○日高
政府委員 今お目にかけました十一原則のうち、初めの五つと終りの一つがおもなる点でありまして、ちよつと簡單な要点だけを読み上げます。
新制
國立大学の
実施に当
つては、その大学が同一
府縣内の同一部市又は同一の場所にあることが望ましいが、
現状に副わないものがあるので、現在の
学校の位置、組織、施設等の実情に即して、次の諸原則によ
つて切替え、なるべく経費の膨脹を防ぐと共に、大学の基礎確立に努める。
一、新制
國立大学は特別の地域(北海道、東京、愛知、大阪、京都、
福岡)を除き、同一地域にある官立
学校はこれを合併して一大学とし、一
府縣一大学の実現を図る。
その特別な地域と申しますのは、括弧の中にありますように、北海道、東京、愛知、大阪、京都、
福岡でございます。北海道から
福岡に至るまでのうち、京都を除いては人口三百万以上を持
つております大きな
府縣でありまして、他との人口の差が相当はなはだしいのであります。
もう一つの視点は、東京、大阪、京都は、高等専門
学校が非常に偏在いたしておりまして、
昭和二十二年四月の統計によりますと、東京には百六十九ございます。大阪には四十一ございますし、京都には四十一ございます。そのほかはおおむね二十以下でございます。こういう非常に際だつた差異がございまして、一
府縣一大学というのを機械的にきめましても実行できませんので、北海道、東京、大阪、京都、
福岡等の六
地方を除外例にいたしたわけであります。
二、新制
國立大学における学部又は分校は他の
府縣に跨らぬものとする。
三、各都道
府縣には、必ず教養及び教職に関する学部若しくは部をおく。
この三は、今度の大学の特徴に基きまして、各都道
府縣に一般教養あるいは基礎学科をやるような学部もしくは部を置くのと同時に、各
地方の教員養成のために教職の学部もしくは部を置くという趣意であります。
四、新制
國立大学の組織、施設等は、差当り、現在の
学校の組織、施設を基本として編成し、逐年これがこれが充実を図る。
五、女子
教育振興の為に、特に新制國立女子大字を東西二箇所に設置する。
この点はいろいろ異論もあ
つたのであります。新制
國立大学は、男女共学ということを原則にいたしておりますので、特に女子の大学を設ける必要はないという議論もあ
つたのでありますが、実質的に
考えまして、從来
日本の高等
教育機関において、女子が閑却されておりました償いの意味で、東西に女子大学を置くという原則を立てたのてあります。
最後の九、十は御承知のことだと思いますが、
九、新制
國立大学の教員は、これを編成する
学校が推選した者の中から、大学設置
委員会の
審査を経て選定される。
これは
学校がいわば昇格しますと、教員がすぐに昇格するということは、いろいろ弊害がありますので、ここで
審査を受ける建前にいたしたわけであります。
十、新制
國立大学は。原則として、第一年より発足する。
十一、新制
國立大学への転換の具体的計画については、
文部省はできるだけ
地方及び
学校の意見を尊重してこれを定める。
意見が一致しないか又は転換の條件が整わない場合には、——(転換の條件が整わないというのは、大学設置
委員会で不合格に
なつた場合を予想しておるのでありますが、こういう場合には)——
学校教育法九十八條により、当分の間、旧制のまま存続することができる。
実はこの十一の原則につきましては、
文部省に於いてもいろいろともんだあげくこういう原則を立てました。この原則については
文部省ももはや異存を言わないことにして出発をいたしたわけであります。
別の刷物にございます五の点をごらんいただきたいと思います。これは大学設置
委員会と
文部省の立場と責任を明らかにする意味において話合いができておりますので、その点を御了承いただきたいと思います。
(1)私立
学校の提出する案は設置者たる
理事会の決議を経なければ
委員会はこれを受付けない。
(2)
國立大学の案に関しては、
文部省は、私学の
理事者と同様の立場に立
つて、原案作成の責任を負う。
(3)
國立大学の原案作成の方式
学校当局並びに関係者の意見、
地元の希望意見、
文部省の全体的見地からの調査意見等をまとめる。
意見のまとまらぬときは次年度にまわす。
こういう方式をも
つて進んだわけであります。
六のところをごらんいただきたいのでありますが
國立大学原案作成上、いろいろの問題がありましたので、それを御
紹介申し上げて御理解と御批判とを得たいのでありますが、第一の点は、大学高等専門
学校の大都市に集中偏在する事実。これに先ほど申しました一
府縣一大学の原則の背景にこういう事実があるのでありまして、二十二年四月の統計によりますと、旧制の大学は全國で五十九ございますうち、二十八が東京にございます。そして大学生が約九万六千おりますうち東京におります者が四万九千、こういう事実がございます。大学高等専門
