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1949-05-13 第5回国会 衆議院 文部委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月十三日(金曜日)     午後二時三十一分開議  出席委員    委員長 原   彪君    理事 伊藤 郷一君 理事 佐藤 重遠君    理事 圓谷 光衞君 理事 水谷  昇君    理事 松本 七郎君 理事 稻葉  修君    理事 今野 武雄君 理事 長野 長廣君       淺香 忠雄君    岡延右エ門君       甲木  保君    黒澤富次郎君       千賀 康治君    高木  章君       田中 啓一君    庄司 一郎君       平澤 長吉君    若林 龍孝君       受田 新吉君    森戸 辰男君       小林 運美君    渡部 義通君       井出一太郎君    松本六太郎君  出席國務大臣         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君  出席政府委員         文部政務次官  柏原 義則君         文部事務官         (学校教育局         長)      日高第四郎君         文部事務官         (教科書局長) 稻田 清助君         文部事務官         (学校教育局次         長)      剱木 亨弘君         文部事務官         (官房文書課         長)      森田  崇君  委員外出席者         参議院議員   山本 有三君         参議院法制局参         事       今枝 常男君         專  門  員 武藤 智雄君        專  門  員 横田重左衞門君 五月十二日  委員土倉宗明君及び般田享二君辞任につき、そ  の補欠として、淺香忠雄君及び井出一太郎君が  議長の指名で委員に選任された。 五月十二日  年齢のとなえ方に関する法律案参議院提出、  参法第四号)  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一六号)(参議院送付) 同 日  ニユース映画教育映画事業の助成に関する請  願(神田博君外一名紹介)(第一五八五号)  著作権法の一部改正に関する請願般田享二君  紹介)(第一五八六号)  六・三制完全実施のため予算確保に関する請願  (原彪紹介)(第一五九六号)  同(塚原俊郎紹介)(第一六一二号)  教育公務員特例法施行令の一部正に関する請願  (足立梅市君外一名紹介)(第一六一八号)  教育職員免許法案の一部修正に関する請願(松  本七郎紹介)(第一六三六号)  岡崎市に愛知学藝大学設置請願千賀康治君  外六名紹介)(第一六四五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  國立学校設置法案内閣提出第一三〇号)  年齢のとなえ方に関する法律案参議院提出、  参法第四号)     —————————————
  2. 原彪

    原委員長 会議を開きます。  日程に入る前に一言御了解を得ておきたいことがございます。過日本委員会におきまして、博物館動物園美術館等に対する入場税撤廃全員一致地方行政委員会に対する申入れが決定されましたが、それに伴いまして、昨日の地方行政委員会に私が出席しまして、るるこの撤廃必要性を力説いたしました結果、地方行政委員政府当局に対して熱心な討議がかわされたのでございます。條文には展覧会場、その他これに類するものというように相なつておりまして、その他これに類するものの中に博物館美術館動物園等が入るので、地方廰の随意に課税できるようなことに相なつておるために、かような問題が起きたのでございます。当局説明によりますると、これは一般入場税より、さような文化的な教育上の問題もあるので、百分の六十に引下げたのだというよう答弁がありましたが、委員よりは、引下げるということよりは、むしろ無税にすることを明確にする必要があるということを力説されました。その結果地方財政委員会荻田事務局長は、通課による指令を出して免税にするということまで答弁があつたのでございます。しかし委員の方はそれに満足せず、この條文を修正しようという空氣が非常に濃厚でございます。右御報告申し上げ御了解を得たいと存じます。
  3. 原彪

    原委員長 日程に入ります。國立学校設置法につきまして、質疑を継続いたします。小林君。
  4. 小林運美

    小林(運)委員 昨日の委員会の祕密会におきまして、文部大臣より上田並びに秋田の大学につきましてお話を承りましたが、その後の経過を大臣より御説明願いたいと思います。
  5. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 昨日も申し上げましたが、折衝委員会の答申についてのオーケーでありまして、まだ文部省には來ないことになつておりまして、大学設置委員会委員長が直接にあちらと折衝しておられるわけであります。結果についてはつきりと直接に私まだ聞いておりません。あの中でやはりあちらですぐオーケーのできない部分が一部分ある。しかしあちらとしても十分全部で協議をして、また会つてきめるということになつておるのだ、こういうことでありますが、もう間もなくその二度目の折衝が行われるだろうと考えております。
  6. 小林運美

    小林(運)委員 さよういたしますと、その問題に関しましての質疑は、継続することがちよつと困難と思いますので、その問題は、明らかになるまで質疑を留保いたしましてその他二、三の問題について御質問を申し上げたいと思います。昨日も二、三触れておきましたけれども答弁が非常にあいまいでございますので、さらにつけ加えて御質問を申し上げたいと思うのであります。  総合大学の場合と、單科大学の場合で、経費がかわらないというような御見解ではありますが、これはその場所、事情等によりまして、必ずしもそうでない。特に私は上田の場合におきましては、経費がかえつて單科大学の方が少くて済むという意見を持つております。これはしばしば文部当局にも私は申し上げてありますが、その辺がどうもはつきりいたしません。これをひとつお伺いしたい。  それからわれわれといたしましては、経費の問題をもつとさらに大きな観点に立つて考えたいと思うのであります。なぜかと申しますと、しばしば申し上げましたように、現在日本の國が経済的に非常に困つております。これは國内的にもそうでありますが、外國との收支バランス輸出入のバランスの上からいつてもそうでありまして、こういう問題を解決するのには、何が一番重要かと申しますと、日本輸出産業考えてみますと、外國から原料を入れまして、それに加工して輸出する。こういう産業におきましては、額面におきましては相当の大きなドル資金が入るように見えますが、これは実質においてはそう大きいものではありません。ところが繊維産業におきまして、特に蚕糸の問題は、すべてわが日本國土から産出いたすものでありまして、蚕糸関係輸出によりましてのドル獲得外國資金獲得は、これはすべてわれわれ日本の血となり肉となるものであります。さよう観点に立ちまして、この繊維産業を振興して日本経済をまかなうというような観念から参りますと、昨日もお話がありましたように、六・三制さえも、われわれは國の財政上から十分に行かない、一体財政をまかなうのはどういう産業によつてつたらよいかというと、繊維産業であると私は信ずるのであります。かような点にも、ただわれわれは文部当局文教の問題だけを考えないで、日本経済というものを十分に加味して御考慮を願いたいのであります。こういうことはどうでもいいのだ、われわれはただ單に教育をやればいいのだというよう観点でなくて、本当の廣い視野に立つてこの問題を考えていただきたいということを私は考えております。これに対して、文部大臣はどんなふうにお考えになりますか、明確に御答弁をお願いしたいのであります。
  7. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 單科大学にいたしましても、総合大学にいたしましても、経費がどのくらいかかるかということは、それはやりようの問題、内部教授の陣容にいたしましても、多くもでき、またある程度少くてもやれる。また研究費にいたしましても、十分といえば非常にたくさんかかりますし、また最低限度といえば少しで行きますから比較的の問題であります。しかし單科大学として、ほんとうにりつぱなものとして完成をしようということになりますと、相当莫大な金がかかることは明らかであります。そして第一に、これは一人、二人の問題でありますが、総長とか、学長とか、こういうものもよけいかかることになりますし、また事務局の組織にいたしましても、單に事務ような形でそこに事務局があるのと、独立した事務局として置かれるという場合とでは、相当の違いが出て参ります。それから学生のいろいろな点での共通に融通し得る点、図書なんかにつきましても、いろいろ共通に使い得る点も出るでありましようし、いろいろな点からいいまして、何といつて総合大学の一学部としてやります方が、独立した單科大学としてちやんとしたものをつくるよりも、経費が少くて済むということは、これは一般的に言えることではないかと思います。しかしむろんそれはやり方の問題でありますから、單料大学としてやる場合でも、簡單にやればやれないこともありませんが、それではやはり第二段におつしやられましたように、十分に日本産業のために貢献できるよう繊維についての十分の研究教育をやることもできなくなるおそれがあります。やはり相当のことはしなくてはなりません。  次に繊維教育の問題でありますが、これは文部省としてはむろん重要視しておる問題でありまして、決してこれを軽視しておるようなつもりはございません。繊維産業に必要な方面教育研究をして行く上から申しまして、單科大学の方が適当であるか、総合大学繊維学部として行く方が適当であるか、こういう問題になるのではないかと思います。総合大学繊維学部になるからといつて、そういう研究教育ができないというわけではありません。また軽視されるわけではありません。私どもはそういう研究教育という面から申しますれば、総合大学の一学部として將來発展して行けば、決してさしつかえないものであつて日本にとつて重要な産業の発展に十分貢献できる、こういう考えを持つておるわけであります。
  8. 小林運美

    小林(運)委員 経費の節約の問題につきましては、昨日も触れましたので、さらにいろいろ申し上げることも、意見相違と言われればそれで済むようでございますが、われわれの考えといたしましては、総合大学なつた場合と單科大学なつた場合に、経費が國で全部、どんな要求があつても支弁して行けるよう状態であれば、これはかまわないのでありますが、現状におきましては、どうしても地方議会であるとか、あるいは地元であるとか、あるいは関係業者寄付にまつというよう関係から行きまして、特にこの場合におきましては、関係業者の莫大な寄付を要する、こういうことがもうすでに実施されている。しかも総合大学では幾らやつてもしかたがない、單科大学なら相当亘額寄付をするということを言つておりまして、すでに数千万円の金を業者は用意しておるのであります。総合大学では寄付ができないということを、はつきり明言しておるのであります。この党は十分政府におきましてもお考えおきを願いたいと思うのであります。以上は実情でございまして、これ以上御答弁を求めても仕方がないので、これは十分御承知おき願いたいのであります。  次に文部省におきましていつごろ出た書類かわかりません、多分昨年の末かあるいは本年の初めごろであつたと思いますが、学校設置に関しまして、文部省の中で発行されました書類の中に——名前は「新制大学実施について」というのでございますが——大学最終決定文部省大学設置委員会に一任するということを関係方面も了承したというようなことが書いてあります。その書類の第二項のロに書いてあるのでありますが、昨日來この問題につきましての文部当局の御答えは、どうもこの趣旨とかわつておるようであります。その点はどういうふうな関係になりますか、御所見を承りたいのであります。
  9. 日高第四郎

