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始関説明員 ただいまご
質問のございました最近の
鉄鋼の
生産、
需給の
関係、それから補償金の
廃止の問題を
中心にいたしまして、
政策上の問題につきまして概略御
説明を申し
上げます。
資料を
準備いたしましてお配りしてありますが、その一番上の表をごらんいただきますと、最近の
生産の実績がございますが、普通鋼々材という欄に、四月から六月までの
生産実績が出ております。四月が十四万四千トン、五月が十五万三千トン、六月が十五万八千トンでございまして、七月も六月にほぼ近い実績でございます。これによ
つてわかりますことは、いわゆる百八十万トン
計画はすでに五月、六月においてその
ペースに到達していると言うことができると思うのであります。なおその結果として、この裏の二枚目に普通鋼々材の在庫等の表がございますが、在庫はほぼ一箇月半ばかりでございまして、非常に多すぎるというほどではございませんが、在庫も相当ふえまして、國内における
需給の
関係もだんだん樂にな
つて参りました。さような事実と、それから國際的な鉄の
生産がだんだん順調にな
つて参りまして、アメリカはもとよりでございますが、日本とドイツを徐きましては、ヨーロツパの各國でも、鉄の
生産は大体戰前のレベルに到達しておるというような
状況にな
つて参りましたために、終戰後日本の
鉄鋼業にはいろいろな弱点、欠陷があ
つたわけでございますけれども、そういうものに対して今日までは世間が大目に見ておりましたが、こういうような
生産の回復と
需給関係の好調によりまして、
鉄鋼業に対していろいろな
意味の批判が加えられるようにな
つて参
つたと存じます。その批判の
一つの大きい部分がいわゆる補給金の問題でございます。それからもう
一つの点は、アメリカの援助による
石炭、鉄砿石の
輸入の問題でございまして、この二つの点から、日本の
鉄鋼業に対して、相当熾烈な批判の声が起
つているというのが、ただいまの日本の
鉄鋼業の
状況であろうと存じます。
最初に補給金の問題でございます。これは大分前からの問題でございまして、実は本年の四月の予算編成の際にも、ある程度補給金を削減して、そのかわりに
消費者
價格を若干
上げることが適当ではなかろうかという
意見もあ
つたのでございますが、当時は都合によ
つて実現するに至りませんでした。
補給金がどの程度いるかということでございますが、これはお配りした表の四枚目にございます。これをごらんいただきますと、補給金の種類が三つございまして、第一に
輸入補給金が百四十七億円ばかりでございます。第二が
鉄鋼向け
石炭の値引きでございまして、これがトン当り三千円、総額で百六十五億円でございます。第三がいわゆる狭義におかる
鉄鋼の補給金でございまして、これは製鋼用銑、鋳物用銑、半製品、鋼材、鋳鉄管等で、これが三百八十六億、全部を合計いたしまして、大体七百億前後の補給金が今日出ているわけでございます。これは予算的に申しました
説明でございますが、なおこれを鋼材のトン当りについて申し
上げてみますと、一番標準でありまする棒鋼のベース物のただいまの販賣
價格は大体一万円でございます。正確に申しますと一万百二十円でございますが、各種の補給金を全部やめますと、三万円ちよつと上になるわけでございます。從いまして現在一万円で賣
つておるものを、三万円内外のところまで値
上げしなければならぬ。額で申しますと、一万円の場合において二万円の金額を適当に処理しなければならぬということになるわけでございます。そこでただいま申しましたように、補給金の予算の絶対額が非常に大きいばかりでなく、トン当りについて出されておりする幅も相当に大きいわけでございますので、これをはずさなければならないという根本的な点はもちろんでございますが、そう一挙にはずしてもうまく行かぬだろうからということからいたしまして、大点三回ないしは四回にわけて
廃止するということに相
なつた次第でございます。そして九月の五日ごろにその第一回の分がはずされるだろうと思いますが、第一回の分としては
輸入補給金のうちの一部分、つまり
石炭について出されておりまする分、それから
鉄鋼向け
石炭の値引額、この二つでございまして、予算の額としては百四十億ないし百五十億というものが、本年度分について削減されることに
