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1949-05-20 第5回国会 衆議院 運輸委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月二十日(金曜日)     午後四時一分閣議  出席委員    委員長 稻田 直道君   理事 大澤嘉平治君 理事 岡村利右衞門君    理事 關谷 勝利君 理事 前田  郁君    理事 松本 一郎君 理事 佐伯 宗義君    理事 佐々木更三君 理事 田中 堯平君    理事 橘  直治君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       天野 公義君    高橋 定一君       滿尾 君亮君    志賀健次郎君       門司  亮君    米窪 滿亮君       柄澤登志子君  出席國務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君  出席政府委員         運輸政務次官  加藤常太郎君         運輸事務官         (鉄道総局業務         局長)     藪谷 虎芳君         運輸事務官         (海運総局長         官)      秋山  龍君  委員外出席者         議     員 佐藤 榮作君         衆議院法制局参         事       鮫島 眞男君         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 提  正威君 五月二十日  委員山口シヅエ君辞任につき、その補欠として  門司亮君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十九日  國営自動車拂下反対の陳情書  (第四九〇号)  防長線拂下反対の陳情書  (第四九一号)  鶴見線拂下反対の陳情書  (第四九二号)  紀南線拂下反対の陳情書  (第五〇三  号)  常磐線電化促進陳情書  (第五〇六号)  國営自動車拂下反対の陳情書  (第五一二号)  中央線篠ノ井線電化促進陳情書  (第五一四号)  斗米村に停車場新設陳情書  (第五一五号)  白棚線拂下反対の陳情書  (第五一六号)  國営自動車拂下反対の陳情書  (第  五一七号)  瀬戸内海の掃海等に関する陳情書  (第五二一号)  近城線拂下反対の陳情書  (第五三一号)  小運送業複数化に関する陳情書  (第五三三号)  中小機帆船企業の保護に関する陳情書  (第五四三号)  國営自動車拂下反対の陳情書  (第五四五号)  國営自動車拂下陳情書  (第五四六号)  京都、奈良、滋賀地帶観光施設総合計画実施  に関する陳情書(  第五四七号)  日本通運株式会社の再編成に関する陳情書  (第五四八  号)  國営自動車拂下反対の陳情書  (第五五四  号)  豊田村に停車場新設陳情書  (第五五六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  戰時中政府が買收した鉄道讓渡に関する法律  案(廣川弘禪君外五名提出衆法第一二号)  日本國有鉄道法の一部を改正する法律案(参議  院提出参法第三号)  海上運送法案内閣提出第二一一号)     ―――――――――――――
  2. 稻田直道

    稻田委員長 開会いたします。  それではこれより日本國有鉄道法、の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 關谷勝利

    關谷委員 この法案はきわめて簡單な法案でありますし、前に参議院の板谷順助氏が來てよく論明をいたしておるのでありまして、質疑討論ともに省略いたしまして、原案通り決定せられんことを望みます。
  4. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの關谷君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。  それではこれより日本國有鉄道法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数でありまするよつて本案可決いたしました。
  7. 大屋晋三

    大屋國務大臣 ただいまの御審議、御可決、まことにありがたく存じます。     ―――――――――――――
  8. 稻田直道

    稻田委員長 次に海上運送法案議題とし審査を進めます。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 海上運送法案に対しまする修正案提出いたします。    海上運送法案に対する修正案   海上運送法案の一部を次のように修正する。   第八條、第九條第二項、第十二條、第十三條及び第十九條第一項第一号中「旅客及び手荷物」を「旅客手荷物及び小荷物」に改める。   第八條第二項、第十八條第六項及び第四十二條第二項中「認可」を「認可に関する処分」に改める。   第十五條に次の二項を加える。  2 運輸大臣は、前項の許可に関する処分をしようとするときは、運輸審議会にはからなければならない。  3 第六條の規定は、前項規定により附議された事項について運輸審議会が決定をしようとする場合に準用する。   附則第二項に次の但書を加える。   但し、そのときまでにした行為に対する罰則適用については、そのとき以後も、なおその効力を有する。   附則第三項を次のように改める。  3 臨時船舶管理法昭和十三年法律第九十三号)の一部を次のように改正する。   第六條を次のように改める。  第六條 削除   第十五條第四号中「第六條又ハ」を削る。   附則第六胆及び第七項中「認可をする旨又は認可をしない旨」を「免許をする旨又は免許をしない旨」に改める。   附則第十項を次のように改める。  10 改正前の臨時船舶管理法に関する罰則適用については、なお從前の例による。 右修正案提出いたします。
  10. 稻田直道

    稻田委員長 別に御質疑はありませんか――なければこれより修正案及び原案を一括して討論に付したいと思います。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 討論を省、略いたしまして、修正案並び修正案を除く部分を、原案通り決定あらんことを望みます。
  12. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの關谷君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なししと呼ぶ者あり〕
  13. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。  それではただちに討論を省略して採決いたします。修正案より先に採決いたします。しかる後に原案修正案以外のものにつきまして、また採決いたします。  まず修正案に御賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立
  14. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数。よつて修正案可決になりました。  修正案を除きました原案につきまして採決いたします。御賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立
  15. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数であります。可決いたしました。よつて海上運送法案は修正議決すべきものと決します。  先ほどの日本國有鉄道法の一部を改正する法律案と、ただいまの本案に対する衆議院規則第八十六條による報告書の作成並びに提出方は、委員長に御一任願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     ―――――――――――――
  16. 稻田直道

    稻田委員長 それでは次に、戰時中政府が買收した鉄道讓渡に関する法律案議題といたします。
  17. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は大臣出席を求めておりましたが、大臣が來られないので、大臣からも答弁をしてもらうという留保條件づきで質問申し上げます。  第一に、民自党がこの法案議員提出でいたしました眞意について、はなはだ私は了解に苦しむのでございます。先ほど資料提出にからみまして大体申し上げました通り、元來この運輸業一貫性を持つことが、つまり一体性を持つことが、最もよい運営形態でなければならないと思うのでございます。そういう最も計画性統一性の必要とされますところの運輸機関が、長い間の要望に沿いまして私鉄が省線に買收されたと、私たちは考えているのでございまするこれが今回この法案によりまして、相当重要な部分が、日本國有鉄道から賣却されることになるわけでございますが、これはそういう意味において、非常に國家の重要問題であります。特にかかる厖大なる國有財産処分するにあたりましては、相当政府責任を持たなければならないのであります。しかも賣却の理由といたしまして、その経営が赤字であるということと、國家赤字財政を補填する財源を求めるということにあるのであります。もしそうだといたしまするならば、これは当然、現在國鉄運営に全責任を持つておられまするところの運輸大臣、つまり運輸当局、並びに今日の財政責任の衝に当るところの大藏大臣、及び政府全体としてこれに対して絶対の責任を持たなければならないことは、いうまでもありません。赤字克服財政補填、こういうような重要な理由によつて拂下げるものを、政府責任を負わないで、しかもこの國会はすでに数箇月にわたつておるのでありますから、これらの理由によりまして、もしも賣却することが眞に必要でありまするならば、今まででも政府が十分これを討議し、政府責任においてこれを提出することが可能なのであります。それを政府がいたしませんで、民自党議長提出の形で、これを議会に提出する。しかも答弁にあたつては、さながら運輸当局がこれに全面的に賛成しているがごとき態度をとるということは、これは政府の無責任もきわまれりと、私は言わなければならないのであります。そういう状態にありながら、政府提出としないで、議員提出として、それも会期ぎりぎりいつぱいの今日、余すところ日雇を除くと二日しかない、こういう差迫つた状態で、議員提出でやるということは、私は非常に不可解であります。しかも現在の政府は、民主自由党單独内閣言つて過言ではございません。連立内閣と言いますが、わずか三十名ぐらいで、二百七十名のひさしを借りているような内閣では、單独内閣言つて決して過言ではない。そういう内閣において、こういうふうに政府提出しないで、議員提出でやることは、まず私は政府それみずからが、無責任きわまるものと思いますので、これは政府当局から御答弁をいただきたい。一体ほんとう眞意はどうなのであるか。なぜ政府提出でやらないで、議員提出でやるかということ、同じく提案者からも、この点についてもつと深い理由がなければならないと思いますので、それを承りたい。それを承りませんと、國民はこの法案がなぜ出されたかの眞意について、了解に苦しむと思います。運輸当局並びに提案者から、それぞれ御答弁をいただきたいと思うのであります。
  18. 前田郁

    前田(郁)委員 私は提案者の一人といたしまして、今の佐々木委員お尋ねにお答えいたします。何故に、これだけの赤字を補填するためにやるこの法案を、議員提出にしたのか、政府みずからやればよかつたじやないかというお話がありました。これは実はわが党の最高幹部においても、いろいろ政府側と折衝されまして、その結果他にも議員提出法案がありますし、また從來内閣においても、議員提出の形をとられたものもありましたので、從來の各党のやられた方法に基いて、政府と話し合いの結果、議員提出にしてもらいたいということで、やつたようなわけでございます。
  19. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今のお話でございますが、政府といたしましては、今回議員提出とすべきか、政府提出とすべきかについては、先ほど大藏大臣から答弁があつた通りでありますが、大体今回の予算にも、この法案に盛られた勘定が載つておりませんし、また政府当局といたしまして、國有鉄道國有にしているものを、みずから切り離す法案を進んで出すということはなかつた。それから各般の情勢から見ても、議員提出でも政府提出でもどちらでもいいという見地、この三点から、議員提出におまかせしたのであります。
  20. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私はそういう理由では承服することはできません。少くともこれを拂下げることによつて、もしも財政赤字を補填することができるといたしますならば、國家財政総体收入に比較して、相当の値打あるものでなければならぬはずであります。大体においてこの拂下げ價格は、提案者の先ほどの説明によると、四億内外だという御説明のように承りました。多少数字に相違があるでしよう。私詳しくこれをメモにしておりませんから、わかりませんが、今日七千数百億円の國家財政のもとに、こういうわずかばかりの四億の拂下げで、國家赤字が克服されるというならば、これは失礼ながら、頭がどうかしているのじやないかと思います。政府がこれをもつて赤字克服のためにやるということは、私は断じて承服できません。提出者もそうであります。ほんとう諸君國家の選良であり、國の財政をこれによつて解決しようとするならば――四億そこそこのかかる鉄道拂下げて、國家財政が解決するな、どというそんな甘いことで、皆さんが現在の國家財政を解決しようとするならば、むしろそれは國民に向つて大いに恥じなければならぬ。礎つて皆さんがこれくらいのことで、赤字克服のためにやるなどということに対しては、私は断じて承服はできない。これは皆さんに、もつと國民の納得行くような、必ずほんとう意義があろうと思うのでありまして、私はそういう点で、くどいようですが、もう一度当局並びに提出者の御答弁を願いたいと思います。
  21. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今の御質問でありますが、國有財産拂下げ問題は、運輸省だけでなく、各方面にあります。今の御質問によりますと、四億なんぼで國家財政が救済できないではないかということでありますが、國有財産は、一つのものが何千億と固まつているというものではございませんので、政府といたしましては、その一端としてこれを取上げたということであります。
  22. 前田郁

