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小澤國務大臣 私は先般第三次
吉田内閣が成立と同時に
逓信大臣を拝命いたしたのであります。御承知のように、私は
逓信行政については、
ほんとうに文字通りずぶのしろうとでありまして、就任以来
ほんとうにアルファベットから一生懸命勉強いたしておりまするが、まだまだその全部を知るというようなわけには参らぬのでありまするから、どうぞこの意味で
皆さんの十分な御指導と御鞭撻とを願いたいと存ずるのであります。
さて当面いたしまする
逓信行政について、おも立つた点を考えてみまするならば、まず第一に一
省分立の問題であります。すでに御承知のように、昨年の
マツカーサー元帥の書簡に基きまして、第四
國会におきまして、現在の
逓信省を
郵政省、
電氣通信省の二省に分割するいわゆる両
組織法案が政府から提案をいたされまして、
國会はこれを
審議し、この
法案がいずれむ成立いたし、しかも本年の四日一日からこれが
実施ということに一應決定しておるのであります。しかしながら第三次
吉田内閣が誕生いたしまして、そうしてまず第一に、
野党時代から唱えておりました——どうしても日本の
現状においては、
行政整理ということ、
行政の
簡素化ということが
緊急事であるということを常に主張して來ました
吉田内閣といたしましては、まず第一にこれを取上げて、諸般の
行政機構の
簡素化、あるいは
行政整理を断行しなければならぬという方針を決定いたしたのであります。從いまして、ただいま申し上げました両
法案は、すでに四月一日に
実施することにはな
つておりまするけれども、これを四月一日までに
行政整理とあわして同時に実行するということは、事実上不可能であ
つたのであります。從いましてこの
行政整理は、大体六月一日を期して、その間に諸般の準備を急速に進めて、これが実行に移そうということにた
つたのでありましたが、
ちようどその間に処しまして、ただいまの二
法案が四月一日
実施ということになりますと、二回にも三回にもわた
つて、同じような動きをしなければならぬとい、ことは、かえ
つて小便であるという
見地から、この際四月一日
実施の
行政機構に関する問題、ただいまの二
法案のほかに、
運輸省におきましては
日本國有鉄道法の
実施、
大藏省におきましては
專賣法案の
実施も、いずれも四月一日にな
つておりましたが、これらいまだ
実施しない
行政機構の
実施は、この際一
應行政整理の目途がつきます六月一日に延期をいたしまして、同時にこれを敢行することによ
つて、よりよくその実績をあげ得るものと確信いたしましたので、まず政府はただいま申し上げました
法案を、いずれ
実施期を変更いたしまして、六月一日までこれを延期することに決定をいたしたのであります。從いましてただいまの
逓信省所管の
郵政省設置法案並びに
電氣通信省設置法案の二件は、すでに当衆議院に昨日正式に提案をいたしましたから、やがて
合同審議その他の形式において、当
委員会において
委員諸君の御
審議を煩わすことと存ずる次第であります。ただ申し上げておきたいことは、この
行政機構の
簡素化、
整理を
実施するにあたりましては、現在の
逓信省の
行政機構に対して、
行政の
簡素化、あるいは
行政整理を
実施するというのではなくして、
行政整理をする
目標といたしましては、すでに成立をいたしております現在の
郵政省設置法案並びに
電氣通信省設置法案が、現実に
実施されておるものという観点から、この
法律に対してさらに
行政の
簡素化あるいは
行政整理を敢行しようと考えておりますから、ただいま申し上げました二つの
法案の一部
改正案である。今回御
審議を願うべき
改正案は、單に四月一日
実施を、六月一日
実施に改正する案でありまして、すなわち同じ名前のもとに、今度は
行政機構の各條項に当てはまりました
改正案を、必ず政府より提出しようという考えでおるのであります。從いまして目下のところでは、この二つの
法案が
実施されて、現実に
行政官廳として存在するという前提のもとに、これをどう
簡素化をはかるか、どう
整理をするかということについて、險討中であるということを、御了承願いたいと存ずるものであります。
さらに
人員整理の問題であります。この
人員整理という問題についても、各省各
官廳ごとに、いろいろな過去の経緯あるいは事務の
