○木島參考人
日本教職員組合の木島であります。前お三人におつしや
つたこととなるだけ重複をしないように、しかもできるだけ客観的な立場から申し上げたいと思うのであります。
資料が参
つておるだろうと思いますから、それを御
参考に願います。
最初に再
計算のことについて申し上げたいのでありますが、再
計算の條項が二百六十五号の第十條に入
つておりますが、この條項、それからその
実施細目であるところの通牒も、これはこの
法律の
経過あるいは趣旨をま
つたく無視したところのものである。官僚政治の典型的悪例であると断ぜざるを得ないと、
結論として考えるわけであります。この
意味において、國権の最高機関たる
國会において、その
責任においてこれを抹殺していただきたい、これを最初に申し上げたいと思うのであります。その
理由の一、二を申し上げたいと思うのでありますが、二百六十五号の原案作成者であるところの
人事院も、これは淺井さんがこの條文についてはあずかり知らぬと弁明しておられるのであります。また再
計算がなされて多くの不満が
公務員の中にわき起
つたころに、社会党においては
実施本部に嚴重な抗議を申し込まれたと私は新聞で見ております。これはここにおいでになります赤松先生もおいでになられたそうでありますが、赤松先生はその審議をなさ
つた方なんです。その方がこの
実施本部に抗議を申し込まれたということは、そのことから察しても、これは立法の趣旨に反したものであると想像できるのであります。新
給與実施本部は知らないと言
つておりますが、少くとも今井
給與局長は
関係があ
つたはずだと私は当時の
経過からこれを認めざるを得ないと思うのであります。しかもその條項を最大限度に幅を廣めて解釈し、あるいは法を逸脱して適用をして、既得権を大幅に侵害しておるということは、ま
つたく立法の趣旨に相反したるところのものであります。官僚独善の現われであり、
國会無視の暴挙と言わざるを得ないのであります。この
結論からしても、この條文はすみやかに
國会の権威において、
責任において抹殺していただきたいと思うのであります。さらに立法の
経過から申し上げましても、私はこの條文は不要であり、抹殺さるべきものであると考えるのであります。六千三百七円
ベースをきめるときに、二十三年度分の追加予算として二百六十五億が計上されたのであります。これを法三十條ですか、一月一日から施行するが、現金を十二月一日から支給する
関係上、これをいかにするかということが、あの当時ずいぶん愼重な審議がなされたはずであります。そうしてその結果、一月、二月を一七・五%差引くということを、
給與法の中では前例がないと思われるような方法によ
つてなされた。これは十二月一日現在の
給與をそのまま切りかえたる予算であ
つたということを、皆様がおきめ願
つたものだと思います。その
意味から言うならば、二百六十五億の予算で間に合うものを、なぜ再
計算しなければならないか。ここに私はこの條文が抹消さるベきものであると断ぜざるを得ないのであります。このことは今井
給與局長も、先般
人事院で行われましたところの
給與問題審理会においても、予算が余ると言
つた。切りかえにおいては予算を余す必要は一つもないわけなのであります。それから立法の趣旨、あるいは
実施本部の意図に対して、再
計算によ
つて各官廳間の、あるいは各府縣ごとのアンバランスを修正しようというところの意思があ
つたと、もし考えるならば、これはまたきわめて不可解なことであると言わざるを得ないのであります。なぜならば、二十三年一月一日を起点にして再
計算することによ
つて、アンバランスが直るというならば、すなわちそれは二十三年一月一日以前が、より均衡のとれないところの
給與であ
つたという前提がなければ、この論は進められないのであります。しかしながらこれはま
つたくこれを証明するに足るところの
資料はあるはずがないのであります。かつ
昭和二十三年度の昇給においてこそ、各官廳、及び各府縣は、そのアンバランスを修正してお
つたものであります。これをわれわれの
日本教職員組合の例にと
つて、各府縣の
最低と最高を、
昭和二十二年の十二月二十日と、それから三千七百円になりました
昭和二十三年六月一日の
給與で比較するならば、小学校においては、二十二年十二月二十日では、
最低を一〇〇としたときに最高が一七七、すなわち七割七分の開きがあ
