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高野説明員 外務省の
高野でございます。
引揚げ問題につきまして
簡單に御
説明申し上げたいと存じます。長らく各位におかれましては本問題につきまして御
努カ、御盡瘁なされた
方々ばかりでございますから、いまさらくどくどしく申し上げる必要もないかとも存じますが、話の
順序といたしまして概括今までの経緯を申し上げ、今後の
見通しを御
説明いたしまして、その
あと皆様の御
質問がございましたら、私の
知つている
範囲においてお答え申し上げます。
御
承知の
通り終戰時にわが
海外同胞は
軍人、
軍属を含めまして約六百六十万おりまして、その後現在まで大体六百十万
引揚げられまして、現在まだ
海外、異國に
残つておられる
方々は約四十六万九千に上ります。御
承知の
通り中國及び
南方地域よりは、二十一年に大体完了いたしまして、その後
残つておりますのは
ソ連地区及び
中共地区と申しますか、
満州地区でございます。現在
残つておりまするこの四十六万九千、約四十七万の数は、
ソ連地区及び
中共地区でございます。その
内訳を申し上げますれば、
シベリアが約三十二万、
樺太及び
千島地区が約八万四千、次に
満州地区でございますが、これは現在のところ約六万と推定されておる次第でございます。何ゆえに
ソ連地区だけがこのように遅れたかと申し上げますれば、第一、
ソ連地区の
引揚げがほかの
地区と比較いたしまして非常に開始されるのが遅れたこと、各
地区がほとんど終了した時期、すなわち御
承知の
通り昭和二十一年の十一月十九日に初めて
米ソ間に
ソ連地区よりの
引揚げに関する
協定ができまして、月五万ずつ返すということに相なりまして、それ以後
引揚げが開始せられたので、開始が非常に遅れた。しかもそれが五万と限定されたという
一つの事実、次に冬季間におきまして
航行の
理由その他によりまして
引揚げが中止される、本年もそうでありましたし、一昨年もそうでありました。
最初の年は
大連地区からの
引揚げがございましたので中止はされませんでしたが、しかし
シベリア地区からはございません。そういう事実等によりまして、現在までまだ
ソ連地区からの
引揚げが完了いたしておらない次第でございます。
次に
中共地区と申しますか、
東北地区におきましては、約六万と推定される邦人がまだ残留しておられますが、これは
日本政府といたしまして、
司令部を通じ中
國政府にお願いいたしましても、中國の内戰
状態という
事情にかんがみまして、はなはだその
引揚げの
具体化が思わしくないということでございまして、
中共地区に
残つておられる方については、
情報もきわめて乏しく、聞くところによりますと、きわめてみな困難な生活をしておられるということで、私
どもといたしましても一日も早く
引揚げをさせてあげたいと存じている次第でございますが、現在の特殊なる
事情及び中國の
政治情勢にかんがみて、なかなかはかばかしく行かない
状態であります。以上申し上げました
地区以外におきましては、
引揚げは完了いたしておる次第でございます。
しかして今後の
見通しと申しますか、今後の
対策と申しますか、それにつきまして、若干御
説明申し上げます。御
承知の
通りソ連地区からの
引揚げは昨年十二月
ソビエト政府より
司令部に対する
通告によりまして、冬季間中絶し、
航行できる時期まで中止するという
通告がございまして、
司令部といたしましては、
砕氷船を送るから続けてくれという
申入れもされておりましたが、この
申入れも拒否された模様でございまして、御
承知の
通り本年冬は
引揚げはございません。
航行のできる時期ということでございますが、私
どもは昨年及び一昨年の経験にかんがみまして、できるだけ早い時期、ことに本年は暖かいと言われておりますし、四月にもなりましたし一日も早く再開されることを希望しておる次第で、総
司令部に対しましても、随時懇請いたして來た次第でございます。
見通しを申し上げますれば、昨年が五日、一昨年が四月に開かれたこと、及び昨年末の十二月の
ソビエト政府の
通告というような事実をにらみ合せまして、今月末ないし來月の初めにはおそくとも開始されるようにわれわれは希望しかつ期待している次第でございます。本年中に
シベリア地区及び
樺太地区は
引揚げを完了するかという問題でございますが、数から申しますれば、
シベリア地区及び
樺太地区は
合計約四十万、ここで月五万という
協定で五で割りますと八箇月、五月から始まりますれば、本年のうちには、單なる算術の計算で行きますれば、一應完了するという結論が出る次第でございます。しかし私
どもとしましては、できるだけ早く、ことに総
司令部の
ソ連政府に対する、月十六万の
引揚げをするあらゆる
準備ができているからという
申入れに対して、
ソ連政府が同調されて、本年末を待たず、一日も早く完了することを希望している次第であります。
次に
中共地区に関する
引揚げにつきましては、昨日参議院で
吉田総理も御答弁にな
つておられるように、大きな筋といたしましては、中國における和平問題が解決いたしまして、
日本政府が
司令部を通じ、中
國政府に正式に申し入れるということが、われわれ唯一のかつ正式の方法であると存じている次第でございまして、この観点より中國の
情勢につきましては、われわれ
引揚げに携わる者といたしましては、大いなる感心を
拂つておる次第でございます。
以上はなはだ
簡單でございますが、
引揚げ問題に関する過去、現在及び
將來の
見通しと申しますか、
將來に関して
考えられる若干の問題を御
説明申し上げた次第でございます。