派の対立というような爭いがあつたとも聞いておりますが、そういうようなことも全部この際よく洗つてみれば、今日では犯罪としてあげるようなことはとうてい不可能でありましようが、決して後日に災いを残さないように、きれいさつぱりしたものにしなければ、とうていこの濁つた空氣はうせないと私は確信しております。
  728. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そこで重ねてお問いしますが、その粛正のためには、いかなる方法をとれば最もよいか。抽象的だからもつと具体的に、たとえばどこが災いをしておるのか、檢事正がじやまをしておるのか、あるいは次席がじやまをしておるのか。あるいは何々檢事がじやまをしておるのか、それならばどうすればよいかというような具体的なことをお聞きしたい。そうしないと抽象的に、ただこれをこう洗えばこうだということではわかりません。徹底的に調べるために障害を來している点があれば、どこをどういうふうに除けばいいかということを……。
  729. 橋本千代雄

    ○橋本證人 横浜地檢内ではとうてい手が届かぬでしようから、われわれとしては、宣誓による証言を求め得るところの國会の方々に現地調査をお願いする以外に道はないと、方法論としては考えます。そしてそれについては今までの諸般のいわゆる事実、デマでも何でも、あるいは相当の容疑関係でも犯罪でも、犯罪にならぬまでも綱紀の乱れておつた点についても、刻明なお調べを願う以外には、目下のところは絶対に不可能であると私は考えます。
  730. 花村四郎

    花村委員長 取調べはこれで終りました。どうも御苦労さまでした。お帰りください。  香取博史君ですか。
  731. 香取博史

    香取證人 そうです。
  732. 花村四郎

  733. 香取博史

    香取證人 四十三歳。
  734. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  735. 香取博史

    香取證人 檢事
  736. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  737. 香取博史

    香取證人 東京都杉並区大宮前六丁目三百四十三番地。
  738. 花村四郎

    花村委員長 檢事にはいつなられて、横浜にはいつ赴任せられましたか。
  739. 香取博史

    香取證人 昭和九年司法官試補、十年十二月檢事に任官、昭和二十二年五月末の辞令によつて、同年六月中旬ごろ横浜へ着任ということになつております。
  740. 花村四郎

    花村委員長 明治商会で起きた事件を御承知でしようか。
  741. 香取博史

    香取證人 承知しております。
  742. 花村四郎

    花村委員長 その事件の概要はどういう事件ですか。速記をとめて……。     〔速記中止〕
  743. 花村四郎

    花村委員長 速記を始めてください。
  744. 香取博史

    香取證人 手持ちしておる記録を記憶喚起のために見せていただきます。——明治商会に関しましては経済事件は二つ送致になつております。第一事件昭和二十二年七月九日平林警部補の押收捜索によつてつております。これは記録の上でございますから、その前の内定その他とは別であります。二十二年十二月十三日、横浜地檢一万七百六十二号として壽署から送致を受けております。主任檢事富田檢事、罪名は物價統制令違反、被疑者横浜市南区西中町一丁目二三番地、油脂塗料及び原料賣上加工業(1)株式会社明治商会、第二被疑者が同商会專務取締役岩山明正、送致にかかわる被疑事実は、岩山專務が同会社の業務に関して——簡單に言いますと、第一事実昭和二十二年三月十二日ごろから、同年七月八日ごろまでの間約二十九回にわたつて横浜市保土ケ谷区西久保町百二十一番地、諸星化学工業株式会社の多田喜一郎外九名くらいから塗料類その他六品目を統制額より合計三十九万八千三百四十七円五十一銭高い代金である合計八十万九百六十五円三十一銭で買受けたこと、第二事実、同年三月十四日ごろから、同年七月八日ごろまでの間、約三十九回にわたつて、川崎市堀川町五十三番地、日産化学工業株式会社荒井清三郎外約十九名に対し、塗料類その他四品目を統制額より合計五十万六千百三十一円八十三銭高い代金八十三万千六百四十七円で販賣した事実、第三事実、同年二月二十八日ごろ及び同年三月四日ごろまでの九回ぐらいにわたつて、右の諸星化学工業株式会社の多田喜一郎から、電化カーボン及び変性アルコールを統制額より二万八千六百八十円高い代金七万五千円で買受けたという事実が送致されており、なお犯状としてこれと別に、昭和二十二年六月二日ごろから同年七月三十一日ごろまでの間、六十一回ぐらいにわたつて、氏名不詳者約六十一名に対して、塗料外一品目を統制額より七万三千二百二十四円七十八銭高い代金二十三万千八十円十二銭で販賣したということがうたわれておる。これが第一事件であります。この事件昭和二十三年十二月二日、富田檢事岩山明正に対する調書が作成されており、同月十六日横浜簡易裁判所に富田檢事名前で略式命令請求によつて起訴されております。求刑は被告会社に対し罰金十五万円、同岩山に対し罰金三万円となつております。なお本年の四月十六日付で判事の略式不相等決定がありまして、同月二十五日公判の結果、この求刑通りの判決の言渡しになつているように最近調べて参りました。  第二事件昭和二十三年九月十八日横浜地檢受理、檢第三千三百四十四、大岡警察署送致事件、主任瀬戸副檢事、罪名臨時物資需給調整法、これは指定生産資材割当規則の違反になります。被疑者は株式会社明治商会及び岩山明正、被疑事実は被疑者岩山明正は被疑会社の業務に関して昭和二十三年四月三十日、横浜市南永樂町瀬戸泰博から、指定生産資材である塗料のラツカー、リターダー九十三キロ五百グラムを、需要者割当証明書または販賣業者割当証明書と引かえることなく、販賣の目的をもつて代金一万六千八百四十円を支拂つてこれを讓り受けたものであるということになつております。処分決定は昨年十月九日、瀬戸副檢事の被疑者岩山に対する調書があり、昨年十二月二十九日瀬戸副檢事の手により横浜簡易裁判所に対し、略式命令をもつて起訴しております。本年一月二十六日付をもつて略式命令が発布になつております。起訴事実は先に申し上げた被疑事実と同樣になつております。求刑及び課刑はともに被告会社に対し罰金一万円、被告人岩山に対し罰金五千円となつております。
  745. 花村四郎

    花村委員長 第二の被疑事実の主任檢事はだれですか。
  746. 香取博史

    香取證人 瀬戸副檢事。決裁香取檢事
  747. 花村四郎

    花村委員長 そこでこの第一事実の檢事としての求刑が著しく低きに失するという非難があるのですが、それはかつて檢事総長並びに村山経済部長からの指示があつて、少くとも経済違反事件は、三十万円以上の事件に限つては、超過額の約三倍以上の罰金を言い渡し、なお事案によつては体刑を付課すべきものであるということに相なつてつたそうでありまするが、こういう指示から見れば、著しく低いという非難がありますが、これはいかがでしよう。
  748. 香取博史

    香取證人 求刑の標準に関しては機械的な標準がありません。結論を申し上げますと、私は低きに失するという非難は当らないと思います。理由は、求刑標準に関して超過額の何倍というようなことを檢事として申し上げることはさしつかえないかどうか、ちよつと疑問に思われますけれども、多少その点言いまわしをくふうさせていただきたいと思いますが、統制事犯の求刑に関しては、從來から二つの主義がございました。これはごく形式的に言つてでございますが、統制の初期から、大体において関西においては超過額を標準としまして、それに対する何倍というような考え方、関東におきましては、大体において利益標準説と申しまして、利益に対してその何倍といつたようなやり方をして、ずつと今日まで來ておつたのであります。今日までと申し上げますのは、上層部からの指示によりまして、この求刑標準は関西のと同じく超過額を標準とすべきであるという指示が昨年の八月に出ておりますが、その後実は今日まで、いまだに統制のとれた超過額標準説というものに一致はしておらなかつたというのが現況でありまして、事実先月でございましたですか、全國の経済主任檢事会同が東京で催されました際も、またこの問題が取上げられまして、再び討議されたといつたような実情にあるのであります。結局昨年の八月ごろからは、利益標準によろうと、超過標準によろうと、結局においては実は公定價格の値上りといつたようなことで、大差なくなつたのであります。この明治商会事件は、昭和二十二年中の事件でありまして、関東として利益標準説に主としてよつてつた時代のことであると考えますので、そういたしまするならば、その当時処罰されておつたならば、もつと軽い刑で済んでおつたのが、事件の処理が遅れているために、重く処罰されるというようなことは、妥当ではないといつたような考え方から、利益標準説によられて求刑されたのではないか、これは直接富田檢事に聞いてみませんからわかりませんが、私の想像ではそういうふうに考えられます。また私が今この事件を処理して起訴するといたしましても、この程度の求刑にとどまるであろうというふうに考えられます。
  749. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、ただいま委員長が申しました檢事総長、並びに村山経済部長よりの三十万円以上の経済違反事件に関してはその超過額の三倍以上と、場合によつては体刑を付課すべきものであるというこの標準を示されたということは、あるのですか、ないのですか。あつても、それはここで供述を拒まれるというのですか。
  750. 香取博史

    香取證人 いいえ、言えます。
  751. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、その指示から申しますと、この明治商会に対する檢事の求刑はどういうことになりましようか。あなたのお考えは……。
  752. 香取博史

    香取證人 軽いということになります。
  753. 花村四郎

    花村委員長 しかし、利益標準説等から考え、また求刑当時の事情から考えて適当だ、こうおつしやられるわけですね。
  754. 香取博史

    香取證人 そうでございます。それで示された基準といいますか指示といいますか、それが昨年の八月でございますから、その以後の犯罪は、その標準によるべきものではないか、その以前のもそれによるのかということがまた先々月の全國会同でも問題になつたのでありますが、一体前のやつは古い標準によつて來たのが実情であります。
  755. 花村四郎

    花村委員長 それからこの事件に関しまして、明治商会岩山專務から鈴木茂雄なるものに本件のもみ消し運動を依頼して、合計十万五千円の金を渡したという事実は、お知りになつておりますか、いかがですか。
  756. 香取博史

    香取證人 知つております。その通りであります。
  757. 花村四郎

    花村委員長 この事件檢察廳の方でどうなつておりましようか。今の鈴木茂雄事件は……。
  758. 香取博史

    香取證人 ただいま調査を続行中であります。ほとんど結論を得ましたが、今日まで実は続けております。
  759. 花村四郎

    花村委員長 それはあなたと吉積檢事と二人でお扱いになつておるわけですか。
  760. 香取博史

    香取證人 そうです。
  761. 花村四郎

    花村委員長 お扱いになられたのは、本年の三月以降になるわけですか。
  762. 香取博史

    香取證人 そうです。
  763. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、この事件の起きましたのは、二十二年の十二月のようですが、この長い間ほうつて置かれたという事情は、どういう事情でしようか。
  764. 香取博史

    香取證人 その点について、私は詳しいことは存じませんが、今度問題になりましてから聞いたところによりますと、当時やはりこのことが問題にやつた。それで宮崎檢事がこの問題にタツチした。その後富田檢事が昨年十二月取調べるようになつてから、同檢事もタツチしたというふうに聞いております。ただしタツチしたということは、不正行為としてタツチしたという意味に申し上げておるのではありません。
  765. 花村四郎

    花村委員長 それはどういう意味でしようか。取調べ意味でしようか。
  766. 香取博史

    香取證人 富田檢事の場合は、取調べになるかと思いますが、宮崎檢事の場合は、取調べという何ではなかつたと私は感じております。岩山が十万五千円という大金を出したということが関係者の間に言われるようになつて後藤つぎ氏の耳にも入り、同時に宮崎檢事の耳にも入つた。それで宮崎檢事には後藤つぎから入つたのだと思いますが、当時宮崎檢事後藤の家に止宿しておられたということでありまして、そんな関係から耳に入つたのだと思います。それでそんなことはけしからぬというところから、鈴木を呼んで、こんなことをしておるそうだが、ほんとうか。ほんとうであります。それはけしからぬ。君と岩山の間の貸借関係ということにして、片をつけろというような趣旨の話がその当時あつたということであります。それでそのときは納まつて、話が終つておる。いつの機会に富田檢事の耳に入つたのか、正確なことは存じません。とにかく富田檢事の耳にも入つた。それで富田檢事がこの事件取調べるようになつてから、鈴木岩山、こういつた人々についてこういうことを言われておるそうだが、はなはだ迷惑なことである。事実、まつたくそういうことはないのだ、それで約束を履行するようにとかいうような話がかわされたということを聞いております。
  767. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄の言うところによりますると、これは富田檢事に調べられたのではない。その受取つた金について借用証書にする方がいいというような話はされたということでありますが、一説によれば、後藤つぎの宅で富田檢事と、そして鈴木茂雄岩山会つた上で、証書にする方がいいというので、仲へ入つて口をきいたというような話もあるのですが、それはいかがですが。
  768. 香取博史

    香取證人 それはその通りだと思います。二十二年の十一月ごろ、ただいま富田檢事というお話でしたが、私はそうではなく宮崎檢事だと思います。二十二年十一月には宮崎檢事後藤の家で同席しまして、これは借用証書にした方がいいと言われたというふうに承知しております。
  769. 花村四郎

    花村委員長 それからあなたはこの花園纖維株式会社事件の記録がうやむやになつて、紛失してしまつたというようなことを御承知ですか。
  770. 香取博史

    香取證人 今度問題になつてから承知いたしました。
  771. 花村四郎

    花村委員長 今度お聞きになつたわけですね。
  772. 香取博史

    香取證人 そうであります。
  773. 花村四郎

    花村委員長 それから、日本タイヤー事件というのがやはり横浜檢察廳で取上げられておるのですが、この事件の内容も御承知ですか。
  774. 香取博史

    香取證人 承知しております。
  775. 花村四郎

    花村委員長 それはお取調べになつたわけですか、主任檢事として。
  776. 香取博史

    香取證人 いいえ、そうではありません。これも今度問題になりましてから調査してわかりました。
  777. 花村四郎

    花村委員長 それではその大体の概要をひとつ知り得る範囲においておつしやつてください。
  778. 香取博史

    香取證人 わかりました。相当犯罪事実の内容が長くなりますから、ごく要約して申し上げます。日本タイヤー株式会社に対しましても、経済事件が二つあります。第一事件は、昭和二十三年十一月二十七日横浜地方檢察廳において、檢第九千四百二十二号として受理しております。加賀町警察署から送致を受けたものでありまして、事件主任は楢島檢事であります。罪名臨時物資需給調整法——これは指定生産資材割当規則ですが、その違反、及び物價統制令違反、被疑者は第一が日本タイヤー株式会社、第二が同社営業課員の高井斌夫、第三が同工場次長兼営業課長馬場誠、第四番目が同工場倉庫主任富樫哲郎、第五に同工場営業課員の天野和治、第六に鉄工業金子泰一、第七に株式会社岡村製作所、第八に同社計画課長石渡正男、送致にかかる犯罪事実は、被疑者高井が被疑会社の業務に関し、需要者または販賣業者割当規則によらず、かつまた主務官廳の命令または許可もなく、一、昨年二月七日及び同月十日ごろの二回にわたつて横浜の配炭公團横浜支局の調査課員木村谷男から石炭、粉炭ですが、合計四トンをトン当り三千五百円の割合で、合計一万四千円で讓り受け、二には同年二月七日より四月三日ごろまでの間十二回にわたつて、この木村谷男に対して勤務先工場製の自轉車用タイヤ及びチユーブ合計百十組——全部を合せると二百二十本づつ四百四十本になりますが、それを讓り渡して、その対價として一本についてタイヤ八百五十円、それからチユーブが三百円の割合で木村から石炭四十四トンを受領したという物統違反。それから二には、被疑者馬場は被疑会社の業務に関し、昨年四月十一日ごろ勤務先工場製の自轉車用タイヤ百六十四本及びチユーブ百六十四本を前同樣石炭と物交する等の目的をもつて同工場の倉庫内に格納所持しておつた。また昨年七月二十八日から同年九月四日までの間、八回にわたつて被疑者岡村製作所に対して無切府で日本タイヤーで生産したPX用の運搬用のゴムタイヤ千六個を一輪八十円ないし百十円、代金合計八万六千六百六十円で賣り渡した事実。  次に被疑者富樫は日本タイヤー株式会社の業務に関して、毎月末の指定生産資材の在庫数量を眞実に帳簿に記載しなければならぬにもかかわらず、昨年七月ごろから九月二十八日ごろの間に、勤務先工場で生産した指定生産資材である自轉車、三輪車のタイヤ及びチユーブ、それから更新タイヤなどの在庫数量を確認しないで、よつて所定の帳簿に眞実の在庫数量を記載しなかつた。この事実は別表として持つておりますけれども、きわめて小さいものであります。  次に被疑者天野は、昨年の九月二十五日ごろ、浜松遠州鉄道株式会社ほか三名に対して、未檢査品である更新タイヤ合計三十二本を、未檢査品であるにもかかわらず、一本当り檢査品の統制價格たる四千三百円または四千円の割合で、未檢査品としての統制價格を合計五万五千円超過する代金十三万五千八百円で販賣した。  次は被疑者金子は、二十三年七月二十八日より九月四日まで九回にわたつて、被疑者岡村製作所が日本タイヤー株式会社から無切符指定生産資材たるPX用運搬車のゴムタイヤ、千六個を讓り受けるにあたつて、これの幇助をした。  最後に被疑者岡村製作所の被疑者石渡は、このゴムタイヤ千六個、うち八百箇は一個当り八十円の割で、残りの二百六個は一個百十円の割で、合計八万六千六百六十円で讓り受けて、製品は特別調達廳関係に八百輪、外一個所に百六十輪納入使用して、残り四十六輪を不正に処理しておつたものであるという送致事実になつております。この事件檢察廳において未処理であります。  第二事件は簡單です。本年二月三日横浜地檢処理二千五百三十一号、戸塚署送致、主任檢事紺野檢事、署名、臨時物資需給調整法違反、被疑者送致は馬場誠だけの送致になつております。犯罪事実は、馬場は会社の業務に関して、昨年三月十五日及び同年七月二十二日に二回にわたつて指定生産資材である自轉車用タイヤ及びチユーブ三百二十本を無切符で新潟の自轉車商業協同組合専務理事山之内、村松に販賣したという事件であります。この第二事件は、実はこれと同種の事件が川崎でごく最近無罪になりましたので、檢察廳の捜査は済んでおりますが、起訴すべきかいなかということについては目下考慮中であります。
  779. 花村四郎

    花村委員長 そこでお尋ねしますが、その事件関係して、望月事務官というのが取調べの衝にあたつておりましたか。
  780. 香取博史

    香取證人 取調べの衝にあたつておりません。
  781. 花村四郎

    花村委員長 望月、木船が、この日本タイヤーへ行つて、そうして自轉車のチユーブ、タイヤをもらつて、そうして小田原の鈴木作次郎のところへ賣つたというような事実はお聞きになつておりますか。
  782. 香取博史

    香取證人 聞いております。その通り相違ありません。
  783. 花村四郎

    花村委員長 お取調べとは何ら関係ありませんか。お取調べになつたことはありませんか。
  784. 香取博史

    香取證人 その事実ですか。
  785. 花村四郎

    花村委員長 そうです。
  786. 香取博史

    香取證人 その事実を私は調査いたしました。
  787. 花村四郎

    花村委員長 それは主任檢事としての取調べ意味ですか。
  788. 香取博史

    香取證人 いいえ、そうではありません。事件そのものの捜査、取調べではなく、今度問題になりましたについて、この事件を上司の命でひつぱり出しまして、私は調査いたしました。
  789. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、この事件に牽連をいたしまして、そうして木船なるものが手記を出したのですが、その手記の基いて横浜檢察廳でお取調べを始めたようですが、その当初は橋本檢事が担任であつたものをあなたの係にかえたということになつておるようですね。
  790. 香取博史

    香取證人 そうです。
  791. 花村四郎

    花村委員長 そこで、本年の三月七日まで橋本檢事の係であつたものが、その前、一週間ばかり前の三月二、三日ごろから、あなたがひそかにお取調べを行つてつたというようなことになつておるというのですが、そうですか。
  792. 香取博史

    香取證人 そういうふうにとりざたされているということを承知しております。
  793. 花村四郎

    花村委員長 それはとりざたで、事実は違いますか。
  794. 香取博史

    香取證人 大分違うところがあると思います。
  795. 花村四郎

    花村委員長 それで橋本檢事から主任檢事をさらにあなたにかえるというようなことは、今までの檢察廳の慣例としてあまりないということなんでありますが、橋本檢事をやめさせて、あなたに引継がしたという事情はどういう事情ですか。
  796. 香取博史

    香取證人 このいきさつを最初のときから申し上げます。本年の一月下旬ころと記憶しております。檢事正室へ呼ばれまして、次席檢事もおられましたし、私と橋本檢事と四人同座していたと思います。檢事正、次席から実は今度——たしかどこかの新聞社と言つたと思いますが、ある筋から当檢察廳内の木船という事務官に関して汚職行為があるという情報が入つた、これを調べなければならないが、さてたれにやつてもらおうかという話がございました。当時私は、昨年末、十二月二十四日付をもつて経済部長に就任したばかりでありまして、部内の班の編制、事件の割当等、組織編制といつたものに非常に緊急の必要がありましたので、その方に沒頭しておりましたので、手元が忙しいというところから、それではこれは橋本檢事にやつてもらおうということを檢事正から御命令がありました。それで橋本檢事がこの木船の事件をやつておられましたが、その後、正確な日は覚えませんが、二月中旬ころだつたと記憶します。場所は次席の部屋であつたと思いますが、そこへ檢事正も來られたというふうな記憶ですが、橋本檢事とそれから私——これは橋本君の入つて來る前に私は行つてつたと思いますが、次席檢事から木船手記の一部を見せられました。木船問題についてはかれがこんな手記を書いている。君経済部長だから心得ておいてくれと言われて、手記を見せられました。その手記は、日本タイヤーと外一つくらいあつたように記憶します。それと木船が系統図のようなものを書いておつたことを記憶しております。それを見せられたことがありまして、そのとき檢事正から私に対して、こういう命令がありました。君、この日本タイヤーの事件が今のところ一番具体性がありそうに思うから、この事件の記録をひつぱり出してくれ、部内の者が動搖するといけないから、知れないように、君自身の手で出してもらいたい。こういうお話がありまして、それで、よろしゆうございますとお引受けいたしましたが、同時に橋本檢事に対しては、実はことが日本タイヤーというだけの話で、どこの何であり、会社の正確な名前が何だかどうもわからないし、関係者がだれかということもよくわからない、そうすると事件簿を繰るにしても、索引を繰るにしても出て來ないというおそれがあります。それで、君、今木船を調べているのだから、できるだけ木船から材料をとつてくれ、いつころの事件であつて、どこの警察から送つて來たのかというようなことを、ひとつ君の手で木船から詳細聞いてくれ、そしてわかつたら、わかつただけを私にすぐ連絡してもらいたい、そうしたら私の手で記録を何とかして出すから……。それで橋本檢事もよしよしというわけで、もちろん快く納得しまして、部屋をお出になつたということがあつた。その後私は、これはどうして動搖させぬよう、わからぬように出すことができるかと、いろいろ方法を考えたのでありましたが、橋本檢事の方へも一回くらいあれ、どうした、もつと詳しいことがわかつたかと聞いたと思いましたが、いや、あの手記の程度だ、こういう話だつたのです。それで私はこれを出す方法として考えましたのが、ちようど部内の再編成をやつているときですから、事件の帳簿についているのも、ついていないのも——と申しますのは、経済部の数名の檢事をそれぞれ班長にいたしまして、そのもとに事務官二名なり、三名なりを配属して一つずつの班としておりましたから、各班ごとにその事件簿を持つていないと、事件の運命がわからない。それで各班ごとに事件簿をつくつてもらいたいということを申しまして、その事件簿を全部つくり終えたら、どういう事件がどの程度あるか見たいから、ちよつと私の手元に貸してみてくれということで借りまして、それを私が全部見て、そのうちからひつぱり出そう。こんな方法を考えました。ちようど紺野檢事部屋へものぞいて、君の方も事件簿をつくつているかね、いや、やりつつあります、それでは今どんな事件があるか見たいから、そのうち貸してもらいたい、——紺野檢事はおりませんでしたが、事務官がおりましたので、そういうことを言つて部屋を出ました。そういう方法で記録引出しのことを推進しておりました。ところが二月の下旬だと思いますが、檢事正、次席、私、橋本檢事、この四人が集まりましたとき、橋本檢事がこう申しておりました。木船の事件は一段落しました。私は公判とこの事件と掛持ちで、忙しくて忙しくてどうにも手がまわらぬから、木船の事件は一段落ついたから、あとは香取檢事——橋本檢事の言葉で、あとは香取氏に引継いでもらう、こういうことを申されました。そのときはそれだけのことで終りました。
  797. 花村四郎

    花村委員長 それでよろしゆうございます。それで二月の十一日にあなたと橋本檢事と林次席と檢事正と本間という事務官が集まつたときに、檢事正も、林次席も、この事件はこれは徹底的にやらなければならぬ、やつてもらいたいということを橋本檢事に言うたので、橋本檢事もそのつもりになつて、あなたに対して経済記録を見せてくれ、これを徹底的に調べるには、経済記録を見ることが必要であるから、その記録を見せてもらいたいというので、いろいろ頼んだけれども、あなたの方から出してくれなかつた。こういう事実があるというのですが、それはいかがですか。
  798. 香取博史

    香取證人 そうしますと、それは今の日本タイヤーの記録の話だと思います。けれどもただ日本タイヤーの記録引出しのことについてはそれだけの話でございまして、それ以上の記録を出せとか、何とかいう話は全然ございませず、私の方から協力しないということは絶対ございませんでした。現に橋本檢事も、あなたの方でもつと詳しく日本タイヤーその他のことがわかりましたかと言うて來もしましたし、また私、次席にも聞いたことがあります。次席の方から橋本さんから何かもう少し詳しい話はございませんでしたかと言うて聞いたことがあります。
  799. 花村四郎

    花村委員長 それでよろしゆうございます。それから橋本檢事がそう上司から言われたので、徹底的に調べる心構えでおつたところが、三月八日からあなたに主任をかえるということになつた。しかもそのかえるという話のある前から、内密にこの調べをしておつたという事実があるのだが、結局結論的に言うと、あなたに主任を移したことは、この事件取調べをうやむやにしよう。まああまり橋本檢事のように強硬にやつて拡大強化をされると困るということで、あなたの方に移して、うやむやに葬り去ろうという意味でこの引継ぎが行われたのだ、こう檢事も事務官も言うておる人があるのですが、それはいかがでしようか。
  800. 香取博史

    香取證人 それは絶対にそういうことはありません。それは私の全部をもつて断言いたします。
  801. 花村四郎

    花村委員長 それでよろしゆうございます。  それから横浜檢察廳における最も重要な事件簿というものが、まことに乱雜きわまるものであるというのですが、それはいかがでしようか。
  802. 香取博史

    香取證人 事件簿の方は、そう申しては何ですが、実は私よく存じません。どうもこの事件はどうなつたろう、あの事件はどうなつたろうということで調べますときに、なかなかうまく出て來ないときがたびたびございました。だから必ずしも整備しておるということは確かに言えないと思います。
  803. 花村四郎

    花村委員長 整備しておらぬばかりでなくして、事件簿が一部は取去られてページが合わなかつたり、あるいはある点は空白になつてつたり、ある点は二重に記載されておつたり、まことに事件簿としては乱雜きわまるものである、こういう非難があるのですがそれはその通りですか。
  804. 香取博史

