○
川上委員 私は
日本共産党を代表いたしまして、この
法案に反対の
意見を申すものであります。
説明によりますと、これは
中小企業に対して適切な
活動の
基礎を與える、こういうことにな
つております。しかもその上にこの
法案は、
民主自由党を
與党とされるところの
吉田内閣のたつたつ
一つの
中小企業対策である。しかるにこの
法案の
内容を見ると、まつたく空虚な、実際は
中身のない
法案である。このことを指摘したいのでありますが、これは全体にわた
つて非常に広汎に指摘することができますけれ
ども、ここにはその
一つ、二つの点だけを指摘して、
本法がどんなに
中身がないか、役に立たぬかということを明らかにしたいと思います。
これは言うまでもないことでありますが、
中小企業の保護、
育成、
助成に対しては
金融措置を完全にすること、これが
一つなければ問題にならぬ。第二番目には、
資材の確保を保障すること、これがなければ決して問題にはなりません。第三には、こういう
組合に対しては、
政府が積極的にこれを援助するのでなければ発達した
歴史がない。世界いずれの國といえ
ども、また
歴史上いつといえ
ども、
資本主義下における、ことに
中小企業等の
組織体において、
政府が積極的な、財政的なあるいは
法律的その他の十分な援助を興ずして、自然発生的な形で
りつぱにな成績を収めた
歴史は
一つもありません。これはあたりまえのことである。これが
本法ににまつたく欠けている。この
條件を備えずして、いくら法文をつく
つてみても、これはまつたくの空手形にな
つてしまうことは、生活協同
組合の例が明らかにこれを証明しておるのである。そのうちの
一つの例をとりましても、たとえば
資金——今日
中小企業が何で困
つておるか。これは協同
組合ができぬから困
つておるとかいう問題ではありません。金がない。
資金がない。何よりもこれである。これがどういうことになるかというと、
政府の御
説明によると、たつた六千の標準的な
中小企業をピック・アップして、それに流動
資金と設備
資金が幾らあればこれを存続するかどういう調査をしたという
中小企業廳の御答弁でありしたが、それによ
つても最低百六十億ないし二百億、
中小企業廳長官は実際言えば三、四百億の金がなければ
中小企業の
育成はできないと言
つておられる。ところが
中小企業廳が安本と協議しておられる金額は十四億五千万円、流動
資本はと言えば、おそらく日銀が二十億円くらい出してくれるだろうというお話である。ところが日銀が融通してくれるだろうという分は
一つもあてにならぬ。これは
民主自由党の銀行界の、オーソリティーである岡野清豪君のごときでさえ、市中銀行は
中小企業には金は貸せませんよとはつきり言
つておる。実際においてこれは
金融はできはしません。これが現実である。この
基礎の上にこういう
法案を形の上でつくり上げましても、これは決して
運用もできなければ、中はからつぽである。さらに
中小企業の今日の重大な問題は、
今澄君も指摘しましたが税金である。税金についての考慮がこの
法案には
一つも払われておりません。これで
中小企業が立行くかどうか。骨が抜けてしま
つておる。
第三番目には
信用組合の問題でありますが、
信用組合をなせここに持
つて来たかといういきさつを、詳しく本
委員会で質問いたしましたところが、これはまことに驚くべきことである。重大な点は、たくさん申しませんが、なぜ今できている
市街地信用組合をつぶして、この協同
組合に一緒にしなければならないかという答弁に、協同
組合というものの筋を通すために、協同
組合を一本にするためにここに入れたのであるという御答弁以外にはない。これは根本的に大きな間違いである。すべての
法律、ことにかくのごとき
法律は、どうしたたらば人民大衆の利益がはかれるかということからこそ、
法律はつくらなくちやならぬ。國民大衆の利益はどこにあるかという観点からでき上らなくちや人民の
法律じやない。そうじやない。こうした方が形が整うからこうするのだ。それで大衆は助かりますかとう質問に対しては、助かるだろうと思うという御答弁である。このところにすでに本
法案が
中小企業を侮辱しておる歴然たる証拠がある。もしもこれが
金融独占
資本に対する
法案であつたならば、とてもかくのごときことで
