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1949-03-30 第5回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年三月三十日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 岡崎 勝男君    理事 安部 俊吾君 理事 栗山長次郎君    理事 仲内 憲治君 理事 若松 虎雄君    理事 野坂 參三君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       佐々木盛雄君    竹尾  弌君       福田 篤泰君    守島 伍郎君       山本 利壽君    戸叶 里子君       木村 俊夫君  出席國務大臣         賠償廳長官        國 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         賠償廳次長   島津 久大君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         外務事務官   磯野 勇三君         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君 三月二十四日  委員森山欽司君辞任につき、その補欠として山  本利壽君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十八日  引揚促進並びに更生対策に関する陳情書  (第二二  号)  海外残留胞引揚促進に関する陳情書外三件  (第三六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  賠償問題の経緯並びに特殊財産等に関する説明  聽取     ―――――――――――――
  2. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいまより外務委員会を開きます。  まず賠償問題につきまして、政府側説明を聽取することにいたします。
  3. 島津久大

    島津政府委員 賠償問題の概要につきまして御説明申し上げます。  御承知通り、廣い意味賠償問題と申しますと、在外財産の問題、その他いろいろ大きい問題があるのでございますが、こういうような賠償全貌がきまつておりません。さしあたりの問題といたしましては、日本國内の産業施設取立の問題が取上げられております。また私ども賠償関係の者が取扱つております問題も、そういうことに限定をされておりますので、本日の御説明は、日本國内の産業施設に関する賠償の問題に限定いたしたいと存じます。  最初に今日までの賠償の経過の概要につきまして申し上げます。資料ごらんなつていただいた方が簡單かと思いますので、お手元に差上げました賠償問題経緯一覧、こういう縦の資料がございますが、このまん中に、箱の中に入つておりますのが、今日まで決定を見ました重要政策、あるいは原則なつておるのでございます。一々御説明は省略いたしますが、このうちで基本的なものを一、二拾いますと、ポツダム宣言賠償問題の基本なつていることは申すまでもないことでございますが、その次の極東委員会中間賠償計画決定——終戰の翌年の五月のことであります。これが今日までのところの賠償実施基本なつておるのであります。これ以後に、これほど基本的な決定は今日までないのであります。その次、二つぐらい飛ばしまして、米國政府中間賠償三割前渡即時取立最高司令官宛指令というのがございますが、これがその次に重要な決定でございまして、御承知のように賠償問題がきまりませんので、極東委員会中間計画決定に從いまして、日本國内の産業施設賠償予定施設として指定されておるのであります。その中の各産業部門の三割までを、とりあえず渡すというのがこの三割前渡し指令なのであります。大体この二つ基本的な決定であります。その後はまだ今日に至るまで、賠償最終計画決定も見ていないのでございます。すべてのことがこの中間計画によつて動いておるのであります。この中間計画の中の、三割までの前渡しの一部が実行されておるというのが現状でございます。左側に書きましたのは、まん中のいろいろな重要な決定影響を及ぼしたような、あるいは直接の影響はないにしても、賠償問題について注目すべき声明その他をずつとあげてあるのであります。  上から二番目のポーレー中間報告というのがございますが、これが極東委員会中間計画の基礎になつておるのでございます。その次飛ばしまして、ポーレー最終報告というのが出ておりますが、これが日本の國内の産業施設に対する賠償全貌をあげておるのであります。しかしこれは何ら正式に取上げられておりません。その次にストライク委員團の來着というのがございます。こういうことがありまして、その次のずつと下になりまして、海外調査相談所工業調査團來着、一昨年の夏から約半年にわたつて詳細に日本産業施設を実地に視察檢討したのであります。その後ずつとまた下になりまして、米陸軍省ストライク報告発表、昨年の三月であります。その次に四段くらい飛ばしましてジヨンストン報告発表、昨年の五月であります。その当時ドレーパー陸軍次官が見えまして、一行に随行して参りましたジヨンストン氏が賠償に関して発表を行つておる。そういうような重要な動きを左にあげまして、右側の方は基本的な決定從つて日本において総司令部がとりました処置、あるいは日本側がとりました処置、そういうものをずつとあげてあるのであります。こういうことで、今日までの推移概要をついでのときにごらんを願いたいと存じます。  それからもう一つ、いろいろ数字をあげました対日賠償計画推移というのがございますが、これについてごく簡單に御説明申し上げます。ただいま申し上げましたように、今日までのところ正式の決定と申しますのは、左から二番目にございます極東委員会中間案、これだけであります。その左、一番初めにございますのがポーレー中間案でございます。大体ごらんになりますように、同じくらいな程度のものなのであります。その次にポーレー最終案というのが出まして、これがポーレー中間ないし極東委員会中間案で言及しなかつたいろいろな部門まで及んでおります。全体から申しまして相当峻嚴なものであります。その次にストライク報告が第一部と第二部と両方あげてあるのであります。左側米國國陸海省調整委員会案というのがございますが、これはストライク報告の中の第一部をなしております。第一部と申しますと、ちようど極東委員会中間案程度のものを実行するとして、一体どのくらい日本から賠償物資として撤去できるかということになるのであります。その一番下の欄をごらんになりますと、数字が上つておるのであります。一九三九年の円價格で表示してあるのでありますが、第一次軍需施設が十四億、その他の民間工場の分を合せまして二十四億円に相当するものがとれるという結論なつております。第二部の方に参りますと、これは何ら前提がなく、ストライク調査團独自の見解から、一体日本から賠償をどのくらいとれるかという結論を出しておるのであります。この数字ごらんになりますと、第一次軍需施設と同樣でありまして十四億。ところがその他の民間工場からとることが非常に少くなりまして、軍需施設と合せまして十六億という数字なつております。その後に出ましたジヨンストン案によりますと、さらに少くなりまして、第一次軍需施設、これは御承知通り陸海軍工廠民間航空機民間兵器工場、そういうものを合せたものでありますが、その中で日本復興に必要であると総司令部で認めたものは除くということから、非常に少くなつておりまして、五億六千万円であります。それに民間工場から取立てる分を合せまして、全体で六億六千万。極東委員会中間案程度のものから比べますと、大分少くなつておるのであります。二十四億、十六億、六億というようなふうに、考え方変つて参つております。しかしながら緩和された案というものはただ勧告案にすぎませんで、何ら正式に取上げられておらないのであります。一般には賠償問題が非常に緩和されたという印象を、こういう案が與えておるのでありますけれども、正式の決定は依然として極東委員会中間案であります。一歩も緩和されておらないというのが実情でございます。簡單でございますが、賠償問題の大体の動き説明はその程度にいたします。  