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神山委員 第一に、私は非常に遺憾なのは、今日のこの
委員会に至るまでの経過であります。ただいま問題にな
つているこの
報告書そのものは、私
たちは今から約三十分前に出された。私
たちとしまして、この
浦和及び
中野における
税務署の
汚職事件は非常に重大であるので、これを
調査することに満腔の賛意を表しました。また
結論を早く提出されることを、
理事会にも
委員会にも、また
委員長個人にも折衝したくらいでありまして、この
報告が一日、も早く出るようにという念願においては、だれにも劣らないのであります。とにかくきよう出て來た。非常にけつこうでありますが、比較的厖大な、しかも
問題そのものとしては非常に重要なものを含んでいる
報告書を、わずかに、二十分間ぐらいしか
自分で読む時間を與えられない。こういうふうにして出された。しかも私
たちの希望である、せめて次回の
委員会までということも許されずに、すぐ採決で押し切ろうという腹の見えている
方法でやられることは、非常に遺憾であると思うのであります。この
内容を私
たちが見ます場合に、そして
考査特別委員会の最近の運営を考えます場合に、これは將來もあることでありますから、
報告書は必ず
委員会の前に余裕をおいて出されて、十分われわれが審議し研究して、完璧なものを出すようにしたいと思うのであります。現に今
椎熊委員の
提案によ
つて、相当大きな箇所が削除されざるを得ない。また
基礎控除の問題についてもどうしたという声がありますが、こういう問題も含まれている。
字句の
表現に至らてはまだ問題がたくさんある。とういうものを不用意に本
考査委員会の決議として出すことについては、私ほ非常に遺憾な点があるのじやないかということを強調せざるを得ない。
そこで今
椎熊委員が削除の
提案をされて、それが採決されましたが、この
報告書の第二ページの表の第一に、税が一般に重過ぎるという問題を扱
つているところに、
國民の総
所得と
懲税総額のことが書いてあるのであります。これは本
考査委員会に
池田証人が來たときにも、やはりこれが問題になりまして、
大藏大臣そのものが
証人として、現在の
國民総
所得と
徴税額との間に均衡がとれていないというふうな
意味の
発言をしているのであります。私
たちはこの問題を追究して行くと、今日
國民総
所得と言われているものが、実は、現実の
國民所得でなくて、逆に一定の
懲税総額を前提として、それを割出すために、これがつくられている。こういう机上の
数字であるということは、もう
大藏委員会、
予算委員会でも指摘されている点でありますので、この点を考慮ぜざるを得ないのであります。特にここで問題なのは、すでに削除したから問題ではないだろうと
椎熊委員は親切に
言つてくれましたが、非常に重要な
数字について問題があるのであります。原
報告書にあつた
数字のこまかな点は言いませんが、この
数字がなぜ違
つているかといいますと、この
資料が今まで
大藏省側か
日本國内向けに放逸された
数字によ
つているのであります。ところが
皆さんも御
承知のよに、御
承知ない方もありましようが、
シヤウプ・ミッションがこちらに参りましてから、
日本政府から
シヤウプ・ミッションに出した
数字がこれとまつたく異な
つている。すなわちこれは
日本政府、特に最近の
民自党にな
つてからと
言つては惡いのでありますが、非常にくせがある。
國外向けの
放送と
國内向けの
放送と
数字も違うし、事実も違う。現にこの問題について
シヤウプ・ミッションに出している
数字を今参考までに読み上げますと、
日本では円が
單位でありますが、一人
平均所得が二万六千四百円にな
つている。その中で
飲食費の占める
割合は六五・五%であります。また一人
平均所得残額は九千百八円であります。これに対して一人
平均の
税金が六千百円である。
從つて負担率六七%にな
つているのであります。
アメリカにおいてはドるが
單位でありますが、この場合を同じ項目について述べますと、千四百二十二ド々、そしてそれが三二・六%の
