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1949-07-20 第5回国会 衆議院 選挙法改正に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年七月二十日(水曜日)     午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 生田 和平君    理事 栗山長次郎君 理事 小玉 治行君    理事 野村專太郎君 理事 前田 種男君    理事 福田 繁芳君 理事 逢澤  寛君       江崎 真澄君    北澤 直吉君       齋藤 隆夫君    千賀 康治君       田中 重彌君    藤枝 泉介君       淺沼稻次郎君    小川 半次君       小野  孝君    鈴木 幹雄君       佐竹 晴記君  委員外出席者        法制局参事    三浦 義男君     ――――――――――――― 七月十八日  委員聽濤克巳辞任につき、その補欠として川  上貫一君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員吉田安辞任につき、その補欠として鈴木  幹雄君が議長指名委員に選任された。 同日  理事聽濤克巳君の補欠として川上貫一君が理事  に当選した。 七月十八日  選挙法改正調査小委員聽濤克巳辞任につき、  同月二十日その補欠として川上貫一君が委員長  の指名で小委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  選挙法改正に関する件     ―――――――――――――
  2. 生田和平

    生田委員長 これより会議を開きます。  まずお諮りいたします。去る十八日理事であり、かつ選挙法改正調査小委員でありました聽濤克巳君が委員辞任いたされましたので、理事及び小委員補欠選挙を行いたいと思います。それには投票の手続きを省略いたしまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 生田和平

    生田委員長 御異議ないと認めます。それでは指名いたします。川上貫一君を理事及び小委員指名いたします。  本日の議題選挙法改正に関する件でありますが、前会のお約束に基きまして、本日から四日間会議を開きたいと思います。相当期間もありましたために、資料の整理も進行いたしたのでございます。しかしながらようやく昨日印刷ができ上りまして、本日お手元に差上げた次第でございます。あしからず御了承願いたいと思います。  本日午前理事会を開会いたしまして、議事進行等につき御相談をいたしたのでありますが、理事会におきましては、お手元に配布いたしてあります資料のうちの選挙法改正に関する主要な研究事項、これに大体盡してあると思いますので、この資料を基礎として御審議をお進め願うことに御相談一決いたしたのでございます。しかしてこの事項中最も重要にして即決のできない問題が幾多あると思います。これらにつきましては皆様、隔意なき御意見を一應拝承いたしまして、次の機会に保留する問題も多々あると思いますけれども、多数のものはおそらくは大なる故障なく御意見が一致するものではなかろうかと考えておるのでございます。それで小問題につきましては、御承知の通り委員会は次の國会に報告せねばならぬ義務を持つておりますので、順次大体のおきめをお願いいたしたいと思うのであります。  なお、この資料に対しては大体本日から四日間くらいで御議了願えればはなはだ仕合わせと思うのでありますが、その後におきましては、あるいは小委員会に御委託になるかあるいは他の方法で御審議を願うかということは、皆様の御意見によつておきめいたしたいと思うのでございます。  以上が本研究事項審議するにあたつて理事会の御意向であつたことを御報告申し上げます。右の方針で御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 生田和平

    生田委員長 御異議ないと認めまして、その方針で進行することにいたします。  なお、前会選挙法委員会の問題について、増田官房長官出席を御要求せられておつたのでありますが、ちようど本日は午後二時から閣議があるそうであります。もし出られなければ、あるいは明日、明後日に延期してもらいたい、必ず繰合せ出席するという返事でございます。あわせてご報告いたしておきます。  まず議事順序といたしまして、ただいま申し上げました研究事項の一々について、議題に供することは非常に煩多と思いますから、一番初めに「選挙法改正に関する主要研究事項」という目次が載つております。この目次について第一の選挙区の問題から御審議をお願いいたしたいと思うのであります。一應「第一選挙区」、これだけを朗読させたいと思います。  ただいま朗読すると申し上げましたけれども、これは朗読の煩を省きまして、速記には載せることにいたしたいと思います。一應法制局から御説明を願いたいと思います。
  5. 三浦義男

    三浦参事 第一の選挙区について御説明申し上げます前に、主要な研究事項全般について簡單ちよつと御説明申し上げたいと思います。この研究事項は、この前の審議方針にのつとりまして、一應まとめ上げましたものでありまするが、多少の時日を要しましたので、あらかじめ委員各位のところにお送りする余裕がなかつたのでありまして、その点につきましては御了承をお願いしたいと思います。大体ここにあげました項目は、選挙法の大体の順序に従いまして、各項目ごとに問題を拾い上げまして、特に重要だと考えられるような点につきまして、これをどういうふうに取上げるかどうかというような形式で、この研究事項をまとめ上げたわけでありまして、従いましてこの内容につきましては当然だと考えられるような点につきましても、一應その事項を再確認するかどうかというような意味合いにおきまして、問題として取上げた点もあります。なおまたこの研究事項内容につきましては、私見をさしはさむことなく、ただ客観的にこの事実を取上げまして、問題を摘出いたしておる点につきましては御了解を願いたいと思つております。それから大体この研究事項は、衆議院議員選挙法中心といたしまして、それに参議院議員選挙法地方自治法をあわせ加味いたしまして、ただいま申し上げました関係主要選挙法におきまして、共通事項と認められるような事項につきましては、その事項を拾い上げまして、下にその出所の條文を掲げることにいたしました。なおまたそれぞれ三関係選挙法におきまして、事柄が相違いたしております点につきましては、その相違点を便宜上げることにいたしておきましたわけであります。なおまた外國等立法例につきましては、別途お手元参考資料として差上げてあるのによつて、御了承願いたいと思ます。この研究事項の中には外國立法例等については、特に触れておる点等はございません。大体以上のような考えをもちまして、便宜法制局においてまとめましたのであります。その点を御説明に先だちまして御了解を得ておきたいと考えております。  第一の選挙区の問題でありまするが、選挙区の問題につきましては、衆議院の場合とそれから参議院の場合と、地方公共團体議会議員及び長の場合等の三つに分けまして、問題を取上げたのでありまして、まず第一に衆議院中心にいたしまして考えました場合におきましては、衆議院選挙区につきましては小選挙区制、中選挙区制、大選挙区制、こういう選挙区制が一應考えられるのでありますが、これにどういう制度を採用するかどうかという問題が最初考えられる問題だろうと思うのであります。学問的に申しますと小選挙区制はいわゆる一人一区というのでありまして、それ以外のものはすべて大選挙区というように表現されておりますが、現在日本衆議院議員選挙法における選挙区は中選挙区制をとつておりますが、中選挙区、小選挙区、大選挙区、この三つに分類いたしたのであります。  次に現行の中選挙区制はどういうふうになつておるかということの要領を簡單にあげまして、その次に選挙区の変選、明治二十二年の最初衆議院議員選挙法を制定以来、どういうふうに選挙区の関係においてはなつておるかということを第三に掲げたわけであります。次に第四には各種選挙区制の長所及び短所、小選挙区制の場合、中選挙区制の場合、それから大選挙区制の場合等を揚げたのでありまして、大体小選挙区制の長所短所を揚げますことによつて大選挙区制、中選挙制等については彼此較量いたしますれば大体のことが推察できるかと思つております、なおこの小選挙制等につきまして、これの長所短所一般に言われております事項を特にここに掲記いたしておいたわけであります。  それから選挙区の問題を考えますときには、投票方法と非常に密接な関係を持ちますので、その関係をどう定めるかということを一應問題としてここに取上げたのであります。これは後に投票方法というところでこの問題について触れたらばと考えておるのであります。五十八ページの選挙区と投票方法、第五のところと関連を持つておるわけであります。  次に選挙区と議員定数関係でありますが、現在衆議院議員定数につきましては、法律上特に限定して定めておるものはないのでありまして、自然に中選挙区の各定数によつて、全体の総数というものが出て来ておるのであります。ところが参議院におきましては、総数をきめて自然に各選挙区の定数をそれに應じまして人口比例して割ふつておるこういう状況になつております。この問題を衆議院選挙区の問題を取上げます場合に、どういうふうに考えたらいいかという問題が第六の問題であります。その一は選挙区の議員定数を定める方法として、議員総数を先に定め、選挙区の人口比例して議員定数を按分するかあるいは一定人口基準数を定め、これに比例して選出する議員数を定め、それによつて選挙区に定員を割当てるか、いずれの方法によるかということが一つ、次に前項のいずれの方法によるにせよ、人口の異動に伴いまして、衆議院別表に揚げておりますところの選挙区の定数変更を行うかどうか。この場合議員総数の四百六十六人という数字は動かさないこととするかどうかという問題が第二であります。  第三の問題は選挙区の議員定数を定める方法として、人口比例によらず、有権者数比例して定める方法を採用することはどうかという問題が第三の問題であります。  第四の問題といたしましては、選挙区及び選挙区の議員定数につき、一定期間これを更正しない旨を明記する規定はどうか。古い選挙法におきましては、この別表は十年間これをかえないということを法律上規定したこともあるわけでありますが、それらの問題をどうするかというような問題であります。  次に第七といたしましては、選挙区と郡の区域変更との関係につきましては現行通りでよいかどうか。これはそうたいした問題ではないと思う事柄でありますが、一應ここに揚げておいたのであります。大体選挙区につきましては、投票方法の問題と関連いたします事柄は別問題といたしまして、衆議院につきましては以上の通りでありますが、参議院の場合につきましては、第一には選挙区についてはどの程度区域を單位とするのが適当か、いわゆる全國区制の問題、ブロック制の問題、地方区制問題等が一應ここでは問題となり得るかと考えるのであります。  第二には参議院選挙区の現行法を全國選出議員と、地方選出議員とにわけましてそこに掲げておいたのでありまして、地方選出議員につきましては二人、四人、六人、八人、こういうようにわかれておりまして、その府縣等を一覧として掲げておるわけであります。  それから第三の問題は、現行の全國区制を存置するか、廃止するか、全國一選挙区、すなわち半数改選でありますので、全國区制につきましては、百人が定数でありますから、その五十人になりますが、その五十人の全國一区の大選挙区制で、かつ單記投票法による選挙方法を採用しておるが、制度上はたして適当であるかどうか、外國において例がないと書いてありますのは、こういう大選挙区の單記という例がないということであります。  それから第四の問題は、全國区制と選挙方法との問題でありますが、いわゆる直接選挙によるか、間接選挙によるかという問題が一應取上げられてしかるべきだと考えるのでありまして、直接選挙間接選挙による方法として、さらにそこにその例をあげておいたわけであります。  第五の問題は、全國区制と投票方法の問題でありますが、これも後の投票方法事項のところで触れるべき問題でありますけれども、そこにあわせて記しておいたのであります。全國区制を採用いたしました場合に、どういう投票方法によるか。單記投票方法によるのが現行でありますが、完全連記投票方法によるか、制限連記投票方法によるか、あるいは、比例代表を採用するかという問題であります。  第六の問題は、全國区制と職能代表制の問題でありますが、これも職能代表制をとることが憲法上どうかといろいろの問題があるのであります。ここに揚げてありますのは、全國民をすべて数種の職業別にわけまして、漏れなく選挙権を有する者を職能別に分類し、その職能團体から推擧したものについて、一般選挙人が直接に選挙する直接選挙方法と、先ほど申し上げましたような全國民、いわゆる有権者を数種の職業別に全部分類いたしまして、それらの職能團体から選出した選挙委員議員間接選挙する方法というものを一應そこに問題として揚げておいたのであります。  それから今までは全國区制の問題で一應考えられる問題を取上げたのでありますが、かりに全國区制をとらないとした場合におきましてはどういう制度が問題として取上げ得るかという問題を第七に揚げたのでありまして、第七には全國区制の代案といたしまして、第一はブロック制、第二は地方区制を揚げたのであります。ブロック制は全國を数府縣單位ブロックにわけまして、その各ブロックを一選挙区とする案でありますが、そのわけ方については、かりにそういう方法をとるとすればどういう基準によるかということを、A、B、C、D、Eとわけたのであります。たとえば地方行政事務局区域によるのか、國家地方警察管区区域によるのか、陸運局管区区域によるのか、あるいは高等裁判所管区区域によるのか、あるいはまた前記各項の場合に、東京都についてはその特殊事情にかんがみて單一の独立の区とするかどうか、あるいはこれ以外の方法考えられるかと思いますが、一應さような点を問題として揚げましたわけであります。  それからブロック制の場合に問題となる点は、ブロック制を採用する場合に、選挙方法は直接選挙によるか、間接選挙によるか、これは全般を通ずる問題でありますが、同時にブロック制についても関連を持つ問題であります。  それからブロック制を採用する場合、投票方法單記投票方法によるか、完全連記投票法によるか、制限連記投票法によるか、あるいは比例代表法を採用するかというのであります。  次にブロック別議員定数をどういうふうに定めるか。それからブロック制を採用する場合に、現行地方選出議員地方区制はこれを廃止するのか、それとも並列的に存置するのかどうか。こういう問題が一應ここで考えられます。  次に全國区制の代案といたしまして、地方区制の問題でありますが、この地方区制は各都道府縣を一選挙区とする案でありまして、現行地方選出議員選挙区と大体同様なことになるかと考えるのであります。さらに現在の地方選出議員選挙区は都道縣一選挙区でありますが、これを数選挙区にわけることも考えられるが、それを認めるかどうか。あるいは地方区制を採用する場合に選挙法はどういう方法によるか。なおまた投票方法はどういう方法によるか。その定数をどういうふうに定めるか。それから次には全國的人物を多く得るためには、都道府縣の議員配分数を適当に調整する必要はないかどうかというような問題が考えられるかと思うのであります。  次に八といたしまして、選挙区としての各区制長所及び短所であります。全國区制、ブロック制地方区制の場合でありまして、主として全國区制の長所短所と一應考えられておりますところの一般的な意見をそこに揚げておいたのであります。他の長所及び短所はこれからさらに類推して考え得るかと思うのであります。  以上は衆議院参議院の場合でありますが、次には地方公共團体の場合であります。地方公共團体議会議員及びその長の選挙選挙区については、性質現行制度でよいかどうか。これはおのずからなる性質上知事あるいは都道府縣の議会議員とか、あるいは市町村議会議員あるいは市町村長というものは、その範囲が―その選挙区あるいはその区域が限定されることになるのは当然のことでありますが、一應そこに比較考量のために現在の地方公共團体の場合における選挙区あるいは区域考えられるものを揚げたわけであります。  それから次には地方公共團体の場合における都道府縣知事の選挙について、間接選挙を採用することの可否は、実は憲法九十三條の二項の関係からは問題にならないかと考えられるのであります。憲法九十三條におきましては、直接選挙によるとありますから、間接選挙は問題にならないことと考えられるのでありますが、この場合に関連いたしまして、あるいは推薦制度というような事柄も加味して研究するかどうかという問題を二として御了解願いたいと思つております。  次には地方公共團体の場合における投票方法の問題であります。  大体以上が大づかみに申し上げまして、選挙区について一應問題となり得る点を摘出したのでありまして、これ以外にいろいろ御意見はあると思いますが、以上一應御説明いたします。
  6. 齋藤隆夫

