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1949-05-25 第5回国会 衆議院 農林委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月二十五日(水曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 坂本  實君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君 理事 山村新治郎君    理事 八百板 正君 理事 小林 運美君    理事 深澤 義守君 理事 寺島隆太郎君    理事 吉川 久衛君       遠藤 三郎君    小淵 光平君       河野 謙三君    坂田 英一君       原田 雪松君    平野 三郎君       渕  通義君    村上 清治君      藥師神岩太郎君    石井 繁丸君       井上 良二君    大森 玉木君       竹村奈良一君    中垣 國男君       高倉 定助君  出席國務大臣         農 林 大 臣 森 幸太郎君         國 務 大 臣 青木 孝義君  出席政府委員         総理廳事務官         (経済安定本部         生活物資局長) 東畑 四郎君         農林政務次官  苫米地英俊君  委員外出席者         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  酪農業振興臨時措置法案小川原政信君外八名  提出衆法第十三号)  食糧確保臨時措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号)(予)     —————————————
  2. 山村新治郎

    山村委員長代理 これより会議を開きます。  議事に入る前に委員の異動がありましたから御報告いたします。昨日寺崎覺君が委員を辞任せられ、その補欠として同日高倉定助君が議長において委員に指名せられました。以上御報告いたします。  それでは前会に引続き食糧確保臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。なお御参考に申し上げておきますが、大臣は十二時にここを出なくてはならない予定だそうでございますので、そのつもりで御進行願います。
  3. 竹村奈良一

    竹村委員 大臣にお伺いいたしたいのでございますが、この食糧確保臨時据置法改正法律案提案理由説明の中に、総司令部から四七号の命令があつた。こういう指令があつたからこの改正案提出するということになつておる、こういう説明をされておるのでありまするが、それでは大臣はそういう命令がなかつたなら、こういう改正案提出されなかつたのだろうかという点をお伺いしたい。
  4. 森幸太郎

    森國務大臣 指令がなかつたなら出さなかつたかという御質問でありまするが、現在の超過供出は自主的な超過供出をお願いいたしておるのであります。自主的な超過供出の成り行きにつきましては竹村委員も御承知と思うのであります。その間に自主的とは申しながら、地方におきましては相当のむりをお願いいたしておるというような場面もあるのであります。しかも裏面にやみに米が流れているというような現実から考えまして、相当これは力強く——アメリカから食糧をもらつておる以上は、供出制度につきましても手を加えなければならぬ、こういう立場になりました。しかも指令として増産計画をするとともに、九原則に示しておるごとくに、集荷を一層強化せいという指令が参りまして、指令は御承知の通りの命令的に考えなければならぬのでありますので、供出現状にかんがみまして、法制化することを必要と感じたわけであります。
  5. 竹村奈良一

    竹村委員 指令命令と解するという、そういう点は大臣見解でありますから、それは別といたしまして、問題は今大臣の言われた、つまり実質的には米等横流しがある。もちろん一面において横流ししておる現状でありますけれども、昨日、私は農家数字を要求いたしました。今日いただきましたこの資料から見まして、少くともこれは全般的ではないのでありますけれども、農林省の集計から見ましても、一町百姓しておる者で二毛作で大体年の所得が十一、二万円、一町の耕作をしている者が十一、二万円の所得しかないということは、統計現実に現われておる。この現実からして、農民が米が余つておるから横流ししているのではなしに、諸物價とつり合わない米價で収支が償わぬから、いたし方なく自分の食べるものをいろいろくふうをいたしまして、飯米を削つて、そうしてそれが横流しになつておるというように考えるのでありますけれども、これに対して農林大臣はどういうように考えておられますか。
  6. 森幸太郎

    森國務大臣 横流しの実際はいろいろ見方があると思うのであります。どうも生計が苦しいから自分飯米を削つて横流しするというような向きもありましようが、そういうのはごくわすかで、量において少数だろうと思うのであります。これは三倍に超過供出は買つております。ところがはたしてどこでもそれ以上に横流しの米が高いかというと、そうではない。東北の方へ行きますと、かえつて三倍の價格より安くこれが出ておる。安いのをやみで流す。表へ超過供出に出せば三倍に買えるものを、マル公の二倍くらいで出しておるというのは、どういうところでそういうことをするかというと、これは表へ出ることによつて税金が加算されるとか、あるいは次の供出割当の基準が上つて來るとか、そういう点を考慮して、やみに流れるというのも相当あろうと思うのであります。必ずしも生活が苦しいから自分の食うものをさいて横へ流しておるというようなことのみではない、かよりに考えているのであります。
  7. 竹村奈良一

    竹村委員 私はそこが重大な問題だと思うのでありますけれども、そういうたとえば農家家計が苦しいからやつている——大臣のお言葉によりますならば、つまり税金やあるいは今度の供出がもつと多く來るから、これをやみに流すのだ、こうおつしやいますけれども、そういう事実を是正するということが、指令によりますならば先方において考えられている。つまり農民が納得して供出できる方策をまず立てて、それから集荷する方法を強化して行くということがこの指令に現われているのでありますけれども、それに対して政府は実施していない。つまり先ほどお尋ねいたしましたら、指令命令考えてやつたのだ、それもあるし、両方でやつたのだと、実にあいまいでありますけれども、こういう事態を改善しなければ、この法律が改正されても結局効果がないのであると私は確信するのでありますけれども、單なる向う指令だけで、しかもその農民に不利な部分だけを改正するという考え方を改めて、まず農民のそうした窮状を打開する政策を立てて、しかもなお横流し等がある場合には、こういういわゆる超過供出を法制的に取上げ、それを強化する法律を出すというふうに改められる意思があるか、それを聞きたい。
  8. 森幸太郎

    森國務大臣 今日食糧事情は窮迫しており、今アメリカ日本に対してどれだけの食糧輸入したらよいかということを、アメリカ國会できめておるのでありまして、事は急を要するのであります。この場合日本食糧供出集荷確保に対して熱意がないというような態度をアメリカの方で認められる場合におきましては、アメリカの立てておる輸入計画というものが、あるいは変更されるのではないかという心配もされるのであります。政府におきましては、今日の食糧事情アメリカから食糧をもらわなくとも行けるという見通しがついておれば、ゆつくりと事を構えておつてもよいのでありますが、今日の情勢は決してそこまでの自給自足の段階にまで來ておりません。どうしてもアメリカからこちらの予定いたしております百数十万トンの輸入確保してもらわなければならぬ。こういう場合でありますので、日本の全国民が日本食糧事情をよく認識して、なるほどアメリカからこういうふうにもらつておるような場合であるから、できるだけの供出をして、政府の方針に協力しようという立場になつていただくことが、日本政府として望ましいのでありまして、それがために農業生産のためのいろいろな施設につきまして、これは簡單に行われるものではありませんが、從來の内閣のやつておりましたことを、さらにこれにつけ加えて、そうして食糧増産が実際に効果の現われるように、あらゆる施設をやつてみたいと考えておるのであります。すべての施設をやつて、それから供出の方を強化すればよいではないかというように御議論になりますが、事実は今申しました二十五年度の食糧事情がどうなるかということが、すべてこの数日にかかつておるわけでありますので、今回の國会にこの法案提出いたしまして、そうして政府の意のあるところを國民諸君に理解してもらつて政府施策に協力してもらいたいというのが、政府としての考え方であるのであります。増産に対する施策につきましては、皆様の御協力を得て、今後さらに各般の総合施設を推進して行きたい、かように考えておるわけであります。
  9. 山村新治郎

    山村委員長代理 ちよつと参考までに申し上げますが、安本長官が参られております。なお時間は十二時ごろまでに切り上げなければならぬそうであります。
  10. 竹村奈良一

    竹村委員 時間の関係簡單に申し上げますが、今大臣のおつしやることはよくわかる、國内の食糧需給体制を整えなければならぬ。それには諸般の準備が必要である。こう言われておる。これはもちろんわれわれも了解するのである。しかしそれだからといつて農民だけが他よりも不平等な経済的取扱いを受けるということは、今日の新憲法の精神にも反するわけであります。從つて農民だけが——もちろん農民日本國内の食糧需給責任を負わなければならぬことだけはよくわかつておる、それだからその責任を負わせる場合においては、それにかわつて農民だけを不平等に扱うという観念をなくさなければならないものでないか。そうしなければいくら法制的に強化いたしましても、やはり生活が苦しくなり、子供を学校にやることができないというような状態に追い込まれた場合においては、勢い飯米を削つて横流しの米が出て来る。そうすると向うから再び、法制的に強化してもまだ横流しの米があるではないかというので、また命令が出る。命令が出たからもつと供出制度を強化するのだというようなことになると、ますます農民は苦しめられて來ると思うのでありますが、命令が來たから日本政府責任においてこれを処理しようとするのではなく、日本政府に宛てられた命令を、あたかも國民全体の責任であるがごとく考えて、次々に命令が出されたならば、必ずその命令來つて実情がどうあろうと、なおこういうふうにただ法律を強化される考えがどうかという点を、ひとつお聞きしたい。
  11. 森幸太郎

    森國務大臣 私は日本の今日の実情をお察し願いたいと思うのであります。政府といたしましては、できるだけこの命令というようなものを出してもらわないように、自主的にすべてを解決をして日本体制を整えて行かなければならない。また連合國におきましても、敗戰國でまだ独立は許されておりませんけれども、日本國自体が自主的に、できるだけ連合國の厄介にならないようにすべての政治を行い、経済を建直して行きたい。またそうさせたいというのが連合國側氣持でありますから、あえて命令の束縛をこちらが要望するのではない。できるだけ今後そういうものを出してもらわなくて、日本みずからによつて自主的に進んで行くというふうに持つて行かなければならぬと思うのであります。今お述べになりましたように、農民のみひとり虐待するというように御非難になりますが、決して農民に対して差別をして苦しめるということは毛頭ないのであります。今日の投階においては、企業家労働者農民、すべてが非常に犠牲拂つて國家再建に努力をいたしておるのであります。労働者諸君のお氣の毒なことも、また企業経営者の苦しいことも、また農民諸君食糧増産に対して苦しいことも、これは今日の日本段階においては、すべての階級が忍んで行かなければならぬことでありまして、決して農民だけ差別的にむりに押しつけてよいということは考えていないのであります。またすべて犠牲拂つて日本再建に努力しなければならぬのでありますから、そういう氣持は決して政府は持つておらないことを御承知願いたい。
  12. 竹村奈良一

