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1949-05-11 第5回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月十一日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 神田  博君    理事 澁谷雄太郎君 理事 村上  勇君    理事 今澄  勇君 理事 橋本 金一君    理事 川上 貫一君 理事 永井 要造君       阿左美廣治君    岩川 與助君       門脇勝太郎君    小金 義照君       高木吉之助君    多武良哲三君       福田  一君    柳原 三郎君       聽濤 克巳君    田中伊三次君       河野 金昇君  出席國務大臣         商 工 大 臣 稻垣平太郎君  出席政府委員         商工事務次官         (國有財産局         長)      舟山 正吉君         商工政務次官  有田 二郎君         商工事務官         (総務局長)  山本 高行君         商工事務官         (機械局長)  武内 征平君         商工事務官         (鉄鋼局長)  始関 伊平君         商工事務官         (石炭廰管理局         長)      山地 八郎君         商 工 技 官         (石炭廰生産局         長)      田口 良明君         商 工 技 官         (総務局鉱山保         安部長)    曽根 文二君  委員外出席者         議     員 原 健三郎君         総理廰事務官  江下  忠君         商工事務官   小池 輝一君         商工事務官   佐野 清助君         商工事務官   磯野 太郎君         参議院法制局長 入江 俊郎君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 大石 主計君     ――――――――――――― 五月十日  銅、硫化鉱対策に関する請願今澄勇紹介)  (第一四七八号)  中小企業協同組合法案に関する請願米窪滿亮  君紹介)(第一四八一号)  同(小坂善太郎紹介)(第一四八二号)  勝田町の日立製作所水戸工場等救済に関する請  願(池田峯雄紹介)(第一五〇〇号)  京三製作所古河工場救済に関する請願池田峯  雄君紹介)(第一五〇一号)  中小企業協同組合法案に関する請願山本久雄  君紹介)(第一五二四号)  同(岡村利右衞門紹介)(第一五二五号)  同(原建三郎紹介)(第一五二六号)  本州、淡路間送電線敷設工事費國庫補助請願  (塩田賀四郎紹介)(第一五三一号)  炭鉱対策に関する請願石野久男紹介)(第  一五三二号)  電動力架設使用許可請願山口武秀紹介)  (第一五三三号)  低品位炭鉱問題に関する請願青野武一君外五  名紹介)(第一五七二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  中小企業振興に関する陳情書  (第三八一号)  石炭窒素増産計画確立陳情書  (第四一一号)  中小企業等協同組合法案に関する陳情書外七件  (第四二一号)  同外五件  (第四三一号)  浦川化学工場硫安製造工場に轉換等の陳情書  (第四三四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  自轉車競技法の一部を改正する法律案原健三  郎君外六名提出衆法第四号)  鉱山保安法案内閣提出第一三八号)  臨時鉄くず資源收法案内閣提出第一七二  号)     ―――――――――――――
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより商工委員会を開きます。前会に引続き私が委員長の職務を行います。  この際入江法制局長より発言を求められております。特にこれを許します。入江君。
  3. 入江俊郎

    入江法制局長 当委員会におきまして、目下御審議中の中小企業等協同組合法案その他一、二の法案につきまして、最近関係方面から法制局長としての私に対しまして、かような点は修正してはどうであろうかという参考意見が示されたのであります。そこでこの機会にこれを一通り委員会の皆様にお傳え申し上げるとともに、これに関する私の所見を申し述べまして、委員会審議の御参考に供したいと考えております。まず中小企業等協同組合法案でありますが、これにつきましては、この組織中小企業者相互扶助という点を目的とするという趣旨から見て、第六條にありまする事業協同組合の從業員の人数が百人とありますのを、もつと小さく二十人ということに原則的にしてしまつて、そうして二十人以上百人までの人数につきましては、これはときどきの要求に應じて、大臣が不服の申立てを開いた上で、かつまたその関係者意見を十分聞いた上で、適当なわくを定めて省令を制定する、そういうふうにして二十人以上のものは特に異議の申立てがあつたものについて、だんだんと廣げて行くことにして、一應原則は二十人を越えないものというように、この六條の規定を直すことがどうであろうかということを、まず示されたのであります。それからその次は信用協同組合を除外をするという意見が一部にあるようだけれども、そういう点はあまり穏当でないというふうなことを言つていました。それから第七十條におきまして、事業協同組合傳責をするのでありますが、組合員以外の者に融資をすることができるようになつているのは、行き過ぎであるという意見があつたのであります。それから百六條におきまして、不服の申立てをする相手方行政應となつてつて、そして府縣の区域以内の者は、知事をもつて不服の申立てを決定する行政應になつておりますけれども、知事では適当ではない。大臣にするのが必要ではないかということが、一つ意見としてあつたのであります。それから最後に中小企業協同組合施行法でありますが、この施行法の中に中央会のことが規定してありまして、現在は中央会はやはりこの法律施行後八箇月のちに解散することになつておるが、中央会は三箇月以内に解散することにしてはどうかという意見があつたのであります。この趣旨についてのこまかいことは、なお他の機会に申し上げたいと思いますが、大体以上の点を主といたしまして、この中央協同組合についての意見があつたのであります。これにつきましては、私どもはただ参考意見をここにお傳えいたしまして、その採否はすべて委員会で十分御檢討を願うわけでありますが、以上申し上げました点は、大体法制的には可能であるし、またでき得る限りそういう趣旨を実現することの方が、新しい法制として適当ではないかと思いますけれども、これらについてはなおよく御研究願いたいと思うのであります。  もう一つ臨時鉄くず資源收法につきまして、一つ意見の提示があつたのであります。それは第二條におきまして、商工大臣権限をあまり廣く委任し過ぎておる。從つてこの鉄くず物件として商工大臣がこれを指定する場合、制約を加える必要があるではないか。たとえばこの委員会に諮問するとか、何かの方法をとることが妥当ではないかということが、一つ意見として示されたのであります。さらに第三條におきましても、同様に省令に委任しておる点は廣過ぎるので、できるだけ法律でもつてその趣旨を明らかにするように書くことがいいのではないか。第五條におきましては、くず化物件審議会に出席して、関係者意見を述べることはできるけれども、さらにその場合に廣く一般の人々から意見を聞く機会、すなわち公聴会的なことを、このくず化物件審議会で行うことを考える必要がないかというのであります。今申し上げましたような点が多々ありますが、要するに法案の内容につきまして、行政官廳に廣く権限を委任し過ぎてある点は、できるだけ法律でもつてはつきり書くことと、また相手方國民に対して権利侵害利益を害するような処分をするときには、でき得る限り公聴会のような制度を法案の中に入れることを、考える必要があろうというのが主たる点であります。以上の点は、御審議をされる場合に十分御研究願つた上で適当に御判断願いたい、こう思つております。簡單でありますが、以上参考としてお傳えいたした次第であります。
  4. 神田博

    神田委員長代理 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕     —————————————
  5. 神田博

    神田委員長代理 速記を始めてください。  自轉車競技法の一部を改正する法律案を議題として、審査を進めます。質疑を許します。柳原君。
  6. 柳原三郎

    柳原委員 今回議員提出の形で提出になりましたこの自轉車競技法の一部を改正する法律案でありますが、これは昨年の八月一日にきまりました自轉車競技法に「都道府縣及び人口財政等を勘案して主務大臣指定する市」とありましたのを、ただ市だけではなく、現在の地方財政窮迫ということにかんがみまして、町村をも含んでやるという気持はたいへんけつこうであると思いますけれども、この法律案人口財政等を勘案して、これだけ主務大臣考えまして指定する、こういうことではあまり基準が漠としておつてつかみどころがない。またこれに町村を加えたとするとき、今日本のどの市町村であろうとも、財政が豊か過ぎるという市町村はないと思います。こういうときに町村をも加えられますと、この法律によりまして、自轉車競技が俗に利益があると申しますか、收益があると言いますか、そういうことから陸続として各市町村が競争して、われもわれもと指定市町村になるべく主務大臣申請して來ると思います。こういう場合において、この法律では何らの基準もない場合、こういうふうに技術的にこれを指定して行くのかというところが非常に疑問であると思いますが、提案者の御意見を伺いたいと思います。
  7. 原健三郎

    原健三郎君 今の御質問趣旨はよく理由がわかるのであります。これを町村まで許しますと、全國の各町村から申込みが殺到するという御意見でありますが、実際のところを見ますと、自轉車競技会をやりましても、どこの町村がやつてもうかるものではございません。競技と同じように、やれば必ずもうかるというのは非常な間違いで、なかなかもうからない。もうからないのが普通であります。普通の所でやると、やつたら損をいたします。それが一つ。もう一つは、自轉車競技をやる競技場の場所はすでにきまつておりまして、どこでも許可できません。私の提案するのは、既設の自轉車競技場を借り受けて、町村連合主催になつてやる。こういうわけで、自轉車競技場はもちろん新設はいたしません。よそのを借り受けるのです。よそのを借り受けて、町村連合主催でやるというようなことになつて來ますと、どこの町村でも借り受けることはできません。それからどこの町村でやつてももうかるというようなことを言いますが、やつてももうかりません。むしろ人口が非常に機密な東京、横浜間とか、あるいは大阪神戸間とか、こういうようなところ以外は、やりましたらみな損をいたします。実際はそういう場面で事実上、非常に制約されます。これは町村というふうに改正いたしましても、全國的にどこの町村でもやれるというようなことは、事実上ないと思います。しかし、やはり今の御質問にもありますように、損をするかもしれないが、やつてみたいというようなことを言う町村がないことはないだろうと思います。その場合におきましては、やはり人口機密にしてやつても引合うというようなことが前提條件であります。これは主務官廳でよくわかつておりますが、まず方々でやつてももうからないから、許可するということにはならぬと思います。もちろんとこの町村でも財政に逼迫しておりますが、人口が多くてことに著しき災害をこうむつ町村といえば、そうたくさんございませんし、等々勘案して、この行政面におきましては、主務官廳商工省のいて、商工大臣の下にやはり委員会というのがございまして、その委員会がこれを決定したりする権能を持つております。その委員会にかけて、どこで許すかと許さぬとかいうことは、あらためて研究してもらうことになつております。從つてその委員会に諮りますから、決してどこの町村でも、希望もそうあるとは思いませんし、希望して來た場合においても、その委員会において、はたしてもうかるかもうからぬか、どの程度に許したらいいかというようなことを勘案しますと、実際の面においてはそうふえるものではないと思つております。これを法律わく廣げたからといつて、あすからすぐふえるというものでもない。半年先に一つふえるか二つふえるかわからないような実情でございまして、その点はあまり心配はないのじやないかと考えております。よろしくひとつ御審議をお願いいたします。
  8. 柳原三郎

    柳原委員 そうすると、たとえば岐阜市などは今申請しているわけなんです。人口も二十万ほどあるわけですが、その委員会においては基準というものはやはり持つておるわけですか。人口とか財政基準というものは、ただ抽象的に、ここは財政窮迫しておる、ここは人口がやや多いとか少いという程度のものか。一つ基準というものはその委員会に持つておるのですか。
  9. 原健三郎

    原健三郎君 その委員会において、私は基準を持つておると思います。その第一はたとえば基準人口二十万ですが、その周辺に大きな都市とか、人が集つて來るような場合ではないともうかりませんし、ただ私が今提案しておつて希望しておることは、具体的に申しますると、阪神間の武庫郡が非常に希望いたしておる。その基準については商工省から御説明していただきます。
  10. 武内征平

    武内政府委員 この自轉車競技法の第一條には、人口を勘案してというふうに規定してございますが、最初この法規をつくりますときに、人口十万というふうに規定しようという御意見があつたのでありますが、それでは九万九千ではいかぬかという問題がありますので、十万という規定は除きましたけれども、大体人口十万程度。それから財政を勘案して、と申しますのは、戦災を受けた都市が多いのでありますから、戦災程度は大体六割以上戦災を受けておるといつたようなことが一應の標準になつておりまして、これが動かすべからざるものであるというふうにも考えませんが、一應の基準としてはさよう考えて、委員会と申しましたが、自轉車競技法運営協議会、これは國会議員の方六名、関係官廳それから業界、大体二十一名くらいからなつておりまする協議会によつて、さような標準を一應の基準にいたしまして、指定して行く、こういう状況でございます。
  11. 柳原三郎

    柳原委員 たとえば町村がグループといいますが、十箇町村とかあるいは五箇町村が組んで行うこともできるのですか。
  12. 原健三郎

    原健三郎君 私の考えでは、たとえば五、六箇町村が組みまして、組合をつくつてある一定の自轉車競技場を借り受けて主催者になつて、その利益金をわけ合つて町村財政を潤す。こういうふうにやつた方がいいのじやないかと思つておるのです。抽象論でなく、具体的に私の考えておるのは、兵庫縣武庫郡であります。非常に熱望しておる。実際のところを調べてみますと、日本戦災をこうむつ都市の数を考えてみると、戦災をこうむつた市が九十五、町が二十五、村が四つとなつておりますが、その四つの中に武庫郡の村がみな入つておる。武庫郡の村は大体平均して六割二分の戦災をこうなつておる。人口は村全体を合せますと、十二万という非常に厖大な数になつております。近くには神戸があるし、大阪を控えておるし、やればもうかります。戦災を非常にこうむつておるので財政窮迫しておるし、できたらこの辺に、協議会の賛成を得まして、やらしていただいたらいいと思つております。協議会で許さぬといえばそれまでの話だけれども……。
  13. 柳原三郎

    柳原委員 ちよつと質問はこまかくなりますけれども、たとえば、五、六箇町村組合をつくつて指定してくれといつた場合に、その指定される対象というものは、それぞれの町であり村であるわけですか。あるいはそれらが組合として指定されるのですか。
  14. 原健三郎

    原健三郎君 たとえば組合になつておりましたら、組合として指定町村に許すのですから、町村が全部入つてつて組合で表裏一体で許可されるのではないか、こう思うのです。
  15. 柳原三郎

    柳原委員 そうしますと町村によりましては、ある村とある村とがとても仲がよくて、ある村とある村とは仲が悪い。その五つの町なり村なりが、合併してやろうじやないかということになつて一つの他の村がそれに加入さしてくれといつた場合に、それを拒否したりなんかすると、その政治的な問題は一体どういうふうに処理して行くつもりですか。
  16. 原健三郎

    原健三郎君 その結論はやはり協議会へ一應かけますから、その協議会においてこれはけしからぬではないか、一つだけはずすのはおかしいから入れて來い、それなら一應考慮してやるぞと言えばいいと思います。自分の損になりますから——決定したものを協議会にかけますから、そこで適当に調整され、調和され、うまく運営されるのではないかと思つております。
  17. 柳原三郎

    柳原委員 そうするとこれはある五つなり六つなりの町や村によつて、自轉車競争をやることを許可するということになりまして、これは確かに收益を上げるであろう、こういう前提のもとに協議をする。そうするとその割前を他の町村ももらいたいがために、全部のものがそのわくにおれも入れてくれというふうに言つて來た場合には、とても整理のつかないことになりはしないかと心配するのですが、その点いかがですか。
  18. 原健三郎

    原健三郎君 それは今商工省行政当局からもお話があつたように、一定基準がありまして、何でもないのに、たとえば戦災をこうむつていないのに、うちの町村は困つているとか言いましても、それはやはり條件基準にはまらないのです。だから戦災をこうむつていない町がむやみに全國から申込んで來ても、立法の趣旨から言つてもはまらないし、ことに競馬でも自轉車でも一番主たることは、商工当局もおつしやつたように戦災を著しくこうむつている、六割以上もこうむつているというような、しかも人口が今言つたように多いこと、しかもそれから今商工当局は言わなかつたのですが、もうかるということが第一です。そうからなければ何もならないし、損をしたらえらいですから、くろうと考えではなかなかやれない。よほど確信を持つてやらないと損をしてしまいます。その点商工当局は言わなかつたのですが、ぼくらが考えますとうかうかすると損をする。非常にその点で制約されてしまうと思つております。
  19. 柳原三郎

    柳原委員 機械局長さんに質問をいたしますが、先ほど委員会とか審議会とか言われましたが、それは法的なものですか。
  20. 武内征平

    武内政府委員 これは法的なものではございません。技術上のものです。委員会を形勢いたしましたのは、協議会技術上のものであるということであります。
  21. 柳原三郎

    柳原委員 そうすると、その協議会というものの構成というものはだれがきめたわけですか。
  22. 武内征平

    武内政府委員 これは自轉車協議法が設置されました直後に、御承知のように本法は議員提出法律でありますから、当時提出されました國会議員方々あとで相談をいたしまして、指定につきましては公正にやらなければならぬという趣旨から、先ほど申し上げました範囲で、事実上の組織として運営して行くということで、今までに数回聞きまして、ただいまはこういうかつこうであります。
  23. 今澄勇

    今澄委員 これは議員提出法律案になつておるのですが、ちようど政府委員の方が來ておられるから伺いたいのですが、政府予算関係でわずか一名しかおらぬ貧弱な陣容ですが、これで大体成算というか、自信がありますか。ちよつとここでお伺いします。
  24. 武内征平

    武内政府委員 実はただいま今澄委員から御質問のことは、われわれとしても非常に困つておる点でありまして、今回の予算で始めて三名の定員が認められたのでありまして、今まで施行して來ましたのは新たな自轉車競技法が設定されて、これを商工省が自轉車生産に関することをやつておりますから、それに関連してやることになつておりますが、從來生産関係に從事いたしておりましたものを、それらの方から手を省きまして、競技法実施をいたして、初めて本國会で三名が通つたわけであります。実際問題といたしましては、個々の競技をいたしますと、例の市町村收入になるものと國庫收入になるものと、一回々々ほんとうにこまかに計算をしまして、それを監査して、不正のないようにするというためには、とうてい三名ではできないと思いますけれども、いろいろな事情から予算で三名しか認めていただけなかつた。これは地方商工局もございますので、本省から常に出るということでなしに、地方商工局の方からも應援していただきまして、何とかやつて行こうというのですが、非常に苦しいわけでございます。
  25. 今澄勇