    齋藤委員 選挙法改正について大体私見を述べておきたいと思います。今いろいろ御説明もありましたし、また研究事項等もこまかく書いてありますが、これを一々可否を問うておつたら際限ないことであります。でありますから、この選挙法改正委員会の目的は、現行選挙法をどう改正するかというだけのことであつて、この点を改正したらよかろうということについて、委員諸君の御意見を承ればそれでよくはないかと思います。今は選挙区のことでありましたが、選挙区のことばかりじやありません。選挙法改正全般に関します私の大体の考えを述べまして、今後における皆さん参考に供したいと考えます。  選挙区のことはこれまでもしばしば議論がありまして、小選挙区、中選挙区、大選挙区とあるが、日本は六回までは小選挙区で、それからして七回大選挙区でありました。それから二回ばかり小選挙区にしてまた中選挙区になつて選挙区が七回ばかり続き、昭和二十一年の選挙のときでありましたか大選挙区になつて、一回やつて選挙区になつたのであります。大選挙といつても以前の大選挙区と後の大選挙区とは大分違つております。以前の大選挙区は府縣單位大選挙区でありまして、たとえば兵庫縣兵庫縣全体が一選挙区である。ただそのうちの市だけが独立選挙区であること。三万以上の人口を持つておる市は独立選挙区である。それがすなわち当時の大選挙区であつたのであります。その後昭和二十一年の大選挙区はそれと少し違いまして、定員四名以上十名以下というようなぐあいで、大きい縣は二つにわけてあります。同じ大選挙区と言つて選挙区の構成については大分違つたところがあるのであります。これはいろいろ議論がありまして、小選挙区がいいか、中選挙区がいいか、大選挙区がいいか。これらはこの前の選挙法改正のときに議論は盡されております。これは常識によつてこの委員会できめるより仕方がないと思います。私自身の考えでは今の中選挙区を変更する理由は認めません。しかし中選挙区の投票方法については幾らか考える余地があるかと思います。昭和二十一年のいわゆる大選挙区では連記をやつておりましたが、連記もただ無制限連記であつて非常に投票にむりを来した。二、三名を連記するにあたつて、一名を甲の党派、一名を乙の党派を書くというようなことではまつたく意味がない。連記をやる以上は政党式連記とする。しからざれば投票は無効とするということに至らなければ連記の効果は上らないのであります。かように考えますので研究願いたい。私の考えでは今の中選挙区で三名のところは二名、五名のところは三名連記する政党式連記であつて、同じ党派の者を連記するということになれば比例投票という意味もあつてよいかと思います。さらに投票を拡張して四名以上十名以下ぐらいの選挙に拡張すればなお一層連記投票の実を上げることができると思います。これをひとつ皆さんで御研究願いたいと思います。それからしてこのあとに書いてある選挙管理長海野君ですが、選挙に関するところの大体研究すべき事項を十ばかり列記されております。もとより海野君はこの事項のうちでどれがいいということを断言されたのではありませんが、こういうことを研究してもらいたいという題目だけを投げておりますから、これについて大体私の意見を述べて見たいと思います。  一番初めの二院制のことであります。この二院制憲法で認めておりますから、これはいいとか悪いとかいうことを述べる必要がない。  次に記号投票ということを述べております。しかし投票用紙候補者を列記して自分の好む候補の頭にクロスをつける。これがすなわち記号投票でありまして、これまでの選挙法改正においてもこういう議論がありましたが、日本においてはできないということに結論されております。アメリカやイギリスなんかの諸國においては大体記号によることもできるのであります。日本においては今のところ実際行われません。なぜかというと、たとえば候補者が二十名ある。それを投票用紙に列記する。漢字で姓名を書かねばならぬ。漢字だけでいかぬからふりがなをつけなければならぬ。かたかなとひらがなと両方のふりがなをつけなければならない。それに向つて自分が好む候補者の頭にクロスをつける、こういうことでありますが、これは実際問題となるとなかなか今の有権者程度から行きますと、できる者もあればできない者もある。地方あまり字の書けない人はなかなかそんなことではわかるものではない。選挙の実際を見ますと、有権者のある者はただ一人の候補者知つてつて斎藤なら斎藤というだけのことを知つてつて斎藤という文字を教えてもらつてそれを書きに行くのでありますから、そういう選挙人をとらえて、たくさんの漢字の載つておる候補者の頭にクロスをつけるということはなかなか実際できることではない。それからめがねを持つておらぬ年寄は、投票所行つて一体どこに自分候補者の名前があるかということを見出すこともなかなかむつかしい。でありますからは、西洋のようにアルハベツトでやつているところはよいが、日本のように漢字でやつているところはなかなかできない。ことに候補者の名を書くについてもどういう順序で書くか、いろは順でやるか、くじ引きでやるか、一番初めに書かれた者は得でありますから、円い投票用紙をつくればたれが一番先かわからぬが、結局そんなことは行われぬということになつておるのであります。いつかウイリアム氏に会つたとき、アメリカではできるかしらんが、日本ではできないというので事情を述べたら、ウイリアム氏もそうかといつて承認したこともありますが、これもあまり深く研究する必要はないと思う。  次に不在投票のことがありましたが、不在投票は必要であります。どうも不在投票ということは軽視されるけれども、手続がめんどうでありますから、もつと簡單にできるような方法考えてもらいたい。近ごろ船員不在投票を拡張しろという論があるがもつとものことであると思う。不在投票の拡大についても事務局において十分お考え願つてなるべく簡單にやつていたたきたい。  次に比例代表のことを申し上げておきます。これも選挙法改正があるたびごとに問題になるのであります。これも結局行えないということに論決が下されております。比例代表方法はずいぶん数が多いのであつて、あるいは三百もあると言われるが、日本においては單記移譲式名簿式というのがよく言われる。日本では單記移譲式を主張しておる人が多い。この單記移譲式は非常にめんどうでありまして、なかなか実際に行えません。ただ候補者の名前をたくさん投票用紙に書いて、自分が好きな候補者に一をつける、次に二の候補者にやる、次に三の候補者にやるということに、一二三四の数字をつければよろしいというだけの簡單なものではない。これを実際に行おうとすると非常にめんどうでありましてとても行えるものじやありません。ここに早稲田大学の政治学者の高橋教授の書いた書物、これにもいろいろ比例代表のことが書いてある。單記移譲式については、アメリカのオハイオ州のクリーブランドという人口八十万ばかりの市で單記移譲式をやろうと思つて試みたが、計算だけで土日かかつた。それよりか計算に従事した人は延人員で千名かもかかつておる。それよりか以前に選挙期日の数箇月前に各所に、廣告をして投票計算者の志願者を募集した。そうしてこれに比例代表制度の出版、投票計算方法を教授する夜間の講習で、毎夜二ドル半の手当をもつて、大分長い間かかつて教授とした結果、いよいよ選挙が済んで計算すると、ちようど七日かかつた。これほどめんどうなことでありますから、ただ簡單にこれができると思つてつては非常な間違いなんです。一、二、三、とつけるのはよろしいけれども、たくさんの人に重なるというと、なかなかわからぬ。高等数字を知つておらないとこれはなかなか計算できるものではない。昭和六、七年ごろでございましたか、斎藤内閣の時代に選挙法改正に関する非常な大規模な選挙委員会ができまして、朝野の権威者を集めて選挙法改正に関する討議をせられました。私も内務省の政務次官をやつておりまして、主として選挙法改正のことを討議したのであります。比例代表制を研究するために、小委員会を設けた。小委員には在野の権威者でありまする美濃部達吉博士、それから小野塚博士、佐々木惣一、森口繁治というような第一流の先達でありますが、こういう人たちを集めまして、いろいろ研究をしてみたのであります。その結果、とてもだめだ、日本においてはこんなものはできないという結論になりまして、それ以来比例代表ということは問題にされておりません。今日でもややもすると比例代表をやるということを言つておる人がありますが、どういうふうに比例代表をやるかと反問すると、單記委譲式をやると言う。單記委譲式とはどういうものであるかと反問すると、ほとんど答えのできない人がたくさんおります。何もこんなことをやる必要はありません。アメリカや、ヨーロッパの小さい國において少しやつておるようでありますけれども、日本の現状においてはこんなことをやることはとんでもない。  次には立候補制度でありまして、法律をもつて候補者を限定するということでありますが、そんなことはとんでもないことで、法律をもつて候補者を限定するなどできるものではありません。  次に公務員と立候補関係という問題でありますが、役人が在職中においてすでに選挙運動をやつておる。今日においてもこの点は明年の参議院選挙をやるために、地方の知事が大分運度をやつておるらしい。これはよくないので制限を加えたらどうだ、つまり公務員をやめて一箇年後でなければ立候補することはできないという制限を加えたらよかろう、これは憲法上から見てどうかと思いますが、これについても十分御研究願いたいと思う。  次に繰上当選のことでありまして、以前は一箇年の間は繰上当選ができたのでありますが、今日はできません。それから選挙公営ですが、一体私は最初から選挙公営に反対であります。だれがこれを言い出したかというと、以前にたしか新潟縣から一、二回代議士になつた建部遯吾という方、これは文学博士で哲学者であります。これが一ぺん選挙をやるとどうも金がかかつてたまらぬ。選挙は公営でやつてもらいたいというのが初まりで……(笑声)これがよかろうということで選挙公営ということがやかましくなつた。けれども選挙費用というものは公営でやるものでない。選挙が起こつた元を尋ねてみると、人民が自分の代表を選んで、代議士に送つて、政府と対抗する。その自分の代表を選挙するというので立憲政治の起りでありますから、これは人民が選ぶのはあたりまえです。政府のせわによつて代議士を選ぶということはまつたくりくつに合わぬ。だからして私は終始一貫して選挙公営に反対しております。しかしあまり政府にも損にならず、そうして立候補者に便宜になるということであれば、やつてもよろしいということで、公営ということを始めるようになつた。ところがこの間の選挙によりますと、公営の費用が七億七千五百万円、これは政府の初めの予算でありますが、これではなかなか足らぬということで地方からもたいへんな請求をやつて選挙公営をやつた。候補者の費用は幾らか減つたかもしれないが、國家においてはたいへんな負担をやつておる。國家全体から見れば選挙公営によつて何も費用は減るのでなく、かえつてふえていると考えるべきであります。しかしながらあまり國家の費用を要さず、國家に迷惑をかけずして候補者の利益になるようなことであればこれは十分やつてもよろしかろう。  次に選挙費用という問題であります。今の法律でも選挙費用は法定があり、現実に法律にあるからしかたがない。選挙費用を法定することは悪いことではないけれども、公営で、それでもつて選挙費用を名実ともに限定するということは非常な間違いなんである。今の選挙法でも、おそらく今年の春の選挙などでも、法定選挙費内で選挙をやつた人はないと思う。また近ごろ選挙に金がかかるかかると言うが、金がかかるのはあたりまえである。以前一万円かかつたものが、今百万円かかるのはあたりまえである。選挙費用だけが一般社会とかけ離されたものではない。一般の経済界が膨張すれば選挙費用が膨張するのはあたりまえだ。これについてもよほど考えてもらいたい。  それから事前運動のことであるが、選挙運動は候補者に出てからでないとできない。事前に選挙運動をやつたならばこれを禁止することになつておる。候補に出てからでなければ選挙運動を認めないということは、あえてむりのないことだと思います。  次に戸別訪問であるが、これは改良すべきである。一体日本において戸別訪問ということはまつたく小選挙区の制限連記時代の遺物であるが、小選挙区時代においては有権者もわずかであつて、所によると、千五百人か二千人くらいなので、朝から晩まで羽織袴で五人も七人も弁当を持つて、足をすりこぎにして有権者に頭を下げて歩く。有権者も何を標準に投票するのかわからないから、しばしば来た人に投票しようというので、名刺の数を数えて、たくさん名刺のある人に投票するということが行われたことがある。そこで大正五十四年のいわゆる普選法選挙をやりますときに、戸別訪問をやめようじやないかという議論がどことなく行われまして、遂にこれをやめたのです。戸別訪問どころではない。個々面接、電話による勧誘も何も一切やめて、そこで選挙運動は公然たる言論文書だけでやろうということでやつたのでありまして、それが今日まで続いておつたが、この間の選挙法改正によつて戸別訪問だけを残して、個々面接とか電話による選挙運動はやつてもよろしいということになつた、戸別訪問を解放すべきだと思う、戸別訪問を禁止するということは、世界において日本だけです、戸別訪問をやつて何の悪いことがある。戸別訪問をやると買収が行われると言いますが、今戸別訪問をやつて一々有権者を買収するということは、おわかりであるかおわかりでないか。以前は五百か千の投票をとれば当選できたが、今は少くも三万、五万の投票をとらなければ当選できない、一々戸別訪問をやつて有権者を勧誘するようなそんなことをする者はないと思います。戸別訪問をやることはこの際断然解放すべきであると思う。  それなら選挙運動を原則としてすつかり自由にする、ただやむを得ない場合においてこれを制限する方針に改めてもらいたい。やむを得ない場合はどういう場合であるかということは、いろいろ経験されておる委員長さんにおいてお考えがあると思いますが、とにかく自由にするがよろしい、演説会も自由にするがよろしい、演説会を制限して三十回以上できない、これは言論の自由を拘束する憲法違反です。この法律自体私は無効であると思う、しかしながら、あまりのべつに演説会をやらせるのも困るというならば、これも相当の程度制限することがよろしい。けれども三十回以上はいけないと制限することはあまりしやくし定規であつて、実際に適せぬと思う。私の見るところによりますと、演説会の回数は選挙区の町村の数にしたらいい。市においては人口三万に一箇所くらいにするのがよい。文書も自由に発送することができるようにするがよい、候補者とか第三者とかいうことは、選挙に関する事務は自由にするがよろしい、ただこれは文書をはがきぐらいにきめるのがよかろうと思つております。はがきならば何ぼでも出せる。それから現行法では演説会をするについては、演説会の準備を各市町村役場でやる、個人演説会については自由にポスターをやる。演説会のポスターも市町村役場でやらせるということであれば、少くとも三十枚以上のポスターをこしらえる、五千以上の人口のあるところは五十枚以上のポスターを書けるというふうにせぬと、今のようなポスターでは演説会は開けるものではありません。それからポスターを市町村役場でこしらえることがよいか悪いかということは、これは研究の必要がありますが、市町村役場でポスターをこしらえるにしても、候補者においても千枚くらいのポスターをこしらえるということをやる。演説会のポスターはただ候補者の名前だけを印刷するがよいか悪いかわからぬが、とにかく候補者においても千枚二千枚のポスターを許すのが実際の実情に適するのじやないかと思います。そのほかには何人も選挙に関するポスターを掲示することができない、これくらいの制限はやつてもよかろうと思います。その他候補者であろうが、第三者であろうが、どんな場合においても、どんな集会においても、自由に演説もできれば議論もできる、そのほか一切の選挙運動をすることができるようにしなくちやならぬ。それから今までは自動車が一台になつておりますが、これは一台ではとてもだめです。少なくとも二台にしなくちやならぬ。二万円くらいの公営費用はやめるがよろしい。  それからここで言つておきたいことは、公共事業を利用して選挙運動をすれば罪になることがきめてありますが、これははなはだあいまいであります。一体候補者が公共事業というと、國家の事業です。鉄道をつける、あるいは港湾をつけるとかいうことを選挙演説すると、その地方選挙民が喜ぶ。それが何で罪になるか。みんな地方のため、國家のため骨を折るということが罪になるわけがない。これは以前の選挙法改正のときに問題になりまして、それを罪にする必要がないじやないかという議論が強くなりまして、公共事業を「直接利害関係」と直接という文字を入れて一層その範囲を狭めたのであります。ところが「学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附其の他特殊の直接利害関係を利用して」と直接利害関係が漠然としてわからぬ。学校とか会社とかいうのはとにかく、今言うたように廣い範囲の國家事業を利用して有権者を誘導することを罪になるということは非常にりくつにならぬと思う。ゆえにこの條文を相当に修正すべき必要があるではないかと思う。現にこの前の選挙にあたりましても、ある候補者ちよつと鉄道のことを言つた。どこそこからどこそこまで鉄道をつける、それをこの條文で持つて行つて地方の利害関係を利用して、選挙民を誘導したというようなことで裁判になつたのでありますが、私はこんなことは罪にする必要のないことであると思う。これも十分にお考えを願いたい。  それから別表のことでありますが、今の別表は以前の人口をもとにしております。この参考書を見ると、大分人口が変つておるらしい。何とか正確な人口調査がありまするならば、それを土台にして別表改正をこの際やつてもらいたい。戦争中の疎開、爆撃を受けた都市、こういう関係から大分人口が移動しておつたところが、近ごろ大分元にもどつております。東京のごときもよほど人口がかわつている。神戸のごときも人口が二十万ぐらいは殖えている。でありますから、何か権威ある人口統計がありますならば、これを元にしてこの際別表改正をしてもらいたい。こういうことを、私、ちよつと考えついておるのです。いずれも当委員会におきまして案ができると思いますがこの際むずかしいことを一々項目について議論していたのでは切りがありませんから、現制度をどう改正するかということに限定して現行法改正の歩を進めていただきたい。そうでないと、とてもこれは間に合わない。それだけのことを申しておきます。
  7. 生田和平

