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土倉宗明君 金庫の
物品税改正に関する
請願の
趣旨を申し上げます。
金庫類は現在
物品税法による第一種丙類に属し、五〇%の税率を課せられております。これを同法第一種戊類、税率二〇%に編入移属せしめられるよう改訂をお願いいたします。すなわち同法施行規則第一條別表
課税八十一号事務用器具並びに事務用品イ号中に包含せしめられたいのであります。
理由といたしましては、第一には金庫は火災とともに盜難防止の役目をになう重要品であ
つて、公共的にも私的にも必要欠くべからざるものである。金庫は
國家社会の信用を最も端的に表現する貨幣、有價証券を初め、貴金属、貴重物等の財宝並びに長年月にわた
つて保存を要する貴重書類、日々の事務上の重要品等すべてかけがえのない貴重物を保管し、これが燒失も
國家にとり社会にとり甚大な損失を與えるものであ
つて、これは單に物的、有形的に評價される金額のみならず、評價しがたい無形的の損失もはかり知りがたいものであり、これが防護の役目を果すものは、金庫をおいてはないのであります。実に年々の火災による全國の被害は莫大な額に上るが、金庫の使用により、その被害率を非常な低位にとどめることができることは疑いない。ことに戰災都市の建物はおおむね貧弱な木造家屋が多く、火災の発生度また被害度も大きい今日、一層金庫の必要を痛感するものである。また近來特に社会不安を反映して盗難事故が激増しており、または被害者の損失のみならず、かかる財物の不正移動は社会混乱の大きな原因をなすものであり、これが防止にも金庫は第一の役目を果すものであります。大局的に言へば、金庫は
國家の富を防護し、経済の運営に欠くべからざる役割を演じており、ひいては社会の秩序を維持するところの重大なる役目を持
つている必需品であります。
第二の
理由といたしましては、現今通貨の激増により、特に金融界においては日々取扱う紙幣のはなはだしい増加に悩まされてお
つて、金庫の必要度を増すとともに、金庫の需要量は必然的に増加しております。
理由の第三は、右のごとく金庫の必要度は現在ますます痛感されつつあるにもかかわらず、高率な
物品税により一般にこれが取得を妨けられておる実状にあり、特に
中小企業体、中小團体、個人等にその悩みが深刻であり、欲求しながら購入に困難を感ずるという声がしきりに聞かれるのであります。
第四の
理由といたしましては、
國家再建のかぎを握る海外貿易については、戰前中國、満洲、朝鮮を初め、南方諸地域に年々五万台以上の金庫の輸出の実績を有しており、かつ金庫製造業はわが國においては明治初年より開始され、古き傳統を持ち、技術も優秀で日本独得の製法を完成しておるものであ
つて、これら東亞諸國への輸出品中の一要目たる資格を備えており、その時期も目前に迫
つているものと
考えられる。
理由の第五といたしましては、以上國内需要の著増並びに海外輸出の機運により、各工場は着々設備の整備改善に努力しつつあり、機械化の進捗とともに大量生産におもむきつつある現状であります。
理由の第六は、けだし金庫が
物品税法により第一種丙類に編入され、五〇%の税率を課せられておるのは、これを奢侈品とみなされていることが大きな
理由であると思料されるのであるが、右に述べたことく、金庫が
國家的、社会的に重要な器具であり、わけても
経済界、商工界には必要欠くべからざるものであ
つて、これを奢侈品とみなすことははなはだ不当である。また戰後の米國文化の輸入は文化的財宝に対する在來の
考え方に強い反省を促し、これが防護に一層高度の関心と積極的な努力が要求されておるのであります。この点からも金庫を奢侈品的に取扱う態度は、ぜひ改めていただかなければならぬと存ずるのでございます。かつ金庫は消耗品と異り、使用量を少くすることによ
つて、それだけ経済力消耗の節約の効をあげるものでなく、まさにその反対の性質のものであり、使用量の増加に伴
つて逆に経済力の損耗を節約するものである。
理由の第七といたしましては、以上金庫の重要性並びに現今の需要量の激増に対應し、
物品税の引下げにより大量生産とこれが普及を容易ならしめることによ
つて國富の喪失を防ぐとともに、
政府の納付額を一段と増加することができるならば、これこそ最も望ましいことではないでありましようか。反対に高率の
物品税の
課税により、これが生産と使用を妨けることにより、それだけ火災、盗難の被害を増すならば、これにより
國家、社会の受ける損害がいかに大きくなるであろうかということも、想像にかたくないのであります。
國家の政策としてもすみやかにこの税率の引下げをお願いいたしたい次第でございます。
以上の
理由によりまして、金庫
物品税の取扱い類別を、
物品税法第一種丙類より第一種戊類に移項されたく、特にお願いする次第であります。