○天野(久)
委員 昭和二十四年九月十九日、
衆議院規則第五十五條により、
衆議院議長の
承認を得まして、
キティ台風による
災害の実状
調査のため、内藤隆君、並びに不肖天野が
現地に派遣され、專門員室より井上
調査主事、及び
建設省より齋藤事務官が同行いたしまして九月二十七日より十日間にわたり、山梨、長野、新潟、富山の諸県を詳細に
調査いたして参りましたので、ここにその概要を各県別に御
報告申し上げます。
まず山梨県より申し上げます。
本県は
デラ台風により四千五百万円、
キティ台風により二億三千万円、さらに九月二十二、二十三日の
豪雨により一億円、計三億八千万円の土木
被害をこうむ
つております。
本県の
災害は、金額の上では、他府県に比べまして僅少なのでありますが、県自体の面積の小なる山梨県におきましては、その
被害比重は他府県のそれに比し決して劣
つているとは考えられないのであります。山梨県における
災害河川は、笹子川を含む桂川
水系と、白川、笛吹川を含む富士川
水系とに大別できるのでありますが、いずれもその水源は急峻な山岳に囲まれ、しかもそれらの
山地はおおむね山梨県
特有の御坂層、小仏層のごとき特殊の風化地質でありますため、各
河川とも
土砂の堆積はなはだしく、年々
災害をこうむ
つておるのであります。すなわち笹子川におきましては、二十二年度
災害以来の
被害額は、
河川砂防を含め七千二百万円、笛吹川においては今年度
災害に約二千万円を初め九千五百万円に達しております。さらに富士川につきましては、
支派川よりの
土砂流による乱流はなはだしく、今年度
災害一千二百万円、二十二年度
災害よりの
被害累計一億三千万円に達しております。
本川におきましては、笛吹川
合流点より大柳川
合流点に至る間は
河床隆起し、また河巾狹少にして
洪水の流下を阻み、ために沿岸二千四百
町歩は濕潤地帶とな
つている
状況であります。よ
つて山梨縣におきましては、富士川筋総合開発の一環として、
狹窄部の開鑿を
計画中でありますが、これが
調査費として、とりあえず三百万円
程度の
国庫補助を
要望いたしているのであります。
次に富士川
本川筋に架設中の富士橋、浅原橋について申し上げます。これら両橋とも二二年度、二三年度と相次ぐ
災害により
流失いたしたのでありまして、これが
復旧に対する
建設省査定額は、富士橋三千三百万用、浅原橋三千六百万円でありまして、両橋ともすでに下部工事を
完成いたし、上部鈑桁も現場に到着いたしておるのでありますが、残
工事費、富士橋約一千万円、浅原橋約二千万円に対する
国庫補助未決定のため、工事は遅々として進まず、
地元におきましては、これが工事
促進に関しるる
陳情があ
つたのであります。
次に府縣道勝沼、大月線について申し上げます。本路線は昭和二十二、二十三両年にわたり
災害をこうむ
つたのでありますが、いまだ二十二年
災害、二十三年
災害合計約二千万円の未着工部分を残しているのであります。本路線は旧八号
国道でありまして、本
道路の
完成改修により甲府・東京間は、現在の八号
国道に比し距離において二十キロ、時間にして約二時間を短縮し得るのであります、しかるに縣財政貧弱なるため、單独県費のみをも
つてしてはとうていこれが達成は困難な
状態でありまして、ぜひとも二十四年度中において工事を完了いたすべく、補正
予算の配付に際し十分なる御配慮を賜わりたき
旨陳情がありました。
次に長野県につきましては、
本県は
キティ台風及び九月二十三日の
豪雨により、再度にわた
つて災害をこうむ
つたのであります。今次
キティ台風は長野地内においても、広汎な地域にわたる未曾有の
豪雨、
出水をもたらし、千曲川流域を主として南北佐久郡における風速は三〇・一メートル、
降雨量は軽井沢において三四八ミリ、特に南佐久郡内山村においては五一七ミリの多量に達し、軽井沢測候所における既往の最大
