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1949-04-28 第5回国会 衆議院 内閣委員会外務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年四月二十八日(木曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員   内閣委員会    委員長 齋藤 隆夫君    理事 青木  正君 理事 小川原政信君    理事 吉田吉太郎君 理事 有田 喜一君    理事 木村  榮君 理事 鈴木 幹雄君       江花  靜君    尾関 義一君       鹿野 彦吉君    丹羽 彪吉君       鈴木 義男君    小林 信一君   外務委員会    委員長 岡崎 勝男君    理事 安部 俊吾君 理事 仲内 憲治君    理事 若松 虎雄君 理事 並木 芳雄君    理事 野坂 參三君 理事 山本 利壽君       佐々木盛雄君    竹尾  弌君       守島 伍郎君    戸叶 里子君       園田  直君    松本 瀧藏君  出席國務大臣        外 務 大 臣  吉田  茂君        國 務 大 臣        (賠償廳長官) 山口喜久一郎君  出席政府委員         外務政務次官  近藤 鶴代君         外務事務官         (総務局長)  大野 勝巳君  委員外出席者         專  門  員 小關 紹夫君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  外務省設置法案内閣提出第五〇号)  賠償廳臨時設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八一号)     —————————————
  2. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 それではこれから会議を開きます。  本日は外務省設置法案賠償廳臨時設置法の一部を改正する法律案、この二つ法案について、内閣委員会との連合審査会を開きます。内閣委員長であります私が委員長職務を行います。両案につきまして政府より提案理由を求めまして、質疑通告順にこれを許すことにいたします。質疑はなるべく簡單に、明瞭にお願いいたします。  それでは初めに賠償廳臨時設置法の一部を改正する法律案について御説明を求めます。山口國務大臣
  3. 山口喜久一郎

    山口國務大臣 本法案提案理由につきまして御説明申し上げます。  賠償廳は、昨年二月法律第三号により総理廳外局として設置されたのでありますが、賠償ポツダム宣言に基き日本政府に課せられた義務でありまして、日本政府はこれを誠実に履行する責務があり、その重大性にかんがみまして、政府は今回の行政機構刷新整理にあたりましても、これを從前通り存置することにいたした次第であります。  しかるに一方賠償関係事務特殊財産関係事務とは、元來きわめて密接な相互関連を有し、かつ両者國際的性格も類似しておりまして、在京各國代表部においても、両者單一委員会で取扱わしめ、総司令部内においても昨年十一月両者事務を同一局に総合されたのでありますが、他方わが方においても、日本の負うべき義務國家全般の立場から考慮しつつ有機的に処理し、予想される事務の増加に対処する必要がありますので、政府行政機構刷新整理の見地から、外務省特殊財産局事務の全部及び大藏省管理局所掌する事務の一部を賠償廳に統合することにいたしました。これに伴いまして昭和二十三年法律第三号、賠償廳臨時設置法に所要の改正を加える必要が生じましたので、ここに本法案提案した次第であります。  特殊財産に関する事務は、外務省及び大藏省のほか、若干の專門的部分について運輸省、文部省、法務廳及び特許局において所掌されておりますが、その大部分外務省及び大藏省所管なつております。  外務省特殊財産局においては、特殊財産に関する総司令部との連絡関係各省事務総合調整及びその一部の企画立案並びに処理所管しておりまして、その全部が移管されるわけであります。  また大藏省より賠償廳に移管されるものは、外國または外國人が本邦内に有する財産調査及び処理に関する事務の一部及び戰犯容疑者の財産に関する事務であります。  右外務省特殊財産局事務及び大藏省事務の一部を、賠償廳移管に伴いまして、從來賠償廳設置法所管事務規定しております第一條に第五、六、七の三号を加えた次第であります。  次に次長については、從來施行令規定されておりますが、後に申し上げます理由におきまして施行令を廃止したいと存じますので、設置法規定することにし、次長についてはこのため第三條を改めた次第であります。  また外務省特殊財産局賠償廳への統合に当りましても、行政機構刷新整理趣旨にのつとり、局を部とすることとし、特殊財産部を設けるとともに、從來賠償関係事務賠償部にまとめることといたしましたので、第四條、第六條及び第七條を加えた次第であります。  その他の改正國家行政組織法國家公務員法関係から行われたものであります。  なお附則二つにつきましては、賠償廳設置法施行令大臣次長参與について規定しておりまするが、定員は別途定員法によつて定めることになります。  残與の制度は廃止したいと存じますので、次長についてのみ前に述べましたる通り改正法第三條に規定し、右施行令を廃止することといたしました。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 通告順によつて質問を許します。木村榮君。
  5. 木村榮

    木村(榮)委員 一点だけお尋ねしたいのですが、この賠償廳の方へ、外務省特殊財産局大藏省管理局事務の一部が統合された。そういうことについて、大藏省設置法案で新たに発足いたしました財務官というものとの関係はどのようになりますか、承つておきたいと思います。
  6. 山口喜久一郎

    山口國務大臣 それは直接なかろうと思います。
  7. 木村榮

    木村(榮)委員 直接はないでしようが、大藏省設置法案のときの政府側説明だと、この財務官というものは特殊的な任務を持つたもので、國家行政組織法にも大体そういつた財務官というものを置く規定が明確化されていない。ほんとうはあいまいもことした存在です。これはなぜかといえば、賠償廳などの問題をめぐつて大藏省に、特に外國関係とのいろいろな関係からそういつたものが必要であると解釈できるような答弁があつたのですが、そうしますと、当然間接的には関係が生ずる場合があるのではないかと思います。その点御答弁願いたいと思います。
  8. 山口喜久一郎

    山口國務大臣 そのこまかい点は深く私はタツチしておりませんが、間接的に將來生ずることもあるかもしれませんが、賠償廳自体といたしましては、直接関係がないことと私どもの方では承知いたしておるような次第でございます。
  9. 木村榮

    木村(榮)委員 そういたしますと、大藏省管理局の一部を賠償廳に吸收統合したということと、大藏省案財務官を置くということは関係はないと了解してさしつかえないのでしようか。
  10. 山口喜久一郎

    山口國務大臣 どうぞ。     —————————————
  11. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 それでは賠償廳臨時設置法の一部を改正する法律案に対する質疑はこれでやめます。  次に外務省提案理由説明を願います。外務大臣質問される人は大臣が來られるまでお待ち願つて、それまでは政府委員が來ておられますから、質問を継続していただきたいと思います。近藤政府委員
  12. 近藤鶴代

    近藤(鶴)政府委員 外務省設置法案につきまして簡單に御説明申し上げます。  このたび行政機構の改革及び國家行政組織法施行に伴いまして、從來外務省官制を廃止して、新たに外務省設置法を制定することとなりました。この外務省設置法規定いたしました外務省機構は、今般政府行政機構刷新方針に沿いまして、大いに機構簡素化行つた次第であります。その大要を申し上げますと、從來外務省官制による一官房、五局二部一所が一官房、五局一所となりました。すなわち総務局政務局と改称されて、特別資料部を吸收し、情報部局内の部として有することになりました。また特殊財産局賠償廳に統合されまして、総理廳外局となりました。その他総理廳外局である連絡調整事務局を縮小整理し、連絡局として外務省内局の一といたしました。地方機関に関しましては、連絡調整地方事務局の出張所を廃止し、十一の地方事務局を存置しております。  本設置法は四章及び附則、二十四條よりなつております。第三條において外務省任務を列挙しておりますが、この中には現下日本の置かれております特殊事態にかんがみ、その行使を停止または制約されている事項も含まれておりますが、これらは外交再開あかつきには当然外務省任務として遂行せられるものであります。  以上外務省施設法大要でございます。何とぞ愼重御審議の上御採択あらんことをお願いいたします。  なお設置法の細目にわたりましては総務局長をして説明に当らせます。
  13. 齋藤隆夫

