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1949-05-21 第5回国会 衆議院 運輸委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月二十一日(土曜日)     午後三時二十三分開議  出席委員    委員長 稻田 直道君    理事 大澤嘉平治君 理事 關谷 勝利君    理事 前田  郁君 理事 佐伯 宗義君    理事 佐々木更三君 理事 田中 堯平君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       片岡伊三郎君    小西 寅松君       天野 公義君    高橋 定一君       黒澤富次郎君    志賀健次郎君       川島 金次君    米窪 滿亮君       柄澤登志子君  出席政府委員         運輸政府次官  加藤常太郎君         運輸事務官         (鉄道総局業務         局長)     藪谷 虎芳君         運輸事務官         (陸運監理局         長)      小幡  靖君         運輸事務官         (海運総局長         官)      秋山  龍君  委員外出席者         議     員 佐藤 榮作君         議     員 田中織之進君         法制局参事   鮫島 眞男君         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 堤  正威君 五月二十一日  委員門司亮君及び滿尾君亮君辞任につき、その  補欠として山口シヅエ君及び黒澤富次郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  川島金次君が議長の指名委員に選任された。 五月二十日  通訳案内業法案内閣提出第八二号)(参議院  送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  戰時海運管理令効力延長の件  通訳案内業法案内閣提出第八二号)(参議院  送付)  戰時中政府買收した鉄道讓渡に関する法律  案(廣川弘禪君外五名提出衆法第一二号)     —————————————
  2. 稻田直道

    稻田委員長 それではこれより運輸委員会を開きます。  本日の日程に入ります前に、戰時海管理令効力延長の件に関しまして、政府より発言を求められております。これを許します。秋山長官
  3. 秋山龍

    秋山政府委員 國家総動員法及び戰時緊急措置法を廃止する法律の一部を改正する政令に関しまして、御報告申上げます。本件船舶運営会根拠法規でありまする戰時海運管理令効力を、さらに六箇月延長しようとするものであります。本件從来数次延長を経まして、現在本月一ぱいをもつてその効力を失うことになつているのでありますが、諸般の情勢にかんがみ立て、今ただちにこれを失効せしめることができませんので、さらに六箇月効力延長をしようとするものであます。過日閣議の決定を経まして、近く公布の運びになる次第でございます。戰時の船舶運営会中心とする船舶運航関係体制の変革につきましては、從来早く民営に還元してもらいたいという、業界その他の痛烈な希望があつたのでございまして、政府といたしましてもこの方針に基きまして、着着これが措置を進め、去る四月一日よりその体制の一部を変更いたしまして、はだか用船より定期用船に切りかえましたことは、御承知通りであります。この措置の変更後の実績を見ますに、非常に予期通りの成績を上げて、船舶運航能率は非常に上つておるのでございます。政府はさらに体制堅剛を期しまして、國家総動員法に基く戰時海運管理令をなるべくすみやかに廃止いたしたいと存じておるのでありますが、情勢なおこれを許しませんので、かように決定した次第でございまス。一言御報告申し上げます。     —————————————
  4. 稻田直道

    稻田委員長 これより通訳案内業法案議題といたします。
  5. 稻田直道

    稻田委員長 御承知のごとく本案参議院先議の議案でございます。今までわれわれが予備審査をいたして参りました政府案に、参議院において修正が加えられて参議院送付となつて参つたものであります。從いましてこれが原案となつておりますので、念のために事情を申し上げておきます。  それでは通訳案内業法案に対して質疑があればこれを許します。
  6. 關谷勝利

    關谷委員 この法案はすでに質疑も行われたのでありますし、内容もきわめて簡単なものでありますので、この際討論を省略いたしまして採決せられんことを望みます。
  7. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの關谷君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。よつてただちに採決するに決しました。  これより通訳案内業法案について探決いたします。本案原案通り可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数であります。よつて本案原案通り可決するに決しました。     —————————————
  10. 稻田直道

    稻田委員長 それでは引続きこれより、戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律犠議題といたし質疑を続行いたします。田中堯平君
  11. 田中堯平

    田中(堯)委員 本法は昨日からいろいろ審議が進められておりますが、その重要点については提案者並びに政府当局からいろいろに答弁はあつたものの、十分了解行つた答弁一つも出ていないと考えるのであります。私の質問もこれを重複する点がありまするが、しかし不十分なる答弁であるがゆえに、もはや二十四時間経過の今日では、昨日以上に深く考えられておる点もありましようから、十分なる御答弁をいただきたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、この提案者資格の問題であります。提案者個人の名において出してあるのでありまして、これが民自党の案であるかどうかということは、最初の間は民自党の党議にかけて、これは民自党のまとまれる意思としての案であるという御説明であつたが、半ば以後民自党委員の方で、われわれが質問中に、民自党案民自党案という民自党の名前を盛んに使つたことに対して、どうもそれは了解できぬというような趣旨のことを言われておるところを見ると、必ずしも民自党のまとまれる意思としての案ではないのじやないかという疑いが一つあることと、それから民自党の、はつきり申しますならば、山口國務大臣のごときは、ごく最近和歌山市における演説会のときに、買收私鉄拂下げ反対であると、はつきりした意思を表明しておられる。またさらに、政府当局が一体この案にどういう態度をとつておられるか。われわれの知る範囲では、運輸当局は必ずしもこの拂下げについては全幅的な賛成ではないというニュースをたくさん得ておるのであります。そこでそうなつて来ると、ごく少数の人々の意思が、案に盛られて出ておるという解釈にもなるのでありまするが、(「ノーノー」)それであるとするならば、われわれのここにおける審議態度にも、大いにニュアンスがかわつて来ることになります。そこで発議の第一着は、まず一体これはいかなるところの発議であるかということ、從つて今日は責任政治時代でありますので、なるほど形式的に法律論から言うならば、各議員発議権を持つておるので、だれが発議をしようとかまわぬ、是を是とし、非を非とずるから、かまわぬじやないかという論も成立つのでありますが、しかし責任政治のもとにおいては、一体だれが発議したのか、これがよき結果になるか、あしき結果になるかによつてあるいはこれを批判し、あるいはほめるというような、いろいろな責任問題が生じて來るわけですが、國民はどこに責任を問えばいいかという問題も、起きて来るのであります。從つてわれわれが審議をする態度にも大きなるニュアンスの相違を来すわけであります。そこで発議の第一点は、ぜひともこの点を明らかにしていただいて、すなわち民自党責任において出されたのであるか、それとも個人責任において出されたのであるか、政府としてはどういう態度をとつておられるか、すなわち運輸当局はどういう態度をとつておられるかということについて、まずお答えを願いたいのであります。
  12. 前田郁

    前田(郁)委員 田中委員の御質問にお答えいたします。ただまい田中委員提案齊資格ということについてお話があつたのでありまするが、これは昨日も詳しく申し上げました通り、わが民自党幹事長並びに政調会長、それから民自党側理事が全部署名をいたしておるわけでありまして、その事実を見ても、民自党のまとまつた案であるということは明白にわかるわけであります。ただ昨日松本君がちよつと発言されたうちに、私も誤解したのでありましたが、あとで非常に詳しく述べられまして案そのもの反対しておるわけではない、ただその中の微々たる個々の点について、意見の違うものが党内にもあるわけだ、こういうことをはつきり申されたわけであります。これはまたわが党においてもいろいろな人がありまして、昨日も修正案をいろいろ練つたわけでありまして、後刻皆様に、わが党の代表として高橋氏から、そのまとまつた修正案提出されることになつておりますが、それでなるほどわれわれの意見がこういうとこちにあつたかということは、十分に御了解の行くことと思いますから、その高橋君の修正案をお聞きくだされば、その点釈然としてわかつていただくと考えておる次第であります。それから政府当局態度がどうとかいうふうなことがありましたけれども、これは今田中委員のおつしやられました通り、わが党を中心とする、いわゆる民自党中心とする内閣でありまして、民自党代表して閣僚も入つていられるわけでありますから、その閣僚によつてわが党の政策が具体化して行くわけであります。また事務当局においては、いろいろな調査資料として、これに対する民間の意向を求められたことはあるわけでありまするけれども事務当局反対であるとか、賛成であるとかいうようなことは、別段あり得ることでもないし、また事務当局意見が、政府意見だという見方も、間違つているのではないかと私は考えておる次第であります。やはり党を代表して入つている大臣とか、政務次官とかいうものが、その内閣代表者といたしまして、今日法律案として具現されたものを実行に移して行くわけでありますから、その点は決して私ども政府当局反対態度ではないやはりわが党と同調して、あぐまでもこの法案の通過に努力せられておると信じておる次第であります。
  13. 田中堯平

    田中(堯)委員 今の問題につきまして運輸当局の御答弁をお伺いしたい。
  14. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 法案國会提出される場合に、政府から出す場合もありますし、國会から出す場合もありますが、今回は國会から出されるのが適当ということになりまして、國会から出されたわけであります。第二の点でありますが、事務当局云々という言葉がありますが、いろいろの角度から、いろいろの議論は、どの案にも研究の途上においてはございますが、公的な結論としましては、運輸大臣意思從うのが至当であろうと思います。本案について所要の改正をされるならば、政府としても本案に対して異論はないのであります。
  15. 田中堯平

    田中(堯)委員 今の運輸当局の御答弁は、運輸大臣意向本案であるということならば、われわれはこれに異議を言うわけには行かぬというふうな意味に解釈してよろしいのですか。
  16. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 運輸大臣意見に從うべきだと思うのです。
  17. 田中堯平

    田中(堯)委員 こういう重大なる案件は、五、六名の個人名義で出されるよりも、これはやはり從來の慣例もありますし、また今日のように民主自由党が圧倒的多数の大政党であつて、これが政府運営しておるのでありまするから、政府案として出すのが一番妥当であると思うのであります。そこで私は、これはもう一度政府案として、かつ十分なる資料を添えて再提出をされることが望ましいと思うのでありまするがさような御意思はないでしようか、提案者並びに政府の御答弁を願いたいと思います。
  18. 前田郁

    前田(郁)委員 田中委員法律家でありまして、議会審議権その他については私どもよりも詳しいわけでありますが、これは当然議会におきまして、私ども議員としての発案権はあるわけでありまして、それによつてやつたわけであります。これは何もこの内閣だけがやつたわけでありませんで、今日までの歴代内閣社会党内閣あたりにおいても、十分國会案として出されているわけでありますから、これはやはり國会案とした方がよかろうというようなことによつて、やつた次第であります。それでこれを出し直すという意思はただいまのところございません。
  19. 田中堯平

    田中(堯)委員 昨日來の審議をずつと聞いておりますと、提案者のお言葉には、國営を漸次民営に切りかえる民自党の大方針一つの現われとして、今回この買收私鉄を拂い下げられるのであると、繰返しそういう意味のことを言つておられるのであります。そこでもう一度お確かめしたいことは國営事業を漸次民営に切りかえるという、そのような御意思民自党にはおありであるかどうかということであります。実はこの委員会におきまして過日運輸大臣も、國有鉄道を今度コーポレーシヨン経営にかえることについては、これは國営民営に移すという、民主主義的な一歩前進の一段階であるというふうな意味のことを言つておられる。それをあおせ考えると、民自党にはさような根本的なる政策があるかのごとく、私どもは拜承するのでありますが、一方また他の民自党方々に聞いてみると、必ずしもそうでないと言われる。また本委員会におきましても、一委員のお言葉には、そういう方針民自党方針ではないという意味のことを言うておられる。そこでもう一ぺんお確かめしたいことは、國鉄につきましても、できることなら國鉄全体を漸次民営に移して行くという、そういうような基本的な方策を持つておられるのかどうかということを、お確かめしたいのであります。
  20. 前田郁

    前田(郁)委員 昨日から大分議論をお聞きしたのでありますが、要するに私どもは、現行の鉄道國有法で、運送の用に供する鉄道は、すべて國の保有とする、但し一地方交通を主とする鉄道はこの限りにあらずということで、今日までローカル線というものは民営でやつてもいい、いわゆるこれは交通行政に携わつておる方はもちろんのこと、業界においても、一般ローカル線民営でやつた方がよかろう、こういうふうなわけであります。それでわが党として今原則論がきまつたがというと、そういう時期にはまだ達していないわけでありますけれども、御承知通り民自党立場と、社会党立場、あるいは共産党の立場は、はつきりしておるのであります。ただそういう点をもつて、いろいろ御議論されたわけでありますが、今回のこの問題は、独立採算制というものからやろうということで、私どもはやつたのであります。最初からいわゆる根本論で、國営民営に移すという強い意識で出したわけではないのであります。いろいろお尋ねがありましたから、昨日はいろいろ民自党立場民事党空氣というものをお話申し上げたような次第でございます。
  21. 田中堯平

    田中(堯)委員 ローカル線は私経営の方がよろしい、幹線國営の方がよろしいという御意見のようであります。またこれが現在の段階における民自党政策のように承つたのでありますが、一体どういうわけで、そういう結論が出るのでありましようか。幹線ならば國営がよろしい、ローカル線なら民営の方が適当であるこれを少しく詳しく御見解を伺いたい。
  22. 前田郁

    前田(郁)委員 私がただいま申し上げましたのは、わが國の鉄道國有法というものにおいて幹線は主として國有でやる、但し一地方交通目的とする鉄道はその限りでないということで、民営を今日まで許し、またある時代は非常に奨励された時代があつたように思うのであります。そういうことで私どもは、この法案提案理由の中にも申し上げてあります通り、いわゆる戰争目的が今日においては消滅したわけでありますから、再び地方鉄道会社に拂い下げて、その企業の創意と努力にまつて、その地方の利便に最も適合するような運営をさせて行くことが、きわめて妥当であるというようなことで、この法案提出した次第であります。
  23. 田中堯平

    田中(堯)委員 今の御答弁ですと、戰事中に買收した云々とありますが、この法案で見まするに、十八年及び十九年度に買收した私鉄限つて拂下げをするということになつておるようです。これは私ども見解で言うと、なるほど戰争目的遂行のために買い上げたという角度もありましようが、昨日の運輸当局の御答弁ですと、これは國家総動員法によつて買い上げたものではない。やはり地方鉄道法によつて買い上げたものであるというのでありますし、法的見地からしても、必ずしもこれは戰争目的途行という目的限つた買收ではなかつたように見受けられるのであカます。また事実問題を見ましても、これは戰争目的遂行と言うけれども平時経済の運行、運営ということと、これからこれまでは、というようなはつきりした区別はなくて、戰時中に重要なものは、やはり相当程度において、平和時における経済運営にも非常に重要な、わけでありまして、ここに事実において、各実際について見ましても、経済上非常に重要であるものを幹線こ接続せしめ、これを統一的に國鉄経営するということであるならば、非常に万事がうまく行くと思うのでありまするが、ただ昭和十八年、十九年に買い上げたものだけに限つて、これを今度は拂下げをする、それ以前にも私鉄買收されたものはたくさんあるのでありますけれども、そういうものをほつたらかしておくという、はつきりと区別をつけられた理由、これはどうしてもわれわれはのみ込めないのです。その辺をひとつ理解が行くように、明確に御答弁を願いたいのであります。
  24. 前田郁

    前田(郁)委員 先ほどから答弁申し上げておるように、まだ國鉄全体を拂い下げてやるとかどうとかいうような、その基本論に至りましては、党としてもまだ決していないわけであります。いわゆる民営をなるべく——これはもう鉄道ばかりではありません。すべてに民営をなるべくやる。官業をなるべく民営に移したらよかろうということは、これは民自党が今までいろいろな点において申し上げたことですが、この鉄道のことに対して、特にそういうことを今日まで、まだ申し上げるような事態に至つていないわけであります。それで今回とにかく私どもは、昨日からお話申し上げる通り、第一回國会以來われわれが審議にあたりまして、どうしても赤字というものの解消ができない。そうして値上げに次ぐに値上げということをやりまして、一般大衆に非常な迷惑を與えておる。それでわれわれ議員としては、独立採算制というのを一日も早くとりたい。それにはわれわれが今日まで研究したり、また視察いたしましたりしたものにつきまして、一つでも取上げて、この政策を具現して独立採算制の一助にしたい。こういうことでやつたような次第であります。
  25. 田中堯平

    田中(堯)委員 十八、九年に買收したものに限つて、すなわちこの十線一つ一つについて、これは戰時目的遂行のために買い上げたが、今やそれが終つておるので、国有鉄道がやるという必要はない。むしろ私経営にした方がよろしいということを、具体的に御説明を願いたいのであります。
  26. 前田郁

    前田(郁)委員 これはちよつと説明に困難な問題ですが、要するにこれは第一回の國会のときから、いろいろ陳情、請願もあつたわけでありますが、その当時はほとんど問題にしなかつたのです。第三國会以来この問題が強く各党の上に持ち上りました。これはその当時わが党が率先してやつたわけでもないのでありまして、あるいは当時の與党でありまするところの民主党、あるいは社会党方々も、第四國会には提案者になつて、これが出された。その提案一つの基礎となつて出たわけでありまして、これはいろいろこういうような社会情勢、今日の日本の國有鉄道というものは赤字が出て大衆に迷惑をかけておるから、一日も早くこの迷惑をなくして、苦みたいな黒字にしてもらいたいということで、やつたわけでありますけれども、この十線を選んだなどということは、たまたまもつて戰時中に電報一本で買い上げて、そうして登録公債をやつた。その登鉄公債は費ることもできない、会社も解散してはいかぬというような、当時の戰時立法でやつたようなひどいやり方でやつて、これらにも各議員から、当時同情があつただろうと思うのであります。これは民自党だけじやない。各派ともこの問題に対して非常に賛成をして現に社会党諸君も、民主党諸君も、民自党諸君も、この十線、二十線というものを視察をいたしまして、調査をしたような次第でありまして、突如民自党がこの十線を特別に取上げたというわけではないのであります。そういう歴史的の経過をたどつて今日ここに来たのであります。
  27. 田中堯平

    田中(堯)委員 それで私が今お尋ねしておるのは、この十線を取上げておるこの立法目的、第一條にちやんとうたつてあるように、またこの立法趣旨説明書にもありますように、戰時目的終つたからということをうたつてありますが、一体戰時目的遂行のため、戰時経済遂行のためと、いろいろ言葉はむずかしいのですが、どうもこれは拂い下げた方がよろしい、戰時目的はもう終つたのであるからという、のみ込める程度の各線についての御説明を求めておるのであります。今の御答弁では、過去の歴史を一わたり御説明せられるだけであつて、現実にこれを拂い下げなくちやいかぬということは一つ理解ができないのであります。しかしこれ以上これを追究することは、いまだ御準備がないようでありますから、この点については質問を留保しておきます。  さて先へ進んで、立案者のこれまでの御説明を聞いておりますと、党の方針を実現するためということを盛んに強調されております。そこで民自党の御方針、すなわち官業を漸次民業へという方針が、正しいか正しくないかということを私は今ここで論ずるのではありません。しかし党の方針を実現するのであるから、こういう法案を出したのであるということは、何も法案説明とはならないのであります。なぜならば、党の方針が絶対に正しいという大前提があるならば、もちろん党の方針を実現するのであるからこの法案は正しいということの根拠にはなります。これは民自党の皆さんにとつては、正しいことかもしらぬが、われわれはそうではない。これは間違つた方針であると考えております。國民の中にもそう考えておる考が多い、してみると、党の方針がこうであるから、それを立法化したのであつて、それで正しいのであるという、本法案合法化ということには、何の意味も持つものではない。であります。それで結局党の方針ということよりも、実質的に具体的に分析をしてみて、十線を拂い下げるこのことによつて、この法案の第一條に盛られておる三つ目的、すなわち、公共利益に合致するかどうかということ、地方鉄道の強化になるかどうかということ、財政の改善になるかどうかということ、この三つ目的が、はたしてこの法案の二條以下に盛られておるこの措置を講ずることによつて、実現できるかできぬかということを、具体的に検討してみるならば、本法案賛成することはできないわけであります。  それでまず第一に公共利益ということから御質問をしたいのであります。公共利益と申しますと、まず運賃が非常に低下するとかあるいは運轉の頻度が向上するとか、設備が向上するとか、安全率が向上するどか、從業員の待遇が改善されるとかいうようなことが、具体的に考えられるのでありますが、昨日提案者の一人である佐藤委員からの御答弁では、そういうふうな部分的な問題ではなしに、國民國家大所高所から考えての話であるということでありました。しかしそういう御説明では、依然としてさつき私が申しましたように、それはただ國民、国家の大所高所から見て、これがいいのであるどいう、党の方針をただ正しいものとして、提案されたにすぎない。やはり分析的に考えてみなければ—— 一切の問題は分析して、具体的に実質的にそのことを考えなければならない。そのことをしないで、ただ結論だけで高調、強調するのであるというならば、宗教の世界ならいざ知らず、法律世界、実際政治世界においては、通用しないことであります。どうしてもこれは分析的に考えなければならぬので、まず公共利益ということについてお尋ねしたいのでありますが、一体運賃が安くなつたり、あるいは運轉の頻度が向上したり、あるいは設備が改善されたり、あるいは從業員の待遇が改善されたり、安全率が向上したりどいうようなことに役立つかどうかということまずそれをお尋ねしたい。  その次は佐藤前長官も見えておるようですが、大所高所から見ての大きな利益を考えておる、これが公共利益であるというような御趣旨答弁を、もう少し分析的に具体的に御説明を願いたいのであります。
  28. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 公共利益という点については、昨日からお答えを申し上げておりますし、田中委員も昨日の私の説明についてはお聞きのことだと思いますが、重ねてその点を申し上げますけれども、劣略さしていただきたいような氣がするのでありますが、特にこの機会に私どもの氣持を申し上げれば、今取上げられた運賃が安くなるとか、安全度が高まるとか、あるいはまた利用回数がふえるとか、これらのことは、もちろんその公共利益の具体的な一つの方法だと思うのであります。しかし運賃が宏くなるということだけが公共利益代表するものではないのだ。すべてのものを勘案いたしまして、ある点は長所として非常に発揮される点もあるでありましよう。またある点は、両方を比べてみますると、私営の場合に國営よりも落ちる場合もあるだろうと思いますが、それらのものを総合的に勘案いたしまして、大局的見地に立つて公共利益になるやいなやを判断する。こういうような考えなのであります。
  29. 田中堯平

    田中(堯)委員 それは昨日承つた通り答弁でありまして、私の今求めているのは、ただそういうことは抽象的だ。すべてを勘案してみて、大局から見ると結局公共利益になるということだけでは、私は少しも納得できない。やはりこれは運賃は下げるぞ、あるいは從業員の待遇はよくなつても悪くはならぬぞ、あるいは利用者にとつてはこれこれの便益がある。そういうような公共利益を具体的に御説明にならないで、ただすべてのことを勘案して、たいへん公共利益になるというようなことは、まるで問いをもつて問いに答えるようなものでありまして、これでは少しも納得できないのであります。もう少し掘り下げて御説明願いたいと思います。
  30. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 昨日もこの種のことについて申し上げたのでありますが、提案者に重ねて伺いたいのであります。これは要するに、戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案なのであります。この法律案であるということと、田中委員が御質問になるところの、いわゆる具体的にどういうふうに公共利益になるか、またならぬかということとは、おのずから私は別問題であると思つておるの藤あります。ということは、この法律案が決定いたしますれば、第一條に定められておりますところの地方鉄道を強化して、地方交通の利便を増進することになるかどうか。さらに第二十一條には——いわゆる公共の利便になるかならないかということについては、第二十一條をどういうふうに生かして行くか。こういうことについて十分考えて行かなければならない問題でありまして、從つてこ。法律案がかりに通過いたしましたならばその後は、田中委員が御質問のような事柄は譲渡審査会、もしくはこれに関しましての修正意見もあるようでありますが、あるいは運輸審議会等において、はたして拂下げの路線に当てはまるか、当てはまらないかということを十分に審面した結果、地方公共の利便にならない、その他の條件にも当てはまらない、この法律に規定するいろいろの條件に当てはまらないということであれば、拂い下げてはいけない。こういうことになつて来るのであります。そこらの問題が、提案考の説明ではどうもはつきりしていないように思われますので、この点についてあらためて提案岩より、私が申し上げるような趣意であるかどうかということについて、御明答を願いたいと思いまサ。
  31. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 公共利益云々につきましては、抽象的な御議論であるやに実は伺いまして、私案は先ほどお答え申し上げたのでありますが、ただいまお話のありましたごとく、本法案公共利益云々を御審議願う場合におきましては、ただいまお話もありました通りのような場趣旨で、今後審議会その他の運営をしていただければ、けつこうなことだと思います。
  32. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私は了承いたしました。
  33. 田中堯平