    今澄委員 今政府側答弁を聞くと、私は一名と思つてつたが、今度予算でどうにか三名にふえた、たつた三名の定員しかいないということです。それで目下指定申請中の都市は現在四十幾つありますが、その中で指定が済んだのは九つあとは人員が足らぬのと、いろいろの条件からまだその審査並びに許可を得るに至らない。この状態においてさらに町村を加えるということは、なるほど理論的にはいいと思うが、あまりに急ぎ過ぎるではないか。何でこんなに急ぐのか。一町村のことのみを考えず、全國の町村がじやんじやん出て來るが、いまだ九つしか審議が済んでおらぬ。そういう申請がうんと來たら、実質上の問題としては、これは今できぬではないか。さらに自轉車に乘つて走らねばならぬが、自轉車の乘り子の数は、私が調べたところでは今わずかに四百三十人しかおらぬ。全國九つ競輪場を乘り歩くのでさえも精一ぱいで、足らぬくらいだ。にもかかわらず、全國の市町村にいまだ許可を與えられぬものが、一部に與えられるということは、提出者に聞きたいが、一地方状態をあまり重視されておるのではないか。全國的なそういつた部面については、この法案提出者はどういう見解を持つておられるか。その御答弁を承りたい。
  26. 原健三郎

    原健三郎君 今の御説御趣旨は決して反対するものではございません。理論的には御説ごもつともに存じておりますが、われわれの考えでは、同じ行政区の違いでもつて、市においてはやれるが、その隣りの町村で、同じ人口をたくさん擁しておるところの、たとえば合併すると十二万もあるような町村は、單なる町や村ではない。しかも戦災を受けておるという点から言いますと、著しく戦災をこうむつてつておる。それの救済方法は、今のところ今度の予算なんかから考えても、なかなか見当らない。その地方戦災をこうむつた苦しい町村実情考えますと、自轉車競技法法律を少しわく廣げて、地方財政窮迫を救つてやりたいと思つております。
  27. 今澄勇

    今澄委員 それからもう一つ。問題は、そういうふうに今人数も三人しか係官がおらぬし、乘り子も四百三十人しかおらぬ。しかも競走用の自轉車も問題になつて來る。施行以來、各省との了解について十分結論に達しておらぬ。たとえば予算の収支に関しても大蔵省と主務省との間にいろいろ手間がかかる。三人ときまつたが、建設の問題については建設省、安本の考えといろいろ食い違いがある。その他競走用の自轉車生産資材の問題は一番大事だけれども、これは今全然話になつておらぬ。それにもう一つ関係方面の問題ですが、経済安定九原則の実施に伴うて、競輪場建設というようなことは、資材その他で非常にむずかしいことは、提案者も御承知の通りであろうと思う。しかるに本案施行が通過すれば、市町村をみな入れるということになりますから、市町村競輪場設置のこともどんどん出願されるであろう。そうすると、関係方面にあまりいい影響を與えることはないと思う。それで将來競輪ということは、私は競馬と並んだ重大な問題で、これがだんだんと育成されて、ほんとう競技というものが國民の中に根を張つて大きくなるためには、一朝一夕ではいけない。やはり漸次順を追うてやることが必要であろうと思う。にもかかわらず急に本案提出した。関係当局あたり見解を聞いてみると、かような問題を非常に歓迎しておるとも思われない。そういう状況下においても急速に、この國会で一口を争うてこの法律案を出さなければならない理由を、ひとつ提案にお聞きしたい。
  28. 原健三郎

    原健三郎君 この改正案に反対の意見は二つある。一つは全國町村とこでもやるのじやないかという御質問をさつきも受けました。第二番目においては、これは急にやらなくともいいじやないかという御説でございまして、それには競輪場方々へつくることは非常に至難であろうというお話であります。御説ごもつともであります。われわれといたしましても、競輪場を今ここでただちに全國的につくるという意見は持つておりません。既設の競輪場を借り受けて町村主催するようになつて、そのもうけで町村財政を助けようという趣旨なので、既設の競輪場は全國で五箇所あるのであります。この五箇所の競輪場を使わせてくれるかくれないかは、その責任者のかつてであります。それを借り受けてやらすということになりますと、決して全國的に人が殺到して、競輪場をやらしてくれという申込みはないと私は思つております。この五箇所よりないということは、たとえば今この法律わく廣げましても、決して競輪場をこれ以上たくさん急速にふやすこともできにくいし、それを借り受ける場合になりますと、なおさら町村がたくさんやれない。でありますから町村ということに廣げますと、何となしにこれは全國的に町村に行くように見えますが、われわれも初めのときにはそういうふうに感じておつたのですが、いろいろ調査をし、実際のことに当つて見ますと、この法律わく廣げましても、実際はここ半年や一年にそう三つも四つもふえないという事情にありますので、いろいろお説はありますが、よろしくひとつお願い申し上げます。
  29. 門脇勝太郎

    ○門脇委員 私は本提案に賛成をするものであります。なぜかと言いますと、とうも終戦後國民の気持があらゆる角度から非常に萎縮、圧迫されておるような感じがあります。そこで國民一つの明るい希望を持たせる意味から、こういつたことを國家が廣く許可をするということが、非常に國民の気持を明るくし、希望を持たせる意味において効果があると考えます。細目についてここに檢討しますると、いろいろな意見もわかれると思いますが、こういうことはひとつ政治力をもつて、気持を明るく轉換づるということのために、ぜひ実現することの方が政治的にいいと考えます。本日は他の重要法案もずいぶんあるようでありますから、このへんで質疑を打切つて討論に入られるように、緊急動議を提出いたします。
  30. 今澄勇

    今澄委員 ちよつと——それでこの法案がさようここで採決せられてやることには異議ありませんが、しかし私はこの法案が通るのに先だつて商工委員会の一人として、全國的に見れば今言つたように三人しか事務官がいない。ところで四十四の都市から申請が來ておるものを、九つしか許可するだけの能力がない。政府委員からは委員会の席上においても、まことに困つた自信がないような答弁があつたにもかかわらず、これを提出された議員の方の市町村がぐあいがいいからというので、國会に対して多数の力でこれを押し切るということは、私はまことにどういうものであろうかと思う。しかも今の御意見を聞くと、おそらくこの法律を出しても、申請をいたして來るのは一箇所か二箇所しかないだろうという提出議員の御言葉は、自分の関係しておる町村だけということを明らかに物語つておるのであります。こういうものはおそらく民主自由党も民主党もその点をひとつ十分おくみとりいただいて、こういう法案についてどうした方が國会議員として正しいかということをお考えを願いたい。これで私の質問を打切ります。
  31. 有田二郎

    ○有田政府委員 原議員の提出になりますこの法案につきましては、政府といたしましてただちに各農村の許可というところまでは行けないことは、事務当局からの報告の通りでありますけれども、門戸を廣げる。そうして全國的にも、この武庫郡と同じようにいろいろな特殊な場所も多かろうと思うのでありまして、いわゆる地方財政が非常に逼迫しておるというような観点から行きましても、この法案政府としては反対する理由を持たないのであります。門戸を開くというような意味合いにおいても、特に國民の気持を明るくする上においても、また地方財政の逼迫しておる折柄でありますから、そういう観点から考えましても、本法案に対して政府としては反対する理由を持たない。こういう考えでおります。
  32. 神田博

    神田委員長代理 別に御質疑もないようでありますから、引続き本案を議題として討論に付します。討論者は通告によつてこれを許します。門脇勝太郎君。
  33. 門脇勝太郎

    ○門脇委員 先ほど質問と一緒に意見を申し上げて、大分手まわりよくやりましたが、問題が小さいし、二度も立つ必要もないのですが、やはり一つの形式でありまするからして、私はあらためて本提案に対して賛成いたします。  この理由は先ほど申しましたように、國民に明るい希望を與えたい。何もこういつたことをするということは、國家的な仕事ではないのでありますから、こういつたことによつて、少しでも明るい希望を與えられるということは、たいへんけつこうだと思います。そういう意味において、本案はぜひ可決せられんことを希望いたしまして、ここに賛成の意を表します。
  34. 神田博

  35. 今澄勇

    今澄委員 いろいろ質疑の中でも意見を述べたのでありますが、私は本案施行はやや時期が早過ぎる。こういつたものはもう少し状況を見て、協議の上、國民の認識なりあるいは地盤が固まつてから、予算関係とにらみ合せて廣げるべきものであつて、現在のように事務官がわずか三名であつては、何をやるにも手がまわらない。関係当局の政府委員の間においてもとても困つておるという状況のもとで、急激にこれを通過せしめるということはまことにおもしろくない。特に私はこれに対する資材、あるいは競輪用の自轉車その他の生産の問題、予算の問題、関係省の連絡の問題等においても非常に萎縮している関係上、政府委員と有田政務次官との説明の見解も、非常に違つておるというような状態を見るにつけても、これは時期尚早であるという意見のもとに、反対の意を表する次第であります。
  36. 神田博

    神田委員長代理 橋本金一君。
  37. 橋本金一

    ○橋本(金)委員 いろいろ御質疑の模様を聞いておりますと、法案の設置いかんに対しては大体賛成の意見であるが、この内容の面にわたつていろいろ御心配の結果、時期尚早ということになつておりますが、その点は十分当局として質疑の内容をそんたくせられまして、今後指定に対しては最善を盡していただく。しかして法文にはなつておりませんが、先ほど質疑にありましたもよりの数箇町村が、必要によつて組合組織等を持つて、その指定申請を願い出たときにおきましても、十分と御考慮を拂われて、実際に即して遺憾なきを期していただきたい。以上希望を申し上げまして賛成の意を表します。
  38. 神田博

    神田委員長代理 聽濤克巳君
  39. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 今提案者の説明を聞きますと、これを今町村に拡大しましても、全國的に行われる心配はないというようなことでもつて、盛んにこの案の弁護をしておられたようでありますが、弁護しなければならぬようなこういう法案は、始めから出さない方がいいのであります。特に法案を出しておきながらその可能性はないということを、盛んに提案理由の中に言わなければならぬような法案は、初めからおかしな本質を持つておる。大体共産党はこれに対して三点をあげて反対いたします。  第一には、これは地方財政が非常に窮迫しておるから、その一助にするということを言つております。それによつて何か地方の人に対して、明るい希望を與えるかのごとく言つておりますが、一体今の政府予算によりますれば、地方配付税にいたしましても半分に削られてしまい、公共事業あるいは六・三制の予算にいたしましても、まことに無慈悲な地方財政に対する圧迫を加えておきながら、一方においてちよつと何かあめのようなものを出そうとするこの魂胆に対しましては、まことに心外にたえないのでありまして、反対の第一の理由はこの点であります。  第二には、やはりこういうものが出ますれば、ほんとうにこれを実施する必要があるわけです。これをほんとうにまじめにやつて行きますれば、地方におきましてもやはり競技場もどんどんつくつて行かなければならぬ。ところがつくつて行きますれば、やがて全國的にやはり耕地をつぶして行く問題も出て來る。地方の農民に対する重大な問題も起つて來るのであります。こういうふうな今日の状況の中で、まことに無計画にこういう重大な内容を持つものを出すことに対しては反対であります。  第三点といたしましては、最近は競馬であるとか宿くじであるとか、盛んに政府は賭博の奨励をやつておりますが、競技の問題もやはりその一部をなすものでありますが、賭博的要素を多分に持つておる。日本國民に対して賭博の奨励をするがごとき本法案に対しましては反対いたします。大体以上の三点で反対いたします。
  40. 神田博

  41. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 私は賛成の意を表明いたしたいと考えております。この自轉車の改良あるいは増産がよりよく進められるであろうという観点、從つてさらによりよき自轉車の輸出に対して寄與するであろうと考えられます。こういう点からまず考えまして本案に賛成をいたしたいのであります。なおとかく地方財源の貧困が嘆かれておる折柄でありますが、この法律案の実現によつて地方財源に若干の増收が予定せられるのではないか、そういう希望を持つことができるという点も、賛成をする一つの理由であります。ただ一点問題になると思いますのは、ただいま御発言がありましたようなこの法案の実現によつて、善良な地方町村の人々に賭博の習性を植えつけるおそれがあるのではないか、こういう御心配、ただいまの共産党の御発言は、私はまことにごもつともな御意見であると考えます。しかしながらこれをしさいに考えてみると、現に競馬法なるものもある。競馬法が許されております理由の一つは、これによる弊害を認めながら、これによつて受けるところの財政上の收入というものの利益考え、功罪いずれが大なるやを考えた結果、確かにプラスとなるという認定のもとに、これが行われておるわけであります。以上申し述べましたような諸点の理由は、地方自治体における公益の観点から考えてみて、若干ただいまの御心配のような賭博の習性を植えつけるおそれなしとするやという御心配と比較いたしますときに、私は多少の弊害はこれを補うてなお公益的に余りありと考えますので、本案はすみやかに施行することを必要とすると考えまして、賛成をする次第でございます。
  42. 神田博

    神田委員長代理 これにて討論は終局いたしました。引続き採決を行います。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  43. 神田博

    神田委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  次に衆議院規則第八十六條による本案委員会報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 神田博

    神田委員長代理 御異議なしと認めます。委員長に御一任願つたものと決しました。     —————————————
  45. 神田博

    神田委員長代理 次に鉱山保安法案を議題として審査を進めます。質疑を継続いたします。川上貫一君。
  46. 川上貫一

    ○川上委員 鉱山保安法案審議について、昨年來問題になつております鉱山保安の設置に関係して、鉱山の経理の問題が出ておるのでありますが、これは商工大臣並びに管理局長の出席を求めて質問をいたしたいと思います。そこで至急に商工大臣と石炭管理局長の御出席を求めます。御出席になつたときに質問いたしたいと考えております。
  47. 神田博

    神田委員長代理 商工大臣、管理局長を委員会に出席要求しておりますが、ただいま司令部に行つておりまして、十二時ごろでないとちよつと出かねるという御返答であります。そこで他の政府委員あるいは説明員の諸君が参つておりますので、その方々への御質疑を続行せられたいと思います。
  48. 今澄勇

    今澄委員 この鉱山保安法の問題は、先般大きな問題については商工大臣に御質問いたしましたが、私は労働省が持つておるところの珪肺研究所、鉱山の保安に関してはいろいろな問題があるのでありますが、珪肺研究所はいまだ商工省関係の所管には入つておらない。しかも珪肺は鉱山從業労働者の専門の病気のようなもので、こういうものに関する研究などには非常に困難を生ずると思いますが、商工省の方へそれらの珪肺研究所の設備を移されるのか。それとも別個につくられるのか。どういうふうになさいますか。御答弁を伺いたいと思います。
  49. 曽根文二

    ○曽根政府委員 珪肺の問題につきましては珪肺、炭肺等の起らぬように、作業上においてそういうふうな粉塵の発生をできるだけ少くして危害を防止するということは、この法案法で取扱いますが、珪肺になつた者は医療対策等の事項は保安法の適用外の問題でして、從來通り珪肺研究所でそういう問題は取扱つて研究してもらうことになつております。
  50. 今澄勇

    今澄委員 その点もわれわれほんとうに労働本位に考えてみると、まことにおざなりなお考えであるわけですが、見解の相違で、どうも大声を発したところでしかたがない。私はもう一点だけついでに聞いておきます。いろいろこの鉱山保安法にうたわれていて、大臣や曽根さんからも御答弁がありましたが、一例をあげれば金詰りのために坑木の代金を半年以上にわたつてよう拂わない。そうすると坑木業者は炭鉱へ坑木をよう入れないことは御承知の通りであります。ところが炭鉱へ坑木が入らないとすると、古い坑木でそう鉱山労働者その他の生命が保障されるはずがない。やはり災害がいくら論議されてみても、そういう大きな金詰まりの問題一つを見ても、鉱山労働者というものは古い坑木のもとに非常に危險にさらされる。私は珪肺の問題についてもいかなる問題についても、この法律案では今言つたそういう資金の問題やら資材の問題やら、いろいろのものがみなこういう状態になることを非常に恐れるのでありますが、今の坑木の問題についても、有田政務次官はこの鉱山保安法と、そういう資金関係から代金が拂えないで坑木が山に入らないということについては、どういう御見解をお持ちになつておるか、承りたいと思います。
  51. 有田二郎

    ○有田政府委員 まる炭関係資材の資金の問題につきましては、日銀その他とも目下折衡を続けておるのでありまして、これらの支拂いを円滑にするために政府としては最善の努力をしておるのであります。從いまして今度のこの保安法によりますと、いろいろの欠陥もあると思いますが、政府としてはこの法案の線に沿うて、できるだけの努力をして行くということを考えておるのであります。
  52. 今澄勇

    今澄委員 今の坑木の問題だけを取上げてみても、銀行がいろいろ融資をしあつせんをすると言うけれども、現実には非常に労働省に大きな不安を與えている、半年間も代金を拂わなければあと坑木が入らないことはわかりきつている。そうすると非常に鉱山に大きな不安を與える状態ができるのでありますが、こういう状態について鉱山保安法が通つても、これらのものを担当する係官がそういう問題で非常に困るであろうと思う。こういう点については、ただ善処するということだけでは、片方は生死の問題であり、片方は金融ができれば金を拂い、それから坑木が入るのである。こういう状態のもとにおいては、私は労働者の保安が保たれるわけはないと思う。それはせんじ詰めればきのうもいろいろあつたけれども、四千二百万トンの生産達成のために、一例を申し上げたのですが、こういう資金の問題で即座に集中的な生産方式をとられたら、低品位炭の小山の労働者は非常に大きな脅威にさらされると思う。こういう問題について何か抜本的なこれらの労働者に対する対策を打立てなければならぬと思う。そこで曽根さんにお伺いしたいのですが、もしそういう状況が出て、たとえば坑木が古くなつてつぶれそうになつておる。それに対してなかなか支拂い関係がうまく行かぬから、新しく補充しようと思つても補充できないというような場合には、何かそれを打開する強力な措置をとられるような計画その他のものがおありでございますか。ひとつ専門家としての御意見をお聞きしたいと思います。
  53. 曽根文二