次にそれではこの三割の前渡しによつて、現在までどの程度作業が行われたかということを簡單に申し上げます。これについては引渡済賠償施設集計表という表がございますが、これでごらんになりますように、第一回の最初前渡し対象となりましたものが軍工廠であります。軍工廠が約百ございますが、そのうちの十七ないし十九工廠対象といたしまして、これを中國、オランダフイリピン英國、この四國に前渡しをいたしておるのであります。大体日本の侵略によつて最も被害を受けた國に早く渡すということが趣旨のように想像されるのでありますが、割合からいたしましても、この前渡しのうちの半分は中國、残りの半分をオランダフイリピン英國にわけまして、オランダ蘭印英國極東英領各地、そういうところに賠償物資を送つておるのであります。大体一昨年の秋から作業を始めまして今日に及んでおります。この表の三枚目のところをごらんになりますと、その数字の三段目、中國の工作機械というところの下にございます数字が、トン数でありまして、重量トンにして三万トンの工作機械が中國に行つたということでございます。オランダは五千七百トン、フイリピンが一万トン、英國が四千七百トン、合計いたしまして、工作機械がこれらの各國に五万二千トン今日までに行つておるということであります。これは引渡済みの集計でございまして、現に作業をしておりますのは、また別の表にございます。それで産業部門の三割ということでありますけれども、最初に手をつけましたのが軍工廠であります。軍工廠のうちの三割に相当するものを、とりあえず出すという計画の実行になつております。その三割が大体終りに近づいたというのが現状なつております。この軍工廠の中の施設の種類もたくさんございますし、算定のしようもあるのでありまして、まだまだこれだけでは——五万トンないし六万トンということでは、三割に及ばないようにも考えられますけれども、作業状況から見まして、一應この三割計画軍工廠部門が大部分出たということは、言えるのではないかと思います。撤去実情は大体このようなことになつております。  それから予定施設維持管理関係ちよつと申し上げておきたいと存じます。極東委員会中間計画に基いて、予定施設として指定されております工廠の数が、現在約八百五十ございます。この八百五十ほどの工廠工場維持管理日本政府責任を負つてつておるのであります。所管関係各省がこれに当つておるのであります。その内訳を簡單に申しますと、鉄鉱部門では二十、硫酸が二十三、ソーダが十九、人造ゴムが七、工作機械が九十、軸受けが二十七、火力発電が二十、造船が十九、陸軍工廠五十、海軍工廠五十一、航空機工場三百、民間兵器工場百七十八、研究所四十一、以上は総司令部指定なつておりますが、そのほか現地だけの指定で十余りのものがございます。合せて八百五十余りになるわけであります。ただこのうち軽金属関係は、全部極東委員会撤去対象なつておりますけれども、現実の指定はないのであります。これだけはどういうわけか、特別の取扱いになつております。  こういうような多数の工場維持管理いたしますために、今日まで使いました費用は、二十四年一月までに管理保全について五十三億使つております。なお費用関係から、先ほどの撤反関係費用を御参考までに申し上げますと、これは二十四年一月までに十四億使つております。これをトン当りにいたしますと、これは荷作りをした箱などを含まない、機械の実際の重量でありますが、一トンの品物を解体梱包して受取國の船に積みつけるまでの費用が約三万三千円になつております。そのうち解体梱包費用が七千円、資材費用が六千円、梱包しましたものを船に積み込むまでの輸送費が一万五千円、そのほかの費用が五千円、そういうようなことになつております。資材の方で申しますれば、今日までの経驗から割り出しますと、トン当り木材が二・八三石。木材が主要なものでございますから、ほかは省きますが、そういう程度資材を使つております。  次にこの賠償指定工場がどういうふうな状況にあるかということを一言いたしますと、これらの工場賠償予定工場でございますので、そのまま休止して撤去を待つのが本來の姿であるはずでございますが、いろいろな関係から、特に許しを得まして、操業を続けているところがたくさんあるのであります。これの率を申しますと、大体平均いたしまして、賠償予定工場の七割が操業しているという状況でございます。しかしこれはごく一部を動かしているものも含めておりますので、賠償工場の七割がフルに稼働しているということは申せないのであります。ただ全然休止している工場が全体の三割程度というふうに御承知願いたいと思います。これは一般産業部門でありまして、陸海軍工廠は、ごく一部を民間工場に一時轉換して使用しているような状況でございます。そこで、こういうような賠償工場の稼働しているのが、どの程度日本全体の産業に寄與しているかという点でございますが、これはごく一例で、正確な資料ではございませんが、御参考までに昨年十月の実情を申し上げますと、たとえば銑鉄のようなものは、日本の全生産量に対して、賠償工場が寄與している割合が五五・三%、鋼塊が三七・六、電解法による苛性ソーダが六一・八、接触法による硫酸が二三・一、塩酸が五六・一、火力発電が六六・八、織物の部門では織機が三〇・七。正確ではございませんが、大体こういうような程度賠償工場が動いておるという実情でございます。  次に今後どういうように賠償問題が動いて行くかという見通しの問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、今日まできまるきまるといいながらなかなかきまらなかつた理由は、なかなか解消しないように考えられます。ただしかしこの賠償問題は、日本復興、あるいは最近の九原則実施というものの裏になつておりますストライク報告ないしジヨンストン報告考え方から申しましても、どうしても日本を自立させなければならぬ。自立させるためにはこれだけの産業、これだけの貿易がいる。そのためにはこれだけの生産量がいるということから、日本に残すべき分量を算定しておるのであります。そういうことから、日本産業復興方法がだんだん進んで参りますと、どうしても賠償問題を解決しなければならぬという時期が來るのであります。そういう時期も遠からず來ることと期待をしておるような次第でございます。いずれにいたしましても、関係十一箇國のあることでございます。またこの決定も、極東委員会で正式な決定が最後的にはなければならない。しかも正式に最後的にきまるのは、講和会議というようなことが臆測いたされるのであります。いろいろ外電などの報ずるところによりますと、今年中には解決するというような印象を受けるのであります。何とか早い機会解決を見て、日本復興を障害なく遂行できるような事態にしたいものと考えております。  きわめて概略抽象的な御説明をいたしたわけでございますが、以上で概況の御説明終りまして、そのほか何か具体的な御要求がございましたならば、細部に入ることにいたしたいと存じます。  なお資料として賠償視察予定工場という表を差上げておきましたが、これは各部門の代表的な工場を一應あげまして、できるならば委員各位におかれまして、こういうような工場ごらん下さいまして、賠償問題がどういうように動いておるかという実情を御視察願えたならばということから、御視察になる候補の工場という意味で差上げたのでございます。もし具体的にそういうようなことに運びますならば、なおお打合せをいたしまして、もつとしつかりしたものをつくりたいという考えでございますが、一應御参考までに、各部門でこういうような工場があるということをあげました次第でございます。  もう一つの方の、軍工廠作業進捗状況という表がございますが、この方も、現在作業がどういうように動いておるかということを御参考までにあげました。東京近郊では相模工廠作業をいたしております。進捗状況割合が非常に高いところは、終りに近づいておりますので、こういうところは御参考にならぬと思いますけれども、たとえば相模工廠のごとく三%しか通んでおらぬというところは、ごらんになりますと、どういうような作業をやつておるかということがおわかりになるわけでございます。大体今日までのところは、軍工廠工作機械がおもだつたのであります。最近は火力発電でありますとか、燃料というような施設に移つて参りました。一番下の呉の工廠などは、火力発電の相当優秀な機械が中國に送られるということになつております。まだ手はつけておりませんけれども、いろいろな作業準備をしておる段階でございます。以上御参考までにつけ加えておきます。
  4. 岡崎勝男

