○佐々木(更)
委員 私は、ただいま
提案されました
修正案、並びに
修正案を除く他の一切の
原案に対しまして、日本
社会党を
代表して絶対
反対の意を表する次第であります。
その
理由は、第一点といたしまして、この
法律は、要するに
鉄道國有法の精神とまつたく相反するものがあるからでございます。
提案考は、この
法案の
趣旨並びに
目的を「
公共の
利益に合致する限り、旧所有
会社又はこれと密接な関係のある
会社に譲渡させ、も
つて地方鉄道を強化して
地方交通の利便を増進し、あわせて日本
國有鉄道の財政の改善を図ることを
目的とする。」「この
法律のいかなる規定も、
鉄道國有法第
一條の
趣旨を変更するものと解釈してはならない。」と述べているのでありますけれ
ども、先ほどから私が
質問を申し上げて明らかにされたように、この
鉄道をかりに拂い下げましても、それによ
つて得るところの收入は、今日の
國家財政から見まするならば、きわめて微々たるものでございます。
從つて、この
法律のうた
つておるように、これが日本の財政難を解決する承要な部分をなすとか、あるいはまた、これによ
つて日本
國有鉄道の運輸を強化し、
交通の利便を増進し、もしくは日本
國有鉄道の財政の改善をはかることとは、まつたく相反する結果になることはいうまでもありません。
從つて、
公共の
利益に合致するとは、この
法案によりまして、
戰時中買い上げたる
鉄道を
地方鉄道に還元することによ
つて、国家、国民大象が利金を得ることが前提でなければならないのでありますが、
提案者の
説明、並びに管轄省でありまするところの運輸省の当事者の等外を聞きましても、これによ
つて運賃が安くなるとか、あるいはまた輸送量が君大するとかいうことに対しましては、積極的に何の
説明もございません。これによ
つて國民大衆が
利益を得るという
資料は、出て参らないのであります。出て参らないどころか、私が要求をいたしました
資料さえも
提出を拒んで——むしろ私は拒んでという
言葉を用いたいと思うのでありますが、これらの
資料の
提出を拒んで、われわれはこの
法案の実施が、
公共の
利益を増進するということを曲解するわけではございませんけれ
ども、むしろこれをきら
つておるとさえ、とれなくはない節も多々あるのであります。もしも
提案者におきまして、眞にこの
法案が
公共の
利益になるという積極的な確信と良心があつたならば、進んでこれを証明するに足る十分の
資料を
提出して、十分の論議をすることが当然であります。それを
資料の
提出を拒んで、しかも
提案者みずから、具体的に
公共の
利益を増進するのであるという積極的な裏づけをしない限り、この
法案の
趣旨に盛られておりまする
公共の
利益に合致するということは空文である。われわれはこれを絶対に信用することさえできないのであります。ことに旧所有
会社、またはこれと密接なる関係のある
会社に譲渡させるということは、これは明らかに縁故拂い下げでありまして、しかもその縁故拂い下げの結果としましては、先ほどわが党の
川島委員からも指摘しましたように、今日
國民大衆はこの縁故
拂下げに対しまして、多くの疑惑を持
つておるのであります。先ほどすでに名前が明示されましたように、この
法律を可決すると、この
國会の中においてさえも、関係者には、吉田総理
大臣の女婿である麻生太賀一君を初めとする何人かの会励の社長があるということは、たといこの
法律が善意に基くものであるといたしましても、
國民大衆に対しまして十分の疑惑を與える條件を備えておるものでございまして、かかる
法案を、この
國会において
國民の選良としての私たちが通過させることは、
國民大衆の前に、日本の
政治を明朗化するという点で、まことに不適当なものがあると思うのでございます。
特に国民のかかる疑惑を深めるものといたしましては、先般来指摘いたしておりますように、この
法律はあまりにも総括的な委任立法であるからであります。ただいま
修正案の拠案考からお話のあつたように、これを緩和する御意図のもとになされたと思うのございますが、運輸
審議会がこの
拂下げを決定いたしましても、これに
効力を持たせるためには、
國会の同意を得ることを條件としておるようでございます。しかしこれは何にもなりません。運輸
審議会においてきま
つて來ましたものを、
國会においてその内容に十分の
審議をせずに、單に同意するかどうかを決定するものである以上、ただちに国民のかかる疑惑を一掃するに足る信用をも
つて、
國会が決定したごとにはならないと私は思うのでございます。幾多の想像をいたしまするならば、これは一種の多くの利権を生む危險性が十分にある。
從つてこういうような総括立法によ
つて、
拂下げ路線の選定、價額、いろいろのものを、しかもその宜應の中にあるところの運輸
審議会というものに総括的に委任するところに、その危險性が多く感ぜられるもの思うのでございます。われわれは
國会の権威のために、従來の官僚