    前田(郁)委員 提出者としてお答えいたします。ただいま佐々木委員は声を大にしていろいろ言われましたが、この問題は、社会党諸君も、赤字をどうして克服するかということは、第一國会以來非常に論議されたところであります。今までは社会党あるいは民主党の諸君與党であつて、この赤字をいかにして克服するか、非常に苦心をされたところであつたのであります。私どもも今回絶対多数をとりまして、與党になりましたので、この際たとい一端でもこれを実行したい。少しでもやりたい。現在これをやらずに、このままおけば、赤字はますます多くなつて行く。二十二年度の計算においてもすでに五億、おそらく二十三年度においてはその倍の十億ぐらいになるかもしれない。毎年赤字がふえて行つて、また値上げをしなければならぬ。鉄道の関係の人はそう感じないかもしれませんが、一般の國民大衆は、この値上げには実際困つている。これはもう社会党諸君も、われわれと一緒になつてこの問題を非常に心配したのであります。そういう意味から、この際私は一つでも片づけておきたいということが一つと、もう一つは一先ほどから申し上げました通り、わが民主自由党には、國営を追い追いと民営に移して行きたいという一つのイデオロギ三がありまして、その方面から今回提案なつたわけでありまして、この二つを兼ねて、私ども提案理由といたしているような次第であります。
  23. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 民自党のイデオロギーの問題は、あとで御質問申し上げます。私はこの拂下げの重大なる理由として、提案者があげております赤字克服意義について、重ねて御質問申し上げたいと思うのであります。もしも現在の窮迫せる國家財政の解決に、たとえ七千数百億円の國家予算の中で四億円でも、膏藥代ぐらいの多少の足しになるのではないかというなら、あるいはそうかもしれません。しかしもし膏藥代でもよい。この際少し寄せようということならば、この際それだけの用意がなければならぬ。ところがこの法案で見ますと、第七條に、國有財産法及び日本國有鉄道法弟四十九條の規定は、この鉄道讓渡する場合には、これを適用しない。こういうふうになつておるようであります。そこでこれを見ますと國有財産法の第三十一條によりますれば、「普通財産の賣拂代金文交換差金は、当該財産の引渡前にこれを納付させなければならない。但し、当該財産讓渡を受けたものが公共團体又は教育若しくは社会事業を営む團体である場合において、各省各廳の長は、その代金又は差金を一時に支拂うことが困難であると認めるときは、確実な担保を徴し、利息を附し、五年以内の延納特約をすることができる。」こういうふうになつておりますし、それから口の財産法の全体を通じまして、この拂下げ價格に対しましては、年賦その他の猶予ができるような、法律適用が準備されておるということであります。経つてそういうふうに提案者は、あらかじめ賣渡し代金について猶予ができるような準備をもつて、この法案提出されておるようであります。從つてほんとう國家財政をここで解決しようとすることが理由でありますならば、一時間も早くこれを解決しなければならないのに、こういうような一つ猶予考え方をもつて、この法案をつくつておるということは、これはどう考えましても、政府並びに提案者におきましては、ほんとうにその理由赤字克服のためにのみやつておるとは、考えられないのであります。提案者は、もしも買い受ける会社なりあるいは特定の人々が、代償支拂を一時になすことがむずかしい場合においては、猶予する御意思があつてこれをつくつておられるのかどうか。そういうお考えがあるのかどうか。この点についてひとつお伺いをいたします。
  24. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいまのお尋ねにお答えいたします。鉄道企業用財産でありますから、本來ならば讓渡ができないのであります。そこでその例外を規定したわけでありまして、ただいま言われたような國有財産法の第三十一條は、この法律でも準用ができることになつておるわけであります。なおこの法案の立案にあたつていただきました鮫島法制局第三部長から、詳しい説明をお願いしたいと思います。
  25. 鮫島眞男

    鮫島参事 最初に御指摘國有財産法適用しないという点でございますが、この点はただいま前田委員からお答えがありましたように、鉄道國有財産法によりますと、企業用財産ということになつております。國有財産法讓渡のできますのは、いわゆる普通財産だけでありまして、鉄道のような企業用財産讓渡できないことになつておるのでございますが、この法律規定する手続によりまして讓渡いたす場合には、本來企業用財産ではございますけれども國有財産法規定にかかわらず、讓渡できるというのが第七條第三項の趣旨であります。それから國有財産法第三十一條規定も御指摘でございましたが、これは第八條第二項を準用いたしまして、やはりこの國有財産でありますところの鉄道讓渡いたします場合には、できるだけ普通の國有財産拂下げます場合と同様な処置をとる必要がございますので、この國有財産第三十一條を準用いたしまして、代金は原則として引渡し前に支拂わなければならない。ただ一時に支拂うことができない困難な事情がございましたならば、五年の年賦で、しかも確実な担保をとりまして、また利子をとりまして、この延納特約ができるという國有財産法第三十一條規定を準用いたしまして、この支拂いについては、非常に嚴格な規定をおいておるわけであります。
  26. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 今鮫島君から御説明したと同様であります。
  27. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は先から申し上げておる通り、もしも眞にこれが國家財政を憂うる結果拂下げるのだ、こういうことが眞実でありますならば、この拂下げ價格が、ただちに政府國庫に收入されるということが、條件でなければならないと思うのであります。先ほど申しましたように、七千数百億円のうちで、四億何千万円で國家赤字を補填するという考え方自体が、國民全体はばかばかしく思わないでございましようか。信用ができるでしようか。かりにその四億でも足しになると仮定いたしましても、それは今の赤字を補填するために必要なのである。そこの理由を明らかにしなければ、少くとも赤字克服という理由は出て來ないでしよう。法制局の方が答弁されたのは、それはでたらめであります。しかもこの第八條の第三項に一つて、それにもかかわらす「前項規定するものの外、讓渡代償支拂について、は、國有財産法第三十一條規定を準用する。」こうなつておる、それほど緊急必要なるものを、なぜに國有財産法第三十一條をわざわざ準用して來て、支拂い猶予する必要がどこにあるか。そんなばかばかしい理由國民が納得するか、そんなことで納得するはずはない。だから赤字克服のためにやるということは、これはうそである。皆様は、正直にそういう点をどうお考えになるのか、もう一回答弁を要求いたします。またこういう國有財産法第三十一條を準用するというようなことは、皆様自身が、この拂下げる二十二鉄道の賣却代の支拂い猶予する心持があるからだと考える。これらの疑惑をこの際國民の前に明確にしていただきたい。政府並びに提案者に対しまして御答弁を要求いたします。
  28. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 讓渡價格に関する政府当局の意見といたしましては、この法案には、地方鉄道法三十一條から三十三條までの規定を準用して算出した價格基本になつておりますが、政府考えておりまする讓渡價格は、その複成價格、もし今これだけ建設すればどれだけかかるかといういわゆる時價であります。時價基本として、この帳簿價額であるものを参酌して、そうして妥当かつ日本國有鉄道財政の改善に資するように、定めたいと考えておる次第であります。金額につきまして誤解があるようであります。二十二線の買收價格はお手元に差上げてございまする資料の中にありまするように、十八、十九両年度に買收しました地方鉄道二十二線の総買收價格は、三億二千五百万円、そのうちの十線の値段、すなわち清算会社として今なお残存しておる九社十線の総額は、一億七千万円が買收價格であります。これに対する拂下げ希望者希望價格は、十線で四億四千万円。これに対しまして國有鉄道計算によりますと、今なお残つておるその十線の値段は三十七億六千五百万円であります。これは買收した財産時値に直し、その後改良しました工事費、あるいは修繕した車両、これらを時値に換算しまして三十七億六千五百万円程度になるのであります。二十二線でありますと、おそらく百億ないし百二十億程度かと思います。以上お答えいたします。
  29. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいま佐々木君から四億四千万円というようなお話がございましたが、ただいま業務局長が言われました通じ、評價價格は相当多額に上つておるわけであります。これは結局運輸審議会で決定するのでありまして、私どもはいわゆる公正妥当な値段、世間から、なるほどこれならば適当である、またたけのこ生活の一端にもなるのだという程度に、きめていただきたいものであると、こう考えておるような次第であります。
  30. 稻田直道