法律ができるはずはありません。特にこの
信用組合の問題については驚くべき事実がある。これは何か。これは大蔵
当局と商
当局との
意見がまつたく違
つておるということだ。愛知銀行
当局長はこの
委員会の席上で、私のこの形で
信用組合をつく
つてりつぱな
運営ができると思いますかという質問に対して、明らかに私
どもには自信がありませんという答弁をなされた。さらにもしも本
委員会において、
市街地信用組合は解除すべきであるというような形に
なつたらどうお思いになりすかという質問に対して、大蔵
当局としては
希望するところでありますと御答弁なされた。これは
政府の責任だと思いましたから、
商工大臣に私はこのことをただしましたところが、大蔵
当局が何と言つたか知らぬが、これは閣議できまつたものであるから本
法案が
政府の
意見である。こういう御答弁である。ことに奇怪千万な御答弁でもる。これ明らかに
本法に対して
政府のうちにおいてさえも二つの
意見かある。大蔵と商工とは対立した
意見を持たれておる。それは閣議かどこかで決定されたのでありましようが、こういうことがもしも独占
資本に関する
法案であつた場合に、かくのごときことがあり得るであろうか。決してあり得ることではない。これすなわち
中小企業に対してほとんど考えておられない。どつちにな
つてもいいというくらいに考えておるから、かくのごときものが出て来る。また商工中央金庫の改組問題にいたしましても、これからするといのでありますが、これがおかしい。しなかつたらどうするか。これはあてにならぬ。これができずして、この
市街地信用組合だけはこつちに待
つて来る。こういうことなんだ。これはきわめて不親切きわまる行き当りばつたりの
内容を持
つておるということは明らかだ。さらに
市街地信用組合をこちらに持
つて来るのに、たとえば六箇月間の冷却期間をおくということにな
つておる。しかもその腹の中には、その間にどうにもならなければ、ひとつ庶民
金融のようなものをつく
つてどうかしたらいいじやないか。こんなことにな
つてごらんなさい。これはどうなるのですか。
政府にそういうお考えはないかも知らぬが、もしこんなことになるならば
市街地信用組合はもみくちやにされてしまう。大きなものが来るか、小さなものがこつちに来るか、もみくちやにされてしう。この
程度の
取扱いを受ける。さらに
保険組合に至
つて実にこれはおかしい。
門脇委員は本
委員会において児戯に類するものじやないかということを言われましたが、私はこれは同感ですと同時に
政府が
中小企業を
助成し
育成するという、本当に腹のすわつた
裏づけのある
法案をつくりした場合には、私は
保険協同組合はりつぱに成立する可能性があると思う。そうしてこれならば決して児戯ではない。火災
保険会社がおそらくびつくりするようなものができる可能性があると思うが、本
法案でつくろうとしたならば、まことにこれは児戯に類するものである。その上に吉田総理大臣の施政演説に対するわが党の質問に対して、
商工大臣は
中小企業に対しては
中小企業等組合法をつく
つて保護するのだという。これだけの答弁ができておる。すなわち
中小企業をいかにするかという、これに対して
政府は
中小企業等組織法だと言われておる。その
組織法がこれなんです。ここに
吉田内閣の
中小企業政策というものが端的に現われておるものと私は思う。そもそも今の内閣がや
つておられる形は、これを私はくどく申しあげませんが、これは共産党が終始一貫反対し主張しておるところの独占
資本を
中心とする
集中生産一本やりである。民族産業並びに
中小企業の破壊の上に、独占
資本の殿堂を打立てんとする政策であるということは社会周知の事実である。
一つの実例をあげれば石炭、この
委員会でずいぶん問題になりましたから私は申しませんが、この石炭の
中小企業に影響を與えるだろうという政策をいかに強行されておるか。本日開くところによると配炭公團法の一部については
修正がありましたが、その
あとで
政府当局は、まだ私は真偽のほどは確かではありませんが、メリット炭債の方針建てて、これをすぐ近い将来に強行する御腹案あるようだ。これは必らずそうなるでありましよう。あるいは配炭公團の運命というものも来年三月かと思いますけれ