    田中(堯)委員 私の解釈では、この法案の第一條には三つの本法の目的が盛られていると思うのです。公共利益ということは目的でないような御議論もあるようですが、これは法律解釈の問題としておいておきましよう。ところでその次の第二の目的である地方鉄道の強化という点でありますが、これは一体どういう意味を持つているのか、さつぱりわからない。もし地方財閥をこやすためだとか、あるいは一部の鉄道資本家のためだとかいうのなら場は、まことにはつきりしておりますが、もちろんそういうことであろうわけはない。してみると、地方の輸送力が改善され、ローカル線の揮営が改善されるという意味かと思いますが、まずその意味を御説明願います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 これは言葉といたしまして、こういう表現をいたしておりますが、地方鉄道の強化ということについて、そのまま字句にとらわれますと、いろいろの後議論があろうと思うのでありますが、ここで申しております地方鉄道というのは、抽象的な一般観念としての地方交通機関が、かような線区が拂い下げられることによりまして、総体として整備される。かような意味合いを持つておるのであります。具体的にこの線が拂い下げられて民営に移されれ、ばたとえば南部鉄道線が強化されるとかいうような意味合いののでないことを、御了承願います。
  35. 田中堯平

    田中(堯)委員 どうも相かわらず私どもの非常にわからない、納得の行かない答弁だと思います。私どもの考えでは、地方の産業を開発し、日本の再建に役立つように、地方鉄道。輸送力を軒強化するというような意味でありますれば、これは拂下げをするよりも、むしろ今まで通り國営のままで、交通行政一貫のもとに合理的な、計画的な運営をやつた方が、はるかに地方鉄道の機能を強化することになると思うのであります。その辺は屋形の相違だと言われればそれまでですが、なるほど今日國有鉄道経営を見れば、ずさんにしてロスが出て、まことに経済的でないことほ私どもも重々承知しております。だからこれを改善して行くという努力をやりさえすれば、何も今地方鉄道を民間業意に拂下げをして、そして経営をしなければ、地方の輸送力を強化し、産業開発に非常に有利に展開、発展ができぬということには、さつぱりならぬと思うのでありますが、その辺の御見解をひとつ説明願います。
  36. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 どうも先ほど來の御質問といい、ただいまの御議論といい、何だか法案の御審議の御意見としてはあまりにも具体的になつた感がするのでありますが、もしも田中委員におかれまして、真偽会の運営の際の、個々にお考えになるお考え方で御質疑をなされますと、私たちの考え方と相当食い違つて参るように考えるのであります。私どもはどこまでも法案の御審議をお願いいたしまして、これが成立をいたしますれば、その後におきまして、具体的問題として当該路線の拂下げ地方交通に寄與するかどうか、それらのことをきめて参ればよいのではないかと、実は思つておるのであります。何だか一應拂下げをすることが確定されておるかのような前提で、御意見を承りますと、私ども答弁する限りではないような氣がするのであります。
  37. 稻田直道

    稻田委員長 田中君に御注意いたしますが、質問はなるべく、今の提案者の言われるように、法案の内容によく触れるようにしてください。
  38. 田中堯平

    田中(堯)委員 今までそのつもりですが……。
  39. 稻田直道

    稻田委員長 あまり冗長になると時間を制限します。
  40. 田中堯平

    田中(堯)委員 今提案者から御説明がありましたが、これはまだ拂下げのきまつたものではない。それでこの本線なるものを審議会にかけて、拂下げをするかしないか決定するのであるから、そうこまかいことは聞かぬでもよいのではないかという御答弁でありましたが、私は反対見解であります。なぜならば、これはいやしくも、やせても枯れても重要なる国有財産であります。どの一線をとつてみても、軍要なる国有財産であります。これは一万円、二万円というようなものではありません。何十億、何百億という重要なる財産で彫ります。これはほんとうを覆うと、一線々々みな拂下げの立法手続をとられて、そうして拂い下げるべきやいなやということを國会に諮られることが至当であると思うのでありますが、ここに来ると、非常に廣汎な委任立法の形をとつて、十線だけをみな拂い下げるかもしれぬ、どれかを拂い下げるかもしれぬ。それをひとつ承認してくれ。あとは審査会にかけるのだ。國会から遠ざけるのだという趣旨になつておりますが、そのこと自体が私どもは非常に不満であります。しかしそういう法案が出ておるので、その線に沿つて質問を展開しております。だからその十線のうちで、どれが拂い下げになるかということは今未定でありましようけれども、拂い下げられたならば、どういう結果になるかということは、國民代表として、國民の利害を一身に背負つてつているわれわれとして、実に関心おくつたわざるものであります。だからこういうふうに声を大にして心配しておるのを、お前ら、審査会があるのだからあとでやれという御答弁に対しては、実に私どもは不満であります。その点をもう一度御答弁願います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 この法案をごらんになればよくおわかりになることと思いますが、第四條に、ただいまお話のような点が、実は規定されてあるのであります。この線区を譲渡すべきかどうか、その他について決定をする方法が、実は入つておることをひとつごらん願いたいと思うのであります。もちろんただいま申し上げます第一條で規定しておりますものは、十八年及び十九年に買收した線区というものを一悪対象として取上げ、そうしてそれらの線区を現実に拂下げするというような場合には、それぞれの手続なり、また審査の方法が明記されておるわけでございますので、ただいまのような御心配はないのではないかかように考えております。
  42. 松本一郎

    ○松本(一)委員 先ほどから質問應答を伺つておりますが、この法案一條の「公共利益に合致する限り、」という字句であります。これは非常に私は意義が重大だと思つて昨日もお尋ねしたのですが、啓弁は実はなかつた。私はこういうふうに解釈をしておるのでありますが、そうであれば、提案者からそうだと簡単におつしやつていただければ、けつこうです。すなわち公共利益ということは、廣く國家國民全体の利益をさすのである。一地方の人たちの利益にあらず、あるいは株主、職員組合の從業員の利益にあらず、すなわち國全体、政党政派を超越して、八千万國民利益であるということを考えられて、書かれたものと思います。すなわちわが國の国鉄は、昭和二十年から御承知のように年々赤字になつて衆ておる。二十年八億、これが初まりで、昨年は三百二億と、運輸省の收入予算の三〇%、三割というものは赤字になつて来ておる。この状態をいかにするか。そこで今度コーポレーシヨンとなり、経営の合理化、能率の町上、お氣の毒ですが人員整理をやる。それとても、この二十四年度の予算を私ども考えてみた場合には、一千百五十億の收支の予算でありますが、少くとも来年三月には百億以上の赤字が出る。これは私、断言してはばからぬ。そこで来年百億からのまた赤字が出た場合、ドツジ・ラインからいつて一般会計からの繰入れができないのだ。そうすれば何によつてこれを償うかといえば、この際大所高所からながめて、戰時中買收した路線を拂い下げて、これで幾分かその赤字を補填して、その予算をここにつけるというようなねらいであり、いま一つ國営事業國有國営で能率が上つて、かえつてサービスがよくなつていいか、あるいは民営に移した方がいいか、ここらはひとつ試金石——試驗ともいうべきもので、これまで民営でやられておつたものだから、この際せめて旧所有会社にやらせてみたらどうかということが考えられるのと、昨秋、ある筋からの御意向として、全國五十八路線中、五十キロ未満の短距離のもので、五十%以上の赤字が出ているものを廃線とせよという意向が傳えられましたときに、私どもは驚いたのであります。もしも五〇%の赤字の路線が廃止となれば、少くとも二十七、八の路線は廃線のうき目を見ざるを得ない、撤去されざるを得ないのであります。事重大だ、こう考えましたが、これとても結局独立採算制目的にかなわない、赤字が年にだんだんと激増して承る。ここに原因しておるのでありますから、要は赤字克服と国鉄の経営の合理化、能率の増進、このねらいと関連しての公共利益に合致する限り、かように書かれておるものだと実は私解釈しておる。地方的な問題は、そのあとのことで、地方鉄道の強化とか、あるいはサービスをどうするとか、合理化をはかるとかいうことが書かれておる、こういうふうに実は解釈しておりますがいかがですか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまお話になりました公共利益という観念の説明につきましては、御意見通りと私ども考えております。
  44. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 議事進行について。これはできますならば、まだまだ十二分に御意見を伺つた方がけつこうだと思うのでありますが、この法案が出ましてから、もう相当長い時間にわたつて質疑が続けられたのであります。國会も余すところあと二日なのでありますから、大体本委員会における質問をお一人当り十五分ないし二十分程度でお許しになつし、しかも整理した御質問だけを言つていただいて、そうして審議を進められるような動議を提出いたします。     〔「動議じやないではないか」と呼ぶ者あり〕
  45. 稻田直道

    稻田委員長 議事進行としてお許しいたしましたから、一應委員長においては尾崎君の意見を了承いたしまして、適当な処置をとります。なお動議として出た場合には、また適当な処置をとります。
  46. 田中堯平

    田中(堯)委員 地方鉄道の強化という点はこれで打切りましよう。そこで最後の目的になつておる財政の改善でありますが、これは昨日來盛んに論ぜられておつた。この厖大なる予算のもとで三十七億、しかもこれが買收希望額を見るとわずかに四億四千万円、これが十億になるか、十五億になるかわかりませんが、おそらく三十七億というものは出ぬでありましよう。ところがこれが十億か十五億出てみたところで、厖大なる予算の点から見たならば、まつたく焼け石に水であります。むしるこれは民間のいろいろな專門家が言うには、たとえば阪和線のごときは、あれでもつて現在百億以下のしろものではないと言つておりますが、そういうような評價のやり方をすれば、おそらく十線で何百億という厖大な國有財産だと思います。これをどういう観点から三十七億という政府の評價をなさつたかしりませんが、ともかくもそういう厖大なる財産を、わずかの値段で譲渡するということこそ、むしろ財政の改善どころではない、財政の改悪になると私どもは考えておるのであります。財政の改善ということであるならば、犬も食わないような赤字路線を壷るというならばまだ話がわかるが黒字路線だろうが、赤字路線であろいうが、そういうことにはおかまいなしに、昭和十八年、十九年買收にかかる竜のは、一括してどこでも拂下げができるという法案であつてみれば、その辺笑に私ども了解に苦しむのであります。一体これが財政の助けになるか。財政の改善になるかならぬかについていろいろ後答弁ありましたが、いま一度納得の行くような御明答を期待いたします。
  47. 稻田直道

    稻田委員長 田中君に御注意しておきますが、その点はもう昨日から五回、六回、七回にわたつて尾崎君その他から出ておりますから、あまり重複した質問ならば、委員長において適当な処置をとります。
  48. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 お答えいたします。ただいまのは多分に御意見にわたるような点があるように考えたのでありますが、実は私どもはこれを拂い下げること、民営に移すことが、國有鉄道の財政改善の一助になるだろうというような考え方を、実は持つておるのであります。ただいまの御意見のうちにわずかな金ではないか、十五億か三十数億、そういうような考え方で赤字克服ができるかというようなお話でありましたが、私どもはただいまの国鉄の財政を改善するという場合におきましては、一線、二線が固まつて、集まつて数億の金になつておるということを考えなければ、実は改善はできないのであります。思い切つてここに財源として百億だ、あるいは二百億だと固まつての財源は、なかなかないと思います。鉄道当局なり、鉄道の從業員諸君が苦心しておりますのも、実はこの点にあるのではないかと私どもは考えるのであります。從いましてこの点は、遺憾ながら意見の相違になるのではないかと考えております。
  49. 田中堯平

    田中(堯)委員  その点についてはもう一度お伺いしたい。これは財政の改善になる、一助になるということを言われまするけれども、先申しましたように、こういう貴重な重大なる国有財産を安値で拂い下げるということは、たいへん國家の財政を危くすることである。ごとに吉田総裁は、たしかこういうことを言つておられるのですが、國民もたけのこ生活をしておる、國家もたけのこ生活をしなければならぬ、そういうような方針で、どんどんと鉄道その他の國有財産も二束三文で直り飛ばしてしまう。そうして辛うじて漸次迫るところの赤字を克服しながら、國家財政も生きて行くというようなことであつては、國民國家もことごとくこれは行きついてしまう。私どもは非常にそれを憂慮しております。これは民自党並びに現政府の根本方針に触れることでありましようが、一体そういうようなことに触れなければ——漸次端の方を切り捨ててしまつて、それで飯を食つて行こうというような基本的な政策を持つておるのかどうか。この際一言明確にしていただきたいのであります。
  50. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 私どもは先ほど来申しますように、この國鉄の財政を立て直しますためには、あらゆるくふうを実はいたすつもりでおるのであります。從いましてその先駆といたしまして、第一條の第二項に書いてありますごとく、鉄道國有法一條趣旨を変更するものと解釈してはならないということをはつきり明示しておりまするが、本質に変更を來さない範囲におきまして、純地方的な利便を供與し、しかも公共利益を合致するような場合には、民営に移すことはさしつかえない、むしろ望ましいことじやないか、かように実は考えておるわけであります。
  51. 田中堯平

    田中(堯)委員 法制局の方見えておりますか。
  52. 稻田直道

    稻田委員長 來ています。
  53. 田中堯平

    田中(堯)委員 これは非常に廣汎な委任立法だと考えるのであります。すなわち國有財産を拂い下げるという場合には、個々具体的にこれを拂い下げるという一つの立法手続がとらるべきだと解釈しておりますが、こういうふうにどれかを拂い下げる、あるいは全部を抑い下げるかもしれぬが、これを認めてくれというような立法手段は、私どもはこれを違法である。違憲であるかどうかはまだ研究しておりませんが、違法であると思うのでありますが、法制局の御見解はいかがですか。
  54. 鮫島眞男

    ○鮫島参事 この法律案には、国有財産たる國有鉄道を拂い下げるにつきましては、いろいろな條件が備わつておるのであります。その條件と申しますのは、先ほどから御質疑があります第一條に規定してあるのでありまして、結局要約いたしますと、公共利益に合致する限りということが、厳然たる大原則になつておりますので、この原則に合致する限りにおいて処理いたしますことは、何ら違法なことはないと存じます。
  55. 田中堯平

    田中(堯)委員 私の聞いておるのは、その点ではなしに、こういうような國有財産の拂下げの場合には、一括して、廣範囲なものを拂い下げるかもしれないが、これは審査会というような機関にまかせ、行政大臣の一存にまかしてくれというような廣範な委任立法が、財政法その他の法規に触ればせぬかということを聞いておるのです。さらに憲法に触れぬかということを聞いておるのです。
  56. 鮫島眞男

    ○鮫島参事 その点はよく研究いたしたのでございますが、そういう関係はないと思つております。
  57. 田中堯平

    田中(堯)委員 譲渡という言葉が、本法には盛んに使つてあります。譲渡というのは賣買契約だろうと思います。ところが一方この法案には審査会を設けて、値段の査定やいろいろなことをやる。そこでまた相手方の申込みの手続も規定がされてあります。そこでこの相手方の申込みの價格と、それから審査会その他の機関で査定した價格との食い違いが生じた場合には、これはどういう方法で協定をされ、賣買契約にまで持つて行かれるのですか。その点を御説明願います。
  58. 鮫島眞男

    ○鮫島参事 会社の方から譲渡の申請をいたしますについては、あるいは参考資料といたしまして、参考になるものといたしまして、譲渡價額を書くかもしれませんけれども、それは法律上何ら要件ではありませんし、またそういう價格を書いてもそれに拘束されることはない。これは申請する者からは、運輸審議会の議を経まして、運輸大臣が決定した條件に從つて買うということを前提にいたしまして、申込みをいたしておるのでございまして、價格の点において食い違いが生ずるということはないと存じております。
  59. 田中堯平

    田中(堯)委員 今の譲渡というのは賣買ですか。
  60. 鮫島眞男

    ○鮫島参事 賣買と解していいと思います。
  61. 田中堯平

    田中(堯)委員 そうするとお尋ねしたいのは、賣買はいくらくにしてくれ、いくらぐらいに壷ろうという、双方の意思が合致しないと成立しないのでありますが、今の御説明によると、審査会なり、あるいは行政大臣の方でこれこれで賣るのだという申入れをする、そうすると、それを片一方で應ずるか、應じないかを意思表示するというふうなお話のようでありましたが事実これはそういうふうなことをやるのではなしに、やはり資本家の方から買收する、資本家の方からいくらいくらなら買う覚悟がある、そこでそれを参考にして、審査会の方、あるいは政府の方で價格をきめるのではないのですか、実際はどういうことになりますか。
  62. 鮫島眞男

    ○鮫島参事 それは第三條にもございますように、申請書に書くべきことは譲渡を求めるということであります。それからいろいろな書類を添付いたしますけれども、單に譲渡を求めるということだけを書くのでありまして、その譲渡額がいくらいくらということは、あるいは今申しましたように、参考的には書くかもしれませんが、それは何ら法律的には意味はない。運輸審議会の議を経まして運輸大臣の決定する條件に從つて買い受けたいという趣旨でもつて、申請いたすのでありまして、價格をこれこれで買いたいというふうには、この法律案はなつていないと思つております。   一
  63. 田中堯平

    田中(堯)委員 提案者にお聞きしたい。十八年、十九年の年度で政府から買收された私鉄、これを拂い下げるということになつておりますが、昨日佐藤議員の御答弁では、この会社は國債をたくさん背負い込んでおるし、諸種の事情もあるから、拂下げをさしてやりたいというような御答弁があつたと思いますが、そこで第一にお尋ねしたいのは、私どもの聞くところによると、この十八、九年当時に買收された会社は、その当時の国債を、税金の代物弁済その他にやつて、今日もはや持つておらぬということを聞いておりますが、まずその点の御調査はどうなうておりますか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 十八年及び十九年に買收いたしました鉄値は、ただいま公債を捗つておるという特殊事情ばかりではなく、買收の方式自身が戰時中の特別買收の方式をとつたという点が、一番の相違点であることを、まずつけ加えておきたいと思います。そうして公債で金を支拂つたわけでありますが、その公債が登録公債であつた場合もありますし、また会社の解散、いわゆる清算に入ることを禁止というか、禁じたような事情も実はあつたのであります。お尋ねのごとく、ただいまもなおそれらの公債を保有しておる会社はあると私は思つております。
  65. 田中堯平

    田中(堯)委員 それは御調査をなさつたのですか、思つておられるだけですか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 これは運輸当局から資料をもらつて調べたのであります。
  67. 田中堯平

    田中(堯)委員 その点について次の質問ですが、私どもの考えでは、これは戰争で負けたのだ。個人でも会社でも命を差出した人もあるし、全財産を焼かれたものもある。これは負けたからどうもしかたがないというのが、一般の常識になつております。ところが、このようにして鉄道戰争目的遂行のために買收されたものに対して、今日特権を與えて、そのものに限つて鉄道を拂い下げてやるというようなことをやると、一般の今日の犠牲負担の原則に非常に反して、不公平なる取扱いとして現われて来ると思うのであります。その辺の見解を承りたい。
  68. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 財産権と人命権、これを一緒にしては私ども実は考えたくないように思つております。またその財産の処置の問題として考えまして、こういうことが可能であるならば、これをやつてもさしつかえないのではないか、かように考えております。
  69. 田中堯平

    田中(堯)委員 今お伺いしたのは、そういう意味ではなく、不公事なる取扱いになるのではないかということであります。戰争によつて一番記帳な人命を損した人もある。全財産を焼かれた人もあるし、財産といわず、人命といわず、みな非常な負担を負つている。それを鉄道買收された会社だけは、これを元に返してやるというのは、いかにも片手落ちに見え、不公平に見える。これをいかようにお考えかということであります。
  70. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 この法案は在来の縁故者にのみ返す、拂下げをするという実は法案でないことは、一應御了承願います。一應縁故判はもちろん考え、田所有余礼、またはこれと密接の関係のある会社ということになつておりますが、さらに第二條にその内容を詳しく申し上げております。從つて会社のみが拂下げを受け得るということには、実はなつておらないのであります。
  71. 田中堯平

    田中(堯)委員 これは公平なる手段をとる、すなわち入札、競賣という手続をとることが、一番公平だと思いますが、そういうふうに改める御意思はありませんか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいま申し上げましたように、私ども地方鉄道経営ということになりますと、なかなか第三軒が飛び込みましても、そう容易には初めはできかねております。そこでいろいろ在来の縁故のある君が経営する方が比較的樂ではないか、相手方として考えやすいものですから、旧所有会社あるいはこれに密接な関係のある会社というようなことを、まず第一に取上げてみたのであります、ただいま田中委員のごとく、さらにその拂い下げ得る範臨を拡張してはどうかという御意見については、別に私ども反対はいたさないつもりであります。
  73. 關谷勝利

    關谷委員 議事進行に関する動議を提出したいと思います。この法案につきましては、まだ他にも質問通告をした考もありますので、会期も切迫し、参議院送付しなければなりませんから、一人当りの質問時間を十五分程度に制限をして、発言せしめられんことを希望いたします。
  74. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの關谷君の動議をお諮りいたします。  ただいまの關谷君の動議に賛成諸君起立を願います。     〔賛成起立
  75. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数であります。ただいままで田中君には約五十五分ほど、始めましてから時間がかかりましたからあとは大体今の動議に準じまして、多少は委員長が伸縮いたしますが、動議に準じた御発言を他の諸君はお願いしたいと思います。
  76. 田中堯平

    田中(堯)委員 それでは時間をきめられてどうにもならないので、最後に飛びますが、第十七條に拂い下げられる鉄道の從事員の保護規定があります。ところがその保護規定に反した場合に、運輸大臣はその会社なり責任者に対して、適当なる処置を命令することができるということになつております。ところでできるということだけであつて、これは多くはやりはしません。そうするとこの十七條は空文になるのであります。たといやつたところで、その個別たるや、本法には規定がないのだから、他の方から罰則を持つて来たところで、ほとんど天井から自棄のような効果しかないということになる。そうするとこの十七條はほとんど天井から目薬みたようなことになり効果がないことになるのであります。してみると、十七條は單なる体裁、氣休めに、從業員の反抗を防ぐためにのつけた條項としか解釈できないのでありますが、この辺の御見解はいかがでありますか。
  77. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 これは職員の保護に関する十九條の規定でありまして、問題は運用の点にあるのであります。私どもは、管理表といたしましても、十分この法案趣旨によつて処理されることと確信いたしておるわけであります。  この書き方につきまして、法文の書き方はいろいろ議論があるだろうと思うのであります。「することができる」というような書き方ではなくて、「しなければならない」というような書き方もあろうかと思いまするが、この場合におきましては、木筋は十七條に原則の規定がありますので、大部分は原則規定で処理される。そうしてその原則規定と違う場合におきまして、十九條の必要ができて来るのであります。そういう場合の法文の書き方といたしましては、この程度の「何々することができる」という方が、普通の法文の書き方ではないだろうかと思うのであります。
  78. 田中堯平