    稻田委員長 関連して尾崎君に許します。
  31. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 私はただいままでの質疑應答を伺つておりまして、そのポイントがはずれておるような感じがしますので、その点について、ひとつ御質問申し上げてみたいのであります。佐々木委員の言われる御趣意は、御趣意としてはまことにけつこうだと思うのであります。しかしながらこの法律案趣意は、はつきり一條に出ておるのであります。ひとりいわゆる財政の面からだけでなくして、地方鉄道を強化して、地方交通の利便を増進しという目的はつきりうたわれておるのであります。この目的をはき違えて、ただ財政上の面だけで云々するということは、本法の趣意でなかろうと思うのでありますが、もしこれでやるといたしますならば、第一條のこの趣意から申しまして、あとで私は質問したいと思つておるのでありますが、この第一條趣意と、それから第四條第三項に掲げた公共の利益に合致しというのと、それからさらにずつとあとの方で第二十一條会社は、讓渡の目において、旅客及び、荷物運賃その他運輸に関する料金並びに旅客列車及び混合列車運轉速度及び度数、につき從前通り運賃及び料金並びに運轉速度及び度数をもつて、それぞれ地方鉄道法第二十一條第一項及び第二十二條第一項の規定による認可を受けたものとみなす」ということ、そのあと第二項に「会社は、讓渡理由にして、旅客及び荷物運賃の値上をし、その他旅客又は荷主の負担を増加してはならない。」ということ、これらの三箇條の趣旨を織りまぜて考えますならば、ただいままで論議せられたような、一つ財政的の見地からばかり、これを議論すべきではなかろうと私は考えるのであります。この三つの趣意を織りまぜての質問を、私はあとからいたしたいと思うのであります。私はこういうふうに考えておるのでありますが、はたして今まで質疑應答があつたように、財政上の面からばかりこれが計画されておるのかどうか、これを提案者及び政府当局から伺つてみたい。
  32. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいま尾崎委員よりお話がございました、いわゆる経済的の問題だけでなく、公共の利害に一致する限りこの問題を解決する。それから地方鉄道を強化するというような点を、今お尋ねでございましたが、これは今尾崎委員の言われた通り意味であります。
  33. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 どうも尾崎君がぼくの質問にちやちやを入れまして、はなはだ迷惑しごくでございますが、私は何も財政だけが全部だと、こう言うのではありません。これからこれは三つお伺いします理由のうちの一つでございます。今まずそのうちの一つの眞相を私は究明しておりますので、誤解のないようにお願いいたします。そこで薮谷さんの御答弁も、それから前田さんの御答弁も、私の質問に対しては、私が東を質問しておるのに、西を答えておるようなものでありまして、てんで問題にならぬほど見当違いですが、先ほど申し上げましたように、多少数字上のことは、正確でないことを申し上げましたが、私は今價格がどうしてきまるとか、あるいはまたその價格が適当かということを聞いておるのではございません。その拂下げが、財政上の赤字を克服することにあるというならば、この拂下げするところの價格が、即時國庫に納入せられるような状態拂下げられなければならない。そうでなければ、國の緊急なる赤字を補填することにならないじやないか。それなのに、わざわざ國有財産法の第三十一條を準用して、その價格支拂い猶予させるようなことをなぜ考えてやるのか。ほんとうに緊急な國家財政を改善しようとするならば、即時現金になるようなことを考えるのがほんとうじやありませんか。それをわざわざその代價の支拂い國有財産法の三十一條を準用して、取立てを猶予するような必要が、どこにあるかということを私は聞いておる。見当違いをなさらぬように、ひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  34. 前田郁

    前田(郁)委員 この問題は、実は運輸審議会におきまして――左に掲げる事項を國有鉄道讓渡審査会の議を経て決定しなければならぬというわけで、これに八つあげてあるのでありますが、そのうちの讓渡の期日というところが、実ははつきりしておりませんので、それでこれに対して一つの強い方法をやはり講じておかなければならぬ、この條文はほかの改正にもいろいろ入つておるというわけで、これを適当にやつたわけです。別段これは他意あつてやつたわけではありません。
  35. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 どうも前田さんの言うことは、ますます出でてますます奇怪なんですが、それほどあなたが國の財政考えて、左に掲げるようなことをやるとおつしやられるなら、とにかく代價がすみやかに國の收入になるようなことを考えて、この法案提出しなければならぬと思う。もう一度お読みください。私の方で読み上げます。第八條讓渡の代價の支拂は、会社が買收を受けたときにその代價として政府から交付を受け、支拂の日において現に所有している國債証券で、することができる。」多分これは國債で買つたから國債でもいいだろう、こういう考えでありましよう。財政解決のために、國債で賣つたから、國債で買つて赤字補填になるのだというようなことは、しばらくあとの論議にいたしましよう。國債証券でできるということを言つておるでしよう。「この場合における國債証券の引渡價格は、時價及びその交付價格を参しやくして、大藏大臣が定める。」どういう價格できめますかしらないけれども時價及び公定價格というのであるから、一文も損しないで、そのときの額面で買うということも言えましようが、これも後に延ばしましよう。二に來て、これが問題だ。前項規定するもののほか、讓渡の代價の支拂い、つまり現金で拂つたりすることや何かを言うのでしよう。その会社を賣り渡したときの証券や何かはそのまま受取るが、前項規定するもののほかですから、多分現金やその他のことを言うのだと思います。たとえば一億円で賣り渡したものを、時値とするならば五億円、差額の四億円を現金で、こういうことをさすのだろうと思います。「前項規定するものの外、讓渡の代價の支抑については、國有財産法第三十一條規定を準用する。」ですから、代價の支拂い國有財産法弟三十一條規定によつて、準用してもらえることができる、これは前田さん、あなただつて否定なさらないでしよう。そこで私は本質を究明するために、もう一回めんどうではありますが、準用される國有財産法とはどういうことかということを読み上げます。「(賣拂代金等の納付)第三十一條普通財産の賣拂代金又は交換差金は、当該財産の引渡前にこれを納付させなければならない。」だから、これは賣り渡しましたならば、鉄道を交付する前に金を納付させなければならない。これならば、なるほどあなた方の言う通り、かりに金が四億円にせよ、十億円にせよ、百億円にせよ、價格は別にしまして、現在の窮迫せる國家財政赤字を補填することになるかもしれない。「但し」この但しが問題だ、「当該財産讓渡を受けたものが公共國体又は教育若しくは社会事業を営む國体である場合において、各省各廳の長は、その代金又は差金を一時に支拂うことが困難であると認めるときは、確実な担保を徴し、利息を附し、五年以内の延納特約をすることができる。」この規定からいたしますると、この國有財産法の第三十一條適用を受けるものは、公共團体とか、教育とか、社会事業とか、こういうような公共性を持つた團体でなければならないという規定なんです。このたびの欽道の拂下げには、原則からいえば、これは適用されるはずはない、これは認めるでしよう。それをわざわざあなたがこの第八條の第二項に持つて來て、この鉄道の賣渡し價格支拂いに準用する意図はどこにあるか。この資産を賣つた代價を、むりに公共事業に適用する國有財産法第三十一條を持つて來て、この鉄道の代價の拂渡しに対して準用する意図、それは、すなわちあなた方が掲げている國家財政を解決しようということが、うそであるということの裏づけになると私は言うのです。いわゆる羊頭を掲げて狗肉を賣るに似ていると言われても、しかたがないと考えているのであります。なおあと國有財産法第三十一條のしりの方にいろいろさしてありますが、時間をとりますので省略いたしますけれども、わざわざこういう法律を持つて來て準用するところに、私はこの法律提出理由の認めがたいものがある。だから法案提出條件を備えておらないという重大な点で、私はあなたに質問しているのであります。その点御答弁願いたいのであります。
  36. 前田郁