    竹村委員 政府は別に農民を差別する考えはない。こうおつしやるのでありますけれども、米麦問題に関しましては、農民がわずか飯米を削つて一斗、二斗という米の横流しをした場合にも、摘発されれば非常に重く処罰をされる。これは國民食糧、生命に関する問題であるから、余儀ないと思いますけれども、そういうことをやられておる半面——経済安本長官もお越しになつたので、この質問の中に入つて来ると思いますが、そういうふうに片一方ではしながら、一方においては、農林省関係でも大きな不正というようなものがあるにもかかわらず、それがそのまま放任されておる事実がある。これは農林省でも、安本でも、少しの米でさえそういうふうに取締られておるが、実際同じ農林関係でも、木材関係になると実際に大きな不正を見のがしておられる。ここに大臣農民を虐待しないというけれども、いわゆる営林署の方の関係で、先般の新聞紙上にも出ましたが、いわゆる木炭関係では、五十五億の薪炭買入れ資金の中で十一億が赤字になり、それが現在どうなつておるかわからないというようなことが、あなたの足元で行われておる。またもう一つ申し上げたいのは、長野縣では、先般ここでどなたか御質問なつたと思いますが、こういう不正が行われておる。それは長野縣営林署関係、これは大体林友会というようなものがありまして、これが拂下げその他一切の関係をぎゆうじつておる。しかもこの林友会の事務所は農林省統計調査局地下室にある。それから木曽、福島ではいろいろなことがまだやられておる。たとえば長町縣上西廣三という人から営林局は四千万円を借りている。こういうことを言つている。それに続いて拂下げにあたつてマル公で拂い下げて、そうしてこれが拂下げを受けた林友会とか何とかいう関係やみで賣つて、それとマル公の差額をもうけておる。それから特別会計からは、百三十億というような融資を受けたり、いろいろなことがやられておる。これはあなたの管轄のもとでやられておる。こういうことは一向に放つておいて、家計に苦しんでおつて、少しでもやるならばすぐにひつくくる。実際割当の不公平で供出が少し残されたら、強権発動をして取締つて行く、こういういろいろなことがやられておる。これに対して一体大臣は今不平等でないといわれたが、私はこういう事実から見ても不平等もきわまると思うが、それに対する大臣所見をお伺いいたしたい。たとえば先般質問しました薪炭の十一億の行方不明事件というようなものが回收できるかどうか。五十余億のうちの十一億、大体四分の一でありますが、こういう問題に対して一体どれだけの大臣として所見を持つておるか、あなたの管轄でございますが、これに対してどういう処置をとられるのか、またこういう薪炭需給價格については、安本の方は十分うまく計画を立てておると思われるけれども、一体こういう不正はどうするかという点から考えても、実際農民は不平等であると考えるのですが、こういう点に対して大臣はどう考えておられるか、この際ひとつ、特にこれは先般の委員会でもどなたかから質問が出ておる問題ですが、はつきりこの際御答弁願いたいと思います。
  13. 森幸太郎

    森國務大臣 國の法律はくものすのように、こまかい虫はひつかかるが、大きい虫はこれを破つて行くということではならないのであります。今お話になりました林野局等の問題がいつ発生をしておりまするか、私は存じておりませんが、もしそういうようなことがあれは、断じて許せないのであります。またその事実をはつきり認めになれば、あなたの方から告発していただいてもけつこうであります。決して私は自分の下僚のやつたことであるから、これをいいかげんに葬つてしまうというようなことは断じていたしておりません。不正があれは司直の手に私が告発し、またそれを事実としてお認めなつた、そちらから告発されてもけつこうであります。小さいことなら法を犯してもいい、どんな大きいことでも見のがしておいていいというような法治國であつては断じてならない。一升の米であつて取締る。百万円の犯罪でも一円の犯罪でも法を犯したことにかわりはないのであります。決して私は大きいものを見のがして、小さいものに対して苛酷にこれを取締るというような法治國であつては、断じてならないと考えられるのでありますから、もしそういうようなことがあれば、私として決して容赦はありません。またいつその原因が発生しておるか知りませんけれども、そういう事実をこういう委員会においてはつきりとお述べになる以上、あえて委員会にお持ち出しにならなくとも、あなたの手によつてりつぱにこれを告発していただきたいのであります。
  14. 山村新治郎

    山村委員長代理 大臣の時間がありませんから、ほかの方。
  15. 竹村奈良一

    竹村委員 いま一つ伺いますが、それは今の見解で、不正があれば取締る、これはよくわかつています。この間毎日新聞にああいう薪炭のことについての事実が出ておるので、一應大臣もよく御承知であろうと思いますが、おそらくその後調査されて、そのことについて処置されると思いますから、それはこの程度にいたします。  本論に入りますが、大臣も先般來のいわゆる食糧あるいは土地調査等によりまして日本統計は古い基礎に立つている。昨日もこの問題を論じましたが、古い統計に立つておるから、新しく根本的にやり直す、これをわれわれ共同提案しました。いわゆる土地調査の、森林その他の状態においても、御答弁願つたことであつて、それは賛意を表されておるのでありまするが、しかしこのことについて、ひとつ特に政府所見をお伺いしておきたいのは、日本統計は古い基礎には立つておるけれども、新しい考え方で新しい測量等をやりましても、これ以上耕地反別はふえないと私どもは思うのでありますけれども、政府はこれ以上に耕地反別がふえると考えられるかどうか、この点をひとつお伺いしておきたいのであります。
  16. 森幸太郎

    森國務大臣 土地は年々つぶれて行つたりふえて行つたりして行くのであります。工場が建ち、人家が建ちして行けば土地がつぶれて行くのでありますが、総面積として耕地は一定の面積を保つておるのであります。しかしまた人工を加えて干拓する、あるいは開墾するということによつて幾らかの増反をなし得ることはできるのであります。政府はこの未墾のところにおいて干拓もし、開墾もいたしておるのであります。しかしこれらの干拓をいたしますについては、一反歩に少くとも四、五万円の國費を投じなければなりません。これは將來税金等において政府にもどつと來るのでありますが、相当の経費を要するのであります。こういう立場から、現在の耕地に対して一毛作を二毛作にするということができれば、收穫の能率は田畑が倍になつたわけであります。干拓すれば一反歩のものが二反歩考えてもいいということにも考えられるのであります。実面積において拡張できなければ土地利用をふやして、一反を二反にし、あるいは二反半にするということも土地の改良によつてでき得るのであります。しかし土地利用というものは限度がありますし、限度のない人口を養う—においては、これは別に國策として考えなければならぬ。いわゆる人口問題がここに起つて来るのであります。それはいつかも申しましたが、過剰人口をどうして行くか、あるいは調整する考え方もありましようし、あるいはベルギーのごとくに家内工業なり軽工業を興して、過剰人口をここに集中して、工業輸出という道から食糧確保ということも考えて行かれるのであります。でありますから食糧政策としてはそういう気持を政府としては考えておるわけであります。
  17. 深澤義守

    深澤委員 農林大臣にお伺いしたいのであります。簡單にお願いしたいと思うのでありますが、農民に対して超過供米まで法制化して強制されるというようなことに対しましては、農民自体も非常に心配しておるのでありますが、その農民供出いたしました米穀を操作する上におきまして、はなはだ遺憾の点を農民自体も感じておるのであります。それは去る十八日の日本経済新聞にも発表されておりますように、大阪の食糧営團支局長が一千万円に上る不正を働いておるというような事実が暴露されております。さらに最近におきましては、油糧公團本部等にもこの不正事実があるというような問題が発表されております。これは先般の委員会において井上委員も指摘されておりますように、公團をめぐる第二会社等が続出しておりまして、ここにいろいろな不正の根源があるということをわれわれは感じておるのであります。農民に対して追加供出を強制せられる反面におきまして、われわれは、かかる公團の不正事実等を政府は嚴正に処置しなければ、農民も納得しないと思うのであります。從つてこの食糧営團の不正の問題、あるいは第二会社に対するところの十分なる査察等が行われなければならないのでありますが、この際政府食糧営團のそうした不正事実、あるいは第二会社等をめぐるところのいろいろな関係等について特別の査察をする機関でも設けて、農民の納得の行くような方法を講ずる御意思がないかどうか、それをひとつお伺いしたいと思うのであります。
  18. 森幸太郎

    森國務大臣 これは行政面においては、行政査察官というものがありますが、食糧管理局についても検査課というものをもつて、不正のできないように注意をいたしておるのであります。しかし悪いことをするやつは、いくらやかましく言つても悪いことをするやつでありますから、そういう不正ができればこれは断然取締り、これを是正いたして行くのはもちろんであります。また司直の手によつてこれが正しくせられるのであります。でありますから人間が多く寄つておるわけでありますから、そういう不正ができるだけできないよう、できないよう政府としては注意をいたしております。注意をいたしておりますが、万一そういうことができれは断固として処置するのであつて農民を苦しめながら、官公廳あるいは公團においてでたらめなことをやつてもいいではないかというようなことは、毛頭考えておらないのであります。どうかそういうことがありましたら、御遠慮なく教えていただきたいと思います。また先ほど申しましたように告訴をしていただきたいのであります。われわれ目の届かぬところもありましようから、あなた方の周到な目をもつて考えられたことがあつたら、どうぞ御遠慮なく御助力をお願いしたいのであります。
  19. 八百板正

