○千賀
委員 午前中に六・三制の
予算につきまして、詳細に
予算編成方針、その他の
説明を受けました。大体われわれも
文部省の企図しておられるところに共鳴をいたし
ます。われわれといたしましても、もちろん足らざるを各方面において深刻に体驗しつつあるので、ぜひとも
文部省の既定
方針を強力に推薦していただきまして、われわれもまたこれに協議することを惜しみません。大いに
予算獲得に清進をしていただきたいと思い
ます。
いま
一つ土倉議員の方からも若干御意見が出ており
ますが、今までむりをして、あるいは個人の手からお借りをしてまでも
校舎をつく
つてしまつたような
町村は、將來の教育の
補助がその方に行くか行かないかということについて相当疑問があるらしいのであり
まするが——よその縣は知りません、少くとも愛知縣におきましては
政府を信頼いたしまして、おれたちが先に何かをしてやれば、
政府は
あとで必ず見てくれるのだということに無形の信頼、無形の併用をつなぎまして、どの
町村もむりをしてや
つており
ます。これが一切先にやつたんだからお前たち金があつたはずだどい
つて顧みられぬということになり
ますると、將來つくり遅れたものを、金をや
つてつくらせてやるよりも、全体の結果といたしましては、
國民精神に及ぼすとこるあるいは
國民の政治に信頼するかいなかの度合いを深くするか、しからざるか、かような観点から考えてみ
ますると、むしろ今までつくつたものを放擲し
ますことに非常に影響が多くて得るところが少ないのであり
ます。愛知縣の例におきましては何としても今までつくつたもの、
政府の
補助を目当てにつくつたもの、それには報いてやらなければなりません。むしろつくり遅れたところを將來はやらないんだということを声明して、とうとうそれができなくな
つてしまう。その総合的な害惡よりも、やるからとい
つてつく
つてしまつたが金が來ない。この結果の害惡の方がはるかに
國民精神に及ぼすものは大きいことを私は確かに知
つており
ます。かような点で、すでに工事を完了したもの等に対しまして、絶対に冷酷な取扱いをしないという立場から、これは両々相ま
つて將來の御研究を願いたい、こういうことを切に希望をいたし
ます。
それから次には六・三制の問題とは全然別であり
ます史跡名勝天然記念物一覧表をいただいており
ますが、これについてひ
とつ伺
つておきたいことがござい
ます。それはこの史跡名勝天然記念物の指定物、あるいは指名場所を新たに増加することは、縣
議会等によ
つてやることと、あるいは縣に史跡名勝天然記念物の
委員会があり
ますが、その
委員会にのみよ
つてやり得るのか、中央の方で、あるいは國会等が何懸では幾つふやせとか、どういう種類のものをどこにふやせとかいうことの示唆を與えたならば、それがたやすくできるかできないかということであり
ます。なぜ私がこんな質問をするかというと、日本の漁業問題でござい
ますが、現在に日本の漁業水域というものは非常に戰前に比べて縮小されまして、支那海のほとんど全部もいけません、太平洋の大部分もいけません、北氷洋の方もだめにな
つており
ます。戰前の
何分の一というような、すこぶる貧弱な
面積にな
つておるのでござい
ます。これを連合國等に対しまして、あの手この手でふやしてもらいたいということを運動いたしましても、一向これが思うようにふやしてもらえない現情であり
ます。さればとい
つて、このままにわれわれの持
つている現在規定せられている水域の中で、いかに漁業に精を出しましても、その中に包蔵されている魚の量というものは限りがありまして、ただそこで濫獲をすれば魚かなくな
つてしまうということのみであり
ます。ほとんど漁業の方面は、その対象といたし
ます。水族、魚族の方面から、日本の漁業は崩壊しつつある現状であり
ます。これを打開いたし
ますのには、何とい
つても今さしとめられおり
ます水域を、連合國の理解を得まして漁業区に編入させてもらう、これよりほかに手がないのであり
ます。ところでここに一番大きな支障とな
つており
ますのは、日本の漁業はいわゆる原始掠奪漁業であ
つて、魚を目に当つたもの、網に入つたもの、およそ生きとし生けるものをすくいと
つてこれを利用することだけは日本の漁業の特徴でありまして、その人間が必要とする魚族を、またときに大いに保護してこれをあふれるほどふやしてやり、そのふえ過ぎるものを人間が利用して行こうという、いわゆる自然と人間との調和について、日本民族というものは一向に配慮をいたしておらない。この点が先進諸國からたいへん惡感情をも
つて迎えられておりまして、日本人の漁業水域をふやしてやることはいわゆる世界の天然資源の枯渇になり、またこれの荒廃に帰する以外の何ものでもない。ただこういうような考えを持たれておることが今一番大きな障害にな
つており
ます。そこで私は本
委員会にかわ
つて参り
まする前は、水産
委員会におりまして、このことを水産
委員会においても強く提唱をいたしたものでござい
まするが、法律上の
措置によりまして、日本の漁業にいわゆる幼魚、稚魚を殺戮するような漁業を禁止するとか、あるいは大幅に繁殖物等を指定してその区域の禁漁を指定するというようなことも、非常に必要であり
ますけれ
ども、ここまで病膏肓に入つた日本の漁業を根本的にに今申し上げたような取扱いをして面目を一新するということは、言うことはやすいのであり
まするが、実際問題といたしましては、何年の後に達成するか、十何年の後か、何十年の後か、ほとんどこれは難事中の難事に属するのであり
ます。そこで
一つの便法といたしまして私が常々考えており
ますることは、たとえば房州の鯛ノ浦におき
まする鯛の群棲地または伊勢の五十鈴川におき
まする——あれは宗教上の
関係であり
ますが、すべて一河川の完全禁漁によりまして、あゆその他はや等の有力な繁殖場にな
つておる、かようなもの、岐阜縣の一部にはうなぎの同様な名所もあり
ます。こういうようなものが今までは宗教上の目的によ
つてのみ若干ほほえましいいろいろな名勝が日本の中に残されており
まするけれど、これを特定の魚族の繁殖場というようなことで名勝天然記念物等にある区域を指定いたしまして、少くも法律的にこの操作完成して來るまでの暫定
措置といたしましても、日本中各水域に淡水といわず海水といわず相当に廣範囲に多数の各魚族の繁殖地等を保護することができ
まするならば、これは一石二鳥の効果をあげることになるのであり
ます。かような
意味から今中央におきまして史跡名勝天然記念物等を各
府縣に随時にふやしたいというような場合に、一体これがただちにできるものか、縣の
委員会を通じてのみできるものか、その点の御見解を承りたいと思うのであり
ます。