    岡崎委員長 何か御質問はありませんか。
  5. 守島伍郎

    ○守島委員 さきほど今年中には解決がつくというような印象を受けたというようなお話でございますが、それは賠償の方ですか、講和條約の方ですか。
  6. 島津久大

    島津政府委員 賠償の方であります。
  7. 山本利壽

    山本(利)委員 今ので概略はわかりましたが、日本側では外務省、あるいはその他の日本側の当局として、大体どの程度にしてもらいたいとか、いつごろまでには決定してもらいたいとかいつたような、意思表示をしたことがこれまでにおありでございましようか。
  8. 島津久大

    島津政府委員 これはたびたびいろいろな懇請はしておるのでありますが、これはちよつと速記を……。
  9. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ちよつと速記をやめて下さい。     〔速記中止
  10. 岡崎勝男

    岡崎委員長 速記を始めて下さい。
  11. 山本利壽

    山本(利)委員 そういうようなことは外務大臣というか、外務省としてその都度申出られておるのでありますか、あるいは日本経済界代表者とか、あるいは議会とかいつたような團体からの意思表示でありますか。
  12. 島津久大

    島津政府委員 ただいま申し上げましたのは、形はいろいろになつておりますが、政府側から申出た関係を申し上げたわけであります。いろいろ産業方面から個々に要望があつたことも事実と思います。これは一々存じません。
  13. 野坂參三

    野坂委員 関連したことでちよつと……。ドツジ公使が見えてから、賠償について今までと多少変つたような方針が出ておるか出てないか。
  14. 島津久大

    島津政府委員 賠償問題につきましては、ドツジ公使関係からはまだ新しいことは伺つておりません。ただこれは予算関係から申しまして、來年度賠償撤去予算が非常に少いようなことになりそうだと思われます。それは賠償撤去來年度はないということではないのでありまして、極東委員会で最後的の案がきまつたならば、取るべきものは急いで取るということになつておるらしいのでありますが、極東委員会決定が、いつどの程度になるかということがきまらないということで、不確定の要素であるから予算からは一應落す。しかし極東委員会できまつて、これだけのものを取るということになれば、年度中でも予備費——どういう形になりますか、予備費の中から出して実行する。予算関係ではそういう話になつておるようであります。
  15. 野坂參三

    野坂委員 もう一つ、今まで撤去されたもの、あるいは今ただちに撤去されるようなものの行く先の國ですね。たとえば中國、フイリピン、その他、こういうようなところでどういう方面に実際上使われているのか。あるいは使われないでそのままになつておるのか、こういう問題についての報告資料がありますか。
  16. 島津久大

    島津政府委員 こういうような資料は持ち合せておりません。大体工作機械類でございますので、処分方法は非常にたくさんあると思われます。單位をなした工場、たとえば火力発電でありますとか、一つのユニツトをなした工場ですと、移設する先の準備なんかができた上で、そこに持つていくか、そこに再建するということになる。これははつきりすると思いますが、工作機械のような小さい——旋盤でありますとか何とか、いろいろ小さなものが多いし、もともとこれをどこにどういうふうに使うからということで持つて行つたものではないように思われます。向う側の受取國の方の処分状況もいろいろ区々であろうと思います。われわれ関係の方からも、やはり出しました以上は、責任もございますし、向うに着いた状況がどうであろうか、どういうふうに使われておるだろうかということは、関係方面を通じていろいろ聞いておるのでありますが、どういうふうに使つておるかということははつきりいたしません。ただ向うに着いた状況については、文句が來ていないというようなことしかわかりません。
  17. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 この賠償指定されたものもポーレー案とか、あるいはストライク案とか、ジヨンストン案とか、いろいろ変つて來ているようでありますが、賠償指定されたものの指定解除ということについて折衝されたものとか、あるいは向うからこれに対して何らかの意思表示があつたか、また見通し等につきましてお伺いいたしたいと思います。
  18. 島津久大

    島津政府委員 指定解除につきましては、たびたび申入れをしております。しかしこれは総司令部の方では、最後案が近い機会にきまるから、そのときに離すものは離すということで、現在はこれは離す、これは離さぬというような、イエス、ノーをその場で言わないかつこうになつております。いずれある時機が來ましたならば、相当、離されるのではないかと想像しておりますが、現状はやはり一切極東委員会日本産業水準もきまつたりした上で、個々工場をどうするかということがきまるという情勢と考えられます。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 許可を受けて作業を継続しておる工場製品でございますが、賣却その他の点について制約をうけておりますか。
  20. 島津久大

