○
谷口委員 共産党は
原案並びに
修正案に反対するものであります。
本案の
目的としているところは、最近非常に多くな
つた窃盗、強盗などによる
犯罪の
捜査、あるいは
檢挙のために、
藏品がその
営業内で取扱われる習慣が非常に多い
古物商を
取締ることによ
つて、
犯罪の
檢挙、もしくは
捜査を容易にしようとすることを
目的とする
法律案でありまして、そういう
意味ではそれは必要な
法律であるかとも一應思われるのであります。しかし
考えて見ますと、
犯罪者があ
つて藏品が盛んに流れるということと、
古物を賣買する
営業をやるということとは、おのずから
別個のことであります。中には非常によろしくない悪
得業者があ
つて、
犯罪者と結託しているような
事例もあるようでありますが、これは一部分の特別な場合でありまして、多くの
古物業者は、
犯罪とは
別個に
りつぱな業としてこの
営業を営んでいるのであります。
從つてもし
藏品をその
営業中に取扱うような場合がありましても、
業者のほとんどがそれを知らずに、
犯罪者にごまかされたり、あるいは悪
得業者にごまかされたりして、これを正当な商品として取扱
つているのでありまして、
犯罪の見地から見ますと、繰返すようでありますが、全然
別個の
立場に立
つているのであります。
犯罪者に対する
捜査あるいは
檢挙ということは、あらゆる手段を盡してなすべきでありまして、これを全然
別個の
立場を持
つている
営業者に対して、その
協力を求めるということは非常によいことでありますが、
協力を求めることの必要が急にして、むしろ
業者に不当な義務を負わしたり、あるいは嚴重な
刑罰を加えることを前提としてこれを
取締るようなやり方は、正当な
業者の行為を
警察の一方的な都合から束縛し、圧迫するものでありまして、
本法の建前から
考えても、やはり大きな間違いではないかと私どもは思うのであります。今
修正案が出まして
古物営業取締法というのを
古物営業法というふうにかえられました。その中で
説明者は、すべての
業者を悪
得業者と見るものではない、こういうことを主張されましたが、すべての
業者を悪
得業者と見ないというのならば、
警察が
犯罪捜査のために
業者の
協力を必要とする場合、
業者を
取締るとか、あるいは不当な責任を負わして、それに反した場合にこれに嚴重な
刑罰を加えるとかというような、か
つて旧憲法下におけると同樣の
取締法をつくることは、非常に間違いなのであります。その上これをこまかく見て行きますと、この間來、本委員会で問題になりましたように、新憲法に保障されておりますところの
営業の択選の自由、あるいはすべての
國民は、法の前に平等であるという平等権、これらが侵害されておるかに見えるのであります。第四條のいわゆる
欠格條件の点につきましても、
禁錮以上の刑に処せられて、それが
終つた者が三年以上経たないと
営業の許可をされない。あるいは
本法に違反した者ばかりでなく、他のすべての
法律に違反した場合でも、
罰金刑が二度科せられた人は、また
営業権を許可されない。あるいはまたこういうような條件の
人間が、その親族の中におるというだけで、
営業を許可されないというような
規定があるのであります。これは憲法に保障されておりますところの職業選択の自由あるいはまたすべての
人間が法の前に平等であるという、いわゆる
基本的人権を侵害するもはなはだしいものでありまして、第一この許可するという、許可を前提としての
欠格條件を設けておること、そのこと
自体にも、非常に重大な欠陷があるわけであります。また立入りあるいは調査という点でありますが、
警察官は必要に應じて、必要と認めた場合は、
営業中であればいつでも、
古物営業者の店舗あるいは住宅あるいは倉などに立入
つて、商品や
帳簿を強制的に調査することができる。あるいはそこの店員なり、主人なりに尋問を加えることができるというこの條章も、これまた憲法における
犯罪捜査の
規定、つまり責任ある司法官憲の令状をも
