○木村(忠)
政府委員 ただいまの堤議員の御
質問にお答えいたします。
生活保護法がいまだにその趣旨が十分徹底しないでおるということにつきましての
お話がおもになるかと考えるわけでありますが、最低の生活は維持できるようにするというのが生活保護法の趣旨でありますから、この趣旨が徹底して、保護を受くべくして受け得ないという者ができることのないようにいたしますれば、未亡人の問題も十分解決できるのではなかろうかと思うのであります。もちろん働くことのできる者に対しましては、まず働くべき場所を與えて、その働きによる收入を得させますことは、当然なすべきことであることは申すまでもないのでありまして、ただいま
お話しの
通りであります。われわれといたしましては、生活保護法を適用するに際しまして、働く力のある者、働く余裕のある者に対しましては、まず働く場所を持たせねばならぬという見地から、公共職業安定所と密接な
連絡を保
つて、その
方面に民生
委員としては必ずごあつせんをいたします。なおその家庭の状況等からいたしまして、世の職場に出て働くことのできない人には、授産所を設けまして、授産所から家庭への内職のあつせんをするというような
方法によりまして、できるだけ働いていただくということにいたしますが、なおそれでも收入が足りないという部面、あるいはその働く場所を與えられないという部面につきましては、生活保護法で保護をいたして行くということにしております。なお生活保護法におきましても、生業資金の給與あるいは貸付という
方法がございまして、これによ
つて生業資金を給付し、あるいは貸し付けますれば、それによ
つて立直り得る、あるいはある
程度の勤労ができるとい
つたような人に対しましては、その実情に應じてこれをいたすようにしております。なおもう少し規模の大きい事業として成立つようなものにつきましては、生業資金の貸付の制度がまた別途設けられておりまして、これらのいろいろな
方法をあわせ考えまして、できるだけみずからの力で生活して行くようにいたさなければならないというふうに
指導いたして参
つております。
生活保護法の現在の適用の状況を大体申し上げますと、昨年の暮から今年の春にかけての
調査がまだ十分に集計できておりませんので、その前に一昨年の暮から昨年の春にかけて
調査いたしました数字によりますれば、生活保護法によ
つて保護を受けている世帶が六十四万ばかりございます。そのうちで、男子でなく女子の世帶主の家庭が四十二万四千世帯ということに相な
つております。大体六五%ないし七〇%というものが女子世帶にな
つておりまして、その大部分は未亡人であると考えられるのであります。なおそのうちで、
子供や両親をかかえておりまして、ほかに働き手がいないという世帶が約十八万四千世帯ございます。この数字は本年の
調査を見ても大体似たような比率が出ております。やはり現存においても生活保護法によ
つて保護しているものは大部分未亡人の世帯であると申してもさしつかえないのではなかろうかと思
つております。從いまして、未亡人の保護対策といたしまして、われわれとしてなし得る限度と申しますれば、生活保護法による最低生活基準をどうしたらいいかということでございます。これにつきましては、われわれとしてはできるだけ実情に合い、しかも財政の面を見て、許す範囲において高いものを考えたいと考えております。
この生活保護法が
施行にな
つてから、すでに昨年の秋までに九回の改訂をしております。ことに昨年においては三回の改訂をいたしておりますが、本年もすでに近く改訂をしなければならぬのではないかと考えておるのであります。その改訂をするたびにできるだけ合理的のものにいたしたい、つまり各家庭の実情に合
つたものにいたしたいと考えて参
つておるのであります。御承知の
通り昨年の七月までは五人世帯で千五百円が基準にな
つておりますが、昨年の八月一日にこれを改訂いたしまして、大体五人世帯で四千百円に切り替えたのであります。なお昨年の十一月以來さらに大きな改訂をいたしまして、各世帶の実情、つまり標準世帯によ
つて五人世帶なら幾らという漠然とした基準でなしに、世帯の構
成人員のいかん、あるいはそれを構成している人の年齢、性別その他によりまして、各世帶の実情に合
つたような基準による。これは実施の面においては非常にめんどうなのでありますが、それでも実情に合うようにいたしたいと考えてさようにいたした次第でございます。しかしながら現在定ま
つているこの基準においてもなお大部分が飲食費である。つまり生活の費用の大部分、八五%ばかりが飲食費であるという非常に高いものにな
つておりますが、これはできるだけ今後の基準の際に改めたいと考えております。
なお特に未亡人に関連のあることといたしましては、先般も御
説明申し上げたのでありましてこれはわれわれだけできめることができないものでありますが、未亡人として勤労している人と勤労しない人との間に、実際に目に見えない支出面における差ができて参る。むろん目に見える支出画における差は現在でも支給いたしておりますが、目に見えない支出面における差ができてくるのであります。これは何も未亡人だけに限りませんが、勤労した人と勤労しない人との間の最低生活費の違いが当然出て來なければならぬのではないかと考えまして、その資料を目下集めておりますが、これについて適正なる資料をも
つて関係方面と折衝いたしまして、できるだけ最近の機会に基準の改定の際にはその
方面も考慮いたしたいと考えておるのであります。特に戰争犠牲者に対してつれない
措置をとるということは、われわれとして全然考えておらぬ。むしろ氣持の上においては戰争犠牲者に対しましては、十分にあたたかい氣持を持
つて処置して行かなければならぬと考えておるのでありまするが、少くとも形式の上におきましてはこれはできないのでございまして、御承知の
通りに政令七百七十五号というのがございまして、この範囲内におきまして保護をいたしております
関係からいたしまして、すべて平等にしなければならぬ。しかもこの平等なるものは必要な最低限のものを確保するということにいたさなければならぬということにな
つておりますから、この最低基準というものをできるだけ適正なものにして行くことが、われわれといたしましてこれらに対処いたします最も重要なことではなかろうか、こう考えまして逐時その面におきまして
努力いたして参
つておるような次第でございます。なおその点十分な資料をいまだ集め得ないために、ほんとうに完全なものにな
つていないことはまことに遺憾でございますが、今後はできるだけ
努力いたしまして、これを適正なものにいたして参りたい、かように考えておりますから、皆さん方におきましても、どうかこの点につきまして十分御
協力くださいまして、適正なる最低基準ができまするように御援助願いたいと存する次第でございます。