○青柳
委員 昨日御当局から社会保障
制度の
審議の
経過につきましてわれわれ伺
つたのであります。私社会保障
制度審議会の中にありまして
審議にあた
つておる者といたしまして、この社会保障
制度審議会でも
つて行われる各種の論議、
審議が非常にこの厚生
委員会と密接な
関係を持
つておりまするゆえをもちまして、私から御
報告する義務を感ずるものでございます。社会保障
制度が完全にでき上りますには相当の日にちを要することは明らかであります。しかしながら荏苒その全部的な完成をまつのは、現在の
日本の客観情勢から申しましていかがかと存ぜられるのであります。社会保障
制度審議会におきましては、理想的な
將來の完全な
制度の確立を目ざして
努力すると同時に、目の前にある問題も
一つ一つ片づけて行こうというふうなことに相な
つております。私の受持
つております仕事は公的扶助に関する問題であります。大体社会保障と申しますと、すべでが保險でまかない得るというふうな謝つた
考えが
一般に行われておるのでありますが、私は公的扶助こそはいわゆる保障
制度の相当重要な部分を占めるものと存じておるのであります。現在アメリカの
調査團が
日本に対して行いました勧告の中にもこういう文章があるのであります。いかなる社会保障
計画においてもその基礎をなすものは公的扶助である。幸いにして
日本國民は最も進歩した形として
考えられる包括的な無差別な補助
制度、すなわち
生活保護制度をさすのでありますか、補助
制度を有しておる。今後考慮せられる社会保障
計画実現の際に、より廣範な基礎のもとにこの
制度を取れることができるものである。こう勧告にもあるのであります。われわれはこの勧告の線に沿いまして、公的扶助の面において、ことに
生活保障
制度を中核として現在論議を進めております。この論議の中に行われました
審議の
内容、当局の
答弁、並びにわれわれが
簡單にきめられる問題をきめましたことにつきまして御
報告を進めて行きたいと存じます。
まず第一に労働問題と
生活保護について
考えまして、現在まず第一に行われております賃金不拂い、遅拂いの場合、
生活保護この
関係はいかになるのかという点でございます。これは賃金が不拂いの場合に、その不拂いの期間が長くなるために
生活保護を要するに至る場合には、ただちに
生活保障を開始するということにきま
つたのであります。しかしながらこの際にはその後において労働者が経営者から俸給を得た場合には、ただちにそれを返す、
生活保護として與えられた金を返す、これは
生活保護法にもございますが、そういうことに相な
つております。
次に失業の場合であります。失業の場合には御存じのように失業保險で失業後六箇月の間失業手当が得られるのであります。しかしながらその後においてなお失業が続く、そうして
生活困難と相なつた場合には、これはもちろん
生活保護を開始するわけでございます。どのくらい失業の場合の
生活保護費がいるかというような
調査につきましては、
日本の当局におきましてもいたしましたが、なかなか各
府縣によりまして差別がありまして、
結論を得られません。
関係当局におきまして調べたものによりますと、現在の
生活保護費の約一割ないし一割五分が必要であるということに相な
つておるのであります。いずれにいたしましても、失業
対策の最後を受持つものは
生活保護制度でなければならないと思います。ここに弾力性を持つた廣い視野から行う
生活保護の適用が必要と相な
つて來ると存じておるのでありまして、このためには新しい対象者を漏らさないよう
保護の徹底を期さなければなりませんし、このためには予算の増額を必要とするわけてございます。
労働問題の第三の点は爭議の場合であります。爭議が
長期にわた
つて生活が困難になつた場合、
生活保護法といかなる
関係になるのかという点であります。ストライキがあつた場合、これは働く能力はありますが、その意思がない場合であります。サボタージュの場合、これは働く能力はありまするが勤労を怠る場合であります。この
二つの場合はいわゆる働かざる者は拂うべから、ノー・ワーク・ノー・ペイの原則並びにフェア・アープレーの原則から見まして、
生活保護は問題にならないのであります。しかしながら資本家のロック・アウト、この場合は働く能力があり、意思もある場合であります。さらに工事の一部門、すなわち発電部門というような部門がストライキをすれば、他の部門の者は出勤しましたけれ
ども稼動できないわけであります。これは働く能力も意思も持つ場合であります。この
二つの場合になると問題は非常にむずかしく相な
つて参ります。
研究を進めておりますが、まだ
結論に達しておりません。次にここで申し上げればならない点は、このいずれの場合を問わず、労働者の
家族は
生活保護の対象とすべきやいなやの問題でございます。イギリス、アメリカにおきましては、実際的に労働爭議のために
家族が困
つて、そうしてこれに
生活保護を與えるというようなことは事実上現われて來ておりません。かかることは労働組合の恥辱とするからだそうであります。しかしながら
法律的、理論的には英米におきましても相当この解決に苦しんでおります。英米の文献をあさ
つて、この
結論を得るための参考にしよう思
つております。現在
研究中でありまして、これまた
結論を得ておらないのであります。以上が労働爭議と申しますが、労働問題と
生活保護の問題につきまして、公的扶助
委員会におきまして考究いたしました
経過でございます。
次に新たに日雇い労務省の問題が取上げられたのであります。去る第五
國会におきまして日雇い労務省にも失業保險が適用されるに至りました。しかしこの日雇い労務省に対する失業保險ほ來る十一月一日から施行されることに相なります。しかも給付を受けるためには、その失業の前三箇月間に三十日稼働することが條件とな