    ○曽根政府委員 ただいまの坑木の炭鉱に対する供給、それから資金の支拂いの問題は、この保安法で直接取扱う問題ではございませんが、この法案施行になりますれば、やはりこの法案の裏づけなりあと押しによりまして、鉱業権者はどうしても坑内作業を安全にするための坑木供給については、明確にその責任が生ずることになるわけでありますので、そういう点で極力炭鉱なら炭鉱の経営のやりくりをいたしまして、絶対に安全作業のために必要なる坑木の資金を生み出し、坑木を確保するということに努力が拂われるようになると思います。また具体的にどうしても坑木の供給もなくして、作業が非常に危險であるというような事態が起りますれば、この法案に基きまして所要の監督命令を出して、安全をはかるという措置も講じたいと思つております。
  54. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 第一にこの法案商工省の専管にしておることにつきまして、昨日ほかから質問がありまして、労働省と商工省との間の考え方などについての質問もありましたが、どうも鉱山の災害の問題は、被害者は労働者でありまして、労働者の身体生命の、危險を守るというのが、本案の根本の趣旨でなければならぬと思う。そうしてこれは事実労働者の間でも再三再四労働省所管としてやることを要求して來ておつたのは事実であります。今度はそれが全然無視されてしまいまして、商工省移管になつております。ところが商工省の鉱山に対するやり方は、從來の実例から申しましても、鉱山保安の問題などは常に從属的にしか考えていない。結局何でもかんでもそのときの政府の政策によつて生産の面だけ増産のむちを打つことだけしかやつていないのであります。こういう商工省がこれを所管したということに、非常に大きな問題があると思うのであります。事実このために今まで災害の生ずるような設備がありましても、あるいは労働條件の問題がありましても、すべて増産のためにはやむを得ぬのだというのでやられて來ておりました。そのことこそ事実災害を非常にふやして來ておるのでありますが、一体商工省では鉱山保安の問題を、数万の犠牲者を出しておるこの災害の問題を、何のために労働省の所管にしないで、あくまで商工省の所管にしたか。どうもこれには官僚のなわ張り的な気持も、この間に働いているように思うのでありますが、從來の実際のやり方に対して、今後の商工省考え方をもう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  55. 曽根文二

    ○曽根政府委員 鉱山の保安を商工省で一元的に所管するということに決定になりました趣旨は、結局一應労働基準法の制定によりまして、理論的に鉱山の保安の中から、労働者の危害の防止というものと、鉱山の保安というものを分離してみるという建前で一應わけられたのでございますが、それを実際にわけるということになりますと、これから申しますような理由によつてわけられないということで、また所管問題が一元的に從來のようにしなければならぬということになつたわけであります。第一番の理由といたしましては、鉱山の主として地下における作業の特殊性からいたしまして、生産という作業の保安という事項がわけられない。これは車の両輪ということではなくて物の表裏というような関係にありまして、どうしてもわけられない。たとえて申しますと、坑内で切羽を立てて作業計画を立てるということは、これは生産計画でありますが、これとともにそれ自体が保安計画であり、通気をどうする、運搬をどうするということすべてが、保安事項から集まつておるような形になつております。そういう関係でどうしてもわけられない。それからまた鉱山の保安というものは、鉱山に働く労働者の危害を防止するということが主眼目でございますが、それだけが鉱山の保安ではございませんで、鉱山の鉱業施設設備の保全をする。それから有限な地下資源の鉱利を保護する、こういう見地からの鉱山の保安というものがあります。それからまたもう一つ公益の保護という建前での被害防止という面から見た保安というものがありまして、これら三つのものが一体化してこういうのが鉱山保安ということになりますので、やはりこれもわけようとしてもどうしてもわけられない。それからまた欧米その他ソ連など各國の行政官廳の機構について見ましても、生産の所管官廳と保安の所管官廳は、頭で一本になつた機構でやつておるというような諸外國の実例をもあわせ考え、またただいま申したような趣旨から、商工省に一元的に所管するというふうに決定になつたことと思つております。これでしからば商工省で所管いたして保安行政実施いたす場合に、生産行政のための犠牲になつて保安がおろそかになりはしないかということが、縣念せられると思うわけでございますが、その点につきましてはこの保安法の中の監督機関の章におきまして、十分に強力な態勢を固めていただきますれば、生産のために犠牲になるということでなしに、十分な協力な監督の態勢がとり得るのじやないかと思います。それからもう一つそれでもなおいろいろな問題がございます場合につきましては、全般的の労働行政の所管官廳である労働大臣並びに労働基準局長から、それぞれ商工大臣並びに鉱山保安局長に勧告するような條項を、ここのちやんと明文として織り込んでございますので、その運用によりまして、ただいまの御縣念のような点は十分に措置し得るのではないかと思つております。
  56. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 どうも商工省の官僚の御説明は、いつも車の両輪であるとか、まことにけつこうなことを言つておりますけれども、私が特にお聞きしたいのは、今度の鉱山保安法が出ませんでも、今までにもいろいろな現行の取締り規則があるわけです。この中にはやはり災害の問題やいろいろなことが書かれておるわけです。これをほんとうに嚴重に実施したと思つておるのかどうか、その点をひとつお聞きしたい。
  57. 曽根文二

    ○曽根政府委員 これは提案理由の中にもございました通りに、現行の法規におきましては、若干責任態勢が明確でないような点がございまして、つまり鉱業権者と技術管理者との間の責任の関係その田につきまして、運用について不明確な点があつて遺憾な点がございました。そういう点を今度の法案におきましては、はつきりと鉱業権者の義務を明確に措置すべき事項として規定した。そういうことによりまして、從來よりもはるかに強力な保安の行政が運営されるということを期待するわけであります。從つて從來の鉱業法並びに鉱業権法の運用につきましては、権力万全を期した努力しておりましたけれども、ただいまのような点で若干遺憾な点があつたということは言えると思います。
  58. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 それでは重ねてお尋ねしますが、われわれがこの審査のときに再三例証をあげておりますように、終戦後でも逐年非常に災害の激増を示しておりますが、その激増がそういう法案の一点の不備から起つたとあなたはお考えになつておりますか。
  59. 曽根文二

    ○曽根政府委員 災害の問題につきましては、大要はお手元の資料でおわかりと思いますが、変災の状況の傾向を見ますのには死亡者、負傷者の現数を見ますだけでは、はつきりとその程度がどういうふうに変更しておるかということはわからないのでございまして、現在の統計の取り方といたしましては、年に千人当りの災害率がどういうふうな関係にあるかという点が、大体変災がどういうふうに動いて來ておるかというパロメーターになると思います。その数字を見ますと、終戦後若干上向きになつておりますが、その上向きになつております程度は、結局死亡者の率につきまして申しますと、昭和二十年が千人当り年に三・五人でございます。二十一年には二・七人、二十二年には一・七人、それから二十三年度はまだ正確な数字になつておりませんので見込みでありますが、一・七人というような数字になつておりまして、必ずしも上向きにどんどん非常に増大しておるというような傾向はございません。それから負傷者の方を見ますと、二十一年の数字から申しますと二十一年が百八十人、二十二年二百一人、二十三年百八十三人というように若干上向きになつております。これは一番大きな原因といたしましては、終戦後鉱山における労働者の構成が非常に大幅にかわりまして、從來外地の労働者が相当多数入坑して仕事をしておりましたのが、全部終戦後引上げまして、新しくかわりまして、最低二十一万人ぐらいに下つたのでございます。それが既数で申しまして、ただいま約五十万人、三十万人ばかり急に二、三年のうちに増加しております。從來は大体鉱山に働く労働者の内容を見ますと、五年以上その坑内に働いておるという人が五〇%以上というのが通例でございましたのが、そんなわけでむしろ二、三年未満という人が大部分になつたのであります。從つてその坑内の作業に対して、つまり坑内の保安作業に対して熟練度が非常に低くなつた。こういうような点がこの軽傷が非常に多くなつ一つの原因であろうと思います。それに対しましてこの保安法といたしましては、できるだけ係員その他の技術的の水準を高めて保安管理の態勢を擁護し、また保安教育というものを規定しまして、できるだけその全般的の保安思想の引上げに努力する、重心を向ける、そういうふうな方法で解決して行きたいと思つております。
  60. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あなたの御回答を聞いておりますと、災害がそう大してふえていないのだということを言いたいと思つて、そういう例証をあげておられるようであります。このことについてはほかにも質問がありますから、あまりこのことでやろうとは思いませんが、しかし事実鉱山保安部でつくつておる災害概況の中にも、戦争前の水準に比べて、戦後の最近の上昇率というものは非常に高いということも指摘している。そのほか現場の労働者などから、災害が非常に累積しておるので、やはり鉱山の災害の取締りと言いますか、民主的な鉱業法であるとか、保安規則というようなものをつくる必要があるということは叫ばれて來ております。こういうことはもはや議論のないところでありまして、商工省におきましてもそういう事実を見て、今後増産をやつて行く上に、この災害の問題が非常に大きいからこそ、この法案提出された理由があるはずであります。もしそうでなければこういうものは初めから必要がないのであります。そういうことを言われることははなはだ遺憾であると思います。その点はもうこの程度にしておきますが、それならば商工省では今までこういうふうに災害の問題につきましていろいろ監督をやつて來た。それならばこの災害の問題につきましては、一方において職場の実際の状況、最近現われておりますところの増産のためにむちを加えられて、相当むりな作業をどんどん続けている。これは鉱山の専門家として当然考えなければならぬ問題であります。こういう状況では災害のふえることは当然のことであります。そういう点について一体どういう監督の責任をとつて行くのか。また先ほどのお答えの中に、設備の保護であるとかその他についてこういう監督をやつて來た、またやるんだということを言つておりますが、昨日問題になりましたような復金の融資についても、非常に疑惑をもたれておる。一体この二点について商工省ではどういう責任をとつて、実際上監督を行つて來たか。この点を具体的に御回答願いたいと思います。
  61. 曽根文二

    ○曽根政府委員 現実行つておる監督の機構といたしましては、鉱業法に基く鉱業警察規則、石炭坑爆発取締規則に基いて、特にガス、炭塵の爆発の危險の多い炭鉱につきましては、坑口を指定して、保安監視を一段と強化した体制をとらせるために措置については、終戦後も北海道、九州地区におきまして数炭鉱に新たに設備として坑口を追加し、管理体制を強化し、また監督機構につきましても、各地方機構としましては石炭局、商工局にそれぞれ鉱務監督官を配しまして、できるだけ特に危險の多い炭鉱の監督巡視を十分いたしまして、事故を未然に防止するという体制をとりたいと思つております。その点は若干予算等の制限もございますので、完全とは申し得ないと思いますが、特に危險だと思われるような坑内については、できるだけ監督官を配して事前に十分な監督をさせ、それぞれそのたびに具体的に、この扇風機はどういうような管理状況であるから、こういう点を直さなければならぬ。あるいは岩粉の使用状況がどういうふうであるから、この程度まで引上げなければならぬというような具体的な指示をいたしております。
  62. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 あなたはそんなことを言いますけれども、それではまじめな回答にはならないのです。事実鉱山の現場におきましては、どういう状況があるかということをあなたは御存じかどうか。保安の問題についてどういうことが実際上実情として現われているかということを御存じでありますか。最近の災害がこれだけ起つておるという現場における実際の状況を知らずして、この問題を扱うことはできない。これは一体全國的にどういう状況が出て來ておるか。全國的にこれを実際にあなたが把握しておられるかどうか、お聞きしたい。
  63. 曽根文二

    ○曽根政府委員 全國では多数の鉱山数でございますし、それから実際の現場はさらに多数になりますので、もちろん私直接にその全部を把握することはちよつとできかねる問題でございますが、ただいま申し上げましたように、各地方機構におきまして、十分に各作業場の末端まで、現在の保安状況がどういう程度になつておるかということを、十分に把握いたしておると信じております。それでまた特に地区ごとに重要な問題で、少くとも重軽傷を合わせまして五人以上の天災が起りましたときには、必ずその原因はどういうことであるか。また善後処置はどういうふうになつているかという詳細の報告は、全部私どもの方に参つておりまして、そういう点を通じて現在の保安状況がどういうことであるかということも、よく承知いたしております。
  64. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 結局あなたは何も知らないような実情のように思います。これはほんとうに保安法を提出するとなれば、現場にこういう災害が起つて來ておる。この問題についての実際の状況というものを、ほんとうに調べて把握しておかなくて、どうしてこんなものを出されるわけがありますか。事実この問題は現場の状況と密接な関係があるのであります。これなくしてこんな保安法を提出するということは、何の意味もなさない。現に今まで商工省は監督の任に当つておりながら、実際の実情をここで述べることもできない。そういうことで保安法を提出されるというのは、まことに無責任きわまる話であります。大体いろいろなことがありますけれども、現在どういう状況が出て來ているかと言いますと、現場におきましては実査のところ炭鉱の労働者は保安規則を全然知らされておりません。大体経営者の方ではこの保安規則を労働者に知らせることを一切サボつております。そういうことを全然無知識な状態に置いておりながら、保安のことなんか何も言いません。そうしてただ増産々々とやられている。また現場における災害事故の全國的に現われておる状況はどうかということは、監督に当る官僚が実地調査をよく行つておりません。また責任もとつておらない。組合なんかが実際に官僚に対しましてこれを要求しましても、大体法的に罰則がないからということで逃げておるような状況であります。こういうことを実際あなた方は全然お知りにならないのか。無視してやつておられるのか。坑内におきましても衛生管理者を選定すべきところを、責任者という者は事実上選ばないで、ほとんど放置されておる。そうして坑内の衛生と災害の場合の救援すらも十分行われていない。坑内の救急箱の中には赤チンキとほうたいだけしか入つていないという状況が幾らもある。また一番大きな爆発やいろいろの原因になりますガスの量であるとか、あるいは坑内のいろいろな危險防除、こういうものに対しまして保安の係員という者は事実上どういうことをやつているか。その処置につきましては、單に会社の上役に報告するにとどまつておる。労働者に対しては、まつたくそういうことを知らせていない。こういう状況であります。またこのほか自然通気の問題ですが、これは扇風機や設備の状況、気圧やその他によつて非常に変化するが、どこへ行つても実際上規定通りの通気が行われている所はほとんどないのである。一体こういうものに対して何をやつて來ているか。何もやらないで、鉱山保安法という法律を出せば、これで危險がなくなるということはとんでもない話である。あるいはまた犠牲者に対する保安までも、まつたくむちやくちやなやり方がやられております。あるいは坑内で死亡した場合でも、病院に運搬されて、病院死というふうな処置で行われていたというような、いろいろな状況が現われている。しかも今度は炭鉱の企業の合理化ということで、例の物品料なども四〇%ばかり切詰められている。いままでこのために坑木その他火薬、いろんなものが実際上非常に不足している。こういうことの危險はますます増大するということで、現場の労働者はほんとうにこの危險を感じている。こういう状況に対して、あなた方は何もここで報告することはできない。そういう無責任な態度でこれを出されているということは、まことにけしからぬ話だと思います。また設備の保全と言つておりますけれども、大手筋はともかくとしまして、現在の中小炭鉱の実情から言つて、保安の設備なんかできるような資金、資材は何もない。そういう状況を放置しておきながら、そういう問題について全然触れないで、そうしてもういう保安法案を云々している。また事実先ほども、過去におきまして不十分であつたのは、予算関係や何かで不備な点があつたからできなかつた言つておりましたが、今度法案を出されても、大臣も現にこれについての予算の裏づけは今のところ準備がないと言つている。一体こういうことでもつて、あなたはどういうふうにこの保安法をほんとう実施して行こうと思つているか。これに対して実際上この委員会提出して、これほどりつぱな法案でありますと大きな口をきいておいて、どういう責任を実際にとられる覚悟があるか。その点をお聞きしたいと思います。
  65. 曽根文二

    ○曽根政府委員 実態の把握について不十分であるということでございますが、われわれといたしましてはできるだけあとう限りの実態の把握にもつとめて、その現在の事実に基いて、この法案はそれを十分に織り込みまして、今後より一層よくするためにつくらなければならぬと考えている次第でございます。それから山へ規則が全然通知されておらないということでございますが、安全心得というものは必ず各鉱業所の現場に提示さして、十分に周知させるという態勢でわれわれは指導して参りましたし、私どもが山をまわつたときにおきましては、全部この眼でそういう実情は見て参つております。  それから監督の問題につきましては、ただいま予算の措置等の関連性については御質問がございましたが、先日大臣が御答弁になりましたのは、この保安法施行に伴う資金の裏づけの問題でございまして、政府予算といたしましては、一應四千九百万円だけ計上されております。それで監督巡回につきましても、今後重要な爆発危險のある炭鉱につきましては毎月、その他の炭鉱につきましては四回に一回というような程度に、十分現地監督をやるというようなことで、その点遺憾なくやりたいと思つております。
  66. 神田博

    神田委員長代理 川上君。
  67. 川上貫一

    ○川上委員 先に私が質問を留保しておきまして問題でありますが、大臣がお見えになりましたから留保した問題を質問いたしたいと思います。これは昨日からわれわれが質問いたしている問題でありまして、鉱山保安に関係して炭鉱経理の問題であります。これについて昨日は麻生炭鉱の経理、この問題をわれわれが問題にして、そして経理内容の乱派、内容の不正、帳薄の不途、こういうことについて質問し、なおこの会社が麻生一家の個人的会計を一緒くたにして支拂つているばかりでなしに、非常に不当な経理、不当な支出、不当な仮拂いをしていることについて報告を求めたのであります。そしてその報告は商工省の方に集まつておりまするところの炭鉱の経理に関する監査の資料を求めましたところが、昨日融資先監査資料その二、いま一つは復興、金融金庫大口融資先監査資料その二、昭和二十四年四月、どちらも同じ日付でありますが、大蔵省と石炭廳という二つの資料の配付を受けたのであります。この資料の中に麻生炭鉱に対する監査の報告が載つておりまするが、私が昨日質問いたしました内容については、この二つの資料の中には出ておらない。そこでひとつお聞きしたいのでありますが、私は昨日要求しましたのは、麻生炭鉱株式会社、資金監査報告昭和二十四年一月十四日付で、大蔵事務官田中英夫君、商工事務官眞鍋勝郎君外四名の報告書が出ているはずであります。この報告書を求めたのでありますが、こういう調べは昨日の御答弁ではない。商工省当局では知らないことだ、こういう御答弁なつたのでありますが、この点についてはつきりと商工大臣にお聞きしたいのであります。この二つの資料以外に商工省には炭鉱の資金監査をなさつたものはないのでありますか。これは全部ここに出ているのでありますか。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  68. 稻垣平太郎

    ○稻垣國務大臣 商工大臣にということでありますから、お答えいたしますが、最初お手元に差出した以外にございませんことを申し添えておきます。なお差出したものの内容についての御不審がございましたら、監査課長が参つておりますから監査課長から説明させます。
  69. 磯野太郎