  14. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいま政務次官から御説明のありました点、詳しいことはお手元に御配付申し上げておりまする外務省設置法案につきまして、逐條御説明申し上げたいと思います。  第一條におきまして外務省を設置する目的規定いたしております。第二條におきましては行政組織法に基き、外務省を設置する旨を規定しておる次第であります。第三條におきましては外務省が國の行政機関として國際的に遂行すべき任務を列挙いたしました。すなわち一号は「外交政策企画立案」につきまして、主管省として内閣を補佐し、また内閣方針從つてその実施にあたる趣旨規定してある次第であります。二号は「通商航海に関する利益保護及び増進」と規定いたしておりまするが、これは外國における日本人産業及び商事の保護海外における船舶事務等通商貿易発展助長に関する海外における施策及び事務をすべて含むものであります。三号におきましては「外交使節及び領事官の派遣及び接授」四号におきましては「條約その他の國際約束締結」と相なつております。これらはいずれも傳統的な外務省任務であります。五号は「國際機関及び國際会議への参加並びに國際協力促進」になつておりますが、これは國際連合を初めといたしまして國際経済機構ユネスコ等すべての國際常設機関を意味し、また國際協力促進と申しますのは、一般的國際協力のほかに國際郵便、度量衡、工業所有権あるいは麻藥等に関する國際行政に関する協力事項を含んでおります。これらの任務を遂行するにあたりましては、他の関係各省と密接な連絡を保つことはもちろんでありますが、対外的には外務省において統一的に処理する必要がある次第であります。六号は外國に関する調査事務であります。七号は「内外事情の報道及び外國との文化交流」と相なつております。國際行政及び外交関係に関する正確な知識を一般國民に知らせ、啓発するとともに、他面日本國内事情の正確な情報資料を諸外國に供給するのはもちろんのこと、あらゆる分野にわたり文化交流促進いたしまして、諸外國との間の理解促進することが、平和國家としての信用を回復する上において最も大切なことでありまするが、外務省の担当するこれらの事務をここに規定した次第であります。八号は「海外における邦人保護並びに海外渡航及び移住のあつ旋」と相なつておりますが、在外邦人の身分上、財産上の利益保護並びに海外渡航移住に関するあつせん、奬励事務はきわめて重要な事務でありまして、從來のように外務省においてこれを取扱つておる次第であります。九号は「連合國官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関事務総合調整」と相なつております。日本政府全体としての窓口として、連合國官憲との連絡に当る趣旨であります。十号は「前各号に掲げるものの外、対外関係事務処理及び総括」となつておるのでありますが、以上述べました九つの事項の中に掲げられていない事項でありましても、外務省の本來の職能にかんがみまして、対外関係事務処理及びその総括は当然に外務省任務であることを念のために定めたにほかなりません。國際的に関連を有する諸事項につきましては、統一した政策方針のもとに行動いたしませんと、不慮の損失を招いたり、あるいは國際信用を失墜することがありますので、外務省といたしましては、対外関係事項につきましては、少くとも窓口なつ総括の任に当る必要があるという趣旨をここに明らかにした次第であります。  第四條におきましては、第三條に述べました任務を遂行するに必要な外務省権限を一号ないし二十八号にわたり詳細に規定しております。第三條に申し述べました外務省任務及び本省権限の中には、現下日本の置かれております特殊事態にかんがみまして、その行為を停止あるいは制約されているものも含まれておりまするが、これらは外交再開あかつきにおきまして、外務省任務または権限として行使されるものであります。なお外務省はその所掌事務を執行するにあたりまして、國内法のみならず、條約及び國際法規を念頭に置く必要がありますので、特にその点を明らかにした次第であります。  次に第二章本省について御説明申し上げます。すなわち第五條におきましては本省に、大臣官房及び五局を置く旨を規定いたしております。総務局政務局と改称され、特別資料部を吸收し、情報部局内の一部といたしました。特殊財産局総理廳外局賠償廳に統合される案になつております。その他総理廳外局である連絡調整事務局を縮小整理いたしまして、連絡局として外務省内局の一といたした次第であります。  第六條ないし十一條におきましては、官房以下各局所掌事務規定いたしました。第三條及び第四條に規定いたしました任務及び権限各局別規定いたしたにほかなりません。  第二節におきましては附属機関規定があります。すなわち第十三條において外務官吏研修所規定を存しておる次第であります。外務官吏研修所という名称昭和二十一年に設置され、現在までに百七十三名の職員研修を終了いたしております。なお目下外務省といたしましては、外國において実地訓練もできない状態にあり、また外交官領事官職務内容は他の官廳のそれに比べて特殊なものがありまするがゆえに、外務省においては特に研修所を設けてその訓練を行つている次第であります。  第三章は在外公館に関する規定であります。すなわち第二十一條は今般國家行政組織法施行されるに伴いまして、行政官廳法施行いたされまするので、同法第十三條の特命全権大使及び特命全権公使を認証官とする規定を存置する必要に基くものであります。第二十二條は中立國を含むすべての外交関係停止せられておりまする現状において、今後の新事態に即應する在外公館設置等に関する具体的の規定を設けることは適当ではないと考えましたので、さしあたり從來規定を必要の範囲において生かすという趣旨であります。  第四章は職員に関する規定であります。第二十四條は「外務省に置かれる職員定員は、別に法律で定める。」旨の規定があるのであります。なおこの法案の中の第三節、すなわち第十五條、第十六條をお開き願いたいのでありまするが、個々の條文におきまして、外務省地方支分部局を置き得るということに相なつておりまするが、これは第十六條に規定いたしておりまするように、いかなることをこの地方事務局をして所掌せしむるかということが規定されておる次第でありまするが、すなわち第一には本省連絡局に関する事務所掌し、第二に連合國による日本占領及び管理に関する文書及び記録の收集に関する事務、第三に引揚げに関する調査及び旅券に関する事務、第四に國際事情に関する知識の普及に関する事務、これ以外に連絡調整事務局賠償廳所掌に属する事務をも分掌することになつております。從つて連絡調整事務局の長は以上述べました事務、つまり賠償廳所掌に関する事務でありますが、その事務につきましては、賠償廳長官指揮監督を受けることに相なつておる次第であります。なおいかなる箇所にこの連絡調整事務局を置くかという点が第十七條規定せられておるのでありますが、ここに書いてありますように横浜市以下十一箇所に、おのおのその地方名称を付しました連絡調整事務局を置くことに相なつておる次第であります。以上をもちまして逐條概略の御説明を終ります。
  15. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 政府委員質問がありますならば、この際発言を願います。
  16. 野坂參三