    香取證人 当つておるところが多いのじやないかと思います。けれどもこれは制度の切りかえをやりましたので、古いことは知りませんが、とにかく全部一本に受けておつたのを、経済事件は経済部だけで受けるということに組織が之をいたしましてやつておりました。それからまた、これではどうも今のようなぐあいが悪い点が出て來るというので、最近また全部を一本に受けるという方法に改めて、着々整備しつつあつたところなのであります。
  805. 花村四郎

    花村委員長 それでたとえば花園事件のごときも記録がどこへ行つたか見つけようというので、事件簿を調べたところが、その部分は切り取られたか、むしりとられたかわからぬが、載つておらぬというようなことであつたというが、それはどうですか。
  806. 香取博史

    香取證人 それは私、見ましたらちやんと載つておりました。間違いなく載つております。それでそのとき、これ、あとで書いたのじやないだろうかということまで係の者に念を押しましたが、そんなことはないと申しますし、見るとそんなことさらそういつた工作をしたという形跡は何もありません。またやれないような記載になつております。
  807. 花村四郎

    花村委員長 そうですか。その点は大分帳簿を調べた人が言うておりますが、それはいいでしよう。
  808. 香取博史

    香取證人 いや、あります。
  809. 花村四郎

    花村委員長 こつちの委員が調査行つたときも、それはなかつたというのですが、花園纖維株式会社名前で出ておりますか。
  810. 香取博史

    香取證人 花園纖維株式会社……。その点はどうでしたか。深谷ともう一人何とかいう者の名前で出ておつたかもしれません。
  811. 花村四郎

    花村委員長 それじやそれでよろしゆうございます。それでこの横浜檢察廳は内部において檢察官檢察事務官も、何と申しますか、これは革正派、非革正派と呼んでおる者がありますが、とにかく内部を革正せんければならぬという意見を持つた人、それと、このままであまり世間に発表すると檢察廳の信用にも関するから、まあそつとしておこうという人並びにその中間に立つておる中間派というような三つの流れがあるようですが、証人は聞くところによれば、あまり廓清などはやらぬ方がいいという御意見の一人であり、しかもその論については強硬論者の一人であるというお話でございましたが、いかがですか。
  812. 香取博史

    香取證人 これもはつきり申し上げます。絶対にそういうことはありません。私陣頭に立つて部内の粛正をやるということについて、いささかもやぶさかでないのであります。
  813. 花村四郎

    花村委員長 そういう空氣のあることだけは間違いありませんか。
  814. 香取博史

    香取證人 それは今度こういつた問題が起つてからだんだんそういう色わけをつける者ができて來たのじやないかと思います。
  815. 花村四郎

    花村委員長 そうですか。
  816. 香取博史

    香取證人 廓清反対と見られることは、はなはだ迷惑しごくであります。
  817. 花村四郎

    花村委員長 そこであなたが橋本檢事のあとを引継がれてやつて参りましたこの木船手記に基く取調べですが、その取調べはどういう結果になりましたか。結論を得ましたか、どうですか。
  818. 香取博史

    香取證人 大体得ました。まだ最後の仕上げというところまで行つておりませんけれども、大体は得ております。
  819. 花村四郎

    花村委員長 その大体の経過はお話できませんか。
  820. 香取博史

    香取證人 申し上げてもよろしいです。
  821. 花村四郎

    花村委員長 どういうことになつておりますか。簡單でよいのですが……。
  822. 香取博史

    香取證人 時間をいただければ、この手記全部について詳しく申し上げたいと思います。
  823. 花村四郎

    花村委員長 時間がございませんから、簡單でよいのであります。何人の事務官がどういうことになつたという程度で……。
  824. 香取博史

    香取證人 結局問題として取上げて、何らかの責任を追究するという処置に出なければならぬという者は五名であります。
  825. 花村四郎

    花村委員長 その五名については、いずれ処置をなさるということですね。
  826. 香取博史

    香取證人 上司のなさることでありますが、間違いなく何らかの処置をとられることと思います。
  827. 花村四郎

    花村委員長 それから横浜に有名な後藤つぎというのがおりますね。御承知ですか。
  828. 香取博史

    香取證人 存じております。
  829. 花村四郎

    花村委員長 あなたはその宅に行かれたことがございますか。
  830. 香取博史

    香取證人 ございます。
  831. 花村四郎

    花村委員長 何度ぐらい。
  832. 香取博史

    香取證人 一度あります。私が昭和二十二年六月、前任地から着任いたしまして、二日目か三日目のことだと思います。君の歓迎会をやろうというので、場所はどこですかと聞いたら、宮崎檢事と石塚檢事の止宿先だということで連れて行かれた所が、後藤つぎ氏の家だつたと思います。もつともこのときは、その後三百何十円かの会費の徴收を受けております。当時ちようどあの五百円のわくがはずれるか、はずれないかというときで、非常に痛くこたえたことを覚えております。それ以外には今度取調べに二度行きましたが、それ以外には一度もございません。
  833. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎの所へ檢事が多勢出入りをしておると言われるのだが、その点はどうですか。
  834. 香取博史

    香取證人 そういうことがあつたのじやないかと思います。
  835. 花村四郎

    花村委員長 そうして後藤つぎ檢事局へ始終見えておられるそうですが……。
  836. 香取博史

    香取證人 三、四回姿を見たことがあります。
  837. 花村四郎

    花村委員長 そうして世間ではもつぱら身柄のもらい下げや、刑を軽くしてもらうことや、あるいはもみ消しをやるというような運動を盛んにやつてつたというのですが、その点はいかがですか。
  838. 香取博史

    香取證人 その点は私は知りません。事実知らないのであります。
  839. 花村四郎

    花村委員長 後藤つぎが、一度選挙違反か何かで召喚を受けたことがあるそうですが、それは御承知ですか。
  840. 香取博史

    香取證人 いいえ。それも知らなかつたのです。今度問題になつて初めて聞きました。
  841. 花村四郎

    花村委員長 召喚を受けたところが、某檢事が、それはお前出て行つちやいけない、うちにおつて病氣だといつて、ただ寢ておれと指示されて、寢ておつて、遂に出て行かなかつたというので、それでそのまま事済みになつたというような話がありますが、いかがです。
  842. 香取博史

    香取證人 それを知らなかつたのでございますが、実に私うかつなんでございますけれども、一昨年末から私隠退藏主任を命ぜられまして、それに沒頭しておりまして、どなたからも御信頼受けないのじやないかと思うほど、実は部内の情勢についても暗かつたのでありまして……。
  843. 花村四郎

    花村委員長 そういう話は聞きませんか。
  844. 香取博史

    香取證人 選挙問題でございますか。
  845. 花村四郎

    花村委員長 今言うような呼出しを受けたときに、某檢事が寢ておれと言うので、寢ておつて、遂に召喚に應じなかつたという……。
  846. 香取博史

    香取證人 その話は聞いておりません。
  847. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質疑がありますか。猪俣浩三君。
  848. 猪俣浩三

    猪俣委員 明治商会の件についてお聞きしますが、あなたがさつき第一事実、第二事実、第三事実と、こうお述べになりましたね。それは違反物資の買受事実、販賣事実、こうなつている。ところが略式命令の請求を見ますと、販賣の事実だけ送つてありますね。どういうわけですか。そこで、あなたはとにかく第一、第二、第三と述べたんだが、この十八万円の略式求刑があなたは妥当であるという結論であるが、それが私ども不可解なんだ。これはとにかく販賣の事実と買受の事実だけでも、取引額は百六七十万円に上つている、違反額だけ百万円近くなつている。それを基準にしてもなお十八万円だというのが妥当でありますか。それといま一つは、何がゆえに販賣の事業だけ起訴して、この同金額になつている四十何万円の違反である買受けの事実はそのままにしたのであるか。
  849. 香取博史

    香取證人 この賣つた品物の中の主要なものが買いの方に入つている。つまりそれを買つてつたという形になつていると思いますが、それで買い一方をとるか、賣り一方をとるかというような場合には、われわれは一つの物を買つてつたという場合には、買いと賣りと両方打たずに、大体において、どちらか一方、超過額の大きい方を打つというやり方をしておりますので、そのためではないかと思います。
  850. 猪俣浩三

    猪俣委員 たいへん相手が違い、時間が違つて、回数が違つても、買つた場合と賣つた場合に、品物が似通つていると、それは一つにするんですか。
  851. 香取博史

    香取證人 それは品物が似通つておればということでなく、同じ品物を買つてつたということになれば一つにまとめるということです。
  852. 猪俣浩三

    猪俣委員 相手が違い、時間的にたいへん違つてもそうなるんですか。
  853. 香取博史

    香取證人 起訴するときにはそういうふうにやつておりますね。賣りの相手、買いの相手をやるやらぬという問題は別でして、たいがいの場合は両方やりますが……。
  854. 猪俣浩三

    猪俣委員 こういうふうに明治商会の場合は、その意味で一方だけやつたと、こうおつしやるのですか。
  855. 香取博史

    香取證人 そうだろうと思います。
  856. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたがやつたんでなく、これは富田檢事がやつたんだね。
  857. 香取博史

    香取證人 はい。
  858. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから檢事総長の去年の八月の通牒ですが、これは違反超過額の二倍ないし三倍というような通牒になつているようなんだが、しかもそれを見ると、本通牒入手後は價格違反の事件を課刑するには、超過額の二倍三倍という通知が來ている。のみならずあなたの地檢では、この通牒をもらつて檢事さんたちの会合をやつたんではないのですか。
  859. 香取博史

    香取證人 昨年でございますか。
  860. 猪俣浩三

    猪俣委員 この通牒に基いて会合をやつているはずですよ。そのときに、爾今こういうふうにやろうと申合せをしたはずなんだ。
  861. 香取博史

    香取證人 特に会合というあれではなかつたと思いますが、経済の檢事連中が……。
  862. 猪俣浩三

    猪俣委員 話合つたことはございますか。
  863. 香取博史

    香取證人 話合つたことはあります。
  864. 猪俣浩三

    猪俣委員 それ以後でしよう、この明治商会の略式は。そうするとはなはだ違うじやないか。
  865. 香取博史

    香取證人 それはさつき申し上げたように、今の話の二倍ないし三倍、少くとも超過價格一ぱいやらなければならぬということは、いつの事件からそれを適用するか。入手したのは八月で、その入手したときからやらなければならぬということですか、古い事件までさかのぼらしてやるかどうかということは、おのずからまた別個の問題であろうということになると思う。
  866. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは全文私持つておりますが、全文の書き方をずつと見れば、いわゆる連合國の司令部の方からも異論が出て、こういう通牒になつたということがちやんと詳しく書いてある。そうすればこの通牒が出た以後は、要するに求刑する場合は、それによつてせいということは全文で明らかです。解釈上それはあなたと議論してもしようがないが……。
  867. 香取博史

    香取證人 先々月の会合でも、いつのときから問題にするかということを、あらためて問題にされた調子です。
  868. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからばこの通牒が來ない前にこの違犯があつたとして、その時分の大体の基準はどうなつておるのですか。
  869. 香取博史

    香取證人 大体はやはり古くは利益の十倍以内というようなふうになつてつたのですが、一昨年あたりは、関東では利益の二、三倍というところでやつてつたのではないでしようか。
  870. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんなことはない。古いのが十倍というのに、だんだん逆に安くなるということはない。
  871. 香取博史

    香取證人 それは確かに妙な話ですが……。
  872. 猪俣浩三

    猪俣委員 だんだん高くなつて來たのですよ。私も多少求刑の順序を歴史的に調べておるのですが、そんなことはない。だんだん強化されて來た。
  873. 香取博史

    香取證人 確かに横浜の求刑が、私が今まで歩いて來たほかの檢察廳に比べて、どうも軽いなというような感じは一般的には持つておりますけれども……。
  874. 猪俣浩三

    猪俣委員 とにかくあなたがここで妥当であると力説することは、不当だと思うのだ。この求刑に対して妥当であるとあなたが力説せられる根拠はありませんよ。どうもそういう点がぼくらは不審なんだ。あなたが自分でやつたのじやないわけだから、公平妥当な見地で判断してもらいたい。
  875. 香取博史

    香取證人 私は自分が公平妥当であると思う根拠を申し上げておるのですが……。
  876. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではあなたは、この求刑がどうして妥当であると……。
  877. 香取博史

    香取證人 利益標準説をとつたから……。
  878. 猪俣浩三

    猪俣委員 相談しておるのではないか。皆さん会合してちやんときめておるではないか。
  879. 香取博史

    香取證人 それはお答えしたことになりますけれども……。
  880. 猪俣浩三

    猪俣委員 だから何かわれわれに対して、あなたが事を押えようようとしておられるように見える、全体の態度が……。
  881. 香取博史

    香取證人 そういうことはありません。
  882. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから日本タイヤーの事件を聞きますが、それは配炭公團との物交事件でしよう、今あなたの話を聞きますと。
  883. 香取博史

    香取證人 大体そうです。
  884. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとこれは必要的共犯である。そうして配炭公團はどうなつたのですか。
  885. 香取博史

    香取證人 配炭公團は起訴してあるはずです。
  886. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいつ起訴しましたか。
  887. 香取博史

    香取證人 五月下旬か六月の初めごろになるのではないかと思います。
  888. 猪俣浩三

    猪俣委員 昨年ですか。
  889. 香取博史

    香取證人 そうです。
  890. 猪俣浩三

    猪俣委員 昨年の五月、そうするともう一年たつていますよ。しかるに片方の配炭公團は一年以前に起訴して、日本タイヤーは未処理であるというのは異常ではありませんか。必要的共犯だ。
  891. 香取博史

    香取證人 送致が遅れたことが一つの原因じやないかと思う。
  892. 猪俣浩三

    猪俣委員 遅れた原因はどこにありますか。
  893. 香取博史

    香取證人 それはこういうことになります。配炭公團を檢挙して、同時に日本タイヤーの分ももちろんわかつたのです。それは今度このお調べになつてから聞いたことですが、わかつた。それで市警察本部と加賀町署が協力したような形でやつたのだそうです。ところが市警察本部で、この日本タイヤーの事件は大きくなるという見込みを立てたらしい。それでこれだけはおれの方でやるからというので、証拠品一切を市警察本部の方へ持つて行つたそうです。ところが二、三箇月つつていてみたらしいが、結局出なかつたというので、またまた加賀町署の方へ、これは君らの方で見た通り出ないから、君の方で大体まとめてやつてくれということで返して來たそうです。それは七月か八月ころと平林君は言つておりましたが、令状を見ると、九月にまたやつておりますから、その前後だろうと思います。
  894. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはわれわれ調査行つたときにいろいろ調べたが、われわれの調べたところではそんな事実はないですよ。市で取上げて二、三箇月も檢討したというような事実はない。
  895. 香取博史

    香取證人 それは平林君が言うておりましたがね。
  896. 猪俣浩三

    猪俣委員 平林が言うことなんか、あれはくさい男ですから……。
  897. 香取博史

    香取證人 それから市警察本部でもちよつと言うておりました。
  898. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんなことはうそです。あなたと爭つてもしようがないが、これはあなたの係じやないから、平林に聞きます。  それから五人の事務官につきましては、今何とかの上司の命令によつて御処理なさつたということであるけれども、この事件が問題になつてから相当たつておりますね。しかも五人の事務官は今でも登廳して執務しておるそうですね。
  899. 香取博史

    香取證人 そうです。
  900. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこであなたはこれを主任として調べられたのだが、多少そこにあなたがほんとうにこれをやるつもりであつたかどうかということについて疑惑を持つことは、その前に新倉及び大原という檢察事務官事件がありましたね。これはどうなりましたか。
  901. 香取博史

    香取證人 あれは今懲戒手続中です。
  902. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいつごろですか。
  903. 香取博史

    香取證人 あれを調べた直後すぐやつたのですから……。
  904. 猪俣浩三

    猪俣委員 事件はいつごろの話ですか。
  905. 香取博史

    香取證人 昨年のあれは何月でしたか……。
  906. 猪俣浩三

    猪俣委員 それもあなたがお調べになつて、これも何だかうやむやにやつてしまつたという話ですが……。
  907. 香取博史

    香取證人 そんなことはないと思います。
  908. 猪俣浩三

    猪俣委員 起訴しましたか。
  909. 香取博史

    香取證人 起訴じやなく、懲戒訴追です。懲戒裁判の方です。その方へまわしております。これは私の手でまわしたのじやないですけれども……。
  910. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは時間がかかりますから——事件の内容は……。
  911. 香取博史

    香取證人 中央にまわつております。
  912. 花村四郎

    花村委員長 中央というのはどこですか。高等檢察廳ですか。
  913. 香取博史

    香取證人 そうです。高等檢察廳にまわりました。
  914. 花村四郎

    花村委員長 いつですか。
  915. 香取博史

    香取證人 これは昨年の十月、何かちよつと呼ばれて調べを受けたと聞きましたが……。
  916. 花村四郎

    花村委員長 昨年の十月ごろまわしたのが……。
  917. 香取博史

    香取證人 私はつまり日時を記憶いたしませんが、十一月でしたかな。
  918. 花村四郎

    花村委員長 昨年のを今までほうつておくわけですね。高等檢察廳は。
  919. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではあまり時間がたち過ぎはしませんか。
  920. 香取博史

    香取證人 何が呼ばれて調べを受けたということを新倉、大原から聞いたような氣がします。
  921. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから花園纖維株式会社事件、これは名古屋へ送られておりましたね。
  922. 香取博史

    香取證人 そうです。
  923. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはどういうわけですか。名古屋で何か管轄があるのですか。
  924. 香取博史

    香取證人 これは岡崎送りだつたのでございましようね。それを十分調査しないで……。
  925. 猪俣浩三

    猪俣委員 記録の件については、それにあなたはタツチしなかつたのですか。
  926. 香取博史

    香取證人 これは今度一月末ごろですか、記録が名古屋から帰つて來まして、間違つて移送したのだそうですと、だれか事務官が持つて來てくれたので、見たのですが……。
  927. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはそれとして、この五人の事務官をお調べになるときですね。長官官舍へこの五人をひそかに呼んでお調べになつたというのはほんとうですか。
  928. 香取博史

    香取證人 一人望月事務官を長官の官舍に呼んで調べました。最初のときです。
  929. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、これはあなたは本職であるのですが、あることを調べる際に、事件の中心人物を先に調べてしまつたらどういうことになるか、あなたお考えなさらねばならぬと思うが、橋本檢事が傍証固めをやつている間に、あなたがひそかに長官官舍へ望月を呼んで調べてしまつておる。そうするとこれはどうなるか。われわれはどうも捜査方法が不可解だと思う。
  930. 香取博史

    香取證人 ああそれは、橋本檢事が傍証固めをやつておるときに、私が默つてつてしまつたというふうには、私としてはどうしたつて考えられないのでありますが……。
  931. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたが望月を長官官舍に呼んだのはいつですか。
  932. 香取博史

    香取證人 それは三月三日であります。
  933. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると橋本檢事は、三月八日にようやく檢事正から、君はやめてくれと言われたのは明らかだ。それがために檢察事務官が法務廳及び最高裁判所に上申書まで持つて來事件を起したのですから、それは事実でしよう。そうすると橋本檢事は全然寝耳に水の話であつたと思います。そうするとひそかにやつてつたことになるじやありませんか。
  934. 香取博史

    香取證人 橋本檢事は木船そのものの事件だけをやつておられて、そうしてあとで手記が完成したので、別個の段階のものとして長官に手記をお出しになつたのではないでしようか。私が三月三日に呼んだといいますのは、こうなのです。三月一日に長官から、君これの手記が完成したから見てくれ、君は経済部長として責任があるのだから見ておいてくれと言うて渡されたのです。それで三日、四日見まして、五日に返してくれと言われたのです。それで五日にお返し申し上げたのです。そうしたところが、この事件については実は橋本君が非常な苦境に立つておる。部内のいわゆる名前を書かれたという連中がわいわい騒いで、橋本君のところにおどかしに行つた。やれ発狂一歩手前だとかなんとか言つてわいわい言つておるのだ。そうして橋本君に継続して、今度は別個の手記にあるもの以外のものまでも調べてもらうということになつたら、どんなことになるかわからないから、御苦労だけれども、君ひとつあとを引継いでやつてくれ、動搖するといけないから、できるだけ早く着手してもらいたい、こういう話があつたのであります。それでさようですか、私はこの前二日二晩かかつて、詳細克明に手記を檢討しておりましたから、それじやあ捜査にさつそく着手いたしますと言つて、ただ場所が廳内で彼を呼ぶということになると目立つといけないから、またまたわいわいいろいろなことを言うて騒ぎ立てるから、ひとつ自分の官舍を使つたらよいだろう、そうすればどこからも非難が出ないし、目立たずにやつて行けるから、そうしてもらいたいという話があつて、長官官舍に呼んで調べた。なおこのときこういう話もあつたのです。それじやあすぐ調べます。できるだけ迅速にという話ですから、すぐ着手しますと言つて、橋本君にさつそく連絡して、一應了解を得てやりたいと思いますということも申し上げたのであります。それではそうしようというお話だつたのですが、当日はちようど出張しておられたのじやないかと思います。それで会えなかつたのです。それからもう私も調べにつつ込んで來る。また直接何するひまもなくなつて、九日になつて、私は初めて橋本檢事のところに協力を求むべく、あの部屋行つたのです。そうしたところが、おれはやらぬという話で、たいへん怒つて、激昂しておられたから、私としては実は意外だつた。あなたはあとを香取檢事に引継ぐということまで言われて、むしろ私は喜んでくれるだろうと思つて、実は協力をお願いしに來たのだということを申し上げたのです。ところがそんなに怒られるとは知らなかつたが、それだつたらひとつ一緒に協力してもらおうじやないか、あなたが主になつてもらいたい、私は從でけつこうだからということを言つたのですが、それでは考えておこうということを言われた。そのうち新聞記者が入つて來て、その人を相手に非常に激昂されていたが、大体話が納まつて、それでは考えておいてくださいと言つたら、いやおれは絶対にやらぬと言われるので、そう言わずにもう一ぺん考え直してもらいたい。そうして檢事正にも私からお願いしようということを申し上げたのであります。そういういきさつになつております。
  935. 猪俣浩三

    猪俣委員 いやあなたはそう言うたでしようが、橋本檢事の言い分は全然違います。意味がないのに、そうした激昂した態度をとるということはないはずです。それにはやはり原因があるのですから、それは神奈川の朝日新聞鈴木という記者も知つております。そういう激昂したことは事実だから、何がゆえに激昂したかという問題になると、橋本檢事自分がやるつもりでおつたが、ところがそういうことになつたので、十分に了解がついていればよかつたが、十分了解がついていないから、それで……。
  936. 香取博史

    香取證人 そうです。
  937. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 結論としてお聞きしたいのですが、結局横浜地檢に、さつきもあなたがお聞きになつておりましたように、粛正をしなければならぬという派と、消極的と申しますか、その粛正をしなければならぬという意見に対して、あまり賛成をしない派とあることを橋本檢事が答えたのでありますね。
  938. 香取博史

    香取證人 はい。
  939. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 粛正をしなければならぬという橋本檢事のような意見がなぜ生れるとお考えになりましたか。
  940. 香取博史

    香取證人 それはやはりいわゆる後藤氏の問題でございますね。これなんかも一つの原因になつていると思います。
  941. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 後藤氏の問題も一つの原因になつておりましたが、片づいていないというわけはないが……。
  942. 香取博史

    香取證人 今になれば、結局片づいていなかつたということになるかもしれませんが、とにかく後藤々々ということをよく言われ、それの眞相がどういうことであるかということは私はよくわかりませんが、あるいは酒でも持込んで飲んでおつたかどうかしりませんが、そういうことが非常に事務官の間にとりざたされておつたのでしよう。
  943. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうした古いものがぬぐい去られておらない、こういうとこをお認めになりますか。
  944. 香取博史

    香取證人 いや後藤問題が継続されておつたということは知りませんよ。
  945. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 けれども今の粛正派ととなえる人が現実にあるのですね。それはどこに原因があるとお考えになるかということを聞いておるのです。そんな粛正派ととなえる人が全然間違つたことを言つておるとお考えになりますか。
  946. 香取博史

    香取證人 とにもかくにも粛正しなければならぬものが今度調査してこの程度出て來たということですね。この程度の意味では確かにあつたから出たのだろうと思いますね。
  947. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 過去はそうだつたろうが今は……。
  948. 香取博史

    香取證人 また背後にどういうものが伏在しておるかということは、われわれよくわかりませんが、まず今まで私が調査した範囲では、私の力でできなかつたかもしれませんが、私の調査した範囲では、そう取上げて言うべきほどのものはなかつたのじやないかと思います。
  949. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 結局粛正派のとなえておるのは、事実を誤解してそういうふうに言つておる、こういうことになりますか。
  950. 香取博史

    香取證人 それは結局古い問題と結びついたということがあるのじやないでしようか。後藤問題とか、それから今の事件のやりとりで、橋本檢事の感情を大分害されたと思います。
  951. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それから今のあなたのお答えの中に、前の事件が、相当期間がたつておるのに、まだ処罰の決定が現われておらぬ。それからあなたがお取調べになつた五人の事務官、これは当然にあなたとしても処罰しなければならぬと思つておるのに、いまだこれが処罰されておらない。公々然と登廳しておる。そういうようなことをあなたから今聞いたのですが、そうしたことは、少くとも國民の権利義務を守らなければならない公の立場に立つておる檢察廳として、不明朗なものがあるということをお認めになりませんか。
  952. 香取博史

    香取證人 それは早くやらなければならないことはもちろんですが、今中央及び——今度市島檢事正は轉任の辞令が出ましたけれども、檢討中のようですが……。
  953. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 檢討が遅れておりますね。もう少してきぱきやらなければいけない。少くとも日本の人民の上に立つて号令すべき公の檢察廳ですから、その日にわかればその日に処断するのが当然だと思います。それを登廳まで公然と許して、いまだに処断されておらないということは、こうしたあなた方のお答え自身の中にも不明朗なものがあると思いますが、お認めになりませんか。
  954. 香取博史

    香取證人 それの延びるということがよろしくないことは私も認めます。
  955. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 事件の処理について。
  956. 香取博史

    香取證人 そうです。
  957. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうしたことに対して、粛正派の人たちが粛正しなければならぬと声を大にしておる点もあるのじやないですか。
  958. 香取博史

    香取證人 いや処理が長引くとかなんとかいうことを粛正しなければならぬことは当然だと思います。
  959. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そういうことでなしに、そうしたことから粛正派の人たちが声を大にして叫んでおるということがあるのじやないですか。それがために粛正派の言つておることも全然根拠がないものをとらえておるのではなしに……。
  960. 香取博史

    香取證人 そんなことはありません。根拠のないことをとらえて言うことはないと思うが、それにはそれ相当の根拠はお持ちであろうと思います。
  961. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そういうふうに考えるか。ただそれが邪推や何かでなくて……。
  962. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 よろしゆうございます。
  963. 梨木作次郎

    ○梨木委員 利益標準説というのと超過標準説の二つがあつたというお話でありましたが、この利益標準の場合は、利益は大体何倍くらいを基準にして求刑されるのですか。そういう基準というのがあつたろうと思いますので、大体のところをお聞きしたいのです。
  964. 香取博史