つてしなければ、住居やあるいは持物の
捜査押收などはされないという、あの條章に反するものであると私どもは思うのであります。もし
犯罪捜査のためあるいは犯人
檢挙のために必要とあれば、
本法に
規定してありますところの品触の
状況、つまりこういう盗難品があつた、これが君のところに來ていないかというような、この品触の
状況は、相当具体的なことが書いてあるのでありますが、こういう形でそれぞれの
営業者に
警察はこれを調査を依頼することができ、また調査に行くことができるのでありまして、こういうふうに非常に具体的にその條件を決定して、そして調査あるいは立入りをするというならわかりますが、ただ必要に應じて常にこれをやる、こういうあいまいな状態では、
業者は非常に恐しい
立場に追い込まれるかと思うのであります。この委員会で繰返して申し上げたのでありますが、
警察官吏の訓練の点から見まして、また日本の
警察官吏と人民との
関係の
立場から見まして、常に人民は
警察官吏の支配下にあるかのごとき観念を持ち、弱者のような観念を持
つて來ております。今もその点が問題にな
つて、
警察官であるということを証明するために、
業者の方から身分証明を要求して見せるというのでは、言いにくかろう、
警察官の方から進んで、自分が
警察官であるということを示すべきだというふうに
修正されたのでありますが、これ
はつまり
警察官吏に対する場合、
業者が、廣く
言つて人民が、いかに隷属されたような状態に置かれておるかをどなたも認められたと思うのでありまして、こういう
立場にある
業者に対して、
警察官吏が必要に應じていつでも行けるというような、あいまいな形で、この権限が與えられておりますと、そこにいろいろ恐しい弊害が生れて來ることは、これは今日までの経驗によ
つて明らかなことであります。こういう点が
業者をして非常に恐しい窮地に追い込むことになるのでありまして、
從つてまた憲法におきましては、このような一行政官が、しかも末端の
警察官吏が、どこにでも入
つて行くというような、從來の旧憲法におけると同樣なことを嚴重に制限したのでありまして、つまり責任ある司法官憲の令状によらなければ、家宅捜索などは受けることはいらない、こういうふうにきめた根本の精物はここにあると思うのであります。それを
本法におきましてはすつかりくつがえすというこういうやり方。これはやはり憲法の條章に反するものではないかと私どもは思うのであります。おとといの委員会におきまして、この点を殖田法務総裁にお尋ねしましたところ、自分は憲法に違反するとは思わない。しかしこの
法律を
施行してみて、そこに不都合が生じた場合には、これはまたそのときはそのときとして改めればいいと、こういうお答えであつたかと思うのであります。非常にあいまいな確信のないお答えでありまして、私どもはこういう形で、あたかも
國民を
法律の試驗台にするがごとき
法律はつくりたくないと思うのであります。また
取締法という
名称を、單なる
営業法にかえましたが、実は内容は依然として
取締法にすぎないのであります。明治二十八年に制定されました
古物商取締法、あの精物、あのやり方、あの方法が、そのままこの新しい
法律にも盛られておる。
営業者は自分の
営業についての、たとえば
営業範囲、品物の
範囲を変更した、あるいは從業員を雇い入れた、あるいは主人が死んだ、あるいは店の移轉を行つた、そういう場合に一々
警察に届ける義務がある。もしこれを怠つた場合には、
営業を取消されたり、あるいは懲役、
罰金等に処せられる。また
帳簿につきましては、特に
古書籍の場合について
先ほど論ゼられたのでありますが、その年月、品物の数量、あるいは特徴はもとより、相手方の住所、姓名、年齢、性別、あるいは職業、またその
人間的特徴に至るまで、これを
帳簿に記載しなければならない。こういう煩雜なことが
業者の責任として課されて來る。これまた非常にやりがたいことでありまして、
業者の叫びの中には、正当な大事なお客樣をまず
犯罪者として取りかかるというようなこういうやり方は、とうてい耐え切れないというような