    生田委員長 この際皆様に申し上げたいと思います。実はこの劈頭に議案の進行について皆様にお諮りしてあるのでありますが、ただいま斎藤委員の御発言は相当廣範囲にわたつて、私が申し上げたことが大分あるのですが、私が申し上げた議題以外にわたつたことが、どうも徹底を欠いておつたのではないかと思いますので、今後はなるべくこの議題の範囲で御意見を承りたいと思います。
  8. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 衆議院の方も、参議院の方も、地方選挙の方も全部の選挙法改正をこの委員会でやるわけでございますか、それならばそれを單一法でおやりになるお考えですか、またそれを三つにわけておつくりになるお考えですか。
  9. 生田和平

    生田委員長 大体理事会でも御相談し、これはたびたび御相談もしておるのですが、ウイリアムス氏の内示もありますし、その示唆によりまして、大体衆議院参議院地方議会、その他教育委員まで一連の選挙法改正ということになつております。少なくとも衆議院参議院地方議会までは、あるいは統一選挙法とでも申しますか、何か一本で行きたい。そうしてやむを得ざるものは特例法にでも譲りたい。こういうふうなことで進行しておるわけであります。
  10. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 私どもそういうことを承知もいたしませんので、どういうぐあいに進行していいのか実は迷うたのであります。もしそういう御方針であれば、衆議院選挙について、そういうことを限定して御審議をお進めいただきましたならば、どうでございますか。私はこの際その方がきわめて簡潔に進行し得る意味においていいじやないかと思います。
  11. 生田和平

    生田委員長 これは衆議院参議院はよほど連絡しておりますから、別々にやるよりは、やはり一緒にやつた方がいいというふうな御意見で、進行しておるわけであります。
  12. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 そういたしますと、今配布されました主要研究事項に対して各一人々々が別々に自分意見を述べて、それをおまとめになつて行くお考えなんでありますか。
  13. 生田和平

    生田委員長 これは大体皆さんの御意見の発表は御随意でありまして、必ず皆さんに御意見の発表をしいるわけでは決してないのであります。従いまして随時に御意見の発表を願う、かりにただいま議題になつております選挙区制の問題のごとき、重要な問題がもし御意見がまとまらぬ場合は、後日の機会に宿題と言いますか、懸案として残しておきたいと思いまして、御意見のまとまる分だけは大体まとめて行きたい。こういうふうに考えておるのであります。
  14. 逢澤寛

    ○逢澤委員 今の委員長のお言葉は、私解釈いたしかねますが、一体今議題になつているのは、第一に選挙区をいかにするかということが中心になつていますから、順を追うてやらぬと、斎藤先生のお話になつたのは少し進み過ぎると思います。ああいうことを言つておつたら、何日審議をしたつて進みません。けれども、きようこの選挙法改正に関する委員会審議を進めて行かれるのは、やはりさほど理事会できめたことを原則としてお進め願わぬと、これは審議が少しも進まぬと思うのです。従つて私どもは今ここで聞いておりますのに、議題に沿つてお話願わぬと、同じことを何べんも繰返すことになる。この点は非常に遺憾だと思いますから、選挙区のことをどういうにするかということについて進行を願いたいと思います。
  15. 生田和平

    生田委員長 ただいま逢澤委員からのお話の通りでありまして、ただいま議題になつておるのは、選挙区の問題でございます。これについて諸君の御意見を承りたい。この議題が議了いたしましたら、また次の議題に移りたいと思います。なるべくこれに限定して御意見の御発表をお願いいたしたいと思います。
  16. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 私は意見を結論的に述べておきたいと思うのであります。選挙区をどうするかという点については(2)の中選挙区制、これによるべきものである。しかして二名ないし三名の連記を可とする。こういう意見であることを申し上げでおきます。参議院の場合につきましては、ただいま意見を述べることを保留いたします。
  17. 小川半次

    ○小川(半)委員 私は選挙区制を小選挙区とするか、あるいは中選挙区とするか、大選挙区とするか、大体この三つの大きな問題のうち、ただいま中選挙区の御意見が出ましたが、私も中選挙区に対しては、賛成であります。小選挙区の弊害はどこにあるかと申しますと、大体選挙区が小さいと、その地方のボスが跳梁するおそれがあります。そうして比較的選挙区が小さいものですから、大局的な國家の再建とか、あるいは大きなことを考えずして、たえず選挙区のことのみに動く人が比較的選ばれて来るという場合が多いのであつて、われわれはこの民主的な、しかも大きな立場から國家というものを考えなければならない立場に立つて見るときに、一地方のことのみに動くような人の出やすい小選挙区は廃さなければせならぬと思うのです。同時にまた大選挙区ですが、これは一應理想としてはいいのでありますが、その人物とか、徹底しない場合が多い。あまりにも選挙区が廣過ぎて、せつかく有能な候補者が出ていても、その候補者の人格とか、あるいは日ごろの私生活とか、そういうことをつまびらかに知ることもできない。従つて場合によつては世間においてあまり評判のよくない、又行動それ自身が非民主的な人であつても、他の比較的その人を知らない場所へ来て何かはつたりの演説などをやりますと、ついひつかかる場合もありまして、大選挙区というものも、理想的でありまするが、人物そのもの、あるいはその人の性格というものが見わけがつかぬために、つい理想的でない人が選ばれるような場合もあるのであつて、これも私は一つの弊害ではないかと思います。かくのごとく小選挙区にも弊害があり、大選挙区にも一應弊害があるのであつて、大体世界各國の選挙制度を見ましても、最近は中選挙区か大選挙区が多いのであつて、だんだん中選挙区に傾きつつあるような状態であります。先ほども斎藤長老が言われたように、わが國においても過去において何回となく大選挙区あるいは小選挙区、中選挙区というものは繰返されているが、結局日本においてはまず中選挙区が一番妥当じやないかという結論に達しております。われわれもそういう結論を持つておるのであつて、中選挙区にまず賛成するものであります。しこうして中選挙区の場合、はたして單記で行くのが妥当であるか、あるいは連記で行くべきかという問題でありまするが、大選挙区の場合はこれは連記を妥当といたしますが、中選挙区の場合は單記でいいと思います。いずれ委員諸君からいろいろ意見が出ると思いますので、私は後ほどこの中選挙区の場合單記制が是であるということについて意見を申し述べたいと思いまするから、ただいまはこの程度で私の意見をとどめておきたいと思います。
  18. 北澤直吉

