○高田(富)
委員 日本共産党を代表いたしまして、反対の
理由を申し述べます。
第一に、
本法の最近までにおける
運用の実情を見ますると、各般にわたる廣汎な
統制が、現在各所において非常に多数の違反事件を起しており、また表面的には違反事件として出ておりませんでも、この
統制をめぐるところの官僚の腐敗、あるいはこれに結合する業界の、中央、地方におけるボス的な勢力の不正というようなことは、ほとんど天下公知の事実とな
つておる実情であります。このような不正、腐敗の根源は、やはり官僚が大きな権限を持
つてこのような
法律を
運用するところに、根本の原因があるのであります。なお、この
統制が非常に煩瑣であり、非常に非
能率的であるということが、迷惑を一般
大衆に及ぼしておるということは、社会党の方からも申された
通りであります。
それから第二に、この
物資統制の
運用の
方法が、最近におきましては、特に重要
物資の
生産等の面における
資材の割当等が、
集中生産方式に移行して参
つて、今後ますますそういう
方向が、強化されんとしておるように
考えるのでありますが、このことは、輸入の不合理な形態、並びに輸出における飢餓輸出の形態と結びつきまして、
日本の國内における一部の独占的な
企業に対して、優先的に、集中的に
資材を割当てることになりまして、そのために
日本の
相当多数の民族的な
産業あるいは
中小企業が、崩壞せしめられる
状態にな
つております。これもまた、
本法の
運用の上から強力にこれが行われんとしておる
状態でありまして、
日本産業の自立のために、
日本の民族的な
経済の復興安定、向上のために、実にこれに逆行する
方向をたど
つて行くと言わなければならないのであります。
それから第三に、消費財の部面におきましても、最近マル公の
撤廃であるとか、あるいは
統制の解除であるとかいうようなことが、一、二の
生活資材の
配給の面で言われておりますけれ
ども、これらも、今までの
統制のやり方が、一部の大
資本、ことに
基礎産業方面におきましては、原價をいわゆる積上げ式によ
つて、消費のいかんにかかわらず、利潤を大
資本に保障する行き方でやられておりました反面、
中小商工業の方面におきましては、購賣力の減退のために、事実上マル公を割るようになり、
統制が無
意味にな
つて來ておる。相対的な過剩
生産の
状態、すなわち一般
大衆の
購買力の激減ということが、大
資本擁護の
生産統制の結果現われて來ました。そのために
中小工業も
犠牲となり、今までの
統制が無
意味にな
つて來たからとい
つて、ただちにこれを
撤廃するということは、一應煩瑣な
統制を
撤廃することによ
つて、
中小商工業者の
利益のごとくに
見えて、実はそうではなくて、今後における
中小商工業者の
大衆的な破産、一般
大衆の一層の貧窮化を默認し、かつこれを推進することにすぎないのであります。要は低賃金
政策の
一つの現われにほかならない。正しい
統制は、人民のために、全
産業のためにという立場から行われなければならないのにかかわらず、今までこの
統制はすべて一部の大
資本のために
運用せられ、一般商工業者、一般
消費者大衆のためになされた
統制でないということは、事実がりつぱに証拠立てていると
考えるのであります。ことに昨日の
安本長官の説明によりましても、
蔬菜類の
統制撤廃が言われております反面に、農民に対しては依然として作付を強要し、これに対しては
資材を配当するというようなことを言
つておりますけれ
ども、このようなことをすれば、零細なる
生産者であり、
日本における中堅階級とも言うべき農民層を、一層破綻に陷れる結果になることは明らかであります。これを要するに、今までの
統制は、不正、腐敗の恩床をなし、かつ一般
大衆の生業と
生活を破綻せしめて、一部大
資本家のためになされて來た
統制ということが、
はつきりと言えると思うのであります。
それから次に、
本法はそもそも戰時
統制の延長でありまして、國家総動員法に基く
物資統制令が戰時中ありましたが、あれを形をかえて存続した
法律であることは申すまでもないのであります。それゆえに臨時という文字が上にくつついておるのであります。しかるにこの臨時が、
前回に一年延ばされ、またここに來て一年延ばされるというような
状態にな
つておるのでありまして、これはそもそも戰時立法であるこの
物資統制令、官僚に対して一切の権限を與えるこの
法律は、一時も早くこれを根本的に改正し、あるいは
撤廃すべきものであるにもかかわらず、便々としてこれを延長に延長を重ねて行くということは、
一つには
統制撤廃を一枚看板のように言
つて來た民自党自体の無策を、ここへ來て暴露しておると同時に、單なる無策であるばかりでなく、これは戰時立法であるこの
臨時物資需給調整法なるものを、さらにここへ來て復活せしめ、戰時立法的性格をもつ
統制法をあらためて強化し、これを
運用せんとする意図があるものであると、断ぜざるを得ないものであります。最近における
政府の動向等を
考えてみますると、戰時的な色彩のある施策は、ほかにも続々出て來そうな傾向にあり、一方においては独占禁止法や、集中排除法を立案せんとし、他方においてはポツダム宣言で認められ、憲法で保障された
労働者の権限を、さらに圧縮せんとするような労働法規の改惡も
考えられておる。あるいは非日活動
委員会であるとか、あるいは考査特別
委員会であるとか、そのほかありとあらゆる方面におきまして、戰時的色彩をもつ諸法規の復活のような傾向をたどりつつあるのであります。農村に対する追加
供出の制度を法制化する、あるいはそのほかいろいろありますが、こういうふうな一連の
政策を
考え合せますとき、この
臨時物資需給調整法をここに來てまた一年延長するという陰には、再び強大な権限を官僚に與え、これをも
つて日本の今後の
経済の
運用を、再び戰時的な独裁的な
方向へ、大
資本家のためにする独裁的な
方向へ引ず
つて行こうとする意図の現われであると、言わざるを得ないのであります。
それから次に、私
どもは、もしこの
法律が
期限切れにな
つて解消したらどうなるというふうなことも、心配されるのではありますけれ
ども、こういうふうな
惡い制度、人民のためにならない制度は、
期限の満期とともに
撤廃さるべきである。その際もしも官憲や
政府が一方的な意図をも
つて干渉しないならば、私
どもは生きんとする人民
大衆の総意と業界の自主的な自治によ
つて、必ずやもつと実情に即した
統制の方式が生れるであろうし、これを全力をあげて助成し、新しい
法律をその上につくるべきでありまして、ここに來て
期限がないとか、切れたらどうなるというようなことをいまさら言うのは、
政府自体の責任であります。これが第一でありますが、これに対してわれわれは観点を異にし、人民
大衆の業界の自治的な精神に基く新しい
統制の形態が、生れ出ずることを確信する次第であります。
なお最後につけ加えたいことは、この
法案を
期限切れのまぎわに出され、しかも先般來各
委員からも
お話がありましたように、
政府の一般的な施政の話もなく、十分な
質問を展開せしむべき資料さえないときに、こういう重大な議案が出されなければならなか
つたというような、手続上の不備の点もあるのであります。
以上の
理由によりまして、共産党といたしましては、
本法案に対し反対するものであります。