○安部
委員 ちよつと伺いますが、この非
移民(從前
通り)
政府の官吏、家族、從者、これは問題ありませんが、二項の一時的旅行者(用務、視察、見学、遊覽、治療等)でありますが、用務をも
つてアメリカに一時的に旅行した。たとえば在米の夫の所に
日本で結婚したその妻が用務をも
つて來ました場合に、一箇年くらいの滯在が必要な場合、たとえば妊娠した場合、どうしても一箇年滯在したいという
希望を申し述べましても、
從來は子供が生れるのだ、ことに妊娠した場合には、その子供が
アメリカに出生するので、当然
アメリカの國籍を得ることになるのであ
つて、なかなか滯在期間の延期を
許可しない場合があ
つたのです。それから視察見学にいたしましても、二年くらい滯在しなければその目的を達することができない場合においても、一箇年くらいでなかなか延長しないということもあ
つたのであります。その点については、
ジヤツド修正案においてどういうふうな方法をとるかということを伺いたい。
それから第三番目の通過者、これはたとえてみれば、現在カナダもしくはメキシコに滯在する者に、その妻女が訪問する、あるいはまた結婚してメキシコの
政府の
許可を得て入國する、そうしてメキスカリであるとかエンセナタであるとか、きわめて
アメリカの領土に近接した土地に行く場合には、
アメリカの領土を通過して行くのが便宜である。ところがマンザニオからまわ
つて行くとかいうふうな場合には非常な危險もあるし、汽車の不便もあるのであります。そういう場合には、順序として
日本の長崎なり神戸なり横浜なりに滯在しておる
アメリカの領事館から査証を受けるのでありますが、なかなかその査証を從前にはくれなかつた。そういう
関係で
アメリカの領土を通過することができずに、わざわざ
向うの方にまわ
つて、二週間で通過できるものが一箇月もかか
つて通過しなければならぬというようなことがしばしばあつた。そういう場合には寄港地のサンフランシスコなりサンペドロなりで労働大臣——現在は司法大臣でありますが、そういう
長官に電報を打
つて事情を述べれば、別に査証がなくても通過を許すということがあ
つたのであります。それも非常にうまく行くこともあればなかなか長くかかることもあり、通過者が非常に困難を來したり、また非常に便宜であつたということもありました。今度の
ジヤツド修正案によればそういうことはどういうふうに解決するか。
それからもう
一つ海員の問題でありますが、海員がそこに寄港して、その船がそこに任務を終えてほかへ行かない場合には、海員が一時的に上陸する。そうすると六箇月なり八箇月なり、他の船に乘る機会がなければしばらく
米國に滯在するが、海員としてあまり長く一定の期間以外なお滯在しておれば、本國に送還するということもしばしばあ
つたのであります。こういうことに関する期間の問題、そういうことはどういうふうに解釈するものであるか。
第六番目の國際商人であります。この國際商人というものは非常に狹義と廣義の解釈があるのでありまして、たとえばインターナシヨナル・マーチヤント、いわゆる國際商人の定義は何か、こういう問題でありますが、戰爭前の日米通商條件によれば、商人という定義がゾーズ・フウ・エンゲージ・オン・トレード、すなわち商業に從事した者はトレーダーなんだ、こういうような点にいろいろ重点を置いたわけでありますが、トレーダーという言葉はウエブスターの辞書によ
つても、それは何でもよいから商賣をやつた者はトレーダー、必ずしも國際商人でなくてもよいのだ、すなわちただ一回だけ商行為をやつた者でもトレーダーだ。そういう点から言つたならば、
アメリカに現在お
つて小さいホテル、いわゆる旅館業をやつた者もこれは商人である、また荒物屋をや
つておつた者も商人である、豆腐屋をや
つておつた者も商人である。そういうふうなことになれば、
日本通商條約によ
つてそういう者は商人として入國の資格がある。こういうような建前でいろいろ
移民当局に抗議を申し込んで、旅館経営者の細君が六箇月の滯在期間で入國した。その後インターナシヨナル・トレーダーという條項によ
つて、それは商人であるから、資格を変更して長く滯在することを要求した。こういう場合においてしばしば労働大臣もしくは司法大臣より
許可に
なつた。そういうふうにトレーダーというものは廣義に解釈して、必ずしも國際貿易に從事した者でなくてもいい。
アメリカの單なる國内商業に從事した者でも、日米通商條約によ
つて永久に滯在することができる。こういう解釈があ
つたのでありますが、ところがそうなれば
移民法というものは全部無効になるようなおそれがある。あそこで八百屋商人であるとか、あるいはまた農業に從事した者で肥料商をや