    香取證人 結局はやはり二、三倍というところに落ちついておつたのではないかと思います。
  965. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それは横浜地檢でございますか。
  966. 香取博史

    香取證人 私が神戸の方におつた当時です。
  967. 梨木作次郎

    ○梨木委員 横浜地檢取扱いは……。
  968. 香取博史

    香取證人 横浜地檢取扱いは、私参りましてからは利益標準で二、三倍というところにあつたと思います。私あまり刑事事件を当時はやりませんでした。
  969. 梨木作次郎

    ○梨木委員 私は最高が十倍で、平均は五、六倍と聞いておりますが……。
  970. 香取博史

    香取證人 もつと下つておりました。ですから横浜のはどうも軽過ぎるなという感を深くしたし、二、三度注意したことがありました。
  971. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたが神戸におられた時分は……。
  972. 香取博史

    香取證人 超過額で二、三倍やつておりました。
  973. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そうすると規定からも、横浜の利益標準で行くと、実際は安いわけですね。
  974. 香取博史

    香取證人 そうです。
  975. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その点について注意されたことはあるのですか。
  976. 香取博史

    香取證人 それはもう全面的に上げなければいかぬのじやないかということをはつきり言いましたし、現に昨年十二月二十四日に私がやるようになつてからは、相当上つております。これは表が示しております。
  977. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この明治商会の分は、利益額から言つても、総計十万八千円ぐらいになつておりますが……。
  978. 香取博史

    香取證人 七万円ということになつております。
  979. 梨木作次郎

    ○梨木委員 会社は七万円で、個人は三万円ですね。
  980. 香取博史

    香取證人 それは嫌疑の不十分な方でしよう。嫌疑不十分のものまで見込むのはどうかと思います。
  981. 梨木作次郎

    ○梨木委員 七万八千円と三万円、合計いたしまして十万円になりますね。かりに会社の方が七万八千円といたしましよう。そうすると五、六倍とすると三十五、六万円から四十万円になるのが適当な求刑ということにならなくちやなりませんが……。
  982. 香取博史

    香取證人 おつしやることはよくわかります。ただこういう勘定もあつたらしいのです。一昨年七月ごろの違反ですが、九月ごろになつてから急に公定價格の改訂がありまして、從前の公定の二倍以上ぐらいまでなつたらしいのです。それで行きますとほとんど超過がなくなるものがあり、超過してもごくわずかのものになるというのがあつたらしいのです。そういうのも勘定として見込まれたのではないかと思います。想像になつて、まずいのですが……。
  983. 梨木作次郎

    ○梨木委員 木船事件の派生事件はあなたが調べられたのでありますか。
  984. 香取博史

    香取證人 そうであります。
  985. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その派生事件を調べて明白になつたものは、三月二十八日付の檢事正の声明書の内容とほぼ同一のものでありますか。
  986. 香取博史

    香取證人 詳しくは忘れましたが……。
  987. 梨木作次郎

    ○梨木委員 五人のが出ておりましたでしような。
  988. 香取博史

    香取證人 あの程度のものであります。
  989. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これを見ますと、私たちの常識から言つて、明かに涜職になるように思うのですが、どうでしようか。
  990. 香取博史

    香取證人 たとえば日本タイヤーの横流しの問題を取上げてみます。そうすると、これは横流し無切符になるじやないかという問題はあります。ところがこれは、さつきも申し上げた無罪になつたというあれと同じことで、これは新車ということになつているのです。新車用でなければ切符なしで賣買讓渡してよいことになつております。ところがタイヤそのものが新品であつても、メーカーに賣る場合でなければ新車用とは言わないという商工当局の省令が出ましたので、違反にはならぬことになるのです。
  991. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その点は経済違反ですね。
  992. 香取博史

    香取證人 そうであります。
  993. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一つは、この場合日本タイヤーが横浜檢察廳に調べられている事件があり、その檢察事務官がこういうタイヤを受取るという点はどうです。
  994. 香取博史

    香取證人 それは職務に関してもらつていればもちろん收賄ということになりますが、これは職務に関していることとはちよつと言えないと思います。というのは、馬場というのは、昭和二十二年に望月檢察廳に入る前からの知合いなんです。
  995. 梨木作次郎

    ○梨木委員 望月以外の者ももらつているのですね。
  996. 香取博史

    香取證人 ところがその連中は事件を知らないというのです。望月に誘われてくつついて行つてしまつたというのです。
  997. 花村四郎

    花村委員長 ほかにありませんか。━━済みました。どうも御苦労さまでした。  横山唯志君ですか。
  998. 横山唯志

    横山證人 そうであります。
  999. 花村四郎

    花村委員長 年齢は。
  1000. 横山唯志

    横山證人 三十一歳。
  1001. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1002. 横山唯志

    横山證人 檢事です。
  1003. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1004. 横山唯志

    横山證人 東京都北多摩郡神代村大町四百七十三番地。
  1005. 花村四郎

    花村委員長 檢事はいつからいつまでおやりになつたのですか。
  1006. 横山唯志

    横山證人 拜命しましたのは昭和二十二年十二月十九日であります。現在勤務中です。
  1007. 花村四郎

    花村委員長 横浜へ参りましたのはいつですか。
  1008. 横山唯志

    横山證人 任官と同時であります。
  1009. 花村四郎

    花村委員長 あなたは竹田道二というのを御存じですか。
  1010. 横山唯志

    横山證人 本人に会つておりませんが、事件は受持ちました。
  1011. 花村四郎

    花村委員長 竹田道二の選挙違反について逮補状を出しましたか。
  1012. 横山唯志

    横山證人 出しました。
  1013. 花村四郎

    花村委員長 それはどういう事情だつたのですか。
  1014. 横山唯志

    横山證人 私が竹田派の選挙を受持ちましたのは一月の二十六日であります。このときに小西檢事から、この事件後藤つぎ関係がある。それで楢島檢事は非常に親しいからまずいから、関係のない君がやつてくれ、こう言われたから私が担任いたしました。
  1015. 花村四郎

    花村委員長 そうして担任して後藤つぎを呼び出したのですか。
  1016. 横山唯志

    横山證人 後藤つぎに逮補状を出しました。
  1017. 花村四郎

    花村委員長 出て参りましたか。
  1018. 横山唯志

    横山證人 当時市の捜査第二課の酒寄警部に後藤つぎに対する逮補状を請求するようにと言つて請求さして、逮補状を出さしたのですが、警察までは來たそうですが、檢事の方へは身柄を持つて來ませんでした。壽警察署です。
  1019. 花村四郎

    花村委員長 それは何か檢事が、病氣にかこつけて寝ている方がいいという忠告をして、寝ておつて來なかつたというようなことはお聞きになりませんか。
  1020. 横山唯志

    横山證人 うわさには聞いております。
  1021. 花村四郎

    花村委員長 うわさだけですか。それで調べなかつたのですか。
  1022. 横山唯志

    横山證人 私はうわさの出どころがはつきりよくわからぬのですが、それはずつとあとになつてからです。
  1023. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎは結局どうしましたか。逮補状を出して警察まで來たというのですが、その逮補状はどうしたのですか。宙に迷つたのですか。
  1024. 横山唯志

    横山證人 警察は逮補して、二月の十日に在宅ということで、調べの書類だけを送つて來ました。事件としては在宅にしてから一週間、二月十六日に事件を送つて來ました。
  1025. 花村四郎

    花村委員長 それじや警察へ逮補状によつて連れて來て、取調べて、そうして帰したのですか。
  1026. 横山唯志

    横山證人 そうです。
  1027. 花村四郎

    花村委員長 その後在宅調べをやつたのですね。
  1028. 横山唯志

    横山證人 警察ではそのとき一回だけじやないかと思います。
  1029. 花村四郎

    花村委員長 警察で調べたのは……。
  1030. 横山唯志

    横山證人 十日の午後五時ごろ逮補しているようです。これは村上警部補の言によると、午後五時ごろ逮補して、夜中の十一時ごろ釈放したと言つております。
  1031. 花村四郎

    花村委員長 それはどういう内容ですか。
  1032. 横山唯志

    横山證人 選挙違反の戸別訪問です。
  1033. 花村四郎

    花村委員長 それは調べただけで問題にならなかつたのですね。檢事の方へ記録がまわつて來たわけでしよう。そしてどう処分されましたか。
  1034. 横山唯志

    横山證人 当時私は身柄事件といいまして、勾留事件をやつておりました。在宅はその片手間というようになつて、弁解のようになりますが、事件ができないというので、後に吉積檢事が在宅告訴專門の檢事になりまして、そちらの方へ三月の下旬に引渡しました。
  1035. 花村四郎

    花村委員長 あとは知らぬわけですね。
  1036. 横山唯志

    横山證人 そうです。私が調べたのは竹田、後藤を除くあとの事件は一應調べております。身柄で來た事件は全部調べています。
  1037. 花村四郎

    花村委員長 この事件について、楢島檢事から一緒に飲みに行こうと言つて誘われたことがありますか。
  1038. 横山唯志

    横山證人 ありました。
  1039. 花村四郎

    花村委員長 それはいつで、どこへ行かれましたか。
  1040. 横山唯志

    横山證人 二月三日と記憶しております。仕事をして、大体午後の五時ごろだと思いますが、帰ろうといたしましたら、隣りの席の楢島君から、今晩ちよつと顔を貸してくれ、一ぱい飲もうじやないか、こういう話がありました。そこへ市の捜査課の酒寄警部が來まして、やはり同樣のことを言いましたので、私はどういう宴会だということを聞きました。すると選挙の慰労会だ。こういうことを彼は言つたのです。ところがまだ事件をもらつたばかりで、捜査もこれから始めようというときに、選挙の慰労会だということを言つたから、これは少しおかしいと自分は思いまして、そのまま自分は家へ帰りました。宴会には出ません。
  1041. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何かお尋ねがありますか。
  1042. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはこういうことを聞きませんか。林次席が亀井事務官だか荒木事務官だかをとらまえて、だれがあんな後藤つぎに対する逮補状なんか出したのかと言うて、いきまいたということを聞きませんか。
  1043. 横山唯志

    横山證人 聞きました。それは二月二十六日だと思いますが、このときに管下の司法主任会議がありまして、その会議が終つたから、ちようど私が新館の所でいろいろ話しておりましたが、その席に紺野檢事などもおつて、亀井事務官が後藤つぎのことでちよつと何か話をしましたから、どういうことかと思つて実は亀井事務官に聞いたわけであります。そうしますと、後藤つぎに逮捕状を出したことによつて、おれは林次席から叱られた。当時亀井事務官は相当醉つておりましたが、叱られたと言うので、じや君はどうして叱られるわけがあるのかということを聞いたら、そのとき林次席は、だれが逮補状を出したかと言うから、横山檢事だと言つたら、それきり別にあとは雄究しなかつたということであります。その後私は林次席からそのことに関しては何も聞いておりません。
  1044. 花村四郎

    花村委員長 それでは済みました。どうも御苦労さまでした。望月正身君ですか。
  1045. 望月正身

    望月證人 そうです。
  1046. 花村四郎

    花村委員長 年齢は。
  1047. 望月正身

    望月證人 三十二歳。
  1048. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1049. 望月正身

  1050. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1051. 望月正身

    望月證人 川崎市中瀬町二丁目百十九番地。
  1052. 花村四郎

    花村委員長 横浜檢察廳檢察事務官にいつなられましたか。
  1053. 望月正身

    望月證人 昭和二十三年一月三十一日付であります。
  1054. 花村四郎

    花村委員長 そして今日もなおかつやつておりますか。
  1055. 望月正身

    望月證人 やつております。
  1056. 花村四郎

    花村委員長 お尋ねしますが、花園纖維株式会社というのを御承知ですか。
  1057. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1058. 花村四郎

    花村委員長 事件の起きたということも知りませんか。違犯事件の起きたということを……。
  1059. 望月正身

    望月證人 事件のあつたことはうわさに聞いております。
  1060. 花村四郎

    花村委員長 そのうわさというのは廳内のうわさですか。世間で聞いたのですか。
  1061. 望月正身

    望月證人 自分富田班におりまして、もと木船事務官からかようなことを聞いたことがあります。
  1062. 花村四郎

    花村委員長 それでこの事件に関して、村山部長と富田檢事が、二人で花園纖維株式会社の違犯事件の記録を、まあ何とかどこかへやつてわからぬようにしようじやないかというような相談をしておるのを、あなた聞いておられたことはありませんか。
  1063. 望月正身

    望月證人 ありません。
  1064. 花村四郎

    花村委員長 私の言葉の使いようがあるいは悪いかしらぬが、そういう意味の話をしておつたことをお聞きになりはしませんか。
  1065. 望月正身

    望月證人 いつぞや花園纖維の問題について記録を探してくれというので、記録を一生懸命探したことはあります。私も木船も探したことがあります。
  1066. 花村四郎

    花村委員長 あなたがですね。探したのはいいのですが、今言うように村山と冨田が二人でそういう話をしていたことは聞きませんか。
  1067. 望月正身

    望月證人 話の内容については知りません。ただ記録のないときに、二人が何をか話したことはあります。
  1068. 花村四郎

    花村委員長 その何をかというのは……。
  1069. 望月正身

    望月證人 内容についてはわかりません。
  1070. 花村四郎

    花村委員長 ひそひそ二人で話しておつたということですか。
  1071. 望月正身

    望月證人 そうです。席が、富田班が廳内のここにありますと、村山部長はその左におりましたので、私たちが記録を探しているときに、二人で何か話したことはあります。内容についてはわかりません。
  1072. 花村四郎

    花村委員長 それでは日本タイヤーというのを御承知ですね。
  1073. 望月正身

    望月證人 知つております。
  1074. 花村四郎

    花村委員長 そこから自轉車のタイヤをあなた二度にわたつてもらつて來ましたか。
  1075. 望月正身

    望月證人 はい。
  1076. 花村四郎

    花村委員長 それは買つたのですか、もらつたのですか。
  1077. 望月正身

    望月證人 当初、日にちははつきり記憶いたしませんが、土曜日の午後、木船、亀井、濱田の三事務官が、何かの拍手に表へ出て、ぶらりと話しているうちに、工場見学に行こうと私が誘つたことがあります。それで工場に行きまして、いろいろの施設を見学させてもらつて、その後若干の酒をごちそうになりました。そのあとでみやげに自轉車のタイヤを一組ずつ四人が、私は断つたのでありまするが、いただきまして、その後は暮れに迫つて、木船君が越冬の家計費に困る。再三再四その前にも言われましたが、私はそれを断つておりましたのですが、困る姿を見て、私も何とかしたい、家庭的に工面してやりたいと思つたのですが、策がつきませんので、馬場氏のところに、本人の越冬資金のためであるという事題を告げて、借用の意味で私ども出してもらつたことがあります。
  1078. 花村四郎

    花村委員長 もらつたわけですね。
  1079. 望月正身

    望月證人 前回の分は頂戴して、初めは賣るつもりでありました。ところが木船事務官に公定價格を支拂いにやつたのでありまするが、馬場氏が遠慮してとらないので、それは困る、私としても返さなければならぬという氣持でおりまして、それは前回の分を支拂いに行つてから二回目に行つたのが、一週間か十日くらい後の期間だと思うのであります。どうしても困るというので、二回目にリヤカーのタイヤを二組出していただきまして、それを小田原の鈴木の家へ持つてつて、越冬資金に困るから都合してくれというて、紹介してやつたことはあります。ですから当初においては賣るつもりでありましたが、その後においては私はいずれにしろ返すつもりでおりました。
  1080. 花村四郎

    花村委員長 それでその後金は拂いませんね。
  1081. 望月正身

    望月證人 拂いました。
  1082. 花村四郎

    花村委員長 幾ら拂いましたか。
  1083. 望月正身

    望月證人 リヤカーのタイヤの代價一万五千円を木船が受領して、ちようど土曜日の日だと記憶しております。木船が鈴木の家に行くというので、越冬資金のあれだから適当にしてくれ、それで借りたい旨を告げて、紹介をたしか書いたように思うのであります。それを持たして、翌日一万五千円持つて私の家に朝十時ごろ尋ねて來ました。そこで私は木船に対して、初めこんなに多くては困るから、三千円くらいにしておいたらどうかと言つて、三千円渡したところが、木船が何かもじもじしているので、それほど言うならもう千円というので、四千円渡しました。その後妻からそれを発見されまして、事情を話したところが、私としても家に当時二万や三万の金はあつたのであります。その理由は、家庭的なことにわたりますので、香取檢事の調べの際に家の事情は話してありますが、一万円は……。
  1084. 花村四郎

    花村委員長 記憶がなければ、全部拂いましたか、一部拂いましたか。
  1085. 望月正身

    望月證人 拂いました。
  1086. 花村四郎

    花村委員長 全部。
  1087. 望月正身

    望月證人 はあ。
  1088. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、賣つたのは、二回で幾らに賣りました。
  1089. 望月正身

    望月證人 前回が八千円、その後は一万五千円であります。
  1090. 花村四郎

    花村委員長 それは、全部拂つたというのは、マル公で拂つたわけですね。
  1091. 望月正身

    望月證人 そうではありません。鈴木の家から借用した分を拂つたのであります。
  1092. 花村四郎

    花村委員長 大体どのくらい拂いました、日本タイヤーの方へ。
  1093. 望月正身

    望月證人 日本タイヤーへは品物を返品しました。
  1094. 花村四郎

    花村委員長 それはいつです。
  1095. 望月正身

    望月證人 暮れに迫つていますから、十二月の二十九日か三十日のように記憶しております。
  1096. 花村四郎

    花村委員長 それは昨年ですね。
  1097. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1098. 花村四郎

    花村委員長 二回に渡された品物を全部現物で返したと、こういうわけですか。
  1099. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1100. 花村四郎

    花村委員長 木船の言うには、金を持つてつてつたというのですが、初めに二千円持つて行つたところが、受取らなんで、それでタイヤをさらに持つて來て、鈴木作次郎のところに賣り拂つて、それから後に金を返したというようなことを言うておりますが……。
  1101. 望月正身

    望月證人 もう一度御説明願います。
  1102. 花村四郎

    花村委員長 第一回目に持つて來たタイヤの金を、その後二千円持つて返しに行つたところが、向うで受取らなかつた受取らなかつたので、さらにタイヤを二本もらつて來鈴木作次郎に賣つた。賣つた金のうちから、その後に返したようなことを言うていましたがね。
  1103. 望月正身

    望月證人 木船の証言は違つております。
  1104. 花村四郎

    花村委員長 あなたは紺野檢事に向つて、ぼくらのやつたことが悪いなら、全檢事に不正があるから、それを暴露する、というようなことを言われたそうですね。
  1105. 望月正身

    望月證人 御説明します。二月の末日だと思いますが、司法主任者会同がありまして、その後において檢事の会同がありました。正式なものかどうか知りませんが、あまり酒を皆で飲んだらしゆうございます。そのときに私は、その隣の部屋が労働の部屋でありまして、林事務官と二人で仕事をしておりましたが、たまたまドアーを開けて楢島檢事が私のところに参りまして、はつきりした記憶はありませんが、雜談をしておりました。しますと、そこへ紺野檢事横山檢事、田川檢事の三檢事が入つて参りまして、酒を飲んだ余勢かしれませんが、楢島檢事を非常にいじめておるような言動を田川檢事がしておりました。その内容は、少くとも世間から中傷せられるような者は檢事としての資格がない。すみやかに辞職すべきだということを強調しておりました。さらに加えて、本事件に関しては、徹底的にやれということを強調し、私はかつて佐賀地檢におつたときに檢事正とけんかをして、けんか両成敗で横浜に送られて來た。私は英國の何とかカンパニーの三つの商社の顧問弁護士であつて、その会社もすでに復活しており、現在給料をもらわなくても飯の食べられる身分にある。私が檢察廳を粛正する第一人者だというようなことを言うて豪語しておりました。私としては木船と同日付で採用せられて、昨年の六月から経済部に來て、木船とともに生活をしておる関係で、むしろ木船より私は廳内の友人関係は非常に多いという点から、木船の知つておる範囲という問題については、私以上に知るところがないというように考えておりましたので、私はその前々から紺野檢事に対しても、渉外部の部長小幡檢事に対しても、木船が勾留せられてから直後に、木船の関連事項で、立件は自分から申し上げなければならぬことがある、それは内容は日本タイヤーのことであります。それ以外のことについては、私は調べを受ける筋合いはない。また他の事務官並びに檢事が中傷せられておるということであるが、この件についても私は取上げらるべきような筋合いのものはないと信じておりましたので、獄中で木船が書いた木船手記なるものが、捜査官として眞に取上げなければならぬものか、取上げなくても済むものか、まず私を調べてくれ。私の関連した一、二事実については申し上げるが、他のことについて、おそらく私は中傷を受ける覚えはない。しかも木船と席を同じうし、木船とともに暮して來た人間が……。
  1106. 花村四郎

    花村委員長 簡單にしてください。
  1107. 望月正身

    望月證人 田川檢事に対して私は賣り言葉に買い言葉で、けんかであるから、あくまでも徹底的な捜査をやれ、実際調べられるべき内容のことまでやるのなら、けんか両成敗だ、われわれは檢事の、——檢事と申しましても対象しておる檢事のことでありますが、皆の情報をいろいろ聞いて、少くとも中傷せられることがあるならば、少しの事実でもあれば、調査をしてお互いにこの際檢察廳をきれいに洗おうじやないか、という話はいたしました。
  1108. 花村四郎

    花村委員長 そうすると紺野檢事に対して、ぼくのやつたことが悪いならば、全檢事に不正があるから、それを暴露するというようなことは言わぬと、こういうのですか。
  1109. 望月正身

    望月證人 それは言葉の表現の仕方だろうと思います。私は少くともそういうように申しました。紺野檢事だけではありません。紺野、田川、横山、楢島檢事もおりました。
  1110. 花村四郎

    花村委員長 檢事に何か不正のあることをあなたは御承知ですか。
  1111. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1112. 花村四郎

    花村委員長 知らない。
  1113. 望月正身

    望月證人 はあ、ただ……。
  1114. 花村四郎

    花村委員長 知らなければようございます。  前に申し上げたように、もし証人にお尋ねする過程において、自己の刑事責任を問われるような点に触れる場合には、もちろん証人証言を拒絶し、黙祕することができるのでありますから、御注意いたしておきます。  それで、木船のときに牽連して、あなたは取調べられましたね。香取檢事吉積檢事に……。
  1115. 望月正身

    望月證人 はい。
  1116. 花村四郎

    花村委員長 その取調べられた内容は何ですか。簡單に言つてください。どういうことと、どういうことと。日本タイヤーの問題だけですか。
  1117. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1118. 花村四郎

    花村委員長 ほかにはありませんか。
  1119. 望月正身

    望月證人 ほかに二十項目くらいの捜査を受けました。しかしその捜査の項目は全部眞実ではありません。
  1120. 花村四郎

    花村委員長 たとえばどういうことです。
  1121. 望月正身

    望月證人 たとえば私は鶴見に——夫婦生活をするのに家がなくて困るので、友人に頼んで鶴見に家を探したことがあります。その際あそこに私が家を建てた。こういうので、その家を建てた金はどこから出た、こういうようなお調ベを受けましたが、そんなことは毛頭無根の問題であつて、そうしたような事実は何にもない。
  1122. 花村四郎

    花村委員長 それで調べの結果はどうなりました。
  1123. 望月正身

    望月證人 調べの結果については、まだ別にわかりません。
  1124. 花村四郎

    花村委員長 それで調べは済みましたか。
  1125. 望月正身

    望月證人 一應始末書を書いて提出しておきました。
  1126. 花村四郎

    花村委員長 すると、その結果どういうことですか。この日本タイヤーの事件だけで、それ以外の問題も取上げたが、結局問題になるべきものじやない、こうおつしやるのですか。
  1127. 望月正身

    望月證人 私は信じております。
  1128. 花村四郎

    花村委員長 それでこの日本タイヤーが経済違反を起して、横浜地檢で調べておるということは知つてつたわけですね。
  1129. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1130. 花村四郎

    花村委員長 知らなかつたのですか。
  1131. 望月正身

    望月證人 はあ、二月に木船拘留後、新件として受けたのは、私は以前には知りませんでしたが、二階に上つて來たときに、隣におつた荒木檢察官が馬場氏を経済事犯で調べているのに会いまして、初めてそのことは知りましたが、他の事実については知りません。
  1132. 花村四郎

    花村委員長 それで日本タイヤーの刑事事件が起きてから、あなたはその後にタイヤをもらいに行つたのではないですか。
  1133. 望月正身

    望月證人 そのことは全然知りません。
  1134. 花村四郎

    花村委員長 どういう関係があるのです。日本タイヤーの馬場さんと……。
  1135. 望月正身

    望月證人 馬場氏の義弟に当る岡田中尉なるものが朝鮮で戰死しまして、私が昭和十九年に編成した部隊に來た高木——名前はつきり浮んで來ないのでありますが、高木という前科を犯した兵隊で、家庭が非常に不遇で両親がない者が参りまして……。
  1136. 花村四郎

    花村委員長 それでは馬場の弟の関係で知合いになつたというのですか。
  1137. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1138. 花村四郎

    花村委員長 それはいつごろからですか。
  1139. 望月正身

    望月證人 昭和二十二年の十一月であります。十一月か十二月……。
  1140. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質疑がありますか。
  1141. 猪俣浩三

    猪俣委員 去年の十月ごろ、明治商会岩山鈴木茂雄に金を出したということで、富田鈴木を呼んで事情を聞いたことがありますか。
  1142. 望月正身

    望月證人 あります。
  1143. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときあなたはそばにおりましたか。
  1144. 望月正身

    望月證人 すぐそばにおりました。
  1145. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは富田が職権をもつて鈴木を呼び出したのであるか、あるいはまた任意に個人的に呼び出したのであるか。
  1146. 望月正身

    望月證人 職権だと思います。私が呼出しを命ぜられました。
  1147. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときに調書をつくりましたか。
  1148. 望月正身

    望月證人 調書はつつてないと思います。
  1149. 猪俣浩三

    猪俣委員 どんな話をしたのです。富田は。
  1150. 望月正身

    望月證人 話の内容はよくわかりません。
  1151. 猪俣浩三

    猪俣委員 岩山鈴木の間の貸借であるとかないとかいう話はなかつたのですか。
  1152. 望月正身

    望月證人 聞取れませんでした。
  1153. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは後藤つぎというのを知つておりますか。
  1154. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1155. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎの家へ行つたことはありませんか。
  1156. 望月正身

    望月證人 ありません。
  1157. 大西正男

    ○大西(正)委員 あなたは事務官になられます以前は、どういう職業をやつておられたのですか。
  1158. 望月正身

    望月證人 事務官をする前は甲府におりまして、支那から貸員して來ましてから、興信所の方をぶらぶら手傳いながら、二十二年の暮れまで甲府に住まつておりました。
  1159. 大西正男

    ○大西(正)委員 先ほどの紛失しまして例の記録を探しておつたときに、その部屋で探しておつたのですか。
  1160. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1161. 大西正男