    ○磯野説明員 簡單に御説明いたします。昨年十一月から十二月にかけまして監査を行いましたけれども、その監査の対象につきましては、これは復興金融金庫融資のみを対象といたしたのでございます。  次に麻生の件でございますけれども、麻生鉱業の復金融資の使途につきましても、大蔵省石炭廳といたしまして、不正または不当の支出はないという認定を下しております。以上でありまして、計数的な関係はお手元に差上げました資料に載つておりますけれども、御不審の点があればお答え申し上げます。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 復金融資に関しては、昨日も管理局長から腹金融資に関しては不正その他の事実は認められないという回答だけあるのでありますが、私の質問いたしておりまするのは、復金融資に限つておらない。株式会社それ自身の経理で、厖大なる國家の保護を受け、非常に大きな資金の供給を受け、赤字補填を受け、絶大な保護を受けた上でやつているところのこの会社が、資金を非常に不正当に使つているという事実についての監査があるはずであります。この監査があるのかないのか。これを聞いている。復金融資の御説明についてはこうだという御説明があるのでありますが、われわれが調査しているところによりますと、ここの内容に出ているものはもとがあるはずである。このもとは復金融資以外に散らばつてないはずだ。これがあるのかないのか、これを質問している。この資料があるのですか。ないのですか。これしかないのですか。これなんです。
  71. 磯野太郎

    ○磯野説明員 今のその資料があるかという御質問でございますけれども、石炭廳の当時行いました監査の報告書といたしまして、つまり石炭廳の公文書たる報告書といたしまして、そういうものはございません。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 石炭廳の公文書としてのというようなことを聞いておるのではない。石炭廳あるいは商工省にかくのごとき監査をした報告書が、調査をした者から出ておるかおらないか。これがありますか。ないのですか。こういう調べをしたことがあるのですか。ないのですか。この調べの内容は必ず商工当局の方は知つておらなくてはならない。これを知つておるならば、麻生炭鉱がいかに不都合なことをやつておるかということはきわめて明らかです。これの資料がないのですか。あるのですか。
  73. 磯野太郎

    ○磯野説明員 繰返して御答弁いたしますが、そういう資料はございません。
  74. 川上貫一

    ○川上委員 これは商工当局の方のお話ではこの資料はないということになつております。そういたしますと、私の方のこういう資料がないかということを質問いたしておりますのは、これは空なものになつて来るのでありますが、この問題はきわめて重大だ。これはおそらく商工委員会だけではなしに、あるいは大蔵委員会においても問題になる。あるいは考査特別委員会でも問題になる。これは商工当局ではないと言われる。われわれの方はあるんじやないかということを考えておる。私の方の資料によると、これは大蔵事務官田中英夫、商工事務官眞鍋勝郎、松尾邦重、熊本昇、鳥取善衞という名前によつてこれが担当せられ、昭和二十四年一月十四日にこれは出ているはずである。しかしこれがないと言われる。將來これが出て來ましたらどうなりますか。このものがあるということになりましたらどうなるのですか。
  75. 磯野太郎

    ○磯野説明員 これは最初御答弁いたしましたように、そういうものはございません。
  76. 川上貫一

    ○川上委員 そこで、ないというお話になりますとこれは非常に重大だ。これは私の方にも責任がある。麻生炭鉱にこういうことがあるんじやないか。きのうは具体的に言つたが、ちようど大臣がおられませんでしたが、麻生家に対する会社の貸残にしても莫大なものがある。昭和二十三年の六月には百五十六万六千円であつたものが、だんだんとふえて行つて、二十三年の九月には六百二十三万五千円になつておる。そこでこの報告場にはこの仮拂いの高は漸次ふえておる。経理はきわめて適当でないと書いてある。これははつきり出ておるのであります。しかもこれは年四分の利子をつけておるけれども、事実は少しもとつておらない。その使途が不明であるということが商工事務官、大蔵事務官の名前で出ておるとわれわれは解釈しておる。それをおなたの方では全然そういうものがない、そういうことをしたことがないとおつしやるのでありますれば、これは私の方が何かうそのことを言つておることになる。こうなることははなはだ困る。もしそういうことになりまするならば、この商工委員会において、大蔵事務官、商工事務官の名前で出ておりますからその人をここに出席させてもらいたい。そうして事実の有無について明らかにしていただきたい。こうしなければ問題の解決は決してつかない。しかもその上に麻生炭鉱は素矢六百トンをやみに流しておるという事実がある。厖大なる脱税をしておるという事実がある。千五百トンに余るものを徴粉炭と称して、二十三年の夏ころに市場に流しておる。こういう事実がある。また二十三年には長某というものに対して豆田炭鉱という、これは非常にいい炭鉱で月産千六百五十トン出る。カロリー千五百ないし六千四百と言われるものをたつた二百万円で売つてしまつておる。それから山ヶ野鉱業所に対する仮拂い一千三百十三万五千円ある。ここへこつちの金をつぎ込んでおる。こういう大きな事実があるのに商工当局はお知りにならない。そうしていくら保護を與えてもいくら厖大な融資をやつてつても、この鉱山における保安設備の腐朽は少しも改善されておらない。ここに大きな問題がある。この問題を商工省はお知りにならない。調査したこともないということになると大きな問題だと思う。そこでこれが事実そうであるかどうであるかということについて、この事務官を出席させていただきたい。
  77. 稻垣平太郎

    ○稻垣國務大臣 今川上委員からいろいろ御質問がありましたが、商工省の建前といたしましては、復金融資の使途について檢査することは当然の職務でありまして、これをやつたわけでありますが、個々の会社のすべての経理の内容に立ち至つて商工省が見るということになりますと、商工省管下のいろいろ融資その他のあつせんをいたしております会社の数は、非常に大きなものでありますので、商工省はさようなところに立ち至つておりません。できるだけ経営者の企業意欲を損じないように、そういうものに立ち至つておりません。そこで商工省の炭鉱の融資に関して調べましたのは、いわゆる復金融資がどういう方向に行つておるかという点についての調査をいたしたことを、ここで繰返して申し上げておきます。なお今川さんのお手元に資料があるというお話でありまして、その人たちの出席云々というお話でありますが、一体どこからその資料をお手にお入れになりましたか。その点をひとつ伺わしていただきたいと思います。
  78. 川上貫一

    ○川上委員 これは私の方に必要があればどこから入つたかということを申し上げてよいのでありますが、私の質問しておるのはこういう事実があるがないかということで、何もどこから入つたかということを言う必要はない。かくのごときことを放任しておるから鉱山の保安ができない。ここに根本の問題がある。
  79. 神田博

    神田委員長代理 川上君の御注意いたします。鉱山保安法案の内容についての御質問は許しますが、その他の質問はひとつ御遠慮願いたいと思います。私からもちよつと申し述べますが、商工大臣であるとか商工省の担当官はさような事実はない。さようなことがどこから出たか。証拠を見せてくれと言つておられる。それを見せないでやつておるのはおかしいじやないですか。どうも委員会の空気全体を見ても、少し皆のお考えと違つておるように私は思いますので、これはもつと内容にわたつた、もつとしつかりした基礎に立つてお尋ねしていただかないと、他の委員諸君が迷惑するだろうと思います。
  80. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 委員長がかつてにそういうことをさばかれるのは……。
  81. 神田博

    神田委員長代理 かつてじやない。全体の空気です。
  82. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 これは昨日から重要な問題として提議されておる。そうして私は……。
  83. 神田博

    神田委員長代理 まだ許しておりません。(発言する者あり)発言を許しておりません。ちよつと持つてください。発言は許さぬです。
  84. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 議事進行について……。
  85. 神田博

    神田委員長代理 田中君。(「私が発言を求めているじやないか」と呼ぶ者あり)許しません。(「許しませんとはどういうわけだ」と呼ぶ者あり)この法案規定に基いてやつておる。(発言する者あり)私語を禁じます。(「私語じやない」と呼ぶ者あり)私語です。委員長の発言の許可のないものは私語です。(発言する者あり)委員長の職権にやつておる……。議事進行の発言を許しております。(発言する者あり)あとで発言の許可を求めてください。議事進行の発言を許します。(「私の方が先だ。議事進行の発言はあとのことだ」と呼ぶ者あり)それはあとにしてください。議事進行は許す例になつていますから……。
  86. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 この法案審議の対象は、少くともその法案に直接関係のある事項でなければならぬ。個々のできごとをとらえて、法案審議に関して議論を長時間やられることは、審議の立場からは迷惑であります。その事態が全國の各所に共通する事項であるという場合においては、個々の事件といえどもこれを取上げて、法案審議にその資料とすることはやむを得ないと思う。本件のごとき特定の事件に関しては、事実の有無にかかわらず審議をせられて、そうして当局はそれに対して事実のないことを言明しておられる。これ以上論議を盡すことは私は審議の建前から迷惑であると考えるので、法案の内容に直接的の関係のない問題につきましては、この際御遠慮を願いたい。で、論議はこの程度をもつて一應打切りまして、ただちに討論に入られんことを希望いたします。
  87. 神田博

    神田委員長代理 ただいま田中君より質疑は大体終了したと認める。そこで重複することが多いから……(「じようだん言うな。そんなむちやなことがあるか」「採決々々」と呼び、その他発言する者あり)質疑打切りの動機が出ておりますので、この際田中君の動議を採決いたしたいと思います。質疑打切りの動議については討論を用いないでただちに採決いたしたいと思います。田中君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  88. 神田博

    神田委員長代理 起立多数。(「君はこういうむちやくちやなことをやるのか」「休憩々々」と呼ぶその他発言する者多し)  暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩     —————————————     午後二時二十九分開議
  89. 神田博

    神田委員長代理 休憩前の引続き会議を開きます。  鉱山保安法案を議題として審議を進めます。この際聽濤君より議事進行に関して緊急の発言を求められております。これを許します。聽濤君。
  90. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 本日午前の鉱山保安法審議中における委員長の無礼きわまる態度にかんがみまして、私は委員長不信任の動議を提出いたします。  大体この商工委員会におきましては、つとに正委員長がきまつてつたにかかわらず、大野伴睦氏はかつて姿を現わしたこともない。また今日までの議事状態を見ましても、商工委員会は今まで非常に議事をサボつて來た傾向が非常に強く現われております。しかもあとほんとうに数日を残すのみになつた今日になつて、急遽鉱山保安法を初めとして重大な法案を一挙に提出いたしまして、これを時日なくしてごく簡單な審議によつて通してしまおうというような傾向が非常に現われております。こういう議事の運営の仕方に対しましては、委員長としてほんとうに責任のある問題であろうと、私は第一に考える次第であります。これが第一点。さらに第二としましては、委員長はしばしば一方的に発言を封じたり、あるいは取上げたり、かつて気ままのことをやつております。たとえば昨日私は麻生鉱業の問題が提出されましてから、この問題は政府側の資料の提出されるまで、この法案審議を中止すべきであるというこの委員会の運営についての動機を出しましたが、これは採用になりませんでした。そうして逆にあと続いてやる場合には、この問題を取上げるということにすりかえられてしまいました。しかしながら本日は私並びに川上君の発言継続中であるにかかわらず、突如として質疑打切りの動議を委員長は採用しておる。まつたくあれを取りこれを封鎖するというような、きわめて一方的な行動を終始とつておるのであります。これが第二点。第三点といたしましてはこの議事運営について、ほんとうに質疑が終つていないにかかわらず、またわれわれ両名が質疑を継続中であつたにかかわらず、突如委員長はかつてにいかなる権限に基いてか知りませんが、議事運営の規則によりましてもそういう権限の保護があるとは考えられないにもかかわらず、われわれの発言を封鎖しておいて、そうしてああいう動議を突如採用しておる。こういうやり方が今この商工委員会に重要法案提出されておるさ中において行われたことにつきまして、まさにこれは議事の民主的な運営を妨害し、封鎖しようとするはつきりした意図に出ておると思うのであります。このことを、ひいてはこの委員会権限、権威というものを破壊し、さらに議会の権限、権威を破壊する行動であると思います。私はこのゆえにかかる委員長のもとでは、こういう重要な法案審議は決してできないものでありますから、ここに神田委員長——これは代理かもしれませんが、不信任の動議を提出いたします。絶対不信任であります。
  91. 村上勇

    ○村上(勇)委員 私はただいまの聽濤委員の委員長不信任の動議に対しまして反対する者であります。その理由は午前中の委員会における聽濤君の質問は、この鉱山保安法案の内容と相当ヒントがはずれておるように、私ども初めほとんど各委員が感じたのであります。麻生鉱業の問題を取上げておりましたけれども、これに対する政府側のそういうことは絶対にないという答弁にもかかわらず、再三再四これを追究して、ついに委員会を混乱とは行きませんが、非常に紛争させた。それでもすでに両氏に相当長い間質問を継続さしておりましたために、同僚議員から質問打切りの動議を提出した次第であります。これを委員長が採択することは委員長権限でありまして、私は決してフアツシヨでもなければ、これが委員会の民主的な行動を破壊したというようなことは、絶対に考えられないのであります。從いまして私どもは本日の委員会において委員長のとられた態度に対して、不信任案を出すというようなことは、絶対に認められないことでありまして、私はここに委員長信任の動議お提出するものであります。
  92. 神田博

    神田委員長代理 お答えいたしますが、委員会において委員長を解任するということは、國会法には認めておらないようであります。
  93. 川上貫一

    ○川上委員 今村山委員から、きようの委員長代理のやり方は決して不当ではない、あれは正当のことであるという御意見がありましたが、私はこれには反対であります。そうして委員長代理を不信任することに賛成なんであります。一体この問題は、昨日の委員会において、本日は相当の時間をとつてこの問題を審議する、こういう條件のもとにきのうの質問が打切つてある。本日これを論議することは、昨日からの委員会の意向である。決定したことなのである。第二には、委員長はよく時間がない、あるいは会期が切迫した、こう言われるのでありますが、商工委員会は一番よくサボつておる。たとえば月曜日には委員会を開いていない。また事前審査ということもなし得るのに、こういうことも一つもされておらない。それから開会の時間に正確によつては一時間半も遲れる。つまり時間がないのではない。時間をつくらないのだ。これは委員長並びに委員長代理の怠慢である。それが重なり重なつて、最後になつて時間がないということは問題にならない。慎重に審議してきめるべきものであつて、時間がないから質問を打切るようなことは、協議、申合せとしてならともかく、ここで決定すべきものでない。こういう形でことごとくやるこのやり方は、きわめてフアシヨ的であると言わなければならない。独裁的である。よく民主党の方は共産党の方をとらえて独裁であるとこうおつしやる。しかしこの委員会のやり方を見ておると、共産党ではなくて、そうおつしやる方の方が非常に独裁的でありフアシヨ的である。こういう形の中心に今委員長代理がなつておる。これは商工委員会を運営して行くのに適当でない。われわれはこれは信任しない。
  94. 神田博

    神田委員長代理 委員長から一應弁明いたしておきます。午前中の質疑打切りに関連いたしまして、聽濤君から委員長を不信任するという動議の御提出でございましたが、御承知のように委員会は、私の考えをもつていたしまするならば、順調に質疑が行われておつた考えております。ところが聽濤委員及び川上委員の本法案に関する御質疑が、麻生一家の問題にからみまして、本法案と縁の遠い御質問をしばしば繰返されておつた。ことに商工大臣初め政府委員側から、さような事実がないということをしばしば答弁されておるにかかわらず、これを納得できない。まさにこれは意見の相違であり、証拠の相違であつたはずであります。それを執拗に述べられたので、同僚委員から質疑の打切りが出たのでありまして、委員長といたしましては、國会法や衆議院規則の定むるところによりまして、公平に迅速にこれを採決いたしたわけであります。これらの規定を御研究になると十分御理解ができるだろうと思います。まだ出て間もない議員でありますから、むりもないと思いますが、おいおいおわかりになるだろうと思います。  それから商工委員会が不熱心だという御議論、また法案の予備審査をしなかつたということ、また月曜日には休んだではないかというような川上君からの御発言でございましたが、これはよく過去を振返つて見ればわかるのでありまして、法案が提案されまするや、ただちに審議にとりかかつてつた。提案が遅れたことに対して政府側をお責めになるのでありまするならば、これは何人も納得するでしようが、提案されてないものを委員長審議しなかつた、予備審査をしなかつたということについては、これは委員長をしいることで、当らざるもはなはだしいと言わなければならない。また月曜日には委員会を開かなかつたということは、衆議院の委員室あるいは速記者等の点で、十分の設備がないのでありまして、すでに御了解済みのことです。決してサボつたわけではない。また委員会が遲れて開かれておる、不都合ではないかということは、御自分に対する御訓戒に当るものと考えます。御自分自身のことでありまして、委員長は精励恪勤しておるのであります。以上一身上の弁明をいたしておきます。
  95. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 ただいま委員長に対して不信任の動議と、これを信任するという動議と、二様の動議が前後して出ておりますが、この動議の取扱いに関して一言発言をいたしたいと存じます。國会法並びに議院規則のどこを見ても、委員会委員長を信任する、不信任するという決議を行うの権限がございません。委員会の事項の有無にかかわらず、意見を述べになることはよろしい。しかしそれを取上げてここに採決するということの必要はないのであります。なお採決をする必要がないのではない。採決すること自体が法上の根拠を持たないわけでありますから、信任の動議並びに不信任の動議は、その提出者の御意向としてここにつつしんで拜聽することにとどめて、これをこのまま採決をなさざることをもつて、法並びに規則の精神を尊重することになると考えるので、私はこの意見を申し上げます。
  96. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 これは議院規則にそういうことがないと言われますが、しかしながら國会その他委員会におきましては、すべて民主的な方法で議事を運営して行くということは、これはあたりまえの話でありまして、およそこういう性質の会合におきまして、責任をとるべきものが責任をとらなかつたり、あるいは横暴な行動をとつた場合に、これに対して不信任の動議を出す、これを全員にはかつて採決してきめるということは、これはどこでもあるあたりまえの話である。これは結局議論の余地のないわれわれ委員の持つておる権限である。これをぜひ取上げるべきでありまして、委員長は自分一身にかかることであるから、なるほど取上げにくいでありましようが、これは当然取上ぐべき問題である。こんなことはあたりまえの話である。ここで早くこれを取上げまして、採決をされることを要求いたします。
  97. 河野金昇

