○受田
委員 日本社会党を代表して、
國立学校設置法の原案に対して
反対、また
水谷委員提出の
修正案に対しても
反対の討論をいたします。大体
國立学校の設置についてのこの
法案の提出には、われわれとしては
新制大学が新しく強力に出発し
ようというこの門出にあた
つて、大いに賛意を表するものであります。特に新学制完全実施の最終段階におけるこの輝かしき
新制大学の完成ということについてわれわれは心から期待していたところであります。ところがこの期待された國立
大学の大部分を規定した設置
法案の中身を詳細に見るときに、政府がこの点において非常に不用意な規定を設けて來たことであります。これは第一にこの
法案の
相当廣い面にわた
つて、非常に政令とか省令とか命令への委任事項が多過ぎることでございます。これは要するに官僚の統制を強化して、
大学の
自治をはばみ、そうして
國会の権能を無視するという欠陥を持つものでありまして、たとえば第七條には「國立
大学に附属の
学校を置く場合においては、その
組織その他必要な事項は、法律又は政令で定める」とされておりますが、少くとも國立
大学に附設の
学校については、その
組織その他必要な事項は当然法律で規定されなければならないのであります。また第八條には國立
大学の
講座並びにこれにかわるべきものの種類等に関する同様な事項が省令で定められる
ようにな
つておりますが、この
ような事項も当然これは
大学の
自治及び
國会の権能において
運営さるべきものであると思うのであります。また第十三條の職の種類及び定員の問題でありますが、この問題はたとえば
大学の
教授、助
教授、事務職員、教務職員、こういう
ようないろいろな技術職員などがありますが、こういうものを
文部省が単独に
決定するとか、もしくは定員についても独断できめるということになると、これは定員であるならば國の
予算にも
関係することでありますし、各
大学、
國立学校別の定員について、その
学校の独自のあり方も
十分考慮して、そしてその
意見を尊重した
立場で
國会にはかるのが私は当然であると
考えます。
さらに願わくはこの定員については、少くとも
國立学校職員定員法のごときものをつく
つて、それによ
つて法律に規定された
立場から、
國立学校の職員定数を
決定すべきである。この付表第一におる
ようなか
つてな定員をきめておる。――か
つてということは言い過ぎかもしれませんが、非常にずさんな
立場でこれはできていると私は思います。なぜならば、実際に各
学校の調査がまだ十分にできていない節がある。たとえば数校が合併して
総合大学に
なつた
ようなところは、これは
相当に
研究の余地があると思うのです。こういう点において今ここに数字を
はつきり出したことについて私は非常に危險を感ずるのです。少くともいま一歩突込んだ、実態調査をやつた後、定員法を別個に取上ぐべきであ
つて、ここにそのまま数をきめ、またそれを將來省令できめ
ようということについては非常に危惧を抱くものであります。
なお第十五條に命令の委任事項として
国立学校の
組織及び
運営の細目について
文部省令で
決定される
ようにな
つておりますが、これなども
大学の
自治をはばむ一番大きな悪規定であると思います。少くとも
国立学校の
運営の細目のごときにおいては、当然
大学の特殊の
立場を尊重する行き方をとらねばならぬ。先般
大臣の御説明の中に、大
学校が規定されるまでには、いろいろな支障も起るので、こういう規定を設けておくという
意味の
お話があつたと思いますが、われわれはこの重大な
組織運営の細目は、できればこの際これを削除しておく必要がある。そうして
大学の
自治を尊重する
ような
立場に持
つて行く必要があると思うのであります。
しかも大体この
法律案がわずか二週間以内くらいで
國会で審議されるということは非常に危険であ
つて、いま少し早く
國会に提出されて、そうして大事な歴史のスタートを切る
大学設置に関する重要規定をわれわれが審議を盡すということが必要である。この点において政府が非常に長きにわた
つて設置
委員会その他の
答申なりに基いて立案されたものではあるけれども、結果において非常に早急の間に
國会でこれを通過せしめ
ようとしてむりをしておられる。この点において私は社会党を代表してこの
大学設置――
國立学校のうち大部分が
大学でありますが、この
大学設置を中心とする法律が、なぜもつとわれわれに
研究の余裕を與え、そうして政府ももつと用意して、たとえば
大学院の規定のごときも、夜間の
学部を置く規定のごときもこれに盛
つて、もつと輝かしいスタートをなさなかつたか、この点を実に遺憾に思う次第であります。
六・三制の完全実施を叫びつつ一昨年出発した小
学校、中
学校のこの学制が、今や六・三制
予算の逼迫とともに重大な危機に瀕しております。われわれはこの産みつぱなしにされた新学制の
最後の段階で、
大学がまたここで産みつぱなしにされる危險を感ずるのであります。特に
予算的
措置においては非常にきゆうくつな
立場にな
つてお
つて、これに対して
文部省設置法の中にも、
はつきりと
大学学術局の規定の中に國庫補助という規定を設けておりまするが、これなども経費を國庫が全額負担すべき性格のものであるにかかわらず、一部を補助するというあいまいな言葉が入れてあるほど、この
新制大学の將來については不安があるのであります。この点において六・三制が今非常に危機に瀕しておるごとく、この
大学を危機に瀕せしめない
ような
措置が、この
法案になぜもつと盛られなかつたか、これが私の非常に遺憾とするところであります。この点において輝かしい
大学設置のスタートにあた
つて、政府がいま一歩用意周到にこの
法案に綿密な規定を設けて、しかも
國会の権威を十分尊重し、官僚統制の弊を省き、
大学の
自治を尊重するごとき規定に盛り得なかつたか、この点を心から遺憾に思いまして、ここにわが党を代表してこの
法案に対する
反対を表明する次第であります。