○
森國務大臣 はなはだむずかしい御
質問でありますが、御
承知の
通り、
政府は先に蚕糸業五箇年計画というものを樹立いたしたのでありまして、桑園の増加、
從つて産繭の増加、そうしてこの繭を処理する製糸設備の増加、こういう面につきまして計画を立てたのであります。ところが製糸設備というものは機械設備でありますので、この五箇年計画がすみやかに達成できたのであります。しかるにこの
原料であるところの養蚕の方が、
食糧事情等の問題もありましたが、桑園の復興が遅れ、また反当りの收量につきましても、計画
通り進んでおりませんけれども、製糸機械の設備は一歩も二歩も先んじて完成いたしたのであります。これが今日の蚕糸業の状況であることは、深澤議員も御
承知くださると思うのであります。この場合に製糸がどうして経営されておつたかと申しますと、これは
統制をいたしまして、五千六百掛の繭を買上げて、そうしてそれによ
つて製糸はこれだけの
生産費がかかる、そうしてそれからこれを賣る場合においては、これだけの價格によ
つて賣らすという、いわゆる
原料から販賣までが一つの
統制の基準に乘
つて参
つたのであります。しかも先ほど申しました
ように、
原料が非常に不足いたしまして、御
承知の一かま当り六百目、七百目ひけるところの製糸機械の能力に対して、二百目か三百目くらいしか
原料がない、こういうふうな事態で、今日経営いたしておりまするから、そこに不合理経営となりまして引合わない、
生産費が高くかかる、こういうふうな悩みがあるのであります。今日養蚕がぐんぐん進んで参りまして、産繭が増加いたして参りますれば、製糸の工程におきましても、眞に合理化されまして、
生産費を切り詰めることができるという
ようなことにもなるのでありまするが、御
承知の
通りの産繭がまだ反当り八貫目か九貫目くらいにしか上昇いたしておりませんために、
原料不足ということに
なつて來るのであります。今
政府の直面いたしております問題は、為替レートの切下げによりまして、五千六百掛の生糸をひいた滯貨が、ここに三万俵ほどあるのであります。この滯貨生糸をどう処理して製糸家の損失を緩和してやるかという問題に第一突き当
つておるのであります。次の問題は、製糸家が
原料繭として持
つておる繭は、五千六百掛の掛目の繭を持
つておるのであります。この
原料繭は、おそらくことしの六月、七月くらいまでには製糸の
原料として使用されるものでありまするが、さてこの五千六百掛として買い込んだところの
原料繭を、三千六百円のレートによ
つてどうしてこれが引合うか、しかも輸出は近ごろアメリカにも滯貨いたしておりますので、思う
ような輸出ができておりませんとすれば、これを國内に使用せなければならぬという問題が起
つて來るのであります。これは第二の解決せなければならぬ問題であります。
次には養蚕農家が五千六百掛ということを
考えて、すでに
生産の工程に入
つておる。近く春繭の
生産も見るという
ような時期でありますので、養蚕家に対しまして、予想を裏切られた失望をどうしてまか
なつて行くかというこの三つの問題に今日直面いたしておるのであります。今
政府はこの問題につきまして、第一の問題を解決し、第二の問題を解決し、さらに第三の問題を解決いたす
ように、いろいろ研究を進めておるわけであります。しかし今日九原則に基きまして、輸出を第一義といたすことにな
つたのでありますが、向うが買わなければ、いかに輸出をするところの絹糸がありましても賣れないのであります。そうしますれば、これは
生産費を下げて行くということにより道がないのでありまして、
生産費を下げて行くということについては、製糸工程においての合理化によりまして、これを相当に整備するということも
考えられるのであります。先ほど申しました
通りに、
原料が第一に不足いたしておるのであります。それでありますから、ここに
統制を撤廃いたすという
ようなことをかりに予想いたしますならば、製糸企業の上におきましては、相当の出血を見るのではないかということも予想されるのでありまするが、これも今日の為替レート一本立てに対する産業の犠牲として、あるいはやむを得ない現象ではないかと
考えるものでありますが、できるだけその出血を少くし
ようというので、資金等の面につきましても考慮を拂
つておるのであります。具体的に申し上げることのでき得ないことは残念でありまするが、この三つの問題の解決に、全力を蚕糸当局とともにや
つておる
ようなわけであります。