○井之口
委員 加藤班長の御
報告に対しまして、私からこれに補足する点が少しございます。二省
分離の
地方機関における
実施状況、その各運営
状況、並びにこれに対する
調査團としての私の意見を、
地方別に申し述べてみたいと思います。
第一、廣島を中心として、中國
地方を
視察いたしましたが、特に
電氣通信局について見ますに、二省
分離により、とりわけ電通局の
機構は、むやみに船長、係長等が
増設され、
從來の係が課になり、十人ぐらいいたのが四人ぐらいで課を形成するに至
つておりますために、煩雑な組織とな
つております。
視察当時は、特にやつとそれらの頭だけが任命された
状態でございましたので、各人が自分のポストの問題だけに没頭いたしまして、
仕事も手につかぬ
状態でございました。
機構はこのライン・オーガニゼーシヨンによ
つて、集中化が強化されましたが、これに伴わねばならぬ民主化が行われていないために、下からの総意は上に通ぜず、あたかも下向きにな
つているパルプのかつこうで、上からは命令が流れて來ますが、下からの意見はちつとも上に通じないという官僚
機構が、強化されているような
状態でございます。
世話の
施設が腐朽いたしておりますが、特に廣島、宇品間は、雨がちよつとでも降れば不通になるという
状態でございます。
電通局全体といたしましては、現在定員が三百七十五名のところ、実員は二百六名でございます。今でさえ五十名不足のところへも
つて來まして、新定員では二百三十六名に減ずるのでございますから、ま
つたくむりと考えられます。交換台に働いております者が現在百八十四名で、うち三十名は療養欠勤でございました。これはむしろ二百四十名にしてほしいほどだ
つたのでございます。そういう
状態でございましたために、午前中は休憩もないという
電話交換手の
状態だ
つたのでございます。
工務
関係を見ますと、現在の定員が四百七十七名にな
つておりますが、これは十分
復旧工事を行うためには、千名くらいにふやさなければならないのに、かえ
つて新定員では四百二名に減ぜられる予想でございます。それでは運営に
支障を來すほかはないと感ぜられました。
給與の点は、現在の六千三百円ベースがどうな
つているかと申しますと、四十二時制を四十八時間制に延長しましたために、超過勤務手当が普通に吸収されてしま
つたから、四千九百円ベースにしかならなくな
つております。かつ勤務時間が実に不規則で、寸断されておりまするために、通勤に時間を食われて、遠隔の地から通勤する者は電車、汽車の便を失い、しかも逓信局に近いところには宿舎の便がなくて、局内の宿直室の寝具はしらみやのみが繁殖して、不潔そのものでございました。
從業員の宿舎の欠乏は、廣島において特にひどか
つたようでございます。廣島逓信病院長の蜂谷道彦さんの語るところによりますれば、結核檢査についての結果は次の通りでございました。被檢査者三万二千三百四十一名でございます。但しこれは病臥中の者で、集團檢診を受けることができない者とか、あるいは馘首をおそれて罹病者でありながら檢診を回避した者が、相当あ
つたということを含まねばなりません。このうちで要注意者が千百六十人、要療養者が五百四十人、右の通りでありまして、これは明らかに過労と栄養失調と不潔のもたらした結果と言わざるを得ません。
電話交換手佐藤ふじ子さんの語るところでは、生理休暇が一箇月三日から二日に
なつたが、これもなかなかとりにくくな
つている。
從來の通り三日にして、励行させるようにしてもらいたいとのことでございましたが、ま
つたく同情の至りでございました。
次に第二番目に、松山を中心といたしまして四國
地方を
視察いたしましたが、二省
分離についての
実情並びに意見は、中國の場合とほとんど同様でございます。
機構は複雑化し、二重になるのに、人員は削減される矛盾に、至る所悩んでいたようであります。
警察電話は引受けたが、人員は削減される。これもまた深刻な矛盾でございました。この矛盾は労働の強化とならざるを得ませんでした。かくして慰労休暇も生理休暇も必然にとれなくなるだろうとの不安が、
從業員に懸念されておりました。しかるにそれらの
行政整理、
機構改革のための人事が、
当局の天くだり式でやられて、何ら相談も受けねば、希望の申出もできない
状態でございましたために、
仕事は停止して手につかず、ばらばらの
状態でありました。時間が延長されるために、慰安設備を使用するいとまもなくなり、
從つて慰安費は削られるというはめにな
つております。電通局で現にとられている生理休暇は〇・六とな
つていて、交換に從事する少女らが、三時間休憩なしで交換台にいすわり続けるという
状態でありまして、
從つて四國逓信局
管内要保護者
調査が、昭和二十四年の一月現在におきまして、
調査場所は松山、宇和島、大州、八幡浜、三津浜、今治、西條、新居浜、松山
電信、松山
電話、松山工事、松山無線工事、東部、
中部、南部、高松、観音寺、多度津、坂出、琴平、丸亀、高松鉄郵、善通寺、高松
電信、高松
電話、高松工事、東部、西部、後免、須崎、土佐中村、室戸岬、高知、高知
電話、高知工事、東部、
中部・西部・徳島、鳴門、小松島、徳島
電話、徳島工事、北部、南部、これらを
合計いたしまして要療養者が百七十六名、要注意者が三百二十四名、こういう
状態でございました。
