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玉置委員 私はこの場合、
大蔵大臣に対しまして、
日本政府が
終戦直後、すなわち
昭和二十年十月十五日
附大戦省令第八十八号も
つて、
北海道拓殖銀行樺太支店の
預金拂出しを停止されておることにつきまして、これが
解除の可否について、きわめて簡單に御質問申し上げたいと存じます。
樺太、千島から函館に
引揚げました
引揚げの総数二十八万七千五百五十九人のうち—これはこれまでの数でありますが、そのうち
縁故者数が五万七千五十
余人、これらは
縁故者をたど
つて目的地へ入
つたのでありますが、このほかにその頼るべき何らの寄るべがなくて、安住の地を得ない不幸な無
縁故者も約五万余、合せて十万
余人の者があるわけでございますが、こうした方方にもちろん、
一般引揚者の
方々も、御
承知の
通り一物も持たないで
引揚げて参りました
関係上、今日分散してそれぞれの地に住んで
生活を営んでおりますが、窮迫せる今日の
経済情勢等から、非常に将來を不安がり、一刻も早く何らかの
生活の安定を求めたい。それにはできればこの
北海道拓殖銀行樺太支店に
預金をしてあつた金額の拂出しをしてもらいたいものだというわけで、昨年の九月二十六日に
北海道札幌市におきまして
預金者大会を開き、当時の
大蔵大臣北村徳太郎氏に対して、この
大会の
会長並びに
預金者代表が来て、この
解除並びに
支拂い方を情情いたしたのでございますが、当時
大蔵大臣は、眞に
生活困窮である者は、この
会長と
拓殖銀行の
頭取の
証明を持
つて来れば、拂出しをしてもいいであろうという言質を與えられたというので、
北海道では非常に喜んで
引揚げられたのでありますが、その後間もなく政変となりまして、爾来今日に至
つておるわけであります。そこで私はこれらの
引揚者の多数の声を代弁いたしまして、以下の
根拠に基いて御質問申し上げるわけでございます。
この
樺太における
預金封鎖の
理由といたしましては、
在外資産であることが主因にな
つておるようでありますが、はたしてそうであるかどうか。これは一問一答で御質問すればよく徹底するのでありますが、
大臣におかれましてはただちにお出かけになるようでございますから、一括してご質問申し上げたいと思います。そこでもし
樺太の
預金部在外資産として
封鎖したものであるとするならば、それははなはだ当を得ないのではないか。またその
措置を誤
つておるのではないかというよように、この
引揚者は解しておるのでございます。その
根拠といたしましては、第一に御
承知のごとく
樺太は当時
内務省の管下にありまして、かの
満州や
朝鮮のそれとはまつたく事情を異にいたしまして、内地同様の
行政下に置かれていたのであります。従いまして
拓殖銀行の
とつた処置は、
終戦と同時に
支店を閉鎖し、現金、帳簿を行員と一緒に内地に
引揚げておるのでございます。そこで
拓植銀行本店は御
承知のごとく
北海道にあるわけでございますから、
封鎖されたということになりましても金貨であればもちろん
財外資産と見てしかるべきでありますが、
日本銀行の
発行券は
在外資産の
対象とにならないのではないか、また
為替管理も同様この
対象とはならぬのではないか、こういうふうに解しておるわけでございます。かかる諸点から、法的に見ましても
在外資産として
封鎖すべき何らの
根拠がないことはきわめて明瞭でありまして、
從つてこの
在外資産としての
理由は成り立たないのではないかと考えておるのでございます。このことに対しましてはまた各
専門家の間におきまして研究いたしました結果、
拓銀は当然
支拂うべきものであるとの見解が一致しておるのでございます。しかも第一次
吉田内閣当時の
大蔵大臣でありました
石橋湛山氏も、
拓銀は
支拂うべきであるとの意向を漏らしておることを聞いておるわけであります。現にまた
拓殖銀行の内部におきましても、同様の
意見があると開かされておるのであります。特に私が関心を持ち、また
政府当局にも御注意を喚起したいことは、
引揚者が非常にこの問題を神経的に取扱いまして、かようなことを申しておるわけであります。これははなはだデリケートな問題であるので、あまり詳しく触れたくはないのでありますが、
拓殖銀行は
関係筋の命令で
封鎖したのだ、かようにさえ申しておるわけであります。これら
預金者側はまたこのうわさの正否を確かめるために調査したところが、
関係筋ではそうした事実はないというわけで、この問題は非常にやかましく取上げまして、私
ども預金者から聞くにつけましても、成行きを等閑に付しておれないわけでありまして、特に
大蔵大臣にお尋ねするわけでございますから、この
眞相もこの機会に明らかにしていただきたいと思うわけであります。
大蔵大臣におかれましては、この
引揚者の悲痛な叫び、現在置かれております
境遇等を察知くださいまして、安心の行けるようにできるだけ詳しく御
説明を願いまして、
関係預金者に
納得のできますよう御
答弁を願いたい、かように存ずるのであります。