学校全部を合せますと、全体で六百三十五
学校がございまして、その学生が四十六万九千ございます。そのうち東京、大阪、京都にございますのが二十五万四千、およそ五四パーセントが東京、大阪、京都に集ま
つておるのであります。そういうことにつきましては、
文部省といたしましても、配置計画について十分検討しなければならないという問題があ
つたのであります。二年ほど前のときには、
文部省といたしましては、大学の配置については、たとえば北海道、東北、関東等の九つの大きい地域に総合大学を充実させて、その他の大学はそれの衛星的の存在として、できるだけ密接な連絡をつけて転換したならばよくはないか、実情にも即するし、将来もよくはないかということを
考えたのでございますが、六の(3)にございますように、
行政区画等について重大な変化がありまして、内務省が解体されるような情勢になり、警察制度もかわるようになる、
地方自治制が確率いたしましたり、
地方教育委員会の設立が要請されたりするような客観的な情勢の変更がございまして、初めの計画は架空なものになるおそれがありましたので、これをやめたわけであります。
それから六の(4)に出ております
日本の実力を
考えなければ、大学の転換は
考えられない。財政的にも経済的にも、ことに教授陣容の本弱であるというような点から
考えましても、これを一々の
学校が好むように新制の大学にすることは、願
つてもできない相談であるということを
考えたわけであります。
從つて(5)にありますように、整理統合してむだを省いて、できるだけ節約をする以外に、新制大学に転換する道がないという結論が出たわけであります。そして(6)に掲げましたように、現在の情勢では國土計画というようなものを十分に立てる余地はございませんけれども、しかしできるだけそういう観点を
考えまして人口、
産業、交通、
文化等をにらみ合せまして一應の案をつくろうというふうに
考えたのであります。こういう点から学科の統合や相互の補足、融通、協力というようなことをねらつたわけであります。そのほか(7)に掲げましたように、義務
教育の教員の養成計画については、
教育刷新
委員会からも総理大臣に建議がございますし、また本
委員会におきましても、前の文教
委員会のご意見の中に、教員養成機関はできるだけ総合大学の中でしろというような御指示もありましたので、そういう点を考慮して大体平均四つくらいの
学校を結びつけて重複を省いて、そうして新制大字の性格——これは(2)にございますように一般教養と基礎学科に特別な重点を置くというような点を
考えまして、計画を立てたわけであります。その計画を立てる際に大体その当時、数にいたしまして官立の
学校が二百六十八ございましたので、その二百六十八校を六十九の大学に統合しようと企てたのであります。その統合をする際には、何らかの基準がなければならないので、先ほど申し上げましたような十一の原則を立てたわけであります。
この十一の原則を背景にいたしますと、先ほどの
上田繊維専門学校は、残念なことでございますが
地方の御意見に沿いがたいような点が出てくるわけであります。それは一
府縣に一大学という原則に違反するということが一つ、それからもう一つは、私どもの
考えといたしましては、独立の大学でなければ
日本の繊維の研究ができないという点は、十分私どもには了解できない点が残
つておるのであります。私どもとしては、やはり原則に
從つて総合大学の一環として、長い傳統もあり実力もある
学校でありますから、総合大学の中の有力な学部として出発してもらいたいというのが
文部省の
考えだ
つたのであります。もう一つの難点は、御承知のように
繊維専門学校は現在官立に三つございます。
上田のほかに東京
繊維専門学校と京都
繊維専門学校とがございます。これらの
学校もそれぞれ今日の結合の場合には、多少のむりもあり、不満もあるのでありますが、先ほど申しましたように、個々独立では大学になれません。結びついて相互に補足し協力して
行つてもらいたいという趣意を述べまして、東京も京都も結合をして出発するようにな
つておりますので、
上田繊維専門学校だけを例外にすることがはなはだむずかしか
つたのであります。実はこの点につきましては、
小林議員を初め、出身地の議員の方々からもいろいろ御意見もありましたので、現在のところではこの問題をむりに解決することはいろいろ支障もあるかと思いまして、大学設置
委員会に
文部大臣が諮問いたしましたのを一應保留いたしてあるような次第であります。私どもの立場から申しますと、これを特に例外にするということは非常にむずかしい
状態にあるのでありますが、また国会の御決議によ
つていろいろ御意見もあることと存じますので、それについては
十分考慮いたしたいと思うのであります。
実情を申し上げまして皆様の御了解を得たいと思う次第であります。