相違等がありますので、一律にこれを決定するということは、むしろ乱暴ではないかとさえも考えられるのでありますが、少くともある
程度の
目標を立てて進んで行かなければ、いつまでも決定できぬという趣旨から、ことに第二次
吉田内閣当時において
行政審議会という会を設けまして、この
審議会の
答申案にも大体三割
程度というような答申がありました点等を考え合せまして、政府においては
一般会計における各省は大体三割、
企業廳、すなわち
現業廳——運輸省、
逓信省においては大体二割を標準として人員の
整理を行うということに方針を決定いたしております。しかしながら、ただいま申し上げました通り、同じ
現業廳でも、
運輸省と
逓信省を同一に扱うことが困難であるように、
一般会計における他の各省においても、ただちに三割平均ということはかなり困難が伴います。そういうような事情から、原則ただいまのように
一般会計における各省は三割、
企業廳は各二割ということを決定いたしておりますが、これを具体的に実行するにあた
つては、この目安のもとに各省の事情を十分考慮して、二割にならぬ場合も予想されれば、あるいは二割以上になることも考えられなければならぬ。同時にある省においては三割が適当である場合もあり、あろ省においては四割、五割、も必要のところもあるということは、現実の面として当然そういう結果にな
つて來るのでありますが、一應政府としては大きな目安を、
一般会計における各省においては三割、各
企業廳においては二割というような方針をきめながら、ただいま申し上げた線に
沿つて着々その準備を進めつつあるような
現状であります。
從つて逓信省としてもある標準を立てて、現在その方向に向
つて進んでおるのでありますが、現在の模様においては、
独立採算制ということも考え、また
逓信省の企業それ自体の本来の
性質等を考えまして、大体においては一割
程度以上に減らすということは、あるいは困難ではないかというような見通しがありますので、そのような線に沿うてただいま極力準備を進行中であります。
さらに本年度の
特別会計、すなわち
逓信省の予算について、現在お話申し上げることが適当だと思
つておる点だけをお話申し上げたいと存じます。まず昭和二十四年度の予算の編成にあたりましては、
経済九原則の線もありましたので、各
企業廳としては必ず
独立採算制をとること、これを一番強い
目標に置いて予算の編成にとりかか
つたのであります。御承知のように昭和二十三年度の予算においては、約七十億から八十億
程度の
一般会計からの繰入れによ
つて、ようやく収支の
バランスを合せ
來つたのが
逓信特別会計の
現状であります。しかし私どもは今日のような國家の
現状においては、できるだけ企業はそれ自体の力によ
つて収支を償
つて行くということが適当であるという
見地から、
鉄道会計においても、また
逓信会計においても、まず
独立採算制に基く予算の編成ということに全部の力を入れて
参つたのであります。
独立採算制の構想としては、もちろん歳出を極力節滅すると同時に、歳入の方向においては、これをふやし得るような
具体的措置を講ずるということが、何よりも先決的に考えなければならぬという
見地から、極力その線に沿うて考えて
参つたのであります。さらにこれだけではとうてい
独立採算制ができませんので、ここに先ほどもちよつとお話申し上げました通り、
行政整りということもやむを得ないというような意味で、これまた先ほど一言しましたような方向で
行政整理を敢行いたす、このように歳入の増收と歳出の節減とをはかり、さらに
行政整理もでき得る限り敢行しても、なお
独立採算制に達し得る
可能性は非常になか
つたのであります。ここに約四十九億の不足を生じましたので、やむなく
郵便料金の
値上げによ
つて独立採算制を立てようと考えたわけであります。当初
郵便料金については大体五割
程度の
値上げ、電信については三割、
電話の
度数料についても三割というような
程度の
値上げをするにあらざれば、ただいま申し上げた
独立採算制は不可能であるというような
見地を、わが
逓信省ばかりではなく、
大藏省あたりでも考えてお
つたのであります。われわれはこれに対して、現任の状況において大衆の負担となり、しかも
公共性を有する
郵便料金の
値上げ、あるいは電信、
電話の
値上げをするということは、極力避けることが適当であるという