    八百板委員 この際経済安定本部長官にお尋ねいたしたい。政府農林漁業復興資金計画といたしまして、見返り資金より六十五億円、預金部資金より四十三億円、合計百八億円の供給を見込んでいるというふうにわれわれは伺つているのでありまするが、また一方において、見返り資金農業面に対する運用は、日本農業状態にかんがみまして、農業の長期の復興資金にこれを振り向けることは採算不利益である。それよりもむしろ輸出産業にこれらの資金を振り向けまして、外國の安い食糧を購入して、これによつて日本食糧をまかなつて行つた方がよろしいというような、有力なる意見が一方において起つていることをわれわれは承つているのであります。これを考えてみまするに、今日日本農業に対して、そういうふうにして資金を流すことが採算不利益であるということは、日本農業外國農業に比べて非常に遅れている、資本主義的な採算の引き合う段階に来ておらないということを、一方において示すものだろうと私は考えるのであります。聞くところによりますと、この種見返り資金運用等につきましては、外國においては総額の二割程度を計上しているという話も聞いているのでありまするが、政府における今まで発表せられました数字を見ますると、きわめて貧弱なるものがあるのであります。日本農業がほかの非業と比べて、これに対して資本を投下して利益があがらないということは、日本農業が遅れていることを示すのでありますが、日本農業が遅れていることは、また同時に日本農業が長い間農業以外の産業犠牲になつて農業進歩発達が、ほかの産業犠牲立場において、進めることができなかつたというような事情に基くということを、われわれは考えなければならないのであります。從つて日本農業に対する資金の投入が採算上引き合ないということは、同時に一方においては、日本農業に対する資金の融通が、大局的に見て今日最も必要であるということを逆に物語るものであろうと思うのであります。すなわち遅れている日本農業を、いわゆる近代的な採算の引き合う荒業にまで引き上げることは、國家の責任において行わなければならないと思うので、從つて農業面に対する資金の一段の流入を政府は努力すべきものであると思うのでありまするが、農業面に対するそういう面の努力が、政府は非常に欠けているように私には考えられてならないのであります。一体経済安定本部長官は、今日の日本農業状態をいかように認識せられ、日本産業資金の中で、農業資金計画をどの程度の割合において定められているか、さらにそれを実現するために具体的処置がすでにとられているか、この点についての詳細なる御説明をいただきたいと思うのであります。このことは、御承知のごとく食糧確保臨時措置法の改正にあたりまして、当然政府責任において農民に対して供出を要求する、政府責任においてこの法律の第三條によつて具体的にその措置をとるべきことを命ぜられているものであることは、十分政府は御承知のはずと思うのであります。この点につきまして具体的なる御説明をいただきたいと思います。
  20. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいまの御質問でございますが、まず第一に経済安定本部といたしましては、日本の資本主義経済そのものの本質からいつて、もし日本食糧が足りないならば、もつと安い米か何かを外國からどんどん輸入してやつたらいいだろう、從つてそのために内國における農業保護というか、ともかくも供出を増加することに対して力を入れない、それだけは輸入関係に持つて行くというような考えがあるかということであれば、私ども今日さような考え方を持つておりません。ただ問題は、アメリカから日本に入つている食糧が、運賃その他の関係から見て相当に高いものである、こういうことでありまするので、足りない部分をもつと安く入れることはできないか、こういうことは考えておりまするけれども、ただいま申しましたように、現在の農家農民の経営そのものが一層困難になるであろうというような、資本主義の本質から來る一つの考え方をもつて、ただいま経済安定本部としては策を考えているわけではございません。これははつきり申し上げておく次第でございます。  なお農業関係について、見返り資金と、そういう方面の公共事業費の決定されている過程を見ますると、必ずしも今年は多いものではない、非常に少いものである、ゆえに何とかして農業面においても、供出をなお増加する、食糧増産するという線で、改良費なり、あるいは治水治山なり、日本農業生産の促進に向けなければならぬはずではないか、こういうお言葉については、もちろん私どもも賛成でございます。從いまして、見返り資金の中においてどれたけというようなことは、今日もちろん申し上げられませんが、われわれとしては、ぜひ農業方面に対して適当な資金を見返り勘定の中から見出したいというので、いろいろ努力をいたしておる次第でございますが、御承知の通り見返り資金は、昨日新聞でワシントンの通報として大体四億二千万ドルというようなことが下院において決定されたということが発表されておりまするように、これを從來の五億三千万ドルという——三百六十円で計算いたしますると多少少くなつて來ることになりますので、三百六十円で四億二千万ドルを計算いたしますると、約千五百十二億円くらいになりまするが、この数字はおそらくかわらないだろうということの確信を持つております。皆様御承知の通り千七百五十億という日本のお金に換算した額、この見返り勘定の中で、二百七十億というものはすでに鉄道、通信事業等の方面にまわすことがきまつております。その他の資金をどうするか、そのうちの約六百億程度のものは復金の交付公債の買上げ、こういつた問題に持つて行くたろう、こういうことであれば、その他の残りを日本産業にとつて、あるいは輸出産業にとつて最も有用な面に持てついかなければならないことになるので、そういう点について安定本部としては、どういう割当考えておるかということになりますので、今のところわれわれの作業として考えておりまするのは、年間を通じての一應の計画を立て、かつその年間の計画の中から、第一・四半期、第二・四半期、第三・四半期というように、それぞれこまかい案を一應立てることを考えまして、ただいまその作業を継続いたしておるような次第でございますが、その点について、おそらく皆様の御承知の、新聞等にかつて発表になつておりまするような数字は、決してほんとうのものではございません。ああいうものは、何かの機会に参考としてつくられたものが拔かれたものと存じますけれども、これは今日全然改められておりまするし、そうしてまたその考え方なり計画なりについては、総合的に一應われわれは考えております。しかしこれは考え計画であつて、これが実際に具体的に実現いたしまするのは、皆様の御承知の通りに、この第一・四半期においては一箇月ずつずれて行くというような形になりますが、ともかく早急にこれは決定されるであろうという考えのもとにわれわれは計画を進めております。しかしわれわれの立てている計画が決定的なものでないことは、皆さんの御了解が行くことであつて、これは先方の決定によつて、われわれとしてはそれに從うのでありますが、しかし一應われわれとしても、日本ではこういうものにひとつ資金をまわしてもらいたい、こういうものが、日本の重点的なものであるという考え方で、計画を立てている次第でございます。從いまして、の計画の中に、ただいまおつしやいましたような農業面に対するもの、たとえは治山、治水というところに相当重点を置いて一應盛つてありますけれども、それが決定的なものであるかと言われれば、まだ未決定のものであつて、單にわれわれの計画でありますとお答えするよりほかはないのでございます。そういう現状にございますので、さよう御了承を願いたいと存じます。
  21. 八百板正

    八百板委員 簡單にお尋ね申し上げたいと思うのであります。見返り資金の点につきましては、何分向う様からいただくようなかつこうになるものでありますから、未決定であるという事情についても、われわれはこれを了承することができないわけではないのでありますが、先ほども申し上げましたように、農民に対する供出割当は、具体的にして的確なる計画が、立てられておるのでありまするから、これと並んで、政府責任において計画せらるべきあらゆる計画も、また当然最も具体的で的確なものでなければならないと思うのでありまして、未決定なものにのみ頼るという計画であつてはいけないと私は思うのであります。そこで預金部資金につきまして、安定本部はまた一應の計画を立てておられるようでありますし、おそらくこの運用につきましては、政府の自主的責任において決定することができるであろうと私は思うのでありますが、今日農村の蓄積せられましたところの資金が、預金部資金の中でどのくらいの金額になつているか、それをどのくらい農業資金としてまわす計画が立つておられるか、そういうふうな点をこの際お伺いいたしたいと思うのであります。預金部資金運用については、五百億中二百三十三億は地方起債に、百倍はつなぎ資金に、あと二百億近くは産業資金にまわすというようなことも聞いておるのでありますが、これらの点につきまして、農民の蓄積資本を農民にまわすという原則の上に立つて、できるだけ多くの資金預金部資金の中からまわしていただきたいとわれわれは考えるのであります。そういう点につきまして、どういう具体的な用意をせられておるか、この際御説明をいただきたいと思うのであります。
  22. 青木孝義

    ○青木國務大臣 預金部資金運用につきましては、農村の資金、特に貯蓄資金は農村にかえるべきであるという考え方は、御承知の通り従来からわれわれは持つて来たのであります。そういう意味でわれわれの考え方を特に今日強調しておりますが、九原則の実施にあたつて、特に顕著に皆様の御了解なつているように、復金というものは今回その活動を閉止した形でありますので、資金の総合的計画という点から考えれば、どうしても大藏省預金部資金の運営を総合的に計画しなければならぬという考え方を特に私は持ちまして、大藏省にもそういう話をいたしておりますし、大藏省の方でもそのことに大分了解を持つて來たようであります。そして従来預金部資金というものは、預金部資金運営委員会というものがありまして、そこで決定した割当從つてこの資金を運営しておつたのでありますが、今回は特に地方に対して、あるいは農民に対して特別な配慮をしなければならぬ、なかんずく長期にわたる資金については、大藏省預金部等の資金は最も重要なエレメントをなすことになりますので、ただいま特に大藏省とも折衝をいたしておりまして、この資金をどんなふうに有効適切に使おうかということについて、なおまたここではつきりと申し上げる段階にきては立ち至つておりませんが、しかしこのことは、何とかして二十四年度においてすみやかに実現をいたしたいと努力いたしておる次第であります。
  23. 吉川久衛

    ○吉川委員 安定本部の長官がお見えでございますから、さる二十日の本委員会における主食の供出リンク衣料品の取扱いに関して、もう一ぺんはつきりさしていただこうと思つてお伺いするわけであります。  さる二十日に、安定本部長官の青木博士から、きわめて明快なる、しかも実情をよく御理解くださつた御答弁をいただいたのでありまして、そのときちようど農林大臣が同席をせられておりましたので、農林省安本関係はよくわかつたのでありますが、二十二日に商工省の方の御意見を伺いましたので、その時の経過をちよつと長官に申し上げて御考慮を煩わすわけであります。そのとき安本長官の言明といたしまして、本年度の麦、ばれいしよの供出リンクの衣料品の登録小賣業者別取扱数量の割合は、消費者たる供出農民の希望する度合に應じて地方長官において決定するものとする。但し右の処置を実施するにあたつては、リンク用衣料品の配給時期を遅延させず、かつ農民の自由な意思を反映させるとともに、各登録小賣業者のいずれにも差別的取扱をしないように留意する。それから農業協同組合またはその連合会を新たに小賣または卸しとして登録することについては、次回の登録更新の際に一般商業者と無差別に取扱うものとする。それになお私つけ加えまして、この次回についての私の質問に対する安本長官のお答えは、米、かんしよの供出のときに間に合うように努力するということを長官が言明になつた。商工省はこれを確認されるやというお尋ねをいたしましたところが、確認をするということになつたのであります。けれどもこの問題はすでに久しきにわたつて農林、商工の間に対立をして参りまして、どうしても解決をみなかつたところの懸案でございます。この大事な問題をしかもG・H・Qから指令まで出て、そうして農民の生産意欲を低下させるような食確法の改悪をしなければならないというような措置まで考えられるような重大な時期に、この供出のリンク物資に関しての問題が、今日までなお解決されずにいるということは、これは政府の大きな責任であると思うのでありますが、青木長官が御就任になつて以来、非常におわかりのいいところの御処置をお考えくださつて、さうして今農林、商工、安本が一つお気持になつて來たということは、一大進歩であると私たちは非常に喜ぶのでありますが、今までの経緯に顧みまして、これはこのまま放置するならば、必ずまたいろいろの混乱を生ずるであろうと思う。ことにこの強力なる現内閣においてこれがきめられないということ、しかも地方長官にこの麦、ばれいしよの問題だけは一応決定をまかせるというような態度は、私は非常な責任のがれで、ほんとうにけしからぬと申し上げたいのですけれども、しかしこれは時期的にどうしてもできないんだ。——私はやり方によつてはできると思いますけれども、政府御当局はできないとおつしやる。これはおそらく私が申し上げます通り、長官がごらんくださればきつとわかると思いますが、各縣においては、数箇月にわたつてこの問題解決のためにもみ合うことを私は憂慮いたしております。いずれにいたしましても、とにかく懸案解決のために非常な長年月をかけたところの難問題であるだけに、これは一つ安本長官から、はつきり各省及び地方長官に対して、安本長官訓令というようなものをお出しになつていただくことが、この際もつとも適切なる処置であると考えます。長官においては、この訓令を出していただかなければならないと私は思うのでありますが、これについての御所見を承つておきたいと思います。
  24. 青木孝義