降雨量二二〇ミリをはるかに上まわり、また長野県全域のおおむね三分の一に及ぶ地籍は、二〇〇ミリ以上の
降雨量を示しております。これがため土木施設
被害二十四億円を初め、林野農
耕地等、県の
中間報告による
被害累計は約四十一億円の巨額に達しております。今回の
キティ台風は上越信国境線を
中心に通過いたしましたるため、これら
山地を水源とする湯川、志賀川、滑津川等、北佐久、南佐久両郡下における千曲川東
支川の氾濫による
災害は最も甚大でありまして
土木関係被害額のみにても北佐久郡において五億三千万円余、南佐久郡において八億円余に及び、全県下
土木関係被害額の約六割に達する
災害をこおむ
つております。これら両郡における
災害の特徴といたしまする点は、いわゆる大
河川の氾濫による
災害と異なり、山林の濫伐による
影響が大
河川のそれに比しましてより大きく現われますところの派川、あるいは渓流
程度の小川の氾濫による
災害が各地に頻発いたした点でありまして、各々の
災害個所における
被害の僅少なるにかか
わらず、これを全体的に集計いたしますと、その
被害額は意外に大きいのであります。
次に女鳥羽川並に
本川の氾濫による松本市の
被害状況について申し上げます。今次
キティ台風に伴う
豪雨は武石、三方山各峠を
中心といたしまして、北方山嶺一帶におきましても一二九ミリの
降雨量を示しましたるため、これら
山地を水源とする女鳥羽川におきましては一・七メートルの増水を示し、
本川に架せられたる
橋梁はことごとく
流失いたし、
堤防護岸等の工作物は
決壞寸断されまして、
本川における土木
関係の
被害は、
箇所数にして約三十
箇所に及び、その
復旧費は約四千万円と見積られておるのであります。また松本旧練兵場横における
本川堤防の
決壞により、松本市街は約五十万坪にわた
つて浸水をこうむり、浸水家屋五千戸、農
耕地の
流失冠水三十五
町歩に及ぶ
災害をこうむ
つたのであります。
本川は
土砂の堆積はなはだしく、また松本市内田川
合流点附近において河道が狹隘と
なつたため、昭和二十年における水害以来再三にわた
つて災害をこうむ
つているのでありまして、
地元におきましては、
本川改修に関しこれが
促進を
要望いたしているのであります。
次に九月二十三日の
豪雨による
災害状況について申し上げます。本
豪雨によりまして
本県は長野市をはじめ、南北信四市七郡にわたり、土木
関係被害七億三千万円を筆頭に
耕地、山林、農産物等の
被害を加えますと、実に約二十億円の巨額に及ぶ
災害をこうむ
つたのでありますが、なかんずく犀川
水系の増水著しく、長野市、上水内郡下に流れる裾花川は、
上流上水内郡鬼無里村において雨量二七〇ミリに及びましたるため、長野市
附近においては四・五メートルの増水を来し、長野市地籍三
箇所における
堤防の
決壞により、長野市
南部の中御所、荒木、母袋等の各町一帶が裾花川の本流とかわりましたるため
流失家屋二十九戸。浸水家屋千五百三十戸、
田畑の
被害四百三十
町歩、
道路橋梁堤防の
決壞九十三
箇所に及び、
被害総額二億五千万円に達する
災害をこうむ
つたのでありますが、われわれが
現地に参りました九月三十日現在におきましても、中御所町
地元における止水工事未
完成のため、河水はいまだに当市
南部一帶を流下しつつある
状況でありまして、
被害はなお増加するものと思われるのであります。
次いで上水内郡下の
災害について申し上げますと、本郡は地勢きわめて複雑でありまして、あたかも長野県の縮図のごとき感があるのであります。従いまして、
災害も部分的には年々発生いたしており、本年もデラ、キティと相次ぐ
災害をこうむ
つたのでありますが、特に今回の
豪雨による
被害は甚大をきわめまして、