    田中(堯)委員 最後にもう一点お尋ねします。昨日來の審議でいろいろとお答弁を伺つていると、拂下げの請願なり、懇請書が、山のごとく来ているということでありました。なるほど、そうかもしれませんが、しかしこれは十か十五のわずかの会社であつて、おそらくそんなに山ほど来ておると思われない。ところが反対に、沿線の人々、ことに從事員諸君、あるいは他産業の労働者、特に阪和線のごときは、あの沿線の二十二箇町村の町村長、町村会議員を先頭に、おそらく何万という人が、拂い下げてふらつては困るという反対の運動を起しているのであります。そればかりでなく、ほとんど國民全般が反対をしている。それをどうでもこうでも拂い下げなければならぬということは、どうしでもふにおちないのでありますが、一体こういうような働く人々、ことに勤労階級の意思は、この立案者においては、ほとんど意味をなさないのでありますか。それとも、そういう反対の声も押し切つてやらなければならないという、非常なる御確信があるならば、私としては最後の質問でありますから、丁寧なる納得の行くような御答弁を願いたい。
  79. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまのお尋ねの点は、最も重要な点だと私どもも実は考えております。ことに今日の民主主義政治時代におきましては、利用表、從業員、その他の業者、また各方面の方々意見によりまして、具体的に進行して行くべきものであるということは、私どもも同様の考え方を実は持つものであります。從いまして、先ほど來陳情云々のお話がありましたが、私どもの手元には、拂下げを促進するようにとの陳情書もたくさん参つておりますし、また反対の陳情書も参つております。拂下げを要望しております陳情者は、ひとり旧業者ばかりでなく、沼緑の利用者からも、その方面の陳構の参つている例はいくつもあるのであります。從いまして、これらの事柄は、いずれ審議会にかけられました際に、十二分に検討されることだろうと思います。実はこの法律を出しまして、皆様方の御審議を得て、鉄道國有法の第一條があるにもかかわらず、國有鉄道の一部を民間に拂い下げ得る権能を、一膳政府に付與願つて、具体的路線の処置につきましてはどこまでも民主的に、また合法的な方法で処置いたしたいと考えているものであります。
  80. 稻田直道

  81. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 劈頭、十五分間という關谷委員からの動議がございましたが、これにつきましてまず第一に異議を申し上げたいと思います。關谷委員御自身も、実はこの請願の文書の中には、御自分が署名なさつて拂下げ反対をなさつていらつしやいます。それにもかかわらず、今度は提案者となつておられますことについても、私ども矛盾を感じている次第であります。個人的なことは別といたしまして、非常に関心の深い問題でございますから、ことに私どものような新しい運輸委員に対しましては、先輩でありますところの古い運輸委員の各位、並びに長いこと運輸省におられまして運輸行政にも通じておられます方々から、特に國民の関心の深いこの問題につきましては、御親切な答弁、熱心な討議があつてしかるべき、だと思うのでございます。そういうことを前提にいたしまして、十五分の発言についての制限に対しまして、異議を申し上げたいと思います。
  82. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 議事進行に関して、時間制限について申し上げたい。關谷委員の動議は、十分ないし二十分に制限したらどうかと言うただけで、確定的な時間は言うていないのであります。そこでとにかくこれを採決いたしました結果、これを確定いたしましたけれども、その確定を宣告した後に、委員は時計を見まして、田中君はもう五十五分やつた、なお關谷君の時間制限のことは考慮に入れるが、これを適当に処置するということで、その後委員長は十五分か二十分か発言を許可している。発言をどのくらいに制限するかということは委員長の権限であるはずであります。これは衆議院規則で明らかでございます。それでたとい關谷君がそういう動議を出しましても、時間の制限をするということだけ委員長は宣言いたしましたが、はつきりどのくらいにするということは、委員長の口からは宣告しておりません。そうして委員長はその宣告をした後におきまして、田中君は五十五分やつたのだから、情状によつてなお少々許すと言うている。しかし時間を制限する場合には、あらゆる委員に平等でなければならないと、はつきりこれに書いてある。だから田中君には五十五分のほかに二十分許しておいて、他の委員には十五分と制限することは、衆議院規則の違反であります。委員長にはそういうことはできないはずでありますから、本人に必要があつて、あるいは適当に自分がその範囲内で短縮することは由自でございますけれども、本人が主張する限りにおいては、さきに田中委員委員長宣告後において言いました五十五分と、その後の適当の時間を加えたものが、あらゆる委員に平等に許される時間制限だと思いますから、その点はお間違いなく、また私もそういう時間であるということを要求いたします。
  83. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの佐々木君の意見委員長は一言申し上げておきます。委員長は分秒をはかる時計を持つておりませんので、十五分というても、厳格に十五分が守れるかどうかわからないので、十五分ということを基本にして適当に扱うということであります。十五分に間違いありません。それから田中君が五十五分やつたと言つたのは、田中君、あまり長くやりましたぞということを、田中君に言つたのでありまして、そこでぴつたり発言を封じたのでは、田中君のあとの発言ができないので、あとを許したわけでありまして、決して關谷君の動議に反するものでありません。
  84. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 これはやはり議事進行に関することであります。衆議院規則に対する解釈の問題でありますから、あまり多数でお押しにならない方がいいと思います。あまりに多数で押しましても、衆議院規則というものがはつきりございますから、そういうことはなさらないで、この運輸委員会は衆議院規則によつて運営されるということが必要であると思うのであります。
  85. 稻田直道

    稻田委員長 委員長は衆議院規則をよく見てやつております。
  86. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 やつておりましようが、委員長と私との間にその解釈が違いますから、その採決に対して、一つの確認を求めておるのであります。そこで委員長は、それならば、ここで今の速記を反訳してもらつて、読むことが必要だと思います。委員長は時間制限をすることを採択いたしましてこれは多くの人が聞いておつてこれに同意を與えました。これは有効であります。しかしそれに基いて委員長は時間の宣告をしておりません。間違いならば、あなた反訳してもらつて、見ればよい。
  87. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの關谷君の動議にと言うて、關谷君の動議の通りいたしてあるのです。
  88. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 これは当然速記録を反訳してごらんになればよい。そういう意味で、私はあらゆる委員に対して平等に時間を制限することが必要でございますので、これは反訳をしてもらいまして、その委員長の発言に基いて処理していただきたいと思います。
  89. 稻田直道

    稻田委員長 その必要はありません。
  90. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 その必要がないということはありません。
  91. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議の通りやりますということでありますから。
  92. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そういうことでありますれば委員長を信任するわけにはいかぬ。議事進行に関してあらゆる委員に平等に時間を制限するということがある。それを委員長が時間の何分ということを宣告しておらない。それを君たちが、ここのところで反訳する時間を與えないということは、多数の横暴じやないか。そんな多数の横暴で立憲政治がどこにある。君たちは乱暴だ。だから委員長、あなたはそう言つたというし、私は言わないというのですから。
  93. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議の通りにやりますと言うた。
  94. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そんなばかなことはない。あなたが時間を。
  95. 稻田直道

    稻田委員長 席を出てはいけません。
  96. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そんなことはありません。關谷君の動議に対して、あなたは宣告しておりません。(「退場を命じろ」と呼ぶ者あり)こんな程度委員を退場させようというのは、君ら自身が委員の権利を拘束し、減少させようとするものだ。
  97. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議の通りにやりますと言うてある。
  98. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そう言つてありません。あなたは何分かということを宣告しなければなりません。
  99. 稻田直道

    稻田委員長 關谷君の動議の通りに十五分内外に。
  100. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そんなら、ここのところで反訳したらよい。
  101. 稻田直道

    稻田委員長 そんな必要はありません。お席におつきなさい。
  102. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 それじやぼくは委員長の不信任動議を提出いたします。     〔発言する者多し〕
  103. 松本一郎

    ○松本(一)委員 議事進行に関して、時間も刻々追つております。何もこの法案を今日中に上げなければならぬということはありませんけれども、昨夜といい、一昨夜といい、お互いに連日夜夜中までかかつておるのです。今晩もおさしつかえなければ夜つぴてでも私たちは審議したいと思います。また明日でもかまいません。一刻の休みなしでも審議いたすのはかまいませんけれども、大体において、この法案について、昨日から相当議論が出ておるが、まだ御質問なさらん方も、たとえば米窪さんやらその他おありですから、こういう方々に御質問願いたいと思います。ところで、先ほど關谷君の動議採決、これが決定しました。十五分というのですが、委員長が宣告されておつたかどうかは私も記憶いたしませんけれども、ともかくもこういうくたびれた中で、時間が切迫しておるから、動議成立後十五分間、これを公平にということが正式であります。動議成立前までは一時間でも三十分でもかまわないけれども、成立後十五分間これは公平に扱うのがあたりまえだ。こう私は考えております。委員長は十五分間くらいというのですから幾分ここには幅がありましよう。十五分間やらなければならぬこともなければへまた都合によつては少し延長ということもあります。ひとうお互いにこの問題は円満に処理願いたいと思います。
  104. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私も高い声を出しまして、年がいもなく、済まないと思います。そこで私の解釈からしますれば、なるほど委員長が宣告後に時間に関する何らの発言をしておらなければ、ただいまの松本さんのような御解釈が成立つ。ところが委員長が十五分にするということを宣言しないでおいてそしてそのときにおいて。、田中君は五十五分やつたのだからあと多少許す、こう言うならば五十五分にあとで許したものを加味したものが、田中君に割当てた時間だ。つまり動議採択の宣告後に言つておる。だから、これは当然田中君の時間を、他の委員諸君に平等に割りつけるべきことは、衆議院規則によつて明らかだ。私もあるいは耳が悪くて聞き違えたかもし出れません。だから私の解釈が正しいか、あるいは委員長の言うたのが正しいか、何分もかかりません。こんなことを言つているうちに反訳ができます。私の耳がもしも悪いために聞き違えたならば、私は正当なる委員長の官費に対しまして服從することは当然でその手続もやらないで、皆さんでこの審議を押し進めようとするところに、皆さんのごむりがあると私は思う。だから、松本さんもそういうふうにごあつせんくださるならば、仲裁は時の氏神と申しますから、もしそういうふうになさるならば、私の方は了承いたします。これは衆議院規則の解釈の問題で、はつきりしている。委員長は宣告後に、五十五分やうたからあと少し許す、こう言う。だからそこのところを反訳して、見ればわかる。
  105. 田中織之進

    田中織之進君 関連して……。
  106. 稻田直道

    稻田委員長 あなたは委員じやありません。許しません。
  107. 田中織之進

    田中織之進君 どうしてです。
  108. 稻田直道

    稻田委員長 委員外の発言は許しません。あなたはこの委員会委員じやありません。(「きのう約束したじやないか」と呼ぶ者あり)まだ委員以外の人の発言は許していません。
  109. 田中織之進

    田中織之進君 私たち大蔵委員は連合審査会に重大な関係があるから。
  110. 稻田直道

    稻田委員長 委員以外の発言を許すと言つてから、してください。
  111. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 田中君が昨日の委員長の宣言に基いて、当然発言権があるかどうかということはあとの問題。これも速記録を見なければ解決しないと思う。そのことは別としまして、ただいま申しましたように、とにかく委員長は宣告後に、田中君は五十五分やつたから、あと多少許すということを言つている。
  112. 稻田直道

    稻田委員長 そんなことは言いません。
  113. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 言つていないのなら、なんであなたは反訳することをきらうのです。、もしそう言つていないのなら、確信を持つて速記を反訳なさらしたらいかがです。どうも私はわからな、い。そういう確信があるなら反訳なさつて、見たらよい。私ははつきり——あなたは宣告後において、田中君は五十五分やつたから、あと多少許すということを言つておる。     〔「進行々々」と呼ぶ者あり〕
  114. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 進行と言つても、衆議院規則を踏み破つて議事を進めるという考え方——それはぼくの間違いかもしれません。諸君に向つて陳謝しなければならぬかもしれませんが、とにかく何が正しい議事の運営かといえば、当然衆議院規則によつてやらなければならぬ。たといそういうことを諸君がきめても、もしぼくの言うことが正しかつたとすれば五十五分やらなければならぬという資料が来たら、そういうことは無効。やありませんか。衆議院規則に基かずしてなしたところの決定は無効なんです。
  115. 稻田直道

    稻田委員長 ちよつと理事の方に集まつていただいて御相談しましよう。速記をとめてください。     〔速記中止〕
  116. 稻田直道

    稻田委員長 では、柄澤君。
  117. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは質問を続行いたします。第一條にございます鉄道國有法の第一條趣旨を変更するものではないということで、戰時中に國に買い上げになりました鉄道地方鉄道会社から買收した鉄道を、地方鉄道を強化する目的と、國有鉄道の財政の改善をはかることを目的として、この法案が出されたということであつたのでございますが、なるほど鉄道國有法には明らかに「一般運送ノ用二供スル鉄道ハ総テ國ノ所有トス但シ一地方交通目的トスル鉄道ハ此ノ限二在ラス」という條文がございます。この條文が巧みにりつばな名目となつて、ここに出ているように思われるのでございますけれども、この條文、つまりこの明治三十九年に出ましたところの法律提案理由になつておりますものにこういうことがあるのでございます。すなわち鉄道國有というものの主義はつとに鉄道創工の際に端を発し、明治二十五年鉄道敷設法の制定により全國重要の線路を予定し、鉄道公債をもつてこれを経営するの大綱を明示せり、但しその一部を民業にまかしたることあるも、これ当時財政の状態ただちにその全部普及の急務に應じがたきによれるものにして、一時の権宜にほかならず、しかして民業に特許する際は、みな將來國有に帰せしむる條件を保留し、明治二十七、八年戰役後、巨額の國費を官線施設に投ぜしも、三十三年の私設鉄適法に民業買收の原則を明示せしも、みなこの主義によれり、ということがあるのでございます。すなわち日本の鉄道というものは、私設鉄道を設置します場合にも、これは将来國有にすることが原則になつておるのでございます。この法案にはその第一條趣旨だけが、二の提案理由になつております最も根本的な鉄道國有にして、日本の糧輸というものを発達させて行くということを、ここでは没却しております。これは故意になすつたものか、あるいはこの法律を十分に檢討なされずになすつたものか、その点について、提案者並びに政府当局の御意見を承りたいのでございます。
  118. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 お答えをしたしたいと思いますが、ここで議論になりますのは、鉄道國有法一條の本文が実は議論になるのでありまして、この提案理由は、実はここで議論の対象にはならないように私どもは考えております。從いましてこの買收したる鉄道の譲渡に関する法律案といたしまして、鉄道國有法一條趣旨に反するものなりやいなやということを、十分檢討いたした次第であります。それが第一條第二項として、ここに規定されておるような次第であります。別に私どもは矛盾を感じておらないのでございます。
  119. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいま明治以來からの國有鉄道がコーポレーシヨンにかわりまして、日本の運輸行政にとりましては、実に重大なときでございます。当委員会が開かれますときには、特に民自党側委員から、こうした重要案件を持ちまして、本委員会は非常に重大な責任をもつて発足する。だからわれわれは必ずしも民自党であつても、政府方針でありながらも、これと同調できない場合もあるというような御趣旨が、強力に委員長初め各委員から強調されていたと思うのでございます。ただいま佐藤政務調査会長でございますか、提案者でございますか、政府の側からの代表者でいらつしやいますか、とにかく責任の地位にある方からの御答弁だと思うのでございますけれども、第一條根拠にしたのであつて、その提案理由は何もこれは関知するものではないという御答弁を承づたのでございますが、これではまつたく私どもは納得が行きかねる、詭弁だと思います。つまり日本の國有鉄道というものに対する、この根本原則というものが明らかにうたわれて、この大方針のもとに今日まで実に多くの犠牲一を拂つて、労働者並びにこの日本の國民の税金によつてつちかわれて来たところの鉄道が、吉田内閣になりますと、総理はこれを外國に賣り拂つてもよいということを明言されておるのでございます。そういう際に、私ども責任のある佐藤氏からこういう無責任な詭弁にひとしいことを御答弁賜わりますことは、実に残念に存ずるのでございます。でありますから、ぜひごの精神に——日本の國有鉄道、私設鉄道をつくりますときにあるいは買收しますときにも、特にこのことがうたわれておると思うのでございますが、このことについては関連しないのだ、一條だけを基準にしているのだというようなことではなく、提案者でございまして、この法律提案なすつたのですから、この提案をなさいますときに、なぜ一條だけを抜いて出したのでございますか。なぜこの提案理由をここにうたわなかつたのでございますか。なぜ國有民営に移すに都合のよいところだけをお抜きになつたのでございますか。この根本的な精神をどういうふうにお考えになつていらつしやるのでございますか。これを根本的に今くつがえそうとなさるのでございますか。この点についてもう一度責任のある御答弁を承りたいと思います。
  120. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 私は本法案提案者として、ここの席におるのでありますから、その点は明確にしておきたいと思います。なお私のただいまいろいろ申し上げた点は——鉄道國有法提案者の精神そのものは、ただいま共産党所属の柄澤さんとしては、共産党のかねての主張とは非常にかわつた意味から御説明、御質問なさつて、私どもと一脈通ずるものがあるかの感じをいたすのでありますけれども、私どもは、法律最初につくりました人の提案理由だけに縛られるものではないと実は考えております。これは相当法理的な議論になりますから、この点はこれ以上申し上げたくないように思いますが、この第一條で、一旦國有になつておりますものを民営に拂い下げる、かように考えますと、いかにもこの法案鉄道國有法の第一條の本文と抵触するかのような感を持たれますので、そうではなくして、この但書の規定ではつきりこの点はその精神をこわさないでおるものだということを、実は明確にいたしておるのであります。重ねてお答えいたします。
  121. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 明治三十九年に鉄道國有法ができました際、その根本精神でございますこの提案理由にうたわれております、つまり地方鉄道でありましても、それがやがて國有に移すべきことを前提として、これがやられるものであるということは、鉄道が公益性を持つておるということを前提にしておると思うのでございます。從いまして今度の法案が出ます理由の、公共利益に合致する限り、旧所有会社にこれを返すということがございますが、こうした法案の根本的な精神を無視いたしましても、新たな法案によりまして、地方鉄道に賣り拂いますことが、どれだけ公共利益に合致するでございましよあか。その点がなければ——今まで御答弁があつたというふうに承つておりますけれども、その御答弁では納得が行かないのでございます。でありますから、もし請願がございまして、拂い下げてもらつだ方がいいという公共国体の決議文でございますとか、陳情書でございますとか、そういうものがございまして、これこれのものがあつて、われわれは公共利益に即すると考えて拂い下げるというような論拠がおありになりましたならば、具体的にその例をあるというだけではなく参て、あげていただきたいと思います。私どもの方にも地方自治團体や労働組合や、あるいは事業主、資本家こうした方面からたくさんの、公共利益に相反するから拂い下げてもらいたくないという、あるいは業者からは、拂い下げてもらいたいというような、こうした陳情も参つておりますので、そういうものと参酌したいと思うのでございますから、ひとつその点を具体的にお漏らしいただきたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 先ほど共産党の田中委員からも同様の質問がありまして実はその際にお答えを申し上げたのでありますが、具体的な処置、いわゆる拂い下げが決定いたします際に、ただいま御議論になつておりますような事柄が、審議会におきまして十分審議され、そうして運輸大臣が決定をするような運びになるのではないかと思うのであります。ただいまここに提案いたしておりますことと、お尋ねの点は相当齪齢を来しておるようでありますが、お尋ねはどこまでも具体的な問題をつかまえて、そうしていずれが公益に合致するものなりやいなや、これをこの際きめろということのように伺うのであります。これは私ども提案者といたしまして、そこまできめることは相当僭越ではないか、かように考えております。
  123. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それはつまりこういうことでございます。國有鉄道法というものが明治三十九年にできて、つまりその提案理由というものが、かわつて行くということをおつしやつたのでございます。すなわちこの國有鉄道法によりまして、この法則がかわつていないとすれば、これは民間よりも國有鉄道の方が公共性があり、公益が守られるから、民間の鉄道も、これを國有に移すのが原則であるということがうたわれておるのでございます。ですから、提案なさる方は、今の段階で、どうしても民間に拂い下げた方が公共性があるというように見られたから、この法案を出されたのでございましよう。提案なさる方にはそれだけの論拠がなければ、國有財産を拂い下げる提案をすることができない。いやしくも政務調査会長であらせられますし、さらに代議士でもあらせられます。運輸行政を長年担当されていて、関係法規にも明るくていらつしやると思うのです。ですから、この鉄道法律というものをここで無視して、この提案をなさる根拠であります。公共利益ということが、佐藤榮作氏によりますと、明治三十九年と今日とは変遷して來ておるとお考えになつておるから、ここでこの法律が生れたと思うのでございます。だからその具体的な例や、陳情や請願ということを申し上げたわけでございます。
  124. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 重ねてお答えいたします。先ほど御引用なさいました鉄道国有法をもう一度ひとつ読上げてみます。「第一條一般運送ノ用二供スル鉄道ハ総テ國ノ所有トス」これまでは御説の通りであります。その次に「但シ一地方交通目的トスル鉄道ハ此ノ限二在ラス」とはつきり書いてあります。從いまして、先ほど来いろいろ御説明になりましたが、それは特に都合のいい説明の点を取上げられて、強弁しておられるような感じがいたします。明敏なる柄澤委員といたしまして、必ずしもその但書のあることは、まさかお見落しにならないであろうと重ねて申し上げます。
  125. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そのことはこちらの申し上げたいことでございます。もちろん共産党といたしましては、國営事業に当然移しましてこれを國家の大きな手で資金をここに注いで、やつて行くべきだということが党の政策でございます。國有鉄道も、われわれの政策と合致いたしますことを、その趣旨としてうたつておるのでございます。從いまして條文に現われたところだけを御主張になりまして、國営事業民営に移すという民自党政策に合致させるために、特にここだけをお取上げになつたのを、先ほど申し上げていたのでありまして、その提案理由ごなつておるところを先ほど読み上げまして、一地方鉄道にいたしましても、鉄道事業というものは、原則として國営事業であるべきだということが法案にうたつてある。ですから、その法案を、今日この際、世界情勢が、アメリカですら私設つまり私営の資本家の経営しておりますところの鉄道が、破綻を來すところも出て來ているような状態、イギリスですら國営に移しておるような状態の際に、敗戰日本が何のゆえをもつて、この國有鉄道法の精神を曲げて、一旦、戰事中にその統制が誤つておりましても、國家の手に買い上げたものを、これを拂いもどすという法案提案なさつた責任者として、その理由を承つておるのであります。ですから、あくまでもそういうふうにこの点を強弁なさるなら、質問を打切ります。
  126. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 いろいろ御研究なさつていらつしやるので、わが國に鉄道國有法あり、地方鉄道法のあることは御承知だろうと思います。幹線はこの鉄道國有法の精神で、すでに國有になつておりますが、純一地方交通につきましては、地方鉄道会社経営も、実は承認しておるのであります。國有鉄道法とこの地方鉄道法との矛盾といいますか、ぶつかりを調整する意味におきまして、地方鉄道法では、國家が強制買收し得る権能を実は持つておるわけであります。從いまして、一般鉄道國有法のこの原則は、どこまでも今なお私どもかえる意思は毛頭持つておらないのであります。從いまして今日問題として取上げたところの、民営拂下げを一應考え得る線区として取上げましたものは、実は純一地方交通目的とする線区だ、かように実は考えて、これは拂い下げてもいいのではないかというように、双方の法律の精神をも勘案して実は考えたわけであります。從いましてここに特に第二項をうたわないと、あるいはこれを機会に全部の鉄道民営に移すのではないか。私どもは國が経営しております以上、共産党の諸君が言われるように、國の経営は独占資本だというような考え方は毛頭持つておらないのでありますが、しかしその点はいずれにいたしましても、國の経営する鉄道を全部民営に移す、かような方針でこれをやつておるものではない。だから第二項によりまして國有鉄道法の精神は、この際はつきり把持しておるのだということを明確にいたしておる次第であります。ただいま申し上げました両法案の関連におきまして、おそらくおわかりができるのではないかと思います。
  127. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君、大体時間です。
  128. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 御答弁では了解いたしかねますけれどもこの点についての質問は打切りたいと思います。  それから共産党は國営必ずしも独占資本とは考えておりません。吉田内閣がいたします場合には、独占資本の利潤を追求するごとになりますが、これが働いておる労働者が管理することになりますと、決して國営でも独占資本に奉仕するものとは考えていないのでございまして、その点を明らかにいたしたいと思います。政府御当局に伺いたいのでございますけれども政府運輸委員会の私ども反対を押し切りまして、運賃を値上げされました。そして昨日は夜中まで強行されまして、定員法を通されまして、国鉄から十二万を首切られたのでございます。これはひとえに赤字を克服するという理由であつたと存じます。私どもといたしましては、國鉄赤字ほこうした大象の犠牲において克服されていると存じております。ところが、今日重大なる発言がございました。松本委員がさらに百億からの赤字があると言われたのでございます。政府御当局からこの辺の御答弁を煩わしたいと思います。運賃を上げて、首を切つて、まだ赤字が百億出るのでございましようか。
  129. 松本一郎