    ○北澤委員 選挙区の問題につきましては、いろいろ理論的に議論があると思うのでありますが、これまで世界各國におきまする実際の選挙を基礎にしてみますと、議会政治が最も円満に行われておるのはアメリカとイギリスだろうと思うのでありまする。このアメリカとイギリスにおきまして議会政治が円滑に行われております理由はいろいろあろうかと思いますが、結局問題は二大政党があつて、これがお互いに相牽制して行きますところに、両國の議会政治が円満に行われて行く点があると考えておりますし、世界の学者もそれを認めておるのであります。そういう点から行きますと、やはり日本におきましては議会政治を円滑に行つて行くためには、将来の理想としましては、やはり二大政党主義に行かなければならないと思うのであります。日本に二大政党という、実際上の政党ができますためにはいろいろな手段、方法がありますが、やはり選挙区について考えますならば小選挙区で、中選挙区、大選挙区でやられますと小党が分立して、政局の安定を欠いて、議会政治の運営にいろいろな欠陥ができると思うのであります。従つて私は日本におきましても議会政治を円滑に行い日本の民主政治を完成するためには、理想といたしましては小選挙区制がやはり私はいいと思うのであります。ただ日本の現在の状態を見ますと、一足飛びに小選挙区に行くということはいろいろ支障もありますので、現在の段階におきましては、私どもとしても中選挙区に賛成でありますが、やはり目標は小選挙区制に理想をおいて行くのが日本議会政治を完成するにいいのじやないかと私は思うのであります。ただ現在の過渡的な段階においては、中選挙区制が適当であろうと私は思うのであります。この中選挙区制をやる場合においては、先ほどもいろ御意見がありましたが、別表をかえるとか、いろいろありますが、やはり斎藤先輩の御意見のように、人口の異動によつてこの点をかえて、なるべく現状に即するようにした方がよいと思います。  次に選挙区と選挙方法の問題でありますが、日本におきましてはなかなか二大政党というものはできないで、小さな政党が分立している。そうして政局の安定を欠いているという理由には、この選挙の際に候補者が濫立することが一つの大きな原因としてあると思う。もしアメリカのように予選制度をとることになりますと、候補者が非常に精選されて、候補者がそうたくさん出ない。そういうふうに選挙民の意思によつて候補者の数を制限する。アメリカでやつておりますプライマリー、この予選制度を何か適当な方式において日本において考える必要はないか。要するに候補者の濫立を防いで、候補者を少くして、小さな政党がたくさんできて日本の政局の安定を害することがないようにしたいという意味から、投票方法候補者の立候補制度につきまして予選制度のようなものを考える必要はないかという意見であります。参議院の問題はやめまして、衆議院の問題につきまして、以上所見を申し述べます。
  19. 野村專太郎

    ○野村委員 衆議院議員選挙区に対して、現在の現実から直視しまして、極端な小選挙区は実情から見てにわかに賛成できないと思います。しかし今とつております中選挙区制においては大選挙区制に近い性格を持つている地区が相当あります。こういう点から、また反面各政党の現在の配置、あり方、これらから見まして、大体二人区ないし三人区制度が最も妥当であろうと考えております。全縣一区のごとき大選挙区制に近いような所は修正しまして、三人程度で押さえて行く。すなわち三人、二人区にいたしたい、かように考えます。それから別表改正にたいしては斎藤先生のお話のように、正確な基礎に基いて現在の人口の実情を見て至急改正すべきである、かように考えます。
  20. 前田種男

    ○前田(種)委員 いろいろ論議はございますが、衆議院選挙区の場合は現状が一番いいのではないか、私は結論的にそう申し上げます。いろいろ申し述べられた意見に対して、さらに私は一々意見を申し上げる必要もないと考えますので、現行法選挙区で可なりと私は認めます。ただ正確な人口調査によつて別表を選ぶということは当然やるべきであるという結論を私は持つております。それから現行法においても、ある選挙区のごときは非常なむりをして選挙区の変更をやつたために、府縣においていろいろな問題が起こつているという点は、昨年の選挙法改正委員会においても相当そうした府縣代表の人々から意見が深列に出た点でございますから、そういう特殊な所は考慮する余地があれば考慮してもいいのじやないかと思いますが、全体的な問題でありませんから、それ以上触れたくないと思います。  それから参議院選挙区の場合は、ここにも参考として出されておりますが、いろいろな意見がございます。これまた私自身もいろいろ意見がございますが、すでに来年の三月の選挙が迫つておりますところの参議院選挙区を、ここで根本的にいゆうということは相当重要な問題であろうと思いますので、いろいろ議論はございますが、私は一回選挙をやつたばかりの参議院選挙法の現状から申し上げまして、選挙区は現状でいいのじやないかというのが私の結論でございます。なお、皆さんからこの点について議論がでますならば、それに対してまた私の意見を申し上げたいと思います。  それから各地区の選挙区も、これまた大体は現行で特に不都合、あるいは特に改正しなければならなぬという点がさほど見つかりませんので、大体選挙区に関する限りにおいては現行選挙区でいいのじやないかというのが私の意見でございます。
  21. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私も大体選挙区制の問題は、結論から言いますと、今のでいいじやないかと思います。ただ問題は人口の移動などがありますから、この人口移動は斎藤先生のお話のように適切にするのが妥当である。理由はもうすでに数回もやりまして結論がでておるので、現在のところは現行の中選挙区でいいのじやないか、こう考えております。
  22. 生田和平

    生田委員長 ちよつと委員長から申し上げてみたいのですが、現行の中選挙区制でもあるいは鳥取とか高知とか徳島とか佐賀とかいう大分多数の一縣一区の選挙区があるようでございます。私徳島縣ですが、徳島縣の経緯からみると、どうも街頭演説をやつてみても全縣可下に行き渡らない。あるいはこういうのを二つぐらいにする必要せいがあるのじやないかということを考えておるのですが、徳島は五人でありますから三人と二人になりますが、島根縣でしたか鳥取縣でしたか、これは四人区でしたから、二つに割ると二人ずつになるのですが、他のつり合いもありまするからこういうことは皆さんどういうふうにお考えでしようか。
  23. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は一縣一区の区が数縣ございますが、もしこれをいらえば東京その他の地区、兵庫その他の地区でやつぱり五人区がまだ相当あると思う。一縣一区をいらうと結局この五人区をいらうことになつて参りますから、五人区全体をいらうことになりますならば、またいろいろ意見が出て来ると思いますが、一縣一区だからこれは二つに割る、その他の地区の五人区はそのまま置くということも筋道がたたぬじやないかと思います。そうして議論をして行きますとなかなかいかぬのじやないか、もちろん各委員意見は十分われわれも検討したいと思いますが、この点を掘り下げて、議論をしますと、なかなか各党の内部においても議論が紛糾するのじやないかと思います。しかし紛糾してもかまわない、掘り下げて議論をするということになりますならば、私たちもあえてその議論をして行きたいと思います。
  24. 栗山長次郎

    ○栗山委員 現行選挙区制については一得一失がありましようが、これは今社会党の方が言われましたような事情もありますので、ここで即時に意向のとりまとめをなさいますよりも、もしあとで非常に肯綮に値し、皆さんが賛成なさるような支配的な意見が出れば別といたしまして、しからざる限りしばらくあとにわされたらいかがと思います。
  25. 生田和平

    生田委員 この問題は非常に重要性を帯びておりまするから、この議題はあとへまわすという栗山君の御意見委員長も同感であります。これはこの程度において、……。
  26. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 別にそう問題は紛糾もしておらぬのですから、本日の会議としてはある程度意見をまとめておいて、他日変更することはけつこうなんでありますから、今日の意見で何か紛糾があればこれはまた適当に処置しなければならぬかもわかりませんが、大体意見は一致の方向に向かつておるのでございますから、その程度いたしておきまして、それから小委員会なら小委員会においておまとめ願うなりしまして、ことさらにこれはあとまわしにする必要はなかろうと思います。本日のところは本日で、大体どういう傾向を示しておるかということだけはおまとめいただきます方が私はいいと思います。
  27. 生田和平

    生田委員長 委員長の見通しでは、ちよつとまとまりがつきにくいのじやないか。あるいはただいま栗山委員なり佐竹委員からの説明は全然反対でありますが、この際これを採決に問うこともどうかと思いますので、ちよつときまりにくい見通しを持つておりますから、延ばしたいと思います。いかがですか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  28. 野村專太郎

    ○野村委員 この問題ばかりでなく、ほかの問題についてもそうであろうと思うのですが、結論は小委員に付託して具体的にまとめられるのだろうと思う。その間に各党の態度なりいろいろなものを調整して行けばいいと思います。大体この程度で次に進行されるように望みます。
  29. 生田和平

    生田委員長 この区制の問題は、投票区との問題もございますし、あるいは定員の問題もありますし、いろいろこまかい問題はありますが、これは御議論がなくて、大体区制をどうするかというだけの御意見であつたと思うのです。また参議院の問題については一名だけ御意見がありましたが、その他はほとんど御意見はなかつたのであります。いずれ参議院の区制の問題も解決しなければならぬ問題だと思うのであります。
  30. 前田種男

    ○前田(種)委員 参議院選挙区の問題は、もう少し各党の意見を、各党に拘束されず、各自の個人の意見でもいいが、もう少し審議してみたらどうかと思うのですが……。
  31. 生田和平

    生田委員長 それでは、参議院に対する意見を一應承りましよう。
  32. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 参議院の方でも同じくこういうようなぐあいにやつておりますか。
  33. 生田和平

    生田委員長 そうです。
  34. 佐竹晴記

    ○佐竹委員 それではその方の意見を、ひとつ向うは向うでおまとめ願つて、向うの意見を尊重するということも私はいいのじやないかと思います。向うの御意向を聞いて、こちらはこちらで衆議院の方をまとめて行く、向うはまた参議院の方をまとめて、最後にひとつ意見の交換をし合つてつて行く、そういう方法はいかがでございましよう。
  35. 生田和平

    生田委員長 お答えしますが、参議院の方は、大体の御意向は現制度を保存したいという、御希望らしい。しかしこれは決議したわけでも何でもないのであつて、各委員の発言中にそういうふうな議論が現われておるのです。しかしこれは非常に重要な問題であるからというので、決定に至つておりません。また衆議院の本委員会におきましては、やはり参議院の区制も当然審議して、いずれにか決定しなければならぬ職責を持つておると思います。ですからこれは参議院の意思を必ず尊重するという前提できめるわけにはいかぬと思うのです。やはり本委員会は本委員会の独自の立場で決定いたすのが当然でないかと、こういうふうに考えております。
  36. 北澤直吉

    ○北澤委員 この参議院選挙区につきましては、結論から申しますと、私は全部地方区制、一部道府縣一選挙区制がいいのじやないかと思うのであります。第二院のあり方につきましてはいろいろの形式があります。たとえばイギリスの上院もあるし、アメリカの第二院。イギリスはああいうまだ貴族制度が残つておるからそれでいいのであります。アメリカは連邦制であるからあれでいいのでありますが、イギリスとアメリカと、もう一つはフランスの制度が、ちようどフランスの事態と今の日本の事態と似ておるのでありますが、フランスの事態を見ますと、やはり各縣が第二院の選挙区になつておるわけです。各縣が選挙区で、しかも間接選挙ということになつております。大体フランスの上院議員は、一ぺん下院議員をやつた人がなるというふうな形でありますが、それは直接選挙によらずに、ただ各縣の縣選出の下院議員とか、あるいは縣会議員というような人たちが選出をするという制度でありますが、あの制度によりますと、これまでの経験では、下院に比べて年輩も相当あるし、しかも大体下院議員の経験を持つておる。学識経験、そういうものから見て、大体いい人が出ているわけでありますが、私はあの例を見ましても、やつぱり日本でも全國区制というものをやめて、全部地方区制にして、そうして間接選挙という制度をとつたならば、あれに近い結果が出るのではないか、こういうふうに考えまして、これに対しましては全國区制を廃しまして、全部地方区制、そして間接選挙、こういう方法をとつたらどうかとこう思うのです。
  37. 淺沼稻次郎