つたのであります。これが二十三年六月一日には一四四、四割四分に下
つておるわけです。すなわちアンバランスがなくな
つておる。これを中学校で言うならば二十二年十二月二十日には最高が一八四に対して、二十三年六月一日は一三一であります。ほとんど非常に大きなアンバランスをなくしておるわけであります。これらの
意味から言いましても、不均衡是正のために、この再
計算の條文を入れたということもまた考えられるのであります。これらの
意味から言いまして、立法の趣旨、あるいは
経過、あるいは予算面から言いましても、この再
計算という言葉をこの十條の中に入れること、このものの
意味がま
つたくあり得ないと断じ、皆様の
責任においてこの條文をただちに抹殺していただきたいと思うのであります。
次に再
計算による既得権の大幅の侵害は、法二百六十五号に再
計算の條項を挿入したこととともに、再
計算の
実施細目であるところの通牒が、非常にむりに法の範囲を拡大しておること、及び法を逸脱して不利益を増大していることにあ
つたのであります。そのためにわれわれの既得権が大幅に侵害されたと思うのである。これまたわれわれは次の
理由のもとに申述べるのでありますけれども、かかる通牒はただちに取消すように皆様にお願いしたいのであります。その
理由といたしまして、法二百六十五号十條の再
計算は、法四十六号によ
つて再
計算することを規定しておるわけであります。この法四十六号は、
昭和二十三年一月一日からの
給與を規定しておるものでありまして、二十二年には効力が及んでおらないものであります。ところが再
計算の
実施細目には、発令日のいかんを問わず、昇給した金額の最初の支給が
昭和二十三年一月一日以降のものは排除される発令日でなく、支給日をも
つて排除するということなのであります。このことは
俸給の法的効力の発生の
基礎は、正式辞令の発令日ではなくして、支給日であるということなのであります。これは明らかに法を逸脱したところの通牒といわざるを得ないのであります。たとえばわれわれの辞令にしましても、すべて正式発令のこの期日をも
つて法的根拠にな
つておるわけであります。これを支給日をも
つてするということは、明らかに法を逸脱するものであると考えられるわけであります。また二百六十五号十四條の
俸給の支給に関しては、官吏
俸給令の例によるとあるわけであります。この官吏
俸給令の第三條に、
俸給は新任、増俸、減俸とも、すべて発令の翌日より
計算すると書いてありますので、それを
昭和二十二年十二月三十一日附昇給した者は、当然
昭和二十三年一月一日以降から支給を受けるわけであります。ところがこれを二十二年中の発令は排除されるという、すなわち法四十六号が
昭和二十二年に効力の及ばないにもかかわらず、その二十二年の
給與を排除するということは、これまた明らかに法を逸脱するものであるのであります。その
意味においてこの通牒はただちに取消さるべきものであると考えるのであります。また法四十六号は、二十三年五月三十一日に公布施行されたものであります。從
つて昭和二十三年一月一日から五月三十一日までの昇給までも、しかも発令日を二十二年にさかのぼ
つて正式に発令したものまでも排除するということは、これもまた立法の趣旨に相反する。ま
つたく理不盡というほかはないと考えるのであります。かかる
理由から考えましても、
國会はただちにこの通牒の無効であるという、取消しの
手続をと
つていただきたいとお願いするのであります。
第三番目に、再
計算は直接
國家公務員についてなされるものでありますけれども、法二百六十五号と地方
公務員、あるいは教育
公務員との
関係が明確でないために、不当に利益が侵害されておる。この点に関してこの
関係を明確にしていただきたいと思うのであります。先般の
人事院の公開審理会において今井
給與局長は、地方
公務員の場合、再
計算の趣旨は、オーソライズされないものを排除することにあるから、地方公共團体の場合、知事がオーソライズした場合は、地方
公務員の昇給は排除し得るかどうか疑問である、こう言
つておるわけであります。にもかかわらず今自治労の
岡田さんのおつしや
つた通り、きわめて多くの再
計算によ
つて既得権が排除されておる。これはどこにあるかというならば、地方自治法施行規則の中に、地方
公務員の
給與は
國家公務員の