    ○松本(一)委員 委員長ちよつと関連して……。國鉄赤字の問題についてでありますが、柄澤さんは今度初めてですけれども、実はこれは一昨年から問題になつておりまして、この二十三年度予算も当初予算のときは百億くらいの赤字を見込んで、一般会計から繰入れる予定であつたのであります。それが実際に予算を運用して行くと、追加丸々で結局三百二億の赤字の繰入れを今年の三月末行わなければならぬことになつてしまつた。そこで大体私ども議員が予算を審議する場合には、そのはつきりしたものまで、審議編成できぬことは御承知通りであります。少くとも大体来年三月の年度末までの経済界の一應の見通し、事業等の関係、すなわち收入、支出というものを想像して、これなら予算は大体行政府において執行できるだろうということをにらんで、決定しなければなりません。そこで予算を審議決定するにあたつて、この点は予算委員会でも——私も予算委員でありますが、相当注意して勉強しておりますが、今年の運輸省の予算は、予算面は千百五十億になつております。ところが、どこからそろばんを割出してみても、最初から私の計算によると二十六億ほど赤字が出ることになる。この分で予算を運行されて行つたならば、たとえコーポレーシヨンになることが想像されまして、それによつて経営の合理化、企業の高能率ということがある程度考えられても——こういうことは往々にして抽象的で概念論に終りやすいのであります。そこで今度從業員十二万人をやめてもらうことによつてこれで約十億円ほど歳出が減つて来る。ところがこれとても十億程度であるということを考えますと、インフレはこれからディスインフレに入つて一まず高進はしないと仮定してみても、いずれこの年度末になれば、よほどよくやつて百億、悪くすると百数十億の赤字がまた出るということは、私ども大きな國の世帯を切盛りしたことはございませんが、地方自治体の長として、小さいながらも予算を二、三十年来やつておつた者の経験から割出して、いわゆる第六感と申しますか、勘で割出してみて想像されるのであります。そういう意味で、必ず百億くらいの赤が出るということを、私の考えで先ほど申したのであつて、おそらく運輸当局はそうは出ないつもりだとおつしやるだろうと思いますが、そういうわけでありますから、この点御了承を願いたい。
  130. 加藤常太郎

    ○加藤(常)政府委員 鉄道予算といたしましては、御承知通り本年度の予算には赤字を組み込んでおりません。またまた当局の心組みなり決意としては、赤字は出さないつもりであります。人員整理と本法案とは関係がありません。
  131. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 提案者に伺いたいのでありますが、政府は首を切つて、運賃を上げて、運輸大臣のお話もございますが、とにかく從業員に労働強化をしてもらつて、やる以外にないと確言されたのでございます。聞くところによりますと、ただいま大体予定になつているところの路線は、昨日政府当局の御答弁にもありましたけれども、将来現在でもそうでございますが、國有鉄道の中でも有利な路線だ、つまり成績のよい路線だというのでございます。そういたしますと、國鉄の財政にとりましては、これを切り離した場合にはむしろ不利になるのでございます。赤字が出ないという想定のもとに、今予算を立てているのでございますが、将来この最も有利な路線を民間会励に賣り拂つたならばどうなるか、國鉄の財政を悪くずることになると思うのでございます。その点あなたは裏も表も知り抜いておられるはずでございますからどうしてこういうことをなさつたか、御答弁願いたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 この法律の対象といたしております路線の中には、成績のよい路線もございますが、成績の悪い線もございまして、一概に総体で、黒とか赤だとか言いかねると存じております。昨日たびたび私申し上げたのでありますが、鉄道財政の改善をはかる一助にするということを申し上げております。この表現方法は必ずおわかり願えることではないかと思うのであります。これによりまして幾らかの黒字が出て来る、あるいはこれによつて國有鉄道は逆に財政が赤になるとかいうものではないと思つております。これをやることが、必ず鉄道財政の改善の助けになるという信念を持つているような次第であります。
  133. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君、もう時間がたいへん過ぎましたではもう二章…。
  134. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 國鉄というものは生きておりまして、信念でこれが運営されるものでないということは、十分御承知だと思います。資材その他のいろいろな人員の総合的な條件がそろいません限り、國鉄の場合は赤字、黒字ではなくて、人間の命がなくなるのでございます。人殺しでございます。人殺しのその方針國鉄が向つて行かなければならない條件を拡大するようなことに対して——提案者がこれをなしたことに対し、今の御答弁では不満足でございます。さらに地方鉄道を強化して地方交通の利便を鍛造しということがございますが、今日は運輸省の方もおいでになりますから、これは私鉄國鉄の両方のいろいろな全体のにらみ合せの土で、御答弁が願えることと思いますが、資材の面におきましては、御承知のように九原則その他で非常に制限が來ておるのでございます。その資材を配分いたします場合に、國有鉄道地方鉄道とどちらが優先的に配分されるか、配分の形はどうなつているか、ただいまは非常に路線も荒廃しておりますし、非常に国鉄というものがいたんでおります。また地方鉄道といたしましても、私鉄にいたしましても、地方になりますと非常にいたんでおります。國鉄のいろいろなこうした條件を今直さなければならないことに対して、予算などの関係でできないような賦態でございますけれども、この少い、限りのある予算をもつて、少い資材をもつて、どこを重点的にするか、こういう点の割当を、吉田内閣民営の方を盛り立てなければならないから、國営の方はあとまわしにして、民営の方へ資材をやるとかいうことになるならば、これは重大な問題でございますし、許さるべからざる問題でございます。ですから路線協定その他におきましても、國鉄赤字になるような條件を、今までずいぶんおつくりになつている。どうもわれわれにはそういうように考えられる趣がございます。これではいけないのでございます。ですから資材その他につきまして見通しが十分にあるか、私鉄に移して、私鉄が復興して、地方國鉄経営よりもよくなるかどうか、こういうことがこの法の精神の最も重要なところであろうと思います。その点についての答弁を願いたいと思います。
  135. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまこれを譲渡することが財政の改善をはかるということを申し上げましたが、その際に、信念で動くものではないというお話がありました。お説の通りでありまして、私どもも信念で動くものではないことは百も承知でございます。私が申し上げます信念は、財政の改善の一助になる。かような確信を持つておるという意味なのであります。財政が改善されますれば、必ずや十分の能力も持つことでありますので、その設備の強化、あるいは新しい機械その他の採用にいたしましても、これは大いに役立つわけであります。公共の利便をより満足させますためにば、何といたしましても財政をゆたかにする。そして國有鉄道は、本来の目的の達成にあらゆる力を注ぐということでありたい。かように考えておるものであります。しこうして地方鉄道國有鉄道との相互の間に、資材の割振りについて、どういう方法をとつておるかということのお尋ねでございましたが、ただいまはいかようにやつておりますか、私が関係いたしました当座におきましては、双方の均衡を保つて資材の割振りをいたしておづたような次第であります。別に甲乙の差等は設けてはおらないのであります。しかし柄澤委員もすでに御承知のごとく、國有鉄道國有鉄道の規格があります。また地方鉄道地方鉄道の規格があります。同じ鉄道と申しましても、大きな機関車もあるし、小さな機関車もあります。大きな機関車の走る線区と、小さな軽い機関車、その他の車両が走る線区では線路の整備もおのずから違つて参るわけであります。ここらにもそれぞれの特質があるわけであります。また民営会社におきましては、経営の形におきまして、それ合、の経営者の手腕、力量を経営の上に発揮いたしておりますので、いろいろのくふうが実は出ておるわけであります。國有鉄道といたしましては、厖大な線区にまたがりまして、これを一つのある程度の階級、等級は定めておりますが、大体においては一律の形においてこれが運営されておるのであります。ここらに双方の違いが実は出て来るのであります。從いまして國有鉄道経営がよろしいとか、地方鉄道経営がよろしいとか、かような抽象的な議論は私どもは納得をいたしかねるのであります。國有鉄道のこれこれの経営と、何々鉄道会社のかくかくの経営方式といずれがよろしいか、いずれが地方公共の利便を達成しておるか、あるいは運賃は高いが、その他のサービスの面においてこの方がまさつておる。あるいは客を一時に非常に輸送する力はあるがその度数については何々会社の方がまさつておるとか、そういう点を比較考究いたしまして、そのいずれが、地方交通を担当するのにいいかということをきめていただきたい。かように考えるのであります。いずれにいたしましても、これらの点につきましては、この法案が通過した後において、審議会等においてこの点が特に審議されることだろうと私は考えております。
  136. 稻田直道

    稻田委員長 次に佐々木更三君。
  137. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 質問をいたします前に、きのうお願いしております吉田総理大臣並びに大蔵大臣の出席を希望しておるのでございますが、この点委員長の方でどういう、かうにおとりはからいくださいまして、その結果がどうなつておりますか。
  138. 稻田直道

    稻田委員長 昨日から大蔵大臣に交渉しますし、本日も事務員にその交渉は命じておるのでありますが、大蔵大臣は政務なかなか多端のようで一現在までまだ來てくれないので、重ねて呼びにやります。吉田総理大臣の出席を佐々木委員より御要求になりましたが、その際委員長といたしましては、現在の段階においては、提出理由説明ならば、吉田総理大臣提出者でないから、提出者の佐藤君その他があるからそれに質疑を願いたいと言つて、吉田総理大臣の出席はまだ要求しておりません。
  139. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 そういたしますと、池田大蔵大臣に対しましては、出席をなお求めておるのでございますから、あるいはこの委員会が終了する前に御出席になるかと思いますので、池田大蔵大臣に対します質問は私保留しておきたいと思います。それから吉田総理大臣が來られないかもしれないどいうことは、これは委員長としては、現在の状態でそういうふうにお考えになるでありましようが、これは委員長いささかごの問題を小さく見過ぎておるのでないかと思うのであります。私はこれから提案者にいろいろ御質問申し上げますが、どうもこの法律の施行される結果は、何と言いましても、日本國有鉄道の精神というものが根本から変改せられる結果になるだろうと思うのであります。そういたしますと、これはきわめて重要な問題でございまして、こういう問題を、総理大臣が小さい問題などとおつしやるようなことはおそらくなかろうと思う。これは委員長があまり総理大臣に御同情の結果、お忙しいこととお思い過しをされたと思いますが、まだ御要求くださつてないならば、あらためて御要求くだすつて、できるとかできないとかいうことを確かめた上でなければ、私ちよつと困るのであります。なるほど規則によりますれば、政府委員委員会が呼ぶことになつておりまして、私一委員として呼びましても、子れをお取上げにならなくてもよろしいことにはなつておりますけれども、しかし各同僚の皆様といえども、これほど重要な案一件の審議に、総理大臣を呼んで、その眞意を聞かなくともよろしいという御意思はなかろうと思うのであります。從つて私はここでは別に委員会が呼ぶか、呼ばないかということを、決定してくれということは申し上げませんけれども、ただいまの委員長のお答えによりますと、総理大臣は特にお忙しいと思うから、まだ呼ばないのだ、こういうことです。呼べば、案外吉田さんは話のわかる人でもあり、日本の現在の政治経済の状態を非常に御心配になつておられる方でもあるから、喜んで御出席なさるだろうと思うのでありまして、これはあまり御心配なさらずに、総理大臣意思を御付度なされずに、ぜひともお呼びくださりたいと思います。從つて委員長がなお総理大臣に御要求くださつて、それでも來ぬ場合には、これはしかたがありません。あるいは来るかもしれませんから、総理大臣に対するところの質問もこの際は保留しておきたいと思いますので他の部分につきまして、他の方の御答弁をお願いいたします。  それから提案者の方にお伺いいたしますが、私はこの法案審議には少くとも提案者自身としての資料が不足しておる。なるほど運輸省の鉄道総局とか、いろいろの資料は出ておりますけれども提案者責任に基くところの資料は、法案を除いては、ほとんど提出されておらない、こう申し上げてよろしいだろうと思います。あるいは提案者は、この運輸省鉄道総局その他の資料をもつて援用なさるとおつしやるかもしれませんが、私はそういうことでは、提案者として十分責任を盡すものであるとは思いません。やはり運輸省がどうなさろうとも、提案者責任においてこれを調査なさつて、この資料提出するのでなければならない。私は必ずしも運輸省を疑ぐるものではないが、とかく官職にはその官廰の成績第一主義と申しましようか、そういう観点から、調査がなされておらないとは限らないのであります。從つて提案者はこういう官廳の資料をもつて援用する、こういうような無責任なことをなさらずに、提案者自身の責任において十分國民の納得が行くように、かつまたわれわれ委員が信用して審議できるような資料提出が、当然これは義務であろうと存ずるのであります。礎つて私は昨日来意見をそつちに出しましたから、一々の項目を持つておりませんが、六項目か七項目に対するところの資料提出を要求いたしまして、委員長並びに提案者においてこれを了承しておるはずであります。これらの資料提出が私の質問の前提となるのであります。從つて私の要求いたしましたこれらの資料がどういうふうになつておりますか。提案者の方から、ひとつ説明をお願いしたいと思います。
  140. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 資料等が不足しておるというお話でありましたが、私ども今まで、ただいまお話になりましたごとく、運輸当局資料を援用いたしましたような次第でありまして、この点は御指摘のごとく私どもの手落ちのように感じております。しかし私どもが運輸省から提出させました資料は、それぞれ一應私どもも検討いたしまして、これをそのまま使いまして御審議つてもさしつかえないと実はかように考えまして、お送りいたしたのでありまして手続上の齟齬につきましてはこの機会にお許しを得たいと思います。
  141. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 どうも提案者の御答弁は満足行かないのでございます。  私の申し上げるのは、運輸当局資料も一應の信憑が置けるかとは存ずるのであります。特に佐藤さんは運輸省の次官もしておられたのでございます。從つて佐藤さんは運輸省の資料に対しては十分信用が置けるかと存ずるのでございますが、私たちは必ずしも運輸省の資料をもつて正しいものだ、こういうふうに考えておりません。これは私たちに報告して参りまするいろいろな資料から申しましても、大分運輸省の提出せる資料とは異なつたものがあるのであります。從つてこれはやはり提出者の責任において資料というものは提出すべきものである。いたずらに官僚のつくつた、極言かもしれませんが、見ようによつて一つのつじつまを合せようというふうに見えないでもない資料をもつてただちに援用されるということは私は納得行きかねる。かりに提案者が、運輸当局の出されましたる資料をもつて援用いたしまするとしましても、もしさようであるといたしますならば、昨日私が資料提出を要求いたしましたときに、この点を明らかにすべきであろうかと存ずるのであります。從つて私の解釈をもつてすれば、私は昨日正式に資料の申請をいたしておるのでありますから、これを何ら釈明することなく、何ら説明するごとなく、今日まで資料提出について明確なことをなさらぬということは、すなわちこの運輸当局資料をもつて資料とする、こういうことをおつしやらない以上は、ただいままでも私たちの審査というものは、無資料によつて資料がない状態によつて、これを審議したものであると言わなければなりません。從つてどもは、今日まで皆さんの資料提出を待つておりまして、私自身といたしましては資料なしでこしだめの質問をしておるのであります。從つて私はもしも皆さんが運輸当局が出したものが資料だ、こういうふうに援用なさるといたしますと、私はあらためてこの資料に対して検討しなければなりません。そういたしますと、この資料の検討に要するところの時間をお與えくださいませんと、質問に困るのでございまするが、提案者はこの点いかがでございましようか。
  142. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 重ねて先ほど申しましたようなことを繰返して御了承願うわけでありますが、私ども運輸当局を招致いたしましていろいろ調査をし、その際に、資料等も詳細に相当集めたわけでございまするが、その資料提案者として十分だ、十分信用し得る、かように考えまして、実は配付申し上げたような次第でございます。ただそれが、そこに書いておりますように、鉄道総局その他の字句が使つてありまして、まことに不体裁きわまる点は、ただいまおわびを申し上げ、御了解願つたような次第でございます。どうか何とぞあしからず御了承願いたいのであります。重ねて申し上げます。
  143. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 しつこいようでありますが、佐藤さんは遅れておいでになつたので御存じないかと思いますが私が資料提出を要求いたしましたときにおいては、すでにこの資料は私たちの手元に参つておつたものであります。もし私が提案者資料提出をお願いいたしました後に、これが配付されたならば、たといこれが提案者資料であるということをおつしやらなくても、大体常識でそう考うべきでございましようし、私もそれを承認しなければならないのでございます。ところがこの資料を出されまして、私たちはこの資料では信用できないから、私はあらためて資料提出を要求し、約六、七項目からの資料をお待ちしておるのであります。そのうちには、なるほど運輸省が出しましたところの調査資料と合致する分もあります。つまりそれと一緒のものもあります。かりにそれをもつて援用いたすといたしましても、それでない特別のもの、そういうものに弱しましては、これはやはり提案者は御承諾なさつた以上は——そのとき皆さんは私の調査資料提出を拒否しておりません。これを了承しております。了承して皆さんがいまだ出さないということは、私は解せないのでありまして、即刻これを出していただきたい。そうでないと、私は皆さんに対しましては、質問権は留保さるべきものだ、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましようか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 佐々木委員におはかりいたしますが、いかがでございましよう。先ほど來明しましたように、運輸省の資料を、実は私ども審査調査の途上において使用して参つたわけであります。  実はその資料で十分なように考えて、今日おはかりいたしておるのでありますが、これらの手続上の齟齬につきましては、先ほどからおわびを申し上げておるような次第であります。あの資料をお認め願いまして、ひとつ審議を願いたい。重ねてお願いいたす次第であります。
  145. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私もくどいことは申しません。そうおつしやるならば、それもよろしいのでございますが、そういたしますと、私が要求しました提出書類の中に同じものがあつて、それを皆さんが、これが正しいと思われるならば、援用することは必ずしも私は拒否いたしません。しかし皆さんの方で援用しようとするところの書類が、私のお願いしたものと違うものであれば、その違うものだけは、これは提出してもらわなければならぬ。これはよろしいでありましようか。私がお願いしたものと同一のものは、それを援用することはさしつかえないといたしましても、私が要求したものと一致しない部分、不足な部分に対しましては、これを御提出くださることになりましようか。あなた方は約束しているのですよ。そして資料なしにこの委員会審議をしろということは、少しごむりかと存じます。
  146. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 佐々木君にお尋ねいたしますが、要求なすつた資料はいかようなものでしたか。
  147. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 運輸省からいただいた資料の中には、十線だけのこまかい数字などは出ておりますけれども、二十二線に対する関係の、鉄道のいろいろな数字が出ておらないように思うが、いかがでありましようか。私、勉強不足のためによくわからないのでございますが……。
  148. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 佐々木さんの御説の通り、運輸省から出しました資料の中には、二十二線の中の清算会社として残つております会社、九社十線の資料を整えておりますが、爾余の鉄道につきましては目下調査中であります。ついでに弁明いたしますが、資料としての信用の問題であるかと思いますが、私の方での調査は、まず間違いがないと思つております。ほかの資料がありましたならば、それと比較して、どちらが正しいか研究いたしたいと考えております。
  149. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木さんに御注意いたします。が、本論の質問に早く移つていただかないと、もう時間がありませんから。
  150. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 委員長がそういう言葉を申すから、私は紛糾すると思うのであります。これは質問の中に入らないと思います。これはあなた方当然なすべき義務があるものを、私は要求しておるにすぎないのです。だからこれは質問をする前提條件の材料です。これをあなた方は十五分だとか何とか言つて、みなの納得づくでやらないで、單に時間を委員長の権限で制限なされようとしておるから問題が紛糾する。私は決してむりを言つておるのじやない。これにあるのならよろしい。皆さんが出しておるものを引用することは承知する。しかし出していないものを出してもらえるかどうかということを私は言つておるのだから、委員長はごむりを言わないようにしていただきたい。この際これくらいの問題を解決なされるというのだから、十分の資料が必要です。そこでただいま藪谷さんのおつしやいました資料のことですが、藪谷さんがこの資料は信用が置けるもりだと言いましたが、それは藪谷さんのお立場としては、当然でございましよう。そこで私は一應ここに盛られました資料に対しましては信憑力があるものと考えまして、これを基礎に私は御質問を申し上げることには異存はございません。この点は承諾をいたします。そこでただいま問題になつておりますところの法律案は、戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案という名前でございまして、これにはどこの線だということは決定しておりません。これを提案者は御存じでしようね。どこどこの線だということがはつきりしていないことは、御異存はないでしよう。そういたしますと、この法律が施行された場合に、この法律によつて適用を受けるものは、昭和十八年並びに十九年の戰時中買收されたあらゆる鉄道にこの法律が適用される。そういたしますならば、資料は当然、單なる特定の人の買收を希望しております十線に限定すべきものではない。十線の中でも、あるものは、買收するものがあるのでしよう。あるものは買收すべからずと審査会がきめるものもあるでしよう。また業者が希望しております十線以外のものに対しましても、もしも将来申請して來た場合には、これは平等に取扱わなければならぬことはいうまでもございません。從つてそれらのものに対しましても、審査会が審査の結果、これに載つておらない十社以外のものでも、申請がありますれば、それを当然審査会の議に付して、適当なものは拂い下げる、不適当なものはこれを拂い下げないという措置がなされることはいうまでもない。そういう場合に、資料が十線だけで、あとの十二線がないということは、本委員会において審議をこれ以上続けることはできない一つの條件であろうかと私は存じます。もちろん皆さんがこういうことをなおむり押しなされることがありますれば、國会のいろいろな規則におきまして、何か方法があるかどうか存じませんが、私は最高裁判所に持ち出しましても、こういうものはやはりはつきりしておかなければならぬものだと思う。そういう意味におきまして、十線に対するところの運輸省の鉄道総局の資料を私は引用することは承諾いたしますが、これに載つておらない十二線のものに対しては、これは至急御提出をしてもらわなければ、これから私は質問をするわけには参りません。昨日もはつきりと前もつて申し上げたのでございますから從つてこのあとの十二線に対するところの資料をいつ御提出くださるか、提案者からひとつお答え願います。
  151. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいま御提示になりましたことく、戰時授権立法、あの法律に基きまして、個々の鉄道会社買收法律案が單独に出たことと私は考えております。從いましてただいま御提示になりました法律では、これは授権立法でありますから、これだけでどの会社を買つたということはわかりかねると思います。從つてその授権立法に基いて買收された線区の名前くらいは、少くとも委員会に出すのが筋のように実は考えますので、その点はすでにお示し申し上げたことではないかと思うのであります。ただ内容その他につきましては、きわめて廣汎にわたりますのでただいま資料等はまだ出そろつておらない。この点はまことに遺憾に考えますけれども、本法案の御審議上には、私は別に支障には考えてはならないのじやないか、このように考えております。
  152. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 これはきわめて重要な問題です。そこで私はこの法律趣旨というところを読んで見ますると、第一條で「この法律は、日本國有鉄道をして、政府昭和十八年及び昭和十九年に今次の職事の必要に基いて地方鉄道会社から買收した鉄道(休止中のもの及び附属物件を含む。以下同じ。)を、」となつているから、この対象になるものは明確であります。從つてこれに対しましては、たといこの中に二十二線のうちの十二線の名前が載つていないからといつて、それに文句を言つて、けちをつけるようなことはいたしません。名前だけならば、提案者がここであとの十二線はどういうものかということを御説明願えれば、私は了承いたします。しかし問題はその次でございまして、なぜそうならば、この戰時中買收した鉄道を拂い下げるかというその内容の問題、質の問題です。その質がどうかと言いますと「公共利益に合致する限り、」それから「旧所有会社又はこれと密接な関係のある会赴に譲渡させ、」という対象の問題、いま一つ「もつて地方鉄道を強化して地方交通の利便を増進し、」という、鉄道の輸送の問題に対して貢献するということ。「あわせて日本國有鉄道の財政の改善を図ることを目的とする。」というのでありますから、この鉄道を拂い下げることによつて、これうの目的が充足するものでなければこの法律の意義はない。從つてこれらの目的がこの法律の施行によつて充足されるかどうかということは、現在これらの線がいかに営業され、いかなる実績をあげ、從つてつてどうであつた、将來どうなるということの資料がなくしては、その目的がどうなるかわかりません。それにもかかわらず、あなたが單に名前をここで言えばいいではないかということで行くならば、「昭和十八年及び昭和十九年に今次の戰争の必要に基いて地方鉄道会社から買收した鉄道」これだけは解決しましよう。しかしてそれ以下のこの法案の大精神であり、大目的であるというものの検討は、できないはずであります。これは何と言いましても、提案者はあとの十二線に対しましては、皆さんが引用しておると同様の資料を、提出する義務があろうかと存じますし、私はこれは審議に対しまする絶対的の條件かと思います。
  153. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 佐々木委員に申し上げますが、この資料の第七十ページに、実はその買收した鉄道会社の名前がありますし、同時に買收理由が実は上げてあります。これをお読みの上で、ただいまのような御意見を御開陳になつたことだろうと思うのでありますが、一應この程度で私は御審議は可能で疑いか。先ほど來いろいろなお話がありましたが、この詳細なる事業内容そのものは、しばらくおきましても、当時授権立法によりまして買收しましたその買收理由が明示されておれば、おそらく私どもは、特に職事の必要に基いて、地方鉄道会社から買收した鉄道のその理由は、はつきりいたすだろうと思うのであります。この点はすでにお読みの上で、かような御意見を御開陳なすつたことだろうと思いますが、その上で私どもは一應これで御審議願えると思いますので、重ねて御注意を喚起する次第であります。
  154. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 どうも提出者の答弁は、非常に不誠意きわまるものと思うのであります。見ようによりましては、私の質問を故意に曲解しておると見られないものでもなかろうと思います。ただいまも申し上げましたように、あなた方提案者が、ここでこの十二線に対するところの名前を読み上げるというなら、ば、私はそれを了承するとはつきり言つておる。だからあなたがこの七十ページの買收した会社並びに当時の事情を見ろというならば私は了承いたします。私の要求しておりますのは、以下の十線、それは内容が資料として提出されておる。ごらんなさい。以下各線に対するいろいろな資料が出て来ているでしよう。あらゆるものがそういうふうに提出されておる。たとえば七十九ページの旅客輸送数量明細表、これはいわゆる地方鉄道として抑い下げることが適当であるかどうかという連絡の輸送関係、それがつまりここにあります。ちよつと項目が見えませんが、実際国有鉄道法からいたしますれば、一般的な輸送、これは鉄道は國の所有とすということがあります。從つて地方鉄道としてその資格を持つておるかどうかということ、連絡輸送がどうなつておるかということがわからなければ、その鉄道地方鉄道としての性格を持つておるのか、一般國有鉄道の一環としてやらなければならぬのかということが、わからないではありませんか。あなたは十分檢討して出したとおつしやいますが、七十九ページをごらんなさい。これらの十線に対するところの旅客輸送、貨物輸送等の連絡輸送の関係は、ここにあなた方が提出している。そうしてこそ初めて、この戰時中買收したるところの鉄道が、地方鉄道としての性格を持つておるかどうかということを、われわれは断定する。それなくして、どうして地方鉄道の性格があるかどうかということが断定できますか。從つてできない。こういうものが絶対に必要なのだ。だからこれは私も先ほどから言う通り、運輸省の資材であるから、一應私は拒否いたしましたけれども、あなたの方ではこれを引用するというから、私は譲歩してこれを認める。從つて私は、ここに他の十二線に対してこういうものを出しなさい。あなた方は先日出すということを私に承諾しておる。あらゆるところでもそうだ。次の八十ページは旅客輸送数量明細表、こういうものがちやんと出ておる。こういうものがあつてこそ、初めて可能なわけです。公共の利害に合致するか、いわゆる国有鉄道法の精神に背馳しないかどうかということを、きめる材料なのである。そういうものを、あなた方はなぜ一体出さないで、やるのでありましようか。それから拂下げ價格をきめるにいたしましても、昭和二十三年度以降改良工事計画表、これはそうでしよう。こういうようなものが提示されてこそ、初めて民間に拂い下げて、これが採算が合うかどうかという資料になる。以下説明しなくても、あなたは鉄道次官を長くおやりになつた方だから、わかるはずであります。これは絶対必要な資料である。
  155. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまの御意見、まことにごもつともに聞えるのでありますが、実はただいま御要求なさいますようなことは、この法案通りました後に、当該線区を買收するかいなかの際に、特に御検討願うべき筋のものだと思うのであります。私ども似この法案を出しました際には、昭和十八年に買收した線、並びに昭和十九年に買收した線、これは特別な授権立法によつてやつたものであるから、同一の待遇をするということで、一應のわくを実は入れておるわけであります。その中から、ただいまのごとくこの線区は完全に該当するものである、あるいは地方交通にしてはあまりにも重要であるとかいうようなことは、將來、審議会等でいろいろ審議されましてそうして買收すべきかどうか。あるいはまた價絡はいかにすべきかどうか、幾らが適当であるかどうか。これらのことを決定して参るようなことに相なるのではないかと思うのであります。今日一億御檢討願いますることは、戰時立法で一應地方鉄道のわくがきまるのであります。そのわくの中に入つておるものを一括して、こういう授権立法をする。こういう場合に、この授権立法がいかなる不都合があるかということを一應検討願いますれば、私ども提案者として幸いなのであります。
  156. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君、時間です。あなた一人の委員会ではありません。委員会できめてあることですから……。
  157. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 それはわかつております。しかし私はこの資料はどうしても提出をお願いしなければなりません。私は提案者にお願いするのでありますが、実はこの法律はそういうものあはとでもよろしい。あなたは、ただ戰時中買收したものを拂い下げただけのことだ。こうおつしやるけれど心、あなた自身がこの法律をお読みになりましたか。頭をこつくりしたつてだめですよ。(笑声)読んでいませんよ。第一條の二に「この法律のいかなる規定も、鉄道國有法(明治三十九年法律第十七号)第一條趣旨を変更するものと解釈してはならない。」と書いてあるではありませんか。そこで戰時中に買い上げたるところの鉄道を拂い下げることは、この鉄道國有法の精神に反するか、反しないかということが、この法律審議の絶対條件である。その鉄道國有法の精神に反するか、反しないかは、いわゆる輸送の一貫性があるかどうか、そういうものの重要性がないかどうか。それからまた拂下げ線は、地方鉄道だけの性格を持つておるのかどうか。先ほども言いまする通り、たとえば連絡の輸送その他のこと、こういうことが検討されないで、この法律が單に戰時中買い上げたものを抑い下げればいいのだということで、どうしてこの鉄道國有法に反しないという、そういう結論が生れて来るのか。あまりにも私は提案者は独断であると思う。
  158. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 先ほど第一條第二項につきまして、柄澤委員の御質問に対しましても、お答えいたしましたような次第でありまして、私どもは別に矛盾をしておるとは思つておりません。しかし第一條のただいまの御疑念でありますが、まず第一條で十八年、十九年に買つた線区が、純地方公共の福祉、地方交通の便を供するものかどうかを、この際きめなければ、この法案審議は進まないと佐々木委員はおつしやるのでありますが、私どもはそのようには実は考えておらぬのであります。この点は一應十八年、十九年に戰時立法買收したものを、拂い下げ得る対象として一應取上げるが、その線区が、この地方鉄道という観点からばかりではなく、さらに公共利益に合致するかどうかというような点も十分檢討いたしまして、そうしてこれを拂い下げるかどうかという実際問題は、第二條以下に規定してあるような手続に從つて、取扱つて参ろうというのでありまして、この点は、お尋ねの点に十分お答えし得ておるのではないかと私は思うのであります。今この際から、それをちやんときめまして、これこれは必ず拂い下げるのだというようにきめた法律でないことを、御了承願えれば、その点は氷解するのではないかと思います。
  159. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 委員長
  160. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君に発言を許しません。
  161. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 委員長に申し上げることまでもいけないというのですか。
  162. 稻田直道