    ○青木國務大臣 この訓令でございますが、これは実際訓令を出すことになれば、現在のままでもできないことはないと思いますが、二十四年度一箇年間この訓令を特に出すということになれば、またそういう措置を講じなければならぬということになるのでありますが、その点について私の考えでは、この訓令を出せると信じております。しかし詳細のことがありますので、從來それをやつております政府委員から一應御答弁させます。
  25. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 現在安本の訓令第三号というのがございまして、その訓令によりますと、その中に、農民の意向に相應して小賣業者が配給するという制度もありますし、販賣許可数量という制度も実はあるわけです。抽象的に申しますと、安本長官の先般述べられましたことが、現在の訓令の範町内でできるわけであります。その訓令に基きまして商工省が衣料配給規則というものをつくりまして、その配給規則は販賣許可数量という制度で争つているために、非常に拡張解釈をすれば、農民の意向に相應して小賣業者の販賣許可数量を認めるという解釈もできるのでありますが、非常にその点があいまいであります。あいまいであるがゆえに、今までお述べになりましたような事実がいろいろ解決されなかつた。ここで商工次官、安本長官農林大臣がこういう考えであるとはつきり申されたのでありますから、はつきりした方向によつて訓令を出した方がより、明確になると思いますが、訓令を出すことにつきましては、実は関係方面の了解がいるために、そういう了解を得た上で出したい、こういうふうに考えます。その了解が遅れました場合におきましても、現在の訓令第三号の解釈によつてこの趣旨は実行できるこういうふうに考えております。
  26. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいまお聞きのような状態でございます。従いまして、できれば向うを確めまして、そうしてその上でなるべくすみやかにその訓令を出すというような考えを私は持つております。
  27. 山村新治郎

    山村委員長代理 午前中はこの程度にとどめまして、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  28. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 会議を開きます。酪農業振興臨時措置法を議題とし、質疑を継続いたします。
  29. 八百板正

    八百板委員 酪農業進行臨時措置法案につきまして、少しくお尋ねいたしたいと思うのであります。この法案の目的として掲げましたところの酪農業振興の精神につきましては、われわれは賛意を表するのでありますが、さてこれを実際に運用いたする場合にいかなる結果が現われてくるかということに考えをいたしますと、若干の点につきまして、疑問を持たないわけにはいかないのであります。つきましては第八條の中に規定によつて定められますところの生産計画食糧確保臨時措置法の第三條の農業計画の規定によるというようなとりきめでありますが、この際主食たる食糧供出との関係、すなわち総合供出という関係等につきまして、どのような関係を生じてくるかというふうな点について、御説明いただきたいと思います。
  30. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 食糧の総合供出に当りましては、この食糧計画農業計画を定めます場合に、総合供出を直接には意図しておらないのでありますけれども、牛乳を出すことがすなわち米を出すと同じ意味で、主食と同じ地位に牛乳を考えておるという趣旨からできているのでありまして、従いまして、牛乳を供出することは、すなわち米を供出すると同じ趣旨に考えて、農業の総合計画を立てる、こういう建前になつております。
  31. 八百板正

    八百板委員 第九條の條項によりますると生産者はそれぞれ「登録を受けたれん粉乳製造業者若しくは飲用牛乳処理業者又は生産者の組織する團体に賣り渡さなければならない。」ということを規定しておるのでございますが、この場合生産者の組織する團体というものは、具体的にどういう團体をさしておるものであるか、またその團体がどのくらいの酪農界の中の経済的な実力、地位を占めておるものであるか、そういう点をお聞かせ願いたいと思います。
  32. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 第九條に「生産者の組織する團体」と書いてありますが、この生産者の組織する團体というのは現在の農業協同組合、酪農業協同組合をさしておるのでありまして、現存農業協同組合で酪農関係を扱つておるもの及び酪農業の協同組合はきわめて力が少いのであります。各縣で酪農一本で協同組合をつくつておるのは、現在では縣の連合会は十一か十二あると思います。それから郡單位の酪農業協同組合は百以上できておると思うのでありますが、それらの詳細は調査はございません。目下この協同組合の組織を進めつつあるような状況であります。しかし將來はこの酪農業の協同組合、あるいは酪農関係を扱う農業の協同組合というものはますます強化されなければならない。從つてこれらの團体を通して供出ができるという制度を設けておりまして、この酪農関係の協同組合の強化をはかつて行きたいというのがこの趣旨であります。
  33. 八百板正

    八百板委員 伺いますと生産者の組織する團体は割合に弱いというようなお話でありますが、そういうことになりますと、おそらくは現実の情勢からいたしまして、この法律の施行は、現在存在しておりまするところの有力なる練粉乳製造業者に、その実権を掌握せられる結果になると思うのでありますが、そういう意味合いにおいて、結果として、いわゆる酪農を営むところの商業資本に利益を與えるような結果を招くおそれがあるのではないかというふうに考えておりますが、そういうふうな点についてどのような考慮が拂われておるか、この点お尋ねいたしたいのであります。
  34. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまの御質問の点に対しては、製酪工場と生産農民との間の牛乳の取引條件等について、政府がこれを監督し、その間にたとえば農民を圧迫するような條項が入つて來た場合には、この條項の修正を命ずるというようなことができる規定もございます。なおそういう政府の監督というような消極的な面だけでなくして、ただいまの九條にありますように、積極的に協同組合を保有して行く、協同組合の実力でもつて工場に対抗し、しかも團体協約の方法を講ずる等、漸次酪農民の実力を養成するという方向に向つて行くことを念願して、こういう規定ができておるのであります。
  35. 八百板正

    八百板委員 提案者の念願しておりますところの方向はわれわれもわかるのでありますが、現実において農業協同組合のそうした面における実力というものは弱いのでありまして、これを助けて大きくいたして行くと申しましても、そのために必要なる具体的措置が、この法案の法制化とともに考慮されなければならないと思うのでありまして、取引條件の諸般の注意だけによつては、必ずしも生産者の利益を守ることはできないのではないかという点を私は心配いたすのであります。ことに製品は生ものでございますので、いろいろのむずかしい取引上の関係が生じて参りまして、買受人が限定せられるということの結果、生産者が圧迫も受けるという事態は予想するにかたくないのであります。さらに同様な立場に立つて考えを進めて行きまするに、第十條の六、その中には「申請者がその原料牛乳集乳予定地域で集乳することに因つて、現に当該地域で第九條の規定により原料牛乳を買い受けている他のれん粉乳製造業者又は飲用牛乳処理業者の工場又は事業場の製造又は処理設備能力に対する集乳量の比率が百分の七十を下る虞があるとき。」はこれに対する競争的立場に立つ業者の登録が許されないというふうな規定に考えられるのでありますが、そういうことなりますと     〔委員長退席、山村委員長代理着席〕 現存いたしますところの製造業者の設備能力が、ある場合においては故意に、たとえば百なら百だけの設備があるというふうに主張せられまして、ほとんどその設備が実際において百パーセント使うことのできないような設備であつても、それを百パーセント近いような設備があるように、いわば装つて、新しく登場する業者を圧迫するような事態も考えられるのでありますが、こういうような点については、どんなふうに立案者は考えておられるか、この点もひとつお聞かせ願いたいのであります。
  36. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 第十條の第六号については、ただいま御指摘のようにそういう心配も確かにあるのであります。しかしこの條文の本来の趣旨は、中小の製酪工場というものは確かにございますが、それらの工場がこれからの農村の経済の変動に應じて非常に経営が困難になつて行く。場合によつては大きな工場などがそういう方面に進出して行つて、そうしてこれらの中小工場を併呑し、またはだんだんつぶして行くというような現象も現われて來るのであります。そういう点を押えるだけでなくして、現在非常に資材の面から言いましても、資金の面から言いましても、同一の地域に新しい工場をつくりまして、新しい工場も今までの工場もともに倒れるようなことも、ここしばらくの間は避けて、酪農民経済的な基礎をだんだん培養して行きたい。そういう考え方でこの規定をつくつてみたのであります。
  37. 深澤義守

    深澤委員 本法は酪農業振興臨時措置法という名前でありまして、酪農を振興させるという積極的な使命を持つた法律であるということの建前でなければならないと思います。ところが内容を檢討いたしますと、新しい方向へ酪農を押し進めるということではなしに、從來の既成事実にわくをはめて行くような考えが非常に強いように思うのであります。この名前にあるように、酪農業を振興させるという積極部面についてこの法律を適用するならば、はなはだ不適当であるというぐあいに考えられるのでありますが、その点についての根本方針をお伺いいたしたいと思います。
  38. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま御指摘の点は、この條文をごらんになればよくわかると思うのでありますが、この法律はあくまで酪農経営者に飼料圃を確保する。今まで酪農経営をやつておりましても、事実上の強制的な供出が行われておるにもかかわらず、その経営の基礎になるところの飼料の用意、飼料の提供ということを一つも考えて來なかつたのが、酪農の現状であります。そのために酪農民供出に対する形式的な義務こそなかつたのでありますけれども、事実上は強制供出のような形になつておりました。にもかかわらずその経営の基礎になつておるところの飼料が少しも得られないということを非常に苦心をしておつたのであります。酪農の遅々として進歩しない最も大きながんはそこにあつたということをかたく信ずるものであります。そういうような現状に対してとにかく國家の一定の計画に基いて、それぞれの酪農民はつきりした飼料圃を與えて行くというのが、この法律の眼目になつております。從つてきわめて積極的な酪農振興法であると私どもは考えておる次第であります。
  39. 深澤義守

    深澤委員 しからばその飼料圃を全國の酪農にいかなる数量を予定しておられるか、具体的な数字をお示し願いたい。
  40. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 飼料圃の確保はただちに食糧増産計画と関連をもつものでありまして、食糧事情が非常に窮屈のときに、飼料圃をふんだんにとるということは困難であります。從いまして、食糧の需給事情とにらみ合せ、その地域地域の酪農経営の事情をも考え、その土地の生産力を彼此勘案いたしまして、地域々々に適当な飼料圃をつくつて行く、こういう考え方になつているのであります。しかし全國の酪農民すべてが飼料圃を確保するということは、現在の食糧事情からしてできませんので、一定の地域だけ考えて行く。しかも指定地域は全國で大体一千町歩を考えて、一應その程度の指定村をきめて参りまして、その後の事情の推移によりまして、食糧事情の緩和を見きわめつつその地域を拡大して行つたらどうか、こういうふうな考えを持つている次第であります。
  41. 深澤義守