    島津政府委員 制限と申しますと……。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)委員 かつて処分できるのでありますか。
  22. 島津久大

    島津政府委員 つまりその作業については許可條件があるわけです。しかし許可された品目、その製品をどうしようと、それは別に制限はありません。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 今の話では、指定賠償工場の七割が稼働になつておりますが、日本経済再建という見地から見れば、できればこの指定工場の全部をフルに動かすことがいいと思うが、そのフルに動かし得なかつた状況、たとえば資材がないとか、そういうような七割しか動いていないという理由はどこにありますか。
  24. 島津久大

    島津政府委員 これは申すまでもないことでございますが、予定工場はあくまで賠償の引当になつておるので、賠償工場じやないものをフルに動かすということが本來の筋なのであります。ところがいろいろ能率の問題、地方的事情、そういうようなことから特別に許可を得ておるので、賠償工場全体を動かしてほしいということまではなかなか現状では言いにくいと思います。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)委員 賠償工場として指定ないし予定されておる工場に働いておる労働者の数ですが、調べができておりますか。
  26. 島津久大

    島津政府委員 ちよつと今数は持つておりません。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今度恐縮ですが…。
  28. 島津久大

    島津政府委員 少し以前の調査ですが、賠償工場を全部取られると、どれくらい失業者が出るというような調査はあるのでありますが、これは一つ新しいところでお知らせいたします。
  29. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これはいろいろな問題で、職場轉換とか、失業問題、あるいは熟練工の問題がありますから、統計的にお出し願えれば、おとり願いたいと思います。     —————————————
  30. 岡崎勝男

    岡崎委員長 一應御質問も出そろつたようですが、おはかりいたします。ただいま政府委員からも、外務委員方々におもなる賠償予定工場視察をしてみられたらけつこうだということがありましたが、もし御異議がなければ、時間の許す方々視察をしていただこうかと思いますが、いかがでございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 岡崎勝男

    岡崎委員長 そういたしますれば、いずれ割当とか御希望の地域とか、時間の有無とかいうことがありましようが、御希望の場所、御希望の日取等を各自委員長のもとに御提出願いまして、さらに重複したりする場合がありましたならば、理事の間で適当に御相談してはからいたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 守島伍郎

    ○守島委員 私はいわゆる一年生で、今まで議会方面から旅行したことがないのでありますが、はたして全部そうであるかどうか知りませんけれども、二、三聞きますと、議員がこういうふうに出張をいたしますと、非常に現地で歓待を受けて、心苦しいことがあるということを聞きました。もしそれが事実でございましたならば、われわれが出張をいたしますような場合は、そういうふうな非常に歓待を受けるというようなことは、できるだけ避けさしていただきたいと思います。これは私の希望でございます。
  33. 岡崎勝男

    岡崎委員長 これはおそらく各委員全部のお考えだろうと思いますから、できる限りそういうふうにはからいたいと思います。
  34. 仲内憲治

    ○仲内委員 事務当局の説明経緯はわかつておりますし、それから工場を見に行くこともいいのですが、結局われわれが委員会でこれから問題を取上げて行く上においては、全体的に日本復興計画賠償問題がどれだけの重要性を持つか、つまりわれわれが懇請する根本の基礎的な要望事項を持たなければならない。その意味では、賠償廳に今度は大臣ができたが、むしろそれよりも安本長官あたりに、賠償問題を日本経済再建の建前からどう見ておるか、その角度を聞かしてもらう方が大事じやないかと思いますので、もしほかの委員の方も御賛成なら、この次の委員会に安本長官から、日本再建の上に賠償問題がどういう重要性をもつかということの内容を、さしつかえない限り聞かしていただきたいと思います。それをのみ込んで、賠償問題をどう解決してもらうようにして行くかということを、日本として、研究する必要があるのじやないかと思いますが、いかがでしようか。
  35. 野坂參三

    野坂委員 私今の御提案は非常に賛成ですが、それにつけ加えてもう一言、これは外務省関係でしようけれども、つまり今まで表面に出ておつたような、たとえば極東委員会のあの提案、それからポーレー、ストライク、ジヨンストン、あそこにおける連合國側の賠償に関する基本政策が、どういうふうにしてこう筋がかわつて來ておるか、やはりそれの根本政策があると思いますので、こういう最初から最後までの政策の変遷は、やはり今の御提案に関連して報告していただくといいと思います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎委員長 仲内君の御提案の、安本側の全体の計画に対する賠償問題の比重というようなことの説明を受けること及び野坂君の御提案の、種々の賠償計画の変遷についての方針の変更等、もし説明すべきものがあれば説明を受けること、この両提案について御異議がなければ、最近の機会政府側説明を受けたいと思いますが、いかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ではさようとりはからうことにいたします。  そういたしますれば、その説明説明といたしまして、賠償に関する視察の方は、先ほど申しましたように、委員各自から御希望を頂戴し、それを整理して、御満足の行くようにとりはからうことにいたします。そのほか賠償問題について何か……。
  38. 北澤直吉

    北澤委員 日本の在外資産の問題ですが、たとえばアメリカとか北米とか中南米とか、そういう所にある日本の在外資産が一体賠償に入るのか、入らないのか、そういう問題に対する説明も聞きたいと思いますが、これは外務省関係ですか、賠償廳ですか。
  39. 岡崎勝男

    岡崎委員長 ただいま政府委員説明では、この問題は外務省の管理局の所管になつているそうであります。ただいまあいにく管理局長が來ておりませんから、もし御希望ならば、その点も次会に管理局長の御説明をしてもらうことにいたします。
  40. 北澤直吉

    北澤委員 何か最近聞くところによると、アメリカでは日本の官有財産はいかぬが、日本人の個人の持つておつた財産は、元の所有者に返してもいいというふうな話があるということを聞いたのですが、もしそういうことであれば、非常にけつこうなことですから、そういう実情をひとつお聞きしたい。
  41. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それは次会に管理局長に來ていただいて、さらに報告していただくことにいたします。     —————————————
  42. 岡崎勝男