政治を打破して、眞の民主
政治を確立しなければなりません。眞の民主
政治は、
國会みずから可能の限りにおいて、われわれが
政治の実体を処理することでなければならない。われわれはかかる権能を、
國家の最高権威たる
國会として持つおるのであります。
一つ一つの路線につきまして、当然これは
國会の権威と
責任において、これを
審議しなければ、かかる
國民の疑惑というものは一掃できるものではございません。こういう総括委任を運輸
審議会にまかせるところに、多くのうわさを国民
大衆の中に醸成させ、
提案者にと
つては、まことに御迷惑とは存じまするが、痛くない腹を探らせる結果になろうと思うのでございます。むろんこの問題においてはそういうことはございませんが、か
つて事実として、石炭国家管理
法案が
議会において
提案されました。これを阻止するために——今日審理中でございまして、最終の決定はまだでございますけれ
ども、ともかく
一つの疑獄事件としてああいう事件が、国民の前に公然と醜態をさらしておりまするところの現状からいたしまするならば、
國民がこのあまりにも総括的な委任立法であるこの
法律の施行に伴うところの、各路線の譲渡に対しまして、疑いを持つということは、あながち
理由のないことではなかろうと私は思うのであります。
從つて私は、こういうようなことは、少くともこの
法律が規定しておりまするところの
趣旨には、この
法律の内容は相反するものであろう、こういうふうに考えるものであります。
地方鉄道を強化して、
地方交通の利便を増進すると申しまするけれ
ども、今月すでに
買收したる
鉄道は、おのおの
國鉄の有機的な部分としての成長を遂げておるのであります。
買收したる
鉄道は、もはや
地方鉄道ではございません。形式の上で
地方鉄道でないばかりでなしに、その後脚鉄の一環として、有機的な一部分としての機能を果しておるのでありまして、ここに
運輸当局が提示いたしましたところの、この
資料に基きましても、連絡輸送の点におきましては、
戰時中でなしに、その以前からや
つておりまするところの
國有鉄道のパーセンテージに、断じて釣るものではないのであります。もはやごの
鉄道は、
地方鉄道たるところの性格を脱皮清算いたしまして、
國有鉄道の有機的な一環であり、これをもぎとることによ
つて、いわゆる
國鉄の機能というものを、たとい部分的でも麻痺させることは、いうまでもないことであります。この
法律がねらうところの
趣旨、
目的とはまつたく相反するのであります。ことにまた、あわせて日本
國有鉄道の財政の改善をはかることを
目的とすると言
つておりますが、今日提示された
資料に基きましても、あるいはまた
提案者の
説明によりましても、この
買收されたる
鉄道を拂い下げることによ
つて、決して日本
國有鉄道の財政が、つまり
赤字が克服されるという何らの証明もなされておりません。阪和
鉄道のごときは、この
買收されたる
地方鉄道以外に、省線全体の営業と比較いたしましても、決して劣りません。むしろ今日黒字にな
つておるとさえ曹えるので吃ります。はるかに他の省線の業績のパーセンテージを上まわ
つておる、こういう
鉄道を抑い下げて、
國有鉄道の財政の解決になるということは、これは
理由がありません。
從つてこの
法案の
提出は、他に意図がありまするので、私たちをしてこれを述べさしてもらうならば、ここに盛
つてあるところの
理由というものは、單にこの
法律の体裁を飾るもの、世間に対するところの申訳であ
つて、その
法律の根本は、日本の現在の輸送機関の統一性、計画性、一体性を、この
法律によ
つて漸次解体する橋頭堡にしようとする意図があるものと、私
どもは考えないわけには参りません。すなわち
民主自由党の唱えるところの自由主義
経済の一橋頭堡として、あらゆる
國有鉄道の
国有鉄道ばかりでは、ございません。あらゆる一切の国有を
民営に移そうとする、
民主自由党の自由主義
経済のイデオロギーそのものによ
つて、これは武装されておるものといわなければならないのであります。このことにつきましては、昨日の私の
質問に対しまして、
提案者の一人でありまするところの
前田委員が、率直に答えております。これは
民自党が前の選挙、その前の選挙において、
國民に対して
國有鉄道を民間に拂い下けるという公約の実行であり、
民主自由党が持
つておるところの、
国有鉄道を漸次解体して、これを
民営に拂い下げるところの一端として、この
法律を
提案しておるのであるから、今ただちに、この
國鉄全体を
民営に移すということはできないけれ
ども、漸次
國有鉄道を
民営に移す考えによ
つて、この
法律案を
提案したのだということを、言
つておるのであります。すなわち
民主自由党は、幾多の公約を選挙でいたしましたけれ
ども、
民主自由党の
諸君もこれを承認することと思うのでありますが、
民主自由党の公約の大部分は、今日実行不可能なる状態にあるのであります。