特定局はいまだに封建的な
制度にな
つているものが多くありまして、局長が魚屋の御主人だとか、不適格者が
大分いるようでございます。什器、建物は局長の私物であ
つたりいたしまして、その中に四、五人の局員がたき火をしながら、金庫もないところで見張りをして、夜を過すというところがあるのでございます。
特定局でさえこうでございますから、簡易
郵便局におきましてはさらに危險であ
つて、これも当然出張所にすべきものだと監察されました。
第三番目に
熊本を中心といたしまして
九州方面を
視察いたしましたが、
熊本の二省
分離、
行政整理、賃金等に対しましては、中國並びに四國とほとんど同じで、鹿児島、宮崎、
大分、
熊本、長崎、佐賀、福岡各
地方より参集しておりました
從業員の代表諸君の、異口同音に主張されるところによりますと、人員の不足は労働の過重となり、自宅に持ち帰
つてまで
仕事をせねばならず、住宅欠乏と勤務時間の不合理のために、これまで一回弁当持参で出勤すればよか
つたところを、四回分を持参せねばならなくなり、月に二回の生理休暇でさえとれず、中には父親が死去したのに休めなか
つたという例もあるとのことでありました。
郵便配達夫もやつと人手が足りている
状態であるから、これ以上に人員を減らされては、配達の
サービスが
低下せざるを得ぬと申しております。引揚者の多い同
地方のことでございますからして、かれらを馘首するのはま
つたく不合理と言わなければなりません。
熊本郵便局の現場
視察を行
つたところが、支給された被服がすでに破れておるのを着て、執務していた
状態でありました。そこで資材部長に、貸與被服類の檢査
状態の
報告を求めましたところが、ほとんど満配しているとの
報告でありましたが、もし満配とすれば、支給
物数の僅少によるものだと判断せざるを得ません。
從業員の言うところによりますれば、
國鉄などよりも被服類の貸與がずつと悪いとのことでありました。配達夫よりはゴム靴長、地下たびの配給
増加が
要望されておりました。なお福岡において逓信病院
組合の解散を命じたとのことでございましたが、これは明らかに違法と言わざるを得ません。
熊本訓練所の
視察で感ぜられましたことは、教育せられる学生の学力の
低下せることでございまして、訓練でかかる一般的学力の向上を企図せずして、ただに技術訓練に終始する
状態があ
つたことは、將來の
逓信事業を担
つて立たねばならぬこれらの青年の前途に、暗い影を投ずるものと言わなければなりません。
デラ台風の
復旧には、一億数千万円を要するにかかわらず、わずかに四百万円を局長の権限において支出するのでありまして、應急修理は、電柱の倒れたるままにやつと電線をつなぎ合せた
程度にすぎませんでした。しかも
警察電話のごとき、明治三十七、八年ごろの電柱でさえ、そのまま残
つているというがごときボロ
施設でありますから、これが
復旧に際し多額の費用を要し、民間の
復旧にまではなかなか手が及ばない。いわんや
被害を受けた
從業員に対するところの救済は、きわめて微々たるものでございました。
独立採算制によりますれば、この
復旧もいつのことかわからないであろうと思われます。あるいは外國資本の導入によ
つてなされるといたしますれば、なおさらも
つて感心すべき
状態が
実現されはせぬかと懸念されます。
熊本鉄道
郵便局の
視察によ
つて次の
要望事項を受付けました。これは全般の鉄郵
事業の参考になりますから、この
要望事項を読み上げて見ます。
要望事項
一、鉄郵局
各地派出所を分局に昇格せしめられたい。
熊本、門司、鳥栖、
大分、鹿児島の各派出所を分局に
機構を
改正し、鉄郵
業務を円滑に運営せられたい。
なお、門司派出所は関門の
重要性にかんがみ、門司鉄郵局に昇格せしむることについても考慮せられたい。
二、
郵便車の新車三十台配車されたい。
管内所要台数は約八十台で現用車は
郵便車七十三台(大型十三、小型六十)と代用車(客車または荷物車)約七台のところ、大型七台と小型約十台、計十七台は老朽車で、雨漏りひどく、運轉中動揺して車中
事務執行に
支障があるから、代用車のとりかえを含め次の通り新車を配車されたい。
大型七台、小型二十台(予備三台を含む)
三、鉄道便の選定について。
郵便物の速達化をはかるため、鉄道側に対して便の選定を強力に
要請し得るよう、ある
程度の権限を認めてもらいたい。
四、檢閲
郵便物の速達化をはかられたい。
でき得れば
郵便物の檢閲を見合せられたい。
占領軍の政策上必要ならば、各
普通局に占領軍側の
関係者を配達し、附近の
特定局の分もその局に吸収して、
郵便物の速達化をはかられたい。
五、
從業員の処遇について。
1 固定給の引上げ。
現在の物價に比べてあまりに
給與が少な過ぎる、早急に固定給の引上げを
要望する。
2 勤労所得税の軽減。
勤労所得税を引下げて生活安定の道を講ぜられたい。
3 被服の
改善。
服装の良否は
從業員の志氣を左右するとともに、
事業の威信にも
関係するから、品質を向上し制式を改良されたい。という
要望が出ておりますが、この問題ま
つたく全國的に、
郵便事業と鉄道方面に
関係があることですから、この点はなお詳しくわれわれが取上げて、
研究して見なければならないものだと思われる次第であります。これをも
つて私の意見を終ります。