    深澤委員 今日の日本食糧事情の建前から、全國の農民が反対しておるにもかかわらず、追加供出の強制割当をしようというような事情にあるとき、この法案によつて飼料圃を確保することがきめられたといたしましても、それが実行できるかどうかをわれわれははなはだ疑うのであります。もつと具体的に申し上げるならば、ある縣の一地方あるいは一村に飼料圃が許されましても、縣全体、あるいは郡全体の農業計画から供出を削除することができるかどうか。おそらく私は不可能であろうと思う。実際には飼料圃の分だけ収穫は減るが供出は依然として需給計画によつてやられるということになりまして、結局飼料圃によつてつぶされた耕作反別の負担を、他の農民が負うというような結果にもなるではないか。そのために食糧供出の問題をますます紛糾混乱せしめることになるではないかと考えますが、この点はいかがでありますか。
  42. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 お話のように、食糧供出が非常に困難でありますために、一應飼料圃をとつても、供出が強い結果として、飼料圃で生産された分までも供出させられるという問題が出て來ると思います。これがこの法律のみそでありまして、國家の一定の計画によつて主食を生産する地域、飼料を生産する地域をきめましたならば、この計画通りに動かして行き、酪農をそれによつて振興させる。さらに大きな観点から、たとえば酪農が農家に入つたことによつて食糧生産がまたプラスになつて出て來る。こういう大きな観点に立つて、正確なる統計資料なくしてただむやみ農民に押つけるというような行き方をやめて、一定の計画に基いて食糧供出割当もするし、生産もやつて行くというような農業計画でありたい、こういう趣旨の下にこの條文ができておるわけであります。
  43. 深澤義守

    深澤委員 立案者の意図はまことによいのでありまするが、内容を検討いたして参りますると、第九條におきましては、生産者は「れん粉乳製造業者若しくは飲用牛乳処理業者又は生産者の組織する團体に賣渡さなければならない。」もし賣渡さない場合におきましては、後段の方に「三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」と罰則規定があるのであります。しかも練粉乳の製造業者は、森永を中心として行われておるし、飲用牛乳の卸賣業は、地方の資本家によつて行われているのが現状であります。協同組合は日浅く、生産者の組織は未だ全國寥々たるものであります。從つてこの現状においてこの法律をあてはめるならば、結果において森永あるいは地方の飲用牛乳処理資本家に対して集中的な生産を行わしめることになりまして、酪農民の保護には少しもならないのであります。その点、立案者の予想外の結果が生れて來ることをわれわれ非常に憂えるものであります。こういう点について、どういうぐあいにお考えになつているか、伺いたいと思います。
  44. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま御指摘の酪農民に対する処罰の問題でありますが、これは要するに供出割当の数量の問題にかかると思うのであります。第九條の前段の方に「酪農地域内に住所を有する生産者は、賣渡の時期その他賣渡に対し必要な事項について農林大臣の定めるところにより」こういう規定を設けてございます。この規定によつて生産者の賣渡し時期、供出の数量、供出数量以外の自由販賣の分量等の内容がすつかり定まつて來るわけでありまして、現在の事情から見ましても、大体その地域の生産数量の五割ないし六割程度供出するという建前になつておりまして、乳量の点から言いましても、この法律の施行後五割ないし六割程度供出で足りる。またそれ以上強く要求することは非常にむりであると考えており、爾後の点はゆとりがあるようにきめることができる、こういうふうに考えておるのでございます。
  45. 深澤義守

    深澤委員 立案者はそういう意図を持つておりましても、この法案が成立した以上は、農業計画によらなければならないということになりますので、そういうことが必ずしも全國末端まで実現されるとは思わぬのであります。それで私は、この法案は生産者圧迫になる可能性があることを心配するのであります。  次に第十條の二項の四号の、酪農製造業者あるいは牛乳処理業者の登録を許可するものは「事業場の施設農林大臣の定める基準に」達しなければならないということ、それから五号の「申請に係る工場又は事業場ごとの原料牛乳買受見込数量の月平均量の買受代金を遅滞なく支拂うことのできる見込かないとき。」はこれを登録しない。そういう資金も持つていなければいけない。また六号には、一昨日か質問がありましたように、大体集荷したものの百分の七十を処理するような状況でなければならないという制限規定があるのであります。この結果日本現実農業といたしましては、酪農方面におきましても十分な施設を持ち、十分な資金をもつてやる可能性が非常に少いのであります。これは生産者自体のつくるそういう製造もしくは処理の場合におきましては、はなはだ小規模のものでなければならないという結果になると思うのであります。それであつても今日の引合わない日本農民は、農村の工業あるいは農業の多角経営の立場から、この酪農方面に非常な関心を持つておるのであります。この場合において、ある一定の設備資金というものを有しなければ集荷できないということになりまするならな、結局において先ほど私が申し上げましたように、大きな所へ集つて行くという結果になります。從つてこの法案は生産者自体の組織によつて酪農を振興せしめるという方向でないし、既成の事業家を振興せしめる結果になるということを私は心配するのでありますが、この点についてどういうぐあいにお考えでありましようか。
  46. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの第一点でありますが、立案者の考え方はいいけれども、法案に現われたところによれば、これは結局むりな供出が行われるようなおそれがあるという趣旨のお尋ねでありましたが、それは立案者の考えだけでなくして、牛乳の需給状況から來るのでありまして、現在の需給状況を基礎にして考えて参りますと、そう根こそぎ供出をしなければならぬということにはならないのでありまして、大体五割ないし六割程度供出で足りるような需給状況でございますから、決してそこはむりな供出計画にはならないというふうに考えております。  それから第二のお尋ねの生産者の圧迫になる。ことに第十條の四号、工場または事業場の施設農林大臣の定める基準に達していないときという規定がございますが、これについてのお尋ねがありました。この点については工場、事業場の施設があまり不衛生的であるとか、あるいは一つのシリーズをなさないといつたようなものをチエツクする意味でありまして、大きな施設でなければ許可をしないというような趣意は毛頭ないのでございます。ただしかしそう言いましても、農林大臣に独断できめさせてはいけないと思いますので、酪農審議会の意見を聞きまして、主として民間の知識経験者の集りであるところの審議会の意見を聞いて、適正に基準をきめて参りたいというふうにしたいと思つておるのであります。  第三のお尋ねの、第十條の二項第六号でありますが、六号の問題についても同様でありまして、これは大工場の擁護をするというような考えは毛頭ないのでありまして、むしろ中小の工場がどんどん倒れて行くというようなものを保護する半面を強く持つておるというふうにお考えいただけばけつこうだと思うのであります。
  47. 深澤義守

    深澤委員 この法律によりまして、食糧確保臨時措置法の一部の改正も行わなければならないという重大な影響を持つ法案でありまするが、もう一つお伺いしたいことは、先ほど明確にならなかつたのでありますが、提案者といたしまして、この飼料圃の結果、全國でどの程度の結局主食のとれない結果になるだろうか、あるいは牛乳がどの程度主食の代替の数量として出て行くであろうかというような、何らか御調査になつ数字的な根拠がおわかりならひとつお明しを願いたいと思います。
  48. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 農地の面積については具体的に各地方廳へ当つてみないとわからないのでありますが、たとえば北海道は一頭当り四町歩であるとか、あるいは内地は一町歩未満でも足りるというようになつて來ると思いますが、指定町村で大体二万町歩内外になるのではないかというふうに考えております。牛乳の供出数量は現在百二十万石ばかりの生産がありまして、約六十万石ぐらいの供出で足りるというように考えております。
  49. 深澤義守

    深澤委員 そういたしますると、牛乳と米との代替の比率はどういうことになりますか。
  50. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 特に米との比率を考えておるわけではございません。米を出すかわりに牛乳を出すという建前にはなつておりませんから、比率は別に考えております。從つて牛乳の配給、あるいは乳製品の配給は米と差引きに配給するのでなしに、乳幼兒に対してプラス、配給の形になつて行くわけであります。
  51. 深澤義守

    深澤委員 そうすると総合計画、総合供出の意義をなさぬと思うのであります。先ほど言われた総合供出というものにはならないのでありまして、それでは牛乳は全然それだけプラスの供出をすることになつて、牛乳を出すことによつて米の割当が來た場合にその米の代替には全然しないということですか。
  52. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 その農業計画において、飼料圃をつくつて、この飼料圃では飼料をどれだけつつて、牛乳を生産して供出して行く、こういうことになりまして、飼料圃でつくつた飼料については、米の方の供出の対象になつていかない、こういうふうにお考えいただけばいいと思うのであります。
  53. 深澤義守

    深澤委員 そうするとつまりその飼料圃として使う面積は、約二万町歩ということになりますね、そうすると大体二石平均としても四十万石の米が減收されるという結果になるというふうに考えてよろしいですか。
  54. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 一應計算はそういうことになりますけれども、現在の実情から言いますと、裏作を一生懸命でつくる。つくればつくつただけ供出をしなければいかぬということで、むしろ手控えるような傾向さえあるのであります。この裏作をがんばつてこれだけつくれば飼料として保有ができるのだ、家畜を飼うことができるのだということになりますれば、裏作の面積が非常にふえて行くというような面も考えなければなりませんので、必ずしも四十万石といつたふうにすぐ計算に出て來るとは言いかねると思います。
  55. 深澤義守

    深澤委員 もちろんわれわれも酪農関係につきましては、飼料の確保政府として重大なる責任を持つてつていただかなければならぬと思うのでありますが、本年度の貿易資金特別会計の中にも、飼料の輸入が約五万トンばかり予定されまして、それに対する輸入補助金を十億円程度出さなければならないというような計画が立てられておるようでありまするが、これはアメリカから入る場合であります。ところが最近の新聞紙上におきましてわれわれも承知しており、また政府自体も声明せられておりまするように、日本がもし中国政府との貿易が回復いたしまするならば、満州大豆を原料とする飼料等が相当潤沢に入つて來る可能性があると思うのであります。そういうような情勢も近く実現されるというようなことも予定せられておるのでありまして、現在の食糧自給の困難な場合において、食糧供出関係に対しましてもますます混乱を起すような結果になる法案であるというぐあいにわれわれは考えるのでありまして、飼料確保は満州方面との貿易関係によつて具体的に解決する方向へ努力すべきであるというぐあいに考えているのでありますが、飼料獲得の場合においてそういうことを立案者はお考えなつたことはないかどうか。
  56. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 この法案の内容をなしておりまする飼料圃の問題は酪農の経営の基礎飼料の問題でありまして、牛乳をしぼつて行く、その上の飼料の問題は配給飼料の問題になつて來ると思うのであります。從つて基礎飼料と配給飼料を合せて牛乳生産というものを完全したものとすることができるのであります。配給飼料はますます強化しなければならない。從いましてガリオア資金等によりまして、ますます満州その他から飼料の輸入を仰ぐことに努力しなければならぬと思うのであります。從つて農業計画を定める場合におきましても、配給飼料の点をも計画の一部として織り込んで行く、そういう計画になつておるわけであります。
  57. 深澤義守

