○山本
参議院議員 年齢のとなえ方に関する
法律案につきまして提案の
理由をご
説明申し上げます。
この
法案の最初にございまする
ように、発議者は十八名にな
つております。これはある一党とか一派だけのものでございませんで、参議院における各党派、各会派すベてが十八名の中に網羅されております。各派ともこれに贊成したものでございまするが、今日は提案の
理由の
説明として私がそれを代表いたしまして
理由を申し上げるわけでございます。
最初にこれの趣意を申し上げたいと思いますが、
日本におきまして
年齢のとなえ方につきましては、明治三十五年に
年齢計算に関する法律というものが出ておりまして、法律の上では
年齢は満で数えることにな
つております。從いまして、たとえば選挙
資格でありますならば満二十才というふうなことにな
つておるのでございます。法律ではすべてそういうふうにな
つておるわけでありまするが、世の中の習慣は昔からの習わしで今も
つて数え年でいたしておりますが、昔のそういう法律も出ておることでありますし、これを満で普通の生活においても計算した方がよいではないか、これが提案の
趣旨でございます。
その
理由といたしまして私たちはいろいろのことが
考えられまするけれ
ども、大きくわけまして
四つ数えてみたいと思います。
第一には、今の
ように数え年でなしに満に勘定しますことは、一種の
日本の人たちの若返り法の
ような形になると思います。現在の
日本では税金のことで
國民が非常に暗い氣持にな
つております、あるいはその他の生活についても何となく暗い氣持にな
つておりまするが、せめて
年齢の上ででも若返るという
ようなことは、氣持の上でもたいへん明るい氣持がいたしますので、予算を伴わないで
國民の氣持が明るくなるということは、政治の上で大事な点ではないかと思う。これはたいへんに通俗的な言い方でありまするけれ
ども、
一つの
理由に勘定できるというのであります。
第二には、生れますとそれを届出ますのに、ここにおいでの方たちはむろん生れた時にすぐに届出をなさいまして、それが正確にできておると思いまするけれ
ども、なかなかそうでない例が多い。ことに十二月などに生れますと、翌年になるとすぐにもう二箇月のうちに自分は二年に勘定されてしまう。それが嫁入りのときなんかになると大きな
関係を持
つて來ますので、しばしば正確な届出をしないということが現実に行われております。これは非常におもしろくないことで、生れたら生れた時から正直な生き方をして行きたい、正直に届出をする。生れた時から正直にや
つて行くんだ、そうして同時に合理的にや
つて行くんだという
ように、
國民の生活の
態度を最初からそういうふうにして行くことは、これからの
日本にと
つて非常に大事じやないかと思われます。もし満で数えるということになるならば、十二月の三十日に生れましても三十日に生れたんだと通告しまして、それは翌年すぐに
二つになるわけじやありませんから、みんなが正確に届ける
ようになるだろうと思います。
それから第三番目には、國際性を
考えましていたしたわけであります。
年齢の数え方は、たしか戰爭中であ
つたと思いますがこの問題が出たことがあるのでありますが、統計局等の反対によりまして当時出なか
つたやに聞いておりまするが、統計は欧米等におきましては、どこの統計も満で数えております。もし
日本が満で数えない統計でありますると、國際性がないわけでありまするから、そういう上でも國際的の
年齢という問題になりまして、統計ができたら國際性に合せて行く
ような方法がいいと思います。かつまたその点につきましてもちろん統計局等にも話合
つたのでありまするが、統計局等も贊成でありまして、そういうふうに行きますと
年齢の統計の問題も國際性を持つということになりまして、
日本が今までの
ような
日本々々というのでなしに、國際的な
日本という立場になるので、この点もいいのだと存じます。
第四番目に、これは一番むずかしい問題でありまするが、配給のことでもし満で数えられると、さまざまな不合理が起りはしないか、不合理といいますか、あるいは不平が起りはしないかという点があるのでありまするが、これも実際から申しまして、最初に申し上げました
ように法律五十号というものがありまして、農林省から配給公團に対して食糧の配給をする場合には、今の
ような法律がある建前上、満でするのが当然だと思うのであります。ところが便宜主義的な立場から今まで配給を数え年でや
つてお
つたのでありますが、これは今の法律五十号に照しましてもおかしいのじやないかと思います。ことに配給量はカロリーを土台にいたしまして、何才の者はどのくらいのカロリーということで計算しまして、そのカロリーの立場から何グラムということが出て來てグラムでや
つておるのでありますが、あのグラムは満をも
つて数えておるのか、あるいは数え年を
基準にしてや
つておるのか、これを配給公團な農林省にただしましたところ、それはやはり満なんだという
答弁を得ましたので、その点から言
つても満としなければおかしいと思うのであります。昨年十月にある家庭で子供が生れましたが、今年二月になりましたところ、さつそく二才だというのえキヤラメルの配給がございました。ところがその赤ん坊は昨年十月に生れたので半年にならない、もちろんお母さんの乳のほか飲めないのにキヤラメルが來るという
ようなわけで、満としないために非常な不合理があるわけでありますから、先ほど申した法律五十号の上から、あるいはカロリーの計算をする上から、いずれも満でするのが正しい、正しいのでありますけれ
ども、今まで数え年で配給してお
つて、すぐさま明日から満でやるということになりますと、不平も起りまし
ようし、ある人は得をする、ある特殊の人は損をする人も起ります。急にやることは何ですから、よく
國民にそこを理解してもら
つて、その上でやるならば、なるほど今までの上から満でやるのがほんとうだという
ように
國民も理解してくれると思いまして、またもちろん農林省、東京都の配給の方の係、あるいは総理廰の
地方自治課の方とも十分に
相談をいたした結果、來年の一月一日からであるならば、配給の面においても十分にや
つていけるということを農林省を初めみな申しますので、
実施の点については時間を置きまして、ここにございます
ように、來年の一月元日からそういうふうにしていただきたいということにいたしたわけであります。
今の
ような
理由からもまず一番問題が起ると思うのは配給の点でありますが、今の
ようにすれば、配給についても問題はほとんどございません、そういう
ような
理由から満にした方がよろしいだろうということから取上げました。そうしてこれは皆さんも御承知でありまし
ようが、すでにいろいろの新聞がこれを大きく取扱
つておりまして、
國民の輿論というものもほぼわか
つております。それでラジオ等でもすでに発表されたやうに聞いておる。私は聞きそこな
つたのでありますが、実はラジオを聞いて、ぜひそれをや
つてもらいたい、という
ような投書が、私のところに参りましたので知
つたのであります。ラジオ等においても放送しておるわけであります。これに
関係の官廰といたしましては法務廰、統計局、運輸省、農林省、総理廰の自治課、東京都、配給公團、その他これに
関係のあるものは再三、再四呼びまして、
意見を求め
質問したところ、いずれも
関係の各官廰あるいは公團等も贊成しておりますので、かたがた出したわけであります。
大体提案の
理由は今の
ような次第でございます。