○久下
政府委員 医務局長からお答え申し上げました以外の点につきまして、私から申し上げたいと思います。数字をあげて具体的に申し上げにくいことではありますが、
特別会計を採用することによりまして、
國立病院の
経営が円滑になるというようなことを申しておりますのは、
一般会計でありますと、御
承知の
通りに
予算がございましても、それを一々支拂
予算をつけてもらわないと、
経理ができないのであります。
特別会計になりますとその辺の幅がよほどゆるやかになり得る可能性があるのみならず、
國立病院が
特別会計になりまして、成績を上げることができますれば、
特別会計法の中にもございますように、これを將來は積立金として一部を残して置くというような
制度もありますので、だんだん年が経
つて参りますれば、これらの積立金の運用によりまして運用上適正なことができるようになるではないか、こういうことを申しておるのであります。
経理の適正が期せられるということを、
病院特別会計の特長として申しておるのであります。
國立病院は御
承知の
通り從來
陸海軍の
病院として
経営されてお
つたのでありますが、厚生省がこれを引受けまして、
一般國民の
医療機関として
経営を始めたのでありますが、当初は旧
陸海軍病院として
経営されておりました時代の
患者が、相当多数を占めておりました。漸次この種の
患者は全快退院をして参りまして、最近におきましては、率から申しますと、
一般患者の率と旧
陸海軍病院に入
つておつた人たちの率とは、ちようど、反対のような数字にな
つておるのでございます。すなわち現在においては約三割が引揚げあるいは旧傷痍軍人でございまして、七割の
入院患者が
一般國民の
利用者というような
状態に相な
つておるのであります。ただしかしながら從來の惰性がございまして、
病院の
経営の建前から申しますと、
病院に從事しております人々が、
病院として
收入をとれる人から
收入をあげるというような面に必ずしも熱心でなかつたきらいがないと申せないのであります。ことに最近の実例でございますが、二、三の
病院に対しまして、
生活保護法の適用
患者、すなわち市町村からの
医療費の
收入が非常に遅れておりますので、これを注意いたしましたところ、関係の向きと折衝いたしまして、
收入の面を非常によくしておるというような実情もあるのであります。すなわちとれない人からむりやりにとるという
意味ではないのでございます。
病院としては、
收入をあげ得る向きから適正に適時に
收入をあげて行くというような行き方が、
特別会計制を実行することによりまして可能になるというようなことを
考えておるのであります。もちろんこのことは、
一般会計の時代でありましても、
收入の点を全然無視してよろしいというわけでないのでありますので、今申し上げましたように、われわれとしては
一般会計の時代におきましても、歳入面の注意をしてお
つたのでありますが、
特別会計になりますと、御度それ自体の効果として、そういう点が現われて参るというふうに
考えておるのであります。
特別会計を採用することになる弊害としてあげられますことは、先ほど來
松谷委員からも
お話がございましたが、
病院が営利的になるのではないか、あるいは成績の惡い
病院が
整理されるのではないか、あるいは
医療の
内容が向上しなくなるのではないかというようなことが言われるのでありますが、私
どもといたしましては、
國立病院の
経営の
方針といたしまして、営利的であ
つてはならないということを基本的な
考え方といたしておるのであります。言葉をかえて申しますれば、かりに料金をいただく人に対しましても、いただく料金だけのサービスは必ず行うというような建前で参るつもりでおるのであります。從いまして、先ほど
医務局長から申し上げましたように、
医療費の支拂えない向きに対しましては、これは
病院の赤字とな
つて現われるわけであります。これにつきましては、
一般会計からの繰入れをお願いしてや
つて行くようにしておるのでございます。
それから
病院の
整理が行われないかということにつきましては、先ほど
医務局長からお答えを申し上げました
通り、現在の
國立病院は、すでに終戰当時
陸海軍病院を引受けましたころから申しますと、相当の数のものが、いわゆる結核療養所に轉換をしておるのであります。その他現在残
つております
國立病院は、それぞれその土地々々におきまして、
國立病院としての使命を果しておるものと私
どもは
考えておりまするので、先ほど
医務局長から申し上げましたように、
特別会計をやるんだから、その結果
病院の
整理が行われるというようなことは、全然
考えておらないのでございます。
それから、
医療内容の低下を來しやしないか、言いかえますと、もうけようとするために、
收入をあげようとするために、十分な
医療を施さないで、料金の請求だけは多額なものをおるということになりはしないかという弊害が、しいて
考えれば
考えられないことはないのでありまするが、これは
運営のいかんだと私
どもは
考えております。この点につきましては、
一般会計のもとでありましても、
收入のことを全然無視した
運営はできないのでありますので、当然同じような事態でありまして、私
どもとしてはサービスしただけの料金以上のものをとらないように、言いかえれば、とる料金だけのサービスは必ずするようにということで、やるつもりでおりまするし、また二十四
年度の
予算の組み方から申しましても、
医療費なり、まかない費なり、その他の單價な
ども、昨
年度に比しまして相当額増額せられたものが計上しておりますような事情でございます。
なお、
國立病院は現在非常に建物の
状態が惡く、バラツク建てのものが多いので、大いに修繕費がかかるのではないか、これらを
特別会計でまかな
つて行くということになるとむりではないか。そのように今の
國立病院の実情を見ました場合の弊害ということが言われるのでありますが、この点につきましては、財務当局とも話合いがつきまして、いわゆる公共
事業費に属しますものは、
特別会計のわく内に組み入れずに、將來とも
一般会計から
支出をしていただくということに相な
つておるのであります。
以上、
特別会計の利害得失として
考えられます点を簡單に申しました。