○
木村國務大臣 門司委員の御
質疑にありまするように、
地方財政が極度の窮迫をいたしておりまして、これに対処する方策を何かの施策の上に現わさなければならぬということは、私も痛感をいたしておるのであります。たまたま
シヤウプ博士一行が來朝せられまして、わが國の
税制の根本について
勧告案を作成しました。この前の
議会のときにも、たびたび御
答弁申し上げておきました
通り、大体
シヤウプ博士の
勧告案に基いて
税制の
改正がせられるまでは、何と手をつけてもむだになることもあるし、また早急に手をつけることも
考えられませんので、
地方の
財政をまずゆるやかにするということは、
地方財政にと
つて税制の確立というものが、最もその基盤をなすことは申し上げるまでもないことであります。
シヤウプ博士の
勧告案が作成せられまするまで、われわれの方といたしましてはこれに対應する
準備の万全を整えて今日まで参りましたような次第であります。
シヤウプ博士一行が來朝せられまして、短期間ではありましたが、その間実に熱心にその
職務に当られまして、今回その結果を
発表せられましたことに対しては、深く
敬意を表するわけであります。その
努力というものは、はたで見ておりましてもなかなかまねのできないくらいな非常な
努力でありまして、この点につきましては深く
敬意と感謝を拂うのであります。しかしこの二十四日に
発表せられましたる
シヤウプ勧告案は、ほんの大綱でありまして、きわめて大きな問題だけをつかんで出されたのでありまして、まだ
細目にわたりましては、聞くところによりますると四万数千語にわたりまする詳細な
内容の
発表があるそうであります。それまではこれに対しまして種々なる
批判や、またこれを
現実に当りまする
準備も、まだ憶測いたしましてもどうもその核心に触れておりませんので、われわれの方といたしましても、正直に申し上げまするが、この実態が
——大体の方向はわか
つておりまするけれども、その
細目にわた
つてどういうことをやるのか、
從來の
地方財政の
税制案に対して非常な変革でありまするので、はたしてこれに手をつけて
——平凡な言葉で申しますと物になるかならぬかということも、この
内容の詳細が
発表せられないと、どうも
はつきりわかりませんので、ただいまこれに対する
批判や
感想を申し上げることを差控えたいと思
つております。しかし近日
発表せられまする
全文を見ましてから、これに即應いたしまして
努力を拂いたいと
考えております。
シヤウプ博士の
勧告案は申し上げるまでもないことでありまするが、
日本政府に対して
勧告したものではありまするけれども、この
答申は
マツカーサー司令官に対する
答申でありまして、
日本政府に向
つてシヤウプ・ミツシヨン自体が、これこれをやれという
勧告ではあるが、これは直接のものではありません。これは
マツカーサーに対する
答申でありまするから、GHQの
考えでこれをどういうふうに処理するかということが何かの形で現われて來て、初めてわれわれはそれに即應して、これを
現実に現わすところの方法をとらなければならぬ問題に帰着すると私は思います。ただこの
内容を見まして、私ども非常に力強く思いましたのは、
地方財政がゆたかになるかどうか、また個人の
負担が軽減せられるか、増強せられるかということは、先ほど申し上げましたような詳細な
内容において檢討しなければなりませんが、
明治以來日本の
税制は、
地方はま
つたく
國税の
付随物であります。
議会中にたびたび申し上げましたように、
富國強兵という
指導精神で、
明治以來日本のすべての政治が行われて参
つておりました。そのために権力は全部
中央へ集中せられまして、
税制のごときも何でも
中央の方へ
地方の
税源を取集めて、
地方は國からその配分を受けるというような形にな
つてお
つたような
色彩が多分にあ
つたのであります。これがこのたびの
シヤウプ博士の
勧告によ
つて國と
地方が全然隔離せられまして、
地方の
財源について確固たる確信と
独立性を持たせてもら
つたことは、詳細の
全文を見なくても、あの
概要の
報告で
はつきりしております。この点は
明治以來のわれわれの素志が貫徹せられたものと思いまして、まことに快心の至りでありますと同時に、
日本の