    ○大西(正)委員 その部屋でございますか。
  1162. 望月正身

    望月證人 何か事件が起きて困る困るといつて、私もずいぶん戸だなをあけて探しました。
  1163. 大西正男

    ○大西(正)委員 そのときに富田檢事と村山事務官とが何か話をしておつたというのですね。ひそひそ話、今そういうお答えだつたですね。
  1164. 望月正身

    望月證人 はあ。
  1165. 大西正男

    ○大西(正)委員 そのひそひそ話というのは、あなたの特別の注意を引くような話だつたのですか。
  1166. 望月正身

    望月證人 内容はわかりません。
  1167. 大西正男

    ○大西(正)委員 どうもそういう記録を探しておつたようなときに……。
  1168. 望月正身

    望月證人 いや、そんな耳打ち的な話でなくて、たしか部長の札の上に富用檢事が腰かけて話しておりました。ですからあまり祕密的な話じやないのじやないかと想像いたします。
  1169. 大西正男

    ○大西(正)委員 いや、私の不審な点は、別にあなたを疑うわけでも何でもありませんが、そういうふうに記録を探しておつたときに、特に富田檢事と……。
  1170. 望月正身

    望月證人 当日記録は探したのでありますが、なかつたのであります。そのない……。
  1171. 大西正男

    ○大西(正)委員 なかつたから、特に富田檢事と村山事務官とかそういう何か話をしておるのが、今日あなたの記憶に残つておるというのは、何かあなたの注意を引くようなことでなければ——それは同じ部屋におるのだから、しよつちゆう話をしておるのでしようから、そういう際のことが特にあなたの念頭に残つておるということが、何かあなたの注意を引くのじやないかと思われたのであります。
  1172. 望月正身

    望月證人 それは今日事件が勃発して、この問題が新聞紙上に取上げられるようになつてから、ああそうかなと思つてつたわけであります。
  1173. 大西正男

    ○大西(正)委員 ですから、そのときに特にそういう話をしておつたということが、今日あなたの記憶に残つておるということが、——しよつちゆう話をしておつたわけでしよう。それがどういうわけなのか、私にはわからないのです。
  1174. 望月正身

    望月證人 別にどうということもないと思います。
  1175. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでは別に注意を引くようなことではなかつた。ただそのときに話をしておつたということが記憶に残つているわけですか。
  1176. 望月正身

    望月證人 記憶に残つております。
  1177. 大西正男

    ○大西(正)委員 それから先ほど紺野檢事ですか、あなたは紺野檢事のもとに配属されておるのですか。
  1178. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1179. 大西正男

    ○大西(正)委員 それで先ほど委員長のお尋ねに、紺野檢事に対して、何か事務官の方をやるならば、檢事の方の非行も全部あばくぞというようなお話があつたというのですね。
  1180. 望月正身

    望月證人 これは賣り言葉に買い言葉でありまして……。
  1181. 大西正男

    ○大西(正)委員 ですからその今のお答えの中に、けんか両成敗というふうなお話があつたのですが、これはけんかなのですか。
  1182. 望月正身

    望月證人 私は当初からけんかだと思つておりました。
  1183. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうすると、けんかというのはどういうわけなのですか。
  1184. 望月正身

    望月證人 私はこういう考えでおりました。今申しました通り、私としては……。
  1185. 大西正男

    ○大西(正)委員 ちよつと待つてください。けんかというのはだれとだれとのけんかですか。
  1186. 花村四郎

    花村委員長 簡單に言つてください。問いに対して答を……。
  1187. 望月正身

    望月證人 私は結局橋本檢事、それから田川檢事、紺野檢事はどうか知りませんが、横山檢事、岡村檢事、それから上申書を提起した事務官、私はこれを相手にしてけんかするつもりでおります。
  1188. 大西正男

    ○大西(正)委員 あなたとですか。
  1189. 望月正身

    望月證人 はあ。
  1190. 大西正男

    ○大西(正)委員 その場でどういうわけでけんかになつたのですか。その場の原因は……。
  1191. 望月正身

    望月證人 片一方は酒を飲んで、私はまじめな話をしておるのでありますが、事務官に対して非常に甘く見ているような感じを私は抱いておりました。
  1192. 大西正男

    ○大西(正)委員 といいますのは、つまり……。
  1193. 望月正身

    望月證人 檢事が怒つていたけだかな態度、そうしたものが非常に不満意でありました。
  1194. 大西正男

    ○大西(正)委員 それはあなたに向つて、何かほかの檢事が言つたのですか。
  1195. 望月正身

    望月證人 田川檢事が私に向つて言つたことがあります。
  1196. 大西正男

    ○大西(正)委員 どういうことですか。
  1197. 望月正身

    望月證人 先ほど申しましたような自分の経歴を話しまして、さもこの際、おれが粛正しなければする者がいないのだというような態度が非常に露骨でありました。
  1198. 大西正男

    ○大西(正)委員 それはわかりました。それは今の楢島檢事と爭つてつたわけではないんですね。
  1199. 望月正身

    望月證人 楢島檢事にそうしたことを言つてから、私に言つて來たのであります。
  1200. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでけんかと言いますか、今の田川檢事は、あなたの氣持はどうだつたか知りませんが、つまり横浜地檢の中の不明朗なもの、あるいはまた非為を摘発して、これを粛正しようというつもりのもとに言つてつたように見受けられるのです。ところが今のお話では、何か檢事と、あるいはまたあなたとの間の個人的なけんか、あるいはまた檢事團と檢察事務官團との対立とか、あるいはけんかとかいつたふうな印象も受けるのですが、それはどうですか。
  1201. 望月正身

    望月證人 事務官と檢事との対立というよりも、むしろ私は、入る以前のことはよく知りませんが、経済部と刑事部との爭いのようにとつております。
  1202. 大西正男

    ○大西(正)委員 その爭いはどういうのですか。
  1203. 望月正身

    望月證人 要するに派閥的な鬪爭だと思います。
  1204. 大西正男

    ○大西(正)委員 その派閥というのは、あなたの知つている限りでは、具体的に言えばどういうことですか。
  1205. 望月正身

    望月證人 具体的に私は深いことは知りませんので、はつきりは申し上げられませんが、経済部には宴会が多いとか、何かにつけて刑事部が経済部に難癖をつけていたように、仕事をしている間にそうした、今日に言い表わせませんが、そういう感じを強く持たされておりました。それで経済部の檢事が、事情のいかんを私は存じませんが、東京に出て行く。残された事務官が今度刑事部の者にいじめられるといつた、私はひがんだ根性もその当時持つておりました。この経済部の檢事というのが、あるいはこれはほんとうは私の想像でありますが、後藤つぎのことでありますが、その流れもあるのじやないかと思います。
  1206. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうすると、あなたの目から見ると、後藤つぎとじつこんにしておる人たち、そういう一群と、そうでない者との間に、何か從來から対立があつたというのですか。
  1207. 望月正身

    望月證人 それが、この粛正派に属しておる檢事、事務官というものは、ことに本間事務官のごときは、警察の警部補から役所に登用せられて來て、話に聞けば、おれは横須賀で檢事になれるのだということを言いふらしておるようでありまして、檢事になるということの前提として來たらしいのでありますが、警部補ではとても檢事になれないので、現在もそうしておるのでありますが、境遇的に不遇だ、進級制度に矛盾があるのだというようなことを口にし、あるいは檢事にしても、橋本檢事は相当古いのでありますが、いまだ要職につけないというような、待遇的な面からの、極端に言つたらひがみがあつたのじやないかと思うのであります。そうした感情があつて、経済部の檢事あるいは上司に対しての反感が多分にあつたのじやないかと思つております。
  1208. 大西正男

    ○大西(正)委員 あなたはこの横浜に來られたのが、檢察廳へ入られた初めですね。
  1209. 望月正身

    望月證人 初めであります。
  1210. 花村四郎

    花村委員長 ちよつとお尋ねしますが、富田檢事の事務官はだれですか。
  1211. 望月正身

    望月證人 いつごろでございますか。
  1212. 花村四郎

    花村委員長 富田檢事の本件に関係しておる当時。今やめているのでしよう、やめる前にはだれがついておりましたか。
  1213. 望月正身

    望月證人 私のおりましたときには宇田川事務官、山森、望月、木船。
  1214. 花村四郎

    花村委員長 そういう順序行つたのですね。
  1215. 望月正身

    望月證人 はあ。
  1216. 田万廣文

    ○田万委員 事務官になられる前に、法律というものに対して、勉強なんかは相当なさつてつたですか。
  1217. 望月正身

    望月證人 興信所を手傳つておるときに、多少勉強をいたしました。
  1218. 田万廣文

    ○田万委員 採用試驗ということは、これはどういうことをやられるのですか。
  1219. 望月正身

    望月證人 私の採用試驗は、私は手づるも何もなしに、試驗に直接行つて採用されたのでありますが、十八名か、一緒に同時採用されました。本間事務官、木船も同じでありますが、総務部長が多少法律じみた口頭試問をされました。あとは身上調査があつたようであります。
  1220. 田万廣文

    ○田万委員 いわゆる常識的な試驗でやられたわけですね。
  1221. 望月正身

    望月證人 そうであります。
  1222. 田万廣文

    ○田万委員 それから事件自身についてちよつとお尋ねしたいのですが、この木船さんが年末で金に困るというので、越冬資金獲得のために行かれたということを言うておられた。そうすると、越冬資金というならば、直接金を貸してくれとか何とかいうお話をなさつたらいいのに、タイヤというのは手間のかかる話ではないですか。
  1223. 望月正身

    望月證人 そこで私は非常に木船の人格を今まで信じておつたのが、昨年一月ごろから木船に対して感情が悪化したのですが、木船はそうしたことを何か野心的に考えておつたのでないかと思うのであります。
  1224. 田万廣文

    ○田万委員 越冬資金だから金を貸していただければそれでいい。むりに手間がいるタイヤを、もらうか買うか知らぬが、またよそへ持つてつてつて金にするということであれば、最初からこうこういう事情で苦しいのだから金を貸してくれいと言うべきものを、タイヤということはどうもわからぬ。
  1225. 望月正身

    望月證人 質問はわかりました。木船君は、職権を利用して話をすれば、その品物が自由になるように甘く考えていたのだろうと思います。
  1226. 田万廣文

    ○田万委員 その当時においては、日本タイヤーは被疑者としての立場にあつたわけではないのですか。
  1227. 望月正身

    望月證人 私はそういうことは全然知りません。そのことについて香取檢事からお調べを受けたのですが、自分から、その記録はどこにあつたのかと言うて、実は私はお尋ねしたのです。
  1228. 田万廣文

    ○田万委員 また現品で返したというわけですね。
  1229. 望月正身

    望月證人 そうです。
  1230. 田万廣文

    ○田万委員 その現品はどこで調達いたしましたか。
  1231. 望月正身

    望月證人 鈴作——鈴木自轉車店から返してもらいました。
  1232. 田万廣文

    ○田万委員 それでは越冬資金にも何にもならなかつたわけですね。
  1233. 望月正身

    望月證人 結局自分が負担した一万何千円のうち、六千円は木船にやつたわけです。
  1234. 田万廣文

    ○田万委員 最後にあなた自身について一点お尋ねしますが、現在の心境は、相当これはにぎやかな事件になつているのであります、自分としては何ら振り返つてやましいところはないという決意を披瀝せられたのでありまするが、それに対して一般の人は、納得の行く氣持ちを持つておらないと私は考えます。
  1235. 望月正身

    望月證人 私は道義的に責任を感じております。十二分に感じております。
  1236. 猪俣浩三

    猪俣委員 去年の年末か、馬場から削り節二本入りのものを三箱もらつたことがありますか。
  1237. 望月正身

    望月證人 もらいました。
  1238. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは木船と望月といつて、指名されて持つて來たそうだね。
  1239. 望月正身

    望月證人 そうじやありません。縣廳へ來たついでに、余つたから置いて行くというので、いらぬと言つてつたのでありますが、とにかく余つたから置いて行くというので。
  1240. 猪俣浩三

    猪俣委員 だれに渡したのですか。
  1241. 望月正身

    望月證人 私がもらいました。そして木船にあげました。
  1242. 猪俣浩三

    猪俣委員 木船に何でやつたのですか。
  1243. 望月正身

    望月證人 隣におりましたからやりました。
  1244. 猪俣浩三

    猪俣委員 あとの一箱はどこにやりましたか。
  1245. 望月正身

    望月證人 年始に富田檢事のところへ行こうというので、持つて行く物もないからこれを持つて行こうかといつて、持つて行つたことがあります。
  1246. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときもこの事件のことを知らなかつたのか。
  1247. 望月正身

    望月證人 私は知りません。
  1248. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからウイスキーはどうしましたか。
  1249. 望月正身

    望月證人 ウイスキーは十二月の幾日か記憶がありませんが、皆で飲みました。
  1250. 猪俣浩三

    猪俣委員 富田、宇田川、望月、木船で飲んだんだね。
  1251. 望月正身

    望月證人 そうです。そのほかにもいたように記憶します。
  1252. 猪俣浩三

    猪俣委員 富田檢事も飲んだんだね。
  1253. 望月正身

    望月證人 飲みました。
  1254. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときにも事件は聞いていないか。
  1255. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1256. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときは富田が調べた檢事でしよう。
  1257. 望月正身

    望月證人 いや、それは調べてないと思います。
  1258. 猪俣浩三

    猪俣委員 この明治商会事件は……。
  1259. 望月正身

    望月證人 明治商会事件とそれとは別であります。
  1260. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本タイヤーの事件富田が主任ではなかつたか。
  1261. 望月正身

    望月證人 主任ではないと思います。
  1262. 猪俣浩三

    猪俣委員 木船はどうだ。
  1263. 望月正身

    望月證人 木船は何も知らぬと思います。
  1264. 花村四郎

    花村委員長 これは二十二年に、もらう前から事件が起きているのじやないのですか。
  1265. 望月正身

    望月證人 何の事件でありますか。
  1266. 花村四郎

    花村委員長 日本タイヤーと明治商会のです。
  1267. 望月正身

    望月證人 香取檢事から調べを受けまして、二十三年の四月ごろ配炭公團というものの事件があるということを知りまして、いろいろ事務官にも聞いたのでありまするが、丸物班でその事件があつたということを聞きましたが、その記録がどこにあつたか、私は知りません。
  1268. 花村四郎

    花村委員長 そうだが、日本タイヤーの事件が起きていることは前に知つてつたのでしよう。
  1269. 望月正身

    望月證人 いや、知らぬです。私も調べられているときにそれを聞かれて、非常におかしく感じたのであります。
  1270. 大西正男

    ○大西(正)委員 同じようなことを繰返すようでありますが、先ほど記録を探しておつたときに、富田檢事と村山事務官ですか、これが話をしておつたということが、今あなたの記憶に残つているわけですね。
  1271. 望月正身

    望月證人 残つております。
  1272. 大西正男

    ○大西(正)委員 その記憶は、きようここで聞かれたので思い出したのですか、それても……。
  1273. 望月正身

    望月證人 花園事件新聞紙上をにぎわしたときに、ちよつとそんなこともあつたなというので、思い出したのです。
  1274. 大西正男

    ○大西(正)委員 その話をしておつたという、そういう記憶がよみがえつたのはいつですか。新聞に出たときなんですか。
  1275. 望月正身

    望月證人 非常に重視されてお問いでありますが、私の考えとしては、軽い氣持でそういうようなことを呼び起しておりました。
  1276. 大西正男

    ○大西(正)委員 これはりくつになりますが、大体人の記憶というものは、何かそれに——たとえばあなたの言われるのには、花園事件新聞に出たのでその場面を思い出した。そうするとその花園事件に関連をした何かを思い出すのじやないかと思うのですが。
  1277. 望月正身

    望月證人 その記録がないと騒いだときには、相当あつちこつちひつくり返して騒ぎましたので、特に記憶が強いわけであります。
  1278. 大西正男

    ○大西(正)委員 ですからその記録を探したときに、今の富田檢事とそれから村山事務官が話をしておつた。これは同じ班にいるのだからしよつちゆう話をしているのでしよう。
  1279. 望月正身

    望月證人 しよつちゆう話しております。
  1280. 大西正男

    ○大西(正)委員 それが今特に記録を探しておるときに何か話をしておつたということが、関連をしてあなたの記憶に残つておるというのは、何かあつたのではないか。
  1281. 望月正身

    望月證人 私が特に証言立てて言うべき筋合でもないと思うのです。ただお問いただしでありますから、その時にも話したことがあるという範囲であります。
  1282. 猪俣浩三

    猪俣委員 委員長、今の点ですが、これは自分に利害関係があるにしても、証言をみずから進んでした以上は、偽証の責任はありますね。
  1283. 花村四郎

    花村委員長 あります。
  1284. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはそのタイヤをもらつたりなんかするときに、日本タイヤーの事件は木船も知らなかつたし、自分も知らなかつた。それは間違いないね。
  1285. 望月正身

    望月證人 知りません。
  1286. 花村四郎

    花村委員長 それでは済みました。御苦労でしたお帰りください。  それでは次、荒木和男君ですか。
  1287. 荒木和雄

    荒木證人 はい、そうです。
  1288. 花村四郎

    花村委員長 年齢は。
  1289. 荒木和雄

    荒木證人 二十三歳です。
  1290. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1291. 荒木和雄

    荒木證人 檢察事務官です。
  1292. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1293. 荒木和雄

    荒木證人 神奈川縣高座郡海老名町中新田です。
  1294. 花村四郎

    花村委員長 檢察事務官にはいつなつて、そうして横浜檢察廳へ勤めるようになつたのはいつですか。
  1295. 荒木和雄

    荒木證人 昭和二十三年一月三十一日に、一日付の辞令をいただきました。勤務はたしか二月一日ごろだと記憶しております。
  1296. 花村四郎

    花村委員長 そこであなたは後藤つぎという者を知つておりますか。
  1297. 荒木和雄

    荒木證人 知つております。
  1298. 花村四郎

    花村委員長 その後藤つぎに対する逮捕状に関して関係していますか。
  1299. 荒木和雄

    荒木證人 はい、横山檢事の私は事務官でありますので、よく存じております。
  1300. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎの家へ行つたことがありますか。
  1301. 荒木和雄

    荒木證人 ありません。顏を見たこともありません。
  1302. 花村四郎

    花村委員長 それでこの横山檢事が逮捕状を後藤つぎに対して出したわけですね。それが執行せられましたか、どうですか。
  1303. 荒木和雄

    荒木證人 一應逮捕状は確かに出ました。そして執行して在宅処分にした、こう申しておりました。それは報告ですが。
  1304. 花村四郎

    花村委員長 それでは逮捕状というのは、内容はどうなんですか。どこそこへ連れて來いというのでしよう。
  1305. 荒木和雄

    荒木證人 それは逮捕状請求のときには、從來になく捜査課の係官が消極的でありまして、これは横山檢事にわざわざ相談に参りました。横山檢事は逮捕状を出せ、こう指示を與えまして、私の見た目では、おそらくしぶしぶ出したのではないかと思いますのですが、それから私は横山檢事と緊張した面持で待つておりました。ところが二、三日たつて、松永警部補と酒寄警部が参りまして、横山檢事ちようど出席されているところに、私が部屋へ入つて参りました。あとで横山檢事に聞きますと、実は年とつておるし、犯罪事実も一應認めておる、そして病氣らしい。こういうことでありました。
  1306. 花村四郎

    花村委員長 それでそのときに、病氣であるというので、出て行かなかつたのじやないのですか。
  1307. 荒木和雄

    荒木證人 それは私にはわかりません。しかし後に記録が捜査課から参りまして、その記録を見たとき感づいたのですが、二月九日に逮捕状は請求しておりますが、翌十日に裁判官からその逮捕状が発布されております。そうして二月十日の午後五時に捜査二課で逮捕しております。捜査二課は、これは壽警察署に同居しておりますが、捜査二課が逮捕して、同日付で菅原弁護士が身柄引受書を出しております。ですからおそらくこれは、実質的に午後五時に任意出頭で呼出して、同夜中に在宅処分にしているわけですから、逮捕状は実質的には使われなかつたと私はこう見ました。
  1308. 花村四郎

    花村委員長 何かお尋ねがありますか。
  1309. 荒木和雄

    荒木證人 ぜひ申し上げたいことがあるのですが、酒寄警部が年をとつている、犯罪事実を認めている。もう一つは、病氣らしいというのでありますけれども、その病氣らしいから釈放したという、その病氣というのは、おそらくうそではないかと思います。それは翌日か一日置いた日に、ちようど伊勢佐木警察署に、興信銀行の強盗事件の被疑者が勾留されておりましたので、そこへ松永警部補と酒寄警部がはつきり見えられて、病氣であるはずの後藤のばあさんが現われまして、家族を連れて面会差入れの便宜方を依頼に來ております。そのときおりました警察官から私は直接聞きましたが、そのときの一名が、何だばあさん、ブキに——ブキというのは壽警察署のことでありますが、ブキにぱくられているのではないかとからかつた。ばあさんいわく、とんでもない、ちやんとある檢事さんが來て、お前は病氣になつているというけれども、私は何でもなかつた。こう言つたそうでありまして、あきれたということを本間事務官にその署員が話したのを聞きまして、一應念のためにその方に会いに参りまして、確かめましたところ、間違いない私以外にも聞いているのだから、これはいつでも証言すると申しておりました。
  1310. 花村四郎

    花村委員長 松永警部補と酒寄警部のいる前で後藤が、言つたのですね。
  1311. 荒木和雄

    荒木證人 いいえ違います。酒寄警部も、松永警部補もおられませんでした。
  1312. 花村四郎

    花村委員長 それではだけからあなたはお聞きになつたか。
  1313. 荒木和雄

    荒木證人 酒寄警部がそこにおられますから、ちよつと席をはずしていただきたいのですが——私どもに協力してくれる警察官ですから、できれば名前を出したくないと思いましたが、申し上げます。これは伊勢佐木警察署の刑事部長——刑事部長というのは部屋長で、巡査部長の佐藤という方です。これは私何度も念を押しておりますから、間違いございません。
  1314. 花村四郎

    花村委員長 佐藤部長があなたにその旨を話したというわけですね。
  1315. 荒木和雄

    荒木證人 そうです。佐藤部長も私だけではない。ほかに聞いているものがあつたからと言つておりました。ですからこの病氣であるという点は、うそというとおかしいですが、おそらく……。
  1316. 花村四郎

    花村委員長 わかりました。それでは済みました。お帰りくだすつてけつこうです。御苦労さまでした。  酒寄久一君ですか。
  1317. 酒寄久市

    酒寄證人 はあ。
  1318. 花村四郎

    花村委員長 立つてつても、すわつてつても、どちらでもけつこうです。年齢は。
  1319. 酒寄久市

    酒寄證人 四十二歳。
  1320. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1321. 酒寄久市

    酒寄證人 警察官。
  1322. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1323. 酒寄久市

    酒寄證人 横浜市南区東蒔田町五十三番地です。
  1324. 花村四郎

    花村委員長 どこの警察にいつから勤めて、どういう係をやつておられますか。
  1325. 酒寄久市

    酒寄證人 他にも十二、三箇所ございますが、全部申し上げましようか。
  1326. 花村四郎

    花村委員長 最後のでけつこうです。
  1327. 酒寄久市

    酒寄證人 現在は横浜警察局捜査第二課勤務しております。
  1328. 花村四郎

    花村委員長 あなたは横浜檢察廳横山檢事から、後藤つぎに対する選挙違反の被疑事件について逮捕状が出た。その逮捕状を執行せられましたね。
  1329. 酒寄久市

    酒寄證人 部下の村上警部補に執行させました。
  1330. 花村四郎

    花村委員長 それではその執行の樣子を言うてください。
  1331. 酒寄久市

    酒寄證人 逮捕状を執行したのは——私ちようど執行当時ほかの事務をとつておりましたから、正確な時間はわかりませんが、大体午後五時前後だと思います。
  1332. 花村四郎

    花村委員長 その逮捕状をだれが持つて後藤つぎうちへ行かれましたか。
  1333. 酒寄久市

    酒寄證人 村上警部補が参りました。
  1334. 花村四郎

    花村委員長 村上警部補が……。
  1335. 酒寄久市

    酒寄證人 はあ。
  1336. 花村四郎

    花村委員長 そうしてどうしました。
  1337. 酒寄久市

    酒寄證人 村上警部補が逮捕状を持ちまして、押收搜索に参りました。
  1338. 花村四郎

    花村委員長 押收搜索ではなくて、逮捕状を持つて行つたのではないか。
  1339. 酒寄久市

    酒寄證人 逮捕状は本人を連れて來まして、搜査課で執行いたしました。
  1340. 花村四郎

    花村委員長 それからその逮捕状を持つて行つたのは村上警部補ですか。
  1341. 酒寄久市

    酒寄證人 そうです。
  1342. 花村四郎

    花村委員長 それはあなたが命じて、村上警部補に逮捕状の執行をなさしめたのですね。
  1343. 酒寄久市

    酒寄證人 そうです。
  1344. 花村四郎

    花村委員長 それでどうしました。後藤つぎのところへ行つて引つぱつて來ましたか。
  1345. 酒寄久市

    酒寄證人 連れて参りました。
  1346. 花村四郎

    花村委員長 連れて來たのは何時です。
  1347. 酒寄久市

    酒寄證人 四時少し過ぎだと思います。
  1348. 花村四郎

    花村委員長 その逮捕状の内容には何と書いてありましたか。
  1349. 酒寄久市

    酒寄證人 逮捕状の内容は、個別訪問と文書違反だと思います。
  1350. 花村四郎

    花村委員長 文書違反の被疑事件について逮捕をしろというのですか。
  1351. 酒寄久市

    酒寄證人 そうであります。
  1352. 花村四郎

    花村委員長 それから連れて來てどうしました。
  1353. 酒寄久市

    酒寄證人 正確な時間は記憶にありませんが、五時前後、五時半ごろではないかと記憶しておりますが、逮捕状はそのまま見ておりませんけれども、執行した時間ははつきりしませんが、五時半ごろではないかと思つております。逮捕状を執行しまして、村上警部補が弁解録書をとり、そのあとで大体事件の下調べをいたしましたところが、六件か七件くらい自供しました。時間もそのうちに大体六時半過ぎたと思いましたので、大分遅くなりますし、村上警部補は横須賀から通勤しており、毎晩搜査で遅くなつておりまして、この事件を調べればどうしても十時か十一時くらいにまでなるという見通しがありましたものですから、村上警部補は、今日は疲れているから帰つたらどうか、あとはぼくが調べておこうということになりまして、私が供述調書をとりました。
  1354. 花村四郎

    花村委員長 調書をとつてそれから身柄はどうしました。
  1355. 酒寄久市

    酒寄證人 身柄は在宅させました。
  1356. 花村四郎

    花村委員長 どうして在宅させましたか。
  1357. 酒寄久市

    酒寄證人 その当時の本人の状況から見まして、かねてぐあいが悪いということはうわさには聞いておりましたが、調べをやつている途中にも三回ほど——言葉で言い表わしかねるのでありますが、食あたりでもしたときの、げぶつというような、げ、げ、げというような形のことが三回ほどありまして非常につらそうな状況にも見えましたし、それから私が帰した理由は、私の方でずつと竹田道二候補の関係の搜査を続けておつたのですが、その搜査線上に浮んだところは大体認めており、私の方で搜査して、これはいわゆる文書頒布違反ぐらいでないかと思つてつたところも、戸別訪問として本人も認めており、選挙違反として私がかつてつた中では、非常にその目的もよく認めておりましたし、からだの調子も事実あまりよくないらしいというような見方をしたものですから、釈放しました。
  1358. 花村四郎