從つてこの大部分の公約が不履行であると思う。
民主自由党の
諸君といたしましては、どうしてもこれは公党の両目もございましようし、その公約の一端でもこれを実行して、国民に言い訳をする必要もあるでありましよう。
前田委員は、そういう
目的でこの
法案を出したのだと言
つております。もし私がこれを環に曲げているのだとおつしやるならば、私はここに速記録を反訳させて持
つておりますので、御参考までに申し上げてもよろしいのでありますが、時間の関係がありますので、これらのものはこの際私は省きたいと思うのであります。
そういうぐあいに、今日本は足らない資源のもとで、いかにこれを有効に利用するかということを考えなければならない。特に
鉄道におきましては、あらゆるものの社会化、統一化、計画化というものがなされなければならないことは、いうまでもございません。特に敗戰國日本のような状態におきまして、この必要は絶対であります。今日戰勝各國の
鉄道を見ましても、アメリカとカナダがコーポレーシヨンであるだけであう上して、イギリスを初めとする他の戰勝國全体が、
國有である。こういうような戰勝國であ
つてさえも、かかる公益に関係のあるところの機関というものは、これはいわゆる社会化の方向をとる
國有制度を前提としなければならないのに、敗戰の結果、資材の足りない、輸送機関の荒れはてたる日本におきまして、こういうような
時代と逆行し、日本の現状を無視するような、乱暴きわまる
法案が、
民主自由党の公約実行のために出される。つまり
國民が自由党の公約実行の犠牲になるということは、わが日本
社会党は絶対に
反対をしなければなりません。
しかもこの
法案は、過日衆私が申し述べました
通り、これははなはだしく炎本家擁護の
法律でございまして、代價支拂いの方法において、特にその点が顕著でございます。
提案者は、この
法案は国家財政の解決の一助で、
赤字財政克服のためであると言いながら、その支拂い方法におきましては、
國有財産法第三十
一條を、適用いたしまして、これを猶予する方法を本文の中に盛
つておるばかりでなしに、免税の規定さえもするということは、いかにもこの
法律の掲げるところの、美辞麗句で埋められておる
趣旨、
目的に相反するものである。
提案者は眞意を祕匿いたしまて、ほんとうの氣持というものを隠しておる。表面だけはきれいな
言葉でこの
目的を掲げて、その眞意は
民主自由党のいわゆるイデオロギーであるところの、民有
民営の思想というものを、特に公約の実行を、かかる勤労
國民大衆の犠牲において実行しようとすることにおいて、私はまことにその罪大きいものだと言わなければなりません。
これに対しまして
修正案は、
國有財産法第三十條を適用することができる、こういうふうに大分緩和して参りましたけれ
ども、するものとすと言いましても、あるいはまた、することができると言いましても、大した相違がございません。適用することができるという法文がある以上は、今日の金融梗塞の状態におきまして、どうしてかかる多額の金額を、一時に納付するような方法があるのでありましようか。おそらくあらゆろ
拂下げ希望岩は、必ずやその代價の支抑いを、かかる
國有財産法第三十
一條の適期ができるという法文にすがり、分割納入、年賦納入、あるいは支拂い猶予等を請求して来ることは明らかであります。かか乃具体的方法を決定するものは、官僚であるところの
運輸当局と、その長官であるところの
運輸大臣、しかもこれらの者が、いわゆる官僚を主軸とする人々が、運輸
審議会の決議というものをたてにと
つて、こういうような、まるでこの
法律の
趣旨、
目的と相反するような決定をして、形式的に
議会の承諾を求めて來ることは、これは火を見るよりも明らかであります。
從つてかかる
法律がうた
つていますところの
目的と、
法律が生む結果とが重大に相違するようなこういう
法律は、
國民を欺瞞する
法律といわなければなりません。いかなる観点から見ましても、わが日本
社会党は、かかる資本家擁護の
法律、勤労国民
大衆を犠牲にする
法律に対しましては、絶対に
反対するものであります。私はもし眞にこの
委員会が、
國民の
利益を
代表し、興に民主主義
政治の理想を達成しようとしますならば、起案者はかかる
法律案を撤回して、もし必要であるならば、個々の
鉄道に対しまして、個々の立法的
措置によ
つて、公然と白日のもとに、この
拂下げが
國民の何人も納得するような方法において——たとい石炭国家管理法
反対運動のああいう忌まわしい疑獄事件がつきまとうとも——この
拂下げの問題にはそういうもの
はつきまとわない、国家の
責任において、全力を盡してこれを
審査し、決定したというふうにして
國民を納得せしめることが、われわれ
國会議員に課されたる使命であると私は考える次第であります。
從つて私はそういう
意味におきまして、わが日本
社会党は、この
提出されましたところの
原案はもとより、
修正案全体に対して、絶対に
反対するものであります、