    日高政府委員 それは十一原則を立てましたときに、十一原則の違反になる縣案五つございました。その五つのことについては、本來から言いますと、文部行政責任上の問題になるのでありますけれども、決定的には設置委員会にも相談をしてきめるということを関係方面と約束をいたしたわけであります。そのことについては設置委員会十分話合いをいたしまして、設置委員会としても、そういう政治的な問題を設置委員会にかけられるのは、はなはだ迷惑であるという意見もありましたので、私どもといたしましては、できるだけ行政上の問題は行政上の責任者として、最後まで努力をいたしまして、五つ縣案の中の三つはそれで解決をいたしたのであります。最後二つについてもできるだけ責任上の問題を考えまして、文部当局として努力をいたして参つたのでありますが、それが不調に終りましたので、設置委員会に特別に了解を得て、先ほど申し上げましたように、特別な形式をもつて総会を開き、審査をお願いした事情でございまして、それはほかに一般には関係の薄いことでありますから、一般に配るときにはそういうものに特につけてはございません。これは決して変更でも何でもないのでありまして、十一原則そのもの変更を加えた事実はないのでありますから、その辺御承知おきいただきたいと思います。
  10. 小林運美

    小林(運)委員 この十一原則の問題につきましては、昨日もいろいろ申し上げました。私のみならず他の委員からも、この十一原則なるものの基礎といいますか、考え方といいますか、こういうものを漠然とやつて、これでいろいろ縛つて行くことのはなはだ解せないということは、すでに御存じの通りであります。ただいまの問題にいたしましても、御当局見解は実にわれわれ納得が行かないことがたくさんあるのであります。かような点につきましていろいろ申し上げても、これは水かけ論になりますので、私は一應この程度にいたしますけれども、かような十一原則とかこれは特別だ。とか——原則があつて特別があることは、これは当然でありますが、この特別が濫発されれば何にもならない。しかも自分の都合のいいときには十一原則で縛り、都合の惡いときには特別だというのでは、どうもこれはおかしいと考えますが、これはおきましよう。しかしこの法案の審議にあたりまして、文部当局は十分に國民責任をとつてもらいたいと私は考えます。  次に單科大学を各府縣に設けさせたくない、一府縣一大学だという原則從つてつております、昨日も出ましたが、すでに大学府縣には二つ三つもあるところがあります。これは人口の例にとりましても、三百万以上の場合には二つ以上置いてもいいということになつておりますが、三百万人で三つもあるということになりますと、これは人口の比例で行きますと百万人に一校ということになります。長野縣の場合に例をとつてみますと、長野縣は二百二、三十万人の人口を擁しております。その割合から行けば二つつても当然だ。これの原則がどうだ、こうだというので縛つても、あるいは人口が少い奈良縣にも二つある、こういう原則をつくつても、その内容においては全然相反した行動をとつておる。これは実に私は解せない問題であると思う。  それからもう一つは、單科としての資格が云々というようお話がありますけれども、そういうことになれば今申し上げたよう人口が多いとか、あるいは地域廣大であるというような所にできたほかの大学において、はたして單独大学としての十分の資格をそろえておるかどうか、はなはだ私は怪しいものだと思う。片方では人口が多いからという、とんでもない。私はよその学校にけちをつけるわけではないけれども、実に雲泥の差があるものを單独大学として許可しておる。これは実にけしからぬ話だと私は考えます。学校の設備であるとか、あるいは教授陣内容でありますとか、そういうものを考えずに、ただ地域とか、そういうことだけでもつて大学を許可しているというこの方針考え方がどうも解せない。この点どんなふうにお考えになつておりますか。一々の例をとつてここで申し上げると長くなりますので、その根本理念をお伺い申し上げたいのであります。
  11. 日高第四郎

    日高政府委員 今のお話上田繊維專門学校よりも内容の貧弱なものが大学になつており、上田繊維專門学校單独大学になれないのは、理解しかねるというようお話でございますけれども、私ども上田繊維專門学校單独では大学になれないということは一向も申し上げてないのであります。全体の学校二百六十七ありますものをまとめまする尺度としての原則、あるいは方針と申しますか、その方針によつて処理いたして参りましたので、全体の見地から総合大学の一学部としてやつてつていただきたいということをお話しているだけであります。上田繊維專門学校そのもの大学になる値打がないということは、私ども決して申し上げてないので、その点後了承願いたいと思います。  それからもう一つ上田繊維專門学校よりも、内容の貧弱なものが大学になれるのがおかしいということにつきましては、これは設置基準といたしましては、ミニマムのスタンダードでありますので、もちろん上田繊維專門学校よりは、内容、規模においても貧弱なものでも、大学になれるようになつております。これは文部省自身がきめるのではなくて、その基準大学設置委員会において定めて、これを運用して審査していただいたわけであります。
  12. 小林運美

    小林(運)委員 地域とか人口の問題だけでなくて、その大学に入学すべき新制高等学校の数を考慮したかどうかということを昨日申し上げましたところが、その御答弁が非常にあいまいだつた。昨年の四月新制高等学校が発足してまだはつきりしないとか言つておりますが、すでに現存しておるのであります。相当高等学校の数は充実しておりまして、現在もうはつきりしている。こういう新制高等学校の数を地域とか、人口の問題に加味して考えたかどうかということをお尋ねしているのでありますが、その辺どういうふうにお考えになりすか。
  13. 日高第四郎

    日高政府委員 新制大学には学生というものがございませんから、他の府縣から入ることもできるのであります。大体において、学校を建てるのには人口との割合考える必要がありますので、人口のことは十分考えまして、地方産業や文化のことも、しろうとでありますけれども、若干は考えて立てたわけであります。旧制の中等学校の数等は、およその見当はついておりますが、それを嚴格には取上げなかつたことを昨日申し上げたわけです。
  14. 小林運美

    小林(運)委員 その問題につきましては、昨日圓谷委員からも仙台の場合につきまして、福島の方からもたくさん学生が行つているというようお話がございました。これは重要なる要素だと私は思います。たとえば繊維大学にいたしましても、これはただ長野縣の附近の者だけでなくて、全國から学生が集まります。これは当然なんです。しかし所在地の近くの高等学校の人が受驗をする率が非常に多い。これは十分大きな理由になると私は考える。こういうものも十分考えてもらいたいという私の考え方なんであります。これはただあいまいな御返答でなく、十分考えてもらいたいと思う。なおその他の問題につきまして、いろいろ御質問申し上げたいのでありますが、何分先ほど大臣からのお話もございまして、いまだ関係方面との折衝が終つておらないというお話でございますし、これ以上御質問を続けることはどうかと思いますので、留保いたしまして、この程度にして、またはつきりしてから御質問申し上げるつもりでおります。
  15. 長野長廣

    長野委員 私は國立大学の中で東京文教大学なる名称について、お伺いしてみたいと思うのであります。大体この大学教育者、特に全國の教育養成大学あるいは諸学校の根源、標準ともなるべき一國の教育養成の本山であると考えるのであります。聞くところによりますと、当初は教育大学としてあつたところが、最近になつてこれを文教大学にお改めになつたと承りますが、はたしてさようでありますか。また「文教」という名称を特にお選びになつ理由を承りたいと思います。
  16. 日高第四郎

    日高政府委員 先日類似の御質問がありましたので、一應はお答え申し上げたのでありますが、簡單趣旨だけ申し上げます。昨年の八月に東京文理科大学東京高等師範体育專門学校農業教育專門学校等四つ学校代表者に集まつてもらいまして、その新しくできる学校を、教育学問的研究をすることを重要な特色とする一つ大学にしてはどうかという案を立てまして、それをかりに東京教育大学というふうに名づけてはどうかということでお話をいたしまして、皆さんの御贊成を得ましたので、そういう意味で結合をして出発をいたしたのでありますが、昨日も申し上げましたように、教育大学という名称には、そのもの自体は理論的にはりつぱなものでありまして、何らの欠陷はないと確信いたしておるものでありますけれども、前に師範学校昇格運動をしたときに用いられた名前であるというので、一部におもしろくない連想が伴うという点と、学校方針態度、もしくは精神の幾分の食い違いから、四つ学校の間に十分なる了解を得ることができませんで、昨年の秋の終りごろから今年の初めごろにかけまして意見相違が出まして、まずくしますと合一できないよう状態になりましたので、文部省はそれの相談を受けましたときに、何か別名をつけて話をうまくまとめる方法はないかと相談いたしまして、いろいろ考えましたあげく、「教育」と幾分違う「文教」という名前で妥協はできないであろうかどうかを諮りました。多少の異論もあつたのでありますけれども四つ学校が、これについては異論がないという結論に到達いたしましたので、原案には東京文大学という名前をつけて出したのであります。文部省自身としては、東京教育大学でいいと思つたのでありますが、学校内部のいろいろな事情は、局外の方々にはすぐにおわかりにならないような点もあるかと思いますし、私どももそれは十分には理解できなかつたのでありますが、これは單純な、理論的な問題ではなくして、態度の上の食い違いもありますし、長い歴史上のもつれ等も幾分ありまして、それが一種の感情的な問題にまで発展して來ておつたようでありますから、私ども文教收め得るならば收めたいというので、文教という名前原案を作成したわけでございます。文部省教育大学に対して特に期待いたしておりますのは、教育学問的な、原理的な研究を一方において徹底的にしてもらうことと、その学問的な背景を持つた模範的な教員養成大学とすることでありまして、この二本建の精神は、各学校の十分な了解と支持を得ておると確信いたしておるのであります。この二つの点、一方が目的であつて一方が手段であるというような理解と解釈に対しては、私は、純粹の学問というものは、決して單なる手段ではなくして、りつぱな教育養成をするためには必要欠くべからざる前提條件であるということをお互いに納得して、相互に補足し合つて出発してもらいたいということを力説して今日まで参つておるのであります。長野委員のおつしやるように、東京文教大学、もしくは東京教育大学というよう名称をもつて期待される大学は、全國に模範的な教員養成の本山とおつしやいましたけれども、そういつた中心的なものにしたいという念願は、ずつと続けて持つてつておるのであります。
  17. 長野長廣