    稻田委員長 あなたの時間はもう済みました。もう打切つてありますから、許しません。     〔発言する者多し〕
  163. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木委員に申し上げます。あなたの発言をとどめます。次は米窪滿亮君。——いなければ、川島金次君。
  164. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私は委員長不信任案を提出いたします。(発言する者多し)、先ほど書類で正式に出してあります。取上げてください。
  165. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 委員長はすでに佐々木君の発言を停止しております。その後において引続き発言をせられることは、議事規則にもとると思う。     〔発言する者多し〕
  166. 稻田直道

    稻田委員長 それでは申し上げます。委員長の不信任案ということでありますから、理事にこの席を暫時譲ります。     〔委員長退席、前田(郁)委員長代理着席〕     —————————————
  167. 前田郁

    前田(郁)委員長代理 皆さんにお諮りいたします。ただいま佐々木場更三君より、稻田委員長に対して不信任案が出されました。それを議題に供します。提出者の趣旨弁明を許します。
  168. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 佐々木君のお氣持はよく私も了承しておりますが、これを際限なしに時間を延ばされましては、議事進行上非常に支障を生じますので、趣旨弁明を五分間に限るという動議を提出いたします。
  169. 前田郁

    前田(郁)委員長代理 佐々木君に趣旨弁明を許しましたが、ただいま尾崎君から趣旨弁明に対しまして、五分間でこれを打切つてもらいたいという動議が提出されました。これは前例もあるそうでございますから、五分間にすることに対しまして、皆様のこれに対する賛否を問いたいと思います。五分間ということに対しまして賛成の方の起立を願います。     〔賛成者起立
  170. 前田郁

    前田(郁)委員長代理 多数であります。それでは佐々木君、趣旨弁明を願います。     〔発言する者多し〕
  171. 前田郁

    前田(郁)委員長代理 静粛に願います。佐々木君趣旨弁明を早く願います。趣旨弁明は時間通りやります。
  172. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私は、ただいままできわめて寛大であり、非常に公平であると尊敬を拂つて参りました稻田委員長の不信任案を提出しなければならぬことは、稻田委員長の人格とかいうことは別にいたしまして、まことに遺憾きわまることでございます。これは必ずしも全体としての、稻田委員長の手腕とか、人格とか、取扱いの不公平とかいうことで、提出しているのではございませんので、これを私が提出する理由は、ごく部分的であります。それは審議を進める基礎になる、絶対條件であります。この提案法律案審議するに足る資料提出を、私は提案者にお願いしているわけです。昨日これを委員長が採択され、かつまた提案者もこれを了承しているのです。しかるに今日までその資料提出されておりません。これは私たちの審議を進めるところの條件を欠如するものである、かように私は考えるものであります。從つて私は本日提案者に対しまして、あらためて資料提出方を再度請求いたしました。それに対して提案者は、運輸当局その他の資料をもつて援用するからへそれでがまんしてくれという申出があつたのであります。私も子供じみたことは申しません。從つて運輸当局が出しました資料と、提案者責任をもつて出す資料とは、必ずしも同一ではないとは思いますけれども提案者の御苦衷もありましようし、かつまた審議をすみやかに進めなければならぬ関係もありますので、私はこの官廳の資料を援用するということに対しては、承諾を與えたのでございます。ただ官廳の提出いたしました資料には、戰時中拂い下げたるところの路線の中で、わずか十線にすぎません。それ以外の資料は載つておらないわけでございます。私はこの資料の中に盛られておりますところの十線に関する資料は、これをもつて援用することを了承し、その部分については、これを基礎資料として檢討することを承諾したのでございます。そこで、それに載らないところの他の十二線のものを、私は要求したわけである。ところが提案者は、この法律案目的は、戰時中戰時立法として買い上げたところの路線を、拂い下げることが目的だ、だからこの路線の收支がどうなるとか、連絡輸送がどうなるとか、將來の国有鉄道の財政対策に対してどういうようないい條件を與えるとか、こういうことにつきましては、これはあとで提出してもよろしい、こういうお話でございますけれども、それはこの法律趣旨にもありますところの鉄道國有法の精神に背馳しないということが一條件である以上は、眞にこの法律案鉄道国有法の精神に反するか、反しないかということは、他の十二線の営業の内容等も檢討してみなければ、これがはたして鉄道国有法の精神に反するか、反しないかということの断定はできない。従つてこの法律案審議する前提といたしましては、あくまでこれらの二十二線の営業状態の検討が、私は絶対必須條件である、かく考えるものであります。そういう意味におきまして、提案者もこの資料提出を承諾したはずである。それをいまだ出さないということは、まことにその当を得ない。その解釈の問題で、現在私と提案者との間に意見の相違がある。その意見の相違を解決しないで、これは私の質問の時間ではない、それは私がかつて頼んでいるところの、資料提出方の要求です。それは質問の時間に入らないと思います。それを制限し禁止することができますか。しかも私のそれらの議事進行に対する発言さえもこれを禁止するということは、温厚篤実にして、人格者であり、たつた今まで私が公平無私と考えた稻田委員長の胸の底に、何か間違つた雲がわいたように感ずるわけであります。これは決して稻田委員長の本心とは考えません。たまたま何かのかげんで、委員長はそういう発言をなさつたものと考えますけれども、これは本委員会を將來スムースに持つて行くために、かつまたこの委員会が十分の資料に基いて十分の審議をなすためには、どうしてもこれらの議事運営の方法に対して、委員長に対して十分の反省を求めなければならない。これに対する反省をなされなければ、どうしても委員長をかえてやつて行くよりほかはな品い、かような意味におきまして、私は委員長の不信任案を提出した次第でございます。私の尊敬する先輩、名委員長に対して、心ならずも私が不信任案の動議を提出しなければならないということは、まことに後輩として忍び得ないことではございますけれども議会の義を震あらしめ、かつわれわれは十分なる審議を盡して、國民大衆に代議士としての十分の責務を毒すためには、大義親を滅するという言葉もご     〔賛成者起立
  173. 前田郁

    前田(郁)委員長代理 起立少数。  これにて不信任案は否決され、稻田委員長は信任されました。ここにおいて私は交代いたします。(拍手)     〔前田(郁)委員長代理退席、委員長着席〕     —————————————
  174. 稻田直道

  175. 川島金次

    川島委員 私は昨日大蔵委員会との連合審査会において、もつぱら本法案の第一條に示されております地方鉄道の強化の問題、及び國有鉄道の財政の改善をはかることを目的とするこの目的論と、この法案の実施とが合目的であるかどうかという問題について、一應大ざつぱに提案言及び政府当局に所見を伺つたのであります。たまたま本日は私も本委員会委員に任ぜられまして、この委員としては最初の発言であります。昨日は運輸大臣、及び提案者といたしましては前田氏が、私の質問にきわめて懇切熱心なる所見の表明がありました。本日は私の平素尊敬してやみません、ことにかつて國鉄の次官として六十万の現業員の友人とも慕われて参り、きわめて現業の諸君からも敬慕の念を寄せられており、かつ國鉄の一切の問題についてきわめて経験と識見と抱負に富んでおりまする佐藤さんが、しきりとこの問題について答弁をされておりますので、この機会に私はあらためて本法案の簡題に関連した若干の私の意見質問を申し上げまして、先輩佐藤氏からの明快な御所見の表明を煩わしたい、かように思うわけであります。私は昨日の連合審査会におきまして、この法案の第一條に表示されておりまする地方鉄道の強化、こういう問題について運輸大臣並びに提案者の一人にお尋ねをいたしたのでありますが、大臣提案者も、私の納得の行くような説明がほとんどなくして終つたのであります。そのいきさつについては、むしろのれんに棒押し、打てどたたけど響きがなかつたという感じを強めた次第で、まことに残念であつたのであります。少くとも佐藤氏におかれましては、そういう私が失望するような説明はないと、断じて信頼をいたしますので、一層御明快な御説明が願いたいと思うのであります。國有鉄道の一環である戰時中買收した路線を、かりに民間に拂下げが実現されました場合、その拂い下げられました地方鉄道が強化されるという意味合いは、経験のある佐藤氏において、どういう内容を伴えば、地方鉄道というものが、國有であるよりは強化されたということになるのであるか、まずその点についてお伺いをいたしたいのであります。
  176. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 川島委員が、かつての経験に基いての該博なる知識の面から、詳細にわたつてのお尋ねがありましたので、いささか私の考え方を申し上げてみたいと思います。ただいま御指摘になりました「地方鉄道を強化して地方交通の利便を増進し」云々と書いてありますが、この表現の仕方は、先ほど共産党田中委員に対しましてもお答えをいたしましたごとく、抽象的、一般的な表現の方法であります。從いまして、これを具体的にお考えになりまして、たとえば南部鉄道がただいま國営である、この國営線が民営に移される、これがただちに地方鉄道を強化して地方交通の利便を増進する、かようにお読み願いますと、この第一條のねらつておりまする趣旨が、実は消えるように思うのであります。もちろん当該線区を民営に移します際におきましては、ここに表示しておりまするごとく、公共利益に合致する限り云々という強い條件があるのでありますし、同時にそのことが地方鉄道全体としての力を増して来るのだ、かような意味合いのものでありますので、この点についての誤解のないように願いたいと思うのであります。これは先ほど田中君に対する私の説明中にも、その点を明確にいたした次第でありますので、これより以上発言いたさなくても、おわかり願えるのではないかと思います。
  177. 川島金次

    川島委員 どうもまたしても、昨日に続いての失望を感じなければならないような話を承つて、まことに残念であります。今の佐藤氏のお話によると、きわめて言葉が抽象的であ、つて、上と下を合せたならば、まん中がわかるだろう、こういうサンドウィッチ的な理論のお話があつたようでありますが、そういう程度では私どもには納得が行かない。しからば続いてお尋ねいたしますが、今提案者説明によりますと、交通の利便を増進する。この交通の利便を増進するということは、どういう意味合いを含めているか、その点をひとつお尋ねいたしたいのであります。
  178. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 第一條で表現いたしておりまする地方交通の利便の増進も、これまた一般的、抽象的表現の方法で、ただ問題は、取入れられました当該路線を、民間に譲渡するやいなや、これらを決定する当該路線が明確になる場合に、この点が具体的にいろいろ論議されるものと存じております。
  179. 川島金次

    川島委員 どうもこれまたまことに抽象的で、私は頭が悪いせいかよくのみ込めないのでありますが、では具体的にお尋ねをいたします。交通の利便を増進するということは、社線になつてただちに旅客の輸送数量がふえること、あるいは貨物の輸送力がふえること、これが交通の利便を増進することの一つになるかどうか、そういうお考えをあなたは持たれているかどうか、お伺いしたいと思います。
  180. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 旅客数量の増加、貨物数量の増加は交満機関の成果の問題でありまして、交通利便の増強そのものという具体的なものではなくして、あるいは交通量がふえた、貨物数量がふえたとかいう問題でなくして、その内容を十分に検討いたさなければ、判断が実はつきかねるのではないか。御承知のごとく運輸数量の増加の原因には、いろいろあるのでありますが、他の原因から運輸数量が増加したような場合でありますれば、これは交通の利便を増進したとは言えない。数量がふえたから、増進したのだとは言えないと思います。場合によりましては、運輸数量は所期の目的通り増加いたさなくとも、施設、待遇その他におきまして、運輸の利便を増進している例がいくらもあるのではないかと考えます。
  181. 川島金次

    川島委員 と申しますと、逆に交通量が減つたり、貨物の輸送力が減少するような事態が起つても、これは一種のあなたの言う利便を増進した結果になるような場合もあると、私理解してもよろしゆうございますか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいま申し上げた通り、数量自身では、利便を増進したものとは言えないだろうということを申し上げたのであります。数量のふえます原因はいろいろあるのでございますから、それを十分検討しなければならないと思います。從つて数量が減つたら利便を増進したのか、こういうお尋ねでありますが、これまた増加の場合と同じような理由におきまして、数量の減少自身は、利便の減退ということをただちに意味するものでもない、私はかように考えております。
  183. 川島金次

    川島委員 どうもよくわかりません。そうするとさらに一歩を進めて、こういうお尋ねをいたしたい。およそ交通輸送機関のまず当面の、しかも最高唯一の目的は、私は輸送量の増大にあると思う。そういう点から考えて、國鉄の所有いたしております省線をば、地方の社線に委譲して、その交通量並びに輸送力が増強できるという考え方でなければ、おそらくこの法律意味の半分をなさないという考え方を私は持つのであります。佐藤さんは長年の経験から言いまして、國有鉄道をこの種の社線へ拂下げをいたした場合に、國有時代よりもきわめて交通の利便を増進し、かつ輸送力の著しき増強を実現したという経験をされたかどうか、それをまず伺いたい。
  184. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいま運輸数量がふえるということが、交通の利便を増進するということではないということを私申し上げましたが、もつと具体的の例をとつて申してみますならば、特殊な事情によつて住民が非常にふえている。そういう場合に、その線区の運輸数量はおそらくふえるでありましよう。その場合にすし詰めの殺人輸送をしている。こういう場合は公衆の交通利便は増進されたとは、絶対に言えないのであります。私が運輸数量だけをもつて交通の利便が増進したとは言いかねるというのは、この点にあるのであります。この点は過去においても御経験のあられる川島さんですから、今のように申し上げれば、よく御了承を願えるのではないかと存ずるのであります。
  185. 川島金次

    川島委員 その点は私も十分に存じております。ただ頭の文句に、正常なる運輸においてという言葉を欠いておりましたがために、佐藤さんにはその点誤解があつたのだと思います。われわれの今審議をいたしております立場から言いますれば、あくまでも正常なる輸送において、輸送力がさらに増強されたことにおいて、初めて私は利便が増進されるという形の一つになるのではないかと思います。そこで問題となりますのは、社線に移して、そういうこどが明白に可能であるという見通しを、佐藤さんは持たれているかどうか。これをあなたの経験上から御所見を聞いておきたいのであります。
  186. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいま御指摘のごとく、輸送力の増強そのものが、確かに地方交通の利便を増進する一つの條件、あるいは原因だと私も考えます。しからば民営の場合において、輸送力が増強されるかどうかというお話でありますが、民営においては、実は民営の特殊的な経営方法がしばしばとられているのは、各地方においてその例を見るところであります。一例をとつてみますれば、一つの單位列車が大きいことは、総輸送量を形づくる上から見て、一つのいいことには違いないのでありますが、また利用者の面から見ますと、回数の非常に多いというのも、地方の実情によつては、その方が便利を感ずるような場合もあるのであります。実は一概には言いかねるのであります。そこらにうまみが実はあるのであります。これらの点を具体的な例について、いろいろお考えを願つてはいかがかと思うのであります。
  187. 川島金次