なつた次第でございます。
この百四、五十億のものが銑鉄のトン当り單價あるいは鋼材のトレ当り單價に、どういう
影響があるかという点を申し
上げてみますと、鋼材につきましては、大体
生産者
價格に対して二割から二割五分程度が上り、また
消費者
價格に対しましては大体五割内外上る。つまりただいまの鋼材の
消費者
價格を一〇〇といたしますと、
生産者
價格は一八〇ぐらいにな
つておりますので、
生産者
價格に対しては二割ないし二割五分、
消費者
價格に対しては五割内外が、この第一次の
措置によ
つて上
つて参るという
関係に相成ります。それから銑鉄につきましては、銑鉄の
消費者
價格は
生産者
價格に対して非常に低率で、
生産者
價格が一万三、四千円で販賣
價格が一万三千六百円でございますので、こちらの方は販賣
価格に対する値上り率がやや大きくて、一二〇%程度の値上りになるという
関係になり
つております。
こういうふうに値上りをいたしました結果輸出がどうなるか、あるいは國内で賣れるかどうかという問題が、非常に大きい問題になると思うのでありますが、輸出につきましては、もともといわゆる
生産者
價格で輸出をいたしてお
つたのでありまして、それが二割程度上りましても、いわゆるフロア・プライスとの
関係、あるいは実際の
取引のドル
價格との
関係等から申しまして、それほどに高い
價格ではないと
考えられます。ただ既契約のものにつきましては、若干輸出の奬励という
意味合いからいたしまして、何とか
考えてやる必要があるだろうという問題がございますが、この点はいわゆる
價格差益の徴收の免除の問題とからみ合いまして、ただいま
安本、物價廳、
大藏省等の間で審議を進めておる次第でございます。なおただいま申しました輸出の既契約分の問題につきましては、直接鋼材のほかに機械あるいに造船というようなものも、同時に問題にな
つておる次第でございます。それからこういうようにして
價格が上りまして、それが國内でさばかれるだろうか、あるいはこれを使う機械工業あるいは造船業というような
方面に、どういう
影響があるだろうかという点でございますが、第一に申し
上げなければならない点は、ただいまの鉄の
消費者
價格は、補給金が出ている結果といたしまして、国際的には非常に低い
價格にな
つております。たとえば銑鉄はアメリカの四十ドルないし四十五ドルに対しまして日本では十ドル、鋼材のたとえば棒鋼について申しますと、アメリカでは七十五ドルでございますが、日本では一万円、つまり三十五ドルぐらいになるかと思いますが、非常に割安な
價格でございます。從いまして、こういう若干の値上りはございましても、二次、三次と次の段階、あるいは次の次の段会の場合は別といたしまして、今度五割程度値段が上りましても、國際的にはまだ安いという
関係にな
つていると思います。もしこの若干値上りをした
鉄鋼を使
つて、造船業や機械工業が成り立たぬというものがありといたしますれば、これは鉄の部門における
責任と申しますよりは、そういう機械工業ないしは造船業の
方面におきまして——あるいはこれは必ずしも製造の分野だけではなくて、輸出のやり方その他いろいろの問題があろうかと思いますが、要するに鉄以外のところにそういう
責任があるというふうに、一應推定してよかろうかと
考えておる次第でございます。もちろん
消費者
價格が五割上
つた價格で、買手がこれを買
つて行
つてくれるということであれば問題にないのでございますが、必ずしもそうは行かぬだろう。たとえば四割までしかし上らぬという場合におきましては、製鉄メーカーは一割の勉強をしなければならぬ。
消費者
價格で一割の勉強をするということは、
生産者
價格から見ますとほぼ五%ないし六%でございますが、そういうような部分につきましては、製鉄
業者のいわゆる企業努力によ
つて、勉強してや
つて行くという結果になるだろうと思うのであります。最初第一回目の値上り率を八割にするか、あるいは五割程度にするかという点につきまして、
政府の部内にもいろいろ
意見がございましたが、八割では私のただいま申しました製鉄メーカーが勉強する割合が少し大きくなり過ぎまして、ついて行けないだろう、しかし五では何とかついて行けるのではないかと