    野坂委員 私は外務大臣がお見えになつたならばいろいろお聞きしたいことがありますが、政府委員の方に機構上のいろいろ小さい問題について不審な点がありますから、これをはつきりしたいと思います。  まず第一に、第三條の四に「條約その他の國際約束締結」とありますが、この約束という範囲はどういう程度まで含めるのか。それから一昨日総理の方から説明がありましたが、例の阿波丸事件についての協定があります。ああいう協定約束というもの、あるいは協定は條約に実質はかわるものだという理解はありますが、こういうものについて政府委員の御説明を願いたいと思います。
  17. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 野坂さんの御質問にお答え申し上げます。國際約束と申しますのは、條約はもちろんのことでありますが、その他の協定であるとか、とりきめであるとか、あるいは公文の交換による約束であるとか、いろいろな形がございまして、その問題の性質によりまして、最も適当な形をもつて処理いたしておるのでありますが、いかなる形式をとるにいたしましても、日本政府として対外的に約束をするという件につきましては、外國に対する約束を包含するものにつきましては、ここにいわゆるその他の國際約束というように御解釈願いたいと思います。  阿波丸の件につきまして御質問がありましたのでお答えいたしますが、阿波丸の件に関する日米両國間の協定は、條約その他の國際約束というものに該当する次第であります。
  18. 野坂參三

    野坂委員 その約束というものは非常に廣汎なものを含めておりますが、これは具体的な問題が起つたときに実際はきめることになると思いますが、それはそのくらいにしておきます。  それから第四條の五項に「不用財産を処分する」とありますが、不用財産というものは、外務省関係としては今までどういうものがあるか。現在あるいは將來どういうものがあるか。これは小さいことですがはつきりしておかないと、やはり將來にもいろいろ問題が起り得るし、この点を一つ御答弁願います。
  19. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 野坂委員のただいまの御質問にお答え申し上げます。野坂委員不用財産だけに限定せられておつしやいましたが、現在不用財産があるかどうかという趣旨よりは、より多く外務省としてある場合に処分し得るような財産が現実にあるかどうかという御質問と了解して、その趣旨で御説明申し上げます。現在は外務省外交が再開されておりません関係上、対外的の活動をすることができませんので、具体的にそういう問題が起つて來ないのでありますが、一例をあげますと、移民教養所のような國有財産などがこれに該当すると思います。
  20. 野坂參三

    野坂委員 それから今の四條の十六項に「通商航海に関する利益保護し、及び増進するために外國官憲との交渉、商取引のあつ旋等を行うこと。」とありますが、これの権限内容と、今度新しくできる商工省貿易管理する、これの事務任務権限というものとの関係はどうなりますか。
  21. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 野坂委員の御質問に答えいたします。ここにいわゆる通商航海に関する事項と申しますのは、領事関係の回復した後のことにあたるわけでありますが、具体的にあげてみますならば、日本と諸外國との間に締結さるべき通商修好航海條約に規定しておる一切の内容を指すと御解釈くださつてけつこうと思うのであります。具体的に申しますと、日本人ステータスの問題に関しましては、日本人当該國に対する入國、旅行、滯在、営業、経済活動の一切、財産の取得、身体財産保護等に関するもの並びに日本人に対する外國における課税問題等に関する事項、また法人関係におきましては、法人の設立、外國法人への参加法人経済活動並びにこれに対する課税問題、また物品の輸出入に関しましては、輸入税輸出税関税手続輸出入禁止制限通過貿易に関する問題。また船舶ステータスに関しましては船舶の入港の問題、また港湾の施設利用の問題、貨物の取扱い、沿岸貿易に関する事項トン税等に関する問題、さらにそれ以外に工業所有権利用問題等領事官商務官等任務権限に属する諸問題がここにいわゆる通商航海條約に規定されておる諸問題でありますが、これらの問題に関連いたしまして保護増進の任にあたるというのがその趣旨であります。  また第二の御質問でありますが、新たに設置さるべき通商産業省との関係でありますが、今度設置されることを予想されております通商産業省は、輸出促進を第一の目的として、その観点から商工行政を改編し、商工省貿易廳と合体せんとするものであるように承知いたしておるのであります。貿易行政占領軍管理下において現在の方式によつて行われております限り、たとえば貿易協定締結の当事者のごときも、現在は司令部日本政府にかわりまして、署名する形式をとらざるを得ない、これは事柄の性質上当然のことであります。貿易対外面は表面上は司令部によつてつかさどられておると申してさしつかえなかろうと思います。しかし今般の通商産業省の構想が、わが國全体の産業行政を最も輸出貿易に重点を置いたものの考え方で処理して行くべきであるという観点に、かりに立つているといたしますれば、貿易対外面に最も精通する外務省省員を相当多数新しい通産省に参加せしめまして、人的にも協力して行くべきものであると考えます。ことに海外市場調査分野におきましては、通商産業省担当各課外務省國際経済関係事務担当各課との間に緊密な協力が当然に要請されるはずだと考えております。また通商産業省の取扱う問題は、当然当面の貿易振興を中心とするが、廣く日本経済の置かれている國際的環境を観察いたしまして、國際経済機関動向及び世界の主要國経済通商政策動向を研究いたしまして、日本対外関係全体とにらみ合せて、わが國通商貿易の指向すべき方向の決定に寄與するということは、外政を一元的に担当すべき任務を與えられております外務省任務であると考えております。
  22. 野坂參三

    野坂委員 今の問題でもう少しお聞きしたいのは、たとえばわかりやすく具体的に例をとつて申しますと、將來外國貿易が正式に始められたあかつきにおいて、上海なら上海に領事館を置く、そうするとそれと同時に通商産業省の方からも、貿易関係の特別の事務官とか事務所とかいうものが向うへできるのですか、あるいは前のように貿易官といつた外務省関係通商事務員向うへ行つてやるのですか、その点はどうですか。私の知りたいのは、今度貿易についてどちらがほんとう主導権を握るのかということです。
  23. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 先ほど外務省設置法案逐條説明の際に、いささかその問題に触れた次第でございますが、今の日本の置かれてあります國際環境にかんがみまして、外務省といたしまして、外國に今の段階では人が出せないことは御存じの通りであります。また貿易廳あるいは通商産業省といたしましても、先ほどお答え申し上げましたように、外國との通商経済に関するとりきめなどに関しましては、最高司令部日本にかわつて締結をするという建前になつておりますので、形式的にはこれにタツチすることは許されていない状況にある次第でありまして、通商産業省におきまして予定されておるように、現下占領軍による管理下における対外貿易とりきめ等に関する事項につきましては、これは通商産業省において所管事項として取扱うべき問題であります。先ほど御説明申し上げましたように、外務省といたしましては、いろいろな意味でこれに協力し、遺憾なきを期するという行き方を考えておる次第であります。なお將來外交が再開され、対外関係が正常化された場合におきましては、当然に外務省から通商経済貿易に関する事項を扱うべき政府の役人が海外に振出されることを予想しておりますし、また当然そうあるべきものというふうに考えております。
  24. 野坂參三

    野坂委員 私のお聞きしたのは、今の最後のお答えにもう一つ通商産業省というものができて、それが先ほどの御説明では、やはり貿易関係にとつて相当重要な役割を果さなければならない。そういうものが上海とかその他に特別な事務所を持ち、特別な事務官を置いてやつて行くことになるのかどうか、もしなれば今おつしやつたような、外務省関係の当局とどういう関係になるのかということです。
  25. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 現在の段階におきまして、かりに海外貿易関係の機関を特派し得るようなことが特に許される場合を想定しての御質問であると思いますので、そういう趣旨がお答え申し上げたいと思いますが、そういう場合におきましては、政府の役人として出て行くことが許されますか、あるいは貿易産業関係者のある種の代表というかつこうで出ることが許されますか、すなわち通商官的な立場で出ることができるか、あるいは民間業者の利益を代表した團体の貿易通信員であるとか、あるいは市場調査員であるとかいう形で出ることが許されますか、ただいまのところここで的確に予想を申し上げることはできないのであります。そのいずれの方式に從うかによりましてお答え申し上げることが違つて來ると思うのでありますが、ある貿易産業関係の業者の方々の團体の代表というかつこうで出るような場合におきましては、これは通商産業省所管事項に属すると考えざるを得ないのであります。
  26. 野坂參三