災害救助法を適用されたもの四箇村に及び、浸水家屋一千七百戸、
罹災者八千七百名に達し、
堤防の
決壞、
道路、
橋梁の
破損流失等、今夏以来の
災害総額は七億一千万円余に達しておるのであります。しかしてこれら相次ぐ
災害の郡民に與えた物心両面の負担はきわめて大なるものがあり、これが負担の軽減に特別の御配意を願いたき旨、るる
陳情があ
つたのであります。
次に名新線
国道編入と同じく、
地元において強い
要望のありますところの清水、直江津間中部日本横断
道路について申し上げます。本
道路は静岡県清水港より興津に出て、甲府、長野両市を経まして、新潟県直江津に達する延延三百キロに及ぶ幹線
道路でありまして、このうちに長野県下における百二十キロを始め、全線にわたり二百二十一キロはすでに改良済みであります。しかして、各県下における未改良延長は静岡県二十五キロ、山梨県二十七キロ三、長野県三十キロ、新潟県二十八キロでありまして、これらの未改良延長百十キロに要する改良費は、長野県下における九千万円を初めとし、約四億五千万円と推定されるのであります。現下
政府当局において、幹線
道路網
計画を策定いたしつつありますときに、
地元各県におきましては、これと同一歩調をも
つて本
道路改良工事の
促進をはからんといたしておるのでありまするが、本改良工事の
促進並びに本
道路の
国道編入に関し、何分の御配慮を賜りたいとの熱心なる
陳情があ
つたのであります。
次に新潟県について申し上げます。
本県におきましては、
台風が上越国境を通過、柏崎を経て日本海を北々東に進行いたしましたるため、信濃川
上流流域、中魚沼郡及び南魚沼郡における
被害が最甚であり、阿賀野川流域、蒲原三郡における
被害がこれに次いでおります。県下全般の土木
関係の
被害といたしましては、
河川九億三千万円、
道路一億四千万円を初め、海洋、
砂防等の
被害総計約十三億円でありまして、
台風の通路に当りましたにもかか
わらず、
台風通過速度が早かつたため、
被害は割合に少か
つたのであります。
今回の
キティ台風に伴う
豪雨の信濃川流域における総雨量は三百四十ミリに達しておりますが、この
豪雨による清津川、中津川、魚野川の急速なる増水により、信農川
本川の
出水を見るにいたり、長岡量水標では
警戒水位二十メートル五〇を超え、最高二十二メートル四四を示しております。今回の
洪水は昨年のアイオン
台風の時に比し幾分水位は低か
つたのではありますが、前記三
支川の
出水に続く千曲川のいわゆる連続
出水によりまして、量的には昨年をはるかに凌駕いたしておるのであります。従いまして浸水による流域の
被害の僅少なるに比しまして、河道自体の損傷はなはだしく、目下工事中の中魚沼郡十日町地先の築堤竣工部分約二百メートルの
決壞、水制の
流失を始め、
下流部護岸水制及び
堤防根固めの
決壞等、これが
復旧費は
建設省直轄
改修区域内のみにても九千八百万円、さらに全
水系にわたる県工事、市
町村工事を合せますと二億一千万円に及ぶものと推定されるのであります。なお
出水が長時間にわたりましたことは、寄州を発達せしめ、河道を狹窄いたしまして、著しい乱流が認められる現況であります。
次に阿賀野川につきましては、本
河川、中蒲原
郡川東村馬下地先以下、海にいたる三十五キロの間において大正四年より昭和八年にいたる間において行われた
改修工事は、單に
洪水防禦を目的とした、高水工事に主眼がおかれ、低水工事はほとんど放置されたままの
状態でありまして、加うるに戰時中の維持管理の
不足は寄州の発達を促し、ために今回のごとき、中位
洪水における流心変動に上る低水路の乱流はなはだしく、京瀬村嘉瀬島地先における護岸水制九十メートルの
流失を初め、腐朽した水制工、護岸根固め工は破壞
流失し、堤脚護岸はほとんど全川にわた
つて危険な
状況であります。しかして
本川改修区域内における