    ○淺沼委員 参議院選挙区の問題は、たまたま民主自由党の廣川君が旅行先で、全國区制を廃止するというような発言をされてから非常に問題の中にうずを巻いておるような形が現れておりますが、これを議論するときには、一体参議院の性格をどうするか、どういうぐあいに見るかということが前提で議論をされなければならぬと思う。ただ地域代表のみによつて参議院が構成されることになれば、一体二院制度を採用する必要があるかどうかという根本の問題にも私は触れて来ようと思うのでありまして、自然衆議院参議院との間において相牽制し合いながら憲政の発達を助長して行くという建前から行きますならば、やはり参議院参議院としての、衆議院とはかわつた性格を持つべきだと思うのでありまして、もし持つべきだということになれば、地域代表のみによつて構成されることは、どうも納得が行かない形になつて、自然全國代表ということはある意味において職能代表を出すという意味が多分に含まれておるのではないかと私は考える。そのことは職能代表でありますから、必ずしも労働組合とか農民組合とかいうような一階級の利益を代表するものではなしに、いろいろな職能、現在出ている参議院の全國区制の中にもいろいろな團体を代表する人が入つておるのでありまして、そういうような一つの職能を代表して入れるということになれば、地域ではいかぬのでありまして、自然全國的なものから選んで行かなければならぬと思うのであります。それを小さなブロック的なものにするという議論もありますけれども、やはりブロック的なものにすれば、自然局限されたものになつて参るのでありまして、ブロック別にするよりかも、やはり全國的なものを存置する、そういう形でいいのではなかろうかと思うのであります。ただ参議院衆議院と同じような構成にすることになれば、いろいろ地域論が出て、私はしかるべきだと思うのでありますが、そうではなく、かわつた性格であるということになれば、今将来を考えることは別といたしましても、一ぺんやつて、今度は二回目の選挙をやるわけでありますから、もう一ぺん経験をしてみて、参議院の性格はこの選挙によつて裏づけられるかどうかということを見た上で考えるべきでありまして、今すぐかえることはどうかと思います。
  38. 生田和平

    生田委員長 別に御意見もないようでありますから、次の問題に移りたいと思います。第二、投票区の問題であります。
  39. 三浦義男

    三浦参事 投票区の問題につきましては、特に具体的にはあげておりませんが、何かこれに関しまして御意見があればというようなことにしておるわけであります。ただ、御参考に申し上げますれば、現行法衆議院の場合、参議院の場合、地方公共團体の場合を比較しておりますが、大体参議院の場合も、地方公共團体の場合も衆議院議員選挙投票区による、こういうことに法律的になつておりますので、こういう点はいわゆる共通法の分野として考えました場合には比較的楽ではないかと考えております。
  40. 千賀康治

    ○千賀委員 投票区でありますが、私も長い選挙の体験を持つておりますけれども、近ごろは投票区はだんだん細分化されて、数が民衆に便利を與えております。その点では便利になつた方面だけは数えられますが、不便になつたということを別に民衆側として感ぜられません。適当であると思います。但し取締りその他の経費で、地方の役場等から請求される費用がはたして國の方では地方自治團体に與えてあるかないか、その点はわかりませんが、その点が解決ができておれば、投票区は小ならば小なるほど、けつこうだ、現行法において可なりと考えます。
  41. 生田和平

    生田委員長 この問題は大した御議論がないようで、大体千賀君の御意見のように現行法が適当だというようなことにきめましてさしつかえないですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 生田和平

    生田委員長 異議ないと認めまして、投票区の問題は確定いたします。  次に第三、開票区。
  43. 三浦義男

    三浦参事 開票区の問題に関しましては、第一に揚げてございますように、投票の機密保持の趣旨にかんがみまして、開票区の大きさを拡大すまるかどうかという問題であります。これはあとの方の七十八ページに投票の点検制という問題を揚げてございますが、これとも関連いたしておる問題でありまして、投票の秘密保持というような見地から、開票区の大きさを現在よりもつと廣げるかどうか、だれがあの場合に投票したかということがなるたけわからないような方法を講じたらどうかという意見がある。これは同時に投票を点検する場合におきまして、各投票所から集まりました投票を点検する場合におきまして、個々的に区別して点検するか、あるいは混同点検制をとるか、あとの投票のところで触れる問題でありますけども、そういう問題とも多少の関連がある問題であります。現行法におきましては、大体におきまして衆議院参議院の場合、それから地方公共團体の場合におきまして、開票区の大きさについては法律上の制度といたしましてそう区別はないと思つております。ただ小さいところにおいては、自然にその範囲が多少市町村等の場合におきましては、開票区が狭い地域において設定されるという場合があり得ることが例外であるわけでありまして、それ以外においては大体同じような原則になつておるかと考えられます。
  44. 千賀康治

    ○千賀委員 開票区でございますが、ただいまの投票の秘密保持ということから言えば議論があるかもしれませんけれども、現在の開票区におきましても、地方的にだれの投票が比較的あの町内では多かつたというようなことがわかるにいたしましても、一人ずつを指して、だれがだれに入れたということはわからないのであります。だから現在の開票区において秘密が漏れることはあり得ないので、これはただ感じと程度の問題であります。これが不利であるといたしましても、有利な点は、現在の開票区でありますると比較的細分化されておりまして、どこの地方はだれがとつたのだとか何とかいうことがよくわかります。ことに選挙の好きな人人、これから選挙が好きになつてもらいたい民衆の諸君にさえも、おれの方では予期に反したとか、予期通りであつたとかいうようなことが比較的よくわかるので、実に選挙に対して興味がいやが上にもにじみ出て行くよい開票区だと私は感じました。これを大きくぼんやりさせますことは、たとえば投票の秘密は保たれるにいたしましても、その利益よりも全体が選挙というもはおもしろくないものだ、せつかく投票してやつても何が何だかわけのわからないことにされてしまうと、この選挙に対する興味を失う不利益が多いと思います。かかるがゆえに、開票区も現行でいいと私は考えております。
  45. 生田和平

    生田委員長 ただいま千賀委員より現行でいいという御意見がありましたが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 生田和平

    生田委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  次は第四、選挙権の問題であります。
  47. 三浦義男

    三浦参事 選挙権の問題につきましては、選挙権の條件と、それと関連いたしまして居住要件の問題が大きい問題であると考えておるのであります。  第一の選挙人の年令を引上げまたは引下げるの可否でありますが、引下げることにつきましては憲法に成年者による普通選挙権等の関係がありまするので、これは憲法のわく内において考えた場合においては不可能であろうと考えております。  それからなお現在の選挙権の要件といたしまして、衆議院参議院につきましては年令二十年以上でありまするが、地方公共團体議会議員及び長の場合におきましては、年令二十年以上の者で六箇月以来市町村区域内に住所を有するもの、こういうことになつておりまして、その点が國会議員選挙と違うのであります。これは選挙人名簿の問題とも関連いたす問題でありまするが、六箇月の住所要件を選挙権の要件とするか、あるいは選挙名簿の調製の要件とするかという問題であります。これは統一法なり共通法を考える場合に調製を要する点であろうと考えておりまするが、その点が違つておる点かと思いますので、念のために申し上げます。  それから現行法の欠格事由でありまするが、これは(1)から(5)まであげてございまするように、禁治産者、準禁治産者、懲役または禁錮の刑に処せられその執行を終えるまでの者、また懲役又は禁錮の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者、(5)として選挙犯罪により刑に処せられた者、こういうふうに分類せられてございます。(4)の懲役または禁錮の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者というところで、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)と分類してございまするがこれは執行を受けることがなくなるまでの者というよりも、こういう人はすでに執行を受けることがなくなるまででなくて、なくなつたものでありまして、こういう人たちは、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)は選挙権を有することになるわけであります。ちよつと一緒に書いてございまするが、その点はあらかじめお含みおきを願いたいと思います。  それから選挙犯罪により刑に処せられた者につきましては、(イ)(ロ)にあげてございますように、罰金の刑の処せられた者、それから禁錮以上の刑に処せられた者とありまして、なおこれにつきましては買収犯の累犯加重の制度がありまして、普通選挙権の停止期間が五年でありまするが、特別の場合には十年になるというような問題があるわけであります。それからこれらの現行法を一應の前提に置きましてここで取上げるべき問題と考えられまする点は、禁治産者及び準禁治産者と選挙権関係であります。準禁治産者に対しまして選挙権を與えることの可否が第一の問題でありまして、この場合私法上の能力がない者に対して公法上の能力、つまり公権行使の能力を與えることが不都合であるかどうかという問題でありまして、これは学者等の間でも議論されておりますが、禁治産者は民法によりますと心身喪失の常況にある者であり、準禁治産者は心身耗弱者、聾者、唖者、盲目者及び浪費者、これらの準禁治産者に対しましては、禁治産者と違いまして、選挙権を附與するかどうかということが一つの問題であろうと考えておるのであります。  次には刑の執行猶予と選挙権関係であります。先ほど欠格事由のところで申しました執行猶予の問題と関連する点でありますが、第一は刑の執行猶予の言渡を受けた者が、執行猶予の言渡を受けないで実刑に処せられた者の比べて不利な取扱いを受ける場合があるが、これに対する措置を講ずる必要はないか。と申しますのは、たとえば懲役二年に処せられましてそれが執行猶予三年ということになりますと、三年の方が実刑の二年より長い場合におきましては、執行猶予の期間を過ぎるまでは欠格事由に該当し、選挙権を失うことになりますので、二年の実刑期間の方が早く欠格該当期間を経過するという結果になると考えられます。これらの点は多少法律的な問題でありまするが、一應ここに取上げておいたわけであります。  それから選挙犯罪以外の普通の犯罪によつて刑に処せられた者に対しましては、刑の執行猶予の言渡を受けた場合であつても、これに選挙権を附與するようにすることは適当でないかどうかという問題であります。普通の選挙犯罪の場合につきましては、先ほど申しましたように五年間の選挙権の停止とか、あるいは十年間の選挙権の停止というような問題があるのでありまするが、それ以外の普通犯罪で執行猶予の言渡を受けたというような場合におきましては、これは執行猶予の期間を過ぎるまで待つて選挙権を附與することにするのか、あるいはそういうものについては執行猶予とは別に、実刑的な刑が過ぎた場合において選挙権を附與することにするかどうかというような、(1)と多少関連する問題でありますが、一應そういう問題をここに取上げておいたわけであります。  次には犯罪による選挙権の停止でありますが、選挙犯罪によつて刑に処せられた者に対する選挙権の停止期間は、現行通りでよいかどうか。これは罰則の方にそういう五年または十年の選挙権あるいは被選挙権の停止の制度を置いておりますが、こういう制度は将来維持するかどうかという問題であります。  次には、選挙犯罪以外の悪質犯罪によつて刑に処せられた者に対し、選挙権の停止制度を設けることの可否ということでありまして、選挙犯罪につきましては今のような五年または十年の停止期間を置いてありますが、一般の悪質犯罪と申しますと、たとえば殺人犯とか特別の非常な悪質の犯罪に対しまして、こういうことをどういうふうに考えるかというような問題であります。  それから次は選挙権と居住要件の問題でありまして、これは先ほども選挙人名簿の関係に触れて申し上げたのでありますが、六箇月以上の住所を有することを選挙権の要件とするか、あるいは選挙人名簿の登録要件とするかということでありまして、(1)に書いてございますように、衆議院参議院選挙の場合におきましては選挙人名簿の登録要件といたしております。地方公共團体議会議員及び長の選挙の場合におきましては選挙権の要件としておるわけであります。これがいろいろな点において実質的に相違がやはり起こつて来るわけでありまして、この際共通法として考えた場合において、選挙権を民主政治の現段階におきまして六箇月の住所要件を選挙要件とすることが適当かどうかという問題であります。それと同時にもう一つは、あとの選挙人名簿のところでも触れるわけでありまして、二十八ページのところで衆議院議員選挙人名簿の登録に必要な六箇月の居住要件をどうするかという、ここでも触れておるわけでございますが、居住要件の六箇月も撤廃するか、短縮するか、あるいは現行通りでよいか、かような問題が考えられるのであります。  次には衆議院議員選挙権の沿革を、一應明治二十二年の衆議院選挙法創設以来、おもな選挙法改正の大体の選挙権の要件等に関します條項を参考のために揚げておいたわけでありますから、御参考に願いたいと思います。
  48. 生田和平