    前田(郁)委員 この代價の支拂い問題でありますが、これは大体運輸審議会におきまして、讓渡代金支拂い時期及び支拂い方法、それから讓渡の期日というようなことは、決定するわけでありまして、その場合に、準用する規定としてこういうことを入れたわけでありますので、実際は審議会ですべてを決定してもらうということでやつたわけでありまして、これは私の方でもよく研究してみます。
  37. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 今の前田さんの御答弁を聞くと、ますますこの法律提出理由について、疑惑を持つものであります。これは先ほど田中織之進君からも指摘されましたように、一種の委任法である。大体重要な部分は、全部審査会の力に委任してやるということの意味において、これの非常に重要性がある。このことはあとでまた御質問申し上げることにいたしまして、委任事項であればあるだけに、委任いたしました後において、たとえば讓渡審査会等が、この法律制定の趣旨に沿うような方法で運用することを、法律できめる義務が國会議員としてある。それなのに、今も言う通り、あなたの方では、これは財政上の解決の一助である、赤字補填のためだと言いながら、わざわざ委任立法であるこの法律に対して、何も関係のない國有財産法第三十一條を準用することは、よけいなことだ。研究するとか、しないとかいうことではなかろうと思う。ここに私は、本法案提出している民自党の画意を疑う点がある。これ以上皆さんがこのことについて答弁できなければ、研究して來て、あす私は重ねて質問いたしますから、これは留保しておきま  そこで私が次にお聞きしたいのは、この法律民自党の案として、議員提出で出したことは、先ほど前田委員の御答弁の中に、これは全部官営を民営に移すという、民自党のイデオロギーに基くものであるということを、はつきり言つておられました。私がお聞きしたいと思うところは、むしろそこなんです。皆さんが羊頭を掲げて狗肉を賣るようなかつこうでもつてやる。赤字を解決するための財政上喫緊の状態をどうするのだ、こういうきれいごとをおつしやいますけれども、実際はそこのところはつけ足りでありまして、こういうことを言うと、また懲罰だなんてしかられるかもしれませんが、いわゆる國民を欺瞞する一方便のようなものである。こういう赤字を解決するというような、きれいごとをおつしやいますけれどもほんとうは、皆さんの官営を漸次民営に移すという民自党の思想が、この法律提出の重大なる理由であろうと私は考えるものであります。すなわち民自党は、公約が実行されないで非常にお困りのようでありますが、せめて鉄道ぐらいを拂下げて民営にすることによつて、自由経済主義というものを、國民に対する公約の一端として、果そうという御意思であるように、私にはうかがえるのでございます。この点について、眞意はどこにあるだろうと私は考えるのでございますが、提案者はいかがでございましようか。
  38. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいま佐々木委員からお話がございましたが、第一回國会以來、佐々木委員とはこの委員会で長年のお知合いでありまして、私どもがいかに赤字解消という問題に対して、努力しておつたかということは、十分御存じのはずであります。またただいま申されたように、民自党のイデオロギーによつてこの法案提出されたということは、さきの大藏委員会との連合会においても、るる申し上げた通りでございまして、私どもが單にイデオロギーだけにとらわれて、赤字の問題を脅しえないというのでないことは、私が言わないでも、佐々木さんがこの議場においてわれわれが奮闘努力したその速記録を見、また現在直接お聞きになつた私どもの言論から、十分に御推察をお願いできるものと私は信じて疑わないものであります。
  39. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 前田さんは率直に、いろいろな理由もあるけれども民自党の精神である、漸次國営を民営に移すという民自党の政策の線によつてやる、こうおつしやられるのでございますが、これはまことに重大なことでなければならぬと思うのでございます。そういたしますと、私は提案者並びに政府当局にお伺いしたいのでございますが、もしもこの鉄道拂下げが、國営を漸次民営に移すという根本的な思想に基くものといたしますならば、單にこの法案で、戰時中のものだけ拂下げるということは、これは全体の思想の一部分をなすにすぎないものであると考えられるが、そうであるかどうか。言いかえれば、第一段としてこれを拂下げて、次はどこどこを拂い下げる――本日は鉄道だけの問題でございますから、鉄道だけを問題にいたしますが、漸次國営鉄道を民営に移して、民自党の思想というものを貫くその一端考えてよろしいかどうか。こういうことを、この際はつきりと明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  40. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいまのお尋ねにお答えいたしますが、民自党は御承知の通り前の選挙にも、今回の選挙にも、國営を民営に移すということで、この点は相当強調して選挙区にまみえて來たのでありまして、わが党におきましては、鉄道全体に対しての拂下げをやりたいという氣持も、相当常としてあるようでありますが、とにかくそう急にそういうこともできないわけでありまして、やはり順を追つてやらなければならないので、戰時中買い上げた鉄道から、まずわが党の政策の一端として実行してみようということで、その政策の一端の現われとして、これが出て來たのであります。
  41. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今の佐々木委員お尋ねは、政府当局に民営に移す意思ありやいなやという御質問だと思います。民自党本部において、政調全等の方面で、そういうことが論議されておりますが、運輸当局においても、運輸省全体の機構を、民営に移すか移さぬかという点は論議中でありまして、現在といたしまして、運輸省全般のあらゆる機構を、民営に移すという点は、まだきまつておりません。研究中であります。
  42. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 前田委員は正直だと思つて、私敬意を表します。確かにこれは、先ほどから申し上げました通り、この拂下げ理由民自党の公約であり、民自党の政策である。いわゆる漸次あらゆるものを民営にしようとする政策の一端であり、從つて今の國有鉄道全体を、漸次民営にする一段階として、この法案提出されたという御答弁に対しまして、まことに率直なるものとして、これを了解し、満足するものであります。  そこで私は次に質問を進めてみたいと思うのでございますが、もしもそういうふうに、國有鉄道全部を漸次民営に移すという民自党の政策から発して、これをおやりになるといたしまするならば――私はもちろん賛成いたしませんよ、私は反対でございまするけれども民自党はもつと勇敢に、この法案をお出しになつたらどうでありましよう。先ほども申しました通り、きれいごとを並べて、この法案眞意をごまかすということは、國民に対してまことにはずべきだと思う。この法律を見ますと、この法律の第一條に「この法律は、日本國有鉄道をして、政府昭和十八年及び昭和十九年に今次の戰爭の必要に基いて地方鉄道会社から買收した鉄道」云々と、こう書いてございます。つまり理由に現われたところを見ますと、戰爭犠牲者を救済してやる。戰爭に際して國家が不当に民営を圧迫したものに対しまして、一つの救済方法として、これを再び民間に拂下げるのだという、まことに人道主義的な、まことに美しい理由をつけておるのであります。もしも前田さんがおつしやるように、漸次國有鉄道を民営に移すその一段階として、これをやろうというならば、こういうきれいごとをおつしやらずに、すなわち昭和十八年から十九年までのものを買い上げるとおつしやらずに、もつと廣くやらなければならぬ。もしも國家財政のためであるとおつしやるならば、おそらく私鉄会社から買い上げたものだけが、赤字になつておるはずはありません。ここに提出されました資料に基いて見ましても、阪和鉄道のごときは、全國の省営全体のパーセンテージよりももつと業績をあげておる。わざわざ好んで私鉄から買收したものだけを、そういうイデオロギーであるにもかかわらず、やるということは、まことに不可解千万である。もつとこれは全体として討議をしなければならぬ。もしもイデオロギーで提案されるものならば、こういうきれいごとをおつしやらずに、戰爭中に買い上げたものだけとおつしやらずに、鉄道全体として討議することが、最も勇敢であり、國民に忠実であり、それでこそ民自党の公約の実行であり、主義に勇敢であるということが言えると思う。こういうことで参りましては、國民はますます誤解を深くするものでございます。そのことはしばらくおきまして、政府昭和十八年から十九年にかけて、戰爭の必要に基いて地方鉄道会社から買收した鉄道を、救済の意味拂下げるという御意見のようでございます。これは先ほどの大藏委員会委員の御質問に対しても、お答えがあつたようでございますが、私の見るところにおきましては、なるほど戰爭も一つ條件でありました。それは理由一つではございましたけれども、この鉄道政府が買い上げたということは、單なる戰時状態、そういうことからばかり來るのではございませんで、たまたま戰時輸送計画の上から、省線と密接せる私鉄とが、おのおの別の経営であることは非常に不便である。いわゆる輸送の一体性統一性計画性と相反するものがあればこそ、平時立法としてこれを買い上げたものと思うのであります。これを單なる戰時立法で、何か國が國民を圧迫してやつたものに対して救済するがごとき、こういうような言い現わし方は、理由としては國民は承諾しかねると思うのでございます。この点、前田さんはどうお考えでございましようか。
  43. 前田郁

    前田(郁)委員 先ほど來いろいろ佐々木委員から御質問くださいましたが、私は民自党としては、いわゆる國営をなるべく民営に移して行こうという思想があるということを、先に申し上げたわけでありまして、この國鉄の幹線を全部やることを、実は申し上げたわけではないのでありまして、この点をひとつ誤解のないようにお願いいたします。  それから戰時中の非常措置であつたというお話でありましたが、まつたく同感でありまして、私どももこの鉄道は戰爭のさ中におきまして、國家総動員法が施行されており、この法に基いてさらに陸運統制令が制定されまして、戰時目的完遂のために、一部國民の利害を超越して、非常処置をとらなければならない実情があつて、実際におきましては、これらの鉄道の買收方法といたしましては、協定もまつたく一方的のものであつたのであります。それから先ほどもお話申し上げました通り、公債は登録國債として政府に寄託されまして、一般の賣買、讓渡に強い制限が付せられて、しかも会社はそのまま存続すべき旨の指示を受けたような次第であつたのであります。從來の買收は鉄道敷設法に定めました予定線を買收することが原則で、一年に二、三線しかなかつたものをば、ちようど十八年、十九年の二箇年間に二十二線に及んだというわけでありまして、私ども形式的には平時法であつても、これは実質的にはまつたく戰時の非常立法でであつたと思うであります。このやり方を見ましても、この法律は還元を趣旨とするものであるということをば考えまして、立案をいた院たような次第であります。
  44. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今佐々木委員お尋ねで、日本國有鉄道の民有の推移についての根本的御質問がありましたが、それは提案者に関しますことで、私にあまり関係がないことでありますが、政府といたしましては、この法案はそういうような関係がないものと解釈しております。本法案の第一條の第一項に「この法律のいかなる規定も、鉄道國有法(明治三十九年法律第十七号)第一條趣旨を変更するものと解釈してはならない。」この鉄道國有法の第一條は一般運送ノ用ニ供スル鉄道ハ総テ國ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鉄道ハ此ノ限ニ在ラス」こういりような関係でありまして、この法案が出ました趣旨については、漸次各線を民営に移すというような解釈を政府としては持つておりません。
  45. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 加藤政務次官は政府でございますから、私はその趣旨のことは提案者に聞いておるので、参考として承つておきましよう。  そこでこれは前田さんに確認しておかなければなりませんが、あなたは先ほど私の質問に対しまして、政府は選挙ごとに國営を全部民営に移すのだという公約をして來たんだ、これに忠実になろうとしているりだ、從つて私鉄の拂下げというものも、これは國営に順次移すという一段階としてこれを提出した。これはここにおられる皆さんが全部聞いておられる通りです。速記にもそう出ておるでありましよう。何人もこれを改竄しない限りは、速記録にはつきりと出ておると思う。これをもう一度再確認していただきたいと思う。速記者にも十分その点御注意願いまして、私その点は後ほど行つて改めることにいたしたいと思います。御了解を願います。そこで戰時立法で拂下げたものだ、つまり國が戰時の情勢に基いて、これを民間の私鉄に対して強制したものかどうかということは、これは提案者前田さんと私の意見の相違でございますので、これ以上質問しても明らかにされないことと思いますから、前田さんにはこの点はお伺いいたしません。しかし理由はまだまだたくさんございます。そこで薮谷さんにお伺いいたしたいのでありますが、あなたは鉄道に長い問御奉職なさつておられまして、多分十八年、十九年当時も、鉄道に御奉職なさつておられたのではなかろうかと思うのでございますが、これを買收した鉄道当局、その衝に当られました皆さん自身が――政務次官や何かは政党人でございますから、問題は別でございます。あなた方鉄道の方が、これを昭和十八年から十九年にかけまして買收する当時は、これは戰時立法のつもりで、戰爭の要請にこたえるそのことのみで、これを買い上げられたのかどうか、それも一つ理由であるが、いわゆる輸送の一貫性、統一牲、計画性、こういうものに基いて、つまり社会的要請に基いてなしたものかどうか、この点ひとつ責任あるところの当局の方から、御答弁を願います。
  46. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 買收いたしました根拠法規は、地方鉄道法の三十一條以下でありますが、この地方鉄道は平時かりあるものでありまして、平時においても、多数の地方鉄道を買收いたしましたことは事実であります。戰時中買收したのも、それと同じ手続をとつたのであります。決して佐々木さんの指摘されるように、國家総動員法とか、そういつたような戰時立法で買收したものではございません。但しその目的が、買收の理由書を調べますと、一部の理由といたしまして、戰時輸送力の増強に資したということは事実であります。しかしながらそれが全部の理由ではございません。
  47. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 この法案提出理由のいかにずさんであるかということの一つの証左に、今の御答弁はなると思うのでありますが、いずれこれらの点は、運輸大臣出席を求めてさらに確認したいと思いますので、これはその程度にいたしておきたいと思うのでございます。  そこで次にはこの理由一つといたしまして、この鉄道拂下げ公共の利益に合致するものである、こういうふうに述べられております。結論からいたしますれば、私はかえつて公共の利益に相反する結果になると考えたのでございますが、公共の利益になるかならぬかということは、これは國民の受ける利益が大きいか、小さいかによつて決するものでございます。と同時に、國家が受ける利益が大きいか、小さいかで決定することは、いうまでもございません。そこで私は提案者にお聞きいたしたいのでありますが、現在買い上げられたる私鉄が、今日では、私の見るところによりますと、まつたく省線の一部として、離すべからざる密接な関係を持つておると思う。地方鉄道とは、その地方だけの必要によつて、地方にできている鉄道であることは、いうまでもございません。しかるに今日戰時中に買い上げられたる鉄道は、ただいま藪谷業務局長から明快に答弁せられましたように、なるほど戰時という一つ條件が、何分の一かの作用をなしたでありましようけれど、も、いわゆる社会的な條件が、もはや地方鉄道が独立して経営することが、國家公共の利害に相反するという平時的な必要、いわゆる平時立法としてこれを買收されたであろうことは、いうまでもありません。前田さんもただいま業務局長のお答えをお聞きであると思うのであります。しかもこれらの地方鉄道は省営に移しまして、もはや今日ではまつたく省線の一部である。利が身近に感じております石巻市、仙台市をつなぐ仙石線を見ましても、これを独立することは、何らの意味もない。今日ではこれはりつぱな省線の幹線とでもいうべきものであります。これを引離すことによつて、一体公共の利益に合致するでありましようか。あとでいろいろ御答弁をお願いいたしますが、公共の利益になるというならば、民間に移すことによつて、たとえば非常に運賃が安くなるとか、スピードが早くなるとか、きれいな客車に乗せてくれるとか、回数を多くしてくれるとか、いろいろこういうことがなければならないでありましよう。私たちよくわかりませんが、もしこれらのものが引離れまして再び地方鉄道になるならば、その間には運賃計算上にも煩鎖な点が起るでありましよう。いろいろな点で、私は不便が起ると思うのでありまして、これを拂下げることが、公共の利益に合致するなどということは、これこそはまことに理由のないことだと思う。すでにこれらの私鉄拂下げ反対の陳情は、單なる鉄道從業員の運動ではありません。何か世の中では、こういうものの反対運動は、從業員諸君が自分の保身術りためになさるようにお考えであり、これを宣傳もなさつておるようでありますが、これは反対であります。私のもとに参りましたごく一部の反対を見ましても、鶴見線においては、ほとんど資本家連中が反対しておる。公共の利益に反すると言つておる。こういうことを申し上げては失礼になりますが、民自党はお金持の政党だといわれております。(「ノーノー」)ノーでございましようが、世の中ではそう思つておる。その鶴見におきましては、その資本家連中が、ここに連名して持つて來ておる。読んでもよいのですが、そんなことをすると、議事の妨害とか何とか誤解されるといけないと思つて、ここでは省きますが、こういうように國民は、これを拂下げることは公共の利益に相反すると考えておる。これを公共の利益なりと考えておるのは提案者のみであります。提案者の政党のみでございます。そこで公共の利益になるということは、一体具体的には、運賃の面においてはどういうことになるのか、あるいはまたスピード・アツプの問題はどういうふうになるのか。そういう問題をひとつ具体的に御説明なさいまして、こういうものを省営から、手足をもぐようにとつてしまうと、かえつて公共の利益になるということの説明を、提案者前田さん並びに加藤政務次官及び運輸省の役人である藪谷さんから、それぞれお答え願いたいと思います。
  48. 前田郁