    岡崎委員長 おはかりいたしますが、政府委員報告では、賠償廳長官山口國務大臣が來てさらに御説明することになつているそうでありますが、まだ見えないので、時間の関係上、この前御提案になりましたCPC関係の略奪物件といいますか、その方面の状態を簡單説明してもらつて、もし山口國務大臣が見えたならば、ただちにさらに賠償問題を続けてもらうことにいたしたらいかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それではその前に、本日は実は通信関係の條約を御審議願うはずでありましたが、その方の準備が間に合わないでできなかつたそうでありますが、この事情を條約局長から一應説明を願つて、その後ただちに略奪物件の方に入りたいと思います。
  44. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 今日の委員会に御審議を願うように承つておりました万國郵便條約関係の附属の約定関係であります。実は閣議が済みましてから、從來の慣例によりまして、関係筋に対して議会提出についての承認を得ることになつていることは、各位御存じの通りであります。早速その手続をとりました。ところが内部に関係の部局が数多あるようでありまして、その中の一つの方で少しく手間をとつた関係上、やつと昨日の午後になりまして、関係筋の方からの承認が正式に到着いたしたような次第であります。そういう次第でございましたから、一昨日委員長にお願いいたしまして、一昨日はまだ正式に承認がとれるという確とした見透しがつかない状態にありましたので、今日の審議はおとりやめをお願いしたような次第でございます。昨日の夕方正式の承認が参りましたので、次会に御審議をお願いいたすような事態になつたような次第であります。ちよつと事情を御説明いたしまして、御了承を得たいと思います。
  45. 菊池義郎

    ○菊池委員 賠償に関することではありませんが、この次の報告のついでにお願いしたいのは、日本が戰時中拿捕した商船がまだたいへんにある。それを中國や南方諸國でもつてみな返せという要求をしておる。しかもそれは元通りに修繕して返せという。その修繕費だけでも何十億にのぼるということを聞かされておる。戰時中拿捕した船は、戰時國際法の規定に從つて返す必要のないことになつておるのです。つまり武器を積み込んでおつたとか、戰爭用に使つた船であるということがはつきりし、それを審檢所に持つてつて檢査して、それがはつきりすれば、そういう船はたとい戰いに敗れても返す必要はないことになつておる。それをみな返せと言つておる。返すのはまあいいとしても、修繕費にたいへんな金がかかる。返す必要のないものを返すばかりではなく、修繕費もまたたいへんな金がいる。そういうことについて、実際の状況はどういうふうになつて、実際の状況はどういうふうになつておるか、それもかねてひとつ説明してもらいたい。
  46. 西村熊雄

    ○西村(熊)政府委員 戰爭中拿捕し、捕獲審檢所にかけて捕獲審檢の結果、日本側で没收という処分をした船舶が、戰後原所有者に返されるという問題でありますが、それについての條約関係を御説明申し上げます。  同じ現象は前回の第一次世界大戰後にもありました。今度の戰爭後におきましても、すでに正式に平和條約ができ上つておりますイタリアその他の関係においても、同樣な関係なつております。結局第一次世界大戰後におきましては、休戰條約で戰敗國は戰爭中交戰権の行使によつて拿捕した敵國船舶は全部返させられているわけであります。從つて條約関係においてこの問題は規律されております。第二次世界大戰後の対伊平和條約を見ますと、イタリヤは同じく休戰條約によりまして、戰時中拿捕した敵國の商船を返還する義務を負つております。それによつて返還いたしましたが、同時にその後にでき上りました対伊平和條約におきましては、連合國はイタリア捕獲審檢所の下した審檢について再審査をする。その結果損害賠償その他の責を負うことがあるというような規定になつております。從つて平和條約を見ますと、イタリアが交戰権の行使によつて敵國船舶を拿捕、没收、審判するということは適法として認める。但しその審査を國際法に從つてやつたかどうかということを再審査するという規定になつております。從つて法律的に考えますと、むろんイタリアがやつた拿捕審判というものは適法に成立する。從つて正式にイタリアの所在になることは認めると同時に、今度は別個の休戰條約なら休戰條約というもので、そのとつた船を返せという法律関係なつて來ておるわけであります。それと同じような関係日本についてもおそらく起るであろうと私たちは推測しておるわけであります。日本については、イタリアの場合のような詳細な休戰條約というものはございません。いわゆる降伏文書に基いて、一つ指令という措置でいろいろの措置が行われておりますから、その指令に基いて、日本が合法的に戰爭中拿捕審判した敵國商船についても、原状に回復して返せという命令を受け、それを実行しておるわけでありますが、將來でき上がる平和條約には、私どもとしてはおそらく対伊平和條約の場合と同じように、日本の捕獲審檢所が下した審判については、連合國でこれを再審査するというような規定が設けられるのではなかろうかという一つの推測をいたしております。從つて戰爭中日本がやつた拿捕審檢それ自体は否認されるわけではない。それはそれとして認めるが、同時に一つの戰勝國の戰敗國に対する処分命令というようなもので、その船は返させる。そういうような法律関係になると思います。非常に妙な感じがいたしますが、一應合法的にこういうものを認めるぞ。その結果日本のものになつた船舶を他の命令系統、條約規定というか、休戰條約——日本の場合には休戰條約というものはありませんが、最高司令官の覚書という、指令という形で返還を命ずるという形になるわけであります。一應法律関係、條約関係だけを説明いたしましたが、実際上の修理その他の関係につきましては、特殊財産局長から御説明申し上げることにいたしますが、非常におもしろい問題であります。どういうふうにそれを調整して解釈すればよいかということは、私たちも非常に興味を持つております。一應今申し上げましたような関係になるものだろうと、先例によつて解釈をいたしておる次第であります。
  47. 磯野勇三