    野坂委員 今の問題についてまだ私たちはつきりしない点がありますけれども、これは將來の問題でありますから、総理大臣にやはりこの点をあとではつきりお聞きしたいと思います。と申しますのは、今のお答えでは外務省関係についてはつきりお答えがあつた將來正規の外交関係があつた場合に貿易関係についてどうするかという点については、大体はつきり言われたと思いますけれども、さて通商産業省とどういう関係になるかという点については、今のお答えではわれわれははつきりしない。そこで問題になりますのは、もしこの点をはつきりしなければ、將來また例の権限爭いとかいろいろな問題がおそらく出て來ると思いますから、あとで総理大臣にもう一度お聞きしたい。  それからさらにもう二、三点お聞きしたいと思いますが、第五條政務局の中に情報部というのがありますが、今までの構成では、情報については相当重要視せられて、仕事もたくさんあつたと思いますが、これを縮小されたような印象を私受けますが、これについて何か特別な御方針でもあるのかどうか、それをお聞きしたい。
  27. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 情報部は御存じのように政務局の中に附置されるという形で、形におきましては格下げという印象を與えるかもしれませんが、仕事の内容につきましては、その重要性は何ら減ずるものではなく、むしろ外交再開將來に控えまして、この情報部の果すベき役目というものはますます重大になつて來ると考えております。法案の上で格下げのような形をとつておりますのは、政府が堅持いたしております行政機構の刷新と、人員の整理という大原則にのつとりましてやつただけのことでありまして、涙を振つてこういう措置をとつておるというふうに御了解を願います。
  28. 野坂參三

    野坂委員 涙を振つておやりになると言われるが、私はこの面について、もう少し眞劍に考える必要はないかと思います。戰前の外交と今後の平常の状態になつたときにおける外交とは、相当根本的に違つて來なければならない。そうすればやはりいわゆる外國知識を得るとか、研究をするとか、いろいろ情報関係的な仕事が相当多くなりやしないか。そうすればこういうふうな格下げをすることがいいかどうかということについて考える必要がないか。これが一つ。それから研修所の問題ですが、研修所はここではただ職務を行うについて訓練をやるということがぼんやりと規定されておりますが、この問題を私はやはりもう少し正確にこの條文に表わす必要がないかと思います。それから時間にさしつかえがなければ、たとえばこれから先この研修所をどういうふうにおやりになるのか。科目の問題とか、教員の問題とか、生徒数とか、今は外交官はありませんけれども、將来外交が相当重要になつて來る場合には、ここは相当充実されねばならぬと思いますが、この点についてお伺いします。
  29. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 第一の点は第十三條の五号にありますように、外務省研修所に関し必要な事項外務省令で定めることになつております。野坂委員の御指摘になつたように、十三條の冐頭には必要な訓練云々というふうに、きわめて一般的な規定しかございませんが、その内容の具体的な詳細は外務省令に讓るという行き方をしております。さよう御承知願います。なお研修所の今後のあり方に関する御意見を伺つたのですが、その重要性に関しまして、御認識をいただきましたことは、非常に感謝にたえない次第であります。そこで、現在研修所でやつております事業といたしましては、海外に省員を派遣いたしておりますとすると、実地に訓練をする機会もありまするので、はなはだ好都合でありまするが、それができませんので、東京においてこれをやつておる次第でありますが、從つて主として語学が中心になるのであります。最近におきましては、先ほど來野坂委員からも御意見も出ましたように、通商貿易に関する面で躍進遂げなければならない立場にありますので、通商官とか、あるいは貿易官というものの適格者を養成し得るような、そういう教育を大いにしなければならないというふうに考えまして、語学以外に、重点をやはり通商経済訓練という方にも向けておる次第でございます。ただ経費の関係その他からいたしまして、理想案を持つておりましても、これを実地にその通り移すわけに参りませんので、経費の許す限度においてこれを最大限度に活用するという行き方をとつておる次第であります。ただいまのところ研修所在学中の者は、外務省員の中から選ばれた二十数名程度でありますが、これはいずれも六箇月ないし九箇月の期間を一單位といたしまして、二つないし三つのクラスにわけまして、外務省の上級の職員で、海外外交経済に特殊の経驗知識を持つておりまする者を指導官とし、また廣く朝野の有識者に講師になつていただいて、鋭意訓練を実施いたしておる次第であります。なお將來女子の職員にも道を開くという意味におきまして考究いたしておりますることは、過日新聞などで公表されておる通りであります。
  30. 野坂參三

    野坂委員 研修所に学修する人をどういう標準でおとりになるのか。今の御意見では、外務省に働いておる人に限られているようですが、これをもう少し廣く民間の方からとるというふうなことが私は必要じやないかと思うのです。こういう点について御意見を承りたいと思います。
  31. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 仰せの通りでありまして、ただいまのところは経費も限られておりますので、自然たくさんの人を同時に研修せしめるということが都合惡いものでありますから、外務省の少壯の事務官級の者を一次的な対象として訓練しておる次第でありますが、漸次事情が許しますならば、民間にもこれを開放いたしまして、有為な人材においで願うということにいたしたいものと考えております。
  32. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 外務大臣がおいでになりましたからして、外務大臣に対する質疑をこの際やつていただきますが、野坂委員ありますか——野坂委員
  33. 野坂參三

    野坂委員 外務省設置法案を見まして、私の一つの印象は、現在日本の置かれている特殊な状態のもとにおける外務省という点が、あまりはつきり出ていないと思うのです。と申しますのは、憲法ですでに戰爭を放棄しており、それから今は占領下にある。こういう点を考えて、私は外務省というものは特殊な仕事があるというふうに考えなければならぬと思います。これを見ますと、占領下においてだけ必要なものが書いてある。と同時に講和会議があつて、正規の外交関係ができた後における外務省の仕事と、この二つが実はここにごつちやに載つてあると思います。私は総理大臣にお聞きしたいのは、今外務省として一番大きな仕事は、ここにいろいろ盛られていることの中で拔けている点が私は一番重要な仕事ではないかと思います。それはたとえば講和会議、講和條約に対する準備というふうな仕事が外務省の一つの中心的な仕事ではないかと思いますが、こういう点が、この任務の中には全然拔けていますし、こういう氣持がこの條文全体には表われていないと思います。それで外務大臣としては、講和に対する準備を外務省としてはどういうふうにしてやるつもりであるか。この点をこの設置法案に盛るべきではないかというふうに考えますが、この点について御意見をお伺いしたいと思います。
  34. 吉田茂

    吉田國務大臣 外務省の今日の仕事は、外交再開の場合及び講和会議の場合等に備えての仕事がおもなる仕事であることは、お話の通りであります。実は省全体として、講和会議の問題を考えており、また將來再開の場合におけめ準備という、この二つの点は、省をあげてやつている話であつて、特に講和準備局というようなものをこしらえることの必要は何ら考えておらないのでありす。
  35. 野坂參三