    前田(郁)委員 お答えいたします。佐々木さんはこの鉄道は戰時立法でなかつた、あるいは平時立法だということを、今運輸省の藪谷業務局長も言われましたので、それを非常に強調されましたが、事実これはお調べになれば、これが実質的には戰時立法であつた、その沿線というものには軍事施設がどのくらいあつたかということは、明白な事実であります。これは何人が見ましても明らかで、その事実を申し上げますれば、資料はここにたくさんあります。どの線においてもみな軍事施設があつて、そのためにやつたのであります。それが消えたのであります。すでに消滅したのであるから、むしろ社会党、共産党の方々から、この線は民営に移すべきであるという議論が、出て來るべきではないかというくらいに思つておるのであります。  それから公共の利益ということをおつしやるのでありますが、これは引渡し前の状況を調べれば明白であります。運轉回数において、サービスにおいて、これが省営になつたらどれくらい悪くなつたかということは、調べれば明白であります。それは戰爭のさ中にあつて國鉄全体として運営ができなくなり、手入れができなくなつたことはもちろんであります。これは公共の利益という観点から言いますれば、民営に移す方が確かによいということを信じておるのでありまして、これは見解の相違で、佐々木さんはよくない、こう言われるわけであります。それからいわゆる民自党のイデオロギーと、社会党のイデオロギーとは違うわけでありますから、これはイデオロギーの爭いにすぎない。そう考えておる次第でございまして、あなたも陳情書を持つておりますが、私にも日本全國の賛成陳情書がたくさん來ております。あまし來ておるので、文書箱の中には見ないものもたくさんあります。あなた方にも來ておるが、われわれの方にも來ておる。結局これは水かけ論でありまして、いわゆる民自党が天下をとれば、民自党の政策によつてやる。社会党が天下をとれば、社会党が社会正義政策を行つて行く。これは当然ではないか。その意味において、この問題も出ておると、かように信じております。
  49. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 佐々木委員の御質問でありますどちらがよく公共性に合致するかという点でありますが、これは現在の國有鉄道、また現在の私鉄との関係を見てもわかる通り、路線によりましては民営の会社線の方がよく、あらゆる点で公共性に合致しておる。また國有鉄道と申しましても、各線全部が満足に行つておる、百パーセント公共性に合致しておると申しかねる点もあります。これは今後の問題ですが、拂下げを受けた会社のやり方いかんによつて、相当公共性の点においても違いますし、これは今前田委員から申し上げた通り、いろいろ見解の相違がありますが、國有鉄道拂下げをする場合には、あらゆる点をよく勘案いたしまして、運輸当局並びに運輸省に設置されます運輸審議会において、よく公共性に合致する路線を取上げて、拂下げになるだろうと私は推測いたします。
  50. 藪谷虎芳

    藪谷政府委員 現在の國有鉄道は、旅客運賃はこの間の値上げによりまして、私設鉄道よりは大体三、三割高いところもあり、また同様のところもあります。それから貨物につきましては、國有鉄道地方鉄道よりはたいがい三、三割安であります。それから國有鉄道の一部を私設鉄道拂下げた場合に、運賃がどうなるかと言いますと、現行運賃のままであると仮定いたしまし工も、打切り計算になる点だけ高くなる。しかしながらこれを通算制度に改めますと、その点の弊害がなくなります。それからサービスの点は先ほどからお二方の御説明通り、これは賛否両論あると思います。以上お答えいたします。
  51. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 大分お聞きすることに違つたことをお答えくださつたようであります。先ほど加藤政務次官が皮肉つて、何かよく私の言葉がわからないと言われましたが、大体翻訳しなくともわかる程度の言葉だと私は信じております。ひとつそういう点でもつと質問の要点をお答えが願いたいのであります。  私の聞こうとするのは、この拂下げ公共の利益に合致するとおつしやるの、だから、これをもしも拂下げて、省線の一部から切り離してやれば、具体的にどういうふうにそれは公共の利益に合致するのか。それがわかりませんと、合致するとか合致しないとかだけでは、水かけ論でございます。これこれだから合致するのだとおつしやらなければ、この法律趣旨が、妥当なものであるかどうかということはわからない。この点誤解のないようにどなたでもけつこうですから、民自党の方と政務次官と、用向きによつて答弁をお願いいたします。
  52. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君、しばらく高橋君に譲つてくださつてはいかがですか。
  53. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 それでは留保しておきます。
  54. 高橋定一

    ○高橋(定)委員 私は本法案に対して疑問がたくさんあるので、一括して私の疑問なり、私のそれに対する意見なりを申し上げますから、提案者の方で反対の御意見があるならば、御答弁願いたいと思います。  まずこの第一條におきまして、第二項に「この法律のいかなる規定も、鉄道國有法第一條趣旨を変更するものと解釈してはならない。」ということがありますし、第四條の第二項の國有鉄道の譲渡審査会において審議すべき事項の第一号に、この線を「譲渡すべきかどうか」ということが審議されることを予定しておられるのでありますので、先ほどから問題になつておりますように、昭和一八年、十九年に買収いたしましたこの線が、はたして地方鉄道として置く方がいいのか、あるいは国有鉄道として置く方がいいのかということにつきましては、あらためて審議を要するものだと考えます。従つて提案者におかれましても、この戰時中買い上げた鉄道が、全部戰時中買上げたものであるから、これを元の所有者あるいは関係者に、当然拂下げるものと予想されておるものではないと解釈するものであります。次に第五條鉄道の譲渡價額、この價額を見ますと、地方鉄道法の第三十一條から第三十三條までの規定を準用して算出した金額を基準とする、こういうことになつております。最後に公正妥当に定めるということにはなつておりますが、この書き方で行きますと、どうしても帳簿價額ないしは買収したときの價格、あるいは譲渡を希望されるところの希望價格に近い値段で、これがきまるように予想されるものでありまして、当然この基準は一つの基準としてさしつかえないと思いますが、時價をさらに基準に考えて、時値評価というものと、この地方鉄道法の買収價格をきめる規定とを並行して、値段をきめるようにしなければいけないと考えるものであります。また非常に問題になりましたところの、この地方鉄道の線を譲渡すべきかどうか、またどういう價格できめるかということを、國会がこの譲渡審査会にまかせばなしにするということは、國会として責任を回避するものと考えまして、どうしても運輸大臣がこれらを決定するにあたりましては、再びこれは國会の承認を求めなければ、國民の疑惑を招くおそれもあるというふうに考えるのであります。私はどうしても本法案を適当に修正して、そして再び國会の同意を求めるという條項を挿入しなければいけないと考えるものであります。  次はさつきから問題になつておりました第八條の二項、これは今佐々木さんから言われましたように疑惑を――疑惑といいますか多少疑問となるものでありますから、本項はむしろ削除すべきものだと思います。  次は二十二條でありますが、二十二條におきましては、この法律によつて鉄道の譲渡を受けました場合に、税金の減免の規定があります。税金の減免を、あらかじめこの國会においてきめてしまうということは、非常な行き過ぎであり、あるいは不当であると考えるのであります。從つて第二十二條は当然削除すべきものだと考えるのであります。それからすでに御承知のように、あるいはラジオで、あるいは新聞等において、民主自由党提案として、戰時中買い上げた地方鉄道拂下げ問題というものは、世間の耳目を衝動さしておるものであります。礎つて私の考えでは、運輸省の設置法に基きまして、運輸省に新しく設けられる運輸審議会にこの権限を持たしてしまうということは、事柄の性質上、適当でないというように考えるのであります。從つて運輸審議会は王業の普通の免許認可等の事項を取扱うということにいたしまして、本譲渡に対する審議は、本案にあるような國有鉄道譲渡審査会というものを別途設ける方が、妥当と考えるのであります。特にこの法律を通覧いたしますると、これは譲り渡しを希望するところの方々に、やや有利に立案されているように考えられる各條項が、あると考えるのでありまして、どうしてもこれは運輸審議会なり、あるいは譲渡審査会というものに一任しないで、再び國会にこれを提案さして、そうして國会の承認を求めるという條項を、ぜひ挿入すべきだと考えるのであります。これに対して提案者の御意見があれば、伺いたいと存じまする
  55. 前田郁