    ○磯野説明員 ごく簡單にCPC関係の、主として掠奪財産に関連いたします部分を申し上げたいと思います。CPCが管理しております財産は掠奪財産、これはいわゆる掠奪物件に限らず、戰爭中に日本で管理しておりました敵産、すなわち米國、イギリス、オランダに属した財産を敵産として処理いたしておりましたが、それはもちろん國内にあるものでありまして、それは現在返還しつつありますが、連合國財産と申しておりますそういう種類の財産と、戰爭中に占領地区から持つて参りました財産、これを一括いたしまして、掠奪財産という名前で、これを原所有國に返還するということのために、そこに至るまで司令部において管理しておるという財産があります。その他にそのいずれにも属しませんで、純然たる日本財産を特別の目的をもつて管理されておるというものもございます。たとえばこれは正貨準備の金であるとか、その他先ほどもちよつとお話のありました外地にあります日本の財産、いわゆる在外資産であります。これも司令部といたしましては、日本の財産ではありますけれども、これは一種の賠償引当てという形で司令部が管理しておる。從つてその計算その他もCPCがやつておるという状況であります。ところで掠奪財産と申しまする種類のものは、これは終戰の次の年、昭和二十一年の四月の九日に政府あての覚書が司令部から参りまして、それによりますると、戰爭中に占領地域からとつて日本に持つて來たものは、それがたとい法律を発布してその効果に基いたものであるといえども、また金を拂つたつもりで持つて帰つたものといえども、すべてこれは脅迫に基いて、不法に入手したものである。從つて日本政府はこういうものを探し出して、これを原所有國に返還する義務があるということを指示いたしております。但しこの元ありましたところから日本に持つて参りましたもののうち、元はこの國から持つて來たものであるということが、はつきり識別することのできるものであることが必要であるということになつておりまするので、たとえば持つて参りました原料がすでに加工されて製品なつておる場合には、その問題は起らないのであります。たとえて申しまするならば、錫の地金にいたしましても、明白に占領地生産の刻印が押してあるというような場合には、これは返還すべき対象になるのでありまするけれども、これがハンダになつておるというと、すでに返還はしないでもいいようなふうに考えられるのであります。この掠奪物件の返還という問題は、一体掠奪物件というものにどんな種類のものがあるかと申し上げますと、この範囲はきわめて廣いのでありまして、われわれの方といたしましては、なるべくこれを狹義に解したいという氣持も持つておつたのでありまするけれども、だんだんに範囲が拡がつて來ておるという実情でございます。そこでたとえば戰爭中に、各占領地から非常に大きな工場をそつくりひつくるめて持つて來ておるというようなものも数件あるのでありまして、これが内地へ持つて來られて、りつぱに工場として運営されておつた。それを元の所有國に、元あつた國にすつかり解体、梱包して返還したという事例も数件ありますし、自動車とか、あらゆる原材料品、これは戰爭中に南方あたりから持つて参りました錫、鉛等の地金が非常に種類、分量が多いのでありまするけれども、そういう種類の原材料ないしは支那事変中に占領地域を通じて入手いたしました支那の産物、たとえばある種類の羊毛でありまするとか、あるいは絹でありまするとか、あるいはこれはまた特殊なものになりまするけれども、支那の昔の銅貨のようなもの、こういうものも相当たくさんございまして、この種類のものは司令部の命令に基きまして、政府で昭和二十一年の内務省令第二十五号というものを出しまして、全部申告に基いて、これを見つけ次第没收して、移動を禁止して、このものの掠奪品なりやいなやという性格の決定次第、これを返還するために一定の倉庫に集積しておるという実情でございます。ところが、こういう種類のものを返還いたしまする問題に関連いたしまして、これは憶測かも存じませんけれども、日本からの賠償がある程度軽減されつつあるかのごとき印象を與えられておりまする関係上、掠奪物件であるということによつて日本から返還しなければならないという方の仕事は、原所有國の要求が非常に廣範囲にわたつてまいりまするために、非常に多くなりつつある、非常に多忙をきわめておるという実情もございましてあらゆる方面の財産について、しかも多少なりとも変形したものにまでも、掠奪物件なりとしての要求が來ないとも限らないというような実情にあることもございます。そこでそういう問題が起りまするたびに、個々の問題について司令部の方と折衝をいたしまして、実情を認識してもらうと同時に、これは敗戰によつて当然日本が返還するという義務を負わされて、それの履行としてしなければならない問題ではありまするけれども、それに伴つてこうむる損害がなるべく少くて済むようなふうに折衝をしておる次第であります。個々の問題について、その面におきましては、司令部としては割合日本側の要求に対して、好意的にものを考えてくれておる実例が多々あるように思れます。  先ほどお話のありました拿捕船の問題でございまするが、これはやはり終戰の翌年に指令が参りまして、戰爭中に日本の拿捕した船に対しては、根本原則としてこれを認めるか認めないかということは書いてはございませんけれども、日本が拿捕した当時の状況に実質的にひとしい状況にこれをもどした上で、返還せよという命令が來ておるのでありまして、個々の船が拿捕船と判明いたしまする場合には、その船に対してまず運航禁止命令があり、さらにその修繕の命令があつて、その修繕の程度を連合國側から來ておりまするサーヴエイアーが十分に調べまして、満足な状況にまでもどした上で試運轉をし、これでもつて拿捕当時のその船の状況に近いものになつたという判定があつた上において、初めて返還の手続をとるという状況でありまして、その間に、実際問題といたしましては、あるいは非常な老朽な船を持つて來ておる。戰爭中老朽な船を拿捕し、それに戰爭中多くの修繕を加えて使つておつたものを、さらにこのたび返還するという段取りになつて、はたしてその船の実際の船齡に適当な状況まで修繕すればそれで満足であるのか、あるいはその船を非常に若返らせるような程度にまで修繕しなければならないのかという、実際問題といたしましては相当判定の困難な問題も伴うことがございます。しかしこれは初期においては、いわゆる過剩返還というような形で、一定の船が実際に必要な以上に修繕を加えさせられて返還した実例もあつたようでございまするが、近ごろに至りましては、日本の経済状況司令部の方で考えてくれておるようでありまするし、適当の判定の標準をどこに置くかということによつて、過去におけるがごとき事例は、將來はあるいは起らなくても済むのではないかと希望しております。のみならず、実際に現実に修繕を加えまする場合には、一定の程度までは、これは日本政府に対する司令部の命令として、日本政府の経費においてこれを行う。そこまでは日本政府としてやらされる。但し、それ以上にある程度までこれをもつて行くという場合には、その船の返還を要求する外國の側から、日本政府に対して、いわゆる貿易のルートによつて、その國から日本に対する修繕命令という形で、これを外貨によつて日本に支拂う。ある程度までは、日本政府に対する最小限度の要求として修繕を引受けさせる。この程度を越えた分に対しては、返還を受ける國から日本政府に対して、外貨をもつて修繕を依頼した形でもつて支拂うという道が最近開けまして、これは船のみならず、返還をいたします雜多な機械類、これは賠償に似たような問題の機械がたくさんあるのでありますが、その機械の修繕につきましても、掠奪品として返還をしなければならないその機械の一定の限度の修繕につきましては、返還を要求する國の方から、日本政府に対する修繕の注文があつたという形で、その勘定を明らかにして、その分は外貨によつて日本——これは政府ではございません、修繕を引受ける業者の方に支拂うという道が、ごく最近開けておりますので、これは船の場合には、特に大きな仕事になるのではないかと思つております。きわめて簡單に申し上げましたが、具体的な問題がございましたならば、後ほどあらためて申し上げたいと思います。  先ほどの在外財産の問題は、私どもの方でも扱つておりまするけれども、先ほどお尋ねがありましたようなことは、まだ聞いてはおりません。從つて外務省の管理局の方でも、あるいはこのことは聞いておらないのではないかと思いまするが、從つてそれについて申し上げることは、何ら今のところできません。
  48. 栗山長次郎