    ○河野(金)委員 委員長の信任と不信任と両動議が出ておるのでありますが、これは前國会予算委員会において、例の上林委員長ちようどきようの午前中の神田委員長代理と同じような行動をとらえた場合に、不信任の動議が出て、それが可決になつておるのであります。しかしながらその委員会が不信任案を可決することは自由でありまするけれども、その委員長を信任するかしないかということは、もちろん本会議において議決すべき問題でありまするが、動議が出ておる以上、これを信任するなり不信任するなりのいずれかの結論をここにおいてつけることは、当然あり得べきことだと思います。從つてこの二つの動議をいかように取扱うかは別問題として、これに対して採決を下していただきたいと存じます。
  98. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 國会法並びに規則の根拠を持たざる事項に関して、採決をするということはむだなことであります。そういう採決を行つたからその行動が違法であるということにはなりませんが、採決を行うことがむだである。そういう法律上、秩序上むだな事柄をここで行うということは必要じやないのみならず、本件のそもそも問題となつておる質問打切りの問題は、非合法でやつたものでもなければ、独裁でやつたものでもない。議場一般に委員長はお諮りになつて、そうして多数によつて質疑の打切りを決定しておるのであります。多数によつて質疑の打切りを決定しておるということ自体は、憲法下におけるりつぱな民主主義で、それを不当なりと言つて因縁をつける方が非民主主義的な色彩があるものと言わねばならぬ。でありますから、根本の問題として法律の上にも規則の上にも根拠を持たず、その決議を行つたからといつて、その決議に物を言わすことは不可能であるといつたような事態に対して、本委員会が正式にこの問題を取上げて決議をするというごときは、非常識きわめるものと言わなければならぬ。そういう必要はさらにない。
  99. 川上貫一

    ○川上委員 この委員会で取上げるのがむだだというのは驚き入つたことである。われわれはむだでないと思うから動議を提出しておる。この動議がいかなる形によつて結末がつくかということは別問題である。むだでないからわれわれは動議を提出しておる。これを採決することは当然である。またこれが非民主的だと言うが、何が非民主的であるか。これを採決せぬことこそ非民主主義的である。これは重大な問題である。これをもみ消すということになれば、まつたく横暴きわまるものであり、非民主主義そのものである。ぜひこれを採決してもらいたい。
  100. 今澄勇

    今澄委員 こういう問題で長く討論するということはむだでありますから、即座に委員長の名誉のためにも採決されて、そういう議事を進行いたしたい、かように思います。
  101. 神田博

    神田委員長代理 いろいろ御議論がございましたようですが、お諮りいたします。委員長に対する不信任の動議、また信任の動議と相異なつた動議が出ておりますが、從來の慣例によりますれば、かくのごとき場合には信任の動議を先決することに相なつておりますので、委員長といたしましては、その先例に基きまして委員長信任の動議を採決いたしたいと思います。     〔「委員長自身が採決することはだめだ」と呼ぶ者あり〕     〔神田委員長代理退席、村山委員長代理着席〕
  102. 村上勇

    ○村上委員長代理 委員長信任の動議について採決いたします。信任に賛成の方の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  103. 村上勇

    ○村上委員長代理 起立多数。よつて委員長は信任されました。     〔村山委員長代理退席、神田委員長着席〕
  104. 神田博

    神田委員長代理 委員長は圧倒的多数をもつて信任をされました。     —————————————
  105. 神田博

    神田委員長代理 それでは休憩前に質疑打切りの動議が可決されておりますから、ただいまより本案を議題として討論に付します。討論は通告によつてこれを付します。討論は通告によつてこれを許します。小金義照君。
  106. 小金義照

    ○小金委員 私は民主自由党を代表いたしまして、本案に賛成するものであります。この鉱山保安法案は、第一條に明記しておりまする通り、まず第一に「鉱山労働者に対する危害を防止し、鉱物資源の合理的開発を図る」ということを目的とするものでありますから、まず労働保護に関する特別立法であると同時に特別警察法でもあり、また特殊な産業立法でもあります。右の三つの性質を総合的に一体としたものを内容とするきわめて重要な特別法であります。申すまでもなく、鉱業は一國産業の基礎をなすものでありまして、その盛衰消長はただちにその國の産業経済全般に重大な影響を與えるものであります。鉱業の保安は鉱山の開発経営の生命であると同時に、鉱山労働者の安全なくして鉱業の経営はあり得ない、同時にまた鉱業の経営がなくして鉱山労働者はあり得ないのであります。この法律の内容及びその運用のいかんは、わが國鉱業の発展を左右するものであるのみならず、ただちにわが國産業経済の復興に重大な関係を持つものであります。われわれは本法律案について慎重審議を重ね、特に労働委員会との合同審議をも行つたのでありまするが、特に重要な事項として、次の諸点をあげることができるのであります。  第一点は、鉱業はきわめて特殊な技術を要するものでありまして、地下の作業を主とする場合、及び特別の危險を伴う場合が非常に多いものであります。この特殊性を十分考慮に入れまして、從來ややもすると明確を缺きがちであつたところの鉱業権者及び保安技術職員、その他鉱山労働者の責任を明らかに定めたことであります。  第二点は、保安管理者、保安監督員など、保安技術職員の制度を整備して、かつ保安教育などの制度を設けて、その資質の向上をはかるなど、鉱業の保安が特別の技術事項であることに立脚して、鉱山の現場の機構を整備充実せんとしていることであります。  第三点は、各鉱山に保安委員会を設置して、その委員はその鉱山の鉱山労働者の中から選任せしめることとし、また実情に即する保安規定の作成を義務づけ、現場保安業務の最も円滑な運営を期していることであります。  第四は、この法律施行のために中央に鉱山保安局を設けまして、さらに地方にも鉱山保安監督部、炭鉱保安監督部を設けて、鉱業の保安に関する監督機関を整理強化し、さらに民主的な運営を確保するために、中央及び地方にそれぞれ労資学識経験者等から成る保安協議会を設けて、重要事項について審議することとしておることであります。  第五点は、この法律に基いて監督機関が操業の影響を及ぼすような命令を発するに際しましては、最も民主的な公開の聽聞を行つて、事前に直接関係者意見を聞く制度を創設していること、これらの点であります。  わが國の現行鉱業法は部分的には幾たびとなく改正を行つて來たのでありますが、明治三十八年、すなわち今から四十五年前に制定せられたものでありまして、政府においても全般にわたつて根本的に改正の意図があることを言明しておるようでありまするが、鉱山の保安問題はもはや一刻も猶予することができないというのであります。終戦以來、特に戦時中はあらゆる鉱山が濫掘されております。その戦時中の濫掘が原因いたしまして、鉱業施設は非常に荒れ果てておりまして、鉱山の保安状態は相当悪化し、災害もまた増加しております。これでは人命の安全と鉱業生産の確保と向上とは望み得ないところでありまして、この法律施行によつて、万難を排して災害の絶滅を期し、鉱物増産のための基礎條件を確保したいというのであります。これを要するに本法律案はおおむね妥当であると認めるのでありますが、第一に鉱山労働者に対する危害を防止することに完璧を期するとともに、捨石、鉱滓、廃水、鉱塵の処置等に伴う危害または鉱害の防止、土地の掘鑿等による陥落その他鉱害の防止など、いわゆる公益に対する危害を防止することについて万全を期することが、すなわち鉱物資源の開発を確保するゆえんであることを十分認識してもらいたいのであります。  第二に本法の適用につきましては、無益な権限争いなどを起さないように、十分政府全体として意を用いることが必要であります。  第三に、ストライキなどによる保安の放棄は、人命、公益を害することが多く、同時に資源を荒廃させることになるのでありまするが、これは他の法規によつて規制されるというのであります。けれども鉱業の保安の見地からも十分これに意を注ぐべきであることであります。  第四に、生命の安全と生産の確保を内容とする鉱業の保安を確保するためには、何はさておいてもまず保安設備を充実することが肝要であります。この保安設備を確保充実するためには、その基本的なものについては相当多額の資金を必要とするものであります。從つて政府はこれらの点についても十分意を用いて、万遺憾なきを期すべきであろうと思います。  以上四点を強く要望いたしまして、原案に賛成の意を表するものであります。
  107. 神田博

  108. 今澄勇

    今澄委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本法案に反対の意を表する次第であります。なるほど現行鉱業法が布かれて以來、数十年の長き間数々の弊害を存しており、かつまた労働者の保安に関する施設もまことに幼稚なものであつたのでございまして、これらのものを一元的に能率的な近代的な労働者の期してまつべきところである。この際私どもはこういう法案法は完璧なる労働者保護の根本の目的を達成するものでありたいと、念頭をいたしておるのであります。本法案は現状から見るならば一歩前進したものであるということは、われわれもこれを認めるにやぶさかでないのでございまするが、以下述べる数点においてこの保安法案にはいろいろの欠点を即しておることのために、反対をいたすものであります。時間があれば修正案を提出し、真にわが國労働者が働く上において、最も安全なるところの鉱業保安法たらしめたいのでございますが、その時間が遂に動議その他によつて打ち切られ、私はここに数々の意見を述べて、修正案を出すかわりに本案に反対する次第であります。  第一番は、この保安行政というものは、やはり労働行政の中に一元的に收むべきものである。全國地下労働者の要望もまた、これが労働省に管轄さるべきを希望いたしておつたのであります。われわれは労働者の生活、わが國の労働者よりも数等優れておると言われる米國におけるこれら保安法が、労働省あるいは商工省といつたようなところに専管省になつておるところの米國の現状にかんがみても、わが國のごとく、特に地下労働者の惨澹たる生活にあえぎ、しかもその保安の保たれざる國においては、労働保安行政の一元的意味において、これは十分慎重にその所管が考慮さるべき問題である、かように考えておる次第でございます。  さらに私は、この保安法の中の重大なるものは、保安委員会だと思うのでございますが、本委員会を議決機関にしないで、これを諮問機関にいたしておるということは、これまた米国における同種法律と比較してみて、米國においてはこれは議決機関と相なつておるのであります。おそらくわが國関係方面においても、この保安委員会をして議決機関たらしめたい意向が、十分あつたことと私は存ずるのでございますが、現政府の責任において、これを諮問機関に引下げ、しかも任命されたこれらの保安委員が、その諮問機関の中においていかばかり働き、労働者の意思を反映するかということを、まことに私は寒心にたえない次第であると思うのでございます。  さらに監督官の権限でございますが、保安委員会が、まことに諮問機関として権限少きにかかわらず、監督官の権限はまことにこれは強過ぎる次第でございまして、私は質疑應答の中において、大臣予算その他の関係から、三級官その他を監督官として地方に派し、経験少きこれらの人々によつて、重大なる労働者の保安行政に過ちあらしめてはならぬことを質問いたしたところが、商工大臣から二級官を全部これに充てる旨の答弁がございました。しかしながらその実は、百名に近き三級官が全部現地へ派遣せられ、そうしてこれらの予算その他の関係において、十分これらのりつぱなる専門家を送り得ないということでございますならば、私どもはわが國における、現実に働く労働者の災害その他を守る上に、遺憾この上なき次第であると考えておるものでございます。  第四点といたしましては、この保安関係法律施行するには、どうしても何らとられておらない。しかもその腹案すらも説明のできない現状においては、ここに鉱山労働者としては、その保安行政の上に大きな不安を抱かなければならないのであります。  最後に、私は本保安法に名をかりて、鉱山における労働者の正当なる要求に基くストライキを押えるがごときことがあるならば、それこそはむしろ労働者の権利と主張を踏みにじるものでございまして、私どもは、この保安法に名をかりて正当な労働者のストライキ弾圧のおそれなきとか、ひそかに憂えておる次第でございます。  最後に、私はこれらの労働者を守るべき保安行政というものは、生産第一主義あるいは通商を第一にするところの商工省のそういつた行政の一翼ではなくして、これらはあくまでも経済性を離れて、人間を守る人権擁護の大きな問題でなければならないと思うのでございます。たとえば現下の中小炭鉱のごとく、いかに立派な法律があろうとも、金詰まりとなり、その金詰まりの影響を受けて、坑木の買入れができない。坑木が補充できなければ、鉱山におけるそれらの人々の生活は、いかなることがあろうとも完全に守られることはないのである。えてして世の中の経済性というものは、それらの人間の権利を無視して、そこに大きく邁進するところの資本主義的な機構でございまして、私どもはそれらの人間としての権利お守り、保安を守るところのこういつた保安法というものは、あくまでも労働行政であり、労働者の真の生活を守ろうとするところに専管とすべきものであることを申し述べまして、以上の理由により、本法案に反対をいたす次第でございます。
  109. 神田博

    神田委員長代理 次は橋本金一。
  110. 橋本金一

    ○橋本(金)委員 民主党を代表いたしまして、本案に賛成をいたしたいと思います。  本法案が制定をいたされまして適用せらるる範囲、その利害につきましては、提案の理由によつて明らかでありますから、申し上げることをはぶきますが、ただその間において、各條項の中にいろいろの罰則、監督の方法が明らかにはなつておりますが、一面経営者に対する責任は加重せられております。これが実行にあたりまして、これの完璧を期するためには、当局としてはそれに必要なる資材、金融等において、相当考慮を拂わなければならないと考えるのであります。かようにいたさずして、ただ法案によつてのみいろいろと必要なる項目は並べてありますが、その必要なる資材、金融なくしてこの実行を期せんとすることは、ひいて生産増強の目的である法案、危害防止のための法案が、何らその買値を認めることができ得ない結果になるのでありますから、法案が決定いたします限りは、以上の趣意を十分とそんたくせられまして、その実行に際して遺憾なきを期していただきたいことをお願いしまして、本案に賛成をいたします。
  111. 神田博

    神田委員長代理 次は聽濤克巳君。
  112. 聽濤克巳

    ○聽濤委員 私は日本共産党を代表しまして、本法案に絶対反対を表明いたします。  根本的に申しまして本法案は、鉱山における災害、労働者の身体、生命の保護ということを趣旨として、立案せられたものではないのでありまして、すでに今日まで政府の増産運動のために、労働の強化と、一方では鉱山経営者の側における保安並びに衛生のサボタージユが、はつきりと現われておるのであります。この二つの問題を真に檢討し追究せずして、單なる法律をもつてこの保安の問題が解決されるなどということは、絶対にあり得ないのであります。われわれが昨日來この問題に関連して、麻生鉱業の問題を提出いたしましたのも、本旨はそこにあつたのであります。しかしながら政府はこれに対して、ただ知らぬ存ぜぬの一点張りで、委員長は重ねて横暴な議事の運営によつて、われわれの発言を封殺して参りました。これこそは、本法案一つの特徴をなしておる。つまり法律の陰に隠れた真の意図が、那辺にあるかを物語つておるのであります。すなわちこの法案は、結局のところは四千二百万トン増産を、労働者の一方的な犠牲において強行し、またすでに現実に現われておる鉱山経営者の保安衛生のサボタージユを放任して、そうしてこれをやろうとしておるところの、こういう反動的な意図をもつてつくられたのであります。これが根本的な反対の理由であります。以下項目をわけて反対の理由を開陣いたします。  まず第一に、本法案商工省所管としたことでございます。本案商工省の所管になつておるのはいかなる意味を持つておるか。炭鉱労働者は從來再三にわたりまして労働省所管を要求して参りました。もちろん商工省、労働省と言いましても、官僚的本質にはかわりはないのでありますが、大事な点は石炭の増産の行政面を中心に考えておることであります。商工省では鉱山の保安問題を常に増産のために必要な手段としか考えない。從つて保安の問題が人権の擁護であり、労働者の生命を守らねばならぬという点はまつたく無視されて來たし、またこれは無視しようとする法案である。そのために災害の生ずるような設備や労働條件も、増産のためにはやむを得ないという一言で、黙過されておりましたが、このことが炭鉱や鉱山の災害を激増させておるところの大きな理由になつておる。政府商工省の所管としたことは、この法案が労働者のためにつくられたものではなくして、すなわち資本家的な増産を行うための裏づけとしてつくつたものであることを、はつきり現わしておるのであります。  第二には資源の保護ということに名をかりまして、労働運動を弾圧しようとする意図がくみとられるのであります。この法案では資源保護に必要な措置を講ずるということを目的の一つに掲げておりますが、このことを労働者の基本的権利であるところのストライキを含む種々の争議権に対しまして、鉱山の保安を理由に、あるいは資源のむだになるということに籍口して、事実上争議権の否定となることが考えられるのでございます。もちろん労働者は自主的に山をつぶすようなことは、決してするはずのものではないのであります。彼らは職場を失うことになれば、まさに自分一身にかかわる問題でありますから、こういうことが行われるはずはないのであります。現に日本の全國各地の鉱山におきまして、この保安の問題に籍口し、鉱山資源の確保に籍口し、あるいは増産に籍口して、あの炭鉱特別調査團なるものは各地において鉱山労働者のかかる罷業権や、自主的なあらゆる運動を弾圧しつつあるのであります。これは明らかに反動的政府によつて運用されるならば、非常に危檢な、フアシズム的方向に通する法案であることを示しております。  第三には保安に関する義務を無制限に労働者に負わすという点であります。すなわち法案の中に、拡張解釈が幾らでもできるような簡單な義務規定を労働者に課しております。今日鉱山の実状を見ると、工業警察規則や石炭坑爆発取締規則等を確実に守つているかというと、おそらく一つの鉱山もこれを嚴密に守つているのはないはずであります。増産々々としりをたたかれ、中小企業におきましては、資材購入の資金が不足しておる鉱山が、能率給で労働者をかり立てて増産をやつておる。これでは保安が守られようがないのであります。しかるに労働者は鉱山保安規則を全面的に守る義務を押しつけられておりまして、從いまして政府や会社側は結局は組合運動や政党運動に熱心な從業員に対して、ささいな規則違反をもつて解雇、懲罰の理由とする可能性すら十分にあるのであります。資本家に対しましてはまつたくルーズにこれを運用し、労働者に対してのみこれが全面的に適用されようとしておる。こういうやり方で参りましたならば、まつたくこれは氣違いに刃物を持たせるような結果になることは明らかであります。  第四に官僚機構が強化される点であります。この法律によりますると、政府は新しい機構をつくり、三百人近い人を集めて監督すると言つておる。しかしながらあらゆる場面において今まで非常にはつきりして参りましたことは、役人を増して取締りができたというためしはないのである。行政整理が問題になつておる今日、何を好んで役人を増したり新機構をつくる必要がありましよう。各炭鉱でどのような保安のサボがやられているかは、官僚はわからないか、わかつても知らぬ顔をしておる。いかに人員を増しても無数の鉱山を年に何回もまわれるものでもなく、行つても現場が何日どのように作業しておるかつかめるはずがない。從つてこういう役人の増強によりまして決して保安が守られるというような問題ではないのであります。この保安の問題は、現場に明るい從業員こそが、日常危險にさらされている彼らこそが、真劍に保安の問題を考えておる。それゆえ鉱山の從業員の中からほんとうに民主的に選ばれた者が、この保安の問題に対して監督する全権をにぎらない限り、今日絶対に保安問題を解決することは望めない事柄であります。  第五には保安委員会、中央地方の保安協議会というものはまつたく無権限な諮問機関にすぎないことであります。本法案では一應民主的に見える保安委員会協議会を設けております。しかしながらこれらの機関はまつたく無権限でありまして、官僚に從属するところの諮問機関にすぎないのであります。これは、特に保安委員会は鉱業権者が選任するようになつております。これは、特に保安委員会は鉱業権者が選任するようになつております。しかもその半数は従業員の推薦が必要だとしてありますけれども、しかしながらこの点裏を返して申しますれば、あとの半数は從業員の信頼できぬ者が占めてよいという規定になつておるのであります。しかも議長は鉱業権者の代理人的性格をもつた保安管理者がなることになつておる。今日会社側が保安をサボつておる場合、当のサボつておる本人の代理人が保安委員会の多数を占めておるということは、さる芝居にひとしいものであります。こういうことがこの保安法全体をして官僚的な運営と、これによる解釈と、これによる労働者に対する重圧を加えようとする法案にすぎないのであります。  第六には保安技術職員の國家試験の制度が設けられておりますが、しかしながらこれはすでに医者の場合と同じように、その運用いかんによつてはただちに思想的弾圧の具に使われることは明らかであります。今日のような状態の中で保安技術職員の國家試験制度が採用されるならば、その内容はフアシヨ的な教育を押しつけ、また資格問題をさえにして組合運動の分裂に圧力をかけて來る危險があることは、十分に察知されるのであります。  大体以上のような諸点をもつて、本法案は結局のところ四千二百万トン増産を、労働者の一方的犠牲において強行しようとするところのものであり、このために災害は本年度においてさらに一層はげしく増加することを予知しておるところの、しかもその責任を労働者に轉嫁しようとするところの、きわめて反動的な意図をもつてつくられたものである。日本共産党は以上のような理由をもつて断固これに反対するものであります。
  113. 神田博