    深澤委員 供出の反面には必ずその生産に対する措置が講じられていなければならないと思うのであります。これは一般農民の場合におきましても、生産は強権によつて強制されるが、この裏づけとしての生産的な方面の措置は非常に十分でないということに重大問題があると思うのでありますが、供出を強制づけるその反面には、それに対する措置がなくちやならぬと思うのであります。第七條の第二項に「必要な奨励措置を定め、」ということがあるのでありますが、この内容はどういう内容か、第三項の「牛乳及び乳製品の生産を確保をするため必要な資金の融通」ということがあるのでありますが、具体的な内容はどうなつておられるか、この点についてひとつお伺いしたいのであります。
  58. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 第七條の第二項の奨励措置といいますのは、主食と同様に生産を確保するために必要ないろいろな報奨物資その他を考えておるのでありまして、第三項の資金の融通につきましては、御承知のように畜産方面の資金はきわめて貧弱であります。今回見返り勘定の中から資金を出すべく政府はいろいろやつておるようでありますけれども、現在の段階としましてはなかなか満足すベき結果が得られないように見受けておるのであります。しかしこの問題は農民に酪農を通して供出の義務を課するという以上、資金についても積極的な調達をし、その資金計画を充すような資金の供給を政府として積極的にやらなければならぬ、こういうことをここに書いております。政府に積極的にやらせようというのがこの趣旨であります。
  59. 吉川久衛

    ○吉川委員 この法案のねらいは、提案理由説明のときに伺つた通り、現下の飼料事情にかんがみて云々というのでありまして、まことにその思いつきは適切であると私どもは考えます。けれどももしその趣であるとするならば、むしろ飼料確保に関する法案というようなものとして出された方がいいんじやないか。提案者はそういう方向へ行くまず第一歩としてこういうようなものを出されたと申されるかもしれませんが、そうだといたしますと、これは私の今拝見するところでは、酪農業者に対する食確法みたような内容に受取れる。そうだといたしまするならば、この附則の第四項でございますが、食糧確保臨時措置法の一部の改正箇所でありますが、この食確法の一部の改正をもつて足りるのではないか、こういうように考えますが、その辺の御考えをちよつとお伺いいたします。
  60. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 今お尋ねの飼料の問題でありますが、お尋ねのごとくやはり飼料を確保するということが根本になつております。しかし飼料を確保すると同時に、乳幼児の必需食糧であるところの牛乳及び乳製品を確保するということがあわせてこの法案に意図されておるのであります。それで酪農全体の振興のために飼料圃の問題、さらに工場の問題、さらにそれに関連する各般の問題を総合して、酪農振興法ということにしたのでございます。
  61. 吉川久衛

    ○吉川委員 乳幼兒の食糧の問題を御配慮になつておる点はまことにけつこうでありますが、しかし日本のただいまの農業実情は、どうしても畜産農業の方向へこれから轉向して行かなければならないということは、はつきりして参つているのであります。そこで畜産業の発達のためにも飼料を確保するということはきわめて重大な問題ではありますが、そういう問題を自主的に解決して行くためには、農業協同組合というものを育成して行く必要があろうと思う。ところが農業協同組合を育成して行くためには、農業協同組合に今後この酪農業あるいはそれの加工業等についての仕事を行わせるという方向に行かなければならないと思う。しかるにこの法案を通読いたしますと、第十條の六でありますか、あるいはその他二、三の箇所に見受けられるように、相当の能力を持つたものでなければならないというような制限をうけますと、これから伸びて行かなければならない、これから新しく事業を起して行かなければならないというような農業協同組合等は、おそらくこの制限のために手が出ないような結果になつて、協同組合の今後の発展に支障を及ぼしはしないかということが憂慮されるのでありますが、その辺についてのお見通しはいかがですか。
  62. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま御指摘の点でありますが、農業協同組合の保護育成をしまして、協同組合自体が酪農の工場を持つということは確かに理想だと思います。第十條の第六号に一應制限のような規定がありますけれども、これは工場の配置ががつちりしておる所については問題が起きて來るのでありますが、その他の地域については協同組合が自主的にどんどんやつて行けるわけでございます。今の工場の配置のがつちりとしておる所でも、乳量がだんだんふえて参りますれば、ともに両立して行くことができる——一方を倒して一方がまた進んで行くというような考え方でなくして、ともに両立することができるし、なお先般の委員会でも申し上げましたように、その工場の株の取得、その他の方法によつて、工場を協同組合が漸次獲得して行くような方向に、協同組合自身の力をつけることによつて進めて行つたらどうかというふうに考えておるのであります。
  63. 吉川久衛

    ○吉川委員 数日前の提案者の遠藤氏のお答えにあつたのでありますが、ただいまも多少触れられた経営の社会化とかいうこと、株を酪農業者一般に公開することによつて社会化して、配農業者の利益を擁護するような形がとられるというが、森永あるいは明治といつたような大きな既存の業者が、その株の五一%までを公開するだけの御決意があるかどうか。その辺はどうなるのでございましようか。もしそうでないとすれば、およそ意味をなさない社会化でありまして、四九%以下の株の公開では、むしろ公開されない方がいいのであつて、そういうところへ農民が入つて行くということは、これは農民の利益のためにむしろ歓迎しないところであります。
  64. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまのお尋ねの点でありますが、五一%まで農民に持たせる用意ありやいなやという問題については、現在としてはおそらくそれは不可能であると思うのであります。しかしそれは酪農の協同組合の実力の問題であります。漸次進むに從いまして、協同組合の力に依存しなければ経営ができなくなつて行く。事実問題として、協同組合と一体になつて行かなければ、農民と一体になつて行かなければ製酪工場が動かなくなつて來る。その情勢を見越して、明治においても十何パーセント、森永においても三〇%、北海道の興農公社等は六、七〇%の株を農民が持つておるという形に進んで來ておるのであります。要するに協同組合の実力を養成することによつてこの問題を解決して行きたい、こういうふうに私は見ておるのであります。
  65. 井上良二

    井上(良)委員 私は議事進行に関連して発言をするのですが、司令部命令があつたからというて提案をしている食糧確保臨時措置法質問の通告がまだあるのに、こういうものを途中へはさんで、かんじんの問題をあとまわしにするということは、私は実にけしからぬと考えているのです。しかしどこで相談をされたか委員会がそういうことに議をまとめた結果質疑をすることになつておりますから、これ以上私は申しませんが、ともかく食確法の改正は四百万戸の供出農家に重大な関係を持つものでありまして、この法律がどうなるかということを、全國の耕作農民はかたずをのんでながめておるわけです。     〔山村委員長代理退席委員長着席〕  從つてわれわれ農林委員といたしましては、愼重審議しなければならぬので、委員長はそういう点を特に御考慮願つて議事の運営を円滑にやつていただきたいと思います。今審議されております酪農業振興臨時措置法案につきましては、各同僚議員から詳細な御質疑がございました通り、この法案自体のねらつております点について、われわれは一向反対するものではありません。また將來わが國の農業形態なり農業の方向が、そういう面に進むこと、またわが國の食糧がそういう方向に進むということについては、私どもも大賛成であります。ただここで特に農林委員として考えなければならぬのは、御承知の通りわが國の食糧現状は、政府が年間の需給推算に基づいて事前割当をいたしますが、食糧の需給がまことに不安定であるというので、追加供出を法制化しようということにまでなつておるのであります。生産を見込んで事前割当をするが、万が一國の食糧に重大なる事情を生じた場合は、追加供出法律の力でもつてやる、こういうことになつておるときに、この酪農振興臨時措置法は一体どういう関係に置かれておるかをわれわれは考えなければならぬ。今深澤君その他からも質問がごさいました通り、現実食糧はあまりにも窮迫しており、供出はあまりにも鋭く追求されておる、こういう事実を見のがしてはならぬのであります。その見地から、牛乳の裏づけになります飼料の作付面積を主要食糧と競合せずにどううまく割当るかということは、難事中の難事であります。御存じの通り、現在飼料作付面積は二万町歩と推定されておる。この二万町歩の飼料作物の作付面積が本法の施行によつてさらにふえるという見通しをわれわれは持つておらなければならぬ。そういう見地から、実際これを農業計画として定めまして下へおろした場合に、実際上困難な問題が起つて來やせんか。それは何んでかと申しますと、御存じの通り、飼料農作物は春、秋二回の收穫ときまつておる。しかも作付面積もちやんときまつておる。反当收量も肥料の割当その他を勘案して、過去の実收に應じて本年は何ぼというような明文を付することができるのであります、ところが原料の牛乳においては、年中これを搾乳しておりますから、從つて農業計画を具体化するといつても、実際問題として事務上非常に困難な問題が起つて來やせんかと思うので、この点をまず伺いたい。
  66. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお話のように、食糧事情が非常にきゆうくつでありますから、末端に農業計画として割当る場合に、非常に困難を生ずるであろうという点はよくわかるのでございます。しかしねらいは、今まで放棄してあつたような裏作について、つくればつくるほど取上げられてしまうというようなことなく、この裏作をがんばつてつくれば、これは飼料になるのだというように、はつきり確保し得られますならば、非常に樂しんで農家が飼料圃の造成をすることができると思うのでありまして、その結果は家畜を導入して自給肥料が生産されて、農家全体の主食の生産が増強されて行くというように考えておるのでありまして、食糧全体としてはむしろ増産になつて行くということをねらつておるような次第でございます。  なお牛乳の割当の具体化が非常に困難であろうという御質問でありますが、この牛乳の割当については、お尋ねのように米や麦の割当のようにきちきちと行くわけには参りません。その性質上、ある場合には乳をしぼることができないような牛になつたり、乳量が漸次減つてつたり、ふえて行つたりするような事情がありますので、きちきち割当をすることは困難でありますが、從來もその割当でやつて参りましたように、大体の一年間の計画を定めまして、その計画に基いて出してもらう。その計画は先ほど來繰返し申し上げましたように、相当ゆとりのある計画にして参りたい。需給の関係からいたしましても、ゆとりのある計画ができるというふうに考えておるような次第でございます。
  67. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 ちよつとあなたの発言に、委員長の方に御警告があつたようでありますが、これは酪農であつても、食糧確保であつても、いずれも重要の法案であります。從つて私は便宜上酪農の方をあげていいと思うからあげて、しかもそれをただやつたのではない。あなた方の各党派の進出した理事にも相談して承諾を得てやつたことだ。そんなに一々あなたが文句をつけずに、黙つてつてください。
  68. 井上良二