災害復旧査定額は約三千四百万円であり、そのうち現在まで本年度に
復旧工事費として約四百万円が認められておるのでありますが、
本川流域に当る蒲原三郡約四百六十平方キロにわたる沃野は
本県最大の
穀倉地帶でもあり、来春融雪
出水期までには、少くとも満願寺、横越、嘉瀬島の護岸水制を
復旧せしむべく、早急なる
予算措置を
要望いたしておるのであります。
次に富山県について申し上げます。現在までに判明せる
キティ台風による
本県下における土木
関係の
被害総額は十一億八千万円であります。
本県下におきましては、婦負郡
南部地帶における
災害が最も甚大であ
つたのでありますが、特に本郡卯花村におきましては、村内を貫流する久婦須川、別壯川及茗原川の同時氾濫により、
道路、
橋梁、
農作物等、
被害総額約八千万円に達する
災害をこうむ
つております。このうち土木
関係被害の
復旧のみにても約三千万円を要するものと思はれ、窮迫せる村財政をも
つてしては、とうていこれが
復旧はできがたく、特別の配慮を賜りたき旨、るる
陳情があ
つたのであります。また同郡野積村におきましては、山腹
崩壞と、村内を貫流する野積川の
土砂流を伴う
出水により、現在までに判明せる
被害のみにても
堤防流失二十五
箇所、
被害延長約二キロ余にわたり、さらにがけ崩れによる
道路決壞十八個所に及びましたるため、村内の交通はまつたく杜絶の
状態を余儀なくされ、未だに
被害の正確なる
調査もでき得ざる
状態であります。特に本村は木炭の産地として有名でありますが、村内
道路交通の杜絶により、約三万俵の木炭が同村
南部の
山地に搬出不可能のまま出荷が停止されている
状況でありまして、何よりもまづ
道路の
復旧に対し格段の
援助をいただきたいとの、熱心なる
陳情があ
つたのであります。次に常願寺川本宮
堰堤の
災害状況について申し上げます。この
堰堤は新川郡大山村本宮地先に築造せられた高さ二十二メートル、水通路八十五メートルの粗石コンクリートつくりによる
砂防堰堤でありまして、昭和十一年竣工以来、現在に至るまで約四百五十万方立メートルの
土砂を貯溜いたし、
本川治水上、甚大なる効果を発揮いたしてお
つたのであります。しかるに今回の
キティ台風による
出水のため、本
堰堤下流河床が極端に洗掘低下いたしまして、遂に、第二副
堰堤が倒壞いたし、さらに第一副
堰堤も倒壞寸前の危険な
状態に陷
つておるのであります。よ
つてこれが
復旧対策といたしましては、倒壞せし第二副
堰堤の
復旧をいたしますと同時に、第一副
堰堤につきましても、将来、再び第二副
堰堤に故障を生ずる場合に備えまして、在来のコンクリートかたまりに接続いたしまして、延長十メートル、厚さ一・五メートルの水たたきを設けることにより、大
堰堤の安全を期せんといたしております。しかしてこれに要する工費約四千万円は、すでに第三、第四・四半期
予算の繰上げ流用を
承認され、来春融雪
出水期までにはこれを
完成せしむべく、すでに段取り工事に着手いたしております。
次に井田川
改修計画についてでありますが、
本川は中流部より神通川、
本川との
合流点に至る間は河道狹窄し、さらに
上流部よりの
土砂流下による中州の発達は、
本川の河積をして著しく狹少ならしめておるのでありまして、年年
降雨量に比し、その
出水位は上昇の一途をたど
つている
状況であります。従いまして、
本川流域にある
町村におきましては、中州の除去により
狹窄部の河積の増大を計る一方、
狹窄部上流の婦負郡宮川村地先より
排水路を設け、神通川、井田川
合流点をサイフォンで通じまして、同郡
八幡村地先より神通川
本川に
排水いたすべく
改修計画を立案中でありますが、これに要する工費は約八億円と見積られ、かかる巨費はとうてい
地元の負担いたしかねるところでありまして、
国庫の