    野坂委員 そうしますと、たとえば第三條に、特に左に掲げる國の行政事務を遂行するというふうに書いてあつて、一から十まで基本的な外務省任務が盛られておりますけれども、今外務大臣のおつしやつたところによると、これ全体が講和の準備というふうにおつしやいましたけれども、この一つ一つを見ると、必ずしもそうでないものもありますし、私のお聞きしたいのは、むしろ第一に講和に対する準備というふうな條項を、ここにはつきり入れるべきではないかというふうに考えるのですが、この点についてもう一度御意見を承りたいと思います。
  36. 吉田茂

    吉田國務大臣 私の意見としては、そういうふうなはつきりしたことを書かないところに味わいがあるので、書くことは私はよくないと思います。
  37. 野坂參三

    野坂委員 そうしますと、これはまた見解の相違ということになるかもしれないけれども、結局外務省の中心任務設置法から拔けているように私は考える。これを見て魂の拔けたような印象を受ける。ですから、この点についてもう一度政府で考慮していただく必要があるのではないか。こういうふうに私は思います。  それからもう一つお伺いしたいのは、先ほど政府委員からお答えがありましたが、はつきりしていただきたいことは、一昨日本会議総理大臣の御報告になつ阿波丸事件のおの協定でありますが、この協定は具体的に目の前に、また過去に起つた事件でありますが、あの協定をつくる場合においては、外務省としてはどの局でどういうふうにしておやりになつたのか。それから第二には、外務委員会とあれはどういう関係でおやりになつたのか。こういう点をまずお聞きしたいと思います。
  38. 吉田茂

    吉田國務大臣 あの協定なるものは、決議案の趣意を盛り込んだのでありますから、外務委員会を省いて本会議に持つて行つてもさしつかえないものと私は考えておるのであります。それからどういうふうにしてこの事務をとつたかという御質問に対しては、お答えをいたしかねます。
  39. 野坂參三

    野坂委員 私のお聞きしたのは、この外務省設置法のこの機構の中に、局とか課とかいろいろありますが、この場合においてはどの局のどの課がどういうふうにやるべき性格のものであるかということを、設置法関連して聞いておるのです。
  40. 吉田茂

    吉田國務大臣 今お答えした通りに、この課においてこういうことをした、あの課においてああいうことをしたということは、ここで今お話ができないのであります。
  41. 野坂參三

    野坂委員 そうしますと今の阿波丸事件についての協定につきましては、今質問しないことにして、先ほど大野政府委員のお答えによつても、將來もこうした協定というものはあり得るというような印象を受けたのですが、またあり得ると思うのです。そうしますとそういう場合において、一体外務省のどの局とか、どの担当者のところでこういうことを一切やるのか、今後の方針としてお聞きするわけです。
  42. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えします。仮定の問題について、この局がこういたすということは申し上げられないのであります。
  43. 野坂參三

    野坂委員 仮定ではないのです。実は阿波丸が具体的にある。どういうわけでお答えになれないのか。お答えになれなければこれ以上質問してもむだですから、じやほかの問題に移りますが、一言申し上げたいことは、ああした具体的な問題、しかもあの協定によりますと、いわゆる対日援助資金として言われたものは何ら贈與でもない。明らかに債務になつている。こうした重要な問題が突然出されて、ほとんど國会の審議なしに通過されたというところに、非常に重大な今後の國際問題があるのではないか。この意味においい、今後ああした協定が結ばれる場合には、少くとも外務委員会とか、あるいはここの会議ではつきりと答弁できるようなふうにやつていただきたいと思います。
  44. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 ちよつと一言申しておきますが、外務大臣は十二時に司令部においでになる用事がありますから、それまでに質問を終るようにお願いします。
  45. 野坂參三

    野坂委員 それでは私は総理大臣に対してはこれくらいにしております。
  46. 木村榮

    木村(榮)委員 一点だけお尋ねしてみたいと思います。ソビエト連邦と日本海において漁場の協定をなさるような交渉、あるいは方針というたことについてどのように考えておられるか。またやる得る可能性があるか。またそういつたふうな問題は、今度できます通商産業省ですか、そういつて方面で取扱うのか、あるいはこの外務省のどつかの中で取扱うのか。この点を承つておきたいと思います。
  47. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。ソビエト連邦との間に漁場に関する協定についての交渉ありやいなやということでありますが、今日までのところそういう事実はございません。また万一今お尋ねのような問題が起る場合には、どこでそれを扱うかということでありますが、これは現在起つておりませんし、いささか仮定に立ちすぎているように思いますので、ここでお答えすることのできないのを遺憾といたします。
  48. 木村榮

    木村(榮)委員 仮定の問題ではないと思います。それでは具体的の問題になると、仮定々々と言われますから、仮定の問題といたしまして、私がただいま質問いたしましたことに対して、外務大臣であり、また総理大臣である吉田さんは、こういつた協定は希望はなさるか、あるいは不賛成か。その点だけを、個人的なお考えでもいいから承つておきたいと思います。
  49. 吉田茂

    吉田國務大臣 それは問題にもよりますけれども、ただいま日本に漁業を許すとか何とかいうようなことは、われわれの最も希望するところであります。そういう交渉があれば、むろん應じたいと思います。
  50. 木村榮

    木村(榮)委員 交渉があれば應じたいというわれでありますが、こつちの方から積極的に交渉なさるようにお考えはありませんか。
  51. 吉田茂

    吉田國務大臣 交渉はいたしたいのでありますが、今日外國との交渉は、御承知の通りGHQを通じてのみいたしているのであつて、直接の交渉はできない事態にあるのであります。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 時間がないようでありますので、簡單に一点だけを承つておきたいと思います。私は日本の今後の外交の性格は、すでに戰爭に負けた瞬間並びに法文の上におきましては、新憲法が與えられた瞬間に規定づけられたものだと考えているわけであります。從いまして先般の外務委員会におきましても、いささか総理大臣の所見をたたいたのでありますが、今後の日本外交政策は中立外交以外にないと私は考えており、また國民も大多数の者がこれを希望しているのではなかろうかと考えるわけであります。たまたま総理が過般局外中立、永世中立ということについてもある疑問があるというようなことをおつしやつたことが、眞相通り傳えられたわけじやないのでありますが、そのことから國民の間にも非常な不安が出て來、たまたまこれと関連いたしまして、太平洋同盟などに対する日本参加というような問題とも関連して、國民の関心を呼んでいるわけであります。そこで今度のこの外務省設置法によりましても、外務省の行う任務の最大のものは外交政策の企画、立案及びその実施でありますが、それでは外務大臣は今後の日本外交政策の基礎理念というようなところはどういうところに求められているか。私はどうも中立外交以外にないと考えておりまするが、これに対する外務大臣としての御見解を承りたいと考えます。
  53. 吉田茂