    長野委員 大体了承をいたしました。私はただいまの御説明は、師範学校の人々が集まつて教育大学を主張したということが一つ連想を起させた、その連想がどちらかというとおもしろくないものというふうに感じましたが、そういう意見でございましようか。おもしろくない連想とは、おそらく過去の師範教育欠陷に触れておることではないかと思いますが、その点を承りたい。
  18. 日高第四郎

    日高政府委員 その通りでございます。
  19. 長野長廣

    長野委員 ただいまの政府委員の御説明によりますと、教育に対する原理的なものの研究と同時に、学問的背景を持つ教育養成をなすところの大学とする。一國の烈々たる文化建設の教育者を養成をするのだ、こうおつしやいますところとあわせ考えまして、つまり師範学校の先生方が集まつて教育大学の声を出したことが妙な連想をさせられるということに、過去における教育者の思想、信念はまずおいて、教養の幅が狹い、いわば型にはまり過ぎておつたというところにあると私は受取つたのでございます。一体教育の成果というものを、これはりくつは第二としまして、事実をあげて考えてみたい。すなわち、明治の初めにアメリカの教育者日本の國に参りまして、札幌農学校なるものを建設した。当時農学校という印象は、國民に対してきわめて幅の狹い、百姓の一番の先覚者をつくるというふうな感じを與えたものでありましたが、ともすれば今日もなおさようなことを考えておる人があるかもしれぬと思われるくらいである。しかるにその事実はいかがでありましよう、新渡戸稻造先生初め、宗教家、あるいは農学の大家——農学の大家は実際的にいつて微生物研究に至るまで蘊奧をきわめ、あるいは食物学、動物学、また場合によつては法律、宗教、文化のあらゆる面に向つて、この札幌農学校なるものが大学としての成果を示しておるのであります。これは学校経営の方法が、一面においては原理的な人物をつくるとともに、一面においては幅の廣い、産業、文化のあらゆる方面に貢献し得るような人材を養成したことによるものと思うのであります。およそ一國の教育を建設せんとするには、教育の政治を行うにつきましては、各学校に対しまして、かような根本的大精神を打込むとともに、いかなる分野につつ込んで行つても役に立つような幅の廣い人材を養成することが必要ではないかと思うのであります。この点において、教育大学という名前を冠しましても、私の考えでは、眞學、熟烈、教育そのものに生涯を打込む人間の魂をつくらなくてはうそであると思うのです。この大学に入る者が理学に行かんか、あるいは哲学に行かんか、あるいは学校の先生をやろうか、あるいは自分は学者になろうかと、漫然と考える者のたくさんあることを前提として名称をこしらえるそのこと自体が、はたして眞の教育者を養成する学校をつくるゆえんでございましようか。先ほど來私があげました札幌農学校の一事例を考えましても、これは少し檢討の余地があるように思われるのでございます。さような意味からいたしまして、私の考えるところでは、この際教育を養成する大学なるがゆえに教育大学——現に文部省もお認めになつておりますから教育大学とする。教育という文句が、ややもすれば師範学校の過去の欠陷であるかどうかしりませんが、かりに欠陷としてそれに陷るおそれありとするならば、ただいまの札幌農学校の一事例にとりましても、ひとつこの際思い切つて、眞の教育者を養成するという意味においてこの学校を創設し、さらにその間において、あるいは宗教家なり藝術家なり、各般の方面に出る人があれば、それは自然その人の才能とその人の持前とによつておのずから決するところでありまして、学校本來の目的としては教育である。しかもその教育大学の名によつて、あるいは災いあるものと思う点は、あくまでもしからしめざるよう努力するという経営の方針と経営の方法とを十分にこれに置いて行いまして、もつてその名もわれわれの理想とする教育大学、その実もまた教育大学にふさわしい、欠陷を生み出さない、理想的なものをつくる、こういう建前にお考え直しをしていただくことはできますまいか。もしできなければ、できない理由を御説明願いたいのであります。
  20. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 文部省方針といたしまして、あるいは考えて参りましたところとしては、ただいま局長から申し上げたところで十分に盡きておるのであります。そこでただいま問題になつております大学は、文部省といたしましても、將來教育界でもつて活動すべき優秀な人物を養成するという点にあることもはつきりいたしております。ただ局長の申しましたよう事情は、あの学校内部相当根深く入つておりまして、文部省としては、名前の問題でありますから、何とか内部が円満に一致してやつて行けるよう名前にしたい、こういう考えから「文教」という名前とつたわけであります。しかし実質から客観的に考えてみますと、文教と申しましても、教育と申しましても、実は大した違いはない意味のものだろう、英語に訳しましたならば、両方とも多分エデュケーションと訳されるのではないかと考えようなものであります。しかし文部省としては、さつき申しましたよう事情がありましたために、「文教」という名前原案としておりますから、もし委員各位でおさしつかえなければ、それにきめたいというのが文部省考えであります。しかし委員各位が、ただいま長野委員からのお話がありましたような点を十分愼重に御考慮になりまして、これを「教育」とすべきであるというふうにお考えでありますならば、文部省は決してそれに反対をするというわけではありません。
  21. 長野長廣

    長野委員 まことに大臣の非常に御襟度のほどを感謝するものであります。承りますと、校内に名称を取りかこんで二派の競爭というか、爭いというか、そういつた対立がある。しかもそれは文部省としても相当考慮に置かなければならぬ、名称の選択にまでこれは置かなければならぬほどの事情があるように了承する次第であります。そこで幸いに文相におかれましてもこの委員諸君の衆議によつて帰するところは承知してもよろしい、こういうお考えでございますので、文部省と何らの摩擦もないわけでありますから、こいねがわくば私は校内の対立ということが、一國の大学の法律の中にまでこれが入つてこれを動かすということは、將來に対するためにもおもしろくないと思います。またさようあるべきでもないと思いますので、委員諸君の最後の衆議の決するところをわれわれとしては期待いたしまして、この質問を終ることにいたします。
  22. 森戸辰男

    ○森戸委員 私簡單な一点を御質問いたしたいのでございます。昨日受田委員から質問をいたしましたが、文部省以外の学校國立大学になるものについてであります。逓信省にあつた中央無線電信講習所はすでに電氣通信大学になるということになつておりますし、農林省にありました第一水産講習所は、これは一年の後に東京水産大学になるというお話でございます。もう一つ問題になりますのが運輸省に属する商船学校でございまして、この学校はいかに処置せられるのであるか。日本といたしましては航海というものが特別に重要であることは、申すまでもないことでございますが、同時にこの二つ学校がすでに大学になつておる、この商船学校だけがこの法律に揚げられないということについては、この学校に在学しております者が、きわめて不安な状態にあるという現状なのであります。一体どういうふうな具体的な理由で、商船学校がこの法案の中に國立大学として盛られることができなかつたかということにつきまして、御説明を承りたいと思うのでございます。
  23. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 ただいま御質問の商船大学という問題でありますが、実は文部省といたしましては、所轄はまだ運輸省でありますけれども設置委員会におきしてこれを諮問いたしまして、大学になる資格はあるものと決定されております。ただ手続上の問題におきまして、現在ほかの大学と同じようにこの際はつきりきめてしまうことができないよう事情になつておるわけであります。しかしまず大学になる資格は十分認められております。ですから、その手続もいずれ何とか解決いたしまして、御心配のないような解決がつくのではないかと考えております。
  24. 森戸辰男

    ○森戸委員 ただいまの大臣お話で了承できましたが、この手続の問題というのは非常に時がかかるのでございましようか、あるいは割合に早くこれがとられるのでございましようか。というのは、学生並びに先生方に、ほかの方面学校國立大学になるのに、自分のところだけなれないということで、いろいろな不安を與えておりますので、これは一日も早く解消して、その学校で勉学にいそしむという状態に置くことが適当であると思いますが、その辺のお見込みはいかがでございましようか。
  25. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 手続が完了いたしまして、ほかの大学と同じようにはつきりと出発できる時期の問題でありますが、むろんはつきり明確な時期は申し上げられませんけれども文部省が見通しておりますところでは、決してそう長くはかからないであろう。できるならば、もし臨時國会が開かれるならば、その時分には解決ができるであろう、そんなふうに考えております。
  26. 今野武雄

    ○今野委員 私がこれから質問ようとすることは、國立学校設置法にも関係がありますし、その他のことにも関係があるのでありますが、実は今朝の時事新報にトップ記事として「各地で学校スト、全学連教育法案に反対」という見出しでもつて、関西、九州、北陸、関東各地における学生のストライキまたはストライキに入ろうとする状況並びにそのストライキにおいてどういう要求を揚げておるかということ、並びに文部省の剱木学校教育局次長の談話が載つておりますが、文部省におきましては、この件についてどういうふうに見ておられますか、その点をまず第一にお伺いいたしたいと存じます。
  27. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 お答えいたします。時事新報で私も拝見しただけでありまして、まだよく事情を知つておりません。文部省としても実情はわかつておりませんから、どの程度に実際に行われておるものかわからない状況であります。しかし私といたしましては、こういうストライキが行われるということは、むろん文部省としてはなはだ遺憾な次第でありまして、学生のこれらの運動につきましては、文部省としてはそれぞれ大学なり、高等專門学校の自治的な処置に大体まかせてあるわけであります。ですから今回にいたしましても、一應は各大学、各学校において処置すべきものであると考えておるのでありますが、文部省としてはむろんこれを放擲して無視するわけには参りませんから、十分に調査いたして、善処すべき必要があるなら善処したいというよう考えております。
  28. 今野武雄