    ○栗山委員 掠奪物件の返還は、法的根拠は別といたしまして、戰後の日本経済からそれだけのものが控除されるのですが、およその金額——日本側ではなかなかわかりにくいかもしれませんけれども、今言われたように、内務省令二十五号によつて申告をさしたというようなことがあれば、どのくらいの金額、数字になるものか、わかると思いますが……。
  49. 磯野勇三

    ○磯野説明員 大体の計算はできております。これを敗戰当時の金額にいたしまして——今日その数字を持つて参りませんでしたが、明細な資料ができておりますので、さつそく資料を増し刷りいたしまして、委員長を通じて差上げたいと思いますが、内務省令に基いて集積したことが何回もございますが、その各段階について総計いくらというものができ上つております。しかし、実は内務省令によつて申告されて集積されたもの、それだけでは十分ではないのでありまして、その当時において掠奪物件として数えられておつたものだけが、内務省令に基いての申告の結果わかつたのでありまして、これは全國数箇所の倉庫に入つておりますのがおもな部分でありますけれども、そのほかに大きなものといたしましては、たとえば先ほどちよつと申し上げました、戰爭中に輸入いたしました南方の錫、あるいは鉛の地金、これが昨年の六月まで没收を免除された形になつておりまして、昨年の六月に至つて没收命令が出たのであります。
  50. 栗山長次郎

    ○栗山委員 その数字を別の機会に持つて來てください。
  51. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 今回、私賠償廳長官を勤めることに相なりました。ただいま科学技術協議会の議長を勤めておりまして、まだ会議中でありまして、しばらく休憩してこちらにお伺いしたような次第であります。何分よろしくお願いいたします。
  52. 岡崎勝男

    岡崎委員長 今國務大臣が見えましたが、賠償廳長官として、諸君のうちで御質問があれば、時間もあまりないようですから、簡單にお願いします。  ただいま委員から質問があつて賠償の問題の詳細な説明を受けたのですが、日本の経済復興の全体の計画に対して、賠償撤去の含む比重がどのくらい大きいものであるかということが、どうもはつきりしない。その点はどうであろうかという質問がありましたが、賠償廳長官はどうお考えになりますか。
  53. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 実は約五日間にわたつて、私責任上関西各地の賠償指定物件の維持、管理がどのように行つておるかというようなことに関しまして、つぶさに視察して参つたような次第であります。この経過の報告等は、私がまた一つには政治家である関係上、いろいろ各委員諸君に打割つてお話もいたしたいと思いますが、この問題はきわめて國際的にもデリケートでありまするから、後ほど会議が休憩にでもなりましてから、委員諸君と秘密裡に隔意なき御懇談をいたした方が適当ではないか、こう思う次第であります。
  54. 栗山長次郎

    ○栗山委員 賠償物件として指定されておるもの、先方は主としてその中に貯藏されておる機械類とか、資材とか、そういう物件が目標であるように了解しておりますが、その物件を貯藏しておる構内が厖大な廣さになつておる。建物が非常に大きい。日本側としては、構内の土地を耕作あるいはその他の目的に使いたい。建物は建築の不如意な折柄、これを学校の建物とか、その他の公共の建物等に拂い下げたい。私どもの狭い実際上の経驗では、交渉のいかんによつては、構内の土地も日本側に渡す、建物も渡す、そういうことなんでありますが、そういう点を、もう少し組織立つて先方に話をして、すみやかなる日本側の利用を期するようにというような点について、何か努力しておられることがあるか、また考えておられることがありますか、それをお伺いしたい。
  55. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 お説ごもつともでありますが、しかしながら賠償物件に指定されたものは、あくまでも賠償物件でありまして、日本側といたしましては、これを日本側の意見によつて左右するというわけには参らぬ次第でありまするから、われわれどもといたしましては、これを忠実に維持、管理するという以外には、何ら申し上げることはできないのであります。でありますが、ここで、たとえばこういうことは申し上げられるかしらと思います。川崎造船所、三菱造船所とかいうような方面も、私つぶさに視察して参りました。その造船所の中の、たとえば浮きドツクをどちらに持つて行くとか、あるいは旋盤をどうするとかいうような御意見がかりにありとするも、かくのごとき厖大な施設は、明治初年以來営々として築き上げられたものであつて、この一部を持つてつても、それにはおのずから原料を製造する工場をまたこしらえなければならない。これをだれが運轉するかということになれば、人間も持つて行かなければならない。人間の補充をしようとすれば、学校もこしらえなければならぬ。こういうふうな面を考えて参りますと、おのずからその中に、どれとどれとが最も持つて行くのに都合のいい物件であるかというような問題も生じて來るかと思うのでありますが、かくのごとき点に関しましても、目下のところ、われわれどもがこれをさしずする何らの、権能もないのでありまするから、賠償廳といたしましては、命令された賠償物件を忠実に維持、管理いたして行くという以外には、ただいま長官としてこれを申し述べることを一應はばかりたいと、こう思う次第であります。
  56. 栗山長次郎