    吉田國務大臣 これもこの間この委員会であつたと思いますが、私の意見は十分説明したつもりであるのであります。私の言う局外中立に対して疑問があるというのは、ベルギーの局外中立は御承知の通りに條約によつて保障された局外中立であつて、その中立は戰爭が始まるとともにただちに侵された。侵したドイツの方も言い分があるかもしれませんが、侵されたことは事実であるから、條約の保障による局外中立というものは、はたして日本の安全を期し得るやいなやということは問題である。ベルギーの先例によつて問題がある。こう申したのであります。中立全体がどのような動き方をするか、それは講和條約あるいは國際関係によつて、どういう事態が生ずるか、その事態を見てでなければ、いいとか惡いとかいうことはいわゆる抽象論になりますからお答えができないのであります。  さて將來どういうふうな日本外交をやつて行つたらよかろうか。これも一つは仮定を前提としての話になりますが、私の理想として考えることは、從來第一次戰爭前後までは善隣外交と言つてもいいのでありましよう。日支親善を基調として支那問題を中心として、日本外交は動いておつたといつてよいと思います。それからその後満州事変以後になつては、やや言葉は惡いかもしれませんけれども、領土主義というか、領土獲得を理念としたような外交が行われ——外交が行われたというよりは、軍部に外務省も引ずられて領土獲得主義になつた。惡く極端に言えばそうも解せらるると思う。將來はどうか私は日本はなるべくはいわゆる通商外交で行きたいものだと思います。日本の國から申しても、日本経済独立あるいは自立から言つてみても、通商がかんじんである。從來といえども日本経済貿易によつて立つておつたのでありますから、一層通商貿易を主とした外交で行くことが、よその國から日本の野心とか、あるいは領土的野心というようなものを疑われずして、通商なればどの國とも円満に行く。それを政治的に考え、もしくは領土獲得というような色がつく。そこで世界から日本がいろいろな眼鏡をもつて見られる。ここに外交の破滅が生じたのであると思います。イギリスのごときは、御承知の通り長く通商外交をやつておつて、通商貿易を主とした外交をやつた結果、自然に航路の安全とか、その他の必要から領土をとるというようなことになつたのでありますが、しかし主義は通商であつたと思います。日本もでき得べくんばそういうふうになつて行けば、列國からの誤解も解け、日本の存在も政治的にも経済的にも保障されることになると私は思う。そういうふうに、理念として——これもいわば机上の空論であるかもしれませんが、そう考えております。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ただいまの通商第一主義というものも、結局通商を円満にやるためには、何としても立つ基盤は私は中立的立場に立つのではなかろうかと考えるわけであります。この際この中立問題については疑惑もあることでありますので、ただいまの通商第一政策というものは中立の政策であるというように解釈してよいのかどうか、御答弁願いたい。
  55. 吉田茂

    吉田國務大臣 どうもそう解釈してよいかどうか、お答えするこちらにも自信がありませんから、この程度でもつて質問は……。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 実は私は今後の外交のやり方というものを、通商すなわち経済の方面に重点が移されて行かなければいけない。こういう意見を申し上げまして、きようは設置法に関する質問でありますが、どういうわけで今度の外務省の中に通商局というものを設けられなかつたか。たまたまただいま大臣から通商に重点を置くというお話を伺つて、私は非常に意を強うしたのであります。ところで今度の設置法というものの案を一瞥しますと、何だか非常に貧弱な案であつて、窒息しそうな案を示されて、しばらくの間これでしのいで行こう。こういう感じがするので、おそらくこれは外務大臣としても私は不満足であろう。こう考えておるのであります。特に通商局といつたようなことが強く浮び出ておらないということに遺憾を感ずるのでありますが、この点まず第一にいかが考えられますか、お伺いいたします。
  57. 吉田茂

    吉田國務大臣 御質問はごもつともでありますが、今度できる通商産業省には、外務省としてなるべくたくさんの有能な人を入れる考えでおります。今日御承知の通り、まず第一に行政費の節減、機構の縮小ということを第一として考えているので、外務省はその線において、なるべく小さな形で、現に外交も再開されておらないのであるから、外交再開の準備を主として考えている。そうしてさしあたりの通商問題については、通商産業省にゆだねる。のみならず通商産業省にはなるべく多数の申さば有為な外交官を繰出して、言わば通商問題についての留学生というような氣持で、なるべくたくさん通商産業省に希望に從つて出すがよい。こう考えて通商産業省にわれわれは十分の援助を與え、また外務省としては將來通商局でも置き得るようなことになれば、通商が再開された場合——現に再開されておりますが、独立國としての通商が再開された場合における今日は準備時代と考え、通商産業省に留学させるようなつもりで送り出すつもりでおります。決して無用意ではないのであります。講和條約でもできて、そうして通商関係が一層外交的色彩を帶びた場合には、通商局も置きたい。そのときに通商局の再開ということを考えておりますが、それまでは準備時代として、通商産業省通商に関する留学生を出す意味でなるべくたくさん送つてみたい。こういう考えでおります。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 通商産業省の方に、今留学生を送るということももちろんけつこうでありますが、同時に外務省として、やはり自主的に外務官吏というものを育て上げなければいかんと思う。先ほど野坂さんから、この点研修所の問題で御発言があつたので、私もまことに同感でありますが、ぜひひとつ研修所というものを拡大強化して、ただに省内のみならず、一般からもこれに入れるように門戸を開放して、そうしてほんとうにあらゆる條件の備つた外交官、こういうものができ上るようにしていただきたいと思うのであります。そういう点につきまして大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  59. 吉田茂

    吉田國務大臣 門戸を開放すると申しても、公開するわけにも行かないので、通商産業省連絡をとつて、でき得べくんば將來、あるいはただちにでも派遣し得るようなことがあれば、貿易事務官とか、商務官というようなものを派遣し得る時期を待つて、その用意のためにあの研修所を商務官及び貿易事務官等の養成のためにも——これは開放ではありませんが、その機関として利用してくれるように、商工大臣等と現に話をいたしております。これは結局費用のことにも関係しますが、できるだけ関係省に開放するという考えでおります。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 外務省研修所を拡大強化せられて、一般の人がこれに入つて外務官吏になる。この点に対する首相の抱負をお伺いしたいのですが、あの研修所をもつと拡大強化して、廣く普通の人に入れるようにして、りつぱな外務官吏をつくつていただきたい、これに対する御所見を承りたい。
  61. 吉田茂

    吉田國務大臣 御希望はまことにけつこうでありますが、これは予算にも関係することであり、拡大強化といつても、そう簡單に拡大強化は現在はできませんから、公開はできませんが、各省の新しく入つて來た人員の再教育の機関にしたい、こう考えております。
  62. 若松虎雄

    ○若松委員 ただいま外務大臣は、通商産業省ができるから、ことに海外に活躍する者は通商産業省でおやりになると言われたように私はとれたのですが、私としては、実は自分の経驗からでもありますけれども、この外務省設置法案の第四條の第十六項にありまする「通商航海に関する利益保護し、及び増進する」という文句がありますが、この点が今外務省として最も必要じやないかと思うのであります。從來商工省からいろいろとやはり貿易通商員その他が参りましたけれども、思うような活動ができなかつたということは、單に人の問題とか、あるいは語学その他の才能のことは別として、制度上外國では外交官でなければやはり十分の活動ができない。早い話がいろいろの外交團の中に出入りができないということのみならず、いろいろの制約があるのであります。現にイギリスにおきましても、領事制度がはなはだそういうような制約を受ける関係から、特に商務外交官というものを置きまして、日本もその制度にならつて來たのでありますが、私はどうしても海外に出す人は、やはり外務省の一人として出なければ非常に不利じやないか。ことに戰後の疲弊した財政から、予算上の制約もあると思うのでありますが、私はまだ通商産業省設置法案を拜見いたしませんが、これは非常に考え直していただきたいと思うのであります。その点から考えても、今外務大臣は大いに通商外交を強調せられた割に、この設置法案にはあまりその方が浮かんでいない。ことに政務局という言葉をこしらえておりますが、從來日本でまだ軍部があつたり何かした場合には、いろいろ政務ということも考えられましようが、今日では外交政策の立案とか何とかいうことも、結局日本將來平和会議ができまして、講和條約ができますれば、いわゆる國際平和機構に入りまするし、大きな問題はやはり平和機構の中で片づき得るものと思うのであります。また日本が今立つという場合に、先ほど外務大臣からお話になつたように、経済外交ならばどこにもさしさわりがない点から考えましても、私は、先ほど並木委員から通商局の設置を高調されておつたように思いますが、それは名前は何でもよろしいのでありますが、政務局ということになりますと、いかにも経済面に対する外務省の持つ部分が非常に影が薄くなるような氣がいたすのであります、もちろんこれは当分の間総務局とでもして、將來通商局の復活をされた場合に、政務通商というような、はなはだ旧態でございますが、昔のようにかえられる御趣旨はございませんか。特に私は海外に人を出すということについて、でき得れば外務省が一本でやつていただきたいということを、自分の体驗からお伺いしておきます。
  63. 吉田茂