つております。從いまして來年の一月一日から実際的には新しい失業保險の
制度が日雇い労務省に行われることとなるのであります。それまでの間には今までのように日雇い労務省で失業のために
生活困難に陥るものには、從前のように
生活保險の規定が適用されるのでありますが、ここに日雇い労務省の多数は仕事のない日がすなわち失業であります。從いまして仕事のない日にただちに
生活保護を行うという
制度が
考えられつつあります。從前から日雇い労務者の
調査を
行つておいて、そうして仕事のない日には從前と違
つて——從前の
生活保護費は月によ
つて拂われていたのでありますが、日によ
つて拂われる
生活保護の支拂い
方法が
考えられるのであります。この点は御当局において考究中でありまして、早晩実現する見込みでございます。以上が日雇い労務者の問題であります。
次に引揚者の
保護の問題であります。いろいろの問題がございますが、この問題につきましては現在
生活保護を受けておる家庭に引揚者が帰
つて來た場合、並びに現在
生活保護を受けておりませんが、いわゆるボーダー・ラインにある家庭に引揚者が帰
つて來た場合には、ただちに
生活保護を行うという手がすでに御当局によ
つて打たれているのであります。要するに各種の労働問題、引揚者
対策等に
生活保護の対象は
増加する一方でありまして、本年中においても予算の
増加が必要である現状でございます。
さらにここに御
報告しなければならない大きい問題がございます。それは公的扶助
委員会といたしましては、現在の
生活保護制度をある
程度改正いたしまして、実質的にはそれを脱皮した
——言葉は強いのでありますが、最低
生活を保障する
制度を打立てたいというので
研究を進めておるのであります。昨日も御
報告がありましたように、現在の
生活保護制度のうちの
生活の扶助において飲食費の占める部分は八二%あるいは八三%ということにな
つておりますが、これをせめて七〇%
程度に引上げようという御当局の御意向のようでもあります。またわれわれもその線に沿いましてそれを從前から熱望しているものでありまして、飲食費の占める部分を少くすることによ
つて、
生活保護制度を充実するという方向に進みたいと協議を重ねております。なおこの問題につきましてはいろいろな考慮がございます。働く能力を持ち、働く意思を持つ者に対してはそういう
程度のものを行い、働く意思も能力もない者についてはそれより下の食うだけのことでいいのではないかという論議も現在行われております。また現在の
生活保護制度におきましては、
保護費の支給は権利としては認められておりません。法的の反射利益として認められているにすぎないのでありますが、これを憲法の第二十五條にこたえまして、権利として認めるような法制にしたい。さらに
保護の実施を積極的ならしめる、いわゆるボーダー・ラインにある人が
生活困難な階級に落ち込むことを防止するように、すなわち防貧
措置を効果的に行うようにボーダー・ラインにある人をこの
制度の中に入れるようにいたしたいというような問題もございます。また現在の
保護費に関しまして、
府縣、市町村がおのおの一割の負担をいたしているが、この負担は地方に過重に失しているのではないか。これがこの
制度の円滑なる実施に対する障害をなしている模様でもあるから、少くともそれを半分の五%ずつとしてはどうか。また現在市町村におきまして、また
府縣におきまして、この法の施行に要する費用についても少くとも國家が二分の一は負担すべきである。さらにまた民主
委員制度、
保護施設についても種々考慮せられておるのであります。こういう問題は明後日から行われまする社会保障
制度審議会において取上げられまして、でき得れば要綱をきめて、
國会において立法をお願いしたいという氣持でおるのでございます。
以上申し上げましたのは
生活保護制度の改悪並びにその脱皮した新しい
制度の確立に関する問題でございますが、さらにそのほかに未亡人のみの母子福祉の問題並びに身体障害者の福祉の問題につきまして御当局から種々
意見を聞いております。これらは
國民生活上焦眉の重大問題でありまして、急速な実現を期したという意向に相な
つておるのでございます。
さらにもう
一つ御
報告すべき問題はアメリカの見返り物資によりまして、從前は
日本の食の問題が相当解決せられております。これがよい方向に向いつつありますので、次いでこの見返り物資による住の部面を解決してはどうかという
考えがございまして、この問題につきましては増田官房長官からはつきりと住の問題は実は見返り物資の中に入
つておると思う、そういう話もございました。さすればわれわれのいつも心配しております母子寮の問題もこれによ
つて解決いたしたいというふうなことも
考えておるのでございます。
以上申し上げましたのが、公的扶肋
委員会におきまする今までの大体の
審議の模樣でございます。すべてこの
委員会と非常に密接な
関係を持つものであり、ことに参議院におかれては社会保障
制度審議会のあとにただちに厚生
委員会を開いてその
報告を受け、厚生
委員として
審議を進めておられるような
状態であります。これは昨日お話があつたと思いますが、そのほかの
委員会の問題として具体的に大きく取上げられております問題は、すべての健康保險におきまして給付費の一割をこの際保險経済の危機を乘り越すために、國庫より補助を受けたいということが具体的に相な
つております。もちろんこれは
將來社会保障
制度が完全に実現された場合には、國庫の負担が給付費についても行われることは当然でございまして、その第一歩として
考えられる問題と思うのでございます。以上私社会保障
制度審議会に席を置いております
関係上、また問題の
内容が直接厚生
委員会に非常に密接な
関係を持
つております
関係上、御
報告を申し上げまして、今後の御
審議の参考にしたいと思
つて発言いたした次第であります。