    神田委員長代理 次は田中伊三次君。
  114. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 この法案は鉱山労働者の危險防止並びに鉱山資源の合理的な開発を目的としておるものであります。現下わが國の鉱山界の実情にかんがみまして、かかる立法を行うことの必要を認めるものでありますから、私は民主党を代表いたしまして、この法案に賛成の意を表するものであります。
  115. 神田博

    神田委員長代理 次に河野金昇君。
  116. 河野金昇

    ○河野(金)委員 私は新発足いたしました新政府協議会を代表して、少し意見を述べて、賛成をするものであります。  この審議の過程において、商工大臣からは予算的措置並びに資材の確保についてのはつきりした答弁を聞くことができなかつたのは、非常に遺憾であります。それと同時に、説明員の方の答弁も実にあいまいたるものであつて、はたしてこの法案を知つておられるかどうか疑うような、非常にたよりのない答弁が多かつたのであります。これは非常に遺憾に思いますけれども、私たち新政治協議会に属するものは、決して一方的な資本家の立場や、一方的な労働者の立場に立たずに、この法律の目的をすなおに受取りたいと存ずるのであります。この保安行政が労働省に移管さるべきか、商工省に移管さるべきかという、この過程においても考えられる通りに、これはどちらにも同じような重点がかかつていると思います。商工大臣の説明にも、あたかもこれは者の両面のようなものであるということを言つておられたのでありますが、結局においてこの保安行政の主管が商工省に移つたということは、その本質から言つてみましても、資本家、鉱山業者を保護することにはもちろん遺憾はないであろうと思いますが、この主管の経過からかんがみてみまして、鉱山労働者に対する保安の問題を軽々しく取扱うべきでは断じてないと思います。商工省に移つたがゆえに、なお鉱山労働者に対してはあたたかい、またほんとうに彼らが安んじて働けるような保安の道を、責任を持つてつていただきたいと存ずるのであります。私たちはこの法律の目的をすなおに解釈いたして、現下の情勢においてこれを認めることが必要だと思いまして、賛成をいたしました。
  117. 神田博

    神田委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  引続き採決を行います。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  118. 神田博

    神田委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  次に衆議院規則第八十六條による本案委員会報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 神田博

    神田委員長代理 御異議なしと認めます。委員長は御一任願つたものと決します。     —————————————
  120. 神田博

    神田委員長代理 次に臨時鉄くず資源收法案を議題として、審査を進めます。質疑を行います。
  121. 小金義照

    ○小金委員 鉄くずが製鉄業を行う上において最も大切なものであることは、申すまでもないことであります。産業の復興とか経済の復興とか言いますが、石炭とか鉄の生産を増強しなくては、この問題は解決しないのであります。いわゆる鉄鋼業は一國産業のキー・インダストリーであると言われるのも、もつとも次第であります。私はまずわが國の昨年度の鉄鋼生産実情及び昭和二十四年度の計画の大要を伺いたいのであります。     〔神田委員長代理退席、村山(勇)委員長代理着席〕
  122. 始関伊平

    始関政府委員 二十三年度の生産の状況から申し上げますと、鉄鋼は二十二年度には生産が非常に落ちまして、年間五十五万トンの生産を上げたにとどまつたのでございますが、二十三年度におきましてはその倍以上にあたります百二十万トンの計画を立てまして、結果といたしましては、この百二十万トン計画が計画よりもよけいに達成できたような次第でございます。この倍以上の増産ができました理由といたしましては、いろいろございますが、政府のやりました鉄鋼重点政策というようなもの、鉄鋼の労資双方の努力ももとよりでございますが、一般的に申しまして輸送とか電気、石炭というようん國内の関連部門がだんだん回復して参つたことが、一つの大きい理由と存じます。それと同時に一番根本的な事情といたしましては、相当に豊富な鉄くずがあつて日本の鉄鋼業がこれを自由に使うことができた点が一つと、それから鉄鉱石、原料炭ともにそれぞれ百万トン足らずでございますが、輸入の計画をいたしました。この輸入の計画がいろいろな事情で年の初めにはあまり順調でありませんでしたが、夏ごろからだんだん順調に入るようになつた。最後にあげました点が、百二十万トン計画がみごとに達成できた一番根本的な事情であろうかと存じております。もう一つ、本年の一月以降渇水期で、電力の問題が普通の年でございますと非常に心配であつたのでございますが、それが非常にぐあいがよかつたという点を、最後にあげなければならないかと存じております。  本年度の問題といたしましては、百二十万トンをさらに五割増加いたしまして、ただいま百八十万トン計画を立てまして、その計画の達成に努力いたしておる次第でございます。この百八十万トンの場合におきまして大きい問題が二つございます。その一つは、必要な鉄くずの確保ができるであろうかという点でございます。もう一つの点は、二十三年度の場合と同様に、輸入原料が相当円滑に入つて参るであろうかどうか、この二点に主たる問題がかかつているのではなかろうかというふうに存じておる次第でございます。
  123. 小金義照

    ○小金委員 昨年度は百二十万トンの生産をオーバーした、すなわち計画よりもよけい増産できたという説明でまりましたが、製鉄の原料である鉄鉱石、この鉄鉱石の國内産額と輸入鉱石との比率はどうなつておりますか。
  124. 始関伊平

    始関政府委員 昨年度における鉄鉱石の國内生産は大体七十万トン見当でございます。輸入の鉄鉱石は大体九十万トン程度でございますので、國産の方が全体の四割内外という現状になつております。
  125. 小金義照

    ○小金委員 二十三年度は鉄くずをどのくらい使いましたか。あるいは鉄くずについては輸入がありませんでしたか。それをお伺いいたします。
  126. 始関伊平

    始関政府委員 昨年度における鉄くずの使用量は大体九十万トンというふうに押えております。輸入は全然ございません。
  127. 小金義照

    ○小金委員 昭和二十四年度は國内鉄鉱石をどのくらい使う見込みか。すなわちどのくらい開発させる見込みか。またスクラツプはどのくらい使う見込みか。スクラツプもまた昨年同様輸入しない見込みか。その点伺いたい。
  128. 始関伊平

    始関政府委員 本年度の國内鉄鉱石といたしましては、硫酸滓等を含めまして大体百三十六万トン程度のものを予定いたしております。それからくず鉄、鋼くずにつきましては、百八十万トンと予定いたしております。ただいまの情勢では鋼くずの輸入見込みもございませんし、從いましてこれを輸入するという計画はございません。
  129. 小金義照

    ○小金委員 その本年度原料として使う鉱石が、百三十六万トンくらいであるというお話でありますが、そのうちパープル・オアの占める率はどのくらいになりますか。
  130. 小池輝一

    ○小池説明員 ただいまの御説明の百三十六万トンのうち硫酸滓は三十六万トンでございます。
  131. 小金義照

    ○小金委員 わが國の製鉄業は戦前までは、大体銑鉄をつくる場合におきましては、アジア大陸または南洋諸方面にその鉄鉱石資源を求め、平炉を併設するに際しては、アメリカから百万トンあるいは二百万トン以上に上る莫大なくず鉄を予定して、すべての設備をやつたようであります。今日の状況においては、平炉の場合においてはすつかり條件がかわつたことが、今の御説明によつて明らかになりましたが、鉱石については海外の鉱石も相当入つておるようでありまして、どこから大体入つておりますか。その点さしつかえなかつたら説明していただきたいのであります。
  132. 小池輝一

    ○小池説明員 昨年來の海外からの輸入鉱石の状況を簡單に申し上げますると、海南島がただいまのところ最も大口でありまして、これに続きまして中國の長江筋、フイリピン、マレーのズングン鉱石、さらに遠く北米合衆國のユタの鉱石がただいまのところ入つております。本年度は中国の情勢にかんがみまして、マレーのズングン鉱石に最も主力を置いて、次いでインド、フイリピンというようなところに主たる給源地を求めて行きたいと考えております。
  133. 小金義照

    ○小金委員 その輸入の鉱石の中で、スリガオの鉱石はどのくらい入つておりますか。あるいはどのくらい今年度は入れる予定でありますか。
  134. 小池輝一

    ○小池説明員 ただいまお尋ねのスリガオはミンダナオのスリガオですが、ただいま入つておりますフイリピンの鉱石はカランバヤンガン鉱石でありまして、スリガオの鉱石は全然入つておりません。現在のところスリガオの品位が非常に低いということと、取引の引合いがただいまのところ出ておりませんので、今年度におきましてもスリガオ鉱石の輸入の見通しは、ただいまのところ持つておりません。
  135. 小金義照

    ○小金委員 インドの銑鉄の様子がわかりましたら、簡單に説明願います。
  136. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまのところ大体年産二百万トンくらいではなかろうかと存じております。但し製鋼の部門がだんだん発達して参りまして、銑鉄としての輸入は日本の立場からして非常に望ましいのでありますが、あまり入つておりません。昨年度も十三万トン程度の銑鉄の輸入を予定いたしましたが、実際入つて参りましたのはその半分程度であります。
  137. 小金義照

    ○小金委員 最近における日本の平炉作業において、くず鉄とそれから鉱石との使用の割合はどういうふうになつておりますか。その説明を願います。
  138. 始関伊平

    始関政府委員 本年の第一・四半期におきましては、くず鉄の使用量を五二%まで圧縮したい。かように考えております。
  139. 小金義照

    ○小金委員 鉄の問題は非常に重要な問題でありまして、これが機械機具の原材料となりますことはもちろんのこと、土木建築その他あらゆる産業の基礎をなすものでありまして、この鉄鋼政策を誤つたならば、わが國の経済産業は決して復興しないということは非常に明らかな事実でありまして、この鉄鉱政策の根本問題につきましては、商工大臣にさらにお尋ねしたいのであります。この点を留保し、さらに二、三技術上の問題についてお伺いいたしたいことがありますが、わが國の鉄と一口に言いますと、大体において普通鋼及び銑鉄が問題になつておりますが、機械工業その他の立場から見ますと、特殊鋼が非常に大切なものであります。從來軍國であつた場合においては、これは兵器その他の関係から特殊鋼についてはなかなかやかましい注文があつて、その生産の確保と質の向上については、ずいぶん政府も民間も意を用いておつたのであります。最近特殊鋼は軍國の放棄とともに特殊鋼まで放棄されたようなうわさも出ておりまして、この特殊鋼の業界の振興をはからないと、日本の機械機具その他の生産に非常なる支障を來しはしないか。この特殊鋼の措置につきましては、鉄鉱局長はどういう考えを持つておられるか、御意見を承りたいのであります。
  140. 始関伊平

    始関政府委員 特殊鋼の問題について、相当の関心を持たなければならないというただいまの小金委員の御意見はまつたく同感であります。機械工業の発達回復に伴いまして、それからまた普通鋼がだんだん生産量がふえて参るのに比例いたしまして、特殊鋼の生産もだんだんふえて参りまして、昨年度は六万トンないし七万トン程度でありましたが、二十四年度におきましては大体十一万トン足らず程度生産まで、生産量が回復をいたすことになつております。ただ特殊鋼につきましては、ただいま御指摘になりましたような品質の問題がありますが、それと同時に戦時中百万トン内外の生産をいたしておりました設備なり企業の能力が、大体そのまま残つておりますので、これを適当に整理をいたす必要があるのでありまして、この点につきましては特殊鋼に対する生産の割当の際におきまして、発注側が品質とコストからいたしまして、一番優秀なところに注文を集約するというようなことを促進するような態勢に置きまして、業界の戦時中のままであるものが、新しい時代に適合するような態勢にだんだん移つて行くというように、促進いたしたいという考え方でただいままで参つております。品質の問題もございますが、この問題につきましては、それほど品質のよくないものがただいま世間に通用しているという点もありますので、この点はただいま國会の方で御審議を願つております標準化に関する、日本の企画標準に合いましたものにつきましては、合つているということを表示するという趣旨法律制度ができますので、それを適用することによりまして、よいものがようものとして通用して行くというような環境を、だんだんつくつて参りたいと存じております。なお私どもといたしましては工場の内容をよく調査いたしまして、それが事業者によくわかりますように、いい工場と惡い工場との見きわめが事業者にわかりますような素材、材料をいろいろ提供して、いいものが通用するようにいろいろ注意いたしておるような次第であります。
  141. 小金義照

    ○小金委員 今の始関局長の御説明によりますと、最盛時には百万トン前後の特殊鋼ができておつたが、去年は六万トン、今年は計画上十一万トン、すなわち六%から一〇%ぐらいしかできない。これで日本の需要は満たされるかもしれないのでありまするが、要は質に問題と、それからまだ生きるとも死ぬともきまらないような状態にある特殊鋼のメーカーの立場について、十分考えていただきたい中小の業者が相当多いだろうと思います。しかしいろいろの情勢がからみ合いまして、政府、ことに鉄鉱局としては、これをただ補助するわけにはいかぬ。需要者の選択によつてまず優秀なメーカーを育て上げる方法をとるには、やむを得ないという御意見だろうと思います。從つて特殊鋼の中でもクロームは買格差補給金をもらう一般スチールの方に入つているのではないかと思いますが、他のものは全然補給金をもらえないという状況にあるようでありますが、それは事実でありますか。
  142. 始関伊平

    始関政府委員 特殊鋼の補給金の関係は非常にむずかしい問題でございまして、特殊鋼の分類に入るものの中で、たとえば窒素鋼板などは補給金がついております。補給金にはいろいろな形のものはございますが、全般的に申しまして、いわゆる特殊鋼にはそのどれもがついておりません。
  143. 村上勇

    ○村上(勇)委員長代理 ちよつとお諮りいたします。國有財産について御質疑がありますれば、國有財産の舟山局長が大蔵委員会の方にまわるあいまにちよつと参つておりますので、先にお願いしたいと思います。
  144. 小金義照

    ○小金委員 國有財産の中で、この法律施行前にくず鉄として出したものがどのくらいありましようか。またありませんか。その点をお伺いいたします。
  145. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 御承知のごとく、國有財産におきましては、鉄骨建物の破損によるスクラツプとか、あるいは特殊機械と申しておりますが、元兵器等を製造しておりました機械は、司令部の方から破碎命令を受けまして、これをこわしたスクラツプとなつたものもございます。これまで相当量をスクラツプして拂い下げておると思いますが、実は私の方は整理報告は特にスクラツプ幾らというふうにいたしておりませんから、ただいま手元の資料ではちよつとわかりません。
  146. 小金義照

    ○小金委員 なお國有財産の中で、この法律施行と相前後してくず化するものは、また見込みとしてどのくらいありましようか。おさしつかえなかつたらお話願います。
  147. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 今回の臨時くず鉄資源回收法の立法にあたりましては、直接國はこの法律の対象とはなつておりません。と申しますのは、國の機関でありますから、法律で縛ることはどうであるか。むしろ法律趣旨從つて率先してやるべきであるという建前から、対象とはなつておりませんが、この法律の精神に準じまして、これに同調して行くことはもちろんでございます。その数量がどのくらいあるかということにつきましては、実は商工省でお調べがあると思いますが、私どもと若干見方の相違がございます。私どもの方では、たとえば鉄骨となつてつておる建物は、できるだけ現状において利用の道があるならば利用して参りたいという考えであります。これに反しまして、スクラツプに重点を置きますと、これをできるだけ破壊してスクラツプといたしたいという希望が出て参るのであります。從つて商工省のお考えになる見方と、私どもの見方と食違いがあると思います。しからばくず鉄はどれだけ出るかという調査は私どもの方としてはまだございません。しかしこの法案趣旨にも載つておりますように、できるだけ現物について御協力をいたしたいとかように考えております。
  148. 小金義照

    ○小金委員 大蔵省に対しては損失補償の点について伺いたい点もありますが、舟山さんに一つ申し上げたいのは、今お答えの中にありましたように、肉屋が牛を見れば、どれだけの精肉がとれるかということをすぐ勘定するし、牛車引きが牛を見れば、どれだけのものを引かすことができるかということを見るのが人情であります。商工省の方では、鉄さえ見ればスクラツプにしたがる。大蔵省の方ではそれを見さえすれば、何か少し化粧して商品化しようとすることは人情でありましよう。またこの法律では民間の所有のものは審議会にかけて処分することになつておるようでありますけれども、両者の間の食違いについて、あるいは民間と歩調を合せるという点について、今舟山さんから協調するというお言葉でありましたので、舟山さんに対する質問はここで終ります。
  149. 多武良哲三