給與の例によるという規則がある。これを形式的に押しつけておるがゆえであります。しかしながらこれは例によるということは、決して形式的に押しつけるべきものでないと思う。しかるにもかかわらず、この例によるという言葉の
法律の解釈が非常に不確実のために、総理廳自治課あるいは地方財政
委員会等のいろいろのことが地方に及ぼして、その結果再
計算をなされなければならない。そのために地方自治の本旨にもとるような数々のことが起
つて來るのではなかろうか、これはまさに私は中央官廳の横暴と断ぜざるを得ないと思うのであります。また教育
公務員の場合を申しましても、教育
公務員、すなわち教員は、二十三年七月一日まではこれは身分から申しまして官吏でありまして、七月一日から二十四年一月十二日までは
國家公務員なのであります。そうして教育
公務員法特例法が出るに從
つて、すなわち二十四年二月十二日から地方
公務員に
なつた。かく非常にめまぐるしく身分が変化しておる。ところが
給與の
責任者は、教育
委員会ができました二十三年十一月一日をも
つて、それ以前は知事にあり、それ以後は教育
委員会にあ
つたわけであります。この教員の身分と
給與の
責任者の変化したことと、それからその時間的なずれであります。その間が再
計算の解釈を非常に困難にして、現在われわれが非常に苦しんでおるという
状態であります。今井
給與局長は、教員は
昭和二十三年十二月一日当時
國家公務員であ
つたから、再
計算は当然なさるべきであると、再
計算をされる方をそう規定しておりますが、再
計算をする方は、教育
委員会である、その教育
委員会は、教育
委員会と
実施本部の権限と
責任の
関係に多くの疑問があると言
つておるのであります。すなわちされる方はされなければならないが、する方はしてよいのか、しなくてもよいのかわからない。ここに非常に不明確な、もやもやしたものが存在するわけであります。元來教育という仕事は、地方の固有事務であります。これは教育
委員会法の精神でもあるのであります。このことをまた
給與のことから申しましても、二千九百二十円に
なつたから、
法律第四十六号によ
つて、
労働の報酬として受けることにな
つております。それ以前は官吏としての身分云々ということであ
つたと思うのでありますが、にもかかわらず、
國家公務員であるとするならば、われわれは当然國家から
俸給をその
労働の報酬として支給されなければならないはずであります。にもかかわらず新制高等学校の教員は、一銭も國家からは
給與を受けておりません。かかる
國家公務員が存在するかという問題であります。あるいは小学校、中学校においても
俸給を支拂うのは縣であります。國庫は半額を補助しておるだけであります。当然これを
國家公務員にしたということにおいて、すでに間違いがある。これを二十三年七月一日にさかのぼ
つて、今から教員は地方
公務員であるとするならば、する方もされる方も、明確に
法律的な筋道が立
つて、ここに再
計算の問題が解決するわけなのであります。これもまた
國家公務員法、あるいは法第二百六十五号の
人事院規則その他によ
つてできるわけでありますから、この点は形式にとらわれず、実質にふさわしいところの取扱いをされるようにお願いしたいと思うのであります。
時間がございませんので、なお四十八時間制その他の
勤務條件について
簡單に申し上げます。先ほどから多くの方が申されましたように、四十八時間制については申すまでもなく
労働強化である。それがただちに行政整理に連なるものであ
つて、われわれのま
つたく
反対するところであります。ことに教員の場合は、教員の特殊性にかんがみて、四十八時間は一律にやれないけれども、個人々々にはや
つてもよいとは言
つておりますけれども、この四十八時間制の関連において、教員の定数を四月から削減することにな
つております。そのために一人
当りの授業時間を多くするとか、あるいは学級数を減じなければならないとか、あるいは一学級の兒童、生徒をよけいにして受持たねばならぬということが起
つて参りまして、この結果当然教育の
低下ということは申すに及ばないことであります。もしこれが
人事院指令の中に言
つておるがごとく、内閣総理大臣あて
連合國最高司令官の
書簡の趣旨に即應したものであると言
つておるわけでありますが、これについてもわれわれは便乗しておるのではなかろうかと思うのでありますが、そうであ