    前田(郁)委員 たくさんございましたので、落ちているかもしれませんが、そしたらまた御発言を願います。  第一点は御質問通りでございます。第二点の譲渡に関する御質問でございまするが、実は先ほど連合審査会のときにも申し上げました通り、私どもは今高橋委員のおつしやつたようなことを勘案いたしまして、鉄道の譲渡の價格は、当該鉄道の買収價格及び買収後当該鉄道に関し支出された建設改良費に、時價及び当該鉄道の企業収益力を参酌して公正妥当に定めるものとす、こういうようなふうに今考えております。これもあとで御相談申し上げたいと考えております。それから第三点でございますが、委員國会の同意を得てやつたわけでありまするから、私どもはこの運輸審議会にりつぱな方が選出されますれば、あらためて國会で承認を得るというようなことをしなくてもいいのじやないか。こう考えているような次第であります。それから第四点でございますが、これは第一條目的をスムーズにやるために規定したわけであります。第五点の本案委員会審議会も、組織、権限が同じようなふうになつておりますので、もしこれを存置するということになりますれば、多少かえなくちやならぬと思います。それ、だけ申し上げておきます。秘の減免の問題は、私よりも鮫島第三部長に論明してもらつた方がはつきりしております。
  56. 鮫島眞男

    鮫島参事 これは私の方では提案者の御趣旨を承つて、ただ法文化いたしたわけでございますが、その承つたときの御趣旨として私が了解いたしましたことは、第一條目的をスムーズに達して、拂下げを円滑に行うために、この程度の減免を行つた方がいいだろうというような御趣旨でございまして、その御趣旨に從いまして法文化したのが二十二條でございます。
  57. 松本一郎

    ○松本(一)委員 先ほど佐々木君からたびたび提案者に対する御質問で、そのうちに民自党という言葉がしばしば使われております。提案者民主自由党所属の五人の議員であることは、御承知の通りであります。この中に社会党が一人入つておるとよくわかりますが、民自党ばかりですから、わかりにくくなつたのかと思います。それというのは前田委員の御答弁にも、役員会あるいは党議でこれは決定して、この案が提案されたものであるという午前中の御答弁でありました。しかしながら私どもの方の役員会並びに党議では、戰時中買收したかような鉄道拂下げて、そうして國鉄全体の赤字を補填をして行くというようなことの原則的なことの相談は、しばしば行われ、決定いたしております。しかしながらこれをその当時賣り渡した人、すなわち縁故特賣という点に限定するやいなやというような問題とか、または本法案八條のいわゆる國有財産法の第三十一條の法規を適用するかどうかという問題とか、今も御質問があつたような地方秘を免除するというような二十二條、こういうようなこまかい問題については、実は協議はなかつたのであります。ゆえに本法案提出の詳しいことは、提案者に御説明を願わなければならぬのでありますが、この点だけは党と本法案との関係を御承知おき願いたい。これは廣く國民の注視いたしておる問題だけに、民主自由党所属の私として申したのであります。次いで佐々木君の御質問前田君は、民主自由党國営事業を徐々に民営に移すという根本的なイデオロギーの問題を答弁されておる。しかも一月の過般の総選挙に、民主自由党所属議員は、有権者心これを訴えて、当選して來ておるというような御答弁であつたのでありますが、これとても前田君のお考えである。これが吉田総裁、総理大臣の御答弁であれば、われわれその責任をとらなければならない。鹿児島においてはそうであつたかもしれませんけれども、その他においてはそうではない。事きわめて重大でありますから、どうぞこの点誤解のないようにお願いしたい。これは後ほど政務次官が答弁をかえて、いたされておりますから、はつきりいたしております。非常に重大な問題でありまして、國鉄全体の將來にかかわる問題のみならず、数十万の従業員、八千万の國民の大問題である。この長い歴史、國有事業として発達して來たわが國の國鉄、これが微々だる島國のちよんまげの日本が、明治、大正、昭和の七、八十年の間に、世界三大強國の一つ、六百万トンの船舶團を持つ日本にまで躍進して來たのには、この國鉄の非常な力がそこにあつたことを、私どもは見のがすことができない。これが民営事業でなかつた。國営事業であつたということをよく承知しなければなりませんので、四等國になり下つた日本國民が、いま一度平和國家として、國民生活のレベルを高めて、平和に、幸福に八千万民族が生活して行かんとするならば、この事業を國管で行くべきか、あるいはアメリカのごとく民営に移すべきかということは、大問題でありまして、ある筋の指令書の中にも、國有鉄道拂下げる場合には、國民投票にすべし、但し戰時中必要があつて買收したものを、この際必要がなくなつたから拂下げる場合においては、これは別である。こういう指令書も私は見たのであります。でありますから、これだけを拂下げられたからとて、今後の國有鉄道國営事業に、今前田君のお話になるようなことは、万々なかろうと思うのみならず、民主自由党の政策にもいずこにもない。重要産業國有國営、これは社会党の政策である。重要産業は民有民営でやると言つてはいない。それは國有事業としてすでにやつておるものをさすのではなくて、民有民営でやつておる重要産業を民有にしておくか、國営に移すかという問題である。また自由資本主義、こういう從來の古い考え方を持つ者は、民自党の代議士の中にも、おそらくこれは少数だと思います。新憲法のもとに、國家機構は御承知の通り周度化しております。資本家もよし、労働者もよし、労資一体、協力一致、和をもつて尊しとなす、この根本精神で行かなければ、今後の平和國家日本はおそらく再建できぬ。西と東に世界はわかれておる。中華民國御承知の実情であります。この際私どもはつとめてこういう考え方のもとに、國の事業を処置して行かなければならぬのじやないか。そこで本法案の戰時中買收したものを、今その縁故に拂下げることについて、この法案八條といい、あるいは二十二條といい、いろいろな面からながめてみて、あまりに縁故特質の色彩が濃厚でありはしないかという点が、おそらく問題だと思います。これは見方によつて違いますけれども、大体戰時中犠牲を拂つてそうして買收したものである。これは前田君の、御答弁にある通り、その必要がなくなつたからこれだけは拂下げてはどうだろうというのも一方の見方でありまして、これはおそらく多数の共鳴者もあろうと思います。ただ問題は價格の問題であります。またこれを賣卸することによつて運輸省の國鉄事業全体に、どれだけのいわゆる補いがつくかどうかということでありますが、そこでいわゆる公共の利益というその上の書き方であります。片方公共の利益ということが、上にはつきり書かれておりますが、その下には、いわゆる旧会社、あるいは縁故のある会社、これはもうすでに旧会社、縁故りある会社は特定のものであります。その先の公共の事業という書き方は、抽象的であつて特定ではありません。その点を佐々木君も御質問なされたものと思います。私もこれは提案者お尋ねしたいと思いますが、すなわち一方では特定の、いわゆる拂下げ先は人を指定しておるのにかかわらず、片方の公共の利益という点においては、具体的に何ものも指示されておらぬ。ここに大きな疑惑を生ずると思いますので、いま一度提案者である前田さんの御説明を伺つておきたい。かように考えるのであります。  それともう一つお尋ねしたいのは、民有民営にこれを移しますと、今後公共の利益のために、やはりこの電鉄なり私鉄は、できることなら永遠に連行されて行かなければならぬ、またできることなら、もう少し設備もよくし、サービスもよくして、地方住民の福利民稿をはかつていただかなければならぬと思うのであります。但し民有民営に移したその特称は、これを第三國に賣却されようと、いずれの國に処分されようと、自由であることは御承知の通りと思います。そのときにいわゆる共産党のいわれる民族資本を賣るものというような声が出て來るのでありますが、決して民自党には、民族資本を賣るなどということを、ゆめにも考えておる人は一人もありません。私どもは園長資本主義というものを常に考えておるのでありますが、個人の資本に移りましても、それが公共的性質を持ち得る事業であります。すなわち電鉄、私鉄のごときも、ところによつては敷地を提供されたところもありましよう、あるいは駅舎を提供されたところもあります。私も今の近鉄敷設に関係しておつた者でありますが、その当時地元の犠牲をお願いして、提供を受けております。そういう関係において考えたときに、個人の持株にこれがなつた場合、それがもし第三者に賣られる。しかも行く先が遠方であるということは、かつて一等國の当時の日本ならば、ゆめありますまい。但し敗戰國として、往々にして誤つた考え方の外資導入などを言わんとする者があるとき、そういうことが実は危險でありますので、この拂下げを受けた会社は、その持株を少くとも十年ぐらいは轉賣まかりならぬ、その会社責任を持つて――そうしてこの法案の中にも、從業員に対して相当心づかいの法文があります。これはけつこうと思います。それで経営に当つていただかなければならぬと思いますが、こういうような考え方でお考えになつて、この法案は御作成、御提出願つたものかどうかということを、提案者お尋ねいたしたいと思うのであります。また先ほどの高騰さんと同じことでありまして、地方税の問題とか、あるいは五箇年計画、この問題について私も意見がありますが、一應質問も大方盡きておりますから、私はおもな点三つばかりお尋ねをいたしまして、そうして修正意見については相当持ち合せておりますが、これはまた後ほど協議会のとき申し上げたいと思います。とりあえずお尋ねをいたします。
  58. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいま同じ党派である松本君から妙な質問がありまして、すこぶる不愉快に思いました。いやしくも提案者の筆頭に、わが党の幹事長の名が連ねてあり、並びに政調会長の名が連ねてある。われわれ党を代表する理事が全部名を連ね、委員長は当時選挙のために郷里に帰つておりましたが、これだけの者が承認したものを、一体松本君はどういう点でこういうことを言われるか、その心理状態を疑わざるを得ないのであります。それについて御意見を伺います。そのほかはあとにします。
  59. 松本一郎

    ○松本(一)委員 私の申し上げたことを、たいへん前田君はお聞き違いをされておる。要するに先ほどの佐々木君の御質問に対して、前田君は、すなわち民主自由党は、國営事業を將來民営に移すということを選挙に訴えて來たと言われたから、そこが非常な大きな問題になつて來ておる。そう訴えて來たと言われるが、民主自由党はいついかなるときも、國鉄全体を民営に移すというようなことを、掲げたこともなければ、言つたこともありません。おそらくかような大問題は、國民投票にでも訴えてやるということは別として、將來相なるべくは、これは國営事業としていつまでも発達させたいと考えるのであります。前田さん、この点はお考え違いのないようにお願いいたします。  それから今かんじんの第一條と、それから將來この株式が轉々と他に買いさらわれることのないように、ということを実は考えておりますので、そういうことの心配がないように、これを法制化するときには、考えておいた方がよくはなかろうかと思うのであります。その点についての御意見を伺つておきたいと思います。
  60. 前田郁