    ○今野委員 この点について剱木次長は談話を発表されておりますが、ここに書いてある通り考えてよろしいでございましようか。
  29. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 昨日新聞記者との質疑がありまして、大体新聞に書いてあるようなことを申しましたが、字句その他につきましては、必ずしも明確に私の申した通りに書いてあるとは申せません。
  30. 今野武雄

    ○今野委員 それでは明確に御見解をここでごひろう願いたいと思います。
  31. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 それは昨日個人的な私の見解を申したのでありまして、文部省としての見解を申したのではございません。この席上で文部省としての意見を私が述べるわけに行かないのであります。
  32. 今野武雄

    ○今野委員 実はこの要求事項と申しますものは、文部大臣のおつしやるよう学校内の事柄というよりは、直接学生の問題であり、そしてまた文部省に対する要求をも含んでおるのでありまして、御存じないというようなことも考えられるので、念のためにその要求を読み上げてみますと、第一には、零細教育予算による教育の崩壞と学生生活の破壞に抗議する。第二には六・三制費、新制大学設置費を追加予算に計上し私学へただちに國庫補助を出せ。それから第三には、大学校案の一部である國立学校設置法案教育職員免許法案を撤回せよ。四番目には学生運動と教職員の組合運動彈圧をただちに停止せよ。第五番目には、一切の教育関係法案を公開し民主的大衆討議に附せ。こういうような、いわば文教政策全般にわたる要求を含んでおるのであります。学生がこういうようなことをすることの当否については、いろいろと見るところがあるのでございましようが、事実として学生がこういうような要求を揚げて、しかもストライキというような非常に痛烈な手段にまで訴えて、そしてこの要求を通そうというような運動をしておる。なお私、いろいろな機会に学生に接しまするに、学生はいろいろな点で思い違いしている点があるかもしれませんが、同時にいろいろな法案とか、その他文教政策一般について、なかなかりつぱな意見を持ち、また研究もしておる。こういうような事実を考えますると、現在私ども輿論を代表して、そしてここで文教政策を審議しなければならない者の立場としましては、こういうような輿論的な動きというものに対して、十分考えて対処して行かなければならないものだと考えます。しかるにこれは剱木次長の個人的な御意見とおつしやいましたが、その中にたとえば「教育予算については文部当局としては遺憾なことだが、國会で決定した以上從わねばならぬ、」というふうに書いてございます。しかしこれは実を申しますと、先般國会におきまして六・三制の予算の問題について決議がなされたときに、新聞においてもたつた一行しか書かないというような不親切な報道ぶりであつた。そういうことのために多分に誤解が行われておることと存じますが、國会としてはこれに対して非常に努力しているようなありさまであります。そういうような点は、こういうところには少しも現われておらないのでありまして、やはり國会と國民大衆とが一緒になつて日本文教を建て直すということが必要であろうと思うのでありますが、そのことに対して、この談話においては十分にその誠意が現われていないように見えるのであります。その点はいかが釈明なさいますか。
  33. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 学生運動として要求事項に揚げてありますのを知りましたのは、実は昨日全学連が來て、文部省のクラブの新聞記者に話をしたのを間接にその一部分を聞いただけでございまして、学生文部大臣に対して要求するのに、どういうわけでやるということも文部省に何ら釈明しませんで、ただちにストライキというような方法に訴えてその意思を表明するようようにについては、私といたしましては非常に遺憾に存ずるのでございます。いわゆるそこに談話をいたしましたのは、向うの要求の理由とか、字句が的確にわかつて私は話したのではないのでございます。新聞記者の言われる言葉について申しただけでありまして、今申されたような事実の上に立ちまして、いろいろ議論したわけはでございません。それだけ御了承を願いたいと思います。
  34. 今野武雄

    ○今野委員 それではその教育予算について新聞記者から聞かれたときに、やはりそういうふうにお答えになつたのでしようか、もう少し委曲を盡されたのでございますか。
  35. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 ただ教育予算というようなものが、問題になつておるということを聞いただけでございます。
  36. 今野武雄

    ○今野委員 いやそうじやない、お答えの内容です。この通りですか。
  37. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 ただ教育予算について問題になつておると言いますから、教育予算については、國会でおきめになることであつて、國会がおきめになれば、國民としてもそれに從つて行くよりしかたがないのだと自分は思うと申したのであります。
  38. 今野武雄

    ○今野委員 現在大学設立の問題が問題になつておるわけでありますが、大学と申しますのは、申すまでもなく、一國の学問というものを相当長期にわたつてその質を決定して行くものでありまして、われわれといたしましては、これは一時的な経済都合というようなことだけでは、なかなか決定できない重要な問題であろうと思うのであります。しかるに戰後のいろいろな教育に関する立法を見まするに、六・三制の問題にせよ、あるいは教育委員会法にせよ、いずれも財政的な裏づけなしにこれが行われておる。そのために、実にさんたんたる状態になつて教育の破壞ということをも嘆かしめるような、同時に、それが地方財政を非常に困難ならしめておるというような事実もあるわけであります。しかるに魂の入らない形でこの大学というような問題が持ち出されて、またまた十分な財政的な裏づけなしに事務的に事が運ばれておる。こういうようなことについては、この学生の要求に書いてありまする通り、われわれとしては非常に重大な関心を持たざるを得ないわけであります。そもそも戰後の民主的な日本における大学の本質は何であるか、こういうような問題に関して十分な見通しがあつて、それに向つて学生教授もみんな一致協力すれば、こういう学生のストライキというような不祥事は起り得ないと考えるのでありますが、その点につきまして文部大臣はどういうふうにお考えでございましようか。特に大学の本質について、今のところ設置法などを見ましても、非常に程度が低くなつているということだけの印象であります。何かある一國の制度を移し植えて、それを下手にまねたというような感じでありまして、少しも積極的にこれならやろうというような魂のこもつたものが見られない。先ほど札幌農学校の話もありましたが、明治の初めにおいては、少くともわれわれの先輩たちは、日本をこれからもり立てるためにりつぱな教育をしなければならないというので、民間においても慶應、早稻田というようなりつぱな学校が設立され、そうして官においても札幌農学校その他のいろいろな学校が歴史的な使命を帶びて、こんな画一的な頭から與えたような形ではなくできているように見受けられます。それに対して今日のありさまはあまりにも情ないよう考えられますが、文部大臣はいかにお考えになりますか。
  39. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 今回の大学設置法は、御説明申し上げましたように、今まであります多くの大学につきましての整理統合による設置であります。わが國で札幌の農学校が創立され、あるいは早稻田、慶應が創立された。これは非常に偉大な創立者がありまして、その創造的な精神によつて、あるいは学問的熱情によつて初めて学校ができるという事情とは、非常に條件が違つているということは御承知だろうと思います。從いまして、そういう事情の違いから來る違いはやむを得ないのでありますけれども、これがために日本の学術なり、文化なり、教育の水準が落ちはしないかという点についての御心配があるように思いますが、むろん新しい制度が実施されます場合には、その轉換、切りかえの時期におきましては、多少の摩擦混乱は免れないものでありまして、おちつくまでには相当の時間がかかります。ですから切りかえ当時におきましては、多少前通りにやつた方がかえつてよかつたのじやないかという場合もあるかと思いますけれども、私は、制度として今度の四年制大学をとつて、それがちやんとおちついて、今度のよう総合大学制としてしつかりやつて行くということができれば、決して今までの高等学校、專門学校師範学校、それから旧制大学という制度のもとにおける教育、文化、学術の水準よりも落ちる心配はないと実は確信しております。  それから経費の問題でありますが、むろん経費は、今までといえども、旧制の学校におきましても、はなはだ貧弱で不十分でありまして、日本が文化國家として立つて行くための教育費としては、はなはだ不十分でありました。今度の予算につきましても、はなはだ不十分であるということは認めておるのであります。しかしまず私は、今日の日本の置かれた経済財政等の状況から見ますと、教育のみならず、あらゆる方面において不十分だらけであります。むりが非常に多いのであります。このむりがないようにやろうということになりますと、非常に縮こまつてしまつた日本経済に当てはめてのことだけしかできないというふうになるのではなかろうか。それよりも、多少初めにむりがありましても、そのむりを忍んで、精神的な努力で補つて、そうして日本経済にいたしましても、まあ今年以下に下ることもまずなかろうかと思いますし、だんだん発展をして行くでありましようから、それに應じて充実をして行くという方策の方がとるべき方策ではなかろうかと私は考えております。
  40. 今野武雄

    ○今野委員 時間がありませんから、簡單にお尋ねいたします。たいへん懇切なお答えをいただきましたが、しかしながら私は同時にたいへん情なく考えるのであります。財政の困難ということは、明治維新当時においても、もつと痛烈であつたろうと考えるのであります。そういうような時代においても先輩たちが切り開いた道、それに劣らないような現在大きな変革期に面して、ことに戰爭放棄をし、そうして文教をもつてつて行く、そういうような決心を固めたわが日本國民は、こういうよう教育政策で満足しないということは明らかであります。私は戰時中にかけて、実はある私立大学の講師をしておりましたが、中國から留学生が参りまして言うには、日本の小学校はなかなかよい。だけれども、この大学のありさまは何であるか。こういうものは中國では決して見られない、実にだらしのない大学である。こういう批判を受けて、一言もなかつたのであります。しかるに今日この変革の時期にあたつて、まさに日本を民主化する一番の重要事項として教育の振興、特に大学の振興による学術の発展ということが望まれるのでありますが、それがいかにも事務的に、統合ということだけでなされておる。しかもそういうことに対する不満、そしてほんとうの日本を盛り上げようとする意氣が実は文部当局のそういう事務的なお考えとぶつかり合つて、ここに学生運動が盛り上つておる。こういうふうにわれわれは考えざるを得ないのであります。この学生運動こそ、新しい文化日本をつくつて行く原動力になつておると思います。多少けちをつけたり何かすることはできるかもしれませんけれども、これこそがその原動力になつておる、こういうふうに考える次第でありますが、その点文部大臣は政治家として——單なる事務官僚ではないと私は信ずるのでありますが、政治家として、いかにお考えになるか、その点について特にお答え願いたいと思います。
  41. 原彪