ども、
法案を見てみれば、安本長官が必要と認めたらいつでもつぶされるような
法案がこの通り書かれておる。
委員会でも通過しておるのであります。この結果はどうなる。明らかに中小炭鉱の犠牲の上に、独占
資本の炭鉱が生き残
つて行くということである。あるいは鉄鋼にいたしましても、これもくどくど申しませんが、八幡と、日本鋼管が生き残るだけ、
あとは非常な大きな打撃を受ける。中小鉄鋼業がいかに動揺し、いかに苦しんでおるかということは、ひとたび全日本のすみずみにおける
状態を鏡のごとく映してみるならば、だれでも明らかだ。
民主自由党の方々にしても民主党の方々にしても、このことは歴然とおわかりにな
つておるたろうと思う。議会に
請願して来るのでも、何が一番来ておるかと言えば、
中小企業の壊滅、これをどうしてくれるかということを申し出て来ておる。これが今日り重大問題なのです。しかもこの政策を続けてや
つておるりです。輸出産業においても御承知の通り千何ぼの輸出企業を、六百か七百につぶしてしまおうとしておるのじやないか。あるいはメリヤス、あるいは被服加工、
一つの例をあげて言えば、一年に被服加工のミシンを七〇%登録の取消しをや
つておるものもある。百台以下は登録を取消しておる。東京では加工ミシンに対しては三十台以下を取消し、八〇%壊滅させるような方針をどんどんと
つておる。これじや
中小企業はつぶれてしまう。わずかに残る大
資本、その間の下請とかいろいろな形で、難儀な
状態で残るところの民族産業そのものがどうなるか。これは輸出一点張り、外國のバイヤーの発注に対しては国内の需要を押しのけても、優先的
資材資金を配給すると言
つておる。これじやあもう
中小企業、民族産業は壊滅するのです。その上に
政府は御承知のように莫大な支拂いの抑制をや
つて、四百二十七億に達した。石炭企業は百五十億に余る関連企業の未支拂をや
つておる。しかもこの関連企業の未支拂についての本
委員会の質問に対しても、
政府には
一つも案がない。これはたな上げになろうとしておる。この結果小さい
中小企業がいかに打撃を受け、労働者、市民、農民がいかなる形にな
つておるかということは、言わずして明らかだ。しかるにかかわらず一方二十四年度予算を見ますと、二千億以上の価格調整費を独占企業にくれてやろうとしておる。八百億以上の輸入補給金を、人民の血の出るような税金から注ぎ込もうとしておる。その上に輸出産業に対する補給金四百億円を注ぎ込もうとしておる。さらにまた見返り
資金を見ますと、これの産業部門にまわる部分はその部分でありますが、その一部分をどこに注ぎ込もうとしておるか。言わずと知れた独占企業なんだ。これで一体
中小企業がどうなりますか。壊滅してしまう。やられてしまう。
中小企業廳の有力な方々も、この政策によ
つてわが國 の
中小企業の非常に大きな部分は、壊滅するのほかはあるまいということをはつきり言うておられる。にもかかわらず
政府は
中小企業廳をどうするか。 たつた九十人の
中小企業廳にしたではありませんか。これはだれです。民自党の方々はさる
選挙において、
中小企業の振興という公約とスローガンを掲げられたが、これが
中小企業の振興ですか。
中小企業廳の役人をたつた九十三人に落してしま
つて、こういう
法案を出されておる。一切の
集中生産と
中小企業の壊滅策をと
つておる。ここのところにうそがある。私は正直に言いますが、この
法案で
中小企業が助かるというようなことを、
與党の方々が
選挙区へ帰
つてお話しになりましたならば、
選挙民がいかに怒るであろうかということを私は考える。かような
法案は
政府はお出しにならぬ方がよろしい。これは考えをかえてお出しに
なつた方がよろしい。また
政府の
與党の方々もかような
法案に
賛成なさらぬ方がよろしい。こういう形をと
つておけば、これは 自分で自分の首をくくるような結果になるに違いない。なぜかと言えばこれは何にもならぬ
法案なんです。半年た
つてみたら
中小企業はえらいことになり。共産党の言うておつたのがやはり
ほんとうであつたというのは目の先に見えておる。私は謹んでこういう
法案は
政府もひとつお考え直される方がよいと思う。また
與党の方々もこれに反対なさる方が仕合せである。
日本共産党はかような意味で反対いたします。