○稻垣國務大臣
政府は、先般來通商産業省の
設置について、鋭意愼重な檢討を進めて來たのでありますが、今回ようやくその成案を得るに至りましたので、ここに
通商産業省設置法案を
國会に提出して、御
審議を仰く次第であります。
申すまでもなく、
日本経済の自立と安定とは、輸出の振興と生産の増強とにかかつているのでありますが、終戰以來、商工省はこの二つの重大な使命を担当するため、商工
本省、石炭廳及び貿易廳を中核とし、さらに特許局、中小
企業廳並びに工業技術廳を擁しまして、鋭意國力の回復に努力して参つた次第であります。幸いにして、連合國の好意ある対日援助と官民一体の努力とにより、鉱工業生産は順調な上昇を示し、インフレーシヨンも漸時緩慢化いたしまして、
経済安定のきざしが見え始めましたことは、まことに喜びにたえない次第であります。しかしながら、國際
経済への参加態勢を確立し、わが國
経済の自立を達成するためには、さらに輸出産業の飛躍的な振興をはかり、貿易と生産との連繋をより一層緊密ならしめることが肝要なのでありまして、いわゆる
経済安定九原則の指令も、まさにこれを要求しているものであります。ここにおいて
政府はわが國
経済が本質的に國際通商を基本とする交易
経済であること、並びにわが國が現在置かれている國際情勢に深く思いをいたしまして、産業
行政の方向を、
從來のごとき國内
経済中心主義から、進んで國際通商主義に切りかえ、一日も早くわが國
経済の自立を達成することを決意し、
從來の商工省を解体いたしまて、ここにまつたく新たなる構想のもとに、通商産業省を
設置するに至つた次第であります。
法案の詳細な
内容につきましては、
審議の途上、逐次御
説明申し上げることといたしたいと考えますが、以下その
概要を申し述べますならば、通商産業省は、通商
関係部局及び輸出品生産原局からなる
本省、國内資源に関する
行政をつかさどる資源廳、
從來の特許局に相当する特許廳並びに工業技術廳及び中小
企業廳から構成されております。なお通商
関係事務の重要性にかんがみまして、特に通商監を設け、次官を補佐して通商に関する
事務を
整理せしめることと
なつております。
まず第一に、
本省は
大臣官房並びに通商局、通商振興局、通商
企業局、通商纖維局、通商雜貨局、通商機械局、通商化学局、及び通商鉄鋼局の八局から構成せられております。通商局は、通商に関する政策並びに物資需給計画及び輸出入計画を立案し、その推進をはかる通商産業省の中核的
部局であります。またこの局におきましては、輸入物資が生産計画に重要な役割を果すことにかんがみまして、輸入に関する業務をつかさどることと
なつております。通商振興局は、通商局が主として政策面を担当いたしますのに対し、通商金融、輸出品の檢査、輸出品の展示
紹介等の通商振興上の実施面を担当することと
なつております。また輸出に関する
事務は、通商産業省
所管の物資につきましては、後ほど御
説明いたします
通り、それぞれ物資別の局で担当いたしますが、他省
所管の物資に関する輸出
事務は、この通商振興局でとりまとめて
処理することと
なつております。次に、通商
企業局は、單一為替レート設定を契機とする國際
経済体系との接触に備えますためにも、また急速なる
経済安定を目途とする本年度の嚴格なる財政金融政策に対処いたしますためにも、國内産業の徹底的な
企業合理化を促進することが急務と
なつて参りました
現状におきまして、
企業合理化に関する
調査、
指導及び啓蒙を行うことを主たる
任務といたしておるのであります。
次に、通商纖維局以下五つの物資別の局が設けられていますが、通商纖維局におきましては、輸出品の大宗をなす纖維工業品の生産と輸出並びに國内衣料品の配給に関する
事務をつかさどり、通商雜貨局におきましては、輸出用雜貨工業品と生活用品との生産と輸出に関する
事務を通商機械局におきましては、機械器具、
自動車等の生産と輸出に関する
事務を通商化学局におきましては、化学工業品の生産と輸出並びにアルコール專賣に関する
事務を、また通商鉄鋼局におきましては、鉄鋼の生産と輸出に関する
事務をつかさどることと
なつております。
以上が
本省機構の概観であります。
次に通商産業省の
外局といたしましては、資源廳、工業技術廳、特許廳及び中小
企業廳の四廳が
設置されることと
なつております。
まず第一に、資源廳はその長を長官といたしまして、通商と比較的
関係の乏しい資源
関係の局をとりまとめることとし、長官
官房のほか石炭
管理局、石炭生産局、鉱山局、鉱山保安局及び電力局の五局から構成されております。このうち、石炭
管理局におきましては、主として
從來の石炭廳の
管理局配炭局及び亞炭局の
所掌事務を、石炭生産局においては、生産局、開発局及び資材局の
所掌事務をつかさどり、また鉱山局は
從來の鉱山局の、電力局は電力局の
所掌事務をつかさどることと
なつております。また鉱山保安局は、別途今
國会提案の上御
審議を仰ぐことと
なつております鉱山保安法の
施行に関する
事務をつかさどり、鉱業に関する保安を確保して、鉱山労働者に対する危害を防止し、鉱物資源の合理的な開発をはかることを主たる
任務とするものであります。石炭、鉱物、電力等の國内資源の開発と利用とは、
從來商工省が最も力を注いで参りましたところでありますし、またわが國
経済復興のためには、今後ともますます強力な
行政的措置を必要といたしますので、通商産業省の新
機構におきましては、これを独立の省にも比すべき強力簡素な
機構を有する資源廳において
所掌せしめることといたしました。
次に、工業技術廳は、鉱工業の科学技術に関する試驗
研究並びにその成果の
普及をはかることを
任務とするものであり、特許廳は特許権その他の工業所有権に関する
事務をつかさどり、また中小
企業廳は、中小
企業の
指導及び振興をはかることをその
任務とするものでありまして、ほぼ現在の
機構を踏襲いたしております。
以上が通商産業省の中央
機構の
概要でありますが、さらに地方
機構といたしましては、現在の商工局と地方貿易
事務局とを合体いたしました通商産業局を全國八箇所に
設置しまして、
本省並びに
外局の
事務を分掌せしめ、さらに全國四箇所の主要炭田地域に石炭局を
設置いたしまして、石炭鉱業の國家
管理に
関係する
事務をつかさどらしめることといたしました。なお商工局の出張所は、これを七月三十一日まで存置せしめ、その間
経済統制事務の地方廳委讓の準備を推進し、八月一日以後におきましては、必要最小限度の地に通商産業局の
分室を
設置することといたしました。なほまた主要貿易港の所在地には、通商
事務所を
設置しまして、通商
関係事務の迅速な
処理をはかりたいと考えております。
以上申し述べましたところが、本
法案の
提案理由とその
内容の
概要でありますが、
政府におきましては、この
法案の一日でも早い実施によつて、相應の効果のあるべきことを確信し、かつ
日本経済の自立確立のためにも、
行政機構の面において一日もすみやかにその態勢を
整備する必要があると考えまして、
各省設置法に先だち、五月二十日の
施行を目途として、その準備を進めている次第であります。
何とぞ
政府の意の存するところを了とせられ、大局的
見地より御
審議御協賛あらんことを切に希望する次第であります。