    川島委員 私がこういうことを言うまでもなく、釈迦に説法なのでありますが、國鉄は昨年度一億二千万トンの輸送計画を立てた。本年度は経済九原則の実施にあたつて、必要な輸送力がこれに伴わなければ、日本経済の安定が期し得られない。そこで國鉄においては貨物の輸送力を、本年度は最低限度一億四千万トンの増送を計画されているわけであります。そういう大きな観点に立つて、この國鉄が所有しておりまする省線を、ことさらにこの機会において社線に移して——私は根本的なことを言つているのであります。そういう形が、はたして國鉄全体の國家目的、輸送力の増強の目的に沿い得る形になるかどうか、これが私は大きな問題であろうと思うのであります。その点について佐藤さんの御所見を伺いたいと思います。
  188. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまお話のありましたことく、本年の國有鉄道が負つております輸送上の責任は、まことに重大なのであります。この点がうまく計画通り完遂されれば、必ずや日本の経済再建にも、また日本の復興の本を強固にすることにも、大いに役立つことだと私は信ずるのであります。この件につきましては、運輸当局におきまして、また從業員におかれましても、その使命達成に万全を盡しておられるのでありまして、私どもも平素感謝しているところでありますが、この線区の買收そのものが、ただいまの重大使命達成に、ただちに直接に重大なる支障ありとは、実は私は考えてはおらないのであります。川島さんも御承知のごとく、鉄道國有鉄道地方鉄道との間に連絡運輸、連帶運輸等をやつているわけであります。また輸送計画等においても、牡線が貨車を持つておらないような会社に対しては、一体的運営の方式を今日採用しているのであります。從いましてそれらのことも勘案いたしましての、一億四千万トン輸送の遂行に実はなつているのであります。私はこの大使命達成上、これらの線区の拂下げが支障ありとは、実は考えておらないのであります。しかしながら、これらの重大なる使命達成上、直接に重大なる悪影響を及ぼすような線区であつたといたしますならば、必ず審議会においても、譲渡することを決定なさらないだろうと思うのであります。ただこの法案では、買收いたしました線区を拂い下げる対象として、一悪網をかぶせているという程度でありまして、ただちに今のような御質問まで発展をしなくても、三鷹足りるのではないかと考えております。
  189. 川島金次

    川島委員 これまた私が言うまでもない、釈迦に説法でありますが、この鉄道というものは、人体にたとえれば動脈にひとしいものである。その動脈が完全に循環することによつてのみ、初めて國が考えている輸送計画の目標が達成できるはずであります。しかるにその反対に、この動脈の一部においてでもこれに結滞、停滞するような箇所が起りますと、國鉄全体の今の現状から言いますればそれが各全般にわたるところの動脈の血液の循環に、大きな影響がないとは断じて言えないと私は思うのであります。そういうことから考えた場合に、せつかく國有鉄道として、しかも拂い下げんとする戰時中買收した路線の、物資の輸送の中で、食糧、石炭、あるいは鉄、あるいは石灰、セメントなどの輸魅力も相当にあるようにこの資料には出されております。なおまた佐々木君がしばしば言われておりまするこれ以外の路線についても、相当重要物資の開発及び輸送という大きな使命をになつて、戰争中から今日まで運行をされて來ておる路線がほとんどであろうと思う。そういう路線をこの機会に、総合的な一貫的な責任においてやる方が、むしろ輸送増強にとつてはきわめて好ましいことである、望ましいことであるにかかわらず、一箇所の決壊や停滞があれば、全体に影響がないとは言えないような事情のもとにあるこの鉄道路線の一部でも、ことさらに拂下げを計画するというその基本的な考え方が、日本の鉄道國有とすべきであるという建前に立つておる基本的な考え方と、矛盾するものではないかという私は強い考え方を持つておるのであります。佐藤さんはこの点について、先ほど田中君あるいは柄澤君等から質問のあつた場合にも、簡単に答弁されておることを私は聞いておるのでありますが、その点について、もつと詳しい、もつと具体的なところの考え方を、あらためて私はここでお聞きしておきたいと思うのであります。
  190. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 地方鉄道國有鉄道と、二つの経営になりました場合に、國有鉄道一本で経営するように、輸送の一体性が確保できるかどうか、という点のお尋ねだと思うのであります。私どもももちろん影響のあることを無視するものではありません。ある場合においては、いい影響を来す場合もあります。ある場合においては悪い影響を来す、かように実は考えておるのであります。いい影響を及ぼすと申しますのは、一線区内だけの貨物輸送などの面におきましてその会社が貨車を十分持つておりますならば、おそらく國有鉄道の一体的な運営よりも、貨物輸送の面では公衆の需要に慮ずることができるのではないかと思うのであります。しかし逆な場合において、線区の貨物数量をまかなうに不足の車両を持つておるような場合でありますれば、國有鉄道から貨車を借りることになりますので、いろいろ不都合も起るだろうと思います。ただ私がこの際申し上げたいことは、これらの影響が、先ほどお示しになりました一億四千万トン輸送という大使命遂行上の、致命的な支障なりやいなやということを、実は問題にすべきじやないかということなのであります。私は全然影響がないというようなことを考えるものではない。ある場合においては、いい影響があり、ある場合においては悪い影響があるだろう。またこれはひとり貨物だけの問題ではないのであります。旅客の面におきましても、同様のことが言えるだろうと思います。これらの点が地方的な実情に應じて、具体的に審議されることを私どもは望むのであります。從いましてただ一概に國有一本が最もよろしいのだ、こういうことで厖大な組織をもちましても、なかなか全部を十二分にまかないかねるということが言えるのではないかと思います。最後の点におきまして、あるいは私の説に全面的な御賛成はできかねるだろうとも思うのでありまするが、それらの点は、おそらく川島さんと私との立つております立場上の見解の相違、それが最後には残るのではないか、かように考えております。
  191. 稻田直道

    稻田委員長 川島君、時間ですから簡單に願います。
  192. 川島金次

    川島委員 時間を急がれておりますけれども、せつかく私が質問の順序を立てたものが狂つて参りまして、説明する側にも申訳ありません。從つてあまり質問者に心をせき立てるような御発言のないよう願います。  第二にお伺いしたいのでありますが、これは先ほど來しばしば同僚の佐々木君からも要求されておりますが、その要求に沿うことをせずして、この審議が進められておる。まことにわれわれも遺憾に考えておる次第であります。そこで私は資料をなくいたしましても、言葉の上でもよろしいと思いますが、戰時中買收いたしました路線のおもなるものについて、独立的な立場にその路線をした場合と、現状のままに置いた場合と、どのような営業状況になるか、そういうことについても提案者は綿密な御調査をされたと思うのでありますが、その御調査があれば、口頭でもよろしいのでありまして、参考のためにそれを聞かしていただきたいと思います。
  193. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 一應お答えいたします。二十二線全体について、そこまでの資料は整えておりません。いずれ審議会等におきまして、いろいろ審議をいただくことではないか。ことに價格に関する問題につきましては、どこまでも公正に取扱われる筋のものでありますので、私どもが今からとやかくいたしますことは、手も十分でありませんし、資料等もなかなか集めかねますから、それらは專門的なそれぞれの筋の者に譲るべきではないか、かように考えておるのでありましていずれにいたしましても、当該線区の拂下げという問題、いわゆる拂下げ申請者が出て参りますれば、これは何といたしましても、具体的に審議を進めて行かなければならないものだと思うのでありまして、その際におきまして十二分に檢討を受けることではないかと思うのであります。ただこれに一つつけ加えて申し上げておきますのは、一應この法案自身を皆様にお諮りをし、國会で御審議は願うが、その後の價格の決定なり、あるいは線区を買收すべきやいなやというような重大なる事項は、それを全部握つておる審議会の答申のみにまかして、運輸大臣の決定にゆだねておる。こういう点につきましては、いろいろの御意見もあるのではないか。先ほど来の御質問もそれらの点に関連をするものではないかと思うのでありますが、これらにつきましては、私どもといたしましても、なお考究の余地があるようにも実は考えておるような次第であります。この機会につけ加えて申し上げておきます。
  194. 川島金次

    川島委員 いろいろ質問したいことがあるのですが、なるべく集約してお尋ねいたします。今佐藤さんのお話ではよくわかりませんので、当局の方が来ておられますから、当局の方にこれをお尋ねしたい。この戰時中買收した路線で、ただいま佐藤さんにお尋ねいたしましたような趣旨でありますが、現状のままにおいて、どの程度赤字で、どの程度のものが黒字であるか。そういつた調査がされておるか。あるとすれば、口頭でよろしいから、それをお聞かせ願いたい。
  195. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 これが包括法、抽象法であつて、個々のことについては運輸審議会において具体的に檢討されることは、先ほど佐藤さんの答弁通りであります。そこで二十二線のうちで請願の非常に熾烈な、しかも清算会社として残つておる十線については当局の調査があります。その調査資料の八十二ページにございます。それを簡單に御説明いたしますと、省全体の二十二年度の予算における各線の收支の比較でありますが、その欄をごらんになると、一番下の省全線では收入一に対して支出が一・六五、すなわちやはり二十二年度は赤字であります。その平均に対して、平均以下のものは收支的に見ますと阪和線、あるいは平均の指数に近いものは省梅線、南部線等でありまして、その他は相当の赤字を出しております。本年度におきましてはおそらく運賃の値上げ、あるいは諸種の合理化をやりますために、これらの数字がずつとかわつて参るだろうと思いますが、今の状態では二十二年度の実情から見ますと、以上の通りでございます。
  196. 川島金次

    川島委員 二十二年度はあるいは私どももそのように想像できるのですが、國鉄の收支計算は、二十三年度にさらに運賃の値上げをしておる。從つて二十二年度のものでは標準にならないと私は思うのであります。二十三年度程度の表がありませんと、この最も熾烈な拂下げ請願線の收支状況を明確につかむことはできないと思う。そこで当局のお手元に二十三年度の資料がありますれば、口頭でけつこうでありますから、お示し願いたい。
  197. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 ただいま手元には二十三年度の資料はございませんが、大体物價及び人件費は高騰しております。運輸量もふえておりますから、二十二年度の資料の今の比較指数は、そう狂わないものと考えております。
  198. 川島金次

    川島委員 そうすると重ねてお伺いしますが、この最も熾烈な請願になつております路線が拂い下げられた場合に、この第一條目的である財政の改善に、感じでもよろしゆうございますが、目立つた改善になるような見通しを、当局は持つておりますかどうか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  199. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 将來この包括法に規定されるところに從いまして、運輸審議会で個々に検討いたしまして、地方交通の便益をはかり得るや、あるいは鉄道財政の改善に資するやいなや、これらをとくと研究いたしまして、鉄道財政にも悪影響のあるようなもの、地方交通を改善し得ないようなものは、拂い下げたくはないのであります。その点は具体的に議論しないとわからないと存ずるのであります。また値段の模様によりまして、あるいは從事員の引継ぎの状態によりまして、いろいろ國鉄に利害があるかと思いますが、具体的には審議会の審議の結果を見なければ、決定もできないと思うのであります。
  200. 稻田直道

    稻田委員長 もう時間ですから。
  201. 川島金次

    川島委員 もう一、二でやめます。
  202. 稻田直道

    稻田委員長 もう一回なら許します。一度にやつてください。
  203. 川島金次

    川島委員 そのかわり答弁の方も一度にゆつくり願います。それではこの問題はもつとやりたいのでずが、この程度でとどめます。  そこで最後に一号、二号、三号を一ぺんにやります。この表を見ますると、この路線を買收いたしました当時の價格は一億七千万円ほどになつております。この一億七千万円に対して、その後國鉄が投資をいたしましたものは四億何千万円、これを時價に見積ると三十七億と書いてありますが、この計算はきわめてあいまいなものだと考えるのですが、その計算の基礎はどこに求めておるかということをお尋ねいたします。それから私の計算から言えば、戰争中の物價実効指数並びに昭和二十四年度における物價指数、これを勘案いたしまして計算いたしますと、昭和十八年の物價指数に対して今日の物價実効指数はおよそ百二十倍であります。從つて当時一億七千万円の買收價格は、今日の指数に対比いたしますと、実に二百四億円とならなければならないにもかかわらず、三十七億円と算定いたしました基礎は、どこにあるかということであります。  それから第二にはこの法案によりますと、この路線を拂い下げる場合に、譲渡の價額は、地方鉄道法第三十一條から三千三條までの規定を準用して算出した金額を基準として公正妥当に定めると、第五條に明記されておりますが、この第三十一條から第三十二條までの規定を準用して算出いたしますれば、どのような價格になるか、この規定を基礎といたしまして算出したものが三十七億となるのか、それともこれによればどういう計算が出るかということであります。  第三点はこの請願熾烈な路線の中に政党に属する方がまたまた社長であり、有力な株主である方がおるやに承つておりますが、そういう方があるのかないのか、この三点だけを聞いております。
  204. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 まず第一点の價格の算定の基礎について御説明申し上げます。お手元に差上げました資料の八十四ページに記載しておりまする十線の價格は一億七千万円、それから二十二線の慣格につきましてはこの表の八十二、三ページのところにあつたと思いますが、その金額は三億二千五百万円であります。そこでこの買收價格に対してその後投下いたしました建設改良費用を含め、かつこれを二十二年の十一月現在の物價指数に直しまして計算いたしましたのが三十七億五千万円であります。これに対する希望價格は四億四千万円というわずかなものでありまして、非常な開きがあることは事実であります。それから時價によらないで、五分還元でやればどうかという問題でありますが、五分還元でやりますと、現在はどうかしりませんが、ほとんど省全体が赤字であります。先ほど説明のありましたように各線とも赤字でありますが、現在の運賃を改正したら、たとえば阪和線のごときは非常に黒字になるのではなかろうかという予想までもやつておりますが、かような線は別としましてまだ赤字の線が多いとすれば——過去三箇年の間の收支を計算しまして、それでなお赤字があれば、建設費ということになるのでありますが、この建設費なんかについて帳簿價額によるや、時値によるか、これむまた議論があるかと思います。今度の買收拂下げに対して、價格に対する政府当局意見といたしましては、この買收價格のみならず、それに改良建設の價格、それから時價、あるいは当該鉄道が将来どれだけの收益力があるか、こういつたようなあらゆる角度を参酌してきめるべきものだ、こういう意見を持つております。次に最後のこれらの請願者のうちに政党の人があるかどうかということにつきまして、私今まで調査はいたしておりませんから存じません。
  205. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 第三点につきましては、今まで請願陳情されたところには、政党の関係の方はあるだろうと私は思つております。
  206. 川島金次

    川島金次君 おそらく提案者におきましては、その方面にまで調査がされておろうと思うのであります。佐藤さんが御存じなければ前田さんでけつこうです。この二十二線の中には、有力な政党の議員もしくは政党所属の一般市民、そういう方が相当な数を占めておるという情報を私は聞いておる。前田さんその点お調べでしたらば、この機会にお知らせ願いたい。
  207. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 前田さんにお尋ねでありますが私もそういう方があるだろうと、かように申し上げておりますので、あえて前田さんにお尋ねにならなくとも、私の答弁で十分じやないかと思います。
  208. 川島金次

    川島金次君 だろうでなく、調査の結果、そういうことだろうということもおわかりなんでしようから、どうぞもし私の今の質問に対して、該当者がおるようでしたらば、この席上で具体的にお示しを願いたいと思うのであります。非常に参考になります。
  209. 前田郁

    前田(郁)委員 それでは私から重ねてお答えいたしますが、陳情請願には町村長であるとか、あるいは縣会とかいうような方面も多数あるのでありまして、これらの人の中には、各政党の重要な人たちもあります。そういう各党各派の人があろうと私は考えております。
  210. 川島金次

    川島金次君 そういう意味でないんです。この拂下げを請願しておるその該当の路線の要するに清算に属しておる会社があります。その会赦の批長、あるいは有力なる株主いわゆる重役、そういう方の中に、有力な現國会議員、あるいは政党所属の有力な市民、こういう岩があるやに承つておるのです。そういうことについて、御調査をなすつたかどうかということなんです。
  211. 佐伯宗義

    ○佐伯委員 ただいまの御質問ですが、私はその一つの富山地方鉄道の社長をいたしておりますから、最も関係が深い、これだけはお答え申し上げておきます。
  212. 川島金次

    川島金次君 そこで今佐伯君からお話がありましたが、まことに御正直にお話になりました。それと同じ立場にある人、ざつくばらんに、佐藤さん御存じだろうと思う。あなたと最も近しい人だから……。そこでこの席上で、一應参考のためにお知らせを願いたいと思うのです。
  213. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 今のは、多分わが民主自由党の麻生君を一應想定してお考えになつておるのかと思うのでありますが、ただいま私麻生君が産業セメント鉄道の方に関係があるかどうか、十分存じておらない。從つて私先ほど來からはつきりしたことを申し上げかねておるような次第であります。
  214. 川島金次

    川島金次君 ただいまやや明白になつたのですが、この路線の関係者の、しかも企業体の中に——將來拂下げを受けるであろう企業体の代表者には、われわれの最も親愛する佐々木君がおる。なお私の調査いたしまするところによると吉田総理の御親戚に当る麻生さんがおられる。これが何かの鉄道の社長さんであるということを聞いておる。そのほかにまだあるということも聞いておる。そういうことになりますとこの法案は純粋なものであろうと思います。またそういうふうに信じたいのであります。しかしこういうことが國民の間に流布されますと、何かこの法案の実体の中に、政治的な集権的な含みがあるのではないかという、誤解を生じやすいのではないかということを、私は國民の一人として心配をいたすものであります。そこで私は、そういうことをこの委員会においても明瞭にし、そうして國民の疑惑を一掃することも、あなた方にとつては必要ではないか、こういう意味合いで、私はむしろ皆様に御親切にこの質問をいたしておるのであります。どうぞ御了承願いたいと思うのであります。
  215. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 ただいまの川島君の御発言は、まことに重大なる意味を持つもののように思うのであります。私どもはこの法案提案いたしました際、一切の疑惑を受けないように、公正なる御審議を実は要求いたしておるのであります。しかるにかかわらず、何らかの関係があるかのごとき印象を與えるおそれのある発言をなされますことは、私まことに遺憾であります。ことになぜ私がかような点を申し上げるかと申しますのは、昨日も本会議の席上におきまして——これは川島君と関係のあられる方ではないのでありまするが、まことに事実に反するような発言すらあつたのであります。さらにそれらと一紙通ずるものがあるかのような印象を與えるおそれのある発言のありましたことを、私はまことに遺憾に思い、当委員会の神聖保持の観点に立ちましても、皆様方から十二分にこの点についての審議を賜わるようにお願いいたします。
  216. 稻田直道

    稻田委員長 柄澤君。
  217. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 関連して御質問申し上げますが、今非常に重要な問題がこの委員会に出されていると思うのでございます。でありますから、私どもはいたずらにこの審議をお急ぎにならずに、十分な検討をしていただき多いということを、そういう点からも申し上げておるのでございまして、これは決して臆測ではなく、現実にこういう問題が私どもに来ております。これは十分お調べ願いたいと思うのであります。実はこれは阪和線の拂下げにからみまして、古田覺三という立候補されたことのある方が、今後の選挙費用は一切持ちます。また日当五百円ずつ出す、旅費は別に與えるということで、拂下げ賛成する意味の、應援をするために活動してくれというようなことを言われた。それが國鉄の労組の天王寺支部に持ち込まれておるわけでございます。こういう事実がございますと、ますます國有鉄道拂下げにつきましては、國民の疑惑が深まるものでございまして、そうでなくても加賀山総局長官自身が、國鉄は伏魔殿だということを非常に言われていたのでございます。この際コーポレーシヨンに移しまして、國鉄の資産その他も拂下げや担保に置きますことなども、いろいろその中にもきめてあるのでございまして、こういう際に、特に急いでこういう法案が出されるということにつきましては、愼重審議しなければならないと思います。從いましてこの拂下審議会とか、運輸審議会の構成などについても、十分愼重なる御用意があつてしかるべきだと思います。國鉄自身の労働者諸君が、少い人員で、労働強化をやつて國鉄経営を守ろうと言つて來ておりますその眞意を、運輸審議会ではどのように取上げるか。拂下げをする、民営にすると言つでおる吉田内閣自身が任命する運輸審議会で、しかも絶対多数を持つておられるあなた方が、ココに賛否を問われましても、このことでは國民が決して納得しないのであります。でありますから、こうした問題が出ておるときには、十分その眞意を確かめていただきたい。古田覧三の問題につきまして事実であるかどうかというような点、また昨日の本会議の発言につきましても、まつたく相反するお言葉であるということではなく、十分これを御審議願いたいと思います。この点の御審議についではいかがでありましようか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 私は先ほど川島君の御意見に対しまして、私の所信の一端を申し上げておきました。私どもはこの法案を出しますについては、ただいまのような疑惑を受ける筋合いは一つもない。私どもは、これごそここに提案理由として申し上げておる通り、必ずや國鉄財政の改善の一助にもなり、一方地方公共利益を増進することになるだろう、かような信念のもとに、実はこの法案を出しておるのであります。先ほど来いろいろ柄澤君からも、投書その他をあげてお話があつたのでありますが、それらの事柄は、この提案者として申し上げるのはいかがかと思います。議員として考えてみますればすでに考査委員会も別途あるわけでありますので、それらの方に御提案願いまして、この委員会においては提案者のお願いといたしましては、この法案を、提案理由の線において御審議願いたい。本日は多数の傍聽者の方
  219. 稻田直道

    稻田委員長 関連ということですから、簡単に佐々木君に許します。
  220. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 ただいまこの法案をめぐりまして、種々の臆測が各方面にあるやに承つておりますことは、これはどなたも御承知のことだろうと思います。そういう点を十分了承なさつて川島委員からも御質問があつたことと思うのであります。私は提案者がそういう御意図があるとはむろん考えておりません、しかし石炭國管法の際におけるいろいろの不祥事もありまして、やはりこういう問題には、世の中が相当の疑惑を持つということは、ありがちなことであります。從つて、この法案をめぐつてそういううわさを私はしばしば聞いておりまして——むろんこの法案限つてそういうことがないことを信じますけれども、それにはただいま川島委員が御質問なさつたように、多少戰時中買收された会社に関係しおるいろいろの政界の有力な方々がありますと、とにかく世の中が誤解しがちであろうと思うのであります。その誤解を一掃することが、われわれ國会に課せられた任務であると思うのであります。そこで私はそういう意味から、この法案が総括的な委任立法の形で、戰時中買收した会社をどういう條件で拂い下げられるのか、國民が疑惑の目を持ちやすいような一切の点を、運輸審議会にまかせるということは、國会の名誉のために、不適当であると考えるのであります。かりに提案者の言うように、戦時中買い上げたものを救済の意味で拂い下げることがよいといたしましても、あるいはまたそれが赤字財政克服のためになる——そういうようなことはないのでございますけれども、かりにそういうような理由で拂い下げるといたしましても、これは当然國会が一々の路線に対しまして、十分法律案として審議決定すべきである。もし國会責任をもつてこれを拂い下げるようなことになりますれば、この運動の上に何か臭いものがあると考える世の中の誤解が、一掃されるのであります。従つて私はそういう意味において、少くとも平時立法として買い上げたところの路線というものは、当然かりに拂い下げるといたしましても、一線々々について、これは法律案として國会が決定すべきものである。かくしてこそ、初めて正しいところの拂下げができ、また國民がこれに対して了解できるものと考えるのであります。そうしないであくまで……。     〔「討論だ」と呼ぶ者あり〕
  221. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君、質問にして下さい。
  222. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 それでは質問をいたします。そこで私の質問は、ここにこういう法律案を撤回されて、あくまで一線々々必要あるものに対しては、立法的措置をもつて拂い下げることが至当と考えるが、提案者はこれに対してどうお考えでありますか、かくのごときりつぱな質問であります。
  223. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 佐々木委員の御意見、私どもまことに共鳴し得る点も実は多々あるのであります。実は私どもこの法案を出しました際にも、先ほど來御意見が出ておりますような疑惑を受けることは、一切ないようにいたしたいと思つておつた一人であります。從つてこの疑惑を受けることなく、公正に民営に移し得るりつぱな方法がありますならば、この法案修正することにつきましても別にやぶさかではないのであります。どこまでもかかる重大なる、意義を持つ拂い下げの実施でありますので、國会の協力を得まして、公正にこれを決定いたしたい、かように考えております。
  224. 稻田直道

