○川島
委員 最後に三、三まとめてちよつとお伺いしておきます。このことについて私は過般の
予算委員会でもちよつと触れて、
大藏大臣の答弁を求めたのであります。当時時間を急いでおりましたので、
大藏大臣の明確な答えも、それに対する私の重ねての質問も遠慮してしまうという形でありましたので、最後にお伺いしておきたいと思います。先般も
主税局長がその席上に列席されてお
つたので、さだめしお聞き及びであろうと思うのでありますが、税務官の責任制の問題であります。私
どもの経驗あるいは法文上のいろいろの調査によりましても、どうも実際面においては税務官に非常に責任がない。こういう形から申しましていろいろ税務官の忌まわしい事件が起る。またそれによ
つて國民の
生活の上に非常な恐怖を感ぜしめたり、少なからざる損害を與えたりする場面が非常に多いことは、
主税局長もさだめし御承知であろうと思います。この間も私は申し上げたのでありますが、今度の税制改革をやります場合には、税務官の責任制をぜひとも確立する必要があるということを、私は強く
考えておるのであります。たとえば埼玉縣な
ども、今浦和
税務署が問題に
なつておりますが、税務官に非常に若いふなれな者が多いということは、われわれも予承するのでありますが、今日ではその惡質な者が非常に多く
なつて來ておる。これは國の税の徴收の上にと
つて、まことに重大な問題であろうと思うのであります。そこで今度の税制改革を機会として、税務官の責任制をぜひとも確立する必要がある。
まず第一には、先般も申し上げたのですが、
納税者の側から言えば、
納税者の受取りました
税金の通知に対して、それが仮更正であろうと確立更正であろうとそういうことは問わないで、
納税者がそれに対して著しく不服がある。こういうことで異議の申請をいたしますことは、今の規定で認められておるのでありますが、実際にはただ机上で認められておるというだけで、
税務署も他の都合もあるでありましようが、その申請に対してほとんど手をつけていないというのが実際であります。その
理由については税務官がふなれである、あるいは人員が足りないということも、さだめしあるであろうと思うのでありますが、かりそめにも法規上異議の申請を受付けていいのだということに明確に
なつておる以上は、その申請に対してできるだけ誠実に対処することが、建前でなければならぬと思うのです。ところが実際においてはそうでない。出しても一箇月経ち二箇月経
つてもそのままに
なつて、最後にはその問題はいつの間にかよそへ片づけられて、たちまち督促が來る、差押えが來る、競賣をするというのが普通のあり方であります。そういうことでは
納税に対して
國民の力強い協力を得るということの建前から言
つて、これをきわめて不可能なことに追いやるような結果になるおそれが十分にあると思います。そこで
納税者が申請をした場合に、少くとも一箇月、あるいは四十日というような期限を切
つて、四十日なら四十日の間、あるいは一箇月なら一箇月の間に、税務担当官から
納税者に何らの通知がなか
つた場合には、
納税者の提出いたしました異議の申請の
内容を正当なものと認めて行く。いわゆる一つの
制限期間を設けて、それによ
つて何らの通知を受けなか
つた納税者に対しては、
納税者の側から言えば、自分の出した申請が正当であると認められたことにして、ただちにその税を郵便局もしくは銀行に納入をする。それで片がつく。こういうことにすると、忙しいではあろうが、税務官に一つの責任を負わせ、責任制を確立するという一面にもなり、
國民にと
つてもきわめて簡便な形になり、煩雜で貴重な時間を費すことも少からしめることになるではないかと思う。これに対して事務当局はどういうお
考えを持
つておられるかということが第一点。
第二点は、税務官がことさらに、もしくはその税務官として当然負うべき責任を怠
つて、税の査定に対して著しい過誤があ
つた。たとえば百万円の
所得に対して、怠慢かもしくはことさらの
氣持で百五十万円、あるいは百万円の
所得に対して、ことさらにあるいは怠慢によ
つて八十万にしたとか七十万にしてみるということが今日ある。そういうことであ
つてはならぬ。しかもそういうことをしても、税務官には何らの責任がないという形に今日
なつておればこそ、そういう問題が瀕発するのではないかと思う。そこで私は、故意または過失によ
つて税の査定について重大な過誤があ
つた場合には、その担当の税務官に対しては、やはり何らかの処置をするということで臨まれることが、かなり必要ではないかと思う。そういうことにいたしますれば、さだめし税務官も税務官としての責任を感じ、きわめて適正、公正なる査定をして、最大の苦心と努力を拂
つて行くことになるのではないかというふうに思うのでありますが、そうい
つたことについて、税務官の責任を追及するような
措置を、明確に法文の中に表わして行くことはどうかということが第二点であります。
第三点は、たとえば完納者、
税金をすでに納めた者に対して督促状をよこしたり、あるいはまたはなはだしきは差押えの通知を発送したりすることが、今日では非常に多いのであります。そういうことは事務的な齟齬のため、人員の不足のためというだけでは済まされない問題であろうと思う。それによ
つてまじめな善良な
納税者が、いかほど困難を感じ迷惑をしているかということは、ま
つたく枚挙にいとまないのが現実の姿であります。たとえば完納した
納税者に対して督促状を出し、あるいは差押えの通知を出すと、それを受取
つた納税者はもとより善良なまじめな
納税義務者ですから、あわてふためいて
税務署へ行
つて一日暮れてしまう。それも近ければよいが、二里も三里も遠いところから行
つて、しかも窓口だけではらちがあかないで、担当の責任者の手のすくまで待たされ、二時間も三時間も経
つてようやく話がついて、これは間違
つたんだと言われて
納税者はすごすご帰
つて來る。こういうことによ
つて納税者に貴重な時間を空費せしめ、その上一日の営業を放擲せしめた実質的な損害は相当なものであろうと思う。そうい
つた國家が善良な
國民に不測の損害を與えたり、実質的な費用をかけさしたりした場合は、その費用の弁償をしてしかるべきだと思う。ところが今の
法律ではそういうものが一つもない。ですから
税務官吏は、間違えば間違
つたときでよろしい、本人が來たときこれは間違
つたと言
つて帰せば済むのだ、というような氣軽な立場で過誤を犯しているために、よけいそういうことが起るのではないかと思う。そういう事柄もやはり改めまして、今度の
税法の
改正を機会に、私の言う税務官の責任性を確立する。そのために
國民に不測の実質的な損害を與えたものに対しては、
政府は進んでその損害を補填する。あるいは実費を弁償してやるというくらいなことを必要とするのではないか。そういう事柄によ
つて、繰返して申し上げますが、こういうあやまちができるだけ少く
なつて來る、ということにもなるのではないかと思うのであります。あまり重ねて申し上げるといけないと思いますから、この三点について、一体事務当局の
專門家として、どういうふうに
考えられるか、それを明確に聞かせてほしいと思うのであります。