    花村委員長 その釈放については横浜檢察廳の何か指揮を受けましたか。
  1359. 酒寄久市

    酒寄證人 受けません。
  1360. 花村四郎

    花村委員長 受けずにあなたがかつてに帰すことができますか。
  1361. 酒寄久市

    酒寄證人 私の方では、勾留状になれば一應連絡いたして、檢事の指揮を仰いでおりますが、逮捕状自体の場合には、今までのやり方では、一度も檢察廳に指揮を受けて釈放したことはありません。
  1362. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎは、あなたが調べて一日か二日後に、銀行の強盜事件か何かあつたそうですね。そのあつた日に、もらい下げか何かに來ておつたそうじやないですか。
  1363. 酒寄久市

    酒寄證人 それはどこへもらい下げですか。
  1364. 花村四郎

    花村委員長 伊勢佐木署です。
  1365. 酒寄久市

    酒寄證人 その点は私は存じません。私の方は壽警察署の三階に勤務しておりますから、その点はわかりません。
  1366. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎ檢事から教わつて、寢ておればいいというので寢ておつて、次々呼出しを受けなかつた。こういう話がもつぱらあるのですが、実際逮捕して來ないじやないですか。どうですか。
  1367. 酒寄久市

    酒寄證人 逮捕して來ないと申しますと……。
  1368. 花村四郎

    花村委員長 逮捕して、警察へ連れて來なかつたのではないですか。
  1369. 酒寄久市

    酒寄證人 私の方でですか。
  1370. 花村四郎

    花村委員長 あなたの方で。
  1371. 酒寄久市

    酒寄證人 それは私の方では、必ず連れて参りました。
  1372. 花村四郎

    花村委員長 間違いありませんか。
  1373. 酒寄久市

    酒寄證人 はあ。
  1374. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何かお尋ねがありますか。
  1375. 猪俣浩三

    猪俣委員 地檢に楢島という檢事がおりますか。
  1376. 酒寄久市

    酒寄證人 おります。
  1377. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは後藤つぎ事件について、楢島氏の所に相談に行つたことがありますか。
  1378. 酒寄久市

    酒寄證人 全然ございません。
  1379. 猪俣浩三

    猪俣委員 あの楢島と地檢の次席、それから伊藤刑事部長、それからとあなたとどこかに飲みに行つたことがあるんじやないかね。
  1380. 酒寄久市

    酒寄證人 飲んだことはあります。それは飲みに行つたと申されますと、私の方でいささか恐縮なんですが。
  1381. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう会合ですか。
  1382. 酒寄久市

    酒寄證人 それは私の方の搜査二課というのが昨年九月発足いたしまして、別に課が独立したからといつて、何のお祝というほどでもありませんが、やつておりませんし、それともう一つは、選挙中に檢察廳方々にもたいへん御迷惑をかけるから、どうだ、局長からもらつた督励費によつて一席設けようじやないかという話が刑事部長から私の方にありました。そして私の方で計画を立ててやりました。
  1383. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはどこへ行かれたのですか。
  1384. 酒寄久市

    酒寄證人 これは当時、今横浜市の交通課長をしておりますが、柳川憲治という警視がおります。当時警部でありましたが、私の方の課長補佐として——課長が部長兼務であつたですから、課長補佐として当時勤務しておりました。それで会場もないのでどこかというので私と柳川課長補佐と相談いたしまして、柳川課長補佐の奥さんの実家がちようど横浜市内の、近い所にあるものですから、そこがおふろ屋さんですが、そこの二階をおやじに話して使おうじやないかという申出が柳川課長補佐からありましたので、そこでやりました。
  1385. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは今の後藤つぎの逮捕の前かね、あとかね。
  1386. 酒寄久市

    酒寄證人 これは前です。
  1387. 猪俣浩三

    猪俣委員 逮捕以前の話かね。
  1388. 酒寄久市

    酒寄證人 はあ、そうだと思います。
  1389. 花村四郎

    花村委員長 ほかにありませんか。
  1390. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この後藤つぎの逮捕を横山檢事の方から依頼で逮捕したんでしようか。
  1391. 酒寄久市

    酒寄證人 依頼ではありません。私の方で搜査をしまして、当然逮捕しなければならぬ状況に來ておりましたから、逮捕状をもらうときに御連絡申し上げたわけです。逮捕状をもらいたいといつて、私の方で一應檢察廳を通して、それから裁判所にもつてつてもらうのが常例でありますから。
  1392. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それで逮捕状の請求者の名義は檢事になつてるんですか、あなたの方ですか。
  1393. 酒寄久市

    酒寄證人 警察官であります。たしか、松永警部補の名義じやないかと思つております。
  1394. 大西正男

    ○大西(正)委員 逮捕の日はいつですか。
  1395. 酒寄久市

    酒寄證人 二月の十日だと思います。
  1396. 大西正男

    ○大西(正)委員 楢島檢事と飲みに行つたというのはいつですか。
  1397. 酒寄久市

    酒寄證人 二月の三日の晩だと思います。
  1398. 大西正男

    ○大西(正)委員 そのとき横山という檢事を誘いましたか。
  1399. 酒寄久市

    酒寄證人 誘いました。
  1400. 大西正男

    ○大西(正)委員 どういう名義で誘つたですか。
  1401. 酒寄久市

    酒寄證人 それは実は檢察廳の方にも、選挙でいろいろごやつかいになるというので、私の部長が督励費で先ほど申し上げたような計画でやりまして、私の方で税務署から酒をいただきましてやつたんですが、このときには刑事部長の話では、檢察廳の方からおいでになる方はどなたかわからぬ、その人選については次席檢事さんに一任してある、こういうお話でありまして、私もその前に何回か選挙の連絡に行つておりましたものですから、ちようど刑事部屋に入りますと横山檢事さんがおられましたので、事件の話をした後で、たくさんおつて來られる方と來られない方があるのでは、あまりはつきりお話申し上げてはまずいと思いまして、檢事さん、何かお話がありましたかと言いましたら、話があつた、こういうお話でしたから、どなたがいらつしやるんですかと私の方で言いましたら、ちようど楢島檢事もおられまして、楢島君も行きますよ、こういうお話でしたから、ああそうですか……。
  1402. 大西正男

    ○大西(正)委員 楢島君も行きますと言つたのは、だれですか。
  1403. 酒寄久市

    酒寄證人 横山檢事殿から。
  1404. 大西正男

    ○大西(正)委員 あなたが横山檢事を誘つたのじやないのですね。
  1405. 酒寄久市

    酒寄證人 私から誘つたのではありません。それは次席檢事さんからお話があつたと思います。
  1406. 大西正男

    ○大西(正)委員 それで横山檢事さんは行きましたか。
  1407. 酒寄久市

    酒寄證人 行かれませんでした。
  1408. 大西正男

    ○大西(正)委員 どうして。
  1409. 酒寄久市

    酒寄證人 その事情はわかりませんが、都合でおそくなるからという電話連絡がありました。電話が非常に故障が多かつたですから、三階に電話連絡に行つて、十分くらいたつてつて來ましたとこが、おいでにならぬということでありました。
  1410. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうするとあなたが入つて行つたときに、あなたの方から横山檢事に、檢事はだれだれが行くかということを聞いたんですか。あなたが勧めたわけですね。
  1411. 酒寄久市

    酒寄證人 迎えの自動車をもつて——場所がおふろ屋さんです、ちよつと裏の方のひつ込んだ所ですから、それにその日は雨が降つてつたと思います。
  1412. 大西正男

    ○大西(正)委員 それはいいですが、あなたの方から誘つたわけではないですね。
  1413. 酒寄久市

    酒寄證人 私の方からは全然お誘いしません。
  1414. 大西正男

    ○大西(正)委員 そのときあなたが横山檢事と、どつちが誘つたのかしりませんが、楢島檢事もその部屋に來ておつたのではないのですか。
  1415. 酒寄久市

    酒寄證人 おりました。同じ部屋で机も並んでおりますから……。
  1416. 大西正男

    ○大西(正)委員 そのときに楢島檢事とあなたの方から、横山檢事を誘つたのではないのですか。
  1417. 酒寄久市

    酒寄證人 私は全然誘いません。ただ來られるかどうかをお伺いしてみただけであります。
  1418. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうすると二月三日のときというのは、いわゆる竹田という者の選挙違反がすでに起つてつたのですか。
  1419. 酒寄久市

    酒寄證人 起つておりました。
  1420. 大西正男

    ○大西(正)委員 いつごろ起つたか。捜査の段階に入つたのは……。
  1421. 酒寄久市

    酒寄證人 一月の中ごろか、二十日前後から捜査に着手しておつたと思います。
  1422. 大西正男

    ○大西(正)委員 横山という檢事も、竹田の選挙違反に関係しておつたのですか。
  1423. 酒寄久市

    酒寄證人 大体横山檢事さんが竹田事件を担当しておつたように聞いております。
  1424. 大西正男

    ○大西(正)委員 あなたの方は竹田派の事件をやつてつたのですか。
  1425. 酒寄久市

    酒寄證人 私の方は竹田派ばかりではなく、全般的な捜査をしております。
  1426. 大西正男

    ○大西(正)委員 それで繰返して聞きますが、あなたは今言つたように、楢島檢事が行くなんということを横山檢事から聞いたというのは、間違いないのですね。
  1427. 酒寄久市

    酒寄證人 そうです。
  1428. 猪俣浩三

    猪俣委員 先ほど横山檢事は、とにかく後藤つぎの選挙違反事件檢事局に送られて來て、事件が捜査線上に出た直後だと言うけれども、自分がその係であり、それにそういう所に飲みに行こうと誘われたのは、これはおかしいと思つて自分は行かなかつたと、こう言うのです。そこでわれわれは正直に言うと、これはどうも臭いと思うのだ。そうでしよう。あなたもいわゆる竹田道二の選挙違反事件後藤つぎ事件をやつておる主任だ。横山檢事もその主任なんだ。それを誘つて行くんだ。しかも横山氏が捜査状を出したということに対して、林という次席はたいへん怒つているんだ。楢島やあなたが係をやつておる人を誘つて飲みに行つたということを、横山氏はこれはおかしいと直感した。あなたはおかしいことはないですか。
  1429. 酒寄久市

    酒寄證人 それは見解の相違でありまして、私の方にはそういう意思は毛頭ありません。
  1430. 花村四郎

    花村委員長 証人後藤つぎを知つておりますか。
  1431. 酒寄久市

    酒寄證人 私は二、三度顏を見たことはありますが、後藤というだけで、名前も知りませんし、家自体も知りません。
  1432. 花村四郎

    花村委員長 それでは済みました。どうも御苦労でした。お帰りください。  榊清史君でありますか。
  1433. 榊清史

    ○榊證人 はいそうです。
  1434. 花村四郎

    花村委員長 年齡は……。
  1435. 榊清史

    ○榊證人 二十五歳です。
  1436. 花村四郎

    花村委員長 職業は……。
  1437. 榊清史

    ○榊證人 横浜巡査であります。
  1438. 花村四郎

    花村委員長 現住所は……。
  1439. 榊清史

    ○榊證人 横浜市戸塚区矢部町九十七番地です。
  1440. 花村四郎

    花村委員長 横浜のどこの警察のどういう係をやつておられますか。
  1441. 榊清史

    ○榊證人 横浜警察局加賀町警察署経済係をやつております。
  1442. 花村四郎

    花村委員長 日本タイヤーで経済違反の事件が起つたことがありますね。あなたはその捜査を行つたことがありますか。
  1443. 榊清史

    ○榊證人 捜査は一度もやつたことはありません。
  1444. 花村四郎

    花村委員長 何か関係したことはありますか。
  1445. 榊清史

    ○榊證人 関係したのは、一件記録を檢察廳へ出しました。
  1446. 花村四郎

    花村委員長 一件記録を出したというのは、記録を持つて行つたという意味ですか。
  1447. 榊清史

    ○榊證人 編纂してでき上つた書類を、全部一まとめにして檢察廳へ持つて行きました。
  1448. 花村四郎

    花村委員長 この事件について、横浜警察檢察廳の人の中で、收賄問題が起きているというようなことを知つておりますか。
  1449. 榊清史

    ○榊證人 昨年聞いたことがあります。
  1450. 花村四郎

    花村委員長 聞いたのですか。
  1451. 榊清史

    ○榊證人 はい、聞きました。
  1452. 花村四郎

    花村委員長 その捜査に関係したわけじやないのですね。
  1453. 榊清史

    ○榊證人 捜査には関係しません。
  1454. 花村四郎

    花村委員長 聞いたことを簡單に言つてください。
  1455. 榊清史

    ○榊證人 書いて來たものを見ていいですか。
  1456. 花村四郎

    花村委員長 いいです。骨子だけを簡單に言つてください。
  1457. 榊清史

    ○榊證人 日本タイヤーの事件が加賀町の経済で取調べが始まつたのが、昨年の初めごろで、その時分私は外勤の係にてよくわかりませんでしたが、とにかく部屋へ行くと、ゴムタイヤ関係の被疑者が蓼沼巡査に調べられているのを私は記憶しております。その後私が四、五月ごろ経済室に入りましたが、そのときはすでに事件は何も調べておらなかつたのであります。そのいきさつはどうなつたか私にはわかりませんでしたが、何しろやつていないことは事実でありました。その後私が九月か十月ごろ、何かの用で戸塚署の経済係の植木という巡査のところへ行くと、たまたまその巡査が当直でいろいろ話しているうちに、加賀町の経済に蓼沼というのがいるかと聞かれましたので、私はいますと言うと、蓼沼というのはいい玉じやないかとか言つておりました。私は何だと聞くと、ゴムタイヤの件はどうしているのだ、調べているのかと言うので、私はその当時経済係になつていなかつたから、事情はよく知らないと言つておきましたが、とにかくいい玉だと言つてつたことは間違いありません。その後二、三日たつてから、私が加賀町の署の方へ行つて、畫ごろでしたが、蓼沼に、戸塚でなんかおもしろくないことを言つておると私が言うと、何と言つておるのだと蓼沼が聞きましたから、何しろおもしろくないことを言つておる、そういうふうに言いますと、蓼沼は平林主任にその話をしていますと、主任は、われわれは何も関係のないことだ、何も言われることはしていないと言つていた。そうすると間もなく、一度手を着けて中断の形になつていたのを、私がそれを言つてから——そのいきさつは、私が言つたからかどうかわかりませんが、とにかくまた諸岡部長、蓼沼三平が日本タイヤーへ調べに行つたことは事実であります。その後被疑者を呼んで、諸岡部長が主体となつて調べて見ましたが、結局最後に一件記録は、私が当時その係におりましたから、私が編纂して檢察廳に届けたことは事実であります。その間月日は忘れましたが、何しろ戸塚の植木巡査というのが、蓼沼がまた來た、何か欲しいのじやないかということを、日本タイヤーのだれかが言つていたということを、私に話したことは記憶に残つております。
  1458. 花村四郎

    花村委員長 それでそのいい玉じやないかというのは、どういう意味ですか。
  1459. 榊清史

    ○榊證人 前にも一回やつて、それからまた來たとゴムタイヤのだれかが言つたらしいのです。それでとにかく相当のやり手じやないか、そういう意味で言つたのです。
  1460. 花村四郎

    花村委員長 ゴムタイヤへ何かもらいにでも行くという意味なのですか。とりに行くという意味なのですか。
  1461. 榊清史

    ○榊證人 そういう意味で言つたのです。
  1462. 花村四郎

    花村委員長 それから後藤つぎ平林経済主任との関係を知つておりますか。それを知つておる限度において簡單に言うてください。
  1463. 榊清史

    ○榊證人 別に深くは知つておりませんが、部屋にいると、電話が二、三回かかつたような記憶がしております。用件は何だかわかりませんが、とにかく平沼の後藤ですとか言つて、おばあさんみたいな声でしたが、私はそれを受取つて聞いたことが記憶にあります。
  1464. 花村四郎

    花村委員長 それで経済主任はそのとき何と言うておりましたか。電話のとき……。
  1465. 榊清史

    ○榊證人 その当時は、自分も別にだれか知つている人だと思つて、氣にもいたしておりませんでした。
  1466. 花村四郎

    花村委員長 深い関係があるということは知りませんか。
  1467. 榊清史

    ○榊證人 深い関係というのは、最近考え出したのでありますが、眞相という雜誌を見て、後藤ぎと鈴江組というのが何か関係がある、それに系統図が書いてありましたが、そのとき、ことしの二月か、三月……。
  1468. 花村四郎

    花村委員長 その眞相のことはいいです。それで後藤つぎ平林主任を呼ぶのに、昇さんと言つて自分の子供のようなつもりで呼んでおるようですが、そういうことは聞きませんでしたか。
  1469. 榊清史

    ○榊證人 聞きました。
  1470. 花村四郎

    花村委員長 それで後藤つぎ平林と話しておるところを見たことがありますか。
  1471. 榊清史

    ○榊證人 電話以外には、自分は見たことがありません。
  1472. 花村四郎

    花村委員長 何か御質問でありますか。——猪俣君。
  1473. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本タイヤーで第一回の捜査をやつて打切つて、——あなたが今戸塚署のことを言つたが、それから第二回の捜査に行つたのだね。その間の期間はどのくらいあるのですか。
  1474. 榊清史

    ○榊證人 その間配炭公團を第一回目で送つているのが、犯摘も残つていますが、それから手を着け始めたのが——二回目を始めたのが何でも去年の秋ごろだつたと思います。十月か、十一月……。
  1475. 猪俣浩三

    猪俣委員 その間半年もあるのですか。
  1476. 榊清史

    ○榊證人 九月の終りか、十月、そのくらいあると思います。
  1477. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからあなたは檢事局に送るその書類の係をやつてつたそうですね。
  1478. 榊清史

    ○榊證人 そうです。
  1479. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本タイヤーの記録が少し改竄されておるような疑いがあるというのだが、それはどうですか。
  1480. 榊清史

    ○榊證人 それははつきりしない。実際に書類を見てみなければ記憶に出ない。  それからもう一つお話したいことがあるのです。その後一件書類檢察廳の方に送つてから、警察に総合査察がありまして、いろいろな書類を整理していたわけです。そうすると香取檢事さんという方がお見えになつて、犯摘はあるか、見せてくれと言われた。それで私がその当時やつておりましたが、主任からは、ありますと、——それで自分も相当強硬に言つたわけです。実際一日、まる一日探したがなかつたのです。そして結局、本間さんのところに——檢察廳におられるのですが、その方のところに犯摘を借りに行つたりしましたが、そこにもない。夕方になつて、私もこのままでうつちやつてはおけないと思つて、おもしろくなく帰つたわけです。翌朝署の方に行くと、諸岡部長が、榊君、おもしろくないからもう一回探そうと言つた書類の倉庫があるのですが、そこに行くと、きのう私が帰つたときと違う。犯摘の五册が地べたに並んでおる。それじやここを見てみようというので、私が見ておるうちちようど自分の見た犯摘の五册に、ゴムタイヤの犯摘があつたのです。諸岡部長が、あまり人を疑うのじやない——発うのは悪いけれども、きのう私が見たときはなかつたのです。そのことを平林主任に話した。そうすると、それは榊君の記憶違いだと言つて、それつきり何も言わなかつた
  1481. 猪俣浩三

    猪俣委員 いつごろですか。
  1482. 榊清史

    ○榊證人 日本タイヤーの事件新聞に出始めてからです。
  1483. 猪俣浩三

    猪俣委員 何月ころですか。
  1484. 榊清史

    ○榊證人 ことしの二月か三月——三、四月ころだつたと思います。それからもう一つ、日本タイヤーの件でお話したいことがあります。その後警察の査察がありまして、書類の準備をしておるとき、平林主任が榊君と、私に言つたわけです。私がそばに行くと、ゴムタイヤの一覧表がこんなところに入つていたと言うのです。そしてその一覧表はどこにあつたとも、そのときは言わなかつたのですが、こんなところに一覧表があるというわけで、榊君も忙しかつたからつけ忘れたのだろうというわけで、何だかんだと主任と話しておるうちに、諸岡部長がそばに來て、榊君も忙しいから、とにかく忘れてしまつたのだろう——そのときはどつちかといえば、自分とあまり感じよくない方だつたものですから、へんな笑い方をして、これは檢察廳の方から請求があるとか、檢察廳の方から指示があるまで、こつちでとつておこうと言つて封筒に入れて、諸岡部長に渡しておるのを私は見たことがあります。
  1485. 花村四郎

    花村委員長 いいですか——それじやこれで済みました。御苦労さまでした。お帰りください。  平林昇君ですか。
  1486. 平林昇

    平林證人 そうであります。
  1487. 花村四郎

  1488. 平林昇

    平林證人 三十四才です。
  1489. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1490. 平林昇

    平林證人 警察官です。
  1491. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1492. 平林昇

    平林證人 横浜市中区末吉町三の五十であります。
  1493. 花村四郎

    花村委員長 今どこの警察へ勤めておられて、何係をやつておられますか。
  1494. 平林昇

    平林證人 横浜市加賀町警察署経済主任であります。
  1495. 花村四郎

    花村委員長 そこでお尋ねしますが、あなたは日本タイヤーの経済違反事件の捜査に関與したことがありますか。
  1496. 平林昇

    平林證人 あります。
  1497. 花村四郎

    花村委員長 何回です。
  1498. 平林昇

    平林證人 二回であります。
  1499. 花村四郎

    花村委員長 そのときにタイヤを押收しましたか。
  1500. 平林昇

    平林證人 押收しました。
  1501. 花村四郎

    花村委員長 その押收したタイヤはどうしましたか。
  1502. 平林昇

    平林證人 仮下げ保管にして保管さして、保管受書を徴して、記録を添付して檢察廳に送りました。
  1503. 花村四郎

    花村委員長 そうするとタイヤは返したわけですね。
  1504. 平林昇

    平林證人 返してはおりません。
  1505. 花村四郎

    花村委員長 それはどこに保管してありますか。
  1506. 平林昇

    平林證人 日本タイヤーに保管してあります。保管受書が提出してあります。
  1507. 花村四郎

    花村委員長 それであなたは日本タイヤーの馬場という社長から一万円もらつたといううわさがもつぱら飛んでいるのですが、そういう事実はどうですか。
  1508. 平林昇

    平林證人 それは私の留守中に、私の家族の者に、だれかが置いて参りましたから、翌日それを署へ呼び出して、受取りを徴して返還しました。
  1509. 花村四郎

    花村委員長 馬場社長にですか、持つて來た人にですか。
  1510. 平林昇

    平林證人 馬場であります。
  1511. 花村四郎

    花村委員長 そうですか。それから後藤つぎというのを知つておりますか。
  1512. 平林昇

    平林證人 知つております。
  1513. 花村四郎

    花村委員長 御懇意のようですね。
  1514. 平林昇

    平林證人 懇意というほどではありませんが、署へたびたび出入りしておりましたから、口を聞いたりあいさつをする程度であります。
  1515. 花村四郎

    花村委員長 あなたのことを昇さん昇さんというので、なかなか懇意なような話なのですが。
  1516. 平林昇

    平林證人 そうでもありません。向うはどう言つているか知りませんが、私としては懇意というほどではありません。
  1517. 花村四郎

    花村委員長 署の方へたびたび昇さんと呼んで電話がかかつて來るそうですね。そういうことはありませんか。
  1518. 平林昇

    平林證人 電話で私はそういうふうに呼ばれたことは一度もありません。
  1519. 花村四郎

    花村委員長 それでは電話で呼ばれないでも、電話がかかつて來ることはちよちよいあつたでしよう。
  1520. 平林昇

    平林證人 ちよちよいはありません。
  1521. 花村四郎

    花村委員長 そうですか。それではたまにはあるのですね。
  1522. 平林昇

    平林證人 あつたかもしれません。
  1523. 花村四郎

    花村委員長 あつたかもしらぬといつて警察におる人が、あなたの所によく電話がかかつて來るということを現に言つておる人もあるのですが。後藤つぎの家まで行つたことはありませんか。
  1524. 平林昇

    平林證人 いつごろですか。
  1525. 花村四郎

    花村委員長 いつごろかそれをあなたにお聞きをしているのです。これは宣誓をしてありまするから、実際のことをおつしやつていただかぬと困ります。
  1526. 平林昇

    平林證人 戰災後行つたことがあります。
  1527. 花村四郎

    花村委員長 何度ばかり行かれましたか。しよつちゆう行かれておるような話もありますが。
  1528. 平林昇

    平林證人 話はそうでありますが、戰災後私が行つたのは一回だと思います。
  1529. 花村四郎

    花村委員長 一回行つてごちそうになりましたか。
  1530. 平林昇

    平林證人 ごちそうになりません。
  1531. 花村四郎

    花村委員長 それから鈴木茂雄というのを御承知ですね。
  1532. 平林昇

    平林證人 知つております。
  1533. 花村四郎

    花村委員長 この鈴木茂雄から何か頼まれたことはありませんか。
  1534. 平林昇

    平林證人 はつきり記憶しておりませんが、一回事件のことについて、何か口を出したことがあつたと思います。
  1535. 花村四郎

    花村委員長 それは何の事件ですか。明治商会事件ですか。
  1536. 平林昇

    平林證人 そのように記憶しております。
  1537. 花村四郎

    花村委員長 それであなたは、進駐軍のタバコをちよちよ鈴木茂雄からもらいましたか。
  1538. 平林昇

    平林證人 ちよちよいもらつたことは記憶しておりませんが、新聞記者として署へ記事をとりに來たりしまして、そして鈴木氏に限らず、どの記者でも、タバコがないというので、向うから要求するときもあります。また向うが持つておれば、どうぞ吸いませんかと言つて、一本や二本は出されることもありますが、一箱を出すというようなことはおそらくないと思います。
  1539. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄は、明治商会のやみ事件が起きたので警察へ行つて、相当に進駐軍のタバコを持つてつてつた。配つたがそれは明治商会事件で來たとは言わないが、來たことは警察の人にはよくわかつておるはずだ、こういうことを言つておりましたが、あなたももらつた一人ですか。
  1540. 平林昇

    平林證人 私は特に鈴木氏からそういう意味でもらつたこともないし、また今申し上げたように、どの記者に限らず、持つていれば向うから出すし、また私が持つていればこちらから勧めるし、それは常識の範囲においてやりとりをしたことはありますが、そういうことはございません。
  1541. 花村四郎

    花村委員長 わかりました。ほかに何かありますか。
  1542. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは後藤つぎの家へ一ぺん行つたとし申しましたね。
  1543. 平林昇

    平林證人 申し上げました。
  1544. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときにだれと会いました。
  1545. 平林昇

    平林證人 そのときには後藤さんとお会いしました。
  1546. 猪俣浩三

    猪俣委員 鈴木茂雄もおりませんでしたか。
  1547. 平林昇

    平林證人 おりませんでした。
  1548. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤会つただけですか。そのとき明治商会の話が出たのではないですか。
  1549. 平林昇

    平林證人 出ませんでした。実は私の懇意にしております者が夫婦わかれをしまして、そのことで後藤さんが家事審判所の調停委員をしておられるというので、家事審判所へその届出を出す前に一應お伺いして話したいというので、私はその田所という者から頼まれて、その者の親と細君を同道して、調停の前に一應仲直りをしてもらうようにというので、依頼に行つたことがあります。戰災後私が行きましたのは、それ一回であります。
  1550. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいつごろですか。
  1551. 平林昇