    原委員長 あとの質問者が御三名おられますので、簡潔に願います。
  42. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 むろん学生が——学生といえども國民であり、ことに、教育学問に非常に関係の深い人たちでありますから、日本教育の問題、学問の問題を熱心に考慮してくれることは非常に歓迎すべきことであり、けつこうなことだと思います。しかしそれと同時に、ストライキをやるということはまた別個の問題であります。從つて私は十分事情を調べた上でありませんと、贊成はできないわけであります。
  43. 今野武雄

    ○今野委員 最後にお聞きしたい。先日も大臣は、大学の自治については十分関心を持つておるというようお話でありましたが、しかしここに学生の要求として揚げられておるように、教職員や学生の自治運動に対する彈圧というものがしきりに起つておる。それからなお大学の学長をつめるには今までは教授会できめて來たはずでありますが、現在では新制大学などの状況を見れば、皆上から学長というものをきめて押しつけている。こういうような点においても、自治がまつたく尊重されない。從つてそういうような雰囲氣の中において國立学校設置法の十四條の、あの公務員法によつて云々という條項を見ますると、何か非常に不明朗な感じがする。自治を彈圧するのではないか、こういうような感じを強く感ずるものでありますが、この点だけ最後にお尋ねいたします。
  44. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 大学の自治について、これを十分尊重するという考えにおいては、私はまつたくかわつておりません。今までの方法によれば教授会において教授の身分、学長等についてきめるのでありますが、過渡的な場合といたしまして教授が充実しておらぬということもあります。しかしその場合でも教授会がこれをきめるという線に沿いまして、文部省としては自治を尊重する趣旨において選考しておるのでありまして、決してそれを無視してかつて文部省が押しつけるよう態度はとりません。
  45. 今野武雄

    ○今野委員 これで打切ります。
  46. 井出一太郎

    ○井出委員 きわめて簡單にお尋ねをいたしたいと思います。この設置法案を拝見いたしまして、新しい制度による大学というものは非常に現実的には複雑なる事業がある関係上、ずいぶん御苦心のほどもつたこととはお察しをいたしておる者でありますが、從來日本学校制度というものが非常に中央集権的であり、また画一的である。これはすでに各委員からも指摘をせられた点でございます。たとえば一高、東大閥というふうなものが、日本のあらゆる諸制度の上に君臨をするというような変態的なものができてしまつたということは、いろいろな事情もありましようけれども、これを諸外國の例などにとつてみますと、たとえばドイツにおいては、あえてベルリン大学でなくも、ハイデルベルヒ、ボン、ライプチッヒというようなそれぞれ独得な傳統を持つた大学が成長をしている事実は御承知の通りであります。もちろん日本大学も歴史の浅いということも手傳つておるかもしれませんが、從來のこの中央集権的な弊害あるいは画一的制度、これを今般の変革にあたつてよほど是正をせらるべき方向へ配慮を用いるべきではなかつたか、かように思うのでありますが、この設置法案全般を見渡しましたときに、どうもそういつた点がどれだけ排除せられておるやいなや非常に疑問に思うのであります。こういつた全般的問題につきまして、まず文部大臣から御所見を伺つて置きたいと思うのであります。
  47. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 統合の実際のこまかい点は、局長から御説明いたすことにいたしますが、むろん大学というものは歴史、傳統等によつてりつぱなものになるということは、私よく承知いたしておるところであります。むろんそういうことも考えながら今度の設置の方策を立てたわけでありますけれども、何にしても二百七十幾つかの專門学校以上の学校大学にして行くにつきましては、いろいろの点を考えなければならないという点で、もし一つ大学だけを考えるならば、もつと理想的に考えられたという点も、ある程度犠牲にしなければならないということも非常に多かつたわけであります。從つて今まで非常に傳統のりつぱなもので長い歴史のあるものが、それだけでやればもつとよくなるであろうというようなものでありましても、やはり全般の計画といたしまして、それもある程度は犠牲にしなければならぬというよう事情も起きたかと思いますけれども、根本におきましてそういうことを一切無視してやるのだということはなかつたと思います。こまかい点は局長から申し上げます。
  48. 井出一太郎

    ○井出委員 大臣もあえて歴史と傳統を無視してはおらない、かように申されるのでありますが、一面非常に画一化せんがために犠牲になつた面も多々あるかと思うのであります。あたかも全体のレベルをそろえるために、いわば英才の犠牲によりまして、学力の中等程度に歩調をそろえさせられるというような感じが、本案を拝見しまして非常に見受けられるのであります。一見各府縣にそれぞれ新しい大学ができ、学校の制度としましてはまさに壯麗なる殿堂ができ上るという感じではございまするが、はたしてこの制度を実施いたしました際に、從來のすぐれた歴史や傳統、あるいは特長が死んでしまつて、非常に平板な單調なる教育制度ができ上るのではないかという懸念を私は持つものでございます。教育予算の点は非常に貧困であり、かつてある大藏大臣のごときは、敗戰後の日本においては、言うて見れば、教育などというものにかまつておられない時期だというふうな放言をいたしまして、問題に相なつたことさえあるのでありますが、今回の予算の面において、はたしてこれだけの壯麗なる大学の設堂を維持し、しかも文部大臣が期待しておられるような数学の実があがるという上において、私は予算が非常に貧困であり、そういつたことの可能性を大いに疑うものでございますが、こういつた面をひとつお答えを願いたいのであります。
  49. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 予算がはなはだ不十分であるという点は、先ほど実は今野委員からも御質問がありまして、私の意見を申し上げたのでありますが、予算の点につきましては確かに今までの旧制の高等学校、專門学校大学といえども非常に不十分であつたのであります。それで今度の大学におきましても、大体旧制の高等学校以上の國立学校の予算でまかなうという方針で計画を立てまして、從いましてやはり旧制におけると同様の不十分の欠陷は免れないのでありますけれども、敗戰後の今日の日本財政経済において、これがどうしてもできないのであります。けれども私は、將來日本といえども、今日のようなみじめな状態でいつまでもおるものではなく、また置かすべきものでありません。いずれ充実のできる時期は必ず來るだろうと考えておるので、財政とにらみ合せまして、不十分ながらあらゆる努力をしてその欠陷を補つて教育学問のために努力をして、將來の発展を期するというのが、最善の方法ではないかと思います。
  50. 井出一太郎

    ○井出委員 先ほど小林委員から触れておられたように存じましたけれども上田繊維專門学校の問題に関連いたしまして、私はいたずらに総合大学という線にそろえることによつて、非常に低い水準のものをことさらにこしらえてしまうという懸念を強く感じておるのであります。これにはまだ未確定の問題として、本案には上せてないようでありまして、他の数個の專門学校とあわせて未決定のように相なつておりますが、私どもこの学校内容を熟知いたしている者といたしましては他に水産の單科大学ができ、畜産の單科大学ができているという際に、やはり日本輸出産業の大宗でございます蚕糸業、こうした方面において一つ單科大学を持つことは、日本全体の養蚕農民その他多くの一致して希望するところであろうと思うのであります。畜産、水産、もちろんこれは重大であり、日本が今後この乏しき資源、狹い國土で國を立てます以上は、海洋へ進出することは当然であるし、あるいはまた日本の從來の米麦中心の農業に限定しておつたのでは、とうていこの國民を養つて行くわけには参らぬ、そこに立体的な畜産を加味した農業が必要である。これはもちろんわれわれも了承をいたすのであります。それと同じ意味において養蚕は、これはまつたく蚕を飼い、糸をつむぎ、これを輸出するその工程がことごとく日本國内でまかなわれる。ほかの紡績などのように、原料を外國から輸入するというようなものとは非常に違つておるのであります。こういう産業の特長を大きく生かす意味において、これを單科の大学というものでぜひ存立せしめたい、かように強くこいねがうものであります。あえて畜産や水産と区別したといたしますならば、そこに何らかの事情があつたはずだと思いますので、この点を伺つておきたいのであります。
  51. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問の中にありました繊維産業というものが、日本にとつて畜産等に比べて決して重要性が劣るものでないという点は、私もまつたく同感でありまして、ことに貿易の見地から申しまして、きわめて重要なものであると考えております。ただしかし、お話にありましたように、これを單科大学にしなければ、繊維産業に必要な学術の研究あるいは教育というものが十分できない、総合大学の一学部としての繊維学部というものでおつたのでは教育ができないという理由は、十分に私にはのみ込めないわけであります。けれども、地元としましても、とにかく歴史的にあそこにある学校であり、また地方としては非常に優秀な学校でありまするし、また機業地の中心にあるというような点から、特別に扱つてもらいたいという希望をお出しになるのも、これまたむりもないだろうと考えます。そういう点がありましたために、文部省一般方針からいえば、一つ大学にいたして、あれを学部にすべきであつたのでありますけれども、地元の方の意見も十分に尊重して、なお研究よう、こういうことで留保されておつたわけであります。そこで文部省としては、むろん例外を絶対認めなければならぬというわけではございません。しかし繊維学校にいたしますと東京に繊維專門があり、京都にやはり繊維專門がありまして、それらがやはり單独昇格をしておるわけではございません。そういう例もあり、またほかの富山にいたしましても、金沢にいたしましても、新潟にいたしましても、幾つかある学校をやはり一府縣、一大学という一般方針に從いまして、それぞれ地元からいろいろな御希望があつたにもかかわらず、経費の点その他を考慮して一つにまとめた、こういう方針がありますから、その方針に対して例外を認めるとすれば、特にこういう理由があるのだということで、他を納得させなければならないわけであります。それについて十分はつきりした根拠が発見できないということで今日に至つたということでありまして、畜産大学ができた、あるいは水産大学ができたということは、文部省として初めからとつ一般方針に基いてやつたのでありますが、その点につきましては局長から申し上げます。
  52. 日高第四郎