割合にな
つている。また一人
平均所得残額の場合は九百五十九ドル、そして一人
平均税金が三百七十七ドル、
從つて負担率は三九・三%とな
つているのであります。また
イギリスの場合、ポンドが
單位でありますが、一人
平均所得は二百十ポンド、その中で
飲食費の
割合が占めるのは三六・八%であります。そして一人
平均所得の
残額は百三十三ポンド、さらに一人
平均の
税金は七十七ポンドにな
つている。
從つて負担率は五七・七%というふうにな
つております。
イギリスの場合における
負担率の大きいのは本
報告の原典にもありましたように、これは向うで
社会保障制度があるために、
アメリカに比べまして非常に重くな
つているのでありますが、ここで
はつきりしますのは税の
負担が
日本で重いということと相まちまして、
平均所得の中における
飲食費の
割合が
日本では六五・五%だということは非常に重大であります。すなわち、
生計費の中に占める
飲食費の
割合が高いということはどれほどその國の
國民の
生活状態が低いかということの裏からの実証になるからであります。こういう事実とあわせ考えなければなりませんが、とにかくこういう
数字を
シヤウプ・ミッションには
日本政府が出している、それにもかかわらず、一方同じ
大藏省の名前で
國民向けの
放送をしている。こういう点は持前の二枚舌というだけではなくて、やはり本
國会の
考査特別委員会が問題を
取扱う場合に、どれほど
愼重でなければならいかということを裏から実証しているものでないかと存じます。しかも
シヤウプ・ミッションの最後の
勧告案が近日中に発表されようとしておりすす。この
内容がどういうふうになる、かということはこれからわれわれが見なければならない問題でありますが、とにかく
シヤウプ・ミッションの
税制改革に対しては
全日本國民が深甚な関心を拂
つている。この点においてはわが
共産党はもとより
民自党の
諸君においても、また八千万の
國民大衆が同感、だと思うのであります。こういう重大な時期にあた
つて、私はこの
税制の
根本的な点にまで触れたような本
考査委員会の
報告が出るということでありますから、
從つて非常に重大な
責任を本
考査委員会が帶びなければならない。
考査委員会が單に
汚職事件を
取扱つているにもかかわらず、こういうふうな幅の廣い問題を取上げたことはいろいろ
論議のしかたもありましよう。しかし、この
取扱つている
問題そのものが、重大な
國民生活に関連する
税金の問題に対する最終的な決定に近いものが出ようとしている、まさにそのときにおいて、本
考査委員会のこういう
報告が出るということは
國会特に
考査委員会に特別な
責任を與えうるものであると私は強調せざるを得ない。
從つて、この
報告書をわれわれが
愼重に檢討することが
考査委員の当然の任務でなければならないと思うのでありますが、それにもかかわらず、ただいまも私が繰返して述べましたように、わずか二、三時間しか研究する時間が與えられなかつたということは非常に遺憾であります。
從つて、本
委員会を開くその席上において、これを
椎熊委員の
提案によ
つて削除せざるを得ないというような醜態を現わしているのであります。このこと自体の中に、本
報告書全体がどれほど
信憑性がないかという
一つの
裏書きになるということを強調せぜるを得ない。また、この点で私
たちが考えなければならないことは
日本の
税法の問題であります。
税法がほとんど
國民大衆にわからない。
國民大衆にわからないというより
専門家でなければわからないというのが
日本の
税法の
特殊性とな
つている。またその
税法の中で保証されているところのいろいろな権利あるい
國民のそれに対する対應
措置、たとえば
異議申請の場合の
措置があります。その
措置は明文の上では書かれておりますが、本
報告書の中にも述べられておりますように、
一つ一つの
税務署である場合には七千件以上もたま
つているという実情があるほど
國民の正当な
申請がまつたく無視されるというのが通常の例とな
つている。こういう点は当然本