    ○多武良委員 國有財産の解体作業をした場合に、くず鉄以外の真鍮とか鉛とかいうものを収集されるような場合に、例の兵器処理の問題というようなことについて何か御用意があるかどうか。
  150. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 連合國から返還せられた元の軍艦の類について、解体を実施しておることは御承知の通りであります。これにつきましては、艦船に塔戴いたしておりました部品は、できるだけ生きかして使つて行くという方針をとり、そのままで拂下げの可能のものはそのままで拂い下げる方針をとつております。その他の船体の部分になりますと、これはスクラツプとして原型を破壊しなければならぬので、その方針でやつておりますが、鉄以外の種類につきましても、できるだけこれを選別しまして、資材として生かすように配慮いたしております。
  151. 小金義照

    ○小金委員 ここに提出されました、臨時くず鉄資源回収法案は、手元に配付を受けております。これを諛んでみますと、主として立法技術に関する問題でありますが、手落ちか間違いがわかりませんが、不十分な点が相当あるように思われます。これについて質問をいたしたいのであります。まず第二條を見ますると、「商工大臣は鉄又は銅(銅を主要な成分とする合金を含む。以下同じ。)」ということになつておりますが、この法律案を全部通読してみましても、くず化物件あるいは鉄くずという文字はありますけれども、鉄または銅という文字は見えないのであります。従つて以下同じということはどうも受取れないのであります。あるいは法案の法文の整理漏れかもしれませんが、御意見はいかがでしようか。
  152. 始関伊平

    始関政府委員 これは御指摘いただきましたように、整理漏れでございます。
  153. 小金義照

    ○小金委員 それでは國会が、こういうよけいな文字だからとしてもし削つたら、これに應ぜられることと思います。  次に第十二條を見ましすと、十二條の二項に「政府は、政令の定めるところにより、前項第一号に揚げるくず化合物件の譲渡又は引渡に関する命令により生じた損失を補償する。」とあつて、  おそらくこれはこの法律の重要な点だろうと思います。まずくず化物件というのをきめて、それを買い上げさせる。そこで損失ができた場合にこれを補償するというので、この法律の内容の重点をなす一つの問題だと思うのであります。こういうような問題を政府が政令で定めるということは、どうも民主的でないというような氣がするのであります。補償すべき損失の範囲とか、補償金額の決定方法などについては、よろしくこれは法律規定すべきでないかと思うのであります。損失補償に関する手続というようなものについては、省令とか政令とかに委任してもさしつかえないと思うのでありますが、こういう実体的な事柄は、よろしく法律規定すべきものであろうと思うのであります。すなわち補償すベき損失の範囲は、くず化物件の譲渡または引渡しに関する命令が出た結果、通常すべき損害として、補償金額の決定法については通商産業大臣が大跋大臣協議してきめるとか、あるいはくず化物件審査議会というようなものがせつかくあるのですから、その意見を徴して決定をするというような方法をとられたらどうかと思うのでありますが、これに対する政府の御意見はいかがでありましようか。
  154. 始関伊平

    始関政府委員 私どもの作成いたしました原案は、從来の立法の例に一應ならつたものでございますが、ただいま御指摘の御見解は非常に適切だと思いいますので、そういうふうに直していただくことにつきましては達成でございます。
  155. 小金義照

    ○小金委員 政令に漫然譲つてしまつてあとに放心令をここで示せと貧つても、もしあるとしても案を示されるだけで、どういうふうに結論がきまるかわからぬのでありますが、この点は法律に明記する。これは立法技術上できるはずだと思われますが、その点政府は今素直に應ずるというような御意見でありましたから、それは了といたします。   第三に、もし今の点が法律に書かれたた場合には、第七條に関連して参ります。第七條弟一項に規定するくず化物件審議会の諮問事項の中に入れるのが私は当然だと思いますので、もし今の補償の範囲及び金額の決定などについて法律でやるならば、審議会意見を徹するというふうに規定する意思はありりませんでしようか。
  156. 始関伊平

    始関政府委員  審議会意見を聞いて補償の金額をきめるということ、それに関連いたしまして第七條の規定に若干の修正を加えたらどうかというただいまの御意見に対しまして、賛成でございます。
  157. 小金義照

    ○小金委員 いろいろ賛成されるのでありますが、この法律案を読んでみますと相当誤りがあるように思われます。それはこの附則を見ますると、附則の第一項と申しますか、「この法律は昭和二十五年五月一日から施行」とあります。相当誤りがあるように思われます。それはこの附則を見ますると、附則の第一項と申しますか、「この法昭和二十四年五月一日から施行」とあります。五月一日に溯及される意思でありましようか。その点を伺いたいと思います。
  158. 始関伊平

    始関政府委員 この点は御指摘をまつまでもなく、私どもも氣がついておつたのでありますが、原案を作成いたしました時期と法案の御審議を願う時期との中間において、私どもは原案を修正する自由がございません。実はこれは溯及するつもりではございませんので、適当にこれも御修正を願いたいと思います。
  159. 小金義照

    ○小金委員 この法律はもちろん断つてある通り臨時法でありまして、從つてその附則の第二項を見ますると、「二十七年五月一日にその効力を失う。」とあるから、三年間の予定であろうと思いますが、一項が直れば自然にその点はずれると思います。三年間にくず化物件を回収して屑鉄の原料にするという御意見だろうと思いますが、先ほど申しましたように、鉄くずはわが國の製鉄原料として非常に大事なものである。三年先はどうするつもりか。五年計画等があるかもしれませんが、その点について、今所をはつきりいただくと言つてもこれはむりでありまようが、見通しはどうでありましようか。
  160. 始関伊平

    始関政府委員 実は資料等を持つてつておりますので、あとでお配りしてごらんいただきたいと思いますが、本年度は先ほど申し上げましたように、百八十万トンの鉄くずが必要でありまして、そのためにくず化をやるのでございますが、それが一應済みますと、いわゆる鉄くずで製鉄工場の中によそから供給するというのは、実はあまり目ぼしいものはなくなる計算になるのであります。但しその後においきましては、製鉄工場自体の中で発生いたしますいわゆる発生くずというものが年々七十万トン程度、それから市中から毎年出て参りますものが、これも十万トン内外、合計八十万トン程度鉄くずがございます。これは毎年発生いたしてリターンして参るのでございますから、それを種にして、あとは銑鉄を増産して、その銑鉄とすくラップを必要としない制鋼法もございますので、そういう面からだんだんやつて参りたい、こういうつもりであります。
  161. 小金義照

    ○小金委員 私はリターン・スクラツプというものは、ある程度まで製鉄業が発達すれば相当見込み得ると思うので、その点は賛成するものでありますが、その点は賛成するものでありますが、今リターン・スクラップも限度がある。そうなると銑鉄を増量して、その銑鉄から鉄鋼一貫作業でこれをやるのであろうと思うのでありますが、そのためには、私は國内の鉄鋼資源の開発に相当意を用いてもらわなければならないと思うのであります。それはとにかくといたしまして、立法技術に関してもう一つ質問がありますから、それを伺いたいのでありますが、この法律はただいまのようにおそらく五月二十日以前には私は施行にはなるまいと思うのであります。そうすれば、この法律案の至るところに商工大臣という言葉があるのですが、むしろ始関君は五月一日が直せるならば、商工大臣法案にあるのを通産業大臣と直したいのだろうと思います。そういう点はどうでしようか。
  162. 始関伊平

    始関政府委員 御指摘の通りでございます。
  163. 小金義照

    ○小金委員 私の立法技術に関する質問はこれで終ります。さらに商工大臣にわが國の鉄鋼政策、ことに國内資源の開発の問題についての質問を留保いたしまして、これで終ります。
  164. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問はそう長くかかりません。この法案によると戰災を受けた建築物、それから沈没船等とあるのですが、実際はこれをねらつてあるのですか。実際のところはどうなんですか。どこにあるのですか。
  165. 始関伊平

    始関政府委員 建造物と艦船のほかに、この法案に二條にございますように、古くなりました機械項でありますとか車両などがありますが、それぞれの分類に從いまして、どの程度出すべきものがあるかという調査はできております。何でしたらすぐ資料を差上げます。
  166. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば説明にあるように建造物、沈没船を特にねらつたわけでなくて、やはり二條にあつように車両その他機械を相当ねらつてある。その資料は、どれがどのくらいあるというのは、お手元にあるから出してもいいというわけですね。
  167. 始関伊平

    始関政府委員 その通りでございます。
  168. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると第二に新規生産などによつて、今度は相当つぶれると思います。実際問題として機械も動かなくなるので、こういうものもやはり指定する見込みになつておりますかどうですか。
  169. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、実は私どもがただいまのところ予定いたしておりますのは、昨年の八月十五日で調査をいたしたものでございます。これは大体所有者が主として自分の判断におきまして、これは含むべきものであるというふうに申して参つたものでございます。それは先ほど申し上げましたように、調査ができておるのでございますが、なおどこにどういう形のものが何トンという調査ができておるのでございます。それを一應予定にいたしております。つまりただいま予定いたしておりますのは、戰災で被災をいたしたもの、第二に破損いたしたもの、それから老朽いたしておりますもの、そうして大体におきまして現在すでにくず化物件として使つておらぬというものを、予定いたしております。お話のようにだんだんいわゆる企業の整理によりまして、動かない工場ができておるということがございますれば、それは將來の問題といたしまして考えたいと存じます。
  170. 川上貫一

    ○川上委員 その点わかりました。次には國有財産の問題があつたと思うのですが、その中で特にお聞きいたしたいのは車両の問題であります。これは今年は國鉄から大分車両の拂下げがあるらしいのですが、これらもやはり対象になりますか。
  171. 佐野清助

    ○佐野説明員 一應この法律で老朽という考えに入りますものは。私鉄関係のものならば入ります。國有財産関係ですと國有財産で不用なものは、拂下げあるいは処理するという方針で進めれると思います。
  172. 川上貫一

    ○川上委員 その点もわかりました。そうするとこれはこう解釈したらよろしゆうございますか。私鉄関係のものであつて、まず不用あるいはスクラツプにとつてもいいと認めたら、それは入る。國鉄の方は國有財産の法方の取扱いで、これがくずのスクラツプの方に入つてしまうという場合には、これもやはり対象になる。こう解釈していいのですね。その次にくづ鉄として買い取つたものが、自分でそのくず鉄を使用しない場合、つまり仲買いする場合、くいう場合もこの法律ではさしつかえないように見えるのでありますが、そう解釈していいのでありますか。
  173. 始関伊平

    始関政府委員 法律の構成を申し上げますと、くず化物件を買取りたい者は政府申請をいたしまして。そのくず化物件を買取るための切符をもらい、もらつた切符によりまして所有者と交渉して買取ることになるわけであります。その場合に切符の交付を受ける主たる者は、私鉄メーカーあるいは伸鉄メーカーたちでありますが、くずの鉄を扱う問屋も活用して参りたいと存じております。
  174. 川上貫一

    ○川上委員 その点もよくわかりました。そうすると外國のバイヤーが申し出た場合にはどうなりますか。
  175. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまの御質問はくず鉄を輸出するかどうかという問題とも関連いたすと思いますがただいまのところでは、特殊鋼のくずでございまして、國内ではどうやつても使いものにならないものも考えられますので、これはすでに若干輸出をいたしましたが、一般の鉄くずにつきましては輸出をいたす意思はございませんし、関係方面におきましてもそういう方針をとつておりますので、輸出の観点からいたしましては、いわゆる解体のための切符を渡すことは必要がないと存じております。なお國内のいわゆる仲買的な意味におきまして、バイヤーを使うかどうかということも問題になると思いますけれども、ただいまのところではそういうものを使う必要はなかろうと存じております。
  176. 川上貫一

    ○川上委員 五月四日の日本経済新聞の記事、あるいはこの間の東京日日などの記事によると、アメリカの鉄くず調査團についてのソーヤー將軍の報告の中に、日本にはくず鉄がたくさんある。このくず鉄は輸出すべきであつて、アメリカから機会を買つてこの鉄くずを輸出させたらいいというのがある。これは鉄くず調査團からアメリカのソーヤー商務長官あての報告の中にもありますし、それから商務長官から大統領に出された報告の中にも同じことがあるのであります。つまり日本鉄くずを輸出すべきであるという報告なのでありますが、これはアメリカで行われた報告であつて、これが鉄くずの回收方法であると申すのではありませんが、こういうような製品、つまり鉄くずを必要によつては外國へ出すということが、その目的であるという御答弁がないことは明らかなのでありますが、実際において、向うからバイヤーの注文とか、その他のものがあるとすれば、出される予定になつておりますか。これは國内だけに充当するのであつて、輸出は一つ考えておらぬいということになるのでしようか。その点はどうでしようか。
  177. 始関伊平

    始関政府委員 先ほど申し上げましたように、一般の鉄くずを外國に出すことについては、ただいま全然考えておりません。なお関係筋におきましても、日本の國内にある鉄くずを最大限に継続的に國内で利用しろということを、安本長官並びに法務総裁あての非公式の覚書で、本年の三月十一日付で言つてつております。あの新聞に出た記事でありますが、ただいま申しましたような関係方面の方針と、アメリカのスクラツプがだんだん値段が下つておるという点からいたしまして、將來強制的に鉄くずを出されるという心配は、今のところないというふうに存じております。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 非常に明らかになりましたが、損失補填の問題で、さきにも小金委員から質問があつたわけでありますが、この損失補填をするのはどのくらいの予定になつておりますか。あるいは予算面ではどこからこれを支出することになつておりますか。この点ちよつとお聞きしたい。
  179. 始関伊平

    始関政府委員 この損失補填の問題はちよつとめんどうな関係がございますが、ただいま鉄くずにつきましては公定價格がございまして、その鉄くずの分類によりまして、高いもの安いものがいろいろございますが、概して申しますと、トン当り平均いたしまして二千五百円くらいになるのが普通でございます。これは大体解体いたしました置場渡しでそういうことになるわけでございます。そこでその解体のために必要である経費がかりに千五百円であるといたしますと、焼けた建物など、つまりくず化物件の所有者は大体千円程度の手取りになる、こういうふうな考え方に一應なるわけでございます。そういうことでだんだん契約を進めて参りましたあかつきにおきまして、この残つたものが、主として解体の経費がよけいにかかるという段階になりますと、だんだん契約が進まないようなことになる時期が来ると思うのでございます。解体の経費があまりかからないものが先に解体されるわけでございますから、だんだん時期がたちますと、その解体の経費のよけいにかかるものが残りまして、場合によりますとかりに解体の費用が二千五百円かかるといたしますと、ただいまの計算で申しますと所有者の金がないという形になりますから、そういう場合にはなかなか話が進まないということになります。そういうふうになつまり自由契約でだんだん取引のできるものは取引をさせたいということで、半年なり十箇月なりやつてみまして、なお自由契約では話がだんだん進まなくなるというような時期になりなした場合には、今度は解体物件そのものを——解体ができたくず鉄ではなくて。解体物件そのものの公定價格をつくりたいと思つております。トン当り幾らという公定價格をつくつてもらいたいと思つております。これは物價廳が主としておきめになる問題でございますが、從いましてその場合におきましては対價が決定いたしますが、いわゆる損失補償の損失の中には対價は入らないということになるわけでございます。つまりその対價は買手が拂う。政府の補償すべき損失の中には入らぬ。こういうふうな方針でやるつもりであります。ただ実はこういうような命令を出します場合には、損失を補償しなければならぬという憲法の規程がございますので、一應ここにこういうような條項を入れておるのでございますが、先ほど申し上げましたようにいわゆる対價は損失の中には入つておりませんので、この損失がどういうものであるか、あるいはどの程度出て来るかということは、ただいまちよつと予測をつけかねるような実情でございます。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 ちよつとそこが問題があるように思うのですが……。今これは全國的にくず鉄として買い占めておる。ことにこの法律の有無にかかわらずどんどん関西方面では買い占めておる。非常に大きなメーカーは大きなストツクを持つておる。まず第一にこれは回收の方に入るかどうか。三年分なり四年分なり非常に買い占めておるが、これは必要に應じて回收の対象になるか、どうですか。第二には今こういう形で進んでおりますから、焼け残りのビルなどは非常に金のかかるものである。これを買取れと言つても普通の人はとても買取れるものではない。かりにほしいというものは、これは仲介者としてやればまた別問題ですが、御承知のように價格補償の問題が出て来ると思う。相当の額がなければ消費者はあれを買えません。これではくず鉄のビルをこわすのに金がかかつてしまう。この点があるために非常にたくさんの補助金を出さなければ集まつて來ぬのじやないか。  第三点として、本年度にどのくらい回收なさる見込みになつておるか。それはどこにあるものとお考えになつておるか。買いだめを押えることをするのでなければ、これは出ないじやないですか。この三つのことをお聞きしたい。
  181. 始関伊平

    始関政府委員 この法案はいわゆるくず化物件の回收を促進いたしますための法案でございまして、ただいまお話のございました鉄くずそのもの、鉄くずにすでになつてしまつていますものを統制するという意思は今のところございません。ただ今度入りますもののうちで四割程度がこのくず化物件でございますので、ただいまお話がございましたように、いろいろな関係でよけいに鉄くずそのものをある工場がもつておるといたしますれば、そういうところにはくず化すべき物件を引取るための割当切符をやらない。そういう方法によりまして調整をいたして参りたいというふうに存じております。それで本年度は大体四十万トンの回收をいたす予定でございますが、先ほど申し上げましたような方法でまず二十万トンから二十五万トン程度は、つまり政府からの特別な損失補償なり補給金などというものなしで、一應やつて行ける数量であるというふうにただいま考えております。普通建屋などの場合について從來の例を聞いてみますと、できましたものが千五百円程度で、解体の費用はトン当り千円なり千五百円なりというふうなものがほとんど解体されつつある、こういう実情のようでございます。そこであと十五万トンというものが問題になるわけでございますが、その際のいわゆる損失補償は、これは所有者への損失補償ではございませんで、先ほど申し上げましたように所有者についてはくず化物件の價格を決定いたしますので、所有者に対する損失補償ではございませんが、解体がそれでやつて行けるかどうかという意味においての損失の問題、いわゆる補償金問題が問題になつて來ると思います。その場合におきましては実はこのくずそのものの價格が、國際的に比較いたしますと非常に低いので、これを若干値上げをするか、あるいは必要な経費をちようど價格差補給金を出しておるのと同じような意味合いにおきまして政府が出すか、そういう二つの方法のいずれかを採用して参る必要があろうかと存じます。ただいまのところでは全然補給なしでやれる数量が四十万トンの半分以上あるというやり方でございますので、そういう点からまず始めて参りたいというふうに存じております。  一体そういうものはどこにあるかというお尋ねでございますが、この点につきましては実は一番最初の申し上げましたように、昨年の八月十一日現在の調査がございまして、一件ごとにどういう場所にどういうものがあるという詳しい調査がございます。それを基礎にいたしまして、これはくず化すべき物件であるということをだんだん指定して参ります。こういうつもりであります。
  182. 川上貫一

