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佐藤證人
汚職事件が起
つて、
收賄なりそういうことをした官吏がたしかに悪いとは
思いますが、なぜ下級官吏の場合において、そういう
汚職事件が起
つたかということは、やはりわれわれの考えといたしましては
税金が高い、過重であるというふうなことが
原因に
なつているんじやないかと
思います。なおそれにつきましては、
東京の
財務局の官職側で発表しております東財旬報によりましても、
勤労所得者、
農業所得者、少額営業
所得者等の大部分の者については、現行税率から言えばたしかに過重であり、租税方の限界に逹しているとも言えるが云々とある。
あとには大規模営業者、
法人、それらの
関係者には余力があるということをうた
つてありますけれども、これはわれわれ組合側といたしましても、官廳側としても租税が過重であるということは認めておるところでありまして、それが結局
納税者としては
税金が高い。何とかしてこれを安くしてもらおうという考えで
税務官吏が誘惑されたという形が一番最初の起りになるのではないかと思われます。それではなぜ誘惑されたかと言いますと、
税務官吏の俸給があまりにも安すぎる。私が聞きましたところによりますと、ある
税務署において五月分の給料が百三十一名おりまして、
総額で、
税金込みでありますが、八十一万一千二百十八円五十銭と聞いております。大体一人当り六千何百円にしかならない。それから
税金その他を引かれますと、税込みでさえ六千百何十円くらいにし
かなりませんから、
相当低賃金である。しかも低賃金に加えてわれわれに課せられた労働は
——現在行政整理の対象には
なつておりますけれども、われわれの考えといたしましては人員がまことに少な過ぎる。すなわちわれわれの
言葉で申しますと営業
所得と申すのでありますけれども、その営業
所得の方と、自由職業の医者とか、あるいは弁護士さんであるとか、そういう職業は個人個人について総務官吏が調べなければならぬ。ところが現実には一人の
調査担当官が直接調べなければならない件数が三十件以上、あるいは多いところではもつとたくさんあると聞いておりますが、それが現在時間的制約にしばられてそういう
調査ができない。そのために
税務署の
調査の実情から参りますと、
権衡調査と申しまして、たとえば八百屋なら八百屋が某
税務署管内に何軒かありますと、その八百屋をある一人の事務官が調べるわけです。それにはその業界のうちから数人の者を引抜きまして、それを
調査して、
あとは右へならえしまして、あの家はあの家の倍であるとか、あの家はあの家の半分であろうというふうに大体見当をつけて、それを
所得としてきめる、こういうふうになります
関係上、その業態について実際上どの
程度調べるかと言いますと、個人の場合では大体その業態について一割から一割五分見当しか調べない。
あとの八割五分ないし九割というものは大体の目見当できめる。さらに
自分たちの能力ではそれができかねる場合においては同業組合と交渉する。そうして同業組合の幹部と話合
つて所得額を
決定する。しかしこれは進駐軍の進駐以來金額まで折衝することは禁止されたというふうに聞いておりまして、大体順位とか、あるいは割合であるとか、最高の人を百としたならば最低の人は幾つにしたらいいか、そういう指数を諮問するという形式に
なつておるそうでありますが、現実には金額の点まで触れることに
なつておると聞いております。聞いておると言いますのは、私がや
つております仕事は
法人税の方で、個人税のことにつきましては実際に担当しておりませんので、聞いた話になりますが、事実その際には結局同業組合の幹部の人たちと折衝する、そうして
所得をきめるというふうに
なつて來ます。そのため必然的に同業組合の幹部と
税務署員との間の交渉が頻繁に
なつて來る。それで中には同業組合の方から誘惑を持ちかけて、
自分の業界はよその業界に比べて安くしてもらいたいとか、そういうことが
原因に
なつて、低賃金であること、重労働で、実際に人員の不足のために一軒々々調べることができないということ、さらにはそのために同業組合と交渉したり、あるいは直接調べる場合においても、何と申しましても、先ほど読み上げました官廳側発行の新聞にもあります通り、
税金が小額の
納税者にと
つては、現在も過重なる負担である。だから多少でも負けてもらわなければならない。必死な覚悟で誘惑にかか
つて來たのではないかと
思います。それに対してこちらが低賃金であるために、そこに條件が重なりあ
つて、こういう不祥な
事件が起
つたのではないかと考えております。