    稻田委員長 この際委員長より一言政府にただしておくことがあります。本案に関連することかと思いますが、戰時中現地の住民が相当反対したにもかかわらず、強制的に撤收された鉄道の中において、今日までその撤收の跡始末のできてないものがあるやに承る。しかもなお強制撤收の跡始末の未解決のものの中で、この法案が出るということを聞きまして、これが復旧について政府並びにわれわれ委員会方面に盛んに陳情をして來ている向きもあるのであります。從つてここに一言御質問しておきますが戰時中買收した鉄道は、本法案によつて復活されるわけなのであるが他方、同様な事情のもとに撤收された鉄道に対し工、政府はいかなるお考えを持つておるか、これを聞いておきたいと思います。
  225. 小幡靖

    ○小幡政府委員 戰時中に強制撤去いたしましたものに対しましては、政府といたしましても、できるだけ早く復活してやりたいという考えのもとに、今まで施策を進めて参つております。それらの中ですでに施設撤去済みのものもありますが、これをそれぞれの使途に使つておりますものに対しては、何ともいたしかねるので、その地方の事情、資材状況を考えまして、最も必要度の高いものから、できるだけ援助を與えて、その復活をはかる方針で進んで参つております。少数ではありますが、すでにその復活を見たところもあります。それからまた、施設を回收してなかつたものもあるのでありまして、これに対しましては、すぐに撤去轉用の取消しをいたしまして、その常業を再開することのできるように、指導いたして参つております。たとえば叡山、六甲ケーブルのごときはその例であります。第三としまして、自分の会社でもつてみずから撤去をいたしたものもあるのであります。そうしてそれを他の有効なところに轉用したものもあるのであります。これらに対しましては、公益上の必要度と資材の面を考えまして、なるべく再開せしめるように指導して参つております。この面では、小田急の一部のごときは、すでに再開をいたしております。その他現在士でに復旧いたしましたものがおおむね一割程度、さらに復活申請中のものもありますし、また今その手続をしようと考えているものもあるのであります。いずれにいたしましても、なるべくすみやかに復活するように、できるだけの援助を與えることにいたしておりまするが、ただ今日、特に九原則の実施以来、資材面において格別の困難に直面いたしておりまする関係で、十分にその目的を達しておりませんが、政府といたしましては、できるだけ復活に向つて應援をいたしたい、かように考えております。
  226. 稻田直道

    稻田委員長 この際お諮りいたします。運輸委員以外の委員会委員の方で、この際質問をいたしたいという御希望の方があります。これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 前田郁

    前田(郁)委員 もはや各党派の方々から質問も出ましたし、何回聞いても同じことを繰返しておられますから、厳重に五分ということで許可していただきたいと思います。
  228. 稻田直道

    稻田委員長 それではさよういたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 稻田直道

    稻田委員長 それでは田中織之進君。
  230. 田中織之進

    田中織之進君 昨日の連合審査会における委員長との約束でありますので、私実は時間まで待つたのであります。私委員外質問ということになりますが、これをやつておかないと、この委員会質疑を終つても、表決するわけに行かないような関係になつているのであります。と申しますのは昨日の連合審査会で大藏大臣の出席を要求いたしまして、委員長も約束せられたのでありますが、午後の二時二十分に至るまで、大藏大臣が出て來なかつた。從つてわれわれは、大藏大臣に対する質疑を保留いたしまして、本日に至つたわけでありまして、私としては、実は質問を申し上げる前に、大藏大臣の出席を要求したいのです。これは記録にも残つておるのでありまして、大藏大臣に対する質疑を保留したまま、かりに質疑が一應終つたといたしましても、衆議院規則九十九條によりまして、連合審査会が終了しないということなり表決ができないことになりますが、そういうことはこの際むずかしく言おうとも思わないし、また大藏大臣に今から出て來いといつてもむりでありますから、それ以上のことは申し上げません。從つて一分や二分過ぎることは、お許し願つて一、二伺つておきます。  大藏大臣がおらないから、この際保留している部分を放棄いたしまして、それ以外の部分について、せつかく機会が與えられたので、御質問申し上げます。まず、先ほどからいろいろ御議論になつており、また昨日も御質問申し上げてまだ理解の行かない、第一條公共利益に合致する限り——先ほど松本さんからも御見解の表明がありまして、佐藤議員から同様な見解であるという御答弁があつたのでありますが、どうも私まだ理解ができませんので、ひとつ具体的な事例で、こういう場合にはどうなるかということを御質問申し上げたいと思います。それは、この法律が制定されましたあかつきには、当然拂下げの対象になつて、最も熾烈な運動の展開されておりまする阪和線についてであります。これは御承知通り、和歌山と大阪を結ぶ最短距離幹線でございます。まだ紀伊半島を縦断する紀勢丙線と、紀勢東線とは連結されないのであります。われわれはこれが迎結されましたあかつきにおきましては、紀伊半島を縦断いたしまして、東海道の幹線に通ずる線路として、この阪和線が國鉄によつて一元的に経営されることを、和歌山縣民の大多数とともに念願しておるのであります。和歌山縣は御承知通り、耕地面積は少く山林が多いので、この鉄道の感染の輸送は、加工産業その他のことで、縣民を養つてくという重大な経済的な利益を持つているのであります。これがかりに前の買收線の所有者であります南海鉄道に抑い下げられるごとになりましても、地方鉄道の輸送力増強という面におけるプラスの面は、われわれも率直に認めます。また経営の面において、改善せられる面もなきにしもあらずということは十分認めますけれども、前段に申し上げましたような、和歌山縣の発展という大きな見地に立つと、最大のものはやはり公共利益であると思うのであります。從いまして、いろいろいきさつもございますけれども、そうした場合において、公共利益がまず第一義であるということを考えておるのでありますが、提案者におきましても、そのようにお考えになつておられるかどうか、公共利益の制定基準に関する問題でありますが、その点ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  231. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 第一條公共利益の一句の説明のために、問題の阪和練を取上げられまして、和歌山地方交通の観点から、本線を民間に移すことは、公共利益に合致するやいなやというお尋ねがただいまあつたのでありまするが、提案者といたしましては、かような点まで深入りすることは、なすべからざることではないかと実は考えております。私ども公共利益從つて阪和線拂下げの問題は別個といたしまして、他の観点から公共利益説明をいたしてみたいと思うのでありますが、私が昨日來しばしば申したように、公共利益はきわめて一地方に限定してのみ、これを決定すべきものではない。地方的な利益も、公共総体の判断をいたします場合の、りつぱな資料になることは見のがせない事実でございまするが、私どもは大局的な観点に立ちまして、公共の利金というものを決定すべきであるということを、実は昨日來数回重ねて申し上げておるのであります。さようなことではわかりかねるとお話になるかと思いまするが、あらゆる條件、あらゆる場合を勘案いたしまして決定いたさなければならないものでありまして、その一つだけをもつてこれを決定することは、不穏当であるということを私申し上げるのでありまし、その一つだけは当らないのだ、かように申すのではないのでありますから、この点誤解のないように願いたいと思います。
  232. 田中織之進

    田中織之進君 その点はきわめて重大な問題でありまして、この点が、先ほど同僚佐々木委員からの最後に質問申し上げた点に、私も落ちついて行くのでありまして、この公共利益の判定が、ただ軍に審議会によつて行われるということは、私は問題だと思う。それは当然全國民公共の福祉、利益代表するところの國会の判定にまつべきである、かようにわれわれは考えるのであります。そういう意味において審議会ができまして、具体的に各般の調査、準備をせられることは、私はそうした機関がかりに拂下げを行う、讓渡をやることを承認いたしまするならば、必要なことと思うのであります。民自党の歩調も必ずしも一致していないようにも、われわれは聞いておりまするけれども、まず多数で押し切られるという前提のもとにお伺いしたい。この法律に基いて具体的に譲渡をする鉄道につきましては、法律に基いてその譲渡を決定する。法律ということがむずかしい場合には、必ずその審議会において決定して、なお政府責任において譲渡を断行する以前に、少くとも國会の承認を得ることを條件にいたしますれば、私が前段に御質問申し上げた公共利益云々に関する判定につきましても、私は眞に公正な判断が下される、かように考えるのでありまするが、提案表においてはそうした点について、一應現在の原案をさらによりよきものに、われわれの立場から言えば修正の案ということになるわけでありまするが、そういうようなお考えを持つておられるかどうか、お伺いしたい。
  233. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 先ほど佐々木君のお尋ねに対してお答えいたしましたごとく、ただいま御指摘々なりましたような名案がありますることにつきましては、私ども原案をあえて固執するものでないことは、先ほど佐々木君にお答えした通りであります。
  234. 田中織之進

    田中織之進君 これは小さい問題でありまするが、第二條に譲渡の申請権者が規定されております。この申請権者の順位は一、二、三に証拠つてきまつておるものかどうか。それから場合によれば、申請権者の競合する場合も私は出て来ると思う。現に私が例をとつた阪和線の場合におきましては、これは園が買收したときは南海鉄道でございまするが、それ以前に阪和電鉄というものもございまして、現に拂下げ運動をしておる面におきましても、それ以外の関係のものも現われておるように、われわれ承知しておりまするので、順位並びに競合した場合の処置について、何か予定せられておるかどうかという点を、最後にお伺いしたい。
  235. 佐藤榮作

    佐藤榮作君 第二條に列記してある会社と申しますか、その間には別に順位はないのであります。この点は重大なる点だと思いますのでお尋ねにお答えをいたす次第でありまして、一、二、三と書いてありまするが、この間には別に順位をきめたものではないのであります。昨日も共産党の田中君からお尋ねがありましたが、この抑い下げを要望されるものは、必ずしも前所有者ばかりにも限らないと思えるのでありまして、そういたしますれば競合する場合ももちろん起ろうかと思います。競合した場合に、いずれのものにこれを拂い下げるか、ここにも適正な、公正な判断を要求しなければならないだろう、かように考えております。
  236. 前田郁

    前田(郁)委員 本案に対する質疑は各党各派から出まして、田中さんは今日午後早くからおいでになりまして、せつかくおいでになつたので、私は五分と言いましたが、ちようど十四分になります。ただいま田中さんが申されたこと、なお各委員から申されたことも相当しんしやくして、あとで修正案をわが党の高橋君から出される予定になつておりますから、質疑はこの程度で打切つていただきたいという動議を提出いたします。
  237. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの前田君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者 あり〕
  238. 稻田直道

    稻田委員長 異議ありと申しますから、採決いたします。  前田君の動議に賛成の方の御起立を求めます。     〔賛成者起立
  239. 稻田直道

    稻田委員長 多数であります。よつて前田君の動議の通り決しました。  先ほど本案に対する修正案が、高橋君より委員長の手元まで拠出いたされたのであります。よつてこの機会にその趣旨説明を求めます。高橋君。
  240. 高橋定一

    高橋(定)委員 戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案の一部修正案につきまして、その要旨を御説明申し上げます。まず修正案を読み上げます    戰時中政府買收した鉄道讓渡に関する法律案に対する修正案   戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案の一部を次のように修正する。   第一條中「関係のある会社」を「関係のある会社等」に改める。   第二條に第四号として次の一号を加える。   四 その他の会社であつて鉄道事業経営の能力があり、且つ、その経理的基礎が確実なもの   第四條第二項中「國有鉄道讓渡審査会」を「運輸審議会」に改め、同條に次の一項を加える。  4 運輸大臣は、当該鉄道を譲渡すべきこと及び第二項第二号から第八号までに掲げる事項の決定をするについては両議院の同意を得なければならない。   第五條を次のように改める。  (譲渡の價額)  第五條鉄道の譲渡の價額は、当該鉄道買收價顧、買收後当該鉄道に関し支出された建毅改良費、時價及び当該鉄道の企業收益力を参しやくして、公正妥当に定めるものとする。   八條第二項中「準用する。」を「準用することができる。」に改める。  「第三章 國有鉄道譲渡審査会」及び第九條から第十二條までを削る。  第十三條の見出しを「(説明の聽取等)」に改め、同條中「審査会」を「運輸審議会」に改め、第一項及び第二項を削り、第三項を第一項とし、第四項を第二項とし同條を第九條とする。   第十四條を削る。   第十五條中「委員は、」を「運輸審議会の委員は、」に改め、同條を第十條とする。  第十六條を削る。  「第四章」を「第三章」に改める。  第十七條を第十一條とし、第十八條を第十二條とする。  第十九條第一項中「第十七條」を「第十一條」に改め、伺條を第十三條とする。  「第五章」を「第四章」に改める。   第二十條中「地方鉄道法」の下に「(大正八年法律第五十二号)」を加え、同條を第十四條とし、以下第二十一條まで六條ずつ繰り上げる。   第二十二條及び第二十三條を削り、第二十四條を第十六條とする。  附則第一項中「公布の日」を「昭和二十四年六月一日」に改め、附則第二項を削る。修正の内容はただいま申し上げた通りであります。  修正の第一点は、第一條並びに第二條の修正でありまして、拂下げ申請権者の範囲を拡張したことであります。すなわち原案によれば、第二條におきまして、申請権者を限定的に列挙いたしましたが、経済的にも、また技術的にも、鉄道事業を経営する能力があるものに対しては、廣くその資格を認めることが、譲渡をより有利に行うことができ、かつその結果もより公正妥当なものとなるであろうと考えました次第であります。  修正の第二点は、第四條に一項を加えまして、運輸大臣鉄道の譲渡を決定するときは、両議院の同意を得ることを必要とした点であります。かかる重要な國の財産の処分は、一行政機関の処置に一任することなく、国民の代表としての國会が、さらに国民の利益のために十分に審議して後行されるべきであると考えた次第であります。  次に第三点は、譲渡の價額の算定基準であります。原案によりますと、單に地方鉄道法に規定されておりまする方法によつて算定されました金額を基準とするとのみ、規定されておりまして、提案者の御説明のごとく、拂下げ該当路線の收支が欠損とななつております場合におきましては、不当に瞬く、帳簿價額に近い價格で拂い下げられるのではないかとの感を抱かせるのであります。しかるに提案理由を拝見いたしますと、提案者の御趣旨は、今日までの経済事情の変動をも勘案して、公正妥当に決定するという点にあると思われますので、本條はこれを明確にし、運輸審議会の審議にあたつて、誤りなきを期すべきであると考えた次第であります。  第四点は、第八條第二項の國有財産法第三十一條の準用に関する規定でありますが、原案にては、同條但書の代金延納の規定が、常に準用される趣旨ではないかとの誤解を生じまするので、むしろ原則としては準用しないのであつて、ただ特別の例外として、準用することができるのであるという趣旨において、かかる修正を行おうとする次第であります。  第五点は、原案に規定する国有鉄道譲渡審査会に関する部分を運輸審議会に改めた点であります。  この法律案の附則第二項によりますと、運輸省設置法が制定され、それにより運輸省に適当な審議会が設けられたときば、この法律の規定による國有鉄道譲渡審査会の権限は、その審議会に移す旨を規定しておりますが、運輸省設置法案はすでに本院を通過し、六月一日よりは、運輸審議会が設置されることが確実となつて参りました今日におきましては、むしろこの法律案の一部をこの際修正いたしまして、この法律発足の当初より、運輸審議会をして、この法律に基く権限を行わせることに確定いたしておきたいという趣旨であります。  第六点は、第二十二條の税の減免規定の削除であります。この点は譲り受け会社の基礎を堅実にし、鉄道運営能力の向上、ひいては國民の利便の増進を期するために考慮されたものと思われますが、この際はかかる減免税措置はとらざるを可とすると信じて、この規定は削除したいと考える次第であります。  なお第二十三條は、当初考えられておりましたところの、國から直接拂い下げる場合の会計区分の規定と思われますのでこれは削除し、施行期日も日本国有鉄道法の施行日と一致させるため、六月一日に改めた次第であります。
  241. 稻田直道

    稻田委員長 これよりただいまの修正案及び原案を一括して討論に付します。討論の通告があります。これを許します。佐々木更三君。
  242. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 私は、ただいま提案されました修正案、並びに修正案を除く他の一切の原案に対しまして、日本社会党代表して絶対反対の意を表する次第であります。  その理由は、第一点といたしまして、この法律は、要するに鉄道國有法の精神とまつたく相反するものがあるからでございます。提案考は、この法案趣旨並びに目的を「公共利益に合致する限り、旧所有会社又はこれと密接な関係のある会社に譲渡させ、もつて地方鉄道を強化して地方交通の利便を増進し、あわせて日本國有鉄道の財政の改善を図ることを目的とする。」「この法律のいかなる規定も、鉄道國有法一條趣旨を変更するものと解釈してはならない。」と述べているのでありますけれども、先ほどから私が質問を申し上げて明らかにされたように、この鉄道をかりに拂い下げましても、それによつて得るところの收入は、今日の國家財政から見まするならば、きわめて微々たるものでございます。從つて、この法律のうたつておるように、これが日本の財政難を解決する承要な部分をなすとか、あるいはまた、これによつて日本國有鉄道の運輸を強化し、交通の利便を増進し、もしくは日本國有鉄道の財政の改善をはかることとは、まつたく相反する結果になることはいうまでもありません。從つて公共利益に合致するとは、この法案によりまして、戰時中買い上げたる鉄道地方鉄道に還元することによつて、国家、国民大象が利金を得ることが前提でなければならないのでありますが、提案者説明、並びに管轄省でありまするところの運輸省の当事者の等外を聞きましても、これによつて運賃が安くなるとか、あるいはまた輸送量が君大するとかいうことに対しましては、積極的に何の説明もございません。これによつて國民大衆利益を得るという資料は、出て参らないのであります。出て参らないどころか、私が要求をいたしました資料さえも提出を拒んで——むしろ私は拒んでという言葉を用いたいと思うのでありますが、これらの資料提出を拒んで、われわれはこの法案の実施が、公共利益を増進するということを曲解するわけではございませんけれども、むしろこれをきらつておるとさえ、とれなくはない節も多々あるのであります。もしも提案者におきまして、眞にこの法案公共利益になるという積極的な確信と良心があつたならば、進んでこれを証明するに足る十分の資料提出して、十分の論議をすることが当然であります。それを資料提出を拒んで、しかも提案者みずから、具体的に公共利益を増進するのであるという積極的な裏づけをしない限り、この法案趣旨に盛られておりまする公共利益に合致するということは空文である。われわれはこれを絶対に信用することさえできないのであります。ことに旧所有会社、またはこれと密接なる関係のある会社に譲渡させるということは、これは明らかに縁故拂い下げでありまして、しかもその縁故拂い下げの結果としましては、先ほどわが党の川島委員からも指摘しましたように、今日國民大衆はこの縁故拂下げに対しまして、多くの疑惑を持つておるのであります。先ほどすでに名前が明示されましたように、この法律を可決すると、この國会の中においてさえも、関係者には、吉田総理大臣の女婿である麻生太賀一君を初めとする何人かの会励の社長があるということは、たといこの法律が善意に基くものであるといたしましても、國民大衆に対しまして十分の疑惑を與える條件を備えておるものでございまして、かかる法案を、この國会において國民の選良としての私たちが通過させることは、國民大衆の前に、日本の政治を明朗化するという点で、まことに不適当なものがあると思うのでございます。  特に国民のかかる疑惑を深めるものといたしましては、先般来指摘いたしておりますように、この法律はあまりにも総括的な委任立法であるからであります。ただいま修正案の拠案考からお話のあつたように、これを緩和する御意図のもとになされたと思うのございますが、運輸審議会がこの拂下げを決定いたしましても、これに効力を持たせるためには、國会の同意を得ることを條件としておるようでございます。しかしこれは何にもなりません。運輸審議会においてきまつて來ましたものを、國会においてその内容に十分の審議をせずに、單に同意するかどうかを決定するものである以上、ただちに国民のかかる疑惑を一掃するに足る信用をもつて國会が決定したごとにはならないと私は思うのでございます。幾多の想像をいたしまするならば、これは一種の多くの利権を生む危險性が十分にある。從つてこういうような総括立法によつて拂下げ路線の選定、價額、いろいろのものを、しかもその宜應の中にあるところの運輸審議会というものに総括的に委任するところに、その危險性が多く感ぜられるもの思うのでございます。われわれは國会の権威のために、従來の官僚政治を打破して、眞の民主政治を確立しなければなりません。眞の民主政治は、國会みずから可能の限りにおいて、われわれが政治の実体を処理することでなければならない。われわれはかかる権能を、國家の最高権威たる國会として持つおるのであります。一つ一つの路線につきまして、当然これは國会の権威と責任において、これを審議しなければ、かかる國民の疑惑というものは一掃できるものではございません。こういう総括委任を運輸審議会にまかせるところに、多くのうわさを国民大衆の中に醸成させ、提案者にとつては、まことに御迷惑とは存じまするが、痛くない腹を探らせる結果になろうと思うのでございます。むろんこの問題においてはそういうことはございませんが、かつて事実として、石炭国家管理法案議会において提案されました。これを阻止するために——今日審理中でございまして、最終の決定はまだでございますけれども、ともかく一つの疑獄事件としてああいう事件が、国民の前に公然と醜態をさらしておりまするところの現状からいたしまするならば、國民がこのあまりにも総括的な委任立法であるこの法律の施行に伴うところの、各路線の譲渡に対しまして、疑いを持つということは、あながち理由のないことではなかろうと私は思うのであります。從つて私は、こういうようなことは、少くともこの法律が規定しておりまするところの趣旨には、この法律の内容は相反するものであろう、こういうふうに考えるものであります。  地方鉄道を強化して、地方交通の利便を増進すると申しまするけれども、今月すでに買收したる鉄道は、おのおの國鉄の有機的な部分としての成長を遂げておるのであります。買收したる鉄道は、もはや地方鉄道ではございません。形式の上で地方鉄道でないばかりでなしに、その後脚鉄の一環として、有機的な一部分としての機能を果しておるのでありまして、ここに運輸当局が提示いたしましたところの、この資料に基きましても、連絡輸送の点におきましては、戰時中でなしに、その以前からやつておりまするところの國有鉄道のパーセンテージに、断じて釣るものではないのであります。もはやごの鉄道は、地方鉄道たるところの性格を脱皮清算いたしまして、國有鉄道の有機的な一環であり、これをもぎとることによつて、いわゆる國鉄の機能というものを、たとい部分的でも麻痺させることは、いうまでもないことであります。この法律がねらうところの趣旨目的とはまつたく相反するのであります。ことにまた、あわせて日本國有鉄道の財政の改善をはかることを目的とすると言つておりますが、今日提示された資料に基きましても、あるいはまた提案者説明によりましても、この買收されたる鉄道を拂い下げることによつて、決して日本國有鉄道の財政が、つまり赤字が克服されるという何らの証明もなされておりません。阪和鉄道のごときは、この買收されたる地方鉄道以外に、省線全体の営業と比較いたしましても、決して劣りません。むしろ今日黒字になつておるとさえ曹えるので吃ります。はるかに他の省線の業績のパーセンテージを上まわつておる、こういう鉄道を抑い下げて、國有鉄道の財政の解決になるということは、これは理由がありません。  從つてこの法案提出は、他に意図がありまするので、私たちをしてこれを述べさしてもらうならば、ここに盛つてあるところの理由というものは、單にこの法律の体裁を飾るもの、世間に対するところの申訳であつて、その法律の根本は、日本の現在の輸送機関の統一性、計画性、一体性を、この法律によつて漸次解体する橋頭堡にしようとする意図があるものと、私どもは考えないわけには参りません。すなわち民主自由党の唱えるところの自由主義経済の一橋頭堡として、あらゆる國有鉄道国有鉄道ばかりでは、ございません。あらゆる一切の国有を民営に移そうとする、民主自由党の自由主義経済のイデオロギーそのものによつて、これは武装されておるものといわなければならないのであります。このことにつきましては、昨日の私の質問に対しまして、提案者の一人でありまするところの前田委員が、率直に答えております。これは民自党が前の選挙、その前の選挙において、國民に対して國有鉄道を民間に拂い下けるという公約の実行であり、民主自由党が持つておるところの、国有鉄道を漸次解体して、これを民営に拂い下げるところの一端として、この法律提案しておるのであるから、今ただちに、この國鉄全体を民営に移すということはできないけれども、漸次國有鉄道民営に移す考えによつて、この法律案提案したのだということを、言つておるのであります。すなわち民主自由党は、幾多の公約を選挙でいたしましたけれども民主自由党諸君もこれを承認することと思うのでありますが、民主自由党の公約の大部分は、今日実行不可能なる状態にあるのであります。從つてこの大部分の公約が不履行であると思う。民主自由党諸君といたしましては、どうしてもこれは公党の両目もございましようし、その公約の一端でもこれを実行して、国民に言い訳をする必要もあるでありましよう。前田委員は、そういう目的でこの法案を出したのだと言つております。もし私がこれを環に曲げているのだとおつしやるならば、私はここに速記録を反訳させて持つておりますので、御参考までに申し上げてもよろしいのでありますが、時間の関係がありますので、これらのものはこの際私は省きたいと思うのであります。  そういうぐあいに、今日本は足らない資源のもとで、いかにこれを有効に利用するかということを考えなければならない。特に鉄道におきましては、あらゆるものの社会化、統一化、計画化というものがなされなければならないことは、いうまでもございません。特に敗戰國日本のような状態におきまして、この必要は絶対であります。今日戰勝各國の鉄道を見ましても、アメリカとカナダがコーポレーシヨンであるだけであう上して、イギリスを初めとする他の戰勝國全体が、國有である。こういうような戰勝國であつてさえも、かかる公益に関係のあるところの機関というものは、これはいわゆる社会化の方向をとる國有制度を前提としなければならないのに、敗戰の結果、資材の足りない、輸送機関の荒れはてたる日本におきまして、こういうような時代と逆行し、日本の現状を無視するような、乱暴きわまる法案が、民主自由党の公約実行のために出される。つまり國民が自由党の公約実行の犠牲になるということは、わが日本社会党は絶対に反対をしなければなりません。  しかもこの法案は、過日衆私が申し述べました通り、これははなはだしく炎本家擁護の法律でございまして、代價支拂いの方法において、特にその点が顕著でございます。提案者は、この法案は国家財政の解決の一助で、赤字財政克服のためであると言いながら、その支拂い方法におきましては、國有財産法第三十一條を、適用いたしまして、これを猶予する方法を本文の中に盛つておるばかりでなしに、免税の規定さえもするということは、いかにもこの法律の掲げるところの、美辞麗句で埋められておる趣旨目的に相反するものである。提案者は眞意を祕匿いたしまて、ほんとうの氣持というものを隠しておる。表面だけはきれいな言葉でこの目的を掲げて、その眞意は民主自由党のいわゆるイデオロギーであるところの、民有民営の思想というものを、特に公約の実行を、かかる勤労國民大衆の犠牲において実行しようとすることにおいて、私はまことにその罪大きいものだと言わなければなりません。  これに対しまして修正案は、國有財産法第三十條を適用することができる、こういうふうに大分緩和して参りましたけれども、するものとすと言いましても、あるいはまた、することができると言いましても、大した相違がございません。適用することができるという法文がある以上は、今日の金融梗塞の状態におきまして、どうしてかかる多額の金額を、一時に納付するような方法があるのでありましようか。おそらくあらゆろ拂下げ希望岩は、必ずやその代價の支抑いを、かかる國有財産法第三十一條の適期ができるという法文にすがり、分割納入、年賦納入、あるいは支拂い猶予等を請求して来ることは明らかであります。かか乃具体的方法を決定するものは、官僚であるところの運輸当局と、その長官であるところの運輸大臣、しかもこれらの者が、いわゆる官僚を主軸とする人々が、運輸審議会の決議というものをたてにとつて、こういうような、まるでこの法律趣旨目的と相反するような決定をして、形式的に議会の承諾を求めて來ることは、これは火を見るよりも明らかであります。從つてかかる法律がうたつていますところの目的と、法律が生む結果とが重大に相違するようなこういう法律は、國民を欺瞞する法律といわなければなりません。いかなる観点から見ましても、わが日本社会党は、かかる資本家擁護の法律、勤労国民大衆を犠牲にする法律に対しましては、絶対に反対するものであります。私はもし眞にこの委員会が、國民利益代表し、興に民主主義政治の理想を達成しようとしますならば、起案者はかかる法律案を撤回して、もし必要であるならば、個々の鉄道に対しまして、個々の立法的措置によつて、公然と白日のもとに、この拂下げ國民の何人も納得するような方法において——たとい石炭国家管理法反対運動のああいう忌まわしい疑獄事件がつきまとうとも——この拂下げの問題にはそういうものはつきまとわない、国家の責任において、全力を盡してこれを審査し、決定したというふうにして國民を納得せしめることが、われわれ國会議員に課されたる使命であると私は考える次第であります。從つて私はそういう意味におきまして、わが日本社会党は、この提出されましたところの原案はもとより、修正案全体に対して、絶対に反対するものであります、
  243. 稻田直道