    前田(郁)委員 松本君が言葉じりをつかまえて言われるので、私どもも一應釈明せざるを得ない。この間の選挙に、國民に訴えた國営事業を民営に移す問題でありますが、これは一昨年の選挙のパンフレツトをごらんになればよくわかる。また速記録をごらんになればわかりますが、一昨年の選挙並びに昨年の選挙においても明らかである通り、わが党がそういうような政策を持つておるということを、申し上げたわけでありまするたとえば一昨年のパンフレツトをよくごらんを願いまして、十分ひとつ檢討してもらいたい。そういう点についていろいろたくさん質問がありましたから、その点をお答えしたようなわけであります。それから第一條と第四條の公共の利益は、この法律目的とするものでありまして、抽象的に表現をしたものであるということを、御了承願いたいのであります。
  61. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は松本さんから非常に重大なことを聞きまして、びつくりいたしました。これは本法案審議する上におきまして、まずその資格の問題を決定しなければ、この法案審議を進めることはできないと思うのてあります。と申しますのは、一体この法案提出者はだれであるか。いかなる資格においてこの法案提出されたのかということが、ここに問題になつて参りました。提案者の資格を決定するということは、これはいかなる法律案の内容にも先だちまして、先議すべきものと私は考えるものであります。そこで先ほど午前中でございますが、大藏委員質問に対しまして、前田さんは、この法案は單にここに記名しておるところの六名の人のみではない。民主自由党の党議によつて民主自由党を代表して、これが提案されたものである。こういうふうなお答えでございましたので、私たちは民主自由党民主自由党というふうに、党の責任者にこの答弁を求めたのであります。從つて先刻委員長も、この提案者前田さんのみではないから、民自党のどなたかでも、これに対する答弁をなさる人がある場合には、それらに質問してくれということで、私は了解したのであります。このことにつきましては、午前中に大屋運輸大臣も、これは党の責任においてこの法案提案されたものであるということを述べられたのでございまするが、ただいま聞きますると、松本さんのお話では、この案の大部分のことについては、党においてもこれを決定いたしましたけれども、第八條並びに二十二條のごときものは、党はこれを決定しておらない、こういうお話でございまして、提案者を代表いたしました前田さんの御答弁の、國有鉄道を漸次民営に移す。その一段階としてこの法律案は出すのだ。こういう御答弁は、民主自由党のあずかり知るところではない。こういうお話でございましたので、これは單にここに出ておりまする六人の人の御答弁のみでは、私は提案者の資格の問題で了承できません。ただいま佐藤榮作氏がお見えのようですが、多分そういう提案者の一人として御出席なさつたのだろうと思うのでございます。そういう方の御答弁のみでは、私は決してこれが民主自由党責任をもつて提案だということは、承認できません。少くともこれは総裁である吉田茂氏に出席を願つて、その吉田茂氏の口から、これは民主自由党の党議による提案であるということを、ひとつはつきりとお聞きしない間は、この法律案審議を進めることはできない。つまり提出資格というものが明確にならない。だから私はこの法案の内容の審議は一時中止されまして、吉田内閣総理大臣に御出席をくださるように、ひとつ委員長から要求してくださることを、ここで提案いたします。
  62. 稻田直道

    稻田委員長 委員長から申し上げます。吉田茂氏は提案者ではあ力ませんから、提案者趣旨弁明をさせます。提案者の一人として佐藤榮作君が出席しましたから、それに質問してください。それでないと質問は許しません。
  63. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 さつきから見ておりますと、私が聞こうとすることに対して、同じ民自党でありながら、松本さんはこの案全体に対しては、民自党責任は持てないということを申された。第八條並びに二十二條は自分は知らない……。
  64. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君、議事進行を逸脱しております。提案者が來ましたから、前会に引続いて質問を許します。
  65. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は委員長はまことに横暴だと思います。ただいま申し上げましたように、この案の提出資格の明確でないことについて、議事進行で私が発言を求めておるのに対して、吉田総裁の出席を求めることが、私の議事進行の範囲を逸脱すると、いうことは、了承ができないのであります。委員長の申されることが正当でありまするならば、委員長は当然衆議院規則によつて委員会を整理し、必要によつては、その発言を禁止することもできるのでございまして、私も委員長の権能についてはこれを認めるものでございます。從つて委員長のそういうような御命令を認めるということは、委員長の御命令が適法であるということが前提であります。委員長が私の発言を禁止することが適法である場合には、私はこれに対しまして從う義務がありまけれども委員長の御命令が適法でない場合におきましては、私は委員長に抗議する権利があると思うのでございます。從つて私はただいまの委員長のお言葉は、非常に不穏当と思うのでございますが、私の議事進行に対する提議はただいま申しました通り、この法案提出責任は、民自党全体で背負うものかどうか。それを先ほどから聞きますると、民自党の中に非常な意見の相違がございます。それが直に民自党責任ある提案であるかということを、その総裁であり、責任のあるところの吉田茂氏に聞かなければ、わからない。從つて私が吉田茂氏の出席を求めることは、当然でございまして、私の発言が議事進行を逸脱しているということには、ならないと思うのでございます。そういう意味で、私は議事進行として、議案の審議を進める上におきまして、吉田茂民自党総裁の出席を要求するものであります。
  66. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木委員に申し上げます。政府の総理大臣として出席を請われるならば、私は委員長として吉田茂氏に出席を求めることもやぶさかではないけれども提案理由説明ならば、提案者にしてもらえば十分であります。議事進行はもういいです。一ぺんでいいです。もうわかりました。
  67. 佐藤榮作

    ○佐藤榮作君 私提案者の一人として、ただいまの佐々木君の疑問としておられる点にお答えをいたしたいと思います。私ども國会の正規の手続によりまして、提案者の一人としてこの考案を出したわけでありまして、その提案者責任は、私どもにも実ははつきりわかつているのであります。ことに國会生活において経験のあられる佐々木さんが、提案者以外の御出席を求められることは、どうも私ふに落ちないのであります。
  68. 松本一郎

    ○松本(一)委員 先ほど佐々木さんから、私が言うたことについて、この法案なるものは民主自由党責任において出したのか、出さないのか、同じ民自党の議員でありながら、松本氏はごの法案について知らないと言わぬばかりの発言であつた、私が発言しましたことは速記をごらんになれば、はつきりわかります。私は間違つたことはゆめ発言しておりません。ところが、本法案前田君の言われる通り、役員会並びに代議士会等を通じて、原則的にこの法案を決議されたものであります。ゆえに戰時中買收したところの鉄道を、その用がなくなつた今日、これを拂下げるということはきまつでおります。それに基いて有志の方々が出されたものであります。これを党の代表と見るかいなかはともかくも別として、党員の私どもとしては、この法案については、原則的には申すまでもなく賛成である。但し、この内容の微々たる点においては、代議士会にも役員会にも、協議のなかつた点はあります。ゆえに本委員会の一員として、運営委員責任において、この内容について多数の御意見で修正をすることにはやぶさかではないのであります。ゆえに先ほど高橋氏も数項にわたつて修正意見を出されたのでありますが、これを見ても御承知の通りであります。ゆえにこの内容においていわゆる國民に納得の行くように、日本の運輸事業が今後ますます発展し、赤字の累積を克服して行くという上に、どうすればよいかというようなことは、この内容において、相当修正もいたさなければならぬのではないか。先ほど私は一番しまいに、修正意見を持つておると、こういうことを申したのであります。どうぞ社会党におかれましても、こういう意味をよく御了承願つて、御発言を願いたいと思います。
  69. 稻田直道

    稻田委員長 佐々木君、先ほどの質問を継続してください。議事進行はもう許しません。わかりました。
  70. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 それでは質問の態度で、答弁のための出席要求でけつこうです。先ほどから前田さんの御答弁と、それから政府を代表する政務次官の御答弁の内容とが、大分違うようでございます。つまり前田さんに答弁させますと、この法案提出した理由は、民自党が数回にわたる選挙において、國民國有を漸次民営に移すということを公約している。從つてその民自党の精神に基いて、そういう政策の一環として、この法案を出したものであるから、歳町中政府が買收した鉄道讓渡に関する法律案は、國有鉄道を漸次民営に移す一つの段階としてこれを出したものである、こういうことを御答弁なさつたことは明らかである。数回にわたつて私はこれの確認を求めたのでございます。これに対しまして加藤政務次官は政府を代表いたしまして、このことと、その民自党との政策は決して一致しているものでない、同一ではない、言葉は多少違いますが、そういうことを申されておるのでございます。なるほど、この提案者民自党でございまして、政府ではないという形式論は立つかもしれませんけれども、現在の吉田内閣民自党内閣でありまして、なるほど民主党の連立派と申しますか、三十幾名かの人が参加しておりますけれども民自党だけで二百六十九名かございますので、これはりつぱな單独内閣と、そう本質的には見たところで間違いがなかろうと思うのでございます。從つて、かかる完全なるところの政党内閣におきましては、民自党の政策と政府の政策とは、一致することが原則であろうかと存ずるのであります。もしも、かかる完全なるところの絶対多数を擁する政党内閣において、政府の政策と、その母体である民自党の政策が相反するがごときことがあつては、政党政治の自滅でなければならないのであります。從つて、当然提案者政府の見解というものは、一致しなければならないはずであります。それが一致しないという場合は、これ以上は政府の最高責任者である総理大臣吉田茂氏、同時に政党内閣の総理大臣、政党の総裁であるところの吉田茂氏に、このことに関するところのはつきりした責任ある御答弁を願わなければならないのであります。なるほど、委員長が申されました通り、この法案民自党提案したと言いましても、これに署名しております者は六名ですから、吉田茂氏は提案者ではないという一の詭弁が成立つかとは思いますけれども、それはあくまで詭弁でございます。しかし、それはしばらくおきまして私は論じません。いわゆる民主自由党の総裁であると同時に、内閣総理大臣である吉田茂氏、そういう両面の資格を持つている総理大臣吉田茂氏の、ここにはつきりした責任ある答弁を求めるために、内閣総理大臣の御出席をあくまで私は要求したいと思うのであります。委員長におきまして、しかるべくおとりはからいをお願いいたします。
  71. 稻田直道