見地から、さらに歳入、歳出の前について非常に嚴格の査定を行いました結果、結論においては
郵便料金のうちの
はがきは現在通りといたしまして、
はがき以外の
郵便料金、すなわち封書の分を約五割、その他の
小包等においても五割ないし六割を
値上げいたしまして、
不足分の四十九億を補いまして、電信、
電話については
現状の
料金でこれをまかなうという方針を立てたのであります。
はがきをなぜ
値上げしなかつたかという点につきましては、これはいろいろの見方むございましようが、われわれはます一
般國民大衆が
通信機関を利用するにあた
つては、大体
はがきを利用する部分が
國民諸君の大半ではないかという
見地から、
はがき料金はできるだけこれを
値上げしないことが適当だという
見地に立ちまして、
はがきの外合は
現状維持にいたしたのであります。さらに電信、
電話の
値上げをしないという点は、將來もし
電氣通信省あるいは
郵政省の設置を見るに至りましたたらば、これまた二省においてそれぞれの
独立採算制を
実施しなければなりません。
電氣通信省だけは大体現在の
料金で
バランスがとれるのであります。そういうことにな
つておりますので、せつかく六月一日から
実施の際に、再び
郵便料をさらに
値上げしなければ、
残つた郵政省の
バランスがとれないというような状態では、まことに遺憾であるという
見地から、
独立換算制のとれる
電氣通信事業の方は、できるだけ
現状の
料金をも
つてこれをまかないまして、
將來二省が分立する場合におけるいわゆる
独立採算制を考慮して、電信並びに
電話の
度数料の
値上げはいたしませんで、現在の
料金のままで進もうと考えたような次第であります。
從つてはがき以外の
郵便料金の
値上げについては、かなりむりもあります。たとえば五割
値上げということを
目標にしますと、封書は七円五十銭になりますので、これは半端であるという意味から八円というように大体考えておりますし、また
小包等においても、
一般鉄道料金すなわち
旅客運賃に附随する手荷物、小荷物が六割
値上げになるというような大体の目安がついておりますので、これも鉄道と同じ標準を保つ必要がありますから、これを六割に
値上げしたような
現状であります。その他
値上げの方式については、別途
郵便法の
改正案をあらためて本
委員会に提案いたしますから、その際詳細な御説明を申し上げようと存じますが、とにかく大体の標準をまず
独立採算制、しかもこの
独立採算制は、他日
郵政省と
電氣通信省が二分して、この二つの
特別会計ができたことも予想しながらの
独立採算制というような意味におきまして、
行政整理をし、收支の
バランスを合せ、やむを得ないところの
郵便料金の
値上げを、ただいま申し上げました通り敢行しまして、そうして
独立採算制を完全に事施して行きたいと考えておるような次第であります。
さらに
簡易保險の問題でありまするが、
簡易保險につきましても、
明年度はやはりこの
経済九原則の線に沿いまして、できるだけ
保險契約を増加して、この
積立金を一つの
建設資金として、そうして
一般公債の発行は見合せるという
見地に立
つておりまするので、
明年度における
簡易保險の
契約目標を大体二十億円
程度見込んでおります。この二十億円
程度の見込みをするにつきましては、もちろん從来のような
保險料金、
保險制限があ
つたのでは困難でありまするし、
経済上の実情から見ましても、やはりある
程度その
最高金額、あるいは
最低金額というものを
引上げることが適当ではないかと考えまして、
從来保險契約の
最高金額は二万五千円でありましたものを、大体五万円に
値上げをする。もちろんこの五万円の
値上げにつきましては、
大藏省と
逓信省の間の
事務的折衝におきましては、五万円が至当ではないという
大藏省側の意見が出まして、一應四万五千円ということに決定いたしてお
つたのでありまするが、本日の閣議におきまして、結局原案の四万五千円を最高五万円ということにいたしまして、閣議は今日終了いたしたような次第であります。なお最低につきましても、從來の千円
程度のものを五千円に
引上げる。また保險の更新、たとえば千円の契約のものを一万円あるいは五万円にするというような場合におきましては、從来の
法律によりますと、一應小額の
保險契約が解約されまするから、解約されますると、
一般解約の場合と同じく、非常に
不利益な金額の
拂いもどしで
保險契約者が満足しなければならぬという