    日高政府委員 昨日も小林委員から御質問がございましたが、水産大学は最近まで農林省所管でございましたのを、大学設置委員会にかけましてその所管を決定する際に、この法案にございまするように一年間さらに農林省の所管にいたすというような條件で話がついたわけであります。水産大学につきましてはそういう特別の事情でありまして、ただいままで文部省所管の学校を処理する方針の中に入れることができなかつた事情があることを御承知おき願いたいと思います。  それからもう一つ北海道にございます畜産大学につきましては、北海道が人口、地理的の廣さ、こういうような点で一府縣、一大学の除外例の中に入つておりますので、結びつけることがむずかしいので單科大学として認めたのでございまして、その点も御了承おきいただきたいと思います。
  53. 井出一太郎

    ○井出委員 あと簡單に申し上げます。大臣はそれに関する地元の事情その他、相当に御理解になつていらつしやるようでありまして、願わくは竿頭一歩進めていただければ、われわれの立場とまさに一致すると思います。これに関連いたしまして、東京あるいは京都の從來の高等蚕糸というようなものは單独に昇格しなかつたことを一つ理由にされておつたようでございますが、私はこれに東京、京都というふうな市街地にある学校とは、およそ趣を異にいたしまして、上田のごとき生産地帶といいましようか、ほんとうに養蚕なりあるいは機なりに接して、実地のそういう便宜を多分に受けておりますような場所に一つ單科大学を持つといことは、日本の今後の経済発展の上に大きな効果を與えるものではないかと考えまして、特にこの上田繊維專門学校單科大学昇格をこいねがつておるものであります。なおこの学校は針塚長太郎という一代の教育者が心魂を注いでつくつてつたところの一つの学風、こういうものをわれわれは承知いたしておるのでございます。これを信州大学に画一的にまとめられますれば、それがほかの学部の方へもよき影響を與えるならばけつこうでありますが、かえつてそういう美風がぼかされるおそれが多分にありはしないか。また長野縣の立地條件といたしまして、非常に山脈が重畳をしている。信州大学と申しましても、その一部の中心は長野市にあり、他の一部の中心は松本市にある。それにまた上田を含めるというようなことになりますれば、それぞれ十里、十五里というような旅程がそこに加わつて参るのでありまして、そういう意味からも、長野縣の土地あるいは人口、こういつた立地條件にかんがみまして、ここに一つ單科大学を設けることが非常に適切ではないかと考える次第でございます。この問題は私のみがこれに関連して質問しておりますこともいかがかと思いますので、先ほど小林君がすでに委曲を盡して申し上げたと思いますから、この程度をもつて打切りますが、ねがわくば文部委員の各位におかれましても、この特別の事情をとくと御了解いただきたい。以上を申し上げまして質問を打切ります。
  54. 原彪

    原委員長 松本六太郎君。
  55. 松本六太郎

    松本(六)委員 私の他の諸君によつて大体御質問がありましたので、質問を打切ります。
  56. 原彪

    原委員長 渡部義通君。
  57. 渡部義通

    ○渡部委員 文部大臣は過日から大学の自治とか行政処分については大学行政法によつてきめるとおつしやいましたし、また大学の自治についての文部大臣のお氣持については、われわれは了とするものであります。ところがこの國立大学設置法案の中に、まさにこの自治とか行政とかに関する重大な関係のある部分があり、しかも学生をも含む学校側の最大の関心を集めておるような職員の任免、懲戒その他人事管理に関する條項があるわけであります。單にこういう條項があるというだけではなくて、この條項において最も注意しなければならぬのは、こういう事情が國家公務員法及び教育公務員特例法によつて定めるということになつておるわけであります。昨日私はこの点について文部省側の御見解を伺つたのですが、稻他政府委員説明は何回聞いても私たちの質問した要旨に合わない、ピントに合わない説明がありましたので、あらためて責任ある大臣の御意見をお聞きしたいわけであります。それでこの國家公務員法によつて教員の任免、懲戒、人事管理をするということになると、これは教育職員免許法の場合にも問題になつたところでありますが、この中には御存じのように「日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体を結成し、又はこれに加入した者」という條項が入つておるわけであります。ところがこういう條項はこの教育職員免許法に関する限りにおいては、関係方面意見としまして、これはあまりに自由を制限することになりはしないかというふうな意見があつたように法制局長が明言しておるわけであります。そうすると大臣がせつかく大学の自治を重んぜられるというお氣持があつたにしても、このよう條文がこの中に入つておりますと、やはりこれは大学の職員の任免、懲戒、人事管理等を不当に抑圧する、自由を制限するようなことになりはしないか、自治を破壞するようなことになりはしないかという懸念が十分にあり得るわけです、この点について私は昨日お尋ねしたところが稻田政府委員は、こういう國家公務員のかかわる問題においては、國家公務員法のこういう規定を入れるのが法律を作成する上での常識的なことになつておる、そういう技術的な点からだけお答えになつたわけです。しかし私たちの聞いておるのは、この技術的な問題ではなくて、こういう法律をつくるときにはこういう條文を必要とする、またそういう條文を入れることが慣例であつたというような法律作成の技術的な面ではなくて、このよう條文があることは、関係方面の言つてつたよう精神に矛盾しはしないだろうか。從つて事実上、学内自治とか、学内において今日非常に高まつて來ておる自治的な機構の実際上の行政とかを押えるような結果になりはしないか、こういう点をお尋ねするわけです。
  58. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 こまかい法制技術のことは、私よりは局長の方がよくわかつておりますから、その方で説明申し上げるかとも思いますが、全般的な意味として申し上げますれば、ただいまお話になりましたのは、つまり私の解釈ではこういう條項がありますと、ややともすると、これが濫用されて、そうして自治を害するおそれがあるのではないかというふうに私は解釈できるのであります。濫用されなければさしつかえない、濫用された場合にそういう結果になると私は考えるのであります。どんな法律の場合におきましても、そういうことは、どうしても起きやすいことでありまして、——むろん法律適用につきましては、濫用のないように、ほんとうに法律の精神に合致するようにこれを適用すべきである。そういう精神でやつて行きますれば、私はさしつかえないだろうと考えております。
  59. 渡部義通

    ○渡部委員 私の質問は、濫用されるかどうかという問題ではなくて、こういう條項があること自体が、すでに関係方面が言つておるよう精神にも矛盾することであり、現在たとえば名古屋大学とか、その他の大学、高瀬大臣が学長をしておられた京大においても同様でありますが、かなり教員の任免その他に関しては学生意見までも含めた、りつぱな技術的な機構が成長しつつあるわけなのです。こういうときに、技術的にこういう傾向を押えることにもなりますし、またこの法案を入れただけによつて、すでに学内自治という精神と矛盾しておるのではないか。法律をつくる技術とか、もしくはこの法案をつくつておいて、それを運営する場合にどうするかという問題ではなくて、この條項を入れておくこと自体が、すでに矛盾しておるのではないかという点です。
  60. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 私の考えは、ただいまのような御意見でありますとすると、はなはだ遺憾ながらこれを入れておくことによつて、当然にそういう結果になるとは考えないのであります。
  61. 渡部義通

    ○渡部委員 当然にそういう結果になるというよりも、入れておくこと自体がすでにそういう精神と矛盾しておるという見解なんです。(「見解相違だ」と呼ぶ者あり)これは見解相違ではない。
  62. 原彪

    原委員長 質疑を続行してください。
  63. 渡部義通

    ○渡部委員 今続行しておるのです。私の言うておるのはこの法文を置いておくこと自体が、運営の問題とは別個に、関係方面なんかの精神とも矛盾しているように常識的にさえも考えられるということです。
  64. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 そこは意見相違になるのです。
  65. 渡部義通

    ○渡部委員 それからもう一つ、十五條の中の國立学校の組織及び運営という点であります。これはこの前の説明によりますと、学長とか事務局長とか主事とか教授、助教授、こういう職種に関するような事柄であつて、これだけを文部省令できめるのだというふうなことがありましたが、運営に関してはどうなのです。
  66. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 お答えいたします。新らしい大学の運営方式、あるいは管理方式につきましては、今までたびたび申し上げましたように、今研究中の大学校においてはつきりと規定するつもりであります。しかしそれがまだ研究中で準備ができておりませんから、今まで大学においてやつておりました自治的運営管理の方法によつて新制大学はやつて行くのだ。こういうことになつておると考えております。
  67. 渡部義通

    ○渡部委員 今までの通りでありますか。
  68. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 大体そうです。
  69. 渡部義通

    ○渡部委員 それでこういうことをきめる場合にもこの前私が文部省の方へ要求してあるわけですが、大学に置かれた職員の定員ということをきめる場合にも、これはわれわれがここに審議をする上に非常に重大なる事情が含まれておるものですから、これに対する資料を具体的な事実に基いて至急委員会に提出してほしいということを要求しておるわけですが、その点はどうなつておりますか。
  70. 森田崇

    ○森田政府委員 先日御要求になりました資料につきましては、目下極力作成中でありますので、できるだけ早く提出するつもりであります。
  71. 渡部義通

    ○渡部委員 それからこの全体を通じて文部省令できめるという重大な問題がそこここにあるわけです。この文部省令できめる場合にも、民主的なものにきめるということを稻田政府委員その他がよく言われますが、民主的にきめるということの保障がこの委員会に対して與えられ得るものですか。またどういう方法でやるのか、その大体の見当がついておるのですか。
  72. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 どうも具体的に個々の場合になりませんと、この場合はどういうふうにしてきめるということは言えませんで、一般的にどういう方法でやるというわけに参りません。しかし精神といたしましては、局長が申したよう文部省がかつてに独断で氣分的にきめるなどということは、一切やらないつもりであります。
  73. 渡部義通