    ○栗山委員 賠償廳としては、なるほど受身の立場でありますから、そうした態度になると思いますが、日本の政府としては、先方が賠償の主目的として日本側に保管を命じておるもの以外の、私が明示したその構内の遊休土地、遊休建物には、ほとんどインタレストを持つておらない。私もしばしば交渉していくつか開放してもらいましたが、日本側か交渉さえすれば、これは日本人の福利のために使えるものがたくさんあるのです。こういうものは、政府として賠償廳として、組織的にもう少し骨を折るべきものだと私は考えるのであります。われわれ民間人は、個人々々で努力して、実を結んでおります。むしろ日本の政府は——賠償廳以外のものでありますが、そういう場合には、その助力を惜しむし、また先に立つてやることは控えておる。こういう態度は、政府としてはとるべき態度ではないと私は思うので、國務大臣であられる山口氏に、そういう方面に対して注意を喚起していただくことを望みたいと思います。
  57. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 栗山委員の御説ごもつともであります。賠償廳また政府の一部でありまするから、國務大臣として、かつ賠償廳長官としても、お説の点は十分これを今後努力しなければならぬと考えておるのでありまして、賠償物件指定以外の遊休設備を生かして使うために、先方と交渉いたして行くということに対する努力につきましては、お説のごとく將來努力したいと存ずる次第であります。
  58. 北澤直吉

    北澤委員 先ほど島津賠償廳次長のお話がありまして、賠償問題は大体ことし中に解決するような印象を受けているのです。そういうお話であつたのでありますが、今日本の内外の情勢から見まして、日本の経済の自立をはかるということは、日本にとつて至上命令であります。從つてその見地から申しましても、賠償問題というものは、一日もすみやかに解決してもらわなければならない。そういうわけでありますので、この賠償問題の解決を促進するために、日本政府としてはどういうお考えを持つておられますか、山口國務大臣から、もし抱負がございましたならばお伺いしたいと思います。
  59. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 ただいまの御質問の趣旨がわからないのでありまするが、賠償問題を促進するということは、賠償物件をすみやかに処理する、いわゆる処理されたものをそれぞれの関係各國へ送り出すということに努力せよということでありまするかどうか。その点が明確でないように思います。
  60. 北澤直吉

    北澤委員 それは要するに日本に対する賠償の全般の問題で、先ほどもお話があつたのでありますが、ポーレー案とか、極東委員会中間案が出ておりますが、その日本に対する賠償問題の解決がきまらないから、日本の経済の再建もきまらない。要するに日本に対する賠償問題の全般の問題、これをなるべく早く解決しなければ、日本経済再建の根本がきまらないのではないかと思うのであります。私の申し上げますのは、賠償撤去を促進しろというのではありませんで、賠償問題全般をなるべく早く解決してもらいたい、そういう意味で申し上げておるのであります。
  61. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 その意味は、やはり講和会議を促進せよという線に通ずるお考えだと思うのでありまして、賠償問題だけであれば、賠償問題を促進せよということは、賠償物件に指定されたものをすみやかに積み出せというようなことにも受取れるのでありまして、これはあくまで講和会議の促進という問題と一連のつながりを持つておるように思うのでございます。賠償廳としては、命ぜられたところの賠償物件を忠実に保管して行くという以外には、今日のところお答えはできない、こう思う次第であります。
  62. 北澤直吉

    北澤委員 もちろん賠償問題は講和條約の内容をなすのでありますが、しかしながら講和條約ができなくても、実際問題として、日本賠償問題に対しては決定ができるのではないか。現にアメリカ政府なんかでも、講和條約より前に、日本に対する賠償問題をきめようという態度をとつておりますが、ほかの連合國の間にいろいろな意見がありまして、まとまらぬ状態でありますが、日本経済再建という見地から申しまして、すみやかに講和條約ができれば、それに越したことはありませんが、講和條約ができないならば、賠償問題だけでも、実際上の解決をはかつていただきたいというのが、日本人の希望であると思われるのであります。講和條約と離れて、なるべく早く賠償問題の実際的な解決をはかるという点につきまして、政府はどういうお考えを持つておられますか、伺いたいと思うのであります。
  63. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 ただいまの御言葉は、賠償物件として指定されたものの、たとえば解除ならば、お話合いによつて、なるだけ解除してもらうものは解除してもらうように、あるいはただいま栗山君が申された指定以外の遊休設備を、経済再建のために使い得るように努力せよ、こういうことに承つてよろしいでしようか。
  64. 北澤直吉

    北澤委員 それと違うのでありまして、先ほど來のお話では、一應極東委員会においては、日本に対する賠償のわくがきまつておるが、その後ストライク・ミツシヨンとか、あるいはジヨンストン・ミツシヨンが來まして、日本に対する賠償がだんだんと緩和されておるようなことにはなつております。これは正式にはきまつておらないということでありますが、そういうふうに、なるべく緩和された形において、日本に対する賠償問題が早く確定することが、日本の経済自立をもたらす上に最も大事じやないかと思いまして、これに対する政府のお考えを伺いたいと思うのであります。
  65. 山口喜久一郎

    ○山口國務大臣 この問題は、たとえばGHQのセクシヨンによつて決定することはできない問題でありまして、あくまでも極東委員会がこれを決定する権能を持つておる次第でありますから、これ以上この委員会で議論して行きますと、ますます深刻になりますから、先ほど冒頭に私が申し上げた通り、この委員会を通ぜずして、休憩後私から実地の視察状況なり、あるいは考え方なりを一應申し上げてみたい、こう思う次第であります。何分御了承を願います。
  66. 岡崎勝男

    岡崎委員長 いかがでしようか、大体御質問も済んだように思いますし、時間も迫つておりますから、今山口賠償廳長官の言われたように、一應これで本日の委員会は閉会することにいたしまして、閉会後、ただちに山口國務大臣から腹藏のない御意見を、委員だけで伺うことにしたらいかがでしようか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  67. 岡崎勝男

    岡崎委員長 それでは本日の委員会はこれで散会いたします。     午後零時二分散会