    吉田國務大臣 御承知の通り海外通商も自由でない今日、外務省としてはすでに通商産業省がある以上は、同じ政府であるのでありますから、そちらの方に讓つて、他日再開の場合の準備をすることにとどめたいと思います。なお外務省機構については、いろいろ御意見もありましようが、どうぞよく御研究くださつて、政府原案にしていただきたいと思います。
  64. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 外務大臣に対する質疑はこれで終了いたします。他に政府委員に対する御質疑がありますれば、この際にお許しいたします。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつと一言私お伺いしたいのでございますけれども、この設置法案を見まして、外務省任務の中に当然入つているかと思いましたが、入つておらないのですが、留学生の問題はどういうふうになつているのでございますか。今までの南方諸地域からの学生、あるいは中國からの学生に対しての外務省のおせわはどんなふうにしていらしつたか。あるいはこれからも留学生が日本に來た場合に、外務省としてどういうような方法をおとりになるかということをお伺いしたいと思います。
  66. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいまの戸叶委員の御質問にお答え申し上げますが、この外務省設置法案の中には、たとえば第四條の二十項のように「在日外國人等の待遇に関する事務を行うこと。」というのもございますし、また國際文化関係の事業につきましてもこの法案の中に規定しているのでありまして、そのいずれを引用いたしましても、從來日本にやつて來ておりました南方諸地域、あるいは中華民國の留学生諸君に対するせわ等については、外務省としてなし得るというように御了解願いたいのであります。なお現在どういうふうなことになつているか、また將來どうするかという御質問でありましたが、現在のところ南方方面から参つて、引続き勉学いたしております留学生諸君に対しましては、財團法人國際学友会がその事務処理するの衝にあたつて、鋭意そのせわをいたしているのであります。また中華民國からの留学生で残存いたしている諸君につきましては、やはり財團法人友隣学会というものが、そのせわの衝にあたつておりまして、経費が非常に少うございますけれども、その限度におきましては、でき得る限りのことをいたしている次第であります。
  67. 岡崎勝男

    ○岡崎外務委員長 この第三條の九に「連合國官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関事務総合調整」というのがありますが、連絡局の中を見ますと「連合國官憲との文書の往復その他連絡に関すること。」というのがあります。そこで連合國官憲との文書の往復や連絡は各省ともやつていると思うのですが、その中で日本政府の全体に対するもの、あるいは各省にまたがるものは外務省連絡局でやるという意味であるかどうか、これが一点。もう一つは、その第二に「連合國官憲との連絡関連する各行政機関事務の調整に関すること。」というのがあります。從來連絡調整局が内閣にあつた場合には、各省の上にあるというような形から、各行政機関事務の調整ということが比較的容易にできたかと思いますが、これがほかの省と同格の外務省の中に移された場合に、各行政機関との事務の調整をちやんとやり得るかどうか。またそれについてほかの省なり、あるいは初めの問題については、重要なる文書は連絡局と通じてよこすというような了解が司令部との間にあるかどうか、こういう点をひとつ伺いたいと思います。
  68. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 岡崎委員の御質問にお答え申し上げます。  第三條の九に掲げてあります「連合國官憲との連絡及びこれに関連する各行政機関事務総合調整」という意味の解釈でありますが、質問の第一点に関しましては、連合國官憲日本政府との間に窓口となるという趣旨が第一点でありまして、たとえば連合國官憲から政府自体に対して正式の書面が参るような場合におきましては、外務省を通ずる。すなわち外務省はその面につきましては一本の窓口になる。こういう趣旨に御解釈願いたいのであります。また各省の行政事務の調整をなし得るかどうかということでありますが、これは実は中央と地方とにわけて考えなければならぬのでありまして、中央に関しましては、ただいま岡崎外務委員長の仰せになつ通りでありまして、政府の各廳は所管事務につきまして、こまかい問題につきましては、直接連合國の官憲と連絡いたしておりまするが、しかしそれの各省にまたがる問題等につきましては、やはり外務省におきましてでき得る限り連絡調整の任にあたりたい。かように考えておる次第であります。地方に関しましてはいささか事情が違いまして、地方軍政部の所在地におきましては、先ほど御説明申し上げましたように、連絡調整事務局が置かれる案になつておりますが、その地方々々の特殊事情を生かしまして、連合軍の地方官憲との間の連絡に当るのはもちろんのこと、日本側の民間その他をも考慮に入れまして、連絡のみならず、総合調整の任に当つておるのであります。その点は今後といえどもかわりがない、かように考えております。  第三点の、それらの点について連合國官憲との間に了解ありやいなやという御質問と解釈いたしますが、これは連絡調整中央事務局並びに地方事務局がこういう形で外務省に取入れられるという過程につきましては、事務当局といたしまして、連合國官憲の当該部局との間に十分説明も申し上げてありまするし、それに対して御了解も得ておるというふうに考えております。
  69. 並木芳雄

    ○並木委員 第十一條の四ですが「連合國の行う軍事裁判に関すること。」こういう項目があります。大体どんなことをやつておられるのか。最近は軍事裁判が日本側の裁判に大分移されておるということを聞いておりますけれども、どういう仕事があるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  70. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいまの並木委員の御質問にお答え申し上げます。第十一條の四にありまする軍事裁判に関することというのは、沿革を申しますと、現存する連絡調整中央事務局の第三部において所掌して参りました事務に該当するのであります。これは連合國側において戰犯等を裁判しまする事務関連いたしまして、從來連絡、あるいは調整の任に当つて参つた仕事であります。日本側に移讓された云々というお話でありましたが、私どもはまだそういう事実を承知いたしておりません。
  71. 並木芳雄