    井上(良)委員 それでやつております。こちらの方が大事な方だという委員長の認定に基いて、理事会を開かれたのであります。從つて責任はあくまで委員長にあるのであります。私はその点だけはつきり言うておきます。  この法律の一番のねらいは、今申したように飼料を確保するということにねらいを定めている。ところが現行のいわゆる食糧確保臨時措置法において、その運用さえうまく行けば、飼料の確保はでき得るようになつておるのです。たとえて言いますならば、その生産者の保有量というものは、御存じの通り種の問題、それから飯米の問題、さらにこの飼料の保有量というものが大体きまつておるのです。家畜頭数に應じて飼料の保有というものを認めているのです。認めないのならともかく認めておるのです。だからその運用なり、またこれに伴う法規の改正をいたしますならば、十分その目的は達し得るのです。ことさらここに新しく單独法を、その問題に限つて農業振興なんという大きな名前をつけてやらなくてもいいのです。問題の一番骨子は、せつかくその飼料作物を、他の主要食糧と同等に作付をきめて割当てましても、これによつて出て参ります原料牛乳が、米麦その他の主要食糧と同等のいわゆる総合供出認められるか認められぬかという問題なのです。問題はそこにあるのです。認められるということならば、われわれは非常に賛成であります。認められぬというところに問題があるのであります。問題はそこなんです。その点をもつと明確にしてもらいたい。
  69. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの点でありますが、飼料圃の設定につきましては、農林省でいろいろ農地に利用計画を定めてございます。これは農業計画とは違うのでありますが、農地の利用計画を定めます場合に、飼料圃が大体一昨年のごときは十一万町歩程度が普通であるというように結論が出て参りました。しかし十一万町歩の飼料圃をつくることが日本農業現状としてはよろしいのだというようになつておりましたけれども、実際の面になつて参りますと、その飼料圃がどこに行つたか行方不明になつてしまうような結果になつております。もつとも愛知縣のごとき非常に酪農の進んだ縣におきましては、一頭当り何畝あるいは一反というような飼料圃の設定をいたしまして、酪農の推進をしておるのでありますが、そういう実例を示しておる縣におきましても、供出の方には何ら支障なく、むしろ供出が非常にうまく進んでおるというような事情でありまして、飼料圃を設定したがために非常に供出の方に支障を生じて来るというふうには、実は考えておらないのでございます。主食と総合供出をする、その考え方が決定してからの問題であるというお尋ねのようでありますが、主食と同じ地位に考えて、そこまで引上げて考えていただきたいという意味で、食糧確保臨時措置法の一部の修正をいたしまして、牛乳及び乳製品の扱いについては主要食糧農産物と同等に扱うという意味で、その下に「及び原料牛乳」という字句を入れるようなことにしたのでございます。
  70. 井上良二

    井上(良)委員 それからこれもたびたび議論になつたと思いますが、問題は非常にきゆうくつな、食糧の逼迫した現状の中において、いわゆる司令部から追加供出を法制化せよという命令を受けるような食糧のきわめて逼迫した重大な事実について、ことさらにここに原料牛乳を供出の対象にして、これを主要食糧のわくに入れるというのなら話はわかる。そこまではいいのです。問題はこれから先なのです。供出の面で総合供出をかりにわれわれが認めるということにいたしました場合、これが配給の面で主食として一般に配給されることにならなければならぬのです。そこなんです、問題は。供出の面では、それは主要作物との競合が飼料においてされますから、当然総合供出と認むべきである。同時に原料牛乳も今度乳製品が出ました場合に、やはり乳幼児の主食として当然差引配給されるべきものであるのであります。そのことについては一向触れてないのです。問題はそこにあるのです。これが主食として乳幼児その他病弱人に差引配給が認められるということならば、これは問題はないのです。その点はどうなりますか。
  71. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 この酪農業振興臨時措置法では、主食と差引配給にする建前をとつておらないのであります。その考え方は、労務者に特配をしている、あるいは年齢別によつて配給の量が違うというような考え方を行う、特に乳幼児に持つて参りまして、乳幼児については乳製品を特配するという考え方で、主食を特配するという考え方で、この法案つくつておるわけであります。
  72. 井上良二

    井上(良)委員 特配をするということになりますと、全体のわくのうちで、たとえば今申しました百二十万石生産があつて、このうち大体六十万石が供出される。これが乳製品になつて参りました場合、それが一体どれだけいわゆる臨時物資指定の配給物資となつて、正規な配給品になるかという問題になつて來るのです。その六十万石のうちでどれだけあなたはこれを見込んでおりますか。
  73. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 配給の対象になつておるのが大体六十万石であります。それ以上百二十万石から六十万石引いた約六十万石というものを飲用その他に供されておるのでありますけれども、乳なしの乳幼児、しかも一歳未満の乳幼児に計画的に物資需給調整法によつて配給しているのが六十万石というふうに御了解願えればけつこうだと思います。
  74. 井上良二

    井上(良)委員 それからもう一つ重要な点は、乳牛というものはごらんの通り生きておるのです。從つて病氣したり、乳が出ないようになつたり、死ぬ場合がある。その場合に生産者に対しては、あなた方がきめたところの供出のわくをちやんと命令しておるわけです。それを出さない場合には罰則の規定があるのです。物も言わぬ生き物を対象にして、それが生産しておるものが出ないとか量が下つて、取初の届出通り供出ができなかつた場合に罰則規定によつて罰するというが、そんなむちやな話はありません。その点についてどう考えておられるか。
  75. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 なるほどお話しのように、牛乳は日々の乳量に差が出て來るわけであります。こわいおじさんを見ただけでびつくりして牛乳の量が減るくらいであります。從つてそういう場合には時を移さず補正をやつて行く、そうしてゆとりのある補正計画がどんどん実行できるようにしておいたらいいと考えております。
  76. 井上良二

    井上(良)委員 おそらくそれはやろうとしてやれないことです。実際上全國に乳の出る牛は相当おります。それを出ないというのは一体だれが認めるかということです。そこに問題が起るのです。実際ぐずぐずしておつたら乳は腐つてしまいます。出ないという場合を想定したときに補正すると言つてみたところで、実際全國の原料牛乳の生産者の牧場を、片つぱしから毎日毎日牛の健康診断をしてまわるわけには行かない。実際上不可能なんです。もし原料牛乳生産者が、うちはどうもぐあいが悪いですということで予定通りの供出を値切つて、いわゆる自家用や横流ししても一向さしつかえないことになるのです。そこにあなた方のいわゆる強制供出の規定が設けられておると思うのです。しかし相手は動物ですから何ともしようがないのです。動物にまで法律を適用すると言つてみたところで、物を言えないのだから、実際上そこまで行くとぐあいか悪いと思います。  それからもう一つは、これに伴うところの予算的処置はどうなつているか。もしこの法案が通れば具体的な計画なり実行をやらなければなりませんが、これに対する予算的処置はどうなつておりますか、伺いたいと思います。
  77. 野原正勝

    ○野原委員 ただいま井上委員の御質問の罰則の問題に関して、立案者の私からお答え申し上げます。牛が死んでも割当てられた数量を出さなかつた場合には三年以下の懲役ということがあるが云々というお話でありますが、牛が事実死んでしまつたことが明らかであり、またまことにその事情やむを得ないというような場合において、これを懲役にしたりあるいは罰金をとるという考えは、立案者としては毛頭持つておりません。この罰則なるものは、あくまでも当然供出責任を果さなければならぬ者が故意にやらなかつた場合に、こういう罰則を設けておいたにすぎないのであつて、その場合においては当然罰則の必要がない。牛がなくなつたという者に対してはむしろお氣の毒なのですから、酪農業を振興しよいという法律で、牛がなくなつたのを泣きつらにはちと申しますか、お見舞を出さずにおいて監獄に送るということは、毛頭考えていたいことを明らかに申し上げます。  なお予算の問題でありますが、酪農振興を徹底的にやろうとすれば、もちろんこれは相当な予算も必要だろうと思います。将來われわれとしても、予算をできるだけこの方面に獲得をいたしまして、酷農振興が徹底的にやれるように念願しておるのでありますが、さしあたりのところは予算処置ができません。しかしながら予算処置ができなくても、この酪農振興によつてやり得る問題が相当あると思います。その予算がなくてもやり得るという問題から漸次進めて参りたい、かように考えております。
  78. 井上良二

    井上(良)委員 予定通り乳が出ないようになつたということは申告によるのか、それともこつちが認定するのか。それは御承知の通り、農業計画で乳牛についてはどれくらいの生産が原料牛乳として出るということが押えられて、そこで計画が立ち得るのです。ところが途中で牛がいろいろな理由によつて、予定通りの乳が出ないと生産者が申し出た場合に、これを一体一々立会いの上で牛を検査してやりますか、それはどうなりますか。
  79. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 乳量の決定はやはり牛の飼育をしておる生産者の申告を基礎にしまして、町村の牛の関係委員会ができますから、その委員会できめたものを農業調整委員会を通して、だんだん縣の方へ持ち出して行くというかつこうになつて参ります。
  80. 井上良二

    井上(良)委員 乳が出ないようになると村の委員会にかける、そうして村の農業調整委員会にかける、そうなると年中乳の補正割当でこの委員会を開いておらぬと間にあわぬことになりますが、それは一体どうなりますか。
  81. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 そういう疑問が出て参りますので、牛乳の供出割当は、全体の数量の五割とかあるいは六割程度割当になつて参りますから、多少乳量が減つたようなものは、ちつとも割当には響かない程度割当をして行くという考えであります。
  82. 井上良二