援助を鶴首いたしておるのであります。
次に
県道石動、羽咋線について申し上げます。本
道路は
本県石動町を起点として子撫村、宮島村を経て、石川県河合谷村を通じ、津幡、七尾港線を貫き、羽咋町を終点とする
県道であります。本
道路中、石川県内における部分は、すでにほぼ
改修も
完成いたしておるのでありますが、冨山県下十キロ余にわたる本
道路の荒廃はなはだしく、そのうち約二キロの間は車馬の交通にも困難を来しておる
状況であります。ために現在羽咋石動間の交通は石川県津幡市を経由して行われておるのでありますが、これを自動車による所要時間で比べてみまするに、津幡経由石動、羽咋線の所要時間三時間に対し、石動、羽咋線における
改修後の所要時間は一時間二十分に半減されるのでありまして、現下最も不便を感じつつある
本県新湊、氷見、石川県高松、羽咋港との水産物の交流もほぼ解消されるのであります。これに要する
改修費は二千万円でありますが、本
道路の
改修実現方に関し、るる
陳情があ
つたのであります。
以上が各県の
災害概況でありますが、次に今回の
調査に際しての
所見を簡單に申し上げます。
今般山梨、長野、新潟、富山の各県を視察いたしたのでありますが、長野県を初め、流域面積の小なる
河川の氾濫による
災害の頻発いたしましたことは注目すべきことであります。これが原因といたしましては、これら小
河川に対する維持管理が十分でなかつたことにあることはもちろんでありますが、特に林道の完備いたしておらぬ
わが国の現況におきましては、山林の濫伐が伐木の搬出に便なる流域雨覆の小なる小
河川の流域の
山地にのみ集中される傾向があるのでありまして、今後林道の開設普及の必要性が痛感されたのであります。
第二に、これら小
河川による
災害といえども、これら小
河川流域の小部落にとりましては、そのこう
むつた
被害の比重は大きいのでありまして自力による
復旧は不可能と思われるほどの
災害をこうむ
つておるのであります。しかるに一方、
デラ台風以来のたびたびの
災害に対し、
政府においてとられた緊急融資等の
措置は、まことに時宜を得たる
措置でありまするにもかか
わらず、これが県を経て実際に
災害地に到達いたしますのに相当の時日を要しておるのであります。しかるに極端に窮乏いたしておりまする今日の
地方財政の現況におきましては、この間における応急工事に対する
地元立てかえ金の捻出等はすでにでき得べくもなく、今年度のごとく、短期間に相次ぐ
災害をこうむりました際におきましては、前回における
災害に対する金融
措置がつかず、これが応急
復旧への着手もでき得ざるうちに次の
災害をこうむり、ために
災害を倍加いたしておる
状況でありまするが、かくのごとき
災害に際しましては、特別の緊急
措置を講ずべく検討の必要があると思うのであります。さらにこれら
地元におきましては、これが
復旧に際しまして部落請負の件に関し、建設業法の了解に苦しんでおるようでありますが、本法の解釈につきましては、さらに
地方に普及徹底せしめる必要があります。
第三には、従来の
災害復旧は、いわゆる原形
復旧を建前といたします
関係上、
治水、利水の上から見まして、とかく一貫性を欠くうらみがあ
つたのでありますが、特に今回のごとき
本川上流に当る
支派川の
災害箇所のみの原形
復旧を
完成いたしました場合、その必然的結果といたしまして、翌年度において
本川下流平地に大
出水を見るは当然でありまして、單に今回におけるのみならず、今後の
災害箇所の
復旧に際しましては、原形
復旧のみに終ることなく、上
下流一貫せる
計画のもとにこれを行うべく検討の必要があります。
次に新潟、富山県等、寒冷降雪地区に対する
予算配付の時期の問題であります。御
承知のごとく、当
地方は降雪、寒冷によりまして、十月末より翌年四月半ばにいたる間におきましては、工事はほとんど不可能の
