○若木
参議院議員 私はただいま御紹介にあずかりました若木であります。御希望によりまして、
参議院で
修正された点につきまして、御
説明いたしたいと存じます。まずこの
法案を
修正したところの基本態度について、
條文を参照しながらおもな点を申し上げたらはつきりすると思いますので、そういうふうにお話を申し上げたいと思います。
それでは基本態度について申し上げます。この法律は、
教育基本法の精神にのつとり、
社会教育に関する國及び地方公共
團体の任務を明らかにするところに目的があるのであります。そこで國及び地方公共
團体の任務を遂行するためには、次の諸点が考えられなければならぬと思うのであります。それに対しまして、
政府から提案された原案は、その点がきわめて不明確であり不備でありますので、これを
修正の要点といたしたのであります。
まず第一といたしましては、任務遂行に必要な物的並びに人的條件を整備するために、國費、地方費の負担を明らかにして、これを継続的に支出する予算的措置を講じなければならないことであります。ところが原案では立法の裏づけとなるところの予算措置を軽視しておる。すなわち國と地方公共
團体が同一の任務を持つように
規定しておりながら、経費の面につきましては、ほとんど地方にのみ負担させるようにな
つているのであります。これでは特に地方財政の逼迫しておる現状ではもちろんのこと、將來といえ
ども社会教育の実績をあげることは不可能と考えられるのであります。從いまして、これは國においても経費負担の責任を明らかにするように当然訂正されなければならない、こう考えたのであります。
第二点といたしましては、國及び地方公共
團体は、民間の
社会教育関係團体が自主的にかつ積極的に十分な
活動ができるようにするために、助成、奬励の体制を持
つていなければならない。ところが原案ではこれに対する用意がきわめて不十分であるばかりでなく、かえ
つてこれを統制するがごとき施設、手続等が
規定されているのであります。この点を是正して、その自主的な活発な
活動の道が開かれるようにしたいというのであります。
第三点といたしましては、國及び地方公共
團体は、
社会教育に対する任務の基本が、
國民みずからの実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するところにあることを考えなければならぬ。その行政がその立場に立
つて、特に民主的になされなければならないのであります。ところが原案を見渡しますと、
市町村の
教育委員会の事務、あるいは都道府縣の
教育委員会の事務、それから
社会教育委員会の構成あるいはその職務、方針、
公民館に対するところの取扱い等各項にわたりまして、いたずらに
社会教育の体系を確立することにとらわれて、國及び地方公共
團体の任務の基本を逸脱している感がある。その結果といたしましては、
社会教育を画一的に行
つたり、あるいは統制したりするということを招來することが明白に考えられるのであります。この点を是正いたしまして、
社会教育に対する行政が民主的に行われて、基本法に示された
教育の
一般方針をそれることのないようにしよう、こういうところに
修正の要点を置いたのであります。
そこでこの
三つの場合から考えまして、まず第一の國費及び地方費の負担、これに関しましては、第四條を原案では「前條の任務を達成するために必要があると認めるときは、國は」云々とありますが、これの「必要があると認めるときは」を全部削
つてしまいまして「あつ旋を行うことができる」というのを「あつ旋を行う」、つまり國は当然ここに財政的な援助をしなければならないというふうに、その任務、責任を明らかにしたのであります。同様に、第三十五條につきましても「援助をすることができる」を「援助を行う」に改めたのであります。これが第一点に照合されるところの
修正になります。
次に民間の
社会教育関係の
團体の自主的な積極的な
活動、この第二点に照合する
部面は、第十
一條にな
つて來るのであります。第十
一條に次の一項を加える。「文部大臣及び
教育委員会は、
社会教育関係團体の求めに應じ、これに対し、
社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う。」、こういうふうに助成の立場を明瞭にしたのであります。
第三番目の、
社会教育に対する行政は、民主的に行われなければならない。この点に照合されるものは、まず第十五條であります。原案では、
社会教育委員の選定にあたりまして、まず
教育委員会におけるところの
教育長の推薦によりということがあるのでありますが、これは
教育委員会の性格に矛盾して來る。御承知の
通り、
教育委員会は決議機関であると同時に、執行機関でありまして、
教育長はその命によ
つて事務を執行するだけの事務的な立場の人であります。その推薦によ
つて社会教育委員を選出するということは、これは明らかにそこに矛盾を生じて來るので、これを第十五條において、お手もとにあるように
修正したのでありまする「都道府縣及び
市町村に
社会教育委員を置くことができる。」二項といたしまして「
社会教育委員は、左の各号に掲げる者のうちから、
教育委員会が委嘱する。」として、「
教育長の推薦により、」ということをま
つたく削除してしま
つたのであります。そこでその手続といたしまして一、二、三号とあります。三項は、「前項に
規定する
委員の委嘱は、同項各号に掲げる者につき
教育長が作成して提出する候補者名簿により行うものとする。」四項は「
教育委員会は、前項の
規定により提出された候補者名簿が不適当であると認めるときは、
教育長に対し、その再提出を命ずることができる、」こういうふうに直したのであります。これで実際の選出の仕方が民主的に行われると同時に、
教育委員会の性格に矛盾しないというようなことを考えておる次第であります。
次に第十七條について
修正したのであります。これは御承知の
通り、原案では「
教育長に助言する」というようなぐあいにな
つております。ところがこの点も
教育委員会というものの性格に抵触して來る。そこで
教育委員会に助言しなければならない、こういう立場をとりまして、十七條中「
教育長に助言するため」を「
教育長を経て
教育委員会に助言するため」に改め、同條第一号を次のように改めて、こういうふうに民主的に行われるように
修正したのであります。そこで、ここの「
教育長を経て」ということは、これはま
つたく
教育委員あたりの集まるのがなかなか困難なようなときに、
教育長を通じてというふうな
意味でこれは事務上の手続のことになりますので、この点はわれわれは
教育委員会の権限を侵すようなおそれはないと考えたのであります。要点だけを御
説明いたしました。
それから同様に民主的な経営というような方面に照合されるものは、第二十六條に出ておるのであります。「
法人公民館の認可」という見出しで、「認可」という
言葉が設けてあるのでありますが、これは先ほど申し上げたように、手続上から民間におけるところの
社会教育関係團体の活発な自主的な
活動を統制するがごとき結果になる。そういうことで、これは届出に全部改めたのであります。
それから簡略にするために一項目脱かしましたが、民主的な経営が行われるというような面からいたしまして、第十七條中の第二項に「
社会教育委員は、
教育委員会の
会議に出席して
社会教育に関し
意見を述べることができる」この一項目を加えたのであります。
簡單でありますが、大体以上をも
つて御
説明にかえる次第であります。