    平林證人 時期ははつきり記憶しておりませんが、その問題が起きてからもうすでに半年ぐらいになります。起きた直後すぐ参りました。
  1552. 猪俣浩三

    猪俣委員 明治商会事件というのは、あなたが取扱つたのですか。
  1553. 平林昇

    平林證人 そうであります。
  1554. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいつごろ起きたのですか。
  1555. 平林昇

    平林證人 これは昭和二十三年の七月か八月ころと記憶しております。
  1556. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたが取扱つた以後、今の話で後藤つぎの所へ行つたのでありますか——あなた、正直におつしやらないと偽証罪になりますよ。何もあなたの犯罪事実を調査しているのではないので、本当のことを言つてもらわぬと困るのだ。それはあなたの言うことは、鈴木岩山の言うことと食い違つておる。そうするとあなただけがうそを言うたようなことになりはしないかな。
  1557. 平林昇

    平林證人 しかし後藤氏の宅で鈴木明治商会会つたことはありません。
  1558. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎの宅で、後藤から明治商会のことについて話をされたことはありませんか。
  1559. 平林昇

    平林證人 ありません。後藤つぎの自宅でありますね。
  1560. 猪俣浩三

    猪俣委員 自宅で……。
  1561. 平林昇

    平林證人 はい。
  1562. 猪俣浩三

    猪俣委員 あるいはつたのやではどうですか。
  1563. 平林昇

    平林證人 こういうことがあります。急用があるから私に來てもらいたいという電話がありました。私は不審に思いましたが、何かほかの家庭上のことであると思いまして、つたのやへ私が参りました。ところがその問題が出ましたから、私はそういうことは口に出してもらつては困ると、実は憤慨しました。
  1564. 猪俣浩三

    猪俣委員 つたのやで明治商会の話が後藤つぎからあなたに出たわけですね。
  1565. 平林昇

    平林證人 出ました。
  1566. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときにたれがおりましたか。
  1567. 平林昇

    平林證人 鈴木がおりました。
  1568. 猪俣浩三

    猪俣委員 岩山には会わなかつた
  1569. 平林昇

    平林證人 はい。
  1570. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎの話はどういう話なのですか。
  1571. 平林昇

    平林證人 鈴木が話したいことがあるから、何か聞いてやつてもらいたいということを言つておりました。
  1572. 猪俣浩三

    猪俣委員 それで鈴木はどういうことを言うたのですか。
  1573. 平林昇

    平林證人 鈴木明治商会に関連して、日産化学のことだつたと思います。日産化学の方は手をつけないでもらいたいというようなことを言つたように記憶しております。私はだめだ、そういう話はしてもらいたくないといつて、また後藤さんにも、そのことは私は断じて言つてもらつては困ると言つて、実はそのとき……。
  1574. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは何時ころです、その話をしたのは。
  1575. 平林昇

    平林證人 時間はたしか晝間だと思います。午後退廳間際ころじやないかと思います。まだ明るかつたと思います。
  1576. 猪俣浩三

    猪俣委員 四千なんぼ飲食費を支拂つておるのだが、つたのやでは何も飲み食いしなかつたのですか。
  1577. 平林昇

    平林證人 しません。
  1578. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると鈴木から後藤の口添えで、日産化学のことは手をつけないでもらいたいという話をされたというので……。
  1579. 平林昇

    平林證人 はつきり記憶しませんが……。
  1580. 猪俣浩三

    猪俣委員 明治商会の話は……。
  1581. 平林昇

    平林證人 私は自分の担当していることについて話が出ましたから、それ以上聞きたくないとはつきり言いました。
  1582. 猪俣浩三

    猪俣委員 日本タイヤーの事件で第一回捜査に行つたことがありますね。
  1583. 平林昇

    平林證人 私は参りませんでしたが……。
  1584. 猪俣浩三

    猪俣委員 第一回の捜査はいつごろです。
  1585. 平林昇

    平林證人 第一回は四月ごろだと思います。
  1586. 猪俣浩三

    猪俣委員 昨年の四月ですか。
  1587. 平林昇

    平林證人 そうです。二十三年の四月中旬ごろであります。
  1588. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのときはタイヤを差押えしたのですか。
  1589. 平林昇

    平林證人 そのときは巡査部長と係員を派遣しましたが、はつきり記憶しておりませんが、差押えたかもしれません。
  1590. 猪俣浩三

    猪俣委員 差押えたか、しないかわからぬというのですか。
  1591. 平林昇

    平林證人 はい。二回にわたつて捜査しましたから……。
  1592. 猪俣浩三

    猪俣委員 二回目はいつやつたのですか。
  1593. 平林昇

    平林證人 二回目は、日にちははつきり記憶しておりませんが、一箇月か一箇月半くらいたつておるかもしれません。
  1594. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうじやないのじやないですかね。半年もたつた後じやないですか。よくお考えなさい。
  1595. 平林昇

    平林證人 送りましたのは十一月の十五日ですが……。
  1596. 猪俣浩三

    猪俣委員 二回目の差押えは秋じやないですか。
  1597. 平林昇

    平林證人 間違いました。秋かもしれません。
  1598. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは半年以上たつておるのだ。私の方は調べてあるのだから、よく考えて言わないと……。
  1599. 平林昇

    平林證人 それは送檢したのが十一月になつておりますから……。
  1600. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとその間半年もどうして中止しておつたのです。
  1601. 平林昇

    平林證人 それにはこういう理由があります。それは四月の初まりに配炭公團横浜支部の事件を私がやりました。そのときに手がいつぱいで、日本タイヤーまで手が延びませんでしたが、たまたま本部の課長から、日本タイヤーの事件は市警本部が担当するということで、私は証拠資料を本部に提出しました。そして本部の課長の命により、岡本警部補がこの日本タイヤーを担当しましたが、約二箇月くらいたちましてから、再び私の方に課長からの命令で、日本タイヤーを再捜査するようにという命令がありまして、私は一應期間もたつておるし、これ以上私の方で調べてもはたして事件が進展するかどうかわからぬから困ると申しましたが、課長の方から、君の方が一番事情をよく知つておるのだからやつてもらいたいというので、私は提出しました証拠資料を、再び受取りまして、そして愼重に捜査方針を立てまして、今私の記憶の違いでありましたが、たしか秋になりまして、再び令状を持つて係の巡査部長と係員が日本タイヤーにおもむいて押收捜査をやつたのであります。そして前の事件と後の事件を——前の事件と申しますのは、石炭とタイヤの物交でありまして、後から出ましたのはゴムタイヤの不正所持、更新タイヤの物統違反の販賣というのが出まして、これを前の事件と後のものとを一緒にまとめて送りましたのが、二十三年の十一月の十五日であります。そのために期間が遅れたのであります。
  1602. 猪俣浩三

    猪俣委員 市警の本部というのは縣廳の中にあるのですか。
  1603. 平林昇

    平林證人 そうであります。
  1604. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこに二箇月もとめて置かれましたか。
  1605. 平林昇

    平林證人 置かれました。
  1606. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは違いませんか。
  1607. 平林昇

    平林證人 それは本部で捜査しておりました。
  1608. 猪俣浩三

    猪俣委員 捜査も何もしない。すぐあなたの方にもどしたという話だがね。
  1609. 平林昇

    平林證人 すぐもどつてはおりません。
  1610. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは間違いませんか、すぐ証拠が出るのだから。
  1611. 平林昇

    平林證人 はあ。
  1612. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから警察署の主任に蓼沼という人がおりますか。
  1613. 平林昇

    平林證人 おります。
  1614. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは日本タイヤーを調べた人間ですか。
  1615. 平林昇

    平林證人 調べました。
  1616. 猪俣浩三

    猪俣委員 この人間が日本タイヤーから何か饗應を受けたという話があるが、あなたは聞いたことはないですね。
  1617. 平林昇

    平林證人 それは聞いたことがありません。
  1618. 猪俣浩三

    猪俣委員 ない……。
  1619. 平林昇

    平林證人 はい。
  1620. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから日本タイヤーの記録のページ数が書き改められておるのだが、あなたはそれを知らないのですか。
  1621. 平林昇

    平林證人 それは檢察廳に記録が行つてから私が呼ばれまして、記録を見たときに初めて発見いたしました。記録は送致するときに落丁はありませんでした。
  1622. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢察廳へ送致するときはそういうことはないので、檢察廳行つたところが落丁があつたのかね。
  1623. 平林昇

    平林證人 そうです。
  1624. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢察廳へ行つてどうかなつたのか。
  1625. 平林昇

    平林證人 それは私はわかりませんが、とにかく落丁のままで警察書類を送るということはありません。
  1626. 猪俣浩三

    猪俣委員 長い間第一回の捜査をやつてつて、そのままどこかに記録はつつ込んでしまつてほうつておいた。ところがほかの警察署、戸塚警察署から何かかんか言われた。日本タイヤーの事件で加賀署のやり方はどうもおかしいといううわさが耳に入つたので、また急に捜査するようになつたという人があるが、そこはどうですか。
  1627. 平林昇

    平林證人 私の方では今申し上げたような理由で遅くなつたわけでありまして、故意に遅らしたり、また他から言われて、再び捜査を始めたということは絶対にありません。
  1628. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは、馬場という男は、あなたの留守に一万円金を持つて來たと今おつしやつたね。そうすると、この男は往々にそういうことをやる男ではないかね。あなたはそう思わないですか。あなたに一万円持つて來たが、あなたは受取らなかつたわけですが、ほかにもやつておるということは推測できませんか。
  1629. 平林昇

    平林證人 それですから、私は自分の係に対しては、そういう点を嚴重に注意をしておきました。それでそれを返すときも、私は署へ呼びまして、一時間ばかり本人に対して嚴重に注意を與えて、贈賄で一緒に送るかどうかということを話しましたら、署長は、それまでやらずに一應注意を與えて、受取りをとつておけというので、私は特に係のいる前で本人に注意を與えました。
  1630. 猪俣浩三

    猪俣委員 一万円持つて來たのは、二回目の捜査の前か後か、あるいは一回目の捜査のときかね。
  1631. 平林昇

    平林證人 それは一回目です。
  1632. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう一万円持つて來るような男でしよう。ほかにもやつているかもしれないわけだね。そういう事件をあなたは半年もすつぽかしておくことは、よそからうわさが出ることを考えなかつたか。
  1633. 平林昇

    平林證人 くどいようですが、課長の命令で事件が本部へ行き、本部で手をつけて、また再び私の方へ戻つて來た。そういうような状態で、当時私の方としては配炭公團事件を担当しておりましたから、本部でやつてくれるというなら、なお幸いであるものですから、その後配炭公團の事件が一應結末がつきかけたときに、また再び君の方でやつてくれと言われましたから、私の方でも困るというので、実は考えておつたのです。また課長の方からそういう命令が出ましたから……。
  1634. 花村四郎

    花村委員長 同じことを繰返さないで……。
  1635. 平林昇

    平林證人 そういう理由で遅れたのであります。
  1636. 花村四郎

    花村委員長 それはわかりました。ほかにありませんか。——済みました。御苦労さま。お帰りください。  富田正典さんですか。
  1637. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1638. 花村四郎

  1639. 富田正典

    富田證人 三十五才。
  1640. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1641. 富田正典

    富田證人 法務廳会計課経理室長。
  1642. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1643. 富田正典

    富田證人 横浜市西区平沼町五の一六五。
  1644. 花村四郎

    花村委員長 横浜檢察廳にはいつからいつまで勤めておられましたか。
  1645. 富田正典

    富田證人 昭和二十二年四月二十日から昭和二十四年一月七日までであります。
  1646. 花村四郎

    花村委員長 それでは今法務廳に入つているのですか。
  1647. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1648. 花村四郎

    花村委員長 花園纖維株式会社の経済違反事件について、横浜警察局第二捜査課に対して指揮をせられたことがありますか。
  1649. 富田正典

    富田證人 第二捜査課かどうかわかりませんが、壽署で花園纖維の事件をやつておりまして、それに対して指揮をいたしました。
  1650. 花村四郎

    花村委員長 どういう指揮をなさいましたか。
  1651. 富田正典

    富田證人 最初ガラ紡の無切符賣買の事件があるという報告がございまして、それにその買受人が横浜市の交通局、それからこれはまだ捜査の過程であつて申し上げていいかどうかわかりませんが、もうすでに御承知のことと思いますから、申し上げますが、東京地方檢察廳の職組、それから警視廳の厚生部ですか、職員組合ですか、そのほか在京の二、三官廳がその買受人として上つて來ている。その数量は正確には記憶しませんが、四万数千ヤールだつたかと記憶します。それについての指揮を求められたのであります。
  1652. 花村四郎

    花村委員長 それについてどういう指揮をなさいましたか。
  1653. 富田正典

    富田證人 それについて、この事件の捜査の指揮を当地方檢察廳に引継ぐように命令したのであります。その引継ぐ前に、この事件の規模がただ報告だけに現われているものか、それともまだ余罪があるかどうかということについて、阿部巡査部長に徹底的な捜査を命令して、名古屋まで出張させました。その結果、余罪がなくて、ただ報告されたその四万数千ヤールの無切符賣買という事件に限られましたので、そこで横浜地方檢察廳において捜査するから、引継いでくれということを申したのであります。
  1654. 花村四郎

    花村委員長 そこでこの事件取調べに対するあなたが主任檢事であつたわけですか。
  1655. 富田正典

    富田證人 そうであります。
  1656. 花村四郎

    花村委員長 それでこの事件の記録を名古屋へ送つたそうですが……。
  1657. 富田正典

    富田證人 これは結果的には名古屋に移送されたのでありますが、私が送つたのではありません。
  1658. 花村四郎

    花村委員長 それはだれが送つたのですか。
  1659. 富田正典

    富田證人 これは少し詳しく申し上げなければわかりませんが、事件を受けましてから、この事件を私みずから捜査するつもりで、事件箱の中に入れておいたのであります。ところが当時夏休みを控えての努力月間と申しましようか、非常にみんな古い一年越しの事件もございましたし、そういう事件の処理に追われておつたのであります。そこで私もその事件を処理して、そのうちに花園纖維の事件を調べようと思つておりますうちに、マラリヤが出まして三、四日休んだのであります。その期間中に、ちようど私の事件箱の中にやはり香取檢事の記録がございまして、香取檢事が当時隠退藏の方に集中しておりまして、普通の経済事件がやれなかつたために、これを各檢事に分けて処理するというので、私の留守中に、香取檢事の記録を処理し、そのときに私の手持事件であつた花園纖維の事件も、一緒に処理しようとしたわけであります。その処理する際に、一々事務官がやつたとあとで聞きましたが、記録をずつと見て行きますと、住所地がございます。その住所地によつて横浜地檢の管轄でないものはどんどん移送することになつております。そのために、間違つて私の知らない間に移送されたのであります。
  1660. 花村四郎

    花村委員長 それからそれは名古屋から、さらに岡崎に送られたそうですね。そして岡崎から横浜にまた帰つて來たそうですね。
  1661. 富田正典

    富田證人 そうであります。
  1662. 花村四郎

    花村委員長 その事件の記録は紛失しましたか。
  1663. 富田正典

    富田證人 いえ、ございます。これは高檢で調査中かと聞いております。
  1664. 花村四郎

    花村委員長 それから日本タイヤーの事件を御承知ですか。
  1665. 富田正典

    富田證人 全然知りません。
  1666. 花村四郎

    花村委員長 あなたがこの事件について、加賀警察署に対して捜査を中止しろというような命令をしたことはありませんか。
  1667. 富田正典

    富田證人 全然ありません。
  1668. 花村四郎

    花村委員長 それでは明治商会事件を御承知ですか。
  1669. 富田正典

    富田證人 知つております。
  1670. 花村四郎

    花村委員長 これはあなたが主任檢事で扱われたわけですか。
  1671. 富田正典

    富田證人 明治商会の経済事件、そうでございます。
  1672. 花村四郎

    花村委員長 その事件は、結局取調べの結果、起訴するに至つたのであるが、それは略式の請求をして、そうして求刑は会社に十五万円、專務の岩山に三万円という求刑をしたということですが、そうですか。
  1673. 富田正典

    富田證人 そうであります。
  1674. 花村四郎

    花村委員長 その求刑をするに至つた基準は何から割り出したわけですか。
  1675. 富田正典

    富田證人 これは昭和二十三年の八月ごろかと記憶しますが、それまで関東地方におきましては大体利益額中心主義で参つておりました。利益の二倍ないし三倍、特に悪質なやつは五倍くらいまでいい。それが八月から大体やみ物價と公定價格の差額が近づいて來ましたために、今度は超過額中心主義で行く、超過額の二倍ないし三倍を原則として、情状のいかんによつては大体超過額程度に下げることを得るということになつたのであります。しかしながらわれわれといたしましては、すでに八月以前の受理した事件については、從來利益額中心主義で起訴しておりまして、それが八月をわずか越えたからといつて、同じ時期に受付けたものを、急に超過額の二倍三倍にやるということはできないというので、大体八月以降の受理事件については二倍ないし三倍、それからまた八月以前の受付けでも、他の牽連事件がないようなものにつきましては、大体二倍ないし三倍は重いので超過額程度、主として八月以前の事件については利益額中心主義でやつてつたんであります。それでこの岩山事件につきましても利益を中心にいたしまして、その報告が、当時油脂類の統制が非常に一・四半期ほどギヤツプがあつて、ずれておつて、非常に需給が困難な状況であつたというふうな情状を加味いたしまして、利益の二倍をやつております。
  1676. 花村四郎

    花村委員長 この明治商会事件は一年くらい放置されておかれたんですね。
  1677. 富田正典

    富田證人 そうであります。
  1678. 花村四郎

    花村委員長 その理由はどういう理由で。
  1679. 富田正典

    富田證人 これは、私は昭和二十年の暮から労働係檢事を担当しておりまして、経済事件は兼務という形になつておりましたが、主として労働事件ばかりをやつておりまして、経済事件は係の事務官に配付してやらしておりました。そうしてこの明治商会事件は宇田川事務官に行つてつたと記憶します。ところが、この宇田川事務官がその事件の処理をまだ済ませないうちに、何の事件でありましたか、炭鉱國管でありますか、宇田川事務官というのは主計大尉でありますので、非常に経理に明るいというので、炭管事件の捜査にひつぱり出されました。そして相当行つておりました。そんな関係で、その事件は宇田川事務官手持ちのままで事件の処理が遅れておつたわけであります。
  1680. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄という新聞記者を御承知ですか。
  1681. 富田正典

    富田證人 これは昨年の十二月に、鈴木が金を出しているというこのいきさつを調べるに至つて、初めて知りました。
  1682. 花村四郎

    花村委員長 その前は知らないの。
  1683. 富田正典

    富田證人 全然知りません。
  1684. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄が、明治商会の專務の岩山から、十万五千円を受取つたそうですね。
  1685. 富田正典

    富田證人 岩山に言わせれば十万五千と申しますし、鈴木から言わせれば八万五千とか、あるいは六万五千とか、金額に食い違いがあつたように存じます。
  1686. 花村四郎

    花村委員長 その受取つたのは、岩山渡したのは、要するに明治商会の統制違反事件に関するもみ消し運動のために渡したと、こう言うのですが、それはどうですか。
  1687. 富田正典

    富田證人 岩山からはそう聞いております。
  1688. 花村四郎

    花村委員長 鈴木はそれを否認していますか。
  1689. 富田正典

    富田證人 鈴木も大体もみ消しのために受取つたのであるけれども、当時非常に生活に困つてつたので、生活費に大半使つてしまつたというように申しております。
  1690. 花村四郎

    花村委員長 それで、その金についてあなたが後藤つぎの家で鈴木茂雄に対して、これは借用証書にしておく方がよいのじやないかというようなことを指示されたそうですが、どうですか。
  1691. 富田正典

    富田證人 それは全然間違いであります。鈴木と会つたのは、檢察廳で二度でしたか、一度でしたか、檢察廳会つただけであります。
  1692. 花村四郎

    花村委員長 その檢察廳で会つたのは、どういう関係会つたわけですか。
  1693. 富田正典

    富田證人 それは最初明治商会事件について多額の金が動いて、事件のもみつぶしが行われる、その金が後藤つぎを通じて檢察廳の部内にばらまかれているという風評を聞いたのであります。それでこれは容易ならぬと思つて調べたところが、ちようど私の手持ち事件明治商会事件がなつておりました。それで岩山を経済事件について調べて、その調べが済んで、実はこういうことを聞くんだがというので、そこで初めて岩山に聞いたんです。岩山に聞いた結果、岩山から十万五千円の金をそういう趣旨でやつているということを聞きましたので、そこで鈴木を呼び出して調べたんです。
  1694. 花村四郎

    花村委員長 それは二十二年の十二月でしたね。
  1695. 富田正典

    富田證人 二十三年、去年であります。
  1696. 花村四郎

    花村委員長 去年の十二月ですか。それは調べたんではなくて、鈴木を呼び出して、あなたがその借りた金は借用証書にしておかなければいかぬという話をしたんで、取調べは受けなかつたと、こう本人が言うていますが、どうですか。
  1697. 富田正典

    富田證人 それはおそらく感違いであろうと思います。
  1698. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、あなたは取調べられて、調書をつくりましたか。
  1699. 富田正典

    富田證人 調書はとつておりません。
  1700. 花村四郎

    花村委員長 調書をとらぬというのはどういうのですか。
  1701. 富田正典

    富田證人 一番最初岩山の供述では、十万五千円と申しますし、鈴木の供述では金額が食い違つております。それから使途につきましても、生活費に大半使つて、あとをタバコやくだものなどを警察に持つて行つたというようなことを言つておりまして、そこに若干事実の食い違いがありますので、これを調べた上で、何度も二重手間になりますから、眞相がわかつてから調書にしようと思つたことが一つと、それから一つには鈴木が、私がメモをとりかけたのであります、そうすると、ともかく調書をおとりになるのなら申し上げないと言うので、一つの捜査の方法といたしまして、あとで報告書の形で宣誓供述をまとめてもいいのでありますし、一應全部先生にざつくばらんに言わせるためには、調書をとらぬ方がいいだろうと思つて、そこで調書はとらなかつたのであります。
  1702. 花村四郎

    花村委員長 警察檢察廳名前を出して、そして事件のもみ消しをやる金として受取つたというような事犯は、警察署並びに檢察廳に対する世の誤解を招くゆえんであつて、きわめてこれは素質の悪い重大なる事件として扱われておることをぼくらはよく知つておるのですが、あなたはそれを重大なる事件として扱われなかつたのですか。
  1703. 富田正典

    富田證人 それについて御説明申し上げますが、この事件は、先ほど二十二年十二月ではないかとおつしやられましたが、そのころ前におられた宮崎檢事が、この事件についてやはりそういう金が動いておるということを聞いて、そこで呼び出した上示談と申しますか、借用証書——ともかくその金を返さなければならぬということを言つて、その金を返させるための担保として借用書を入れさした。私がそれを調べましたのは、それから一年以上経過いたしました。一應そうしたいきさつがあつたことを聞きましたものですから、大体そういつた事情をさらに詳しく追究した上で、ここで調書をとつて調べ始めますと、また新聞記者の方でかぎつけて、事実がはつきりしないうちに、必要以上に脚色して、これを新聞に出されるおそれがあるであろう。從つて眞相をつかんで上司に報告した上で、正式な書類にするという考えであつたのであります。
  1704. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄本人は、二十二年の十二月、初めてあなたと檢察廳会つた、こう申していますがね。御記憶違いではありませんか。
  1705. 富田正典

    富田證人 全然会つておりません。
  1706. 花村四郎

    花村委員長 しかしいずれにしても、警察檢察廳名前使つた事件であるから、調べるどころじやない。まず第一にそういう風聞のある場合においては、身柄を拘束すべきが至当ではありませんか。そういう扱いを当該事件に対しては、今までみんなやつておるのではありませんか、どうですか。
  1707. 富田正典

    富田證人 ただ風評だけではできないと思います。
  1708. 花村四郎

    花村委員長 風評だけじやない。はつきりしたものじやありませんか。
  1709. 富田正典

    富田證人 はつきりしていると言いましても、一年半も前の事件でありまして……。
  1710. 花村四郎

    花村委員長 一年半前であろうが、二年半前であろうが、これは重大なる事件としてあなたは考えられませんか。
  1711. 富田正典

    富田證人 重大なる事件と思つたから私は著手したのです。
  1712. 花村四郎

    花村委員長 それではなぜ身柄まで拘束しないのですか。身柄を拘束すべき事件じやないか。そうして呼んでおいて、調書もつくらず帰すような事件じやないのです。そこにあなたが疑われるいろいろ問題が出て來るのだ。あなたが疑われるのは当然なんです。どうですかそれは……。  前に申し上げたように、もし証人にお尋ねする過程において、自己の刑事責任を問われるような点に触れる場合には、もちろん証人証言を拒絶し、默祕することができるのでありますから、御注意いたしておきます。
  1713. 富田正典

    富田證人 どうぞ。
  1714. 花村四郎

    花村委員長 どうですか、あやしく思われるではありませんか。当然だれが考えても、ことにわれわれのような職業柄から考えれば、どうもこれはふしぎ千万でならないのです。もつと小さい事件でも警察檢察廳名前をかたつて、わずかな金を詐欺したというのが、今どんどん起訴されて監獄に入つておるではありませんか。それを十万円に近い金だ。金はいずれにしても、金の額は相違があろうにしても、とにかく十万円に近い金を詐取したか、あるいは檢事局にばらまくと言うてばらまいたか、これは明らかにいずれかの犯罪になるということは、きわめて自明の理なんです。それをあなたが取調べて——本人に言わしめれば、取調べたんじやない。それは調書にしておかなければお前いかぬよと注意を受けた、こう本人は言つておる。かりに本人の言うようなことを信じないとしても、この事件を調書もつくらず、身柄も拘束せずに帰すというようなことが、第一穏当とあなたは考えられますか。
  1715. 富田正典

    富田證人 この点については、前に先輩である宮崎檢事が調べて、それがそのままになつてつたということが、身柄の拘束を私に躊躇せしめた一つの原因だつたと思います。
  1716. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、宮崎檢事が主任檢事として本件を調べたのですか。そういうことがはつきりと言えますか。
  1717. 富田正典

    富田證人 宮崎檢事取調べを受けたと申しておりました。
  1718. 花村四郎

    花村委員長 それはだれが言うておりましたか。
  1719. 富田正典

    富田證人 鈴木も申しておりましたし、岩山も申しておつたと思います。
  1720. 花村四郎

    花村委員長 あなたは檢事局におつて、被告の言うことを信じて、それで宮崎檢事がやつたと思つておるのですか。被告の言を信じて、檢事局にいるのだから、宮崎檢事が扱つてつてあなたに引継がれたなら、ちやんとが話あるでしよう。
  1721. 富田正典

    富田證人 私がその事件をあれしたのは、去年の暮れであります。宮崎檢事が言うのは二十二年……。
  1722. 花村四郎

    花村委員長 宮崎檢事はやつておりませんよ。宮崎檢事は要するに後藤つぎの宅に住んでおつて、そうして後藤つぎの宅で鈴木を呼び出して、後藤がそれを調書にしなければならぬという話に立会つてつた。これはやはりこういう魂胆をしたその発頭人なんですよ。間違えてはいけませんよ。被告人が前に宮崎檢事が調べたという話をすれば、それであなたは前後を信じて、そうして前任者は宮崎檢事だと、こう思われるのですか。
  1723. 富田正典