    ○川上委員 そこのところですが、補給金を出さないで百八十万トンいるうちに、四十万トン回收をしておるものがある。非常に莫大な費用をかけないでも、幾らでも物があるに違いない。そうすれば、こういうことをしないでも動けるのではないか。それがこういう法律を出さなければ動けないのですか。つまり補給金の制度も何もない。そうしてどこそこにありそうだ。くず鉄として使えそうだ。これは非常に建造物そのものをどうしたつて捜査しなければ、なかなか手に入らぬという時分に、こういう制度があつて、補給金の制度でこれをどんどん使うというならわかるけれども、そういう金も何も出さないでもあるのだというようなものがあれば、法律をもつてこういう回收をしないでむりにでも買つてやる。この点はどうなんですか。実際のところをお聞きしたいのです。
  183. 始関伊平

    始関政府委員 先ほど申し上げたような方法でやるといたしますと、あえて法律が必要でないのではないかというような御意見でございますが、先ほど大蔵省の舟山局長がちよつと申されましたように、実は鉄骨だけ残つておる建物がかりにあるといたしましても、それを所有者の主権等におきまして、くず化すべきものであると見るかどうかという点は、実は必ずしもはつきりいたしておりません。そこでこの法律ではくず化すべきものはくず化すべきものとして政府指定をする。そこにこの法律をつくる第一の意味がございます。第二点といたしましては、先ほど御指摘がありましたように、あまり一箇所に集まりましても困りますので、適当に配分を調整するというのが第二点、それから適当な対價を拂いましても、それを落すことがいやだというような所有者あるいは占有者がございますので、そういう者に対しましてはこれは抜かざる宝刀と申しますか、あまり振りまわす意味ではないのでございますが、最終的にはお前のところのこれこれの物件をだれ某に賈れということを、強制的な命令を出し得る態勢をとつておる。ただいま申しました三つの点がこの法律を出さなければならない主たる点でございます。なお國有物件、先ほど数量は簡單には言えないと申しておつたのでありますが、われわれの方の見解では十六万トンないし二十万トンくらい、國有物件にくず化すべきものがあるのではなかろうかと存ずるのでありますが、大蔵省ではなるべくならばそれをそのままの姿で活用したい。活用できるものはそれでけつこうでありますが、実は活用できないのだけれども氣分としてはそういう氣分だという点もござしまして一政府の方で國の意思といたしまして、そういうものはなるべくいわゆる鉄くずとして活用するのだという態勢ができ上りますれば、國有財産局といたしましても非常にやりいい点が出て来るという見通しでございまして、さような点からこの法律がぜひとも必要であると考えておるのであります。
  184. 今澄勇

    今澄委員 大分いろいろ質疑應答があつたので、私のいろいろ疑問にしたところが大分はつきりいたしましたが、結論的に考えますと、何だか補償もしないでむりやりにとつて、それでそれをむちやくちやに処分する。それでの兵器処理になるかという漠然とした不安がこみ上げておるわけです。今いろいろ問題になつてつたのですが、四十万トンがこのような法律で出されるのだというが、予算の点で不安ですが、自信がありますか。
  185. 始関伊平

    始関政府委員 四十万トンの中で先ほど申し上げましたように二十五万トン程度は、補給金なしでやつて行けるという自信があります。それが詰まりました時分は、先ほど申し上げましたように物價廳と相談して、くず鉄の値段をある程度上げてもらうか、あるいは若干の補給金のようなものをもらうか、行政的な措置が必要だと思つております。
  186. 今澄勇

    今澄委員 物價廳の方にちよつとお伺いしますが、くず化物件の價格の設定方法はどういうふうになさるおつもりですか。
  187. 江下忠

    ○江下説明員 くず化物件の價格の設定につきましては、現在くず鉄の公定價格があるわけであります。それが大体標準物で一級品二千百円というものが指定場所渡しできまつておる。そういうものを標準にいたしまして、その範囲内で実はその二千百円のものを現実にメーカーの製鉄工場の前へ持つて参りますと、大体それが三千八十円くらいになるということでその二千百円と三千八十円との差額が運賃ということに、一應私の方ではこの前の價格設定のときには考えたのであります。こういう考え方をもちまして、破粹費、運賃、そういうものをこの三千八十円とうペースから差引きまして、原始價格というものを設定したいと思つております。やだこれはまだ私の方では研究中でございまして、今幾らくらいの額に指定したらいいのか。これは商工省とも十分打合せしてきめたいと思つております。
  188. 今澄勇

    今澄委員 こういう法律を五月一日からやるというようなプリントが出て、また物價廳がこれから相談してきめなければならぬというのは、まことにどうも驚き入つた次第でありますが、聞くところによりますと、物價廳は大体事務当局折衝においては、八百八十円くらいを対價の主張されたということである。商工省は今の始関局長の話でも千円以上でなければならぬとはつきり言われた。大蔵省は何だか五百五十円くらいに査定するということで、いろいろ話合い中だということですが、法律は五月一日から施行するのに、値段はそういつたような状態だというのは、まことにどうもずさんきわまる話である。大蔵省の御見解を聞きたいと思います。
  189. 村上勇

    ○村上(勇)委員長代理 大蔵省はありません。
  190. 今澄勇

    今澄委員 大蔵省もちよつと呼んでもらうといい。こういうばかな話ではしかたがない。もう一つ重複する可能性がありますが、一番この法律案の大事なところは、先ほどから小金委員からも指摘された補償の問題です。この補償の意味をどういうふうに解釈するかということで、たいへん大きな問題が生ずると思います。それはすなわち憲法第二十九條でわれわれは一應所有権についての保障を受けておる。これに対して今二百二十何トンは責任が持てるが、あとになるとどうしてもこれは予算的な処置をとるより方法がない。きよう通過した鉱山保安法もいろいろ予算的な問題で何らの腹案もないという話ですが、このくず化の物件買上げのあれについては、どれだけの予算を一体本年度予定されておりますか。それからまたどれだけを現実に計上されてあれするか。具体的な数字を聞かしていただきたい。
  191. 始関伊平

    始関政府委員 予算といたしましては、審議会の運営の費用、調査費などを中心といたしまして、つまり事務費でございますが、百三十万円ばかりでございます。いわゆる補償あるいは補給という意味における予算は、実はこれはいろいろの経緯がございますが、結論的に申しますと、ただいまのところでは計上いたしておりません。そこで先ほど申し上げましたように、あらためてまあ二十五万トン程度は補償なしで行ける見込みでございますので、様子を見ましてあらためて予算を請求するか、あるいは價格の引上げで行くかというようにいたすよりほかないと考えておる次第であります。
  192. 今澄勇

    今澄委員 そこが一番重大な点てしてね。一つもないというようなことを平氣で答弁をされては、これは困るですな。この法律の二十二條というのはまるでこれは強盗のようなものですね。こういうような四十万トンと言われますからには、少くともある程度予算的措置は見えておられませんな。
  193. 村上勇

    ○村上(勇)委員長代理 大蔵省は見えておりません。
  194. 今澄勇

    今澄委員 大蔵省に聞きたいのですが、これはどうもこの法案の一番大事なところで、ここに予算的な何らかの措置を講じておらぬということは、これは非常に所有者に迷惑をかけ、おそらくくず鉄を賈るのもいやがるだろうとわれわれは思います。大蔵省に対して交渉はされましたか。
  195. 始関伊平

    始関政府委員 それでは経緯を申し上げますが、大蔵省はいわゆるここに言う損失ないしは補給の意味におきまして、相当の経緯を実は認めてくれました。ところが御承知のように大蔵省だけで予算を決定いたすわけに参りませんので、向うさんに参つたわけでありますが、向うさんではこういうものはいわゆる補償よりは價格の引上げで行くべきであるという見解を堅持しておられまして、せつかく大蔵省が認めてくれた予算がだめになつてしまつたというような経緯がございます。しかしながら御承知のように鉄鋼につきましては、非常に多くの價格と補給金が認められておりますので、そういうものを認めて、比較的小額のこういうものを認めてないということはおかしいじやないかという点で、私どももいろいろ折衝いたしたのでありますが、そういうような経緯でございます。
  196. 村上勇

    ○村上(勇)委員長代理 今澄君にちよつとお伺いいたします。物價廳の金属議長の御用がありますか。
  197. 今澄勇

    今澄委員 物價廳はもうよいです。
  198. 多武良哲三

    ○多武良委員 今の買上げ價格がきまりましても、民間の物件はおおむね旧勘定に入つてつて、その評價がそれぞれ評價済である。こういうぐあいに評價價格より下まわるようになつた場合には、これに対してどうせられるか。そのお考えをお聞きしたいと思います。
  199. 始関伊平

    始関政府委員 ただいま御指摘のありましたような問題もございますが、さつきから申し上げておりますように、物價廳の方に頼みまして、評價物件などの公定價格をつくろうとしておりますので、公定價格であります以上そういうものをずつと出すということになるわけでありまして、ちよつと救済方法はないかと思つております。     〔村上(勇)委員長代理退席、神田委員長代理着席〕
  200. 今澄勇

    今澄委員 そうすると今ちよつと出た物件審議会というものがいろいろ問題になつたか、この性格と機能についてひとつ簡單に御説明願いたいと思います。
  201. 佐野清助

    ○佐野説明員 これは法案の六條に審議会とありますが、商工大臣の諮問機関にいたしておりまして、現在のところ國家行政組織法の施行に日までは、行政官廳法の第十二條に規程する商工省の機関といたしております。それから國家行政組織施行の日から、同法第八條第二項に規定する國家行政機関の一環として行くという性格であります。それから実際の機能といたしましては、指定くず化物件に対する異議の申立ての決定、あるいは指定のの基準に関する事項、それからくず化物件に対する解体を促進する方策、その他くず化物件に対する重要な事項に対して、商工大臣の諮問に應じ調査審議するほかに、なお関係行政廳に建議することができることにいたしております。
  202. 今澄勇

    今澄委員 それで最後にもう一、二問お伺いいたしたいのでありますが、くず化物件を割当てる賈りさばきの方はどういうことになりますか。
  203. 佐野清助

    ○佐野説明員 くず化物件はこれを指定しました数量に見合いまして需要者——この場合の需給者と申しますと、製鉄業者、伸鉄業者あるいは直接加工業者、所有者自体も考えられるのですが、これらの需要者の申請をまちまして割当説明書をもらつた以上の需要者が、所有者に対してしばらく間フリー・ネゴシエーシヨンで買取りを行う。直接需要者でありますと、すぐそのまま自家使用にいたしまするが、今申しましたもののほか、言い落しましたが、くず鉄の回收業者というのがありますが、これらはその解体のくず化物件を買いまして、解体してそれぞれ需要者向きのものをつくりまして、別に規定いたします解体鉄くずに対する証明書を引きかえに賈らすようにいたしております。
  204. 今澄勇

    今澄委員 そうすると大体フリー・クーポン制式なものになるわけでありますか。
  205. 佐野清助

    ○佐野説明員 さようでございます。
  206. 今澄勇

    今澄委員 そうすると関係方面との交渉のいきさつがあつたようですが、どうも代價というものが安い。きようのいろいろな話によると大蔵省の予算がきまりそうですね。それから補償の方は、なかなか予算一つもないというのだから、しるぬぐいできそうもない。そこで割当の方はフリー・クーポン制で私的運動をよくやつたところに行きそうだ。それから大工場がストツクしておるものは、もう統制に入れることはないということになると、どうも私の考えでは第二の兵器処理的な要素を非常に帶びるので、運用の上においてもたいへんないろいろの難関が予想されるのですが、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  207. 始関伊平

    始関政府委員 兵器処理の場合ないしは戰時中にやりましたくず鉄資源の回收と非常に今度は違うのでありまして、戰時中にやりましたものないしは兵器処理は、要するに相手方を特定いたしまして、兵器処理の場合は金属統制会社でありますが、全部一應そこに入りまして、それからさらにもう一ぺんそこから需要者の方に出て行く、こういうやり方でございます。ところが今度の場合はそうではございませんので、賈手の方がいわゆるくず化物件指定という形で方々指定される。買手は買手で切符をもらつたものが方々におるわけでありまして、その間の公正な自由選択によりましてやつて行く。実は先ほど今澄さんから公定價格がおかしいじやないか、おそ過ぎるじやないかというお話がありましたが、くず化物件の公定價格は実はそう早くつくらない方がよいのであります。と申しますのは、そのフリー・ネゴシエーシヨンをやります場合に、たとえばある建屋から日鉄なり鋼管なりのようにいわゆる溶解用としてくず鉄を使う場合は、会社がそれを買うといたしますと、トン当り二千三百円なら三百円にしか買えない。しかしながらそれをそのまま伸鉄に使う。またそれをさらに進めて農機器用に使う。特別の用途に使う。こういうような業者がそれをとるといたしますと、それは二千五百円なり二千七百なりに買う。つまりくずになつたものといたしまして買う。そうしますと一番有効な用途に振り向けることはできるわけでありますし、かつ一番所有者にとつても有利なやり方ができる。つまり最初の間はくず化物件そのものの公定價格はないのでありますから、非常にくず化されたものの、鉄くずそのものの公定價格があるだけでありますから、そこで甲という需要者が賈います場合には、所有者に千円しか拂えない。しかしながら乙という需要者が賈つた場合には、所有者に千五百円拂うということになるのでありまして、その辺に今度の新しいくふうがあるわけであります。從いましてその悪いことをやるというのは、大体において一元的にまとめるところから來る場合が多うございますから、今度の場合にはそういうような余地はない。非常にうまい方法だと考えております。
  208. 神田博

    神田委員長代理 ほかに質問はございませんか。
  209. 川上貫一

    ○川上委員 今のくず鉄の関係なのですが、溶鉱炉関係の方は高くて、買つても引合わないというお話がありましたが、その通りだと思います。そこでここの所に回收したものが実際には行くことになるのだとおもいますが、これは実際のところを聞きたいのです。今のような状態にしておきますと、一方においては買いだめをどんどんやつておる。ところが溶鉱炉関係、ことに八幡とか、日本鋼管とかいう所になると、これは高く買い込んでおいては合わない。結局そうするとここで何らかの繰作をしてやつて回收して、そういう方向へは切符をどんどんまわしてやらなければ実際困るということですが、こういう事実があるのですか、ないのですか。
  210. 始関伊平

    始関政府委員 ただいま大きい業者の方が非常にくず鉄を集めにくいので、それを特に保護する必要があるのかないのかという御質問と存じますが、実は資力の関係その他からいたしまして、比較的大きい業者の方が現実の問題といたしましてはくず鉄をよけいに集めていると思います。今度の場合におきましては別に大業者がどうであるとか、あるいは中小業者がどうであるかとか、あるいは伸鉄業者がどうとか言うことは考えませんので、この法律の何條かにございますように、現在どのくらい持つておるかということの調査をいたしまして、報告を徴しまして、非常にたくさんおつて、そこには新たに鉄くずをやる必要はないというような所には少しやりまして、今までいろいろな関係で買い集めることができなかつたという業者には、たくさんやるというような方針あります。
  211. 川上貫一

    ○川上委員 私は実際の話を聞きたいのです。この法案は非常におもしろいような、何だかわけのわからないようなところがある法案なんです。それでこれは買集めをする。百八十万トンというのに四十万トンという。それは実際は補給金を出すには二十万トンくらいだろう、あるいは二十五万トンくらいだろうということになるわけです。ところが使用者の方からいつたら、これは大きい所が一番利用するわけです。一方においては今の生産の方式からいうと、大きな所でどんどんつくらせるという方式になつている。小さい所につくらせるのではなくて、大きい所に全面的に集中して、底コストで、底品位でどんどんつくらせるということになつておるが、結局國有財産その他のものから回收するということで、そこの大きい所に持つてつて、結局はつぎ込むことになると思います。実際はそういう操作になると思います。これはりくつは別で、実際はそうなるのです。答弁ではいろいろな答弁ができると思いますが、実際問題としてはそうなるのだと思いますが、一應そう理解してよろしゆうございますか。
  212. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまお話がございましたが、すでに御承知のようにくず鉄の中にそのまま使えるものもございます。たとえば呉地区のある建野を日鉄が解体したといたしましても、そういう上等のスクラツプは、日鉄としては溶解用としては使わぬわけでございますから、溶解用に使つたのでは損になるわけです。ですから溶解用に使わなければいかぬものは、日鉄が自分で使い、そのうち二割とか三割というような非常に上等なスクラツプが出て來ますが、それは伸鉄なりその他直接加工をいたすような業者にまわす。その切符も詳しく申しますと、くず化物件そのものを賈るための切符と、そこから出た鉄くずそのものを賈る切符と、こういうことになります。ですから、ある場所から、たとえば日鉄から一万トンのくず化物件をとるという切符をもらつたといたしまして、その中から溶解用は六千トンできるといたします。日鉄が自分の所で使えるくずの切符は六千トンで、四千トンはそこから余計にまわさなければいかぬ。こういう関係になりますので、ただいま御指摘のように、総量といたしましては大きい業者によけいに行くようなことになりますけれども、出て、参りましたくず鉄の品質性能によりまして一番有効に行くようにしたい。それを價格の方面で調整したい。こういうぐあいに考えるのです。
  213. 神田博

    神田委員長代理 他に御質疑はありませんか。——御発言もないようでございますので、質疑はこれにて終了いたします。  本日はこの程度にとどめ、明十二日は午前十時より開会いたすことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十六分散会