法律でありましたのを、今後この五万円という大幅の
引上げをされる
保険金に、小額の千円、二千円、五千円というようなものを切りかえるのに便ならしめるために、解約した場合においては、後日大きな契約と更新する場合に限りまして、
積立金の全額をその
契約者に
拂いもどし、同時にいわゆる
小額保險契約から大きな金額の契約に更新する人に
不利益の伴わないような改正の法規を今檢討中であります。
郵便年金におきましても、大体從來の二万五千円を十二万円に
引上げまして、そうしてこれが運用を全うしようとするものであります。
さらに貯金の問題であります。
終戰後非常な変化を來しまして、
逓信省実施の、いわゆる貯金なるものが、一時ほとんど
預金者のないような状態でありましたが、昨年度から非常な好成績をあげまして、現在では約八百億
程度の貯金に増大されておるということを非常に欣快と思う次第でありまして、來年度におきましては、さらに四百億の貯蓄を
目標として、そうして極力この
貯蓄奨励のためのあらゆる施策を施さんとしておるものであります。
なお以上申し上げましたほかに、当
省関係といたしまして
今期國会に提案を予定しておりますものは、
法律案といたしましては、郵政及び
電氣通信両
事業に関するそれぞれの
特別会計法案のほか、
郵便物運送委託法案、
郵便切手賣り
さばき所に関する
法案、いずれも
事業運営の
合理化をはかる上に絶対必要なものでありますから、
皆さんの御
審議を得て、すみやかに制定の運びに至りたいと存じておる次第であります。
最後に
事業運営の
状況一般につきまして申し上げたいと存じまするが、
終戰後まる三年半を経過いたしました今日、幸いにも
皆さんの一方ならぬ御支援と
国民大衆の涙ぐましい努力の結果、
事業運営の面には相当見るべき改善の跡がうかがわれておるのであります。御承知のことでもありましようが、
郵便と逓信につきましては、
終戰当時におきましては、着かぬ
郵便とか、汽車よりおそい電報とか、いろいろありがたくない酷評を受けてお
つたのでありましたが、漸次こうした非難が消えうせまして、今日では
郵便の
安全性につきましても、電信の
迅速性につきましても、相当の
安定性を期待し得るようになつたことは、まことに慶賀の至りといわなければならぬと思うのであります。しかしながら、なお
サービスの点について考えてみますと、戰前の
サービス水準に比較しますと、必ずしもその
程度に進んでおると言うことはできないのでありまして、いま一段の努力の必要であることは、申すまでもないのであります。
郵便貯金及び
簡易保險の業務につきましても、それぞれ順調な発展をただいま申し上げました通り示しておるのでありまするが、ことに
郵便貯金につきましては、本年一月末の現在高は、先ほど申し上げました通り約八百億、正確に申しますれば七百五十億円に達して、本年度初頭以後の純増加だけでも二百五十億円で、すでに
國民貯蓄目標額として
郵便貯金に予定せられておりました二百四十三億円を、ゆうゆう突破しておるような次第であります。ただ
電話業務復旧につきましては、今日必ずしも順調な進捗を示しておらないのであります。これは御承知のごとく戰爭の痛手を最も多くこうむつたものであり、かつその復旧に相当の資材を必要とするものだけに、
敗戰後の今日の状況として、ある
程度やむを得ないところであります。それでも今日全國的に見ますれば、
開通加入者数は戰前の八四%に達し、
終戰直後の五八%に比べますと、この三年余の間に相当の
復旧率を示しているのでありますが、被害の最もはなはだしかつた東京、大阪のような大都市では、それだけ復旧に対する要望も盛んであるにもかかわりませず、東京においては今日の
開通加入者はなお戰前の六二%、大阪について考えてみまするならば、わずかに戰前の三二%にすぎない状況でありまして、今日の
社会的要望にはとうてい達しておりませんので、この点につきましては、今後急速に何とかこれが
復旧策を講じたいと考えておるようか次第であります。從いまして、なおこれにつきましても、今後当
委員会のいろいろな御指導と御援助を得なければならぬと存ずるものでありまするが、今後とも
逓信事業の発展のために、皆様の強力な御援助をこいねが
つてやまない次第であります。はたはだ簡單ではありまするが、一
應逓信省の
現状を申し上げまして、なお
質疑等がございますれば、それに應じてお答えをしたいと考えておる次第でございます。