考えまして、私どもはそれを強調したのでございますが、結果といたしましては、そういう私どもの主張に近い線で案がまとま
つて参
つた次第でございます。第一回の値上りが五月の初めにございまして、その率はただいま申し
上げましたように、鋼材の
消費者
價格では五割見当、それから銑鉄では十割ちよつとという程度でございまして、これによりまして若干
需要の減あるいは購買力がそこまで行かないという点があろうかと思います。が、それに先ほど申し
上げましたように、これを後方の部門、つまり造船業あるいは機械工業という
方面の努力、
鉄鋼業自体の努力、それから
鉄鋼にいろいろの原材料を提供いたす
方面の努力、この三つの
方面の努力によりまして、どうやらや
つて行けるだろうというふうに
考えて間違いなかろうかと存じております。それから兆ほど申し
上げました例によ
つて申しますと、一万円に対して二万円の補給金があるわけでございますが、今度片づきましたのは、二万円のうちの五千円程度でございまして、なお一万五千円というものが今後の問題として残るわけでございます。これは先ほど申し
上げましたように、來年の四月と十月の二回にわけてやるか、あるいはもう一回わけまして、再來年の四月の三回にわけてやるかという問題が、ただいま残
つた問題にな
つております。この点は予算の編成の問題にからみまして、これからまたいろいろ論議の的になると存じます。そういうふうにいたしまして、すベての補給金をはずしました最後に、日本の
鉄鋼がどうなるかという問題でございます。この場合におきまして、ここにいろいろ数字がございますが、日本の
鉄鋼業が原料や燃料を取得いたします
價格が、現在非常に割高でございます。これをかりにもしアメリカの
鉄鋼業と同じ
價格で取得できるというような
操作をするといたしますと、その場合におきましては、銑鉄につきましても大体四十五、六ドルということになりまして米國の
工場渡し
價格と大差のない結果になります。なおアメリカから
輸入するといたしますと、CIFジヤパンで六十六ドルというような計算に一應なるわけでありまして、
輸入をいたす場合よりは、國内でつくりました場合の方がはるかに安いという
結論になるのでございます、それから棒鋼を標準といたしまして、鋼材につきましても大体近い
結論が出るのでありまして、
輸入をいたす場合よりは、國内でつくりました場合の方がはるかに割安である。それから原料や燃料の取得
價格の不利な分、この分につきましては、たとえば近距離のところに資源を求めるとか、あるいは日本の船を使うとか、それはそれとしての対策を講ずるといたしまして、そういう前提のもとに日本の
鉄鋼業がや
つて行くといたしますと、米國渡しの
價格に比較いたしまして若干は高いのでありますが、その高い程度は一割というほどではない。五%内外であるという計数が一應出て参るのであります。補給金をだんだんはずして参りますと、日本の
鉄鋼業も非常に苦しいと思いますが、ただいま申し
上げましたように、ドル
価格に換算いたしまして、大観いたしました数字等について申し
上げてみましても、ま
つたく望みのない数字ではないというふうに見受けられますので、今後いろいろな
意味の対策を講じまして、日本の
鉄鋼業の自立化ができるように努力して参らなければならぬと存じております。なおもう
一ついわゆるドツジ氏の言う竹馬のもう一本の足であります、主としてアメリカの援助によります
輸入の原料、燃料の削減の問題がございますが、これは主として
石炭についてただいま問題にな
つております。これは日鉄の輪西
工場で成功いたしましたように、
輸入炭なしに北海道炭だけでコークスができるということからいたしまして、その
方法をできるだけ廣く採用しよう、そうすることによりまして、
輸入炭を極力少くするという方向にただいま努力しております。この
方法によりますと、いわゆるドル資金の節約ができるということがあるばかりでなく、一方におきましては、それの方が裸にいたしました
石炭の
輸入價格に比べまして相当に割安になり、原価的に申しましても、それからドルの節約という点から申しましても、その方が有利であるという
結論になるわけであります。技術的に成功いたしましたので、そういう
方針を進めて参りたいというふうに存じておるわけであります。最近の
鉄鋼状況、
鉄鋼政策上の問題につきまして、
簡單でございますが、一言申し
上げました。