言葉もあります。そうだろうと思うでありまして、賣りに行く者、買いに行く者も同樣に、自分を
犯罪者のごとき
取扱いをする
営業者に対して非常に悪い感じを持ち、ひいて
警察の支配ということが、人心に與える悪い影響というものが、廣く強く深ま
つて行くだろうと私ども思うのであります。こういう恐しい
取締りと、責任を
業者に課ししかも何かと言えば、
営業取消しとかあるいは
罰金懲役によ
つて脅かすということは、これは正当な業をなしている人に対する
基本的人権の侵害にあると私どもは
考えるのであります。冐頭に申しましたように、
犯罪搜査のために必要とあり、あるいは犯人
檢挙のために
業者の
協力を求められるならば、そういう見地から、
業者をあらかじめ
悪徳業者のごとく認めておるような、そういうようなふうにすら見える。こういうひどい
取締りをやらなくても、十分になし得る余地があると私どもは思うのであります。まして犯人
檢挙あるいは
犯罪の防止、
犯罪の搜査ということは、これは
警察官吏に負わされた責任でありまして、
古物業者も含めた
國民大衆は、つまり主権者として、自分の社会生活を非常に安心なものとし、愉快に
営業し、生命、身体、財産等の必要なものを守り、
基本的人権を擁護する、そういう必要から、
國民の機関として
警察をこしらえたのでありまして、
言つてみれば、
警察官吏は、この
古物業者も含めた人民の、いわゆる從僕であります。この從僕たる機関が、主人である人民に対して、自分に課された任務が十分に果されない。どろぼうをつかまえる任務を持ちながら、よくつかまえないというので、逆に主人に対して、あたかも從僕が主人のごとく
取締り、自分の必要のために、基本的な
人権や
営業権すら剥奪するような
取締法をつくるということは、まさに本末顛倒でありまして、とうていたえられないものだと思うのであります。私どもは、こういう嚴重なる
取締法をつくらなくても、
業者に自由な商賣をやらせつつ、しかも喜んで
警察の予期するところの犯人の搜査、あるいは犯人の
檢挙という仕事に
協力してもらう道はあると思います。これはひとり
古物業者のみならず、そういう
意味では
國民の全体が
警察に対して
協力することにやぶさかでないのであります。常にこういう
取締りで、罰則で脅かして、
警察の言いなりほうだいに人民を縛りつけるというやり方は、これは根本的に新しい憲法下においては間違いであると、私どもはこれを強く主張したいのであります。今度の
國会を通じまして、私どもの知り得たことは、憲法によ
つて新しく
規定されました
國民の
基本的人権が、いろいろの名目のもとで破壞されつつある事実であります。今度の場合は、
警察行政の一方的な必要から、この
國民の
基本的人権が破壞されたのでありますが、たとえば労働組合法におきまする改正によ
つて見しても、これまた、たとえば九原則というものは絶対の至上
命令だ、こういう名のもとに、すべての労働者が反対するにもかかわらず、労働組合法が改悪される、そうして憲法に保障された労働者の
権利が縮小されて來る、こういうこともあ
つたのであります。こういうやり方は、絶対多数をとつた
民主自由党の
内閣は、絶対多数で何事もできるという、驚くべき專制的な観念から、旧憲法下におけると同樣に、
政府あるいは
政府機関が人民の上に立
つて、その必要のためには、基本的な
人権として憲法に
規定されたことまで、破壞しても、一向かまわないのだという、恐ろしい非民主的な観念の上に立ての行為としか私どもには思われないのであります。こういう点から、この
法律に対しまして、全体的な反対を私どもはするものでありまして、今
修正されました二、三の、そういう点はなるほどごもつともだと思
つておりまして、必ずしも反対はいたしませんが、この
修正だけでは、とうてい今申しました根本的な
本法における欠陷は、救済されていないのでありまして、
從つて原案並びに
修正案に絶対に反対したい、こう
考えておるものであります。