    稻田委員長 次に天野公義君。
  244. 天野公義

    ○天野(公)委員 私は民主自由党代表いたしまして今提案されております戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案修正案並びに修正部分を除いた本案に、賛成意見を表明するものであります。この法律案は終戰以来、かねてから懸案のものでありまして、ことに前内閣提案いたしたというような事情もある問題なのでございます。今日ここに再度法律案提案された二とは、まことに時宜を得たものであると考えるのであります。戰争以来の懸案でもありますし、現在の国鉄の状況からいたしまして、少し参でもこの國鉄赤字を埋めて、國鉄の均衡予算を保つて行く上におきまして、この法案によりまして、赤字が克服されるということは、まことに私どもにとりまして、また國民全体にとりまして喜ぶべき問題であると思うのであります。この法律案趣旨に上れば地方鉄道が強化し、また地方交通の利便をはかられ、公共の福利が増進せられるであろうということは、火を見るよりも明らかなことであります。しかしながら本案におきましては、細部において不備な点が多々ありまして、社会党や共産党の諸君のごとく、やぶにらみや、色めがねでものを見る方々にとりましては、いろいろな問題が提出され、論議されたのでありますが、そのような色めがねでものを見られるような点というものも、先ほど高橋議員より提出されました修正案によつて、まつたく一掃されまして、ここに本法律案は面目を一新いたしましてまことにりつばな法律案となつたのであります。特にこの修正案の中におきまして、関係のある会社というものに非常に重点を置いておつたのでございますが、これを関係のある会社等と改め、まだ関係会社以外のものでも、経理的基礎の確実なものは、この事業をやることができるといたしまして、その範囲を非常に廣げたということは、まことにもつて疑惑の目をもつて見る方々にとつて、その見方を一掃するものであるし、また國民の中におきましても、このような地方的な事業に参画して、大いにこの地方の利便公共の福利増進に資さんとする一般大衆及び企業家に道を開いたということは、まことに時宜を得たものであると考えるのであります。またこの拂い下げというものを決定する決定権というものは、運輸大臣にあるのでございますが、これは両議院の同意を得なければならないという実情によりまして、運輸大臣は重大なる制限を受け、われわれ國会の承認を受けなければ、この拂下げをなすことができないという重大なる制限を加えられたのであります。  さらに鉄道の譲渡の價額におきましても、この修正案にあるがごとく、適正妥当なる評価價格というものが、これによつて保たれるということになりまして、不当なる値段によつてこれを拂い下げるということは、ここにおいてなくなつたのであります。この点、私どもこの修正案に対して賛意を表するものなのであります。さらにまたこの拂い下げを受けた地方鉄道に対して、保護規定というものが第二十二條にあつたのでございますが、これが削除されたということも、まことに喜ぶべき修正であると考えるのであります。かく考えまするときに、この法律案によつて買收というものが実際においてなされるときは社会党諸君はこの法律案は大幅な委任立法と言われるのでございますが、この修正案によれば、最終の決定権は國会にある。最後は國会において調査し、また調査した上、賣却するか、しないかという決定権も、この國会に移つて来ておるといつても過言ではない状況であり、また運輸審議会はただ調査させる程度のものとなるのでありまして、これはまつたく委任立法ではないのであります。これにおきまして、この法律案の本旨を達成する上におきまして、この修正案というものは、まことに時宜に適したものであると私ども考えまして、この修正案並びにこの修正部分を除いた原案に対して賛成の意を表明する次第であります。(拍手)
  245. 稻田直道

  246. 田中堯平

    田中(堯)委員 日本共産党を代表しまして本案並びにその修正案に対して反対意見を表明します。もう時間もおそいし、皆さんお疲れのようでございますから、ごくかいつまんで簡単に申し述べます。  本案並びにその提案理由を見ますと、結局戰争中買收した鉄道であつて戰争目的途行のためであつた、それでその目的が完成された今日、もはやこれを國有にしておく必要がなくなつたから、それで拂い下げなければならぬというのが第一点でありまするが、これはわれわれはどうも納得が行かないのであります。と申しますのは、一体日本の国有鉄道というのは経済的な観念からだけでなしに、多分に戰争目的を含めてつくられて来たと言つても過言ではない。平時買收され、あるいは鉄道省、両家みずからが直営建設をした鉄道におきましても、ちやんとこの含みがあつたわけでありまして、純経済的と、戰争目的遂行上というようなことを区別することは、これは不可能であるのであります。戰時中十八年、十九年に買收したから、これは戰争目的途行である、もはやそれが終つたから目的は完遂をした、これは拂い下げるべきであるというしやくし定規な形式論というものは、まことになつていないのであります。今日これら十線について見ましても、一体いずれが経済的、ことに地方の開発、ひいては日本の国家の再建というものに、非常に重大なる関連を持つていない線であるかということは言えない。ほとんどみな重大なる関連を持つておるのであります。しからばこういうものを限つて、他の買收線とは別に、これを戰争目的が完了したから、それで拂い下げるという意味は、全然無意味なものであることを第一点として申し上げます。  第二点は、本案の第一條に本法の目的が列挙してあります。公共利益に合致するようにとか、あるいは地方鉄道を強化するためとか、あるいは財政の改善のためにというような目的が掲げられてありますが、文字から見れば一向これは反対すべき理由はないのであります。ところがこの二條以後に盛られておる拂下げをするということによつて、第一條に掲げられておるこの美しき目的が、完成されるか、遂行されるかというと、まさしく正反対と言わざるを得ないのであります。公共利益ということにつきましても、いろいろお尋ねをしたが、遂に納得の行くような十分な御説明はない。地方鉄道強化という点につきましても、私及び他の発言者から追究してありまするが、一向に納得の行く返事がない。ことに財政の問題につきましてはまつたくりくつにならない。わずかばかりのものを獲得して、この厖大予算の穴埋めにする、財政の健全化をはかるという意味においては、これはすずめの涙、大風に灰をまいたようなものであつて、何の効果もあがるものじやない。それなのにこれをやる。また財政の健全化のためということであるならば、あるいはこの二十二線のうちで、中には收支償わない、経常費をまかなうことわずかに二割という收益しか上らない、まつたく犬も食わないような路線がありますが、これをまず拂い下げるということならば、意味が通るけれども、阪和線とか、青梅線とか、あるいは鶴見臨港線とかいうがごときは、この政府提出資料によりましても、相当もうかつておることになつておる。こういうものをも含めて拂い下げるということであつてみれは、これはどうも財政を改善するためということのりくつは、一向に通らぬのであります。地方公共利益云々ということやら、地方鉄道を強化云々ということは、時間の関係もありまして、るる申し上げることは省きまするが、一括して言えば、これは決して地方鉄道を強化することにもならぬ。ただこれが地方交通資本家を強化するということならば、まさしくそういうことになりましようけれども地方の輸送力を強化して云々というような意味にとるのでありますならば、決してそういう結果にはならぬのであります。公共利益と言われるけれども公共利益とは、最大多数の日本国民にとつて、喜ばれる結果にならなければならぬ。ところが今日國鉄の從事員諸君はもちろんのこと、沿線の住民諸君が、資本家を交えて猛烈なる反対運動をいたしておられる。この一事をもつて見ましても、國民の大多数というものが、こういうことをきらつておるということは、争うことのできない事実である。しかるにもかかわらず、これを決行するというにおいては、公共利益を守るためということは、まつたくの空文になるのであります。そういうわけで、第一條の美辞麗句は、完全に第二條以下によつて遂げられない、反対の結果になるということでありますので、どうも賛成することができないのであります。  それから第三点といたしましては、この重大なる法案が上程をされてわずかに四日でありますが、私どもの考えでは、こういう重要法案を上程し、かつこれを押し通そうということでありますならば、ごとに多数の国民の反対運動もありますので、公聽会などを開いて、いろいろな各会の意見を聞いて、そうしてこれを決定すべきであるにもかかわらず、たつた四日間、それでもうて求められた資料も出ない。どうでもこうでもこれを通せというような態度をとられることに対しましては、非常に私どもは不満であるのであります。十分なる國民の芦を聞いてということならば、その結果が思わしくなくても、これは國民了解がつきますけれども、これほど反対運動をしておるにかかわらず、政府は多数をたのんで遂にやつた。ところがそれ見よ、こういう結果になつたじやないかということになると、國民はまつたく泣くにも泣けない結果になると思うのであります。赤字という問題が盛んに叫ばれておりまするけれども、一体國鉄の今日の赤字、これを回復する、これを何とか健全化するというのには、こういうふうにたけのこ生活、国鉄のある部分やら、バス路線やらを拂い下げ、次第々々にたけのこの皮をめくるような、こういう消極的な態度をとつて行くことによつて、この赤字の解決はつきません。そうでなしに、今日までの経営がまずい、これを合理化して行くということならば、まだいくらでも赤字を埋める方法が別にあるのであります。あの厖大な國有財産を、不用品拂下げという名目よつてどんどん拂下げておる。また買うものも見ておると、石炭にいたしましても、その他の必要な資材にいたしましても、べらぼうな高い値段で買うておる事実、そういうふうな大きなロスが行われておるのでありましてまた作業能率にいたしましても、非常に官僚的であつて、一向に能率が上らぬといろ点もあります。それからいろいろな点を合理化いたしますならば、これで一体いくらの金があがるか知らぬが、十億か十五億あがるかもしれませんけれども、そのくらいの利益は、どこからか捻出するということは、わけはないのでありまして、國鉄赤字の克服ということは、これは拂い下げということよりも、現在の機構をこのままでなるべく合理化して行くということの方が、はるかに積極的であり、また建設的であるのであります。私どもは、そういうことの努力のかわりに、こういうふうな消極、退嬰的なたけのこ生活を意味するような行き方は、どうしても賛成することができないのであります。  最後に、四点として申し上げたいことは國鉄から私鉄に移るということになると、これは今るる私が申し上げるまでもなく、私鉄從業員諸君國鉄の従業員諸君との待遇問題、それは比べものにならないほど國鉄の方がよろしい。これを保護するために規定があるにはありますけれども、この規定は至つて不完全であつて、ただ一つ運輸大臣の方から、この引継ぎの場合に、私鉄の從事員を保護するために、いろいろな命令を出すことができるようになつておる。なつておるのも、ただできるというだけでありまして、それは出さないことは必定であります。昨日運輸大臣答弁を聞きますると、大藏委員から、一体地方輸送力を強化し云々、合理的な経営というようなことをうたわれておるにもかかわらず、資本家がこれを引受けて、それでもつて経営の合理化をしようとして、首切りその他をやろうとすれば、どつこいそれはならぬぞというような規定がここに設けられておる、それではどうにもこうにもならぬじやないかという発問に対して、運輸大臣答弁はこうであります。それは記録に出ておることでありますが、ものは考えようであるという、まことに含みの深い言葉である。それをいかように解釈するか。それは私どもの解釈によれば、ただ掲げておるだけであつて、そんなものは問題じやないというようにしか解釈はできないのであります。そうするといかにここにりつぱな從事員諸君の保護規定がありても、これは案文に帰すること必定であると私どもは見ておるのであります。  そういうふうで、従事員諸君にも、沿線の諸君にも、一つもいいことではなくて、國鉄赤字を埋めることにもならぬし、ただ残ることは、どうしてこういうような一文の利益にもならないようなことを強行するかということで、そこで國民の間には種々雑多な疑惑が今横行しております。これはむりからぬことだと思います。そこで、そういう疑惑のあるようなことを、今会期が迫つて、にわかにこれを強引に通過せしめようということのかわりに、むしろそれならば、公聴会も開こうし、もう一ぺん出直しをして、特に佐々木委員からの提案もありましたが、この廣汎なる委任立法ということよりも、むしろ個々別々にこれを切り離して、一線々々について愼重なる審議の結果、拂下げという立法手続をとられるならば、これは國民が納得するのでありますから、これはやめて、撤回されて、そして臨時議会でもけつこうでありますから、來るべき國会に再提出をされて、そうして大いに愼重審議の上、どうしてもこれをやりたいというならば、出直して來られることを私は切望いたしまして、反対討論にする次第であります。
  247. 稻田直道

    稻田委員長 佐伯宗義君。
  248. 佐伯宗義

    ○佐伯委員 私は、本法はこれをしばらく留保しまして、新たに発足いたしました。パブリックコーポレーションの精神にのつとり、わが國鉄道事業の根本的再編成政策を確立いたしまして、次期國会提出せられんことを要望するものであります。  本法案は、主として戰時中、戰争と関連いたしまして政府に強制買收ぜられました鉄道を、今回再び民有に環元しようとするものでありまして、すでに買收の前提たる職事の消滅した今日、一應もつとものようにも考えられます。また國家財政上の要求にも應ずるものであり、特に公共的施設といえども國家がみずから建設したものではありません。民間における苦心の結晶として成長して來た歴史的事実を尊重いたしまして、その生みの親に育成せしめんとすることは、現下創造意欲以外に何ものもないわが國の経済状態においては、また適切なる措置とも考えられるのであります。しかしながら本法案の是非を決定いたしまするには、以上のごとき理由をもつてのみでは、なおその本質に徹するものとは言い得ないと存じます。何となればと申しまするに、一國経済の動脈をなしまする鉄道卒業が、國民の福祉に合致する企業組織として、國有か民有かの根本襲に立脚しなければなりません。現行わが國における鉄道政策は、御承知通り國有鉄道法の第一條において、この点に関し鉄道國有主義を鮮明しておるのであります。しこうしてその但書において、一地方交通目的とする鉄道は、例外的に民有をも認めておるのでありますが、しかしこれは鉄道國有主義を侵したものではありません。しかるに今回新たに発足いたしました日本國有鉄道なるもの、いわゆる公共企業体は、旧来のわが國有國営主義の原則と、実質においでいささか異なるものがあるように考えられます。従つて日本國有鉄道の成立に伴いまして、わが國鉄道政策の根本に対し修正を加えなければならないと存ずるのであります。しかるにかかる鉄道國有法の根本に改正を加えずして、單に戰時中買收をせられたる理由をもつて、民有に還元せんとすることは、その手縄において正当を欠くものあるやに存ぜらるるのであります。元来わが國の国有鉄道は、國家交通地方交通と混合した、複雑かつ厖大なる組織を持つておりまするから、これが自立経済をはかりまするには、旧來のごとき強力なる國家権力を背景として運営することは、現下における民主主義的企業機構としては、けだし適当なりとは言い得ないと存じます。ここに新たなる公共企業体への発足の意義があるのでありまして、この意味において、日本国有鉄道は、新たなるコーポレーシヨンなる経済理念のもとに、わが國の交通再編成政策を確立しなければなりません。わが党はかかる観点に立つて、わが國の鉄道事業を、國有たると民有たるとを問わず、すべてその線路の有する本質的性格にのつとり、中央と地方との二つの交通分野に再編成しなければならぬと信ずるのであります。すなわち一國交通における幹線鉄道と、一地方交通目的とする鉄道とは、ぞの基盤とする交通圏に顕著なる差異があり、たとえば國の行政に中央、地方の別あるごとく、一地方交通目的とする地方鉄道は、一定地方社会の交通の流れに應じて、その中心たる都市に、求心的に集中する形態をとることを、普遍的な要素としておりまするから、この中心一つの單位として一企業体を概成し、國有鉄道はこれら地方交通圏を貫通する幹線鉄道に限定し、もつて鉄道運営の根本政策を確立すべきものであると信じます。  かかる観点からわが党は、本法案はしばらくこれを留保し、政府は六月一日より新たに発足する日本國有鉄遊をして、日本建業再建の基幹たるべき交通政策、特に國有鉄道地方鉄道とる分野の固定等の根本に対する再調整案を樹立せしめ、現在民有鉄道であつても、國の基幹的路線は、これを日本国有鉄道に移管し、反対に現在國有たる線路であつても、ひとり戰時中買收線路に限らず、地方交通圏内にとどまるものは、これを地方鉄道に移管し、一定地方社会公共の福祉に合致する企業体によつて統一運営すべく、わが國の鉄道荷編成政策を、次期國会提出するという條件を付し、本案はこれを留保する決議をなすべきものと主張する次第であります。またわが党の主張する公共企業体は、國有ないし民有の一方的に偏重せず、公私並立して調和し得る、新しい企業組織を要望するものであります。現下國民の思想は、ややもすれば生産手段を中心として、國有、民有の左右両極に対立し、両端相いれない、破壊的思想の対立に堕するおそれなしとしないのであります。この両極の対立を除く遜は、資本と労働とを結合せしめる企業組織にあるのでありますから、この対立を調和一致せしめる企業方策の確立こそ、わが党の念願とするところでありまして、邦家再建の基盤として重ねて、これをわが國鉄道政策の上に実現するよう要望するものであります。
  249. 稻田直道

    稻田委員長 これにて討論は終局いたしました。  それではこれより採決に入ります。まず高橋定一君提出戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案に対する修正案について、採決いたします。本修正案を可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  250. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数、よつて修正案は可決せられました。  次にただいまの修正部分を除きました原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成起立
  251. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数であります。よつて修正部分を除く原案は可決されました。從つて戰時中政府買收した鉄道の譲渡に関する法律案修正議決いたされました。  なおお諮りいたします。本日議決いたしました二案に対しまする衆議院規則第八十六條による報告書の作成並びに提出方につきましては、委員長に第一任を願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 稻田直道

    稻田委員長 それではさようにいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後九時九分散会