    生田委員長 小玉さん、この問題であなたは御研究になつて御含蓄があるようですが、選挙権の問題についてどうでしようか。
  49. 小玉治行

    ○小玉委員 特に研究もしておりませんけれども、大体現行法の欠格條項でも相当研究して、厳重に、不適当のものを排除しておりますから、現行法通りでよいのじやないかと考えております。
  50. 千賀康治

    ○千賀委員 この問題ですが、基本條件から論議しておると、一週間でも一月でもやれる問題なのです。大体現行法を主体として、現行法のどこに改むべきところがあるかということを大づかみに言つていただかぬと進行がしにくいと思いますから、さようにおとりはからい願います。
  51. 生田和平

    生田委員長 私がだんだん承つておるところでは、なるべく選挙権は緩和してやつたらどうか。こういう論議をちよつと聞いておるのであります。むりからぬ点もあると思つておるのであります。ただいま千賀君、小玉さんの御意見もごもつともだと思うのです。この問題は大体現行法にのつとつてつて、多少緩和の道ができる問題があれば認めたいと考えております。いずれ委員長の手で整理いたしますなり、あるいは小委員会に付託いたすことにして整理してよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 生田和平

    生田委員長 それではさように決定いたします。  次は被選挙権の問題です。第五です。
  53. 三浦義男

    三浦参事 被選挙権の問題につきましても、やはり年令の問題が第一かと考えるのであります。そこに被選挙権の場合の年令を揚げておきましたので、御参考に願いたいと思います。  第二の問題といたしましては、その年令に関連いたしまして、参議院議員の被選挙権の年令を四十才に引上げる案は、この際再検討の必要があるかどうか。一應参議院制度に関します臨時法制調査会が設置されましたときにもこういう意見が出ておりましたので、この問題をここに取上げておいたわけであります。御参考に申しますと、公務員によります人事官の年令につきましては三十五歳以上、公正取引委員会委員長につきましては三十五歳以上、日本國有鉄道に管理員というのが新しく置かれまして、鉄道の業務運営の指導監督等に当たることになつておりますが、この管理員の年令が三十五歳になつております。最高裁判所の裁判官の年令につきましては、裁判所法で四十才になつて折りますので、御参考に願いたいと思います。  次は被選挙権人の年令は、選挙期日によつて算定することになつておりますが、それでよろしいかどうか。これは問題ない事柄でございますが、念のために書いておいたわけであります。  次に欠格事由でありますが、欠格事由は選挙権の場合の欠格事由と被選挙権の場合の欠格事由と一般的な欠格事由につきまして同じでいいかどうか。あるいは被選挙権というものは、特殊な性質にかんがみて、強化する必要があるかどうかという問題であります。  次に欠格事由に関連いたしまして、覚書該当者に対する被選挙権制限は、欠格事由として、いわゆる基本法中にとり入れるかどうか、これは前の昭和二十二年勅令第一号によりまして、覚書該当者は被選挙権人となることはできない、候補者となることはできないとなつておりますが、これらを整理する場合に、残して置くかどうかという問題であります。  次は公務員の被選挙権の問題でありますが、公務員の範囲―公務員と考えられます者で、第一に選挙事務の関係者であります。これは選挙事務関係者に対して関係区域内で被選挙権を認めない現行制度はそのままでよろしいかどうか、大体ここに書いておりますのは、関係区域内で被選挙権がないということになつております。第二は特定の在職公務員でありまして、次に揚げてありますような在職の公務員は被選挙権がない、こういうことになつておるわけであります。とすれば、いきおい地方公共團体における六箇月の居住要件の場合にちよつと申し上げましたが、被選挙権の條件として、被選挙権がないというように現行法の上に置くか、あるいはこけは被選挙権という問題でなくして、選挙人名簿の登録要件と申しますか、そういうような別個の意味において考えるかという根本問題があると考えております。  次に兼職禁止の職にある公務員でありまして、まず第一には兼職禁止の職にある公務員の範囲をどうするか、これはそれぞれの法規に何々と何々との兼職を禁止するという規定が書いてございますが、それをそこに羅列しておいたわけであります。この公務員の範囲をどうするかという問題は、相当公務員の被選挙権関連を持つ事項であります。なおこの問題につきましては八十六ページに公務員その他の者の立候補に関する制限ということをあげておりまするが、そこでそれぞれの場合につきまして、こういう公務員の立候補の場合と関連して説明をいたしておるわけであります。  それから先ほど私ちよつと申しそこねましたが、選挙事務関係者を特定の在職公務員というものを選挙人名簿の登録要件と申しましたが、そういう意味でなくしていわゆる立候補のときの要件、立候補時の要件、こういうふうに考えるかどうか。被選挙権の要件でなくて、そういうような意味考えるかどうか。さような意味で申し上げたのでありますから、先ほどのことを訂正いたしておきます。  それから次に兼職禁止の職にある公務員の立候補制限でありまして、これはこの前の衆議院議員選挙法改正のときから問題になつておる事柄でありまするが、衆議院議員と兼職を禁止されておりますところの國または地方公共團体の公務員が、衆議院議員に立候補する場合、その職を辞さなければならなら旨の現行制限規定はこれを存続するか、それとも撤廃するかという問題であります。  それから同時にこの問題は衆議院選挙法改正だけで考えられておるのでありまするが、この際他の選挙法改正を合せ考えます場合におきまして、参議院議員の場合はどうか、地方公共團体の場合はどうか、かような問題があるわけであります。  それからなお立候補制限の規定をかりに存続するといたしました場合に、その公務員の範囲を具体的に明文化することはできないかどうか。それは國または地方公共團体の公務員、こういうことになつておりまして、國会法三十九條の規定と関連をいたしておる問題でありまするが、國または地方公共團体の公務員の範囲とはどういう範囲か、それに入るのかどうかという点でありますので、この際それを明文化することができるかどうか、その点は研究を要する問題だと考えておるのであります。  次には國家公務員の立候補禁止の問題でありまするが、一般職にありますところの國家公務員は公務員法の規定によりまして、公職の候補者となることはできないという規定が公務員法の百二條にあります。それでこれは兼職のまま衆議院議員はもとより、それ以外のいわゆる公選による公職という廣い意味におきまして、地方公共團体の場合をも含めまして、そういうような方針改正の場合に取入れるかどうかという問題があり得るかと考えております。  次は参議院議員と政務官の兼職の制限の問題でありますが、これは選挙法中に書くのが適当かどうか、多少の疑点もありますが、一應ここで取上げておいたのでありますが、参議院の性格にかんがみまして、参議院議員と政務官との兼職を禁止することの可否の問題であります。  次には衆議院議員の被選挙権の沿革を大体ここに御参考までに揚げてあるわけであります。
  54. 生田和平

    生田委員長 この問題は大分入り込んでいるようでありますから、少しこまかく御審議を願いたいと思います。まず第一の選挙権の要件ということについて御意見を承りたいと思います。
  55. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私は参議院選挙権の年令が現在は三十才以上ということになつておりますが、これは二院制度の性質にかんがみまして、参議院はいわゆる練達堪能の者を選んで、もし衆議院において若干の手落ちがあるとか何とかいうようなときに、これをいわゆる専門的に検討する、そういうような性格を持つために二院制度の必要があるのだ。ところが衆議院と五年違つておるのでありますが他の公務員の場合と考え合せてみましても、三十くらいでいわゆる練達堪能の方ということはちよつとむずかしいと思います。そこで少なくとも四十くらいがいいと思いますが、一ぺんに四十がいいということもあまり理想に流れると思いますので、せめて三十五才以上ぐらいにしたい。理想を言えば四十才ぐらいの人が適当ではないか。こういう意見であります。
  56. 北澤直吉

    ○北澤委員 私も衆議院の被選挙権の年令の点は逢沢委員と全然同意見であります。日本におきまする衆議院の性格につきましては、先ほども淺沼委員から御意見があつたのでありますが、要しますに日本における参議院というのは、衆議院が行き過ぎた場合にこれを是正するというのが日本参議院制度だと思う。そういう意味で、たとえば年令も衆議院選挙権の場合と違わせる、あるいは任期も六年ということで、そのときの政治情勢によつて左右されない、要するに政治の安定制を持たせるというようなことでありまして、これは大体衆議院にまかしてよいが、ある場合においては衆議院には行き過ぎがある、それを冷静な気持で直すというのが参議院制度なのであります。そういう点から行きますると、任期も長くする必要があるし、またなるべく練達堪能の士を参議院に入れてやるよやにして参りますので、やはり私は年令を四十才というふうにいひかえた方がいいと思うのであります。外國の例を見ましても、私の記憶ではフランスとイタリアとベルギーは現在四十才となつておると思う。そういう点から申しましても、衆議院の行き過ぎを是正するという見地から申しましても、現在の三十年では少し若か過ぎる、やはり四十才くらいが適当ではないかと思うのであります。
  57. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は今の二人の委員の方の意見の中には肯ける点もありまするが、すでに現行法として衆議院の被選挙権とのあいだに五才の開きがあります。その理由をもつてさらに十年引上げるということはむりがあろうと思います。特に日本の現状においては、敗戦後の日本の政治は各方面から民主化されなければならぬという考えで、一から出直さなければならぬという現状でありますから、いろいろ不都合な問題があろうと思うのでありますが、これはただ單に政治問題ばかりではない。一切の問題が再出発をしなければならぬという過渡的な現状からしからしめる問題も多々あろうと思いますので、すでに現行法においてこうした開きのあるのを、特にここで衆議院意見として、さらに十年引上げることはどうかと思いますので、やはり現行法でいいのじやないかと私は考えます。
  58. 栗山長次郎

    ○栗山委員 参議院の性格を、新憲法條章及びその精神に則つたものとして、どこまでも伸ばして行くか行かないかというところに出発点があると思うのであります。衆議院の行き過ぎをためる参議院の効用というような観点をむろん考えるべきでありまして、もし自然の結果として、三十才以上としてあつても、お説のように四十才以上の人が大部分であつて、特殊な人でなければ四十才以下では出ておらぬ、将来も出ないだろうということであれば、法制いじりの必要までないのではないかという観点から、これは現状を検討することが将来の予測の指標となるかならぬかというむずかしい問題にもなるけれども、現在参議院議員で三十才から四十才までの人はどのくらいあるか、どなたかお調べになつておられたら伺いたいと思います。
  59. 三浦義男

    三浦参事 その点につきましては、明日の会議までに多分間に合うと思いますが、資料でお配りした方が便利かと思いますので……。
  60. 江崎真澄

    ○江崎委員 大体年令の問題、すでに新憲法をつくるときに、憲法委員会において根本的な議論が盡されて、こういうものになつた。そういう見地から申しまして、大体先ほど栗山委員が申されたように、実際問題としては三十才と申しても―昔から三十にして立つた人は必ず練達堪能の士でありましよう。わけても大衆に訴えて選び出されて来るのに、何の不都合があろうはずもありません。それを四十才に引上げることは、新しい日本として将来に事をなさんとし、再建をなさんとするときに、逆に民主化を遅らせる憂いこそあれ、効用は少いのではないか。実際問題として三十歳の人は、明日資料として改めて調べて報告しなければならないほど、雨夜の星のごとくにしかわれわれの目には映つていないのであります。これは一面大衆は決してばかではない、正しく判断するものであるということも言い得るものでありまして、これは当然参議院議員の年令を三十歳にして私はさしつかえがないものであると思います。
  61. 三浦義男

    三浦参事 先ほど資料を調べてお知らせすると言いましたが、お手元にあるそうでありますから申し上げたいと思います。これは選挙当日のものでありますが、全國区選出議員百人の中で、三十才以上四十才未満が六人、四十才以上五十才未満が二十七人、五十才以上六十才未満が三十八人、六十才以上七十才未満が二十三人、七十才以上六人、平均年令五十四才で、一番若い方が三十三、最高の方が七十六才であります。それから地方選出議員の方は百五十人のうち三十才以上四十才未満の方が三人、四十才以上五十才未満の方が三十八人、五十才以上六十才未満の方が五十七人、六十才以上七十才未満の方が四十人、七十才以上が十二人ということになつております。
  62. 栗山長次郎