    ○渡部委員 それでは問題はまだありますが、私の今後の保留するものも含めて、これで打切つておきます。
  74. 岡延右エ門

    ○岡委員 この際文部大臣にはつきり伺つて置きたい二つの案件がございます。第一は先程渡部君から申されたこの大学行政法の問題であります。これは昨年の夏以來院外運動が猛烈に展開されておる問題でおります。しかもわが委員会に対しましては、これはいつ出すものかさえ、明示されておらないのでありますが、非常にこれは重大法案でありますので、この際文部大臣においては、それをいつ國会に提出相なるものなりや、その点をはつきりと示していただきたい。  第二にここに國立学校設置法案なるものが審議されておるのでありますが、私学校案というものは、この國立学校設置法と車の両輪をなさなければならぬと、われわれはかたく信じておるものであります。しかもその職域というのも——いつかこれはあとでお伺いするのでありますが、この私学校案に盛られた内容というのは、たとえば國法によつて私学の補助は禁止されておるのであります。それからまた私学に寄付をすれば過大な税金をとる。たとえば遺言よつて一千万円の寄附を学校にするといたしますと六百万円を相続税によつてとる。それから贈與税を二百万円とる、合計八百万円は國家が追いはぎをするよう状態である。そういう法案であるというふうにもわれわれは仄聞しておつた次第であります。はたしてそういう内容を持つた法案なりやいなや。またその私学校案が、われわれとしましては、当然國立学校設置法案と車の両輪であるから、一緒に提出に相なつてしかるべきものだと固く信じておつたのであります。ところがいまだにそれをいつ出すものかさえ明示されておらないということは、はなはだ遺憾千万であると思うのであります。かくては私立学校というものはもう立つて行けない状態である。國家の補助もいかぬ、戰災校復旧に対しての融資もできない、寄付する人があれば、國家が追いはぎをする。どうしてこういうような状況で私学が立つて行くことができますか。國立大学には当然の帰結ではありますけれども國家が全額を持つ、しかも私立大学においては寄付をしようという善良なる人があると、これを取上げてしまう。かくのごとき考え文部行政の全体を持つ人として、どういうふうにそれに対してお考えに相なるやということをもお聞きしたい。  それからはつきりここでお伺いしたいことは、大学行政法をいつ國会に御提出になるお氣持か。私学校案を一緒に提出されなかつたことは、はなはだ遺憾とするのであります。これは私の個人の意見で民自党を代表した意見ではありませんが、この法案はいつ出るのか。これは当然車の両輪として一緒に審議すべきものだと固く信ずるのであります。文部大臣の明確なる御答弁を要求したいと思う次第であります。
  75. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 大学校あるいは大学行政法につきましては、たびたび問題になりまして、私からも申し上げてあるのでありますが、非常に重大な法案でありますので、十分愼重に各方面意見も聞いた上できめたいということで、決してほうつておるわけではありません、文部省としても十分研究しておるわけであります。むろん新大学発足と同時にこれが行われることが望ましいことであつたのでありますけれども、ただいままでの準備の都合から、それができなかつたのははなはだ遺憾であります。從いましてできるだけ早くこれはやりたいと考えてはおりますけれども、そういう非常に重大な問題でありますために、この國会にはむろん提出できません、今後いつ出せるかという見込みでありますけれども、ただいま檢討をいたしておりますから、早ければ次の臨時國会、あるいはそれに間に合わなければその次の國会、こんな見当になつております。そう御承知を願います。  それから私立学校法案でありますが、これは文部省も長い間檢討を続けまして、草案のようなものはもうできておる。できればこの國会にやはり御意見のありましたように出したいと考えて進めておつたのでありますけれども、いろいろ財政上の点もありまして、それらの点が文部省考えておる法案通りにすぐは解決がつきそうもないというようなところから、遅れておるのであります。私学校案につきましてはお話がありましたよう寄付金に対する税金等の問題も何とか有利に解決したいということが考えられておるのであります。それらの点がございまして、財政的にすぐは解決がまだつかないで遅れておる。そう御承知を願いたいのであります。しかしできるだけ早くこれを出したいという氣持でおります。
  76. 原彪

    原委員長 國立学校設置法につきまして、ほかに御質疑にございませんか、——それでは質疑はこれにて終了いたしました。
  77. 小林運美

    小林(運)委員 この國立学校設置法につきましては、先ほど私は質疑を留保しております。それは私の都合ではない。文部当局がこの問題でまだ明確に発表できないからという、そういう理由質疑を保留しておるのであります。それを打切るとはどうもおかしい、これはどうしてもその問題がはつきりするまで質疑を継続してもらいたいと思います。
  78. 岡延右エ門

    ○岡委員 質疑はただいま小林委員が保留された点だけにとどめて、あとは打切るということにしていただきたいと思います。
  79. 原彪

    原委員長 ただいまの岡君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  80. 渡部義通

    ○渡部委員 私の方は先ほどの資料を出してほしいこれは審議の上に実に重大なものであるということは、たびたび申しておるはずであります。從つて資料の出ないうちに、われわれの意思が決定しないうちに質問を打切られることは不当だと思います。
  81. 原彪

    原委員長 それでは岡君の動議に贊成の方は起立を求めます。     〔贊成者起立〕
  82. 原彪

    原委員長 起立多数。岡君の動議の通りきまりました。
  83. 庄司一郎

    ○庄司委員 議事進行について委員長は一旦質問の打切りを宣告されてから、委員の要求によつて簡單な発言といえどもお許しになるということは、委員長の議事に対するところの宣告の権威に関する重大な問題であります。私は決してわれわれ同僚委員、あるいは議員の言論の自由を抑圧せんがためにこのことを言うのではない。委員長委員長の権威を持つて、その信念の上に立つて、あなたの宣言を権威あらしめるところの発言をしなければなりません。文部当局に同僚委員諸君の中で参考資料を要求されておるが、いまだにその参考資料が出ていないために、遺憾ながら質問の継続ができない方には、特に議会の委員会の慣例により、討論の際において簡單なある一定の時間の質問を許す、こういうような方法をとられることが、議会において言論の自由を最も尊重せられるゆえんであるということを委員長に私は議会の慣例の上に立つて、御注意というと失礼でありますが、ごらんの通り頭のはげておる古い者でありますから、御忠告申し上げます。
  84. 原彪

    原委員長 ただいまの庄司委員の御要望はまつたく承知いたしました。  なお本会議において勞物法一部改正の法律案が上程されておりますので、暫時休憩いたしますか、あるいは審議を進めてその中途で休憩にいたしますか、お諮りいたします。     〔「休憩贊成」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 原彪

    原委員長 それでは暫時休憩をいたします。     午後四時二十分休憩      ————◇—————     午後五時五十分開議
  86. 原彪

    原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  年年のとなえ方に関する法律案が、昨日参議院より送付されて参りました。本法案に対する発議者参議院の山本有三君に提案理由説明を求めたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 原彪

    原委員長 それではさようとりはからいます。山本有三君。
  88. 山本有三

    ○山本参議院議員 年齢のとなえ方に関する法律案につきまして提案の理由をご説明申し上げます。  この法案の最初にございまするように、発議者は十八名になつております。これはある一党とか一派だけのものでございませんで、参議院における各党派、各会派すベてが十八名の中に網羅されております。各派ともこれに贊成したものでございまするが、今日は提案の理由説明として私がそれを代表いたしまして理由を申し上げるわけでございます。  最初にこれの趣意を申し上げたいと思いますが、日本におきまして年齢のとなえ方につきましては、明治三十五年に年齢計算に関する法律というものが出ておりまして、法律の上では年齢は満で数えることになつております。從いまして、たとえば選挙資格でありますならば満二十才というふうなことになつておるのでございます。法律ではすべてそういうふうになつておるわけでありまするが、世の中の習慣は昔からの習わしで今もつて数え年でいたしておりますが、昔のそういう法律も出ておることでありますし、これを満で普通の生活においても計算した方がよいではないか、これが提案の趣旨でございます。  その理由といたしまして私たちはいろいろのことが考えられまするけれども、大きくわけまして四つ数えてみたいと思います。  第一には、今のように数え年でなしに満に勘定しますことは、一種の日本の人たちの若返り法のような形になると思います。現在の日本では税金のことで國民が非常に暗い氣持になつております、あるいはその他の生活についても何となく暗い氣持になつておりまするが、せめて年齢の上ででも若返るというようなことは、氣持の上でもたいへん明るい氣持がいたしますので、予算を伴わないで國民の氣持が明るくなるということは、政治の上で大事な点ではないかと思う。これはたいへんに通俗的な言い方でありまするけれども一つ理由に勘定できるというのであります。  第二には、生れますとそれを届出ますのに、ここにおいでの方たちはむろん生れた時にすぐに届出をなさいまして、それが正確にできておると思いまするけれども、なかなかそうでない例が多い。ことに十二月などに生れますと、翌年になるとすぐにもう二箇月のうちに自分は二年に勘定されてしまう。それが嫁入りのときなんかになると大きな関係を持つて來ますので、しばしば正確な届出をしないということが現実に行われております。これは非常におもしろくないことで、生れたら生れた時から正直な生き方をして行きたい、正直に届出をする。生れた時から正直にやつて行くんだ、そうして同時に合理的にやつて行くんだというように、國民の生活の態度を最初からそういうふうにして行くことは、これからの日本にとつて非常に大事じやないかと思われます。もし満で数えるということになるならば、十二月の三十日に生れましても三十日に生れたんだと通告しまして、それは翌年すぐに二つになるわけじやありませんから、みんなが正確に届けるようになるだろうと思います。  それから第三番目には、國際性を考えましていたしたわけであります。年齢の数え方は、たしか戰爭中であつたと思いますがこの問題が出たことがあるのでありますが、統計局等の反対によりまして当時出なかつたやに聞いておりまするが、統計は欧米等におきましては、どこの統計も満で数えております。もし日本が満で数えない統計でありますると、國際性がないわけでありまするから、そういう上でも國際的の年齢という問題になりまして、統計ができたら國際性に合せて行くような方法がいいと思います。かつまたその点につきましてもちろん統計局等にも話合つたのでありまするが、統計局等も贊成でありまして、そういうふうに行きますと年齢の統計の問題も國際性を持つということになりまして、日本が今までのよう日本々々というのでなしに、國際的な日本という立場になるので、この点もいいのだと存じます。  第四番目に、これは一番むずかしい問題でありまするが、配給のことでもし満で数えられると、さまざまな不合理が起りはしないか、不合理といいますか、あるいは不平が起りはしないかという点があるのでありまするが、これも実際から申しまして、最初に申し上げましたように法律五十号というものがありまして、農林省から配給公團に対して食糧の配給をする場合には、今のような法律がある建前上、満でするのが当然だと思うのであります。ところが便宜主義的な立場から今まで配給を数え年でやつてつたのでありますが、これは今の法律五十号に照しましてもおかしいのじやないかと思います。ことに配給量はカロリーを土台にいたしまして、何才の者はどのくらいのカロリーということで計算しまして、そのカロリーの立場から何グラムということが出て來てグラムでやつておるのでありますが、あのグラムは満をもつて数えておるのか、あるいは数え年を基準にしてやつておるのか、これを配給公團な農林省にただしましたところ、それはやはり満なんだという答弁を得ましたので、その点から言つても満としなければおかしいと思うのであります。昨年十月にある家庭で子供が生れましたが、今年二月になりましたところ、さつそく二才だというのえキヤラメルの配給がございました。ところがその赤ん坊は昨年十月に生れたので半年にならない、もちろんお母さんの乳のほか飲めないのにキヤラメルが來るというようなわけで、満としないために非常な不合理があるわけでありますから、先ほど申した法律五十号の上から、あるいはカロリーの計算をする上から、いずれも満でするのが正しい、正しいのでありますけれども、今まで数え年で配給しておつて、すぐさま明日から満でやるということになりますと、不平も起りましようし、ある人は得をする、ある特殊の人は損をする人も起ります。急にやることは何ですから、よく國民にそこを理解してもらつて、その上でやるならば、なるほど今までの上から満でやるのがほんとうだというよう國民も理解してくれると思いまして、またもちろん農林省、東京都の配給の方の係、あるいは総理廰の地方自治課の方とも十分に相談をいたした結果、來年の一月一日からであるならば、配給の面においても十分にやつていけるということを農林省を初めみな申しますので、実施の点については時間を置きまして、ここにございますように、來年の一月元日からそういうふうにしていただきたいということにいたしたわけであります。  今のよう理由からもまず一番問題が起ると思うのは配給の点でありますが、今のようにすれば、配給についても問題はほとんどございません、そういうよう理由から満にした方がよろしいだろうということから取上げました。そうしてこれは皆さんも御承知でありましようが、すでにいろいろの新聞がこれを大きく取扱つておりまして、國民の輿論というものもほぼわかつております。それでラジオ等でもすでに発表されたやうに聞いておる。私は聞きそこなつたのでありますが、実はラジオを聞いて、ぜひそれをやつてもらいたい、というような投書が、私のところに参りましたので知つたのであります。ラジオ等においても放送しておるわけであります。これに関係の官廰といたしましては法務廰、統計局、運輸省、農林省、総理廰の自治課、東京都、配給公團、その他これに関係のあるものは再三、再四呼びまして、意見を求め質問したところ、いずれも関係の各官廰あるいは公團等も贊成しておりますので、かたがた出したわけであります。  大体提案の理由は今のような次第でございます。
  89. 原彪

