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井之口委員 私はこの議案に反対するものであります。
第一、これだけの費用を使
つて、たとえその費用の使い途の中には、
経理面においては、
会計檢査院によ
つて証明されている
通り、何らの不正はないにいたしましても、
持株会社整理委員会というものの活動の状態を承りますと、
整理委員会が今まで取得いたしました株券によ
つて行使された
株主権はきわめて
会社に重大な影響を與えるにかかわらず、とかく外部から
整理委員会の目的に沿わない
ような方向へ曲げられるおそれが今までずいぶんあ
つたのです。たとえば昭電社長に日野原氏を就任させる
ような場合のごときそれでありまするが、そういうふうなことが今まで起
つてまいりましたし、これからとても十分にこれが目的
通りに
株主権を
行使されるという保証がないのであります。この意味におきまして不充分なものだと思う次第であります。
第二番目に、これは
株式の所有の
民主化を目的として、廣く株券の散在をはかるということが目的でありますが、しかしながら実際これが放出せられる場合には、その放出が一部の財閥にまたまた還流して行く傾向がある。その還流の超勢は防ぎ得ないと思うのでありますが、なおかつこれを
委員会が譲り受けるときの價格は額面價格をも
つてするにいたしましても、將來その所有者に政府公認として返還する場合には、時價の高いものをも
つて返してやる。言いかえてみますと、今までの個々ばらばらに
なつていたホールデイング・カンパニーがむしろ國家の手によ
つて集中されて、大きな大きなホールデイング・カンパニーに
なつたというふうな形に
なつてします。これでは決して目的を達しないと思う次第であります。のみならず、この放出の操作がきわめて緩慢であ
つて、株券の値上がりがどんどん行なわれて来ている。そうして売
拂い代金が一部の金融資本家によ
つて営利方面に運営され、遊資をかせぐことに運営されているという
ようなすきが與えられておる。こういうものも早く処理して、
持株会社整理委員会の任務を早く達成すべきものであるにかかわらず、未だにその放出が遅れているという点が不満の点であります。さらに
集中排除法に名をかりまして、東芝に対して今日
委員会がなさろうとしておる状態を見ておりますると、東芝を分割して、片方は黒字になる
ような
会社と、片方は赤字になる
ような
会社に分けてしまう。そうしてまたほかに経営の非常によろしい部分は、たとえば車軸なんかも合弁するというふうな方針からとられてお
つて、実は集中排除をや
つたのではなくて、あべこべに新しい形で集中方針をと
つている。ち
ようど昔海軍の軍縮を名として、かえ
つて新しく軍縮の拡張が行われた
ような形になりまして、その目的に沿わない点が現れて来ていると思うのであります。立ち行かなくなる一部の
会社は失業者を出しそれらの人たちは元の
ようにまとま
つておればかえ
つて会社経営も成立
つていくにかかわらず、切り離されたために
会社経営が成立たなく
なつて失業者として街頭に出て行かなければならないという悲惨な状態に
なつて来る。もはやここまで行きますと、
持株整理委員会の
仕事が初めに期待したものと全然反対な方向に進んで来ていると断定せざるを得ぬのであります。
以上の
ような
理由を総合いたしまして、これのなした
仕事が日本の株券の所有を
民主化する
ようなものではなくして、あべこべに集中化するという反対の結果に立ち至
つている。これを参酌する場合にわれわれは今日反対せざるを得ないのであります。