    井上(良)委員 そうなつて來ますとここにまた問題が起つて來るのです。それは私はえらく掘り下げて質問するようでありますけれども、主要食糧農産物については、御存じの通り生産者の保有量と供出数量がちやんと事前割当できまり、さらにこれが増減のある場合には、それぞれ補正割当をやり、追加供出を命ずるということになつてつて農家のふところには米は自家飯米以外にはほとんど残つていないということになつておる。農業計画において飼料畑として、当然米麦の生産できます田畑において飼料を生産するために一定の面積認めるのです。しかるに原料牛乳生産者には自由に処分できる保有量が残つて行くということになつた場合に、これは一つの問題になつて來やせぬかと思う。そうなつた場合には、そこにやはりこれが主食と競合するという割り切れぬ問題が横たわつて、原料牛乳を生産しておる酪農者と、それを持つていないところの一般農民との、裏における対立感情というものが起つて來やせぬかという危険があるのです。その点について伺いたいと思います。
  83. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 その点は今回の法案で飼料圃を詰めまして、その飼料圃から出て來る飼料で乳牛の飼料をまかなうという建前でありますと、そういう問題が出て参りますけれども、必要な飼料のうちの一部分である。基礎飼料である。從つて配給飼料と合せて一本になるという考え方でできておるのであります。もし飼料圃のみで乳牛を買つているということになりますと、おそらく一頭について五反歩程度の飼料圃が必要だと思います。しかし内地のきわめて生産の集約的に行われている地帶では、一反歩なり一反未満程度基礎飼料を生産する、飼料を確保して行くという計画になつておりますので、その点を御了承願いたいと思います。
  84. 井上良二

    井上(良)委員 それから今御答弁がございました予算的処置が全然これにない。予算の伴なわないものからやるというのですが、件なわないというのは一体具体的に何をやろうというのですか。
  85. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 この法律の條文の中に、本法は各條ごとに施行の期日をきめるということになつておりまして、各條文によつて予算の必要のないもの、多少予算は必要でありますけれども、特に新たに予算をとらないでも、畜産局の既定予算でまかなつていけるもの、特に新たに予算をとらなければ施行ができないものというようにあると思うのであります。それらの予算の関係を考慮して、一つ一つ各本條ごとに施行の期日を定めて行きたい。こういうふうに思つておるわけであります。
  86. 井上良二

    井上(良)委員 今一つ伺つておきたい点は、なるほど先に申しました通り、本法の持ちます構想はけつこうと私も考えております。この考え方については何ら異議をはさむと申し上げるものではないのでございますが、結局は製酪業者のふところを肥やす結論だけが出て來やしないかという危險が非常にあるのです。それは遠藤さんも御承知でありましようか、昔北海道へ森永が進出いたしまして、北海道のいわゆる製酪業者、酪農者をあらゆる方法でこれを統一して、北海道の独占的な企業としてやろうとしたときに、北海道の全酪農者がこれに反対をいたしまして、遂に北海道酪農連合会を組織して、そうして原料牛乳によつてできますところの一切の乳製品は、酪農者にかえすという組織をつくつた。それがまた戰争中に再び独占的な傾向をたどつて、今日再び北海道の酪農連合会の存在が非常に問題になつておるのです。このことを知つております事実から、なるほどあなた方の構想なり、ねらいなりというものは非常にけつこうですけれども、そこのところが十分くぎ打たれておりませんと、酪農者は、結局大資本の前にしぼつた牛乳は値をたたかれ、あるいは取引條件等でいろいろむりな事を言われる。やむにやまれず強制買上げのような形で取上げられてしまうという結論が出て來やしないか。ここに大きな問題が横たわつております。この点でこの法案が具体的にちつとも示されておりませんから、そこでわれわれは遺憾ながらこの法案にいま少し措置を講じてもらいたいが、修正するには時間かないというので、見当がつかないのですが、われわれとしてはこの点についての一つの大きな杞憂を持つているということだけを申し上げまして、私の質問を打切ります。
  87. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま御指摘の点は私どもも非常に心配しておる点であります。ただしかし、私は特に考えておることがあるのであります。それは酪農の発達の過程は、ある程度やはり現在の資本を利用すると言いますか、活用すると言いますか、それをやつて行くことはやむを得ないのであります。相当酪農が振興して、北海道のように相当高い段階まで発達して参りますれば、資本に対して強い力をもつて要求をすることができ、酪農民の利益を主張することかできるようになるのでありまして、酪農経済を安定させるという基礎的な工作を、まずここでやつてつたらどうか。なおこの法案は不備な点がたくさんあるということは私どもよく承知しておりますが、その不備な点は、この次の臨時國会、あるいは通常議会に漸次法案を出して参りまして、そうしてりつぱなものにして行きたいというふうに考えております。
  88. 高倉定助

    高倉委員 私はこの法案に対して提案の理由をお聞きしなかつたので、理由の全貌を知ることができませんけれども、飼料を確保するということに重点をおいて、この法案を御提出なつたことに対しましては、全面的に敬意を表するものであります。今日の日本農業が、長い戰争のために地方が減耗し、しかして生産が減退していることは事実であります。これを増強するというよりは回復することに力をおいて、今後食糧の需給態勢を整えなければならないのでありますが、これにつきましては、どうしても家畜と通して厩肥、あるいは堆肥によつて地力を増進して、増産に邁進しなければならないのであります。從つて酪農を今後の農業の一環として織込んで、そうして多角農業的にやつて行かなければ、わが國の農業はとうてい回復することはできないと私は考えておるのでありまして、この法案はまことにけつこうでありますが、食糧管理法とやや似ておるような法案のように思うのであります。ただお聞きしたいのは、附則においていろいろ書いておりますが、これはこの法案と並行して改正できるところの自信を持つておられるかどうか。これをまずお聞きしたいと思います。
  89. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの趣旨、付則で食糧確保臨時措置法の改正をすることになつておる点について、その自信があるかどうかというお尋ねのようでありますが、これはここに書いてありますように、やはり食糧確保臨時措置法をきちつとかえて参らなければ、この目的は達成されない。非常に強い決意をもつてかえて行こう。こういう考え方をもつております。
  90. 高倉定助

    高倉委員 そうするとこれはまだそこまでの時期に達していないわけでございますか、覚悟をしておられるだけで、この附則はこのままでやる。私は途中でかわつたのでわからないのでありますが、前にいただいたやつは附則がずつと載つておるので、それでこれがどうであるかということを聞くわけであります。附則はこの法律施行の期日は政令の定めるところにより、第七條、八条……。
  91. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 高倉君、もう少し高声でお願いします。速記者の方に届きませんから……。
  92. 高倉定助

    高倉委員 附則の第一の「この法律施行期日は、」というのから二、三、四、それから第二條その他第四、第五、第七、第八條というような改正案綱が載つておるのですが、これはなくなつたのでありますか。
  93. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 附則に書いてある通りでございますが……。
  94. 高倉定助

    高倉委員 この附則は改正をしなければこの法律が生きて来ないように思うのです。それは食糧確保臨時措置法の一部を改正するというのでありますが、これを全部改正していただかなければこの法律が生きて來ないと思うのですが、そうではないでしようか。
  95. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの趣旨は、食糧確保臨時措置法の改正を今向うでやつておる。——今ここでも審査しておるわけですが、それの改正が行われないのに、それをひつぱつてはおかしいじやないか、こういうお尋ねでしようか。
  96. 高倉定助

    高倉委員 そうです。
  97. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 その点は、実はこの法案で当初は改正された條文をひつぱつてつたのですけれども、これは修正をしなければいかぬじやないかと思つております。
  98. 高倉定助

    高倉委員 次にお尋ねしたいのは、第二條に「原料牛乳」とは、「加工又は処理を施さない」云々とありますが、これは脱脂乳等は入つていないのですか。あるいはバター等の加工するものに含んでいないのですか。またカゼイン等は含んでいないのですか。それを伺いたい。
  99. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまのお尋ねの第二條には、バターや脱脂乳のことは入つておりません。
  100. 高倉定助

    高倉委員 それから現在北海道は別といたしまして、内地方面でもそうだと思いますが、この第十條の第六号の申請者のところに、「集乳量の比率が百分の七十を下る虞があるとき。」という條文があるのですが、たいていの工場は現存の場合、その工場の設備の九割程度の能力を発揮しているところはないと思う。大体において七割まで行かなくて、五割、六割ぐらいの程度でないかと思うのであります。それは飼料がないために牛乳が非常に減退して來たというので、その能力の十分な発揮ができ得ないと思うのですが、そうすると、新しく酪農協同組合あるいはその他の農業團体が新しく工場をこしらえるとしても、なかなかこれに対抗するところの工場をこしらえて行くことがおそらくでき得ないと思う。そうすると結局北海道は別といたしまして、資本家に圧倒されてしまう。生産者の團体でありながら、これを実行することができ得ないような立場になると思うのですが、この比率はどういうふうにおきめになつたか。その根拠をひとつ承りたい。
  101. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの第十條の第六号の問題でありますが、既存の工場については、現在の設備能力あるいはその他の能力の七割以下になつておりましても、それは問題ないわけであります。ただ新たにそういう工場のある地帯で新しい工場をつくつてとも倒れになるようなことを防ぎたい。もちろんその地域でも集乳量がどんどんふえて参りますれば、新しい工場をつくつてもよろしいということであります。もつともそれは限られた指定町村のみの問題でありまして、それ以外の地域については全然自由になつておる。そういうふうに御了解願いたいと思います。
  102. 高倉定助

    高倉委員 第九條に、農林大臣が指定する者に譲り渡さなければならないとあり、そして第十四條に但し、試験研究または見本等に供するため、農林大臣の許可を受けたときはこの限りでないというようなことが書いてあるのですが、牛乳というものは不便な土地に行きますと、もしも災害が起つたときは、その牛乳を持つて来ることができない。その場合にあとの牛乳を自家用のバターに取上げる場合が相当あるのです。こういう場合は、これはこの條項にあてはめ得るのですか。また北海道の町村牧場とか、あるいはその他の大きな牧場が、統制外の指定牧場として、自家用のバターをつくつておる。これは許しておくのか。これは大きな問題になつておりますが、こういう場合においては、やはりこの條項にあてはまるわけですか。
  103. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまお尋ねの点は、第九條で「生産者は、賣渡の時期その他賣渡に関し必要な事項について農林大臣の定めるところにより、」こういうことが書いてありますが、この條文によりまして、バターの製造等をやる方法をここでもつてきめて行く。供出数量もきまりますし、供出数量以外の処理方法についてもここできまつて行く。こういうふうにお考えいただけばけつこうだと思います。
  104. 山村新治郎

    山村委員 この際質疑を打切りまして、ただちに討論に人られんことを望みます。
  105. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 ただいま山村君の質疑打切りという動議がありますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」「打切り反対」と呼ぶ者あり〕
  106. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 それではただいまの山村君の動議に対する賛成の方の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 起立多数。それでは動議のごとく決しました。暫時休憩いたします。     午後四時十九分休憩      ————◇—————     午後八時二十四分開議
  108. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日はこの程度にとどめまして、次会は明後二十七日午前十一時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後八時二十五分散会