國家の前途といたしましても、かくあ
つてこそ再建の緒につけるものと
考えて、非常に喜んでおるわけであります。
次には現行の
地方税制については、これも詳細を見ないとわかりませんが、あまり手の裏を返すような根本的な大きな変更は、あれだけの
文面を見ますとないようであります。おもなかわ
つたところをわれわれの印象として申し上げてみますと、まず
地方税に関する
勧告案の
概要は、
住民税は
人頭割と
所得割とによ
つて課する、これだけによ
つて課する
所得割の
課税標準としては、次の
三種の中のどれでもよいから、いずれかをと
つて、この
税率は
比例課税としても
累進課税としても、どちらでもよい。次の
三種によ
つてそれぞれしかるべきものを採択してよろしいというのであります。これは
國税の
所得税額によ
つてこれに
課税をする、それから
所得税の
計算に用いた
控除額を除いた
所得額によ
つて課税する、あるいは
所得税及び
各種の
人的控除額を控除した
所得額に
課税する。それで第一に申し上げました
國税の
所得税額に対しては税に制限を與えております。これは二〇%、それから次の
所得税の
計算に用いた
所得の
控除額を拔いたものでありますが、これは一五%、それから
所得税及び
各種の
人的控除を控除したもののあとの
所得額にかけましたものは二〇%、こういうふうに
税率が制限してあるようにうかがわれます。それから次は、
地租家屋税の
課税対象を拡げまして、
土地、
家屋その他減價償却し得るところの資産として、
課税標準はこれまでのような
賃貸價格でありませんで、これを
時價とする、但し農地は、現在の
公定價格に
調整係数二十五倍を越えない
程度のものを乘じたものとする。それから三には
事業税の
課税対象より農業を除き、その
課税標準を
附加價値とする。
附加價値とは総
收入金額から、他の企業から購入したものを控除する。四は
不動産取得税及び
酒消費税は廃止する、
入場税の
課率を一〇〇%に軽減する、その他のこまかい税は、ある
程度これを
税額を
簡單に、あまり雜税が雜然としてあるのを整備して簡素にする。五には
都道府縣と
市町村税とをま
つたく分離いたさせまして、
事業税、
入場税及び
遊興飲食税を
都道府縣税にする、
住民税及び
土地家屋税は
町村税とする、こういうようにきわめて
簡單なことに整理区分するということであります。右の
改正によります
財源の変動は、ここに表がありますけれども、表は読み上げてもおわかりにならないと思います。この
概要だけの
報告を見ますと、
府縣では増減がないように思われます。
市町村は約四百億円の
税源が増額せらるるように、この
概要の
発表では思われます。それから
配付税と
補助金の大部分を含せまして、
一般平衡資金というものをつくる。この
平衡資金というものはどういうことでつくるかということが、これまた
概要の
報告書ではわかりません。
閣議の席上で
大藏大臣にも
意見を徴取してみましたけれども、
大藏大臣の方もまだ詳細な
勧告案が出て参りませんから、これも遠慮をいたしまして明答はいたしてくれません。これは
一般平衡資金というもので、その額は
配付税に該当する分、あるいは
配付税と名指すかもしれませんが、千二百億円と傳えられております。これは
概要の
報告の中には書いてありませんけれども、傳うるところによりますと、千二百億円の
配付税にかわるものであるか、
配付税と名指すものであるか、とにかく
一般平衡資金と名のつくもので、その辺のところは
はつきりいたしません。それから
災害費に対する
地方負担は、大体
平均年額二百億円になるのであります。この二百億円も
勧告案に書いてありません。ここで
発表していいか惡いかわかりませんが、これも聞くところによりますと、これは
全額國庫負担として
地方の
負担にまかせない。それから
地方の
税務職員の質及び量を強化する。これだけの
税制改革をして國と
地方税——縣税あるいは
町村税が
はつきりわかれますと、非常に煩瑣な業務が多くなりますから当然であります。
それから税にかわります
寄付金を整理しますと、これは大づかみでありますが、これは大体各
府縣にわたりまして、六・三制の困難な問題が主体となるようでありますが、それを実行いたしますために、何としても起債の額もなし、やり方がないものでありますから、どこでも非常に大きな
