○倭島
政府委員 いわゆる在外
財産というものにつきまして、
從來政府といたしましては現状がどうな
つておるかということについて、何とか世界各國にある存外
財産の実情を知りたいと努力をして参つたのでありますが、最近その
関係につきまして一部明らかに
なつたところもございますし、ならないところも大部分でございますが、この機会に現在のところを御
説明申しておきたいと存じます。在外
財産、つまり世界各國にございます
日本人の
財産の件につきまして、現在どういう始末にな
つておるか、どういう処理を受けておるかということについて、
政府としましては
從來司令部の方に対して正式な、正確な報道をいただきたいということで、たびたび交渉しておるのでありますが、現在までの
状況といたしましては、在外
財産の処理の問題は、極東
委員会の付議事項の中に含まれておらないということと、それから司令部の
占領政策の権限の中に入
つておらないということの
ために、在外
財産の現在あります各國から正式の報告、報道が入手できないという現状にございます。しかしながらたとえばアメリカの場合なんかは、ある
程度知らしてもらえる
範囲の資料を入手し得る。その他の南米諸國、東亞各國にあります
財産の現状なり処分の模樣ということにつきましては、何らか現地におられる人からの通信とか新聞とか、その他のむしろ非公式な通信によ
つて現在の
状況を承知しておる現状でございます。
從つてその
程度の根拠に基くことをまず申し上げておきまして、在外
財産の現状についての見通しを申し上げようと思います。なおもう
一つ申し添えますが、在外
財産と賠償との
関係で、これが一体どうなるかという疑問をこれまでから持
つておりまして、これについて
関係方面等の
意見も確かめたのでありますが、これについても何ら現在確定的な報道なり
意見の開陳がございません。在外
財産と一口に申しましても、大きくこれをわけますと、各國に現在在留しております
日本人の持
つておる
財産と、それから
日本に引揚げて來られた方で、現在
日本におる
日本人の外國に持
つておる
財産と、大わけをしますと二
種類あるのであります。在留しておる
日本人の
財産の問題につきましては、大ざつぱに大体の傾向を申し上げますと、大体大勢としましてはこれは大した
損害なく、そのままに存続しておるのが大勢でございます。これをもう少し詳しく申し上げますと、米國とカナダについては
從來のまま大した問題はございません。中米と南米とにおきましては、多少その國々によ
つて取扱いが違
つておりまして、全部
接收をせられてしま
つておる國がございます。たとえばパナマだとか、コスタリカだとか、サルバトル、ハイチ、エクアドル、こういうような國では、在留邦人が國外に追放せられたのが大部分でございまして、
財産は全部
接收せられておる。それから戰時中在留邦人の
財産が凍結せられ、また
接收せられておる。しかもそれに対して何らまだ
補償の
措置が講ぜられておらないというような國々にペルーだとかブラジルがございます。もつともブラジルに関しましては、
財産を返すという問題が具体的に考慮せられておる
状況であります。それからメキシコとかアルゼンチン、ウルグアイというようなところは、一時
接收された
財産が返還せられ、また適当な
補償がせられておるという
状況であります。他の南米の國でありますコロンビヤとかベネズエラ、ボリビア、チリー、パラグアイというようなところは、
從來在留同胞からの通信によりますれば、ほとんど
損害なく現存しておるという模樣であります。次にいわゆる狹義の在外
財産、その所有主が今
日本に帰
つておられる際の
財産の
関係であります。この
財産の
関係におきましては、
從來の司令部のとられたいろいろな
措置によ
つてはつきりしたものと、しないものとがございます。これまでの在外
財産というものを大わけにわけますと、
日本の旧領土でありました台湾、朝鮮、樺太、関東州、南洋群島とかいう方面にあります在外
財産、それから交戰國の
関係に立
つておりました國にある
財産、それから中立國にありました
財産、中立國にありました
財産については問題ございませんが、旧領土にありました
財産と、交戰國にありました
財産のうち、御承知の
通り閉鎖機関に指定せられた
会社の
財産、それからそれらの國に、在外に本社を持
つておる邦人の
会社の
財産については、司令部のとられた
措置によ
つて、多少その
財産の処分の件が具体的になりかけております。閉鎖機関の
関係では約四十二
会社がございますが、その
会社の持
つておりました在外
財産の処分については、まだ何ら決定しておりません。ただ國内にあ
つて閉鎖機関に指定せられた
会社が持
つておつた
財産が、一部清算に充てられておる
状況であります。在外に本社を持
つておりました邦人の
会社という
関係で取扱われておる
会社が、現在約千二百ほどございますが、この在外本社の
財産というものは、大ざつぱに申しますと、大体において
從來の債務の
関係に充てられてしまうという見当でございます。米國にございます在外
財産、今國内におられる
日本人がアメリカに持
つておる
財産の処分は、最近のアメリカの立法で大分
はつきりして参りました。おそらく米國における在外
財産の
取扱いというものが、ほかの國のやはり一種の模範と申しますか、一種の手本となるのではないかと思われるのであります。この米國の最近の
取扱いの問題を少し詳しく申し上げたいと思います。
從來米國にございました在外
財産というものは、戰後間もなくいわゆる対敵通商禁止法、これは一九一七年十月六日に制定された法律でありますが、この法律によりまして敵産管理人というものの手によ
つて全部管理の
状況におかれておつたわけであります。それが昨年の戰爭に関する
請求権法という法律の一部のうちにおいて修正をされまして、原則として敵國人の
財産で、管理人の手に渡
つておる
財産は一切返さない、
補償もしないという法律が出たわけであります。その法律の
一つの例外が最近司令部の方から
日本政府に通達せられましたので、
日本人関係にもただ
一つの例外が認められることになりました。その件につきましては、実は今月の五日に
外務省から発表いたした次第でありますが、一口に申しますと、
日本人の持
つておる米國にある在外
財産というものは一切返さないし、
補償もしない。但し次の二つの件に該当する
財産は返す。その二つの
関係と申しますと、
昭和十六年十二月八日から
昭和二十一年八月八日までの間に米國の交戰國、すなわち
日本、ドイツ、ルーマニヤ、ハンガリー、ブルガリア、この五箇國のうち、またその
占領地におつた者でなく、またそこで営業しておつた者でない人には
財産は返す。もう
一つの例外は、
昭和十六年十二月八日から二十一年八月八日までの
期間において、米國の交戰國またはその
占領地におり、または営業に從事した者でも、政治的、人種的または宗教的手段をも
つて差別待遇したような法令によ
つて、
昭和十六年十二月八日から前記法令廃止のときまで公民としての権利を十分に、享有できなかつた者、またはその相続人には
財産を返す。要するにこの
日本人の
関係といたしましては、今申し上げました
期間のうちに何らか
日本の法律で迫害とか差別待遇を受けておつた人には、その人がアメリカで
財産を持
つておつたら、その
財産は
從來敵産管理人で押えられてお
つてもその
財産は返すというたつた
一つの例外であります。実はこの例外に該当する人がどのくらいあるかわからないのでありますが、先日発表いたしましたように、四月五日に発表いたしまして、四月一ぱいに申請を出す。
從來約三十件ほどその申請の手続のお手傳いを
外務省の方でしておりますが、その件数がどのくらいあるかまだ
はつきりしません。何しろ
期間が迫
つておりますので、あまり多くの人がこの例外
規定によ
つて財産を返還してもらうということにはなりにくいのじやないかと思
つております。大体現在まで
外務省の方で在外
財産の現状、あるいは処分等について承知しておりますところを御
説明申し上げますれば、以上のような次第であります。
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