つたにしても、この
勤務時間の増加に伴うところの
賃金の増加は、当然考えられなければならないのに対して、なされておらないということは、われわれのま
つたく不満とするところなのであります。
公務員法によ
つて與えられた範囲内において不利益の面だけは常に早くいたしますが、利益の面の着手がきわめて遅いということは、どうしても言えると思うのであります。これらのことは最近出ましたところの
國家公務員法に基く
職員の意に反する降任及び任免に関する
人事院指令というようなことについても、たとえば
人事院が六千三百円のときに勧告したところの、優秀なる
政府職員を誘致、確保し、あるいは能率を増進させることを得せしめるということが書かれておるにもかかわらず、それらの施策が何らなされておらないということが言えると思うのであります。また
法律二百六十五号の中においても、第
二條に
人事院の権限が列挙してあります。これらを見ましても、その中のほとんどがいまだなされておりません。
資料の七ページにこまかく書いておきましたが、その第
二條は、「
人事院は、この
法律の施行に関し、左に掲げる権限を有する。」第一は「この
法律の
実施及びその技術的解釈に必要な
人事院規則を制定し、及び
人事院指令を発すること」とありますが、審議会が開かれて一箇月になるにもかかわらず、いまだその
結論を出しておらぬ、あるいは第二番目の「第九條に規定する
俸給表の適用範囲を決定すること」とありますが、現行
職階制の不合理は
実施本部すら初めから認めておることである。これらについて何ら手を打たれておらないということ、第三番目には「
職員の
給與額を研究して、その適当と認める改訂を
國会及び内閣に勧告すること」云々とありますが、これについても
國家公務員法第二十八條にあるごとく、
人事院は毎年、少くとも一回、
俸給表が適当であるかどうかについて
國会及び内閣に同時に報告しなければならない。
給與を決定する諸
條件の変化により、
俸給表に定める
給與を百分の五以上増減する必要が生じたと認めたときは、
國会及び内閣に勧告することにな
つています。しかもこの六千三百円は、昨年の七月に
調査されたものであり、当然五%増減すべき時期がすでに來でおるにもかかわらず、何らもだ
調査に着手されておらないという点、あるいは第四番目の「昇給の基準に関し
人事院規則を制定し、及び
人事院指令を発すること」とありますが、法第四十六号によるところの昇給、昇格のこととは、いわゆる
政令四百一号でありますが、これはきわめて悪法であることは、皆さんすでに御存じのことであると思います。その惡法であることは、
人事院も認めながら、いまだに示さていない、あるいは五番目の「
勤務地手当の支給地域及び支給割合の適正な改訂につき」云々とあることについても、法第二百六十五号、第十七條によ
つて、現在の不合理な地域がそのまますえ置きにな
つてお
つて、それらの改訂がいまだになされていない、あるいは研究がなされておるかどうかわかりませんが、聞いておらないということ、それから
人事院の権限においてもいまだなされねばならぬことがなされておらない。そうしてわれわれの不利益な点だけが多く取上げられておるように思うところに、われわれの大きな不満があるわけであります。それで
國会にお願いいたしたいことは、この二百六十五号第三十條に「
國会は、
給與の額又は割合の改訂が必要であるかどうかを決定するために、この
法律の制定又は改正の
基礎とされた
経済的諸要素の変化を考慮して、
人事院の行
つた調査に基き、定期的に
給與の額及び割合の檢討を行うものとする。」と
國会がなすべきことが載
つておるわけであります。このこと及びこの趣旨に沿つかこれらのことがこの
法律の中にあることだけでも、せめて的確になされるように、皆様から督励し、あるいは監視していただきたいと思うのであります。なおこれらの
法律の中には、あるいは罰則の適用と言い、あるいはいかなる
給與も、
法律または
人事院規則に基かず支給されないというようなこと、その他多くの矛盾を含んでおることについても十分今後お考え願いたいと思います。
以上日教組の態度あるいは意思を申し述べたのでありますが、十分御斟酌願いまして、われわれが喜んで仕事に励むことのできますように、
給與あるいは
勤務條件について、特に御努力を願いたいと思うのであります。