    ○並木委員 連絡調整事務局の仕事の中に、第十六條の四「國際事情に関する知識の普及に関すること。」こういうのがあつて、それから政務局でしたか、第七條の六に「内外新聞通信及び報道並びに國際事情に関する知識の普及に関すること。」とあつて「國際事情に関する知識の普及に関すること。」というのが完全にダブツておるわけであります。一体これはどつちが主管するのであるか、また実際普及ということはどんなふうにやるのか。それをお聞きしたい。
  72. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 並木委員の御質問にお答え申し上げますが、第七條政務局事務に関する規定の六号「内外新聞通信及び報道並びに國際事情に関する知識の普及に関すること。」というのは、外務省全般といたしまして、ここに、掲げてある知識の普及に関する総元締になつて諸般の事務を行う。あるいはいろいろな計画をし、これを実施する中心になるという趣旨でありまして、十五ページ、第十六條の四の「國際事情に関する知識の普及に関すること。」というのは、地方に設置されることを予定されております連絡調整事務局において、この第七條の六号において政務局情報部が企画、立案し、またアレンジいたしましたいろいろな企てを、第十六條の四号におきまして、地方において連絡調整事務局がこれを実施する際のあつせんあるいはせわをするというようなことを意味するわけでありまして、別段重複ないし矛盾でない次第であります。すなわち両者相合体いたしまして、中央と地方とにおいて仕事を分掌いたしまして、全きを期するという趣旨にほかならない。なおいかなる方法でやつておるか、またこれからやるかという御質問でありますが、最近までは地方外交懇談会、あるいは國際問題懇談会というようないろいろな機関がたくさんできておりまして、これが外務省の方へ講師の派遣を求めて來るとか、あるいはいろいろな啓発についての企てを求めて來るというふうな関係に相なつておりまして、その場合におきましては、外務省情報部におきまして、この求めに應じて適切な職員外務省から派遣いたしまして、國際事情の正確な認識に資しておる次第であります。これは非常にたくさんそういうケースはあるのでありまして、実はあまり表面にはなばなしく出ておりませんけれども、これをまじめにやつておる部局といたしましては、非常に國民の國際問題に対する関心を深めさせ、また正確な認識を得せしめておるというように考えております。なお外交懇談会のみならず、地方の商工会議所であるとか、あるいはその他の通商関係の業者の團体であるとか、あるいは文化関係の團体であるとか、いろいろな機関がございまして、そういう方面からもずいぶんたくさん講師の派遣を求められておるわけでありまして、最大の努力を拂つてこれに應じておるような状況であります。こういうことは今後とも大いに力を入れまして実行して行きたいと考えております。
  73. 野坂參三

    野坂委員 一つお伺いしたい。それはこの設置法ができた結果、外務省の内部の機構がかわつて來ますと、すぐ人員の整理とか増加とかということになつて來ると思う。この問題を、われわれはこの設置法を審議する上で考慮しなければならぬと思います。この設置法の実施される結果、どれだけの人員が異動し、あるいは整理され首を切られるのか、これに対して政府はどういうふうな対策をお持ちになるか。これは当然定員法が出て、それで規定されるものでありますけれども、やはり設置法関連してお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、外務省ではいろいろ特殊な外務関係の能力がいると思いますから、これについて、人員の保存ということも必要ではないかと思います。今外交関係は正式にありませんけれども、將來外交関係が正式にできた場合においては、すぐ急速に新しく養成することは困難であるから、將來を見通して、今どういうふうな人員の保存とか、あるいは養成ということをお考えになつておるか、この二つの点をお聞きしたい。
  74. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 野坂君の御質問にお答え申し上げます。外務省といたしましては、予算定員といたしまして千三百七十九名を数えておるのでありますが、もしその三割、また外務省研修所定員に関しましては、それより多少上まわつた削減率が適用されるかもしれない状況にあります。從つてその辺がどちらになるかによりまして、確定的な数字も出て参りますが、いずれにいたしましても、千三百七十九名のうち大体三百人ちよつと上まわる程度の人員を、やむを得ず整理せざるを得ないことになるだろうと考えております。これらの人々をどういうふうに処理するつもりかというお話でありますが、いずれも有能の経驗のある人たちでありまして、海外における生活をして來、また外國為替を使つて生活して來た経驗のある人が多いのでありまして、終戰後二度ないし三度にわたりまして外務省は大縮小を遂げておりまする上に、これだけの人員の整理をせざるを得ないということでありますと、はなはだ苦痛なのでありますが、これらの整理さるべき人々につきましては、極力外交とか、あるいは対外関係、あるいは通商経済関係と縁のある機関とか商社とかいう方面に大体振り向けて行く方針で、目下鋭意その努力を続けておるような次第であります。  第三の御質問は、長い間経驗のあつた人たちをどういうふうに温存するかということでありますが、これは御説の通りでありまして、私どももこれには大いに意を注いである次第であります。今度の場合も、年寄りであるからどうということを整理の基準にはいたしませんで、やはり諸事情を総合的に勘案して、やむを得ざる整理人員を考えるということであります。たとえば語学の関係から申しましても、あるいは中國語、ロシヤ語、あるいは場合によりましてはアラビア語であるとかインド語であるとかいうものの專門家があるのであります。語学ばかりでなく、通商経済関連いたしましても、長い間対外経済関係事務を鞅掌しておりまして、ほとんど生字引のような人さえ相当多数おるのであります。これらにつきましては、單に年齡がどうであるとか、あるいはその他のしやくし定規的な基準でもつてどうこうということをなるべくいたしませんで、その他の諸事情を総合的に勘案して処置することにいたしておる次第であります。
  75. 野坂參三

    野坂委員 今三百名と申されましたけれども、これは外務省内において配置轉換をする人も含めてですか。あるいは外務省外、たとえば通商産業省の方に移すような人も含めているのですか。それから首を切つて信廳から出して民間に移す、こういう人も含めているのですか。ちよつと内容をお聞きしたい。  第二に、念のためお聞きしたいことは、外務省で実際働いている官吏の中に、特に外部の特殊な雜誌なんかと関係して、これは私たちと直接関係がありますけれども、反共宣傳を盛んにやつておる人があるというようなことも聞いておりますが、こういう人がおるのかどうか。これについては一体どういう処置をとつているか。今後もやらせるつもりか。もし必要があれば、私たち具体的の実例がありますから……。
  76. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。三百人ちよつと越えるという数字は、たとえば通商産業省の方へ予定されている、あるいは現在安定本部であるとか、法務廳であるとかいう方面の渉外関係等に相当の人員をさいておりますが、それらのものと数の上の関係につきましては、目下なお調整中でありまして、ここでまだお答え申し上げる段階に至つておりませんことを御了承願いたいと思います。  なお第二点は、反共的な言論をする者が外務省職員の中にあるというお話でございましたが、不幸にして的確な事実をただいま承知いたしておりませんので、ここでどうとも申し上げかねるのでありますが、もしそういう者がかりにたくさんの中にあつたといたしましても、日ごろ、自分たちの與えられた題目として職務的に研究している問題が対外的の問題である関係上、自然いろいろの点について見解を持ち、また場合によつてはこれを表明することも相当あるだろうと思います。そういう場合におきましても、外務省の役人として表明している場合と、まつたく個人の立場で表明している場合といろいろあるだろうと思うのであります。それらの点もありまするので、どういうような言論がどういうふうな形で行われているか、それをそのままとつて、一般的にこれはどうこうと言うことは少し困るではないかと、かように考えております。
  77. 野坂參三

    野坂委員 今の問題で、こういうふうなことをやつている人があるという正確な事実もありますので、必要とあればあとで提出いたしますが、こういうことがあつた場合、ただいま外務省で働いている官吏が、個人の意見を発表するという程度ならばこれはさしつかえないし、あり得ると思う。しかしこの場合においても、あり限度がありはしないか、特殊な目的、意図をもつて、外交関係に直接関係のあるような、むしろ外交関係を惡化させるようなこういう言動がかりにあつたとすれば、外務省の当局者としては、こういうことを奬励されるのか。あるいはこれを制限されるとか統制されるとかいう御意向があるかどうか、もう一ぺんお聞きしたいと思います。
  78. 大野勝巳

    大野勝巳政府委員 ただいまの野坂委員の御質問にお答え申し上げますが、やはり具体的な事実と、その事実がどういう條件、環境のもとに起つておるかということを承知いたしませんと、ここで概括論を申し上げるわけに参りませんので、さよう御了承願います。
  79. 齋藤隆夫

    齋藤委員長 もう質疑はございませんか。——質疑がなければ、これで散会いたします。     午後零時二十八分散会