寄付金を仰いで、この
寄付金によ
つて大分これを処理いたしましたところの
府縣が多いのであります。ほとんどさうらしく見られますが、この額は、
積りようがありませんで
はつきりいたしませんが、約四百億円と見まして、この四百億円の
寄付金は削減する。將來や
つてはならぬ。これは任意自主的なる
寄付金でも
つてやるならば百億円
程度までは認める。四百億円としますならば、三百億円は削減をする。こういうことが今度の
概要の大要をなしております。ここで少し私が言い過ぎるようにございますけれども、
概要だけ見ました
改革案の
長所と思われます点と、
從來の
地方税制に対しての
短所、この二つを対照して、ここで
概要を申し上げてみます。これは実は非常な大胆なことでございまして、まだ詳細を見ないうちにこういうことを
発表すべきでないと思いますが、單にただいまだけのところの
感想でもありませんで、
長短所、アウトラインであります。これを申し上げますと、
地方財源を強化したこと、
地方税において四百億円、
平衡資金で四百億ほど増加し、そのほかに
災害費の二百億円を
國庫に肩がわりしまして、合計一千億の
地方財源が増加したということは最も著しいことでございます。たいへん繰返すようでございますが、これは詳細にわた
つたものが出た時分に、あるいは違
つてくるかもしれません。
概要だけでにらんだだけのことでございます。それから
地方税制の自主権を強化するために、
國税、道
府縣税、
市町村税の三
体系を切り離しまして、それぞれ
各個独立のものとしたということであります。
從來地方税は
國税附加税でないので、
國税と
地方税との
体系は形式的には独立したものであ
つたのでありますが、
事業税と
國税所得税及び
法人税、
酒消費税と
國税酒税との間に、実質的のせり合いがありまして、これは私が申し上げませんでも皆さんの方が詳しいと思いますが、せり合いがあること。また
市町村税はほとんどすべてが道
府縣税の
附加税であ
つた。これが
改革案では、三者の
課税対象が全部別々に
各個、独立したということであります。但し
市町村民税と
國税所得税とのせり合いが、これはどつちかといえば少しはげしくなるのではないかと思われます。それから
地方税は直接
税中心主義とな
つたこと。
從來は直接税が七で
間接税が三ぐらいの割合であ
つたのでありますが、今度は直接税が
中心主義となりまして、理論的には
負担の
合理化ができるとともに、
地方團体の行う
事業に対する経費と、これに対する
住民の
負担との
関連性が強くな
つたのであります。これは
自治運営の上から申しますと、まことに好ましいところの独立自主的な観念を養成することにな
つたのであります。それから
事業に対する
課税と、
土地家屋に対する
課税との均衡がとられることにな
つた、これもまず好ましいことであろうと思います。それから
負担の上で適当でない税がすつかり整理せられまして減税せられたことであります。それから税の種類が減少して、
税制がきわめて簡素化したことも、これも好ましいことであろうと思います。
以上がこの
勧告案の
概要だけを見て、非常に
長所と思われるところでありますが、あの
文面だけから見て、少しマイナスになりはしないか、
短所になりはしないかと想像されることは、何分にも
明治以來の
地方税制を根本的に変更するのでありまして、理論的かつ
米國的色彩の強いものでありますから、はたしてそれがわが國の実情に即應して適用されることが、実際に可能であるかどうか。ただいまの状態と周囲の環境によ
つて可能であるかどうかということについて、いささか当事者としましては不安があるのであります。それは
勧告案では、
地方税だけで四百億円を増加する計画でありますけれども、
地方税制がはたして所期の
通り運用ができるかどうかということに、いささか軽い疑問を持
つております。それから
勧告案によりますと、
税收入の増加は
國税よりの
委讓とか、
國税の
補助とか、
國税のおかげをこうむるという形では全然なくして、もつ
ぱら地方税の増税という形で行われておりますから、
從つて地方民にと
つては、
税制改革によ
つてかりに
負担が、トータルの上で軽くな