状態であるのみならず、さらに引続いて四月半ばより五月末にかけましては、いわゆる融雪
出水の時期に際会するのでありまして、真に作業の能率をあげ得るのは、六月より十月に至る間であります。しかるに従来、現場に
予算が配付せられるには、正式に
予算が成立いたしましたる後数箇月の時日を要するのであります。のみならずこれが配分には四半期ごとに認証が行われ、これによる遅延と、さらに一般には四半期ごとに等分せられるため、真に工事の能率を上げ得る時期には、十分なる工事ができず、逆に事実上工事不能の時期においてもまた
予算が配付されて来る等、矛盾を生じておるのであります。ことに本年のごとく夏期
災害をこうむりました際におきましては、何といたしましても来年融雪
出水期にそなえて、九月半ばより十月末までの約一箇月余の間に、これが
復旧を
完成いたさねばならぬのでありますが、現在立てかえ
工事費の返済に困却いたしておる今日の
地方財政の
状態におきましては、これ以上の負担はとうてい耐えられぬところでありまして、今後この気候による特殊性を考慮し、彈力性ある
予算配分をいたすべく検討いたす必要があります。
次に富士川、井田川につきましては、各
地元におきまして、
改修計画を立案中でありますが、富士川鵜ノ瀬地区
狹窄部の開鑿によりましては、富士川、笹吹川両川に沿う二千四百
町歩にわたる濕田の二毛作が可能となります、これによる麦の増收は七万名に達する見込みであります。また井田川の
改修につきましても、流域千五百
町歩に及ぶ濕地田の完全田化が可能となるのでありまして單に
災害を防止し得るという概点からのみでなく、これらの
経済効果の上より見ましても、これら
改修計画の早急なる
実施の必要性が認められるのであります。特に富士川鵜ノ瀬地区
狹窄部の開鑿につきましては、本地区開鑿により、本
川上下流部に及ぼす
影響は、相当甚大なるものがあると予想されるのでありまして、
建設省におきましては、さらにこれら
地元における
改修計画に対し愼重検討の上、
実施方に関し
援助を與えるべきであると考えるのであります。
次に
道路関係についてでありますが、まず勝沼、大月線につきましては、本路線経由による甲府、東京間の距離は、先ほども申し上げましたごとく、
国道八号線による距離に比し三十キロを短縮し、従
つて本路線の完全補修によ
つて、自動車輸送は時間において二時間を短縮し得るのであります。これを経済価値に換算いたしますと、まず貨物輸送につきましては、本路線
改修後の一日交通量を
国道八号線の一日交通量の三分の二と推定いたしまして、年間約二千八百万円、次に旅客輸送につきましては、バスによる旅客輸送をも含めまして年間約一千四百万円、計四千二百万円の
経済効果を生じ得るのであります。
次に府
県道石動、羽咋線につきましても、本路線の完全
改修により、現在の津幡経由石動、羽咋線に比し、約一時間半を短縮し得るのみならず、本路線沿線は六十キロ平方に及ぶ広義なる面積をと有し、その七割は山林でありまして、本路線
改修による山林資源の開発等を考え合せますと、その
経済効果はさらに顕著なるものがあるのであります。
道路の補修、あるいは
改修実施計画に際し、その路線の交通量を基礎といたすのは当然でありますが、従来とかく現在の路線
状態における交通量のみにとらわれまして、路線の一部未
改修による交通不能のため、現在の数字の上に現れた交通量の小なる路線は、ともすると閉却されやすい傾向がないでもないのでありますが、勝沼、大月線あるいは石動、羽咋線のごとく、未
改修のため現在の交通量はほとんど皆無でありましても、
改修後における
経済効果の大なる路線は優先的に取上げる必要があると思います。
以上諸点に関し、
関係当局の明確なる
答弁を希望いたしまして、本視察
報告を終る次第であります、