    富田證人 そう思つております。
  1724. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、主任檢事をきめるのに上司から言われないのですか。あなたは檢察廳内において、今までの主任檢事はだれであつて、その次はだれに引継ぐとかいうので、事務の引継ぎもやりましようし、事件についても上司から指図があるのではないですか。——それではあなたのところに書類がまわつて行つたというのは、それはどこからどうまわつて行つたんですか。
  1725. 富田正典

    富田證人 書類は全然まわつて來ておりません。
  1726. 花村四郎

    花村委員長 それではその調べろというのはどういう関係から調べろということに至つたんですか。
  1727. 富田正典

    富田證人 それは申し上げます。十二月になりまして、前に油の事件でもみ消しが行われておるという話がありまして、各檢事とも油の事件で手持ちはないかというので、手持ちを調べておつたんです。しかしその油の事件がないのでわからなかつたのですが、そのときちようど望月事務官が、実は檢事さん、こういうことを聞いたんだが、明治商会事件についてそういつた金が動いておるのだ。それはけしからぬ話だというので、私の手持ち記録を調べましたところが、ちようど宇田川事務官のところに記録がございましたので、さつそく檢事正のところに参りまして、この前もみ消しがあつたというのは、私の手持ち事件のようであります。だから一應調べてみますからということを申し上げて調べにかかつたのであります。
  1728. 花村四郎

    花村委員長 それで調べにかかつたとき、被告が前に宮崎檢事に調べられたということをあなたはお聞きになつたのですね。
  1729. 富田正典

    富田證人 はい。
  1730. 花村四郎

    花村委員長 しからばその宮崎檢事にいかなる方法で調べられて、調べた記録はどうなつておるかということをすぐにお問合せになりましたか。
  1731. 富田正典

    富田證人 問合せません。
  1732. 花村四郎

    花村委員長 どうして問合せませんか、そんなばかなことはないではありませんか。でたらめを言つてはいけません。
  1733. 富田正典

    富田證人 いや、それは事実であります。
  1734. 花村四郎

    花村委員長 でたらめを言つちやいけませんよ。言うのはかまいませんが、制裁がありますからね。それはつじつまが合わないではないですか。
  1735. 富田正典

    富田證人 宮崎檢事が前に調べたということがでたらめだとおつしやるのですか。
  1736. 花村四郎

    花村委員長 あなたは宮崎檢事が前に調べておつたと言われるから、それでは前に調べておつて、その事件を引継ぐ場合には、その引継ぐ場合の方法が檢事局では手続がちやんとあるのではないですか。
  1737. 富田正典

    富田證人 調べたと申す言葉に誤解がありますが、ともかくもその事件宮崎檢事が一應干與して、金をやりとりしたことに宮崎檢事がタツチして、その事件が示談になつているというふうに……。
  1738. 花村四郎

    花村委員長 そういう意味ならわかります。あなたは取調べたと、こう言われるから……。
  1739. 富田正典

    富田證人 捜査の意味でやられたか、そういうふうにともかくもタツチしたという意味で申し上げたのです。
  1740. 花村四郎

    花村委員長 それならわかりました。タツチしておることは事実なんだから、それはそれでいいんです。そこでタツチして借用証書にしたということなんですが、それはあとでつくつたことなんで、眞相は借用名義でないことはきわめて明瞭なのです。ことにあなたが岩山を調べた結果によつて岩山の言によれば、借用名義でないことは火を見るより明らかなんであるから、從つてこういう警察檢察廳のもみ消し運動をやるというような名目のもとに、しかも莫大なる十万円という金をとつた。この事件に対して、あなたがそこでただ調べて、調書をつくらず、また身柄も收監せずにそのまま帰したというのは、これはどうも理解ができぬじやないか、こういうのです。しかしあなたはそれでどこまでもいいと言われるなら、それでいいですが、そういうことは少くとも檢察廳において、おそらくこの種の事件としては扱つておらぬと私は信じますが、どうですか。
  1741. 富田正典

    富田證人 ともかく前に先輩の檢事がタツチして、一應示談になつているということのために、あるいは今おつしやるような措置をとるべきだつたのが、軽卒に処理したということになるかもわかりません。
  1742. 花村四郎

    花村委員長 それからその事件はどうなりました。あなたが手をつけずにほつておいたわけですね。
  1743. 富田正典

    富田證人 いわゆる金の方の問題でありますか。
  1744. 花村四郎

    花村委員長 いや、今の鈴木茂雄に対する事件は、示談ができておるから、もうこれでいいというので、調べる必要なしと認めたのであるか、なお調べる必要があるのであるけれども、ほつておいたというのですか、どうですか。
  1745. 富田正典

    富田證人 なおさらに警察関係の方も、ともかくタバコやくだものなどを持つて行つたと申しておりますから、大体本人が生活費にいくら使つたかもわかぬし、いくらまいておるのかもわからぬ。そういう点から、さらに警察の方面から調べて行くつもりだつたのです。
  1746. 花村四郎

    花村委員長 それは調べなかつたのですか。
  1747. 富田正典

    富田證人 それは何か正式に呼び出したのではございませんが、ほかの事件の打合せのときに、平林主任が來たときに、こういうことを言つておるのだがどうかと言つたら、いや私は知らないと申しておりました。そこでほかの警察官も呼ぼうと思つておりますうちに、当時横浜ドツクに進駐軍の工事命令に違反する勅令三一一号違反の事件が起りまして、このためにGHQに呼ばれたり、横浜軍政部に呼ばれたり、東京の高檢に行つたりして、十二月の二十五日ごろまでの十日間というものは、それにほとんど忙殺されたのであります。そこでそのままその事件をその後捜査を進展せしめずに今日に至つたのであります。
  1748. 花村四郎

    花村委員長 そうして二十四年の三月以降は、香取檢事吉積檢事が担当してやつておられるそうですね。
  1749. 富田正典

    富田證人 そういうふうに聞いております。
  1750. 花村四郎

    花村委員長 その進行状態並びに結論は御存じありませんか。
  1751. 富田正典

    富田證人 聞いておりません。
  1752. 花村四郎

    花村委員長 それであなたは後藤つぎというのを御承知ですね。
  1753. 富田正典

    富田證人 知つております。
  1754. 花村四郎

    花村委員長 御懇意のようですね。
  1755. 富田正典

    富田證人 近所におりまして久しく交際しております。
  1756. 花村四郎

    花村委員長 それではちよちよい出入りもしておられるわけですね。
  1757. 富田正典

    富田證人 一週間に一度ないし二度、ふろを子供や家内などと一緒にもらいに行つております。
  1758. 花村四郎

    花村委員長 それから後藤つぎというのは、檢察廳の方へもたびたび見えるそうですね。
  1759. 富田正典

    富田證人 これは市島檢事正の代になつてからは、全然なかつたと思います。行政監査のときに注意されてから、全然足を踏み入れておりません。
  1760. 花村四郎

    花村委員長 後藤つぎというのは相当に有名で、横浜の女檢事正というあだ名もとつておるくらいだそうですが、事件のもらい下げだとか、身柄の引受けだとか、あるいは軽く求刑してもらうとか、そういう運動をなかなか盛んにやるという風評があるのですが、どうですか。
  1761. 富田正典

    富田證人 檢事に対しては、そういう運動を私はしたということは全然聞いておりません。ただ非常に困つた者といいますか、貧乏な犯罪者、家がかわいそうで、どろぼうでぶち込まれる、そういつた者に対しては、保釈金など自分で立てかえてやる、罰金の拂えない者はわずかな罰金なら立てかえてやる、そういうようなことをしておつたことは聞いております。
  1762. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、あなたは何か後藤つぎに頼まれたことはないのですね。
  1763. 富田正典

    富田證人 一度もございません。それでますます安心してつき合つてつたのであります。
  1764. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何かありますか。
  1765. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたが今住んでいられる家は、もと後藤つぎが住んでおつた家じやないですか。
  1766. 富田正典

    富田證人 そうであります。
  1767. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎが家を新築して出るについて、あなたに讓り渡したわけですね。
  1768. 富田正典

    富田證人 頼んで大家さんに交渉してもらつて、入るに至つたわけであります。
  1769. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎは、つたのやという料理屋だか待合だかの経営者か出資者になつておりますね。
  1770. 富田正典

    富田證人 はあ。
  1771. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはそこへ行つて見られたことはありますか。
  1772. 富田正典

    富田證人 一度あります。
  1773. 猪俣浩三

    猪俣委員 一回ですか。
  1774. 富田正典

    富田證人 一回であります。
  1775. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはどういう場合ですか。
  1776. 富田正典

    富田證人 昭和二十二年の秋であつたと思いますが、今東京地檢にいる鈴木敏雄檢事の送別会のときに、適当な場所がございませんでしたので、酒、料理を持ち寄りまして、そこの部屋を借りてやつたことはあります。
  1777. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎの自宅で檢事さんたちが送別会などやつたようなことはありませんか。
  1778. 富田正典

    富田證人 送別会は存じませんが、慰労会をやつたことはございます。
  1779. 猪俣浩三

    猪俣委員 何回くらいやりましたか。
  1780. 富田正典

    富田證人 昭和二十二年の秋でしたが、忘年会でしたか、事務官の慰労でしたか、一度あります。
  1781. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤つぎの家で一度ですか。
  1782. 富田正典

    富田證人 はあ、そうです。
  1783. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう会食をしたのは一度ですか。
  1784. 富田正典

    富田證人 一度だつたと思います。
  1785. 猪俣浩三

    猪俣委員 一度きりありませんか。
  1786. 富田正典

    富田證人 二十二年には一度だつたと思います。
  1787. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは二十二年から横浜におられたのですね。
  1788. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1789. 猪俣浩三

    猪俣委員 二十三年は。
  1790. 富田正典

    富田證人 二十三年は、私は正月などに行つて、お正月の酒を呼ばれたことなどありますが、大勢で出かけたということは……。
  1791. 猪俣浩三

    猪俣委員 二人でも三人でも、そこで飲食したことはありませんか。
  1792. 富田正典

    富田證人 晩の御飯くらいをごちそうになつたことはございます。
  1793. 猪俣浩三

    猪俣委員 何回くらいありますか。
  1794. 富田正典

    富田證人 二、三回あるかと思います。
  1795. 猪俣浩三

    猪俣委員 昭和二十三年に二、三回ですか。
  1796. 富田正典

    富田證人 二十二、二十三年で、そういつたようなことが三、四回あつたかと思います。
  1797. 猪俣浩三

    猪俣委員 なぜこれをお聞きするかというと、非常に評判なんだ。あなた方が後藤つぎのところでどんちやん騒ぎをやつているというのは、実際見たり聞いたりしている人がたくさんあるので、それでお尋ねするのですが、そうするとあなたのおつしやることは、二十三年は三、四回ですか。
  1798. 富田正典

    富田證人 私が一緒に居合せておりましたのは、その程度と思つております。
  1799. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとかわりばんこに行つてつてつたわけですね。
  1800. 富田正典

    富田證人 それは私がおらないときにも、ほかの人が遊びに行つたりしたことはあると思います。
  1801. 猪俣浩三

    猪俣委員 それだから近所の人が見たら、しよつちゆうやつてつたように……。
  1802. 富田正典

    富田證人 そういうこともあると思います。ことに私は一週間に一度とか二度ふろに呼ばれて、あとお茶を飲んだりして帰つて來ますから、絶えず出入りしているように見えたと思います。
  1803. 猪俣浩三

    猪俣委員 明治商会事件について、この違反は賣りの違反と買いの違反を入れると百万円近い。取引額が百六、七十万円になつており、それに対して会社に十五万円、岩山に三万円というのは軽くはありませんか。
  1804. 富田正典

    富田證人 私としては相当な求刑と思います。と申しますのは、賣りと買いでは五十万ずつの超過、こういうことになりますと、合計百万だ、それに対し少くとも百万の二倍ないし三倍というと、二百万ないし三百万とらなければならぬじやないか、こう考えられるのじやないかと思いますが、大体もし買う場合にやみがなくて、マル公以下で買つて、賣る場合にマル公超過があつたというと、非常に悪質なやみかと存じます。それは安く買つておきながら高く賣るということになります。ところが当時の情勢といたしまして、高く買わないと、どうしても物が入らない。それにわずかのマージンをかけて賣るとすれば、賣りの五十万円の超過、買いの五十万円の超過を足して百万の求刑をするということは、これは大体われわれ経済警察をやつておる者はやつておらないのであります。だから問題は賣りの五十万円の超過を基準にしてやるべきか、その取引の利益を基準にしてやるべきかという問題になるだろうと思います。
  1805. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは去年の八月、檢事の合同会議があつて、その基準について相談したでしよう。どういう相談をしたのですか。
  1806. 富田正典

    富田證人 それは超過額の二倍ないし三倍、軽く行く場合でも超過額以下に下ることを避けたいという……。
  1807. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、あなたの求刑はその以後の話ですね。
  1808. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1809. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうしてその標準でやらぬのですか。
  1810. 富田正典

    富田證人 それはわれわれ現場といたしましては、八月以前の犯罪につきましては、その当時同じような事件で処理されておるのが、利益額標準主義で処理されておる。ところが処理の時期がこちらの怠慢と申しますか、忙しさと申しますか、こちら側の事由だけで処理が遅れたために、著しく権衡を失するということになりますと、かえつてこれは苛察のうらみを招きますので、やはり八月以前の受理事件については、八月以前に処理をされたと同じ程度の標準でやらなければならない、こういうぐあいに、これは私のみならずみんな考えてやつてつたと思います。
  1811. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは檢事総長の通牒を見ると、この通牒入手以後求刑する場合には、とにかく超過額の三倍にしろという通牒が來ておる。それに対して皆さん相談した。しかし今言つたように、はなはだ自分たちの調べが遅かつたために苛酷になるということも一つの考え方だろうと思うが、それにしても利益説の標準にしても安いのではありませんか。それならばこういう通牒が來て、皆さんが会合が済んだあとのことで、だからほんとうは超過額の三倍もやつてもいいのだけれども、これは前に起つた事件ということで情状酌量した。その点わかりますが、それにしても酌量のしつぷりがあまりやり過ぎはしないか。
  1812. 富田正典

    富田證人 二倍半といいますれば大体……。
  1813. 猪俣浩三

    猪俣委員 この通牒が來たあとの話だから、そういう事情ならば五倍くらいやらなければならぬじやないか。ほんとうは三倍やつてもいいわけなんだ。それを情状酌量して二倍半というのだから、しかもそれを一方の賣りの違反だけにとどめて、利益は二倍半ということは、それ以後にやつた人は皆超過額の三倍以上とられておる。ちよつと情状酌量し過ぎはしないか。
  1814. 富田正典

    富田證人 私としては、あの事件の求刑については相当だと思つております。もう一つはこういう事情がほかにございました。それは一・四半期切符の発券がずれて、実際上においては統制がめちやくちやになつたということも大きな原因であります。もう一つ岩山に、名前は記憶しませんが一人店員がおりまして、それが相当さばを呼んで、実際上の利益として上つているものより、使い込みをやつておるという事実があつたのであります。これはその処理に追われているために、一々そこまで搜査はいたしませんでしたけれども、東洋のパブコツク・カンパニー、東洋機関とか申します会社から出ておりますものが、東洋機関からやみで出たようになつてつたのですが、東洋機関を呼んで調べたところが、向うの証憑書類によりますと、それはやみになつておりません。そういうぐあいにつけかけなどやつて、多少かせぎをやつていた。從つて岩山に入つた利益も、実際の表に現われたより少くなつておるというような事情もありますし、それから統制の失敗、それから從來の基準で行けば二倍ないし三倍、じやあまあ二倍半くらいでよかろうというので、私としては全然これについて手かげんを加えておるつもりはございません。
  1815. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお一つお聞きしますが、この事件は送局後一年もほつたらかしだ。これはあなたどう思いますか。ほかの檢事局にざらにありますか。
  1816. 富田正典

    富田證人 一年以上の未裁の事件のものは……。
  1817. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは皆あなたの関係だ。花園事件つてまだ未処理でしよう。これに対してもあなたは関係しておる。
  1818. 富田正典

    富田證人 花園は私が受けまして、その事件がすぐ移送されてしまつたのです。
  1819. 猪俣浩三

    猪俣委員 花園事件についてお聞きしますが、壽警察署の中に横浜市の自治体警察がある。搜査二課、あそこの中沢という経済主任がいますね。
  1820. 富田正典

    富田證人 おりました。
  1821. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはあなたの指揮を受けて、花園事件を処理したはずですね。
  1822. 富田正典

    富田證人 私は阿部巡査を使いました。
  1823. 猪俣浩三

    猪俣委員 阿部巡査を通じたのでしようが、あなたは私どもが花園事件についてどことどこに横流しがあるかと言うたときに、横浜の交通局にある。その以外にまだ官廳にあるのではないかと幾ら聞いても、否認して絶対にない、こういうことを言つていましたが、何かあなた方の間でも打合せしたのですか。
  1824. 富田正典

    富田證人 いいえ、私はそのときにはこちらの法務廳の方に参つておりましたし、全然そういつた連絡……。
  1825. 猪俣浩三

    猪俣委員 いや最初搜査の指揮をしていた時分に、あなたがやつてつた時分に、数官廳出て來たでしよう。
  1826. 富田正典

    富田證人 出て來ました。
  1827. 猪俣浩三

    猪俣委員 出て來た当時に中沢なんかと打合せしたのじやありませんか。
  1828. 富田正典

    富田證人 それは阿部君に言いました。この事件は、ともかく新聞記者がもしかぎつけて來ても、一應伏せておいてくれということは申してあります。
  1829. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうして阿部には横浜の交通局だけで、あとは檢察廳でやるからと言つて、搜査を打切らしたそうですね。
  1830. 富田正典

    富田證人 ともかく交通局だけで、あとはやめろと言つたのではありません。交通局はすでにやつてつたのであります。一番最初交通局に運んで行つて、途中で事件が上つておりますから、それで交通局だけで調べておつた。その状態でこつちに引継げ、すなわち地檢や警視廳などは結局調べない状態のままこちらへ引継いでくれと申したわけであります。
  1831. 猪俣浩三

    猪俣委員 それだから阿部は中止したわけですね。
  1832. 富田正典

    富田證人 そういうわけです。
  1833. 猪俣浩三

    猪俣委員 その後あなたの方で引取つて警視廳や檢察廳の方は調べましたか。
  1834. 富田正典

    富田證人 調べようと思つておりますうちに、先ほど申し上げましたように、すぐ記録が見えなくなつたのであります。
  1835. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこがぼくらに言わせると非常に奇々怪々なんだ。それがあなたと村山経済部長ですか、その時分に名古屋へやつたという人がある。
  1836. 富田正典

    富田證人 それは全然さようなことはありません。
  1837. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではなはだ奇怪で、その後今になつてまだ未処理という形なんです。どうもそれにはあなたがやはり最初関係しておられたらしい。どうもすつきりしないですね。
  1838. 富田正典

    富田證人 それは大体高檢で今搜査中のように聞いております。從いまして近く高檢の方から、何かその事件の処理について報告か何かの発表があると思います。まつたくこれは私がマラリアで休んでおります間に、記録を整理した事務官が、ただ被疑者の所在地が岡崎だというので移送してしまつた。ところが私が出て來まして、記録が見つからないので一生懸命探したのであります。内々探したものですから、これは事務官も檢事も皆知つております。ひよつとしたら移送したのじやないかというので、原簿を調べましたところが、花園事件について調べたところがいくら探してもない、どうしたんだろうというので、その後忙しさにまぎれてそのままになつておりましたところが、秋ごろですが、檢事正会同か何かありましたときに、おれのところにこんな変な事件が來ておるぞ、困つた事件を送つてくれたというので、初めて名古屋に行つたということがわかりました。搜査も十分してないから、こちらに送つてくれと言つたわけであります。
  1839. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはうそだ、あなたはそう聞いておるのですか。
  1840. 富田正典

    富田證人 そう聞いております。
  1841. 猪俣浩三

    猪俣委員 うそですよ。法務廳から無電を打つて、岡崎から取寄せた……。
  1842. 富田正典

    富田證人 無電で取寄せたのであります。
  1843. 猪俣浩三

    猪俣委員 だから通しで岡崎からこつちへ送つて來たのじやないんですよ。
  1844. 富田正典

    富田證人 いや直通無電が当時横浜からございませんから、一應高檢から向うに送ることになるんです。電信の関係で……。
  1845. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢事正同志で話をしてきめたんでしよう。
  1846. 富田正典

    富田證人 いやそのときには送り返してくれというようなことは、きまつておらなかつたのであります。こちらに帰つて來檢事正が、あの事件が名古屋に行つておるそうじやないか、それは今までないないと思つて探しておつたのが、さては名古屋にあつたのか、そんな事件を向うにやつては御迷惑だし、こちらとしても東京の買受者側も調べなければならぬから、至急取寄せてもらおうということで、電信を打つて取寄せたわけであります。
  1847. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 時間がないようですから、簡單にお尋ねいたしますが、さつきのお答えの中で、花園事件で阿部巡査が岡崎に調べに行つた。その結果帰つてからの報告は交通局の問題のみだつた。こういう報告だつたようにお答えでありましたが、そうでありますか。
  1848. 富田正典

    富田證人 一番最初記録が來ましたとき、もう地檢から警視廳その他在京二、三官廳全部の証拠書類が初めからあつたのでありますが、買つたというそれ以外にやつていないか、それを調べて來いと言つたのです。
  1849. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それ以外にですか。
  1850. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1851. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 官廳の分はあつたのですか。
  1852. 富田正典

    富田證人 四万数千ヤールの違反はわかつております。記録上もはつきりしております。
  1853. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 ところが今委員長からも、猪俣さんからもお尋ねがあつたのですが、その横浜の交通局の問題のみを取調べて、あとは取調べをしなかつたのはどう答えられましたか。
  1854. 富田正典

    富田證人 それはまだ答弁しておりません。これは横浜の市警察が警視廳または檢察廳の職組というものを調べるのは、非常に調べがやりにくいということ。それから檢察の常道と申しますか、警察が調べられる方の身分とか地位というものを考慮してやらなければならない。たとえば檢察事務官の非行があつた場合は事務官にまかせず、檢事みずからがやるということで、これはやはり檢察廳で取上げて地檢や警視廳を調べる方がほんとうであるということが一つの理由、もう一つは法規的にいろいろ複雜な問題がありまして、ボロについての統制がはつきりしていないのです。それも研究しなければならぬ。委託加工の問題とからみまして、これがきわどいところで犯罪の成否というようなことにもからんで來る問題であります。そういうふうに法的にも複雜でありますし、また一方今の檢察の常道と申しますか、そういう点からもこちらでやつた方がよい。もう一つは事の眞相をはつきり確かめるために、必要以上に新聞でたたかせたくなかつたということももちろんあります。
  1855. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それからその事件を切離してから、どういうふうに進行いたしましたか。
  1856. 富田正典

    富田證人 それで私東京に参りまして、地檢の一室を借りて搜査をやろうと思つて、記録箱に入れておきました。
  1857. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 東京の地檢ですか。
  1858. 富田正典

    富田證人 東京の地檢に出張して調べるつもりでありました。横浜に呼ばずに、搜査の祕密を保つためにそういう方法をとろうと思いました。
  1859. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 決意しただけですね。
  1860. 富田正典

    富田證人 ところが受理が六月初旬でありました。それから私が間もなく休みまして、それはすぐ送られてしまつたのであります。
  1861. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そこはさつき答えましたね。そこであなたは、この問題が起ると東京の地檢に來て、堀檢事正と打合せをなさつたことはありませんか。
  1862. 富田正典

    富田證人 いろいろ事情を聞きました。
  1863. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 事情を聞いたのですか、打合せたのですか。
  1864. 富田正典

    富田證人 打合せという言葉は語弊があるかと思うのでありますが、一應この事件について、こういう事件がある、あなたは知つておられるか——というのは、これは職組の事件になつておりますが、檢事関係しておりはしないかというので、監督上の立場を聞いたのです。
  1865. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 堀さんはどう言つたのですか。
  1866. 富田正典

    富田證人 堀さんは全然知らなかつたのであります。職組がやつたのです。
  1867. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 知らなかつたが、取調べてくれたのですか。
  1868. 富田正典

    富田證人 それで地檢自体としては、地檢の職組がやつておる以上は、地檢が調べるわけに行かない。君が手がすいたら來て、こつちの一室を貸してやるから調べてくれと言つておりました。
  1869. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それで堀さんの言うことはわかつた。それから岡崎の名古屋地方檢察廳支部、ここで実はこの事件について被疑者関係取調べ最中だ、こういうことは知りませんでしたか。
  1870. 富田正典

    富田證人 全然知りませんでした。
  1871. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 知らずに無電を打つたのですね。
  1872. 富田正典

    富田證人 そういう話を聞きまして、これは申訳ないことをした。私のミスとは申しながら、とんだことをしたと思つております。
  1873. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 岡崎ではふしぎがつておる。だからこの事件は逆に疑惑が疑惑を生んだ。ほうつてあるならばよいが、取調べ最中に、しかも無電がかかつて來て記録を返せという。だからとられた方も疑問がありますけれども、そこにこの事件が疑惑を生んだ原因があると思うから、これはしつかり弁明しておく必要がある。はつきり内容を明らかにしておく必要がある。  最後ちよつとお聞きしておきますが、あなたは今法務廳にいらつしやるが、何をなさつておりますか。
  1874. 富田正典

    富田證人 経理を担当しております。
  1875. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 どうして法務廳の方に轉勤なさつたのですか。檢事をやめて……。
  1876. 富田正典

    富田證人 別に——大体横浜で二年にもなりますし、大体あすこは一年か二年になりますれば、異動の時期になつております。そこで私は東京地檢に入る予定になつておりましたが、しかしながらちようど私の同期がやはり会計におりまして、ぜひ地檢に入る前に、一、二年会計で一緒に仕事をしないかという話がありまして、結局地檢にきまつてつたものを……。
  1877. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 みずから進んで法務廳に入つたのですか。別に市島檢事正から言われて入つたわけではないのですね。
  1878. 富田正典

    富田證人 そうです。
  1879. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 市島さんから言われて入つたのですか。
  1880. 富田正典

    富田證人 そうではありません。上の方から話があつたのです。
  1881. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 最後にお聞きしたいのですが、これは実にふしぎなのですが、あなたの担当した事件が主として横浜で問題になつておる。これはどうもあなたにとつては氣の毒な結果ですが、あなたの担当しておる事件が主として問題になつておる。これはどう思いますか。
  1882. 富田正典

    富田證人 どうも運が悪いというか、偶然的な結果が競合しておると思います。
  1883. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 やはり自分にも取調べに対する熱意だとか、要するに責任感というようなものがなかつたと、こう思いませんか。
  1884. 富田正典

    富田證人 花園纖維についてはどうも……。
  1885. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 花園纖維といい、全部があなただ。しかも全部それが片づいてない。そうしたときに運が悪いというふうに片づけられるか。良心的の問題ですがね。自分の職務に対する熱意とか、責任とか、官吏としてのですね。その点は全然責任を感じないし、全然その点に対して考える余地がないというのですか。
  1886. 富田正典