考査委員会がもし大きくとり上げるとすれば必要ではなかつたかと思う。
さらにこれに関連しまして、先ほどから問題にな
つております
基礎控除の問題であります。現在
國民生活全体が
税金の重味によ
つて非常な危機に陥
つていることはお互いに常識とな
つておりますが、本
考査委員会に出頭した
証人の、ことに
納税者側の
証人が口をそろえて言つたことは、今のままの
税制であれば
自分たちは食えない。
從つて何とかしてこれを過少に申告するとか、
税金を安くしてもらうために
官吏のポケットに物をつつ込むことが必要だということを強調している。このこと事実
そのものによ
つて、現在の
税金がどれほど
國民生活を圧迫しているかということと物語
つていると思う。
皆さんも御
承知のように戰前、これは
昭和十四年まででありますが、
基礎控除額は千二百円までにな
つていたのであります。もしも、これを現行の價格でスライドさせますと、
官廳側の
資料であるCPSをかりに使いましても、三百三十六倍しますと、四十二万円が当然
基礎控除の額にならなければならない。もしも、この
基礎控除額が四十二万円まで上げられますならば、現在
國民大衆を苦しめておりますところの
税金を拂えばもう食えない。
税金を拂う場合に
自家労賃はもちろん含まれてない。
生計費も含まれてない。こういう不当な事実がなくなるのであります。この
根本に手を触れないで、ただちに
過少申告の問題だけをわれわれが解決しようとしても、これはまつたく根を断たずに枝葉をつむことになるのでありますから、本
報告書の中で、もしも機会があるならば、この点について十分補正せられることが私は必要であると思う。
また今日
國民大衆の
納税意識を遅らせている最大の原因は、昨年は約四千億本年は七千億という
予算の中で大
部分が
國民の
税金によ
つているのでありますが、この
税金の使い方が大
資本家本位に使われているこの事実を
國民大衆は
生活の
経驗によ
つて知り始めているのであります。これをたすける上に大いに役立
つているのがあの
昭和電工事件その他の
不正事件であります。こういう事実がある限うぃ、
國民の
税金を納めることに対する大きな疑惑があるのであります。
從つて、國の
納税道徳ということをわれわれが強調しようとするならば、ぜひこの点を考慮せざるを得ないと思います。さらに本
報告の中では
監察制度が非常に弱いということが指摘されております。これは確かでありますが、この
監察制度を單に私
たちは特別の
監察官その他をふやすことによ
つてではなくて、あくまでも
廣汎な
國民大衆の監視によ
つてこういうことをなくする
努力が必要であると思うのであります。現にこれは本
考査委員会でも明らかに
なつたことでありますが、
大口脱税が相当に行われている。たとえば
中野の
税務署の問題に関連いたしまして、
小久保産業のごときは二十二年度におきまして約一億円の
脱税をしていることが明らかになり、また三菱化成においても約十七億の
脱税をしている。こういう問題について何ら取上げることなく、抽象的に審議するだけでは決して
税制そのものの解釈はできないということを私は強調せざるを得ない。こういうふうなひどい
税金にな
つておりますので、本年に入りまして、これは浅草のことでありますが、約一万軒を調べた場合に、一、二月には
廃業がなくて、三月にな
つて五百軒が
廃業している。四、五月にな
つてもこの
廃業軒数が若干
減つただけであるという事実が物語
つておるのであります。この
考査委員会においてすべての
証人が口をそろえて
音言つたことは。
税務署は
警察よりもこわい。昔は
警察が一番こわかつたものでありますが、
警察よりこわいと
言つている。現にあらゆる
資本家、特に大
資本家の一部にさえも、今日のような
課税が行われるならば、この
課税額だけが赤字になるということを強調している。大
部分の
中小企業者は今年度の
予算が
執行されるならばほとんど破産せざるを得ない。こういうような点をよくするためには
税制の
根本をあくまでも改正することが必要で、この点に触れるためにはぜひこの点を
はつきりさせないと‥‥。
〔
発言する者あり〕