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清野證人 これが下々においていかに自然発生的に、そうして必然的に現われなければならなか
つたかということをこれから具体的な事実をも
つて申し上げます。それは一つはあそこら辺の中小炭鉱あるいは中小企業、これらはみなばたばたこの政策によ
つてつぶれております。そうしてあの問題の中心に
なつた矢郷炭鉱でありますが、矢郷炭鉱の経営者も資金難と資材難のために、労働者に対してはま
つたく二月から賃金が遅配であり、そうして四月から賃金が欠配であ
つたという
ような状態であります。そのために労働者たちは食うものもなく、草の葉やら、すかんぽとかあるいはふじの花、この
ようなものまで食べて生活しております。そこに五月三十日に四百五十名中、百三十七名もの、しかもその中には健康保険の被保険患者が八名も含まれて首切りが行われたわけであります。ですから当然ここに生活の途を失
つた労働者たちは町会に
主食の掛賣りを
認めてもらいたい、会社からまだ拂
つてもらわない金があるのだから、その分だけでも掛賣りで
認めてもらいたいということを歎願しに行
つたわけであります。それから生活保護法の適用を
認めてもらいたいということを
要求しに行
つたわけであります。この
ような苦しい生活をしているにもかかわらず、なおこの中で労働者たちは生産をしなければならないということを自覚して、そうして入坑し
ようとしてお
つたわけであります。それを仮処分は九日の日に執行されたにもかかわらず、すでに八日の朝七時に武装警官隊がこの山を包囲して坑口を閉鎖していたのであります。この
ようにして労働者たちは実際問題として町役場では生活保護法の適用を踏みにじられ、それから入坑して生産をあげ
ようとする労働者は武装警官によ
つて入坑を拒否され、しかも仮処分を執行されてしま
つた。それでもまだこのことを小さく済まそうとして労働者たちはただ單に四名のハンストをも
つてこれに対して抗議したわけであります。このほんとうに苦しい状態を宣傳隊が小さなこの附近の炭鉱に行
つて、実情を訴えて、そのためにこの附近にあるところの常磐の一万四千という労働者も呼應して、矢郷の労働者を見殺しにするなという
ような決議をして立ち上りつつあ
つたのであります。この
ようにほんとうにあそこの矢郷炭鉱の苦しい状態から、労働者がその生活権擁護のために闘争しておることの実態を常に
大衆に訴えて、これを正しく傳えて來たのがいわゆる平の町にあ
つた壁新聞だ
つたのであります。これは矢郷炭鉱の労働者がいかにして自然発生的にあの壁新聞を守れとい
つて集まらざるを得なか
つたかということが一つ。第二番目にあげられることは、
警察官がか
ようにして生活権擁護のために立ち上
つた労働者をピストルやこん棒をも
つて彈圧するだけは彈圧するが、しかし内郷町の町会
議長をやり、生活協同
組合の
理事長をや
つておる菅本美好という人が数百万円に上るところの不正をや
つた事実に対しては、全然目をおお
つて、それにタツチし
ようとしない。この
ような事実。次に第三番目にあげられることは平を中心とする
警察自体が非常に大きな不正をや
つておる。それは具体的な数字については今はつきり
記憶に残
つておらないのでありますが、生だこ
事件、煮だこ
事件、するめ
事件、この
ような
事件には必ず
警察官がひつかかりを持
つておるのであります。特に平の自治
警察署の桑名という経済主任が、腐
つてもいない北海道から送られた一車両の生だこに対して、腐
つたという証明を書いておるのであります。この
ようなあらゆる不正を持
つておるのを壁新聞は常にそのことを
大衆に訴えていたのであります。この大きな不正であるというその証拠になりますことは、きのうここに
証人として参りました矢吹公安
委員、この方がきのう
証人控室で私に申しましたところによると、
共産党はなかなかいいところをついている。しかしながらまだあれでは七〇%しかついていないと言
つておるのであります。まだ背後には大きなものがあるということを私に直接漏らしておるのであります。そこには社会党の石城地区協
議会の
書記をしていた加藤木君もおりました。そこで今度の問題についてま
つたく
警察側が悪いということをきのう私に申しておるのであります。さらにそのために非常に市民はその
ような状態で
警察に対する不信と反感を持
つていたということ。第四番目に
警察と労務、いわゆる常磐炭鉱、この一万四千人の中に二千名もの暴力的な労務という組織を持
つて労働者を威嚇しておるのであります。この労務のかげに
警察が常につきまと
つていたわけであります。そうして労働者に対して常に不安を與えていたこの事実は六月二十二日
共産党の細胞が子供を集めて幻燈の撮影会をや
つておりました。これは浅貝という炭鉱住宅であります。こういうところで子供を集めて幻燈の撮影をや
つていた。ところが
共産党の細胞に対しては何も言わずに、その宿を貸してくれたところの家庭婦人を、今度は労務の課長が呼び出して、お前らはこの宿をだれに断
つて貸したか、今後こういうことがあ
つたら首だぞと言
つておどかしておるのであります。しかもその
あとに、そのや
つた家庭に
警察官がすぐ調査に行
つておる。そうして
共産党が何をや
つたか、新聞は賣らなか
つたか、あるいはもつと何かほかにやらなか
つたかという調査をしておるのであります。こういう事実、それから今度の
騒擾事件だとい
つて大々的に検挙をしておりますが、ま
つたくこれは見込み捜査であるにもかかわらず……。