    ○栗山委員 これは参議院で研究があるそうでありますが、参議院の研究結果を聞いてから、本委員会としての考えを述べる方が政治的に円滑を期し得るのではないかと考えますから、ここではつきり結論をつけないで、しばらく宿題となさつたらいかがと思います。
  63. 江崎真澄

    ○江崎委員 参議院の意向を聞くというのも参考までにはけつこうですが、すでに衆議院において独自の立場から議論をすることになつているのですから、私もことさらに結論を出す必要はないと思いまするが、これは何も私が若いから若い者を要望するという議論ばかりではありません。ただいまの報告のように、現に二百五十人のうちわずか九人というような一割にも満たない数字であります。この九人こそは満四十才以上の者に伍し、あるいはそれにはるかにまさるような素質を備えた人であるかもしれない。三十にして立つということが昔から言われているが、立つた以上これに甲乙があるはずがない。練達堪能というのは選挙権者の方がこれを選定するのでありまして、日本が新しく生まれかわつて将来力強く伸びて行かなければならぬ今日、この力強い一つの大きな息吹きを感ぜしめるところにこそ非常な力強さを感ずるのでありますが、これを今さららしく四十才にするという退嬰的な議論は、私はむしろなされないものであると考えるのであります。むしろ今日の年齢層から言いましても、三十才というものが練達堪能の中に伍すことは決してできないでありましよう。のみならず、これが大衆選挙であるという点におきましても、憲法制定当時すでに委員諸君の論議はそこに思いをいたしてきめたものであるから、異存があろうはずはなかろうじやないかと私は考えるのであります。
  64. 逢澤寛

    ○逢澤委員 私は現在の三十才、四十才間の人が地方と全國区を通じて九人という数字を聞いて、ますます私は四十才以上にする必要があると思う。大衆が二百五十人を選ぶのに、あまり年少者を選んではいないということは、結局練達堪能ということ、それから二院制度の要がどこにあるかということをよく認識しておるから、そういうことが数字になつて出て来ておると思う。そこで私どもは二院制度を尊重し、参議院制度というものを重要視するがゆえに、現在の憲法をつくつたときにわれわれが構想しておつたところの参議院のあり方と現在のあり方とはよほど違つておる、すでに先ほど来お話になつた数字の中にもそれが反映しておると思うのであります。われわれが新憲法をつくつたときの参議院のあり方と機能というものはああいうものじやなかつた。ところが現在ではどうも予想外の参議院ができておるということをこの席でもお話が出ておる。そういうような意味から言つても今後の参議院は新憲法ができた折のような参議院がほしいと思う。そういうような意味合いから言うと、年が多いばかりが必ずしも質がいいとは断定できぬと思います。しかしながら、練達堪能という言葉の中に、一つことにあたるより二つことにあたつた方がより経験もあり、いろいろの意見も出るということが含まれていると思います。こういうような意味合いで、現在の数字が九人であると聞きますならば、一層四十才以上ということを強調せねばならぬことになると思います。
  65. 生田和平

    生田委員長 この問題はこの程度でおきまして、最後にこの項目をきめるときにもう一度御相談いたしたいと思います。  次に欠格條項に入りたいと思います。
  66. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 覚書該当者に対する被選挙権制限は欠格事由として基本法規中に取入れてはどうかという意見でありますが、その必要はないと考えます。これは別個の見地に立つべきで、必ずしも衆議院に限りません、すべての公職を通じての問題である。この選挙法については、選挙法だけの関係を規定すればいいのであつて、こういつた覚書の関係選挙法の中へ取入れる必要はないと考えます。
  67. 生田和平

    生田委員長 委員長も大体さように心得ております。これもなかなかこまかい問題ではありますが、こういうことは小委員会にまかすわけには行きませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 生田和平

    生田委員長 ではさようにお願いいたします。  次は公務員と被選挙権の問題であります。
  69. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は公務員と被選挙権のうちの一、二、三を総括して私の意見を申し上げますが、大体の点は現行法でいいと思いますが、昨年特例を設けてかえましたけれども、その後いろいろ議論なつた問題は兼職の問題と立候補制限の問題が相当問題になつたと思います。私は兼職の場合はやはり今のような國会運営の状態から行きますと、昔のように地方議員を兼職することは事実上不可能であるというように見えますので、やはり兼職は許されぬ方がいいと思います。但し立候補する場合には当選したときに自然消滅するということにして、立候補の場合は兼職を持つておられる市町村議員あるいはその他の人、あるいは公務員でありましようとも憲法に與えられておりますところに立候補の自由というような点から言つても、そのまま認める。しかし当選したあかつきには必ず自然消滅であるというようにして、やめなければ立候補ができないという今日の特例あるいは選挙法の條項等は相当考慮する必要があるのじやないかと考えます。
  70. 生田和平

    生田委員長 この兼職禁止の中で衆議院または参議院と國または地方公共團体の公務員との兼職、これは私個人としては大分意見があるのですが、これを変更することは容易じやない大きな問題ですけれども、これはこのままのみ込んでおくか。そのへんの御意見はいかがでしよう。
  71. 千賀康治

    ○千賀委員 私はこの点は現行法を支持いたします。何ゆえといえば、落ちたら元通りでいい、出れたら新しくかわつて行くんだということだと、地方の公務員にしろその他まじめに仕事をやる人が少なくなつて、その選挙中心にしてそういう連中がざわついて来ますと、その生活は公費で負担しておきながら実にややこしくなつて、まあ相手にはならぬがというようなことがあればほんとうに有力な人は思いきつてそこでやめてしまつて候補しますけれども、まかり間違つたら元に戻ればいいということだと非常にこの間決心のつかぬ人でもひやかし半分にやつてみるという人が多くなつて、民衆は應接に、いとまがないと思います。それはむろん現行法でいいと思います。もつと大きな問題は役人がやめて衆議院に立つとか参議院その他の選挙に立つということは少くも半年は許すまいということで、前の議会の末尾で非常に深刻に問題になりました。この点はお隣におられる斎藤長老なども非常に議論をお持ちになつて、それはひどかろうというお話であつたのですが、衆議院意見といたしましては各派を通じましてぜひこれはやれ、少くとも六箇月間は役人は選挙に立つことができないような規定を設けてくれろということで、当時は地方制度委員会がその衝に当りまして、私は小委員会長として実は議会運営委員会の注文を受けまして、あつちへ走りこつちに走りしたものですが、結局は傘屋の小僧で骨折つただけで叱られて来たんです。それで、この方の空気、私はその後接触はいたしませんが、一体そちらの空気は近ごろどうなつているか。それを私はここで三浦部長から御説明を得たい。と同時に、その点が今提示せられている案件の一番の問題だと思いますが、まず御説明を承りたい。
  72. 生田和平

    生田委員長 速記をやめてください。     〔速記中止〕
  73. 生田和平

    生田委員長 速記を始めて……。
  74. 栗山長次郎

    ○栗山委員 第一の選挙事務関係者のところでございますが、三浦さんの御配慮で、これを立候補條件という建前で、こういう人は立候補の條件を欠く、実質は同じであつてもその表現を用いて行いました方が選挙権を認めないということよりも合理的であろう、まずその点についてはさように考えます。あと兼職禁止の点でありすが、今行われている兼職区禁止程度のことはぜひそうなければならぬというのが実情であろうと考えますが、今度は兼職禁止になつている人たちが立候補する場合に、その職を辞してしかる後に立候補するという現行規定についてでありますけれども、昨年選挙法改正の際意見の一致を見ましたこちらの方の方の御発言が少しかわつておりますが、私は昨年通りの根拠のもとに、また理論のもとに現行制度を存続すべきであると考える者の一人であります。それは千賀委員があげられましたように、浮腰になる、選挙をいささかもてあそぶ、と言うと言葉が過ぎるかもしれませんが、私の感じている通りの表現をもつてすれば、一部の人たちは選挙をもつて出世の段階であると考えている。選挙は多くすればするほど自分の立場が社会の中に強くなる。それを出世の段階とし、もつと極端に言えば職を得る一つの段階にするという考え方を持つている者さえあるのではないかと思われますので、いやしくも一つの公職を目指して立候補いたします以上は、彌余のことを顧みず、それにすべてを捧げるというその人間にとれば背水の陣を布いた考え、また批判する方からもそれがオール・オア・ナツシングだということであるべきではないかと、いささか政治理念的にさように考えます。今一方は、今回もおそらくこの委員会の御審議によつて選挙の公営という原則には変化がなかろう、むしろ公営の拡大の方面に向うであろうと思いますが、それも前回の議論の焦点であつたのでありますが、公営選挙であります以上は金の問題になるのであります。國の金がなるたけ有効に使われること。選挙を一つの段階と考えて多勢立つということであれば、それだけ費用がよけいかかる。眞剣な候補者の比較的選ばれたる自然的制限によつて数が減つて来るならば、それだけ國の金は有効に使われる。選挙公営という観点から見ていわゆる濫立をどうして防止するか。その濫立防止の方法があるいは憲法に触れるとかその他のむつかしい副次的な問題を惹起するのでありますけれども、公営という観点に主力をおいて、それをどうして有効にするかという功利的な考えではありますが、その考えからすれば濫立を防止し得る事柄で、すでに既成の事実として受入れられておることに手を触れたくない。かように考えますゆえんから、兼職禁止は今のままでよろしい、兼職禁止にあたる者が立候補する場合には、その職を辞することを要請しておる現行法がよろしい、かように考える者であります。
  75. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は前の意見を少し修正しておきたい。兼職禁止のなかで國会議員との兼職禁止はもちろんの当然だと思います。しかし市町村議員、あるいは小さな市会議員等、それからその他の公務員との兼職はある程度許すべきだと私は考えます。そうせなければ職業を持つております人々が議員になれないということになつて参ります。但しその村の吏員がその村の村会議員になるということはいろいろの関係上困るが、隣の村に勤めておる吏員が自分の郷里の村会議員になることは何らの不都合はないと考えますから、そういう点については、もつとこまかく議論をして、妥当な結論を見出す必要があるのじやないかと考えます。それと先ほど申し上げました立候補の場合に、勇敢に職を辞して立候補すべきだということは非常によい言葉ではございますが、これは当選してやめるということでよいのではないかと私は考えます。もしそれをほんとうにいかぬというならば、昨年の議会で相当問題になりました公務員をやめてから一年くらいせなければ立候補できぬという制限をつけなければならぬという議論も生まれて来ますが、そうした議論に対してまた反対の意見も出て来ます。すでに知事その他の人々の中には、来年の参議院選挙をもうすでにやつておるという人々もあるように聞く、これは利害得失をいろいろな角度から批判すれば議論は出て来ようと思いますが、私は國会議員に関する限り、もちろん兼職は事実上できませんから禁止する必要はありますが、小さな市町村吏員等その他の公務員関係との兼職は、ある程度許してやることが妥当ではないかと存じます。
  76. 三浦義男

    三浦参事 ただいまの問題を御審議になります場合に御参考かと思いまして、先ほど申しました八十六ページのところをちよつとごらん願いたい。ここで分析いたしまして、各場合につきまして立候補の問題を取上げておいたのでありますが、これは八十六ページの四のところに、「公務員その他の者の立候補に対する制限」ということがありますが、第一は「公務員の衆議院議員へ立候補の場合、」これは國または地方公共團体の公務員については禁止をされる、それは先般改正されました衆議院選挙法改正によつてさようなことになるわけであります。但しこの場合に内閣総理大臣その他の國務大臣、内閣官房長官各省次官及び別に法律で定めた場合を除く、これは國会法の三十九條との関係でさようなことになるわけであります。それから公務員の参議院議員へ立候補の場合はどうなるかと申しますと、これは國または地方公共團体関係では一應自由で当選後に退職すればよい、これは兼職禁止の規定がございませんので、さようなことになりますが、しかし先ほど来申し上げましたように、國家公務員法の百二條の二項の規定に〔職員は、公選のよる公職の候補者となることができない。〕かような規定がありますので、國家公務員の中で特別職は別問題といたしまして、一般職に属する國家公務員は、その條項によりまして、禁止―禁止と申しますのは、立候補する場合にやめなければならぬ。当選して後にやめるということでなく、やめて後に立候補しなければならぬということになるわけであります。次は公務員の地方公共團体議会議員及び長へ立候補する場合でありますが、この場合は大体國家公務員中の衆議院議員参議院議員につきましては自由でありまして、当選後に退職すればよい、ただ先ほど申し上げましたように國家公務員法の百二條の二項の規定によりまして、一般職に属する國家公務員はやめて後に立候補しなければならない。現在は地方國家公務員法というものが制定されておりませんので、同じ公務員でありましても、國家公務員法の適用関係におきまして、いろいろな違いが出て参りますし、なおまた衆議院議員選挙法の六十七條の五、六項により國または地方公共團体の公務員と兼職を禁止されておるものにも立候補制限の規定によりましてかような相違が出て来るわけであります。それから現在地方公共團体の公務員である者は、地方公務員法ができておりませんので、この人たちが地方公共團体議会議員及び長へ立候補する場合におきましては、兼職禁止の職にある者の立候補制限の規定がありませんので、要するに当選した後に兼職が禁止されるというだけの制限しか受けませんから、立候補の場合は現職のままそれができて、当選後に退職すればよい、かようなことになるわけであります。それから請負業者等の地方公共團体の長への立候補の場合も同じことでありますが、さらに教育委員会委員に立候補いたします場合においても、同様に当選した後にやめればよい、かような結果になるのであります。ここらに共通法的に考えました場合に、取扱いにそれぞれの相違が出て参りますので、この点については、かりに一本で行くという場合においては、この原則をどうするかということを御審議願えればたいへんに好都合ではないか、かように考えております。
  77. 千賀康治