    富田證人 花園纖維に関してはまつたく不可抗力によるものだと思つております。明治商会については、この調べの経過を、私忙しくなつたとは申しながら、檢事正、上司に報告して、指揮を受けるなり、何なりすればよかつたのでありますが、忙しくてまぎれてしなかつたのは、申訳がなかつたと思います。
  1887. 梨木作次郎

    ○梨木委員 住太楼というお菓子屋さん、ここで菓子のやみ事件に関連して、菓子などを押收した事実は御存じありませんか。
  1888. 富田正典

    富田證人 聞いております。
  1889. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その金額は九十万円ないし百万円くらいなものを差押えて押收しておる……。
  1890. 富田正典

    富田證人 そこまでは存じません。
  1891. 梨木作次郎

    ○梨木委員 相当の金額に上る菓子を……。
  1892. 富田正典

    富田證人 相当な菓子を押えられたという話は聞きました。
  1893. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この押收を受けたので、この住太楼の関係の人が後藤つぎさんのところへもみ消しの頼みに行つてつた際に、あなたが後藤さんのところへ來合せておつて、そうしてあなたに一つよろしく頼むということを頼んだ人があるというのですが、こういう事実はどうですか。
  1894. 富田正典

    富田證人 それは私は記憶がはつきりしないのでありますが、ただ後藤さんの家には電話を借りに行つたり、ふうに行つたりしますから、その際に後藤さんと話しておるところに私が入つて行つたかどうか、そのときに向うで会つておるかどうかしりませんが、直接住太楼の事件をどうしてくれということは、私依頼を受けた覚えはございません。
  1895. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今横浜でも、戰災地はどこでも家が非常に拂底しておつて、新しく家を借りるということは非常に困難な状態でありますことは御承知でしようね。後藤つぎさんの紹介で、後藤つぎさんが元入つておられた家にあなたが入られたようですが、何か権利でも拂つておられましたか。
  1896. 富田正典

    富田證人 全然拂つておりません。
  1897. 梨木作次郎

    ○梨木委員 家賃は。
  1898. 富田正典

    富田證人 四百円拂つております。
  1899. 梨木作次郎

    ○梨木委員 やはり後藤さんの紹介で、普通ならば権利金のつく家を権利金なしで入ることができたというのですね。
  1900. 富田正典

    富田證人 それは大家さんの性格を知つていただかなければならないと思うのですが、田中卓二という方で、いわゆる日本における潜水器具の元祖と言われている方が大屋さんであります。一時は代議士にも立候補しようかといううわさにも上つたような、非常に太つ腹のさつぱりした方でありまして、檢事という立場もよく理解してくれて、権利金なんていう問題は全然起らなかつた
  1901. 梨木作次郎

    ○梨木委員 あなたが檢事だというと、檢事だという立場を了解して貸してくれたのですね。
  1902. 富田正典

    富田證人 やみの権利金なんかは出せるはずがありませんし……。
  1903. 花村四郎

    花村委員長 ほかにありませんか——済みました。御苦労さまでした。  証人に申し上げます。本日は御苦労さまでした。本調査は御承知のように憲法第六十二條に基く國政調査として行うものでありまして、横浜地方檢察廳職員にはたして世に宣傳せられるように綱紀紊乱があつたかどうか、もしあつたとすればその原因は何であるか、またその行政上の責任はどこにあるかを調査し、もつて取締り官憲のこの種不詳事件の発生を未然に防止し、檢察の威信保持に資せんとするものであります。從いまして職員の犯罪を捜査摘発することを、その主たる目的とするものでないことをあらかじめお断りしておきます。事柄は檢察権行使明朗化民主化ないしは治安維持の根本にかかわる問題でありますから、証人の自由な良心的御協力を望んでやまない次第であります。  それではこれより証人証言を求むることにいたします。証言を求める前に、各証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係ありたる者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者、またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて默祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由なくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。では法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。     〔吉積証人宣誓
  1904. 花村四郎

    花村委員長 それではお手元にお配りしてある宣誓書の朗読をお願いいたします。御起立を願います。     〔吉積証人宣誓書署名捺印
  1905. 花村四郎

    花村委員長 御氏名は。
  1906. 吉積春雄

    吉積證人 吉積春雄でございます。
  1907. 花村四郎

  1908. 吉積春雄

    吉積證人 四十三歳でございます。
  1909. 花村四郎

    花村委員長 職業は。
  1910. 吉積春雄

    吉積證人 檢事でございます。
  1911. 花村四郎

    花村委員長 現住所は。
  1912. 吉積春雄

    吉積證人 横浜市港北区篠原町榎本一八四四、齋田方であります。
  1913. 花村四郎

    花村委員長 横浜檢察廳にいつから勤務せられておりますか。
  1914. 吉積春雄

    吉積證人 日ははつきりわかりませんが、辞令の面では本年の一月七日だと思つております。
  1915. 花村四郎

    花村委員長 明治商会で経済違反ができましたことを御承知でしよう。
  1916. 吉積春雄

    吉積證人 後になりましてわかりました。
  1917. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄というのを御承知になりますか。
  1918. 吉積春雄

    吉積證人 それも後にわかりました。
  1919. 花村四郎

    花村委員長 そうすると、これらの事件について御関係をなすつたことはありませんか。
  1920. 吉積春雄

    吉積證人 古い事件でありますから、直接捜査には関係しておりません。後にいわゆる地檢問題ができましてから、捜査の一端をお手傳いいたしました。
  1921. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄というのが、つたのやで関係者と飲食をしたというような事実はお知りになりませんか。
  1922. 吉積春雄

    吉積證人 知つております。
  1923. 花村四郎

    花村委員長 それはどういう関係でしよう。
  1924. 吉積春雄

    吉積證人 私が調べました範囲内におきましては、いわゆるもみ消し的な発意から行われたように聞いております。
  1925. 花村四郎

    花村委員長 そこに集まつた関係者はどういう人であるか、御承知ありますか。
  1926. 吉積春雄

    吉積證人 それにつきまして、私の調べました限りにおきましては、記憶がわかれているようでございます。四人出たと言いますし——ちよつと待つてください。四人出た点には間違いなかつたと思います。それは岩山鈴木後藤平林、この四人だつたように記憶しております。
  1927. 花村四郎

    花村委員長 あなたはこの鈴木茂雄事件を、昭和二十四年三月以降香取檢事とともにお取調べになつておりますね。
  1928. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  1929. 花村四郎

    花村委員長 そのお取調べになつておりました内容、経過をお話できませんか。
  1930. 吉積春雄

    吉積證人 実はそれにつきまして、私は最初からしまいまでやつたわけではございません。この点ひとつ御了承願いたいと思います。私が調べの應援を命ぜられましたのが、おそらく三月二十日近かつたと思います。終りましたのは四月十日前後だろうと思います。その終りましたのも、この事件が片づいた、要するに事実調べが済んだという面において調べをやめたのじやなしに、他に緊急を要する事件がありましたものですから、全部を香取檢事の方へおまかせしてお願いして手を引きました。さような関係で、岩山は三回か四回くらい私自身は調べたように思つております。鈴木もおそらくその程度に調べております。岩山から鈴木に出た金は、総計におきまして十万五千円と記憶しております。その回数は、たしか昭和二十二年の七月中ごろと思いますが、同年九月の初めごろまでの間に数回にわたつて金が出ております。その合計が先ほど申し上げました十万五千円です。
  1931. 花村四郎

    花村委員長 あなたは後藤つぎさんを御承知ですか。
  1932. 吉積春雄

    吉積證人 まだ実は知らないのであります。
  1933. 花村四郎

    花村委員長 では從つてお宅へ行つたこともないわけですか。
  1934. 吉積春雄

    吉積證人 さようです。
  1935. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何か御質問がありませんか。
  1936. 猪俣浩三

    猪俣委員 この岩山鈴木渡した十万五千円の使途について、よくお調べになりましたか。
  1937. 吉積春雄

    吉積證人 調べました。
  1938. 猪俣浩三

    猪俣委員 どういう結果になつておりますか。
  1939. 吉積春雄

    吉積證人 はつきり記憶がありませんが、私が現在覚えておるところでは、概算約五万円が鈴木氏の細君の治療費関係に出ております。約三万円程度のものが、鈴木の当時出入りしておりました壽警察、おそらく聞きましたところでは、同人の仕事の円滑を期するというような意味におきまして、タバコが出ております。一万円は同樣趣旨におきましてくだもの、菓子類が出ております。また一万円はカフエー・ライオンにおける支拂い代金、残金の五千円はつたのやにおける支拂い、こういうふうに記憶しております。
  1940. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしますと、タバコ三万円を壽警察署へやつたというのですが、壽警察をお調べになりましたか。
  1941. 吉積春雄

    吉積證人 調べました。
  1942. 猪俣浩三

    猪俣委員 たしかにその通りですか。
  1943. 吉積春雄

    吉積證人 そこの点が署員に聞きましたところでは、鈴木からは署員全部に出しておるように聞いております。署員から聞きましたところでは、大体もらつておるようでございますけれども、それだけの量になるかどうかという点は、疑問があるように思います。
  1944. 猪俣浩三

    猪俣委員 今平林に聞きましたけれども、一服か二服はもらつたかしらぬがという程度です。三万円をタバコにするとたいへんなものです。
  1945. 吉積春雄

    吉積證人 この相当量鈴木自身も使用しております。個人用として……。
  1946. 猪俣浩三

    猪俣委員 五万円は鈴木使つたことは明らかだが、あとの五万円はあんまりはつきりしないのじやないですか。あなたはそういうことを部内のだれかに漏らしませんか。
  1947. 吉積春雄

    吉積證人 私としては部内の方に申し上げたということは、全然記憶にありません。
  1948. 猪俣浩三

    猪俣委員 五万円は鈴木使つたようだが、あとの五万五千円の行方がはつきりしないという意見じやなかつたのですか。
  1949. 吉積春雄

    吉積證人 それは思い出しました。たしかその事件調査の結果の中間報告的なものの発表がありましたときに、新聞記者に聞かれて、あるいは漏らしたかもしれません。要するに起訴するかいなかという点に関連して問われたとき、漏らしたかもしれません。
  1950. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた方の考えはどうなんですか。われわれが考えると、これは悪質な犯罪だと思う。ところが全然鈴木という者の身柄を拘束もせず、起訴もせず、一体長い間ほつておいて、今ごろ輿論がやかましくなつてから急に何か調べたような形、どうもちつとぼくら常識上判断がしかねるのだ、横浜地檢のやり方は。とにかく十万何千円という金でしよう。これをうやむやに何かしているような感じを受けるのですが、鈴木は外部の新聞記者なんかに、檢事がぼくをやるなんということはできない。そんなことはできない関係にあるというようなことを言つてつたということは、あなた聞きませんか。
  1951. 吉積春雄

    吉積證人 私は赴任早々でありまして、事情もよく知りませんし、そういうことを伺つたこともありません。
  1952. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この事件は現在どういうような段階にありますか。
  1953. 吉積春雄

    吉積證人 先ほど申し上げましたように、四月十日前後で、私の方は他の事件のために手を引いております。どうなつておりますか、私自身知つてません。
  1954. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたとしては、この事件をどういうふうに見ておりますか。
  1955. 吉積春雄

    吉積證人 御質問の趣旨ちよつとわかりませんが……。
  1956. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたとしては、この事件は起訴されるものと見ておりますか、このままで終るものと見ておりますか。
  1957. 吉積春雄

    吉積證人 現在の段階では、証拠が少し足りないというふうに考えております。
  1958. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 起訴されない事件と見ておるのですか。
  1959. 吉積春雄

    吉積證人 私の調べておつた当時においては……。
  1960. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたの調べはほとんど完了していると思いますか。
  1961. 吉積春雄

    吉積證人 と思いますけれども、五千円がまだ未結着のままで……。
  1962. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 まずほぼ完了しておる、あなたの見解では。結論としては起訴されないものと見ておるのですね。起訴されない事件と見ておるのですか。
  1963. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  1964. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 世の中の常識上そうとれないと思うのだが、もしあなたが私見的に、どうして起訴されないものと認めておるか、それが発表願えなければいいが、願えればひとつ発表してください。これは非常に世の中の疑惑を招いておりますから、発表できる程度に発表してください。
  1965. 吉積春雄

    吉積證人 私として考えられる点は贈賄の点、詐欺の点、詐欺の点も若干違つたかのごとく見ております。贈賄の点でありますが、これも請託がはつきり出ておりません。この二点で証明さえつきますれば別ですが、現在の段階では少しむりではないか、かように考えております。
  1966. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 岩山はどう言つておるのですか。
  1967. 吉積春雄

    吉積證人 とおつしやいますのは……。
  1968. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 被害者の岩山はどういうように見ておりますか。詐欺されておると見ておりますか。贈賄のために使つたと見ておりますか。檢事が調べるときは、御存じのように主として被害者を対象にいたしますね。
  1969. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  1970. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 被害者がどういうように言つているかは非常に重大だと思うのですが……。
  1971. 吉積春雄

    吉積證人 貸借のように言つております。
  1972. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 岩山は貸借したように言つておりますか。
  1973. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  1974. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それは檢事としてちよつと粗漏じやないかと思うのですが、岩山はきよう証人として出て來まして答えておるのですが、貸借したとは答えていないようです。むしろ鈴木にもみ消しのためと称して常に金をとられていた。まるで檢事さんの調べになつていないと思うのですが、岩山の言うところによると、警察の懇話会、新聞記者を押えるためということで一万五千円とつている。この事実だけで詐欺になります。岩山の答えをそのまま調書にとつても、あなたがここで鈴木を起訴できないというのは、檢事として非常に不見識きわまると思う。
  1975. 吉積春雄

    吉積證人 この点につきましては、上司の御決裁も得ております。
  1976. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 上司の決裁を得ていても、あなたが天下の檢事としてそんなことは弁解できないと思う。われわれ法務委員会のだれに聞いても、おそらく納得できないと思う。あなたが納得できても、ここに國政調査の目的があるのですから……。委員長、これ以上聞いてもだめです。
  1977. 花村四郎

    花村委員長 証人はこの事件を重大な事件だとごらんになりませんか。軽微な事件としてごらんになつておりますか。
  1978. 吉積春雄

    吉積證人 姿はなるほど軽微なように思いますけれども、かようなことが行われるということは、同じく檢察事務の一端に席を汚している以上、重大な事件だと思つております。
  1979. 花村四郎

    花村委員長 警察署や檢察廳名前使つて、もみ消し運動をやるというようなことに関係を持つた事件であるだけに、警察行政並びに檢察権の行使というものに対して、これは非常に不名誉なことであり、よほど重大な事件として取上げなければいかぬと思うのです。東京などでも、警察官だという名前使つて、何万円どころじやない、わずか何百円という金を詐欺しても、警察官という名前使つたことが悪いというので、どんどん起訴されているようなわけですから、そういう点から見れば、檢察廳と裁判所は、警察等と違つて、日本の司法権を守る意味において、まつたくきれいな、侵すべからざる神聖なものであると、何人も考えておるにもかかわらず、こういう事件を軽く扱うということはどうかと思うのですが、そういう点はどうでしようか。
  1980. 吉積春雄

    吉積證人 私自身もさように考えております。
  1981. 花村四郎

    花村委員長 どこまでも追究して、もし涜職問題がなければ詐欺罪で起訴するとかいうことで、この事件はつきりいずれかへ持つて行くということでなければ、警察檢察廳も、どこまで行つても世の疑惑を受けるというようなことになりはせんかとわれわれは心配しているのですが、その点はいかがですか。
  1982. 吉積春雄

    吉積證人 私自身は、この事件なるがゆえに特に処罰したいというようなことも考えておりませず、さりとて、この種の事件だからといつて、寛容な態度は決してとつたつもりはございません。
  1983. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたは本年の七月七日に就任なさつた言つておりますが、名前は言いませんが、私の友人も同じように横浜地檢に就任している。横浜地檢の粛正ということを目的にして私の友人が就任したところを見ると、あなたもそうした意味で就任なさつたのではないかと思いますが、そうした意味はないのですか。
  1984. 吉積春雄

    吉積證人 特にそういうことはないのだろうと私は思つております。
  1985. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 しかし少くともこの横浜地檢問題は、相当耳目を集めているということだけは、お知りになつて就任なさつたのでしようね。
  1986. 吉積春雄

    吉積證人 実はそこまで私は知らなかつたのです。
  1987. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 では就任なさつてから、横浜地檢問題が相当問題になつていることにお氣づきになつたのですね。
  1988. 吉積春雄

    吉積證人 氣づきましたが、間もなく土浦の方に長期の出張がありまして……。
  1989. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 長期の出張があつてもなくても、一日おればこれは相当問題になつているのだということがわかると思うのですが……。
  1990. 吉積春雄

    吉積證人 その点は私自身に直接に耳に入れてくれる人がなかつたのです。
  1991. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 しかしこうした問題で國会まで呼び出されておるのですから、横浜地檢問題というのが相当問題になつているということは、今ではお氣づきですね。
  1992. 吉積春雄

    吉積證人 調査の一端をお手傳いするときに、すでにその覚悟はついたのです。
  1993. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうしたらなおさらそういう覚悟のもとにこの事件はやらなければならぬという御決心はなかつたのですか。
  1994. 吉積春雄

    吉積證人 決心は持つておりましたが、私の捜査範囲が、結局香取部長の應援、さような観点にありましたから、しいて私としては……。
  1995. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうすると、この事件の起訴、不起訴は、一に香取檢事の意見が左右する、こういうことになるのですか。
  1996. 吉積春雄

    吉積證人 質的な点はなんでしようけれども、部長として私の上司として……。
  1997. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 上司として香取檢事が押えているわけですね。
  1998. 吉積春雄

    吉積證人 おります。
  1999. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうすると、あなたのさつきの言葉の中にあつた上司に報告してありますというのは、聞きようによつては非常に意味深重に聞えるのですが、上司への報告はどういうようになさるのですか。事実をそのまま報告したのですか。
  2000. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  2001. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 上司というと香取さんと檢事正ですか。
  2002. 吉積春雄

    吉積證人 香取部長です。
  2003. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 檢事正にはやつていないのですね。
  2004. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  2005. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 香取部長は何と言いましたか。返事はありませんでしたか。
  2006. 吉積春雄

    吉積證人 調べの都度連絡を兼ねて会つておりました。
  2007. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 あなたは就任が新しいのですから、追究するのはお氣の毒ですけれども、あなたとしても関係しております以上は、やはり明かにしてもらわなければならぬと思うのです。第一に、上司というのは香取檢事を指したものである。そうして上司の承諾を得ているというのは、香取檢事の承諾を得ているということになるのですね。
  2008. 吉積春雄

    吉積證人 さようでございます。
  2009. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうして自分としては、まあこの事件は起訴されないだろうというのは、個人的の意見でしたか。
  2010. 吉積春雄

    吉積證人 私の個人的見解です。
  2011. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 それは一應報告したのだから、部長と大いに通ずるところはありますね。私の質問はそのくらいにしておきます。
  2012. 花村四郎

    花村委員長 それではすみました。遅くまで御苦労でした。お帰りください。  ではその二人こちらに出てください。先ほど、岩山明正君が鈴木茂雄渡した十万五千円の金は、事件もみ消しの金として数回に渡したということであつたのですが、それは間違いありませんか。
  2013. 岩山明正

    岩山證人 ございません。
  2014. 花村四郎

    花村委員長 その金を渡すときに、鈴木茂雄君の方では金を借りるんだということを常に言い添えておつたというが、そういう事実はありますか。
  2015. 岩山明正

    岩山證人 借りて持つて行くという言葉は使つたかもわかりませんが、それは貸借の意味でなくて、ただ一時お預りして行くというように私はとりました。
  2016. 花村四郎

    花村委員長 鈴木茂雄君、どうですか。今そう言われたのだが、あなたのさつき言われたところと違うかどうですか。
  2017. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私としては先ほど申し上げた通り、言葉の上でそう申し上げたのであります。
  2018. 花村四郎

    花村委員長 今岩山君の言うところが違うのですか。
  2019. 鈴木茂雄

    鈴木證人 違いません。先ほど申し上げたように、その都度、必ずその都度と申し上げるとちよつと語弊がありますが、その都度お借りしておりますと、お借りするという言葉を使いました。実際のところによりますと、やはりお借りしておることになつております。
  2020. 花村四郎

    花村委員長 それは借りる意味じやないのでしよう。
  2021. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  2022. 花村四郎

    花村委員長 それでは先ほど借りる意味だと言うたことは間違いじやないですか。
  2023. 鈴木茂雄

    鈴木證人 自分の言葉不足であります。申訳ありません。
  2024. 花村四郎

    花村委員長 ほかに何かありますか。上村君。
  2025. 上村進

    ○上村委員 そうすると返す意思はひとつもなかつたわけですね。
  2026. 鈴木茂雄

    鈴木證人 いいえ、それは借用証になりましてから、お返しするために拂い込んでおります。
  2027. 上村進

    ○上村委員 初め持つて行くとき……。
  2028. 鈴木茂雄

    鈴木證人 初め持つて行くときは運動費として持つて参りました。
  2029. 上村進

    ○上村委員 返す意思はないのですね。
  2030. 鈴木茂雄

    鈴木證人 当時はそういう考えは持つておりません。
  2031. 猪俣浩三

    猪俣委員 最初後藤つぎに話をせられて、二万五千円の借用証書を持つて行きましたね。その次に、今度はまた六万五千円持つて行つたね。それは誰に言われて六万五千円持つて行つたのです。
  2032. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは先ほど申し上げました通り、後藤つぎさんのところへ行つて自分の、苦衷を話しましたところが、そうすべきであるというので、第一回目に二万五千円を持つて行きました。二回目に……。
  2033. 猪俣浩三

    猪俣委員 第一回目に五千円持つて行つた。その後後藤から岩山君のところへ電話がかかつたそうだね。幾ら持つて行つた言つたら、あなたは二万五千円、それだけしか持つて行かぬか、それじやまた私があときつく言うてやる、こういう電話がかかつた言つた
  2034. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はあ。
  2035. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると後藤から君の方に言うて行つたのじやないか。
  2036. 鈴木茂雄

    鈴木證人 二回目のときは、それは後藤さんにお聞きくださればわかりますけれども、二回目に私に電話がありまして、行つたところが、お前の使つただけじやない、全部のを書かなければいけないということを言われました。
  2037. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうだろう、だから後藤から言われたのだろう。
  2038. 鈴木茂雄

    鈴木證人 後藤さんから全部書けということを言われました。
  2039. 猪俣浩三

    猪俣委員 六万五千円持つて行つたときは……。
  2040. 鈴木茂雄

    鈴木證人 はあ。
  2041. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた最初二万五千円しか持つて行かなかつたのを、後藤の話で持つて行つたのだろう。
  2042. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは後藤さんにも申し上げましたのですが、自分の使用分だけかと言うたら、そうじやない、全部を書けというので……。
  2043. 花村四郎

    花村委員長 それでその鈴木君の持つて行つた証書は、岩山君の方で承知をして持つて行つたわけじやないのですね。
  2044. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは持つて参ります前に、私が岩山さんのところへ持つてつて後藤さんに岩山君がお貸ししたのだという話があつたので、後藤さんはなおさら早く証書を入れなければいかぬという話がありました。
  2045. 花村四郎

    花村委員長 それを承諾したのですか、岩山君どうです。
  2046. 岩山明正

    岩山證人 もう一ぺん、ちよつとわからないところがあつたのですが……。
  2047. 花村四郎

    花村委員長 それでは私の方から言いますが、その証書を入れて借用名儀にするということは、あなたが承諾なさつたわけですか。承諾なさつて証書受取つたのですか。
  2048. 岩山明正

    岩山證人 いたしました。しかしそのときの氣持は、承諾したような、承諾しないような、金を持つてつて今さら借用証にするとは何だ、まあしかしそう言うならそうした方がいいだろうから、というような氣持で、持つて來ればもらいましようというような氣持だつたのです。
  2049. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからあなたはさつき司法記者倶樂部。もう一つ何といつたか……。
  2050. 岩山明正

    岩山證人 檢察懇談会。
  2051. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢察懇談会に一万円、司法記者倶樂部に五千円やるからといつて、その金を持つて行つた。それを入れて十万五千円になるのか。
  2052. 岩山明正

    岩山證人 そうでございます。
  2053. 猪俣浩三

    猪俣委員 鈴木君、どうだね。
  2054. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は言つたか、言わないか、実際今記憶がないのでございます。
  2055. 猪俣浩三

    猪俣委員 いいかね君、記憶がないということと、言わぬということとは違うのだぞ。記憶がないのか。
  2056. 鈴木茂雄

    鈴木證人 記憶がないので、ここで申し上げられません。
  2057. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかし岩山君ははつきり言うておるが、記憶を呼び起さぬか。
  2058. 鈴木茂雄

    鈴木證人 この前もその点で言われましたが、どうしても自分として記憶を呼び起せなかつたのです。
  2059. 猪俣浩三

    猪俣委員 呼び起せない。そうか。それは岩山君、間違いないのですか。
  2060. 岩山明正

    岩山證人 私は自分うち封筒使つて書いたのですから、間違いありません。
  2061. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢察懇話会なんという名前を他から聞かなければ、君は知らないわけだね。
  2062. 岩山明正

    岩山證人 知らないのです。
  2063. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは一万円。
  2064. 岩山明正

    岩山證人 一万円です。
  2065. 猪俣浩三

  2066. 岩山明正

    岩山證人 はあ。司法記者倶樂部は、とにかく檢察廳に入つておる記者の倶樂部だということを聞きました。
  2067. 猪俣浩三

    猪俣委員 そしてその檢察懇話会では、どこへ旅行するから一万円と言うたかね。
  2068. 岩山明正

    岩山證人 それが箱根に旅行するから、後藤さんの家から出るから、後藤さんのところに届けておけば、使うだろうというような話がありました。
  2069. 猪俣浩三

    猪俣委員 これまで言うのに思い出さぬか。
  2070. 鈴木茂雄

    鈴木證人 わかりました。
  2071. 猪俣浩三

    猪俣委員 思い出したか。
  2072. 鈴木茂雄

    鈴木證人 それは檢事さんの何かおありになつたので、後藤さんの家から出かけるということを聞きましたので、それを私岩山氏に申し上げました。それでお金を預つて参りました。行つたときにはおりませんでした。
  2073. 猪俣浩三

    猪俣委員 後藤さんのところから檢事が、どこへ行くつて……。
  2074. 鈴木茂雄

    鈴木證人 どこですか、たしか箱根と聞きましたが、出かけられるという話がありましたので、それじやあというので、岩山氏に話しましたが、行つたときはちようど出かけた後で、そのままになつています。
  2075. 猪俣浩三

    猪俣委員 一万円やらなかつたわけですか。
  2076. 鈴木茂雄

    鈴木證人 やりません。
  2077. 猪俣浩三

    猪俣委員 檢察懇話会というものはたしかにあるのかね。
  2078. 鈴木茂雄

    鈴木證人 私は当時そういうふうに聞いておりました。
  2079. 猪俣浩三

    猪俣委員 そう言うて金をもろうたことは事実だね。
  2080. 鈴木茂雄

    鈴木證人 そうです。
  2081. 猪俣浩三

    猪俣委員 司法記者渡したかどうか。
  2082. 鈴木茂雄

    鈴木證人 司法記者にはたしか渡しません。
  2083. 花村四郎

    花村委員長 それではそれで済みました。おそくまで御苦労でしたお帰りください。  本問題に関する証人証言はこれにてすべて終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時四十六分散会