つたと申しましても、
從來の惰性から申しまして重くな
つた、非常に苦痛であるという、
圧迫的な感じが與えられはしないかという、これはいささかのおそれがあります。
大体そうい
つたようなことでありまして、なお詳細なこれ以上のことは、
政府委員が参
つておりますから御説明申し上げたいと思います。何回も繰返してうるさいようでありますが、申し上げましたように、ただいまこれに対して
批判や
感想を申し上げることはまだ早いのであります。この間の
概要の
発表だけを見まして、いいとか惡いとかということはまだできない。聞くところによりますと四万六千語にわたるところの詳細な
勧告が、來週の中ごろまでには飜訳ができて
発表せられる。その四万数千語にわたりますところの
勧告案の印刷物は、これを各
都道府縣、
地方の各團体の長に対して、
政府と同樣に配付して
施行するという意図であるらしいのでありまして、それが手に入りましてから、初めて詳細な
批判なり考慮をすべきものと思います。きようはこの
概要だけを見た、いわゆるフアースト・インプレツシヨンを申し上げたにすぎませんから、詳細な
勧告案を入手してから、もしただいま申し上げましたことに間違いがありましても、どうぞおしかりがないように、
概要について印象を申し上げたにとどまりますので、さよう御承知を願いたいと思います。
それからただいま
門司さんから
災害の処置についてどうするかというお尋ねがありました。まことにごもつともであります。今年は九州方面は引続いて何回も台風に襲われまして、中部も少し襲われました。ただいまきようも関東方面、東京も台風の圏内に入
つておるというような、あまり喜ばしくない報道を氣象通報によ
つて受けております。この対策についてどうするか。われわれ
地方財政を扱
つておりまする者の
立場といたしましては、どうしても
地方の起債のわくを拡げてもら
つて、かりに公共
事業費を増額してもらいましても、公共
事業費の
補助については、おのおの規定がありまして、
地方財政で
地方が
負担をしなければ
災害の処置はできませんが、
地方の
負担というものは、
地方がこれを賦課してお願いするわけにいかぬから、何としても一時は
地方起債によらなければならぬ。その起債のわくが、ただいま御承知の
通りまことに枯渇してお
つて、わずかなものでありまするので、これを補正予算においてうんと拡げてもらうように、ただいま極力
努力いたしております。さしずめの應急対策につきましては、これは私の所管ではありませんけれども、公共
事業費の第三・四半期、第四・四半期を繰上げまして、應急の処置にこれを支出いたしております。金額は政務次官から詳細に御
報告いたしたいと存じます。そうして應急の処置を講ずるが、しかし公共
事業費は第三・四半期、第四・四半期を出してしま
つて、あとはからつぽでありますから、それはどうしても臨時
議会において補正予算をも
つて補正して、公共
事業費を増額してもらうということでなければ、この方法がつきません。これは
大藏大臣もその点は認めているようでございまして、應急策としてただいま第四・四半期までの公共
事業の繰上支出をや
つておるのであります。ただ一言申し上げておきたいことは、
災害に対する陳情の要請を承りますると、何でもいいから大藏省の預金部の金を一時融資をして繰替え支拂いをしておいてくれ。そうしてあとは來
年度にわた
つて補正予算か、あるいは來
年度の予算において、
地方起債のわくが拡が
つたときにそれを決済するから、とりあえず大藏省の預金部は、今年は相当なふところがあるようであるから、これを應急にどんどん出してくれというような要請があるようでありますが、これはちよつと
議会にかけませんと、今の
財政法では、むやみにどうも出すわけに行きません。どうしてこれを処置するかと申しますと、今の公共
事業費の第三・四半期、第四・四半期は先のことでありますけれども、これを
議会にかけて支出するという承認を受けておるのでありますから、これをとりあえず出しまして、手元に公共
事業費がないわけでありますから、その金を大藏省の預金部から一時應急の融資として出資するというような方法をと
つております。その辺
地方でたいへん誤解があるようでありますから、余計なことであるようでありますが、一言申し上げます。