    ○千賀委員 ただいまのようなことは、私は不勉強であつて、気がつかなかつたのですが、そういう原因の生じたのはどこから一体できたのでしよう。衆議院の方は用意周到に検討審議をやつたから現行法のようになり、参議院は放つておいたからそうなつたのか、全然その意思はなくて、審議はしたけれども、そういう取扱いになつたのか、その間の事情を御存じだつたらお聞かせ願いたい。
  78. 三浦義男

    三浦参事 その点につきましては、衆議院選挙法だけの改正をこの前いたしましたので、一應参議院の問題につきましても考えられたわけではありますが、改正衆議院選挙法の範囲に限定いたしましたので、さような結果が生じたのであります。
  79. 淺沼稻次郎

    ○淺沼委員 この選挙事務所関係者、それから特定の在職公務員だけ別にわけておるのは、どういうわけでしよう。こういうのは一切兼職禁止の項目の中に入つてしまつて、今兼職するものだけが妥当である。一切あとはできないということになれば、特別にこういうものはあげなくてもいい結果になるのではないですか。  それからもう一つお伺いしたいのは、法律だから、ここに使つてあるのはやむを得ないと思いますが、各省次官、内閣総理大臣、その他の國務大臣、内閣官房長官、という言葉が使われているが、各省次官は、國会法では政務次官に読みかえるということになつておる。しかしそれも政務次官法がなくなつておりまするから、実際は今は政務次官を兼職として置いてあることが妥当であるかどうかということも残つている。私はここで議論をしようとは思いませんが、やはり各省次官の中には読みかえるという意味の各省次官であるか、それともここにあるように事務次官も入つておるか、やはり政務次官という意味に明確にしておいた方がいいのではないか、そういう気がしました。それからもう一つは兼職の問題で國家公務員というのは、ほとんど兼職はできなくなつておるのでありますが、國家の意思に従つて、その仕事をやつている部分の中にも、單なる労務の提供者と、自分みずからの意思を國家の意思としてやつているものとの間にやはり二つのものがあると思うのでありますが、そういう場合においては自然單なる労務の提供者は、國家の意思を代表して仕事をしているというものよりも、労務の提供者であるから、それらの者が一つの自治團体に住まつている場合は人民の代表と認められてしかるべきだと思います。その点は國家公務員法の改正で労務提供者までも一慨に公務員という資格の中に入れて非常に無理な点があろうと思います。自然私はそういうような取扱いにしていいのではなかろうかと考えるわけでありまして、國家公務員という資格全体から言つて議論すればいろいろある。衆議院議員を兼ねるということについては議論がありまするけれども、それは議論はいたしませんけれども、地方自治体の議員との兼任ということは当然考えられてしかるべきではないかと思います。  もう一つは、教職員の問題、それから専売公社、さらには國有鉄道の従業員の問題、専売公社の関係においては、たしかこれは兼任ができることになつておると思いますが、教職員の問題と、國有鉄道の関係は今回の任期中延ばすことになつておると思う。従つてこれらの問題も先ほど私が申し上げました通りに、單なる労務の提供者である場合におきましては、問題ではないのでありまして、いわゆる職員と称する場合の人は、当然兼任ができる。國有鉄道の関係において、またさらに教職員の関係においては予算に関係がない場合においては当然私は兼務してしかるべきだと思うのでありまして、現在においても教育長のある場所においては教員はその兼務ができないという結果になつておるようであります。しかし事実市町村においては兼務ができるという形がとられておるようであります。そういうような意味合いにおきまして、やはり身分、あるいは法令審議等の関係において、切り離せる場合においては兼職を許してもいい、そういうようなものをつくるべきじやないかと思います。
  80. 三浦義男

    三浦参事 ただいま浅沼さんからお話がありました公務員と被選挙権の一と二にあげておる点は、廣い意味においては國または地方公共團体の公務員も入るかと思つております。従つて特別に取上げる問題はないかと思います。また現在の選挙法が特に別々に上げてありますので、便宜選挙法を分析いたしまして、ここに研究事項として書いてございますので、上げたわけであります。ただ万一の場合におきましては、区域内で被選挙権がない、現行法によりますとかようなことになつておりますので、これが一般的に地方公共團体の公務員が、選挙権がないということとは多少別個の関係にあるかと考えます。それから特定在職公務員、裁判官その他につきましては、お説の通りであろうと思います。ただこの場合におきましては問題となります点は、八十六ページに書いてございますところで、先ほど御説明申し上げました通りに、いろいろ適用関係に相違が出て参りますし、それから公務員の範囲を大体どの程度まで公務員というかという点がいろいろ問題があるわけでありまして、お説の通り現在の公務員法におきましては、労務提供者は最初特別職になつておりましたが、そのわくから省きましたので、一般職に属する公務員ということになります。そうなりますと、法律上の解釈といたしましては、やはり労務提供者であつても國家公務員という範疇に入りますので、衆議院に立候補いたします場合にはそれをやめて立候補しなければならぬという関係になるわけであります。それらのことを実質的に考えまして、取捨選択し、公務員法の範囲をどうするかということは、確かに一つの研究問題であろうと思います。従いまして研究事項のところにもその点を二十四ページの二のところに触れておきましたように、かりに立候補制限規定の存続した場合として公務員の範囲を具体的に明文化することができないかということが研究問題であろうと考えております。  それから教育委員につきましては、これは選挙法改正の場合にここまで取上げるかどうかという問題は議論があると思いますが、この場合は立候補の場合に直接いろいろの点において密接な関係がありますので、取上げておいたのでありますが、教育委員につきましては、暫定的に兼職を認めるような措置がとられておりますが、衆議院選挙の場合におきましてはさようなものがありませんので、そこに取扱いの相違が出て来ることになるかと考えるわけでございます。
  81. 栗山長次郎

    ○栗山委員 公務員と地方議会議員の兼任、この点について淺沼委員の言われました点、もつと掘下げて研究する必要があることは同感でありますが、お話の中にあげられました教職員と地方議会議員の兼職の点、これには長所短所があつて、現状においては観察認定によつて段はつくでありましようが、私どもの観察するところでは長所としては市町村の運営には教育という問題が非常に大きな比重を占めておるのだから、教職員がその市町村政にかかわるということに長所があるように思いますが、教職員者としいはなるべく被教育者に時間的にも、また他面的にもよく接して訓育教導の任をまつとうするという、より以上の使命があるのでありますが、かりに市町村議会議員に教職員がなりますと、今の市町村会等における会議の開催は相当頻繁になつており、時間も多く費しておるので、それだけ教職者は自分の尊い職場を離れなければならぬ。教育がそれだけ等閑に附せられるということを考えますと、その失うところの方が大きいように思いますので、教職員の場合だけを特に取上げて考えました場合に、その兼職は他に社会的にその方が有利だという理由がない限りは、私は兼職を禁ずる方向に向つて研究を進めた方がよかろうと考えるものであります。
  82. 千賀康治

    ○千賀委員 大体私も栗山君と同じく、この問題はあくまで厳格を要求するのでございます。というのは地方議会と言いましても、たとえば縣会等はもちろんでありますが、市会等におきましても現今の議員の取扱いは、これが一つのビジネスと同時に、収入の点もなるべく一般官公吏のごとく一般標準のペースを支給せよということが目標になつておりまして、これが一つのもととなつて、町村の至るまで従前とは違いましてその会の議員はたいへんに手当の額が増加するとともに、やはり専門職業のごとく歳費のほかに今日は何の委員会であるとかいうようなことで、それらを合計いたしますと、相当な収入が支給してある。またそのために出勤を要すべき時間も相当割当ててあつて、非常に専門業的色彩を濃厚にしつつあるのであります。そこで教員をやつておる者が議員になつてもいいじやないかということも一應考えられますけれども、公務員といたしましては、やはりわれわれが検討した基本人権の擁護されるだけのペースをもらつておるはずでありまして、かたがた議員といたしましても、これに準ずるようになるべくこれを追い越すように、いろいろな方法で収入が考えられて、専門的な色彩を濃厚にしておりまする今日、両方やることは、両方完全に勤め上げることは、まつたく不可能のなるのであります。極端な例なら、たとえば長崎縣の対島におる教員が長崎縣の縣会議員なつたらどうかというと、縣会の開会中はほとんど長崎に来てしまつて、向うの学校の事務は放たらかしになり、非常に問題を起こしているというおこことの陳情を伺つたことがあるくらいでありますけれども、これなどは少い例といたしましても、先ほど申しました現象は全國至るところに現今見つつあるので、これはやはり収入の点で以前とは違つた画期的な措置を國家がやつており、また市町村もこれにならつておる現在といたしましては、やはり厳格に差をつけることは決して私は悪くないと考えておるのであります。片方與えられたところに専心やつてもらつてこそ、初めて分業の妙味を発揮できるのだと思つております。この線に沿つて研究されんことを希望いたします。
  83. 淺沼稻次郎

    ○淺沼委員 私の申し上げた点で少し誤解の点があろうかと思いますので、申し上げておきたい。都道附縣会議員、これは六月末をもつて兼任ができなくなつておりまして、そのことを申し上げておるのではないのであります。要するに教育廳ができまして教育予算を審議する場合においては、それに関係ある教員が兼職をして議員となることはいけないという建前から、そういう人たちは全部職を退くか、あるいは一面においては議員として残るか、それでなければ教員として残るか、どつらかを選ぶわけであります。私の申し上げているのは主として村のことを申し上げておるのであります。民主主義を徹底して行く場合においては、何といつて地方自治体、殊に村が中心でなければならぬと思うのであります。國家公務員の性格の中には、國に使われている性格と、もう一つは自分から國を治める当事者としての性格があろうと思います。その当事者としての性格を何ら自分が表現できないで、單なる投票だけにしか現われて来ないで、それ以外のことは一切國に使われているという形だけが現われて来る、これでは完全な民治國家の形体にはならぬと思う。やはり自分が一個の当事者であるという意思を單なる投票以外に現わして行くという形が現れてよいと思うのであります。そういう場合においては、自然村会議員になれる、町会議員になれるということはあり得ることでありまして、そういう関係から、予算に関係がない、労務の提供者という意味で兼任を認めていいのじやないかという議論を申し上げているのであります。殊に村でいろいろ費用が殖えたり、仕事が殖えたりすると言われますが、村でたびたび村会が開かれることもやむを得ないと思いますし、またそういうものに自分の村をよくするという当事者たちの意識から、代表して出て来てやるという形が現われて来て然るべきだとおもうのでありまして、それが行われなければ完全なる民治國家にはなれないと思います。そういう意味において、もう少し堀り下げて、私どもは單に教育の方のやることを挟めて、片方で仕事をするという形が現われてはいけないと思いますが、両立できる場面においては両立させて行く、そういう部面を考えるべきであると思つて発言したのであります。議員と兼職の困難である区会議員、縣会議員、都会議員というような例を引いたのではないのでありまして、村の学校の校長が村会議員を兼ねて月一ぺんの村会に出て、自分の村をよくするために意見を述べるということだけはやり得るという、そういう面を申し上げているのでありまして、問題をきめるときには全部堀り下げてきめていただきたいということを申し上げておきます。
  84. 生田和平

    生田委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時から、この兼職禁止の問題について、もしきまればきめたいと思います。  本日はこれで散会いたします。     午後四時四十分散会