    原委員長 これより質疑に入ります。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 参議院側からこうしたきわめて文化的な議案が提出されたことを深く敬意を表するものであります。われわれがこうして非常に多忙をきわめて各種の法案に没頭しておるとき、こうした文化的潤い深き御研究を積まれて、文化國家に寄與されつつあることに重ねて感謝をささげる次第であります。由來衆議院と参議院の性格から見て、参議院はこうした專門的な立場で國政に参與する、われわれは直接輿論に切実な関係を持つてつて行くという一つの特色があつて、参議院のかなえの軽重を重からしめたものであるということを深く敬意を表する次第であります。  この年齢を満で数えることは、先ほど御説明があつた通り、きわめて実際に即して適当であると思います。私もこれにはわが党を代表して贊成を表しますが、ただ実際問題として満何年何箇月と呼ぶことが困難であるので、何箇月までを実際には言わないので、満で打切つて、その次の満になるまでの通称は今のように何歳、こう呼ぶようになるよう考えておられますか、その点ひとつ
  91. 山本有三

    ○山本参議院議員 お答え申し上げます。この法案の初めのところに、「(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。」こうなつておりますが、これは一歳に満たない子供の場合、統計では零歳として、日本では今まで勘定しております。外國の場合を聞きますとアンダーワン・イヤーという言葉を使つておるのであります。ただ表にとる場合はよろしいと思いますが、赤ん坊の場合は何箇月になりますかということが出て來ると思います。そういう場合には一箇月であるとか三箇月であるということを、一年以下の子供の場合には使つたらよいだろう、しかしながら五十歳と三箇月だという方の場合には、私は五十歳と三箇月でございますと一々答える必要はないので、それは当然五十歳、こういうようにします。ただ赤ん坊の場合、統計は零歳でよろしゆございますが、何箇月になりますかという場合には月で数える。しかし一歳以上の場合には、一々月で数える必要のあるときは別ですけれども、必要のないときは月は数えない、こういうようにわれわれは考えております。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、特にさしあたり問題になつて來るのは、先ほどお話もありましたが、食糧配給の場合で、今は数え年で何歳で幾ら幾らときまつておりますが、この配給基準量が一年間にすべてに変動がありますから、その都度届出をすると、市町村はてんてこ舞いをする、二月になるとこれが何人何才になつたというようなのが、どんどん移動が報告されることによつて、主食の配給所の台帳は常に変化するという実際上の問題が起つて來るわけでこういう配給の上に何らか適当な措置をとらないと、当面の問題として、しばらく事務になれない人たちに多数の事務の過重な負担を與えるということと、人手が不足しておるときに錯綜するということになりますので、こういう点について配給上における便宜的な措置を、たとえば一年間を何回かにわけてこういうように配給したらよいというようなことをお考えになられたと思いますが、その点について御意見を伺いたいと思います。
  93. 山本有三

    ○山本参議院議員 たいへんごもつともな質問でありまして、特にわれわれもその点は考えたのでございます。それでありますから、実施を來年の一月元日とした、つまり半年以上間を置いたのはそこにあるのでございまして、これは実際面でございますから、私農林省でもなし配給公團でもないので、こまかいことまでは御答弁しかねるのでありますが、当然、これに農林省も配給公團もむろん考慮に入れた上、安本とも話合つた上でいたしておるのでありますが、間に、それについて不平がないように、また事務の煩瑣がないようにやつて行く。そのために実施を一月一日に延ばしておるわけでありまして、それらの事務的な問題は、農林省なり配給公團、あるいはそれぞれの市町村なりが、この期間にやることになつておるのであります。これはあなたの御質問に沿わぬかもしれませんけれども、私としては当局でないものですから、あまりこまかいことは申し上げられないので、御了承を願いたいと思います。この点当局において十分考えて指示するはずでございますし、配給量の問題も、年齢の区切りを幾つかにわけておるようでございますが、農林省としても一層公平になるよう考えるということでございますから、この期間にあちらにやつてもらうように手配をしてある次第でございます。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 外國の例に徹して種々御研究の跡を拝聽したのでありますが、アメリカその他の諸外國において、通常何才と言われておる場合は、満に達するまで、たとえば五月に生れた人は五月までは、私の例で申しあげますと四十才、それから先に四十一才、こういうふうに一年に年齢二つにわかれて一般に廣げられるわけでございますか。それともその一年は三十九才、四十才と一ぺんに数えるようになつておりますか。
  95. 山本有三

    ○山本参議院議員 お答えいたします。今あなたのおつしやつた前の場合で、達しない者は十一箇月でもすべて前の少い方の年齢で行くわけであります。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 一年が二つにわかれるのですか。
  97. 今枝常男

    ○今枝参議院法制局参事 ただいまの点は、一年のうちに人によりまして、年齢が二度かわることになります。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 その実情がそうなつておるのでしたらさしつかえないと思います。一月一日に生れた者は、一年を通じて非常に氣楽ですが、そのほかの者は一年に年齢二つに数えられる。たとえば正月から年の暮までの間に、三十九歳と四十歳と二回経過するわけです。諾外國においても、アメリカの大統領が六月に五十歳として、今度十二月には五十一歳だ、こういうふうに、実際一年を二回に数えられているのでしようか。そういう点、技術的な実際の問題として、われわれ今後考えなければいかぬのです。私も六月になると満三十九歳になるのですが、それまでは三十八歳と、一年を二回にわけて数えられるわけですね。
  99. 今枝常男

    ○今枝参議院法制局参事 法律の建前は、そういうことになります。ただいまお尋ねの、たとえばアメリカで実際にそうやつておるかどうかという点につきましては、現実にそこまでの調べはついていないわけでございます。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 いろいろ実際問題はこれから一月まで研究する余裕があるのですから、その間に種々研究討議して、万遺憾なきを期する必要があると思います。十分用意できますので、一月一日の実施は非常に贊意を表します。同時に、先ほどおつしやつたように、敗戰後、こうして氣分が若返るということだけでも、非常に印象が深い。來年、年をとつて一つ若返ることになるので、氣分的にも切りかえをするのは非常にいいことだと思います。今参議院廃止論の空氣があるときに、これほど実際的にわれわれの氣のつかぬところに留意されたことに対して、重ねて敬意を表して私の質疑を終る次第です。
  101. 原彪

    原委員長 ほかに御質疑はございませんか。——これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。
  102. 水谷昇

    ○水谷委員 この場合討論を省略いたしまして、採決に入られんことを望みます。
  103. 原彪

    原委員長 ただいまの動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 原彪

    原委員長 御異議なしと認めます。よつて動議は可決せられました。  採決いたします。年齢のとなえ方に関する法律案に贊成の諸君の起立を求めます。     〔贊成者起立〕
  105. 原彪

    原委員長 起立総員。よつて原案は可決せられました。  議長あての報告書の内容につきましては、委員長一任に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 原彪

    原委員長 それではさようとりはからいます。  明日は午後一時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後六時十八分散会