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日高政府委員 お話のように、従来の
日本の
教育方針というものに非常な過誤がありまして、今回の戦争の原因の中にも、そういう面は確かにあると思うのであります。そういう
意味において、
日本の
教育が過去の
教育のように、國民をただ國民としてだけ考える。人としてあるいは人格として考える面が、むしろ背景にしりぞいておりまして、すべて
日本國民というような
立場からのみ
教育が考えられる。またそういう
意味においての一種の心理的の組織というものができておりまして、それをや
つて來たことの弊害を、私
どもは反省しなければならないのでございます。こういう点から、御
承知のように
教育基本法というようなものまでも制定いたしまして、新しい憲法の根本
精神を一貫した方針で、現に
日本の青年たちの
教育をいたしておるわけであります。その中には申すまでもなく民主主義
教育というものがその根本にあるわけでありますが、その民主主義
教育というものの背景には新しい
意味におけるヒユーマニズムがなければならないというふうに考えておるのでありまして、これらのことが
日本の國民
一般、
父兄や教師諸君に対しても一つの信念に形成されるまでには、多少の時日を要するものでありまして、これを今急にその感情的宣傳機関のごときもの、あるいは指示機関のごときものをつく
つて日本の
精神教育のよりどころにするということには、便宜な点もあるかもしれませんけれ
ども、裏にはまた恐るべき弊害も起るのでありまして、こういう点では單に
政府あるいは
文部省等がいわゆる音頭をと
つて指揮をするというような点については、十分反省をして愼まなければならないのではないかと考えておる次第であります。また特別な組織をつくるということについても、いろいろ弊害もありますし、困難もあるのでありまして、こういう点は
日本國民全体が、親たちも教師たちも、眞の民主主義がどういうところにあるか、またその裏にあるヒユーマニズムというものがどういう基礎を持たなければならないかということを、むしろおとなから学んで、それを実践することによ
つて、初めて
青少年の
教育というものに効果をあげることができるのではないか。こういう点から考えますと、
青少年の
教育よりも、まずおとなの
教育が必要であるし、おとなの
教育はわれわれが教科書をつく
つてできるようなものではないのでありまして、これは國民全体の課題として、健全な
日本國民として独立の國民であ
つて、しかも世界のどこへ行
つても尊敬もされ、愛されもし、また信用もされるような、そういう世界的な廣い見識のある
日本人となることをお互いに心がける以外に道はないと思うのであります。御
趣旨の点、私
どもも現在の
青少年がよりどころに迷
つておるという点において、はなはだ残念なところはたくさんあるのでありますが、これは各自の自己教養というようなことを通して、
青少年の指導に誤りなきを期する以外に道はないのではないかというふうに考えておるのであります。