つておる、そういうような者の妻女がどんどん來るようになればこれは困るというので、いろいろな法律をつく
つて狹義に解釈するとすれば、いわゆる國際商人でなければならぬということがあ
つたのでありますが、しかるにそういう法律は無効だ、なぜなれば日米通商條約というものは
アメリカの憲法、いわゆる最高の法律と同樣なものであ
つて、最高の法規であればそれに矛盾した法律は一切無効なものである、こういう建前から抗議を申し込んで、そうしてそれが遂に解決しなかつたようなわけであります。この問題については國際商人ということをどういうふうに解釈するか、この問題が非常に重大な問題でありまして、これが狹義に解釈せられるか、廣義に解釈せられるかによ
つて日本人で入國する者の数が非常に多かつたり少かつたりするのであります。そういうようなわけで、非
移民についてはいろいろ問題があるのですが、その問題について
ジヤツド修正案の法の精神はどこにあるかということを御
質問したいのであります。
さらにまた非
割当移民でありますが、この問題で
米國市民の
配偶者とありますが、
米國市民でありましても、その後
日本に帰
つて來て、
アメリカに在住する
日本人と結婚した、こういう場合には
米國市民の
配偶者というのは夫になるわけであります。妻は
米國市民であ
つて、夫は
日本人である。しからばそういう場合において、その
配偶者の夫が正当な法権を持たず、領事館の査証を持たずにひそかに入國した。そういうことで送還せられた者が今別居して、妻あるいは子供が
アメリカにおるが、夫が
日本にお
つてアメリカに帰ることができない。こういうような者はどういう方法をとるか、これは問題が起りますが、その点。
それからまた再入國者でありますが、再入國者でも、たとえば
日本に参りまして、
アメリカに帰
つて行く意思があつたけれども、それが病氣あるいはきわめて近親者の病氣のために長く滯在しておつた。普通は一箇年以内に帰
つて行かなければならぬが、それが帰
つて行くことができなかつたという場合には、その人が入國するということは、再び
アメリカに帰
つて行
つて永住権を継続するという意思があ
つて、もう
アメリカを切り上げて帰
つたのではないという意思の表示によ
つて行くことがしばしばあ
つたのでありますが、こういう者は六箇年あるいは九箇年
日本にお
つても、再び
アメリカに入
つて行くことができる。そういうこともしばしば判決例にあ
つたのでありますが、この点はどういうふうに解釈するか。
それからまた布教師、大学專門学校教授——布教師という意味でもキリスト教の宣教師、牧師、いろいろありますが、最も短期な教育を受けた天理教の布教師、こういう者は六箇月くらいの教育で布教師になる。そういう者が布教師として
アメリカに渡航した場合においては、
アメリカの在
日本の
アメリカ領事館がなかなか査証を與えない場合がある。天理教の教師というものは、他の佛教の開教師あるいはキリスト教の宣教師というものと同樣にみなしてはいかぬ。それは二箇年以上布教に從事したものでなければいかぬということでありますが、教会を持
つて布教に從事したものであるか。あるいは教会を持たずに、天理教のように田舎に一家を持
つて、そこを教会として布教したのか。それも継続的にやらず、一週間に一回なり、一月に二回やるものを、はたして布教師として見るかいなか、それも問題であります。
それから十五歳以上の学生というのでありますが、これは今までは十五歳以上とは規定しておりまするけれども、大体学生というものは專門学校を卒業せんければ学生とみなさないというようなことが、ほとんど内規のようなことにな
つておりまして、なかなか渡航は困難であります。十五歳であれば中学
程度でありますが、それもなかなか渡航困難である。それからまた
向うに行
つて、たとえば費用ですが、
アメリカにお
つて学生が学校に行くには、相当の費用がかかる。現に現在のような為替相場であれば、
アメリカに行
つてアメリカの学生と同樣に生活し、学習するのに非常に金がかかる。その場合において、今
日本で言う学資のために何か働くとかいう場合には、これは労働したものとして送還できる。いわゆる学生ではないのだ。片手間に働いても、アルバイトのように
ちよつと働いても、これは苦学生で学生ではないというので、送還になることがたくさんあ
つたのであります。また授業料を納めることができない場合にも、
ちよつと学校を休んだ場合にも、学生の資格というものは認めない。そこで
日本に帰らなければならぬというような事件がたびたび起
つたのであります。こういつた場合にどういうふうに処置するか伺いたい。