    稻田委員長 委員長は現段階においては、総理大臣でなくても、あなたの質問には提出者で十分だと思います。
  72. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 委員長は、あなたは委員長でありまして、佐々木更三でありません。あなたがそう思うということはあなたのかつてなんだ、私は衆議院議員佐々木更三の資格において、内閣総理大臣吉田茂氏の出席を要求する。あなたは委員長としてこれを取次げばいい、これを拒絶する何らの権能はない。
  73. 稻田直道

    稻田委員長 委員長の意見を問うということだから、そう答えたんです。
  74. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 委員長は私の要求に基きまして、内閣総理大臣吉田茂の出席を要求してください。吉田茂氏の出席がない限り、私は私の質問を留保します。衆議院議員が内閣総理大臣答弁に呼ぶ権利はあるはずである。内閣総理大臣が何だ、われわれは國家の最高権威である議会の代議士である。議会の代議士が吉田茂の出席を要求できないというばかなことがあるか。だから私はあくまで吉田茂の出席を要求する。吉田茂がここに出て來て答弁するまで、私は質問を留保いたします。本会議において緊急質問等をいたしましても、私は当然吉田茂氏が出て來まして、かかる不統一な政策に対しまして、吉田茂氏はいかなる見解を持つか、私はその答弁を要求しなければなりませんので、委員長においてしかるべく手続をされることを要求いたします。
  75. 稻田直道

    稻田委員長 要求するのはかつてであるが、先ほど委員長の意見はと言うから、委員長はその必要はない、提出者がいるから、提出者で十分であると認めるというのであるが、あくまでそう言うならば、この委員会の総意にかけて決します。  ただいま佐々木君が総理大臣出席を求めなければ発言しないと言うが、これについて委員各位の意見を徴します……(発言する者おり)あなたに発言を許しておらぬ。
  76. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 出席委員過半数に達しない、これでは流会だ。流会で成立しないから、あらためて定足数をそろえてやつていただきたい。
  77. 稻田直道

    稻田委員長 それでは佐々木君の意見は留保しておきまして、あと質疑を継続します。門司亮君。
  78. 門司亮

    門司委員 私はただいま委員長佐々木君の間の議論も一應聞いたのでありますが、自体法案提出については、二つの行き方があるということは各位の御了承の通りでありまする國会に対する提出といたしましては、政府提案するものと同時に、議員の提案するものとがあるはずであります。從つて議員提出のものに対しましては、その決議されましたものを受け入れ、忠実にほんとうに執行する機関でありまする政府当局の意見をただすということは、当然であります。從つてその政府当局の最高の責任者でありまする総理大臣に意見を聞くということも、また議案審議の当然の結論でなければならないと思うのであります。しかるにもかかわらず、佐々木君の発言に対して、これを委員会の議決をまつてなそうというがごときことは、明らかに議員の権能を抑制するものであると私は考えるのであります。從つてこういう重要な法案提案されました場合においては、これの執行に当る政府当局は、一大決意がなければならないと私は思うのであります。私どももここに同じように、総理大臣出席を求めまして、本法案可決されました後における、政府の執行に対する決意をお聞きしなければならないと考えておるのであります。從つて私も同じように総理大臣出席を要求する一人でありま  それから同時に申し上げますが、大藏大臣がここにおいでになつておりませんので、あわせて大藏大臣出席を求めて聞くことがいいと思いますが、運輸省の次官がおいでになつておりますので、アウト・ラインだけでもわかれば、御答弁をこの際願つておいた方がよいと思いまして、聞いておきます。それは本年度の予算の数字の中で、たしか数字ははつきり、覚えておりませんが、三十五億程度國有財産拂下げが歳入に見込まれております。経つてその歳入見込みと、この拂下げと関連があるかどうかということであります。これは國の歳入関係に非常に関連がありますので、その関連をどういうふうに持つておるかということを、一應聞いておきたいと思います。
  79. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今御質問の点の三十何億でありますが、本案と三十何億とは関係がありません。
  80. 門司亮

    門司委員 それで一應了承いたしましたが、その他についてお聞きしておきたいと思いますることは、先ほどから非常に議論の中心になつておりまする第一條公共の利益の問題であります。これの解釈を提案者はどういうふうになされておるかということであります。いわゆる公共の利益というものは、非常に廣いのでありまして、公益という文字を簡單に使いまするが、公益は國全体の公益の場合もございましようし、また一局部に限られたものも必然的に私は出て來ると思うのであります。この場合における解釈は一体どちらをおさしになつているか。これはわかりにくいと思いますが、私の申すのは、この公益というものは、これを主として利用するものをさすのか、あるいは國全体の利益をさしているのか、その点を明確にまずお答え願つておきたいと思うのであります。
  81. 前田郁

    前田(郁)委員 公共の利益という問題でありますが、これは午前中からいくたびかお答え申し上げました通り國民全体の利益に合致する、こういうふうに私は解釈いたしております。
  82. 門司亮

    門司委員 ただいま國民全体の利益と、これを解釈するというお話でございまするが、國民全体の利益という言葉は、これの拂下げによつて國民全体がむろん利益を得るということ、この利益の中にはまた二つの種類があると思う。その一つは、いわゆる財政的に見て國家全体の利益であるということと、これを利用する國民の利益ということであります。さらにこれが産業上に及ぼしまする一つの見方であります。これは非常に見方が違いまして、鉄道を黒字にするか、赤字にするかという鉄道自体のものの考え方と、これを拂下げて、よつて來る住民の生活と、さらにこれを基本といたしまする生産の問題も、考え合せなければならないのであります。從つてこの公共の問題は、ただ單に國全体と仰せられましても、了承するわけに要りませんので、その点もう一應お聞きしておきたいと思うのであります。
  83. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいまお申し述べになつたようなことも公共の利益でありまして、これをこまかく分類して申し上げるということはなかなか困難なことでありまして、ただいまおつしやつたようなことも、そのうちの一つであろうかと思います。
  84. 門司亮

    門司委員 私が聞いておりますのは、おそらく提案者はいろいろ答弁を長い間なされておりますので、その間の食い違いが生ずると困るというような警戒心から、さような御答弁をなさつたと私は解釈いたします。そこで私は、むしろ提案者答弁なさいましたのを一應引用して申し上げてみますると、この法案趣旨にも書いてありまする通り國鉄赤字をどうするかということについてのお考えがあつたということは、明白に言つております。次の問題といたしましては、限られたこれを利用する者の公益の問題が生れて來ると思うのであります。限られた公益の問題になつて参りますると、あなたの手元に、先ほどの御答弁では、たくさんの陳情書が参つて拂下げてくれという御意思があるということを承つたのであります。あるいはその通りかとも思いますが、また私の手元にも同じような拂下げを希望する人と、希望しない人の書類が参つております。ここで申し上げたいことは、それらの問題の選択のいかんであります。いずれを選択するかということであります。これは委員長の手元に差上げてありますので、後ほど委員各位の意思決定の際に御参考にせられたいと思いますが、ここに一つの例をとつてみますならば、南部線のごときについては、南部線を主として利用いたしております川崎市民を代表いたしまして、市会が決議をいたしまして、反対の陳情をいたしておるのであります。從つてこれら地元の公共團体の意思決定において、これの拂下げは困るということを言つております。その内容といたしますものは、産業上に及ぼす影響がきわめて大である。從つて当市がほんとうに自立して行くことのためにも、産業上にもきわめて重要である、また國のためにも非常に重要である。一私設会社にこれを拂下げるということは、國家の産業経済の上に非常に影響がある。こういう川崎市会の議決に基く、きわめて切実なる陳情であります。提案者のお手元にもいろいろな資料が参つでおるかもしれませんが、これはおそらく南部線をほとんど全部利用し、南部線が最も主たる動脈となつております当川崎市市会の決議であります以上は、一應川崎市民の総意であると解釈しても大してさしつかえはないかと私は思うのであります。從つてあなたの先ほどの御答弁公共の利益ということに関しては、これを直接利用する者は、望んでいないということの御確認を願いたいと思います。その次には鶴見であります。南部線を主体といたします臨港地帶において最も大きな東芝デイーゼル、その他を中心といたします四十五会社が、同じく拂下げ反対の陳情をしておるのであります。これはあの京濱地帶における産業機関の大部分の、反対の意思決定と見て何らさしつかえないと私は思うのであります。從つてこの二つは日本がやがて立ち上ろうとするのに、最も重要な生産に、きわめて大きな影響のあるものであると考えられますならば、私はこれは公共の利益に反する。これを拂下げることは明らかに公共の利益に反するということに相なるかと思うのであります。なおつけ加えて申し上げますならば、國鉄の單に赤字を埋めるというよりも、むしろ現在のわが國の貿易産業を背負つて立たなければならない京浜地帶、いわゆる日本における最も重要といいますか、最も大きな京浜工業地帶の全員が反対だということは、明らかにわが國産業の上にきわめて大きな影響のあるということは論をまたない事実であります。これらの二つの大きな反対の理由に対して、提案者はどういうふうにお考えになつておるか。いわゆる公共の利益ということについての解釈でありますが、それらの点をどういうふうにお考えなつでおるかということであります。
  85. 佐藤榮作

    ○佐藤榮作君 午前中私も提案者の一人としてこの席におりまして、皆様方の熱心な御審議の模様を拜聽いたしたのでありますが、その後席をはずしておりまして、たいへん申訳ない次第であります。ただいまお話になりました公共の利益に合致する限りという点が、いろいろ御疑問があるようでありますが、多分この点につきましては、提案者として前田君から、代表して提案理由を詳細に御説明申し上げたことと思います。これに関連するのであろうと思うのであります。また先ほど席を離れでおりましたが、佐々木君の御質問も多分に関連があるのではないかと思いますので、以下提案者としての意見を申し述べてみたいと思います。  御承知のように民主自由党が民営論を言つておつたということは、まだはつきりいたしておつたものでは実はないのであります。ただ私どもは総体といたしまして、民主自由党としては、民営的な経営の方がより能率的ではないか、必ずや利用者あるいは消費者その他國民に幸いするだろう。こういうことで、ひとり鉄道ばかりではありません、一般の官業であるとか、あるいは公團方式等につきまして、全般にわたつていろいろ研究を進めておるのであります。しこうしてこの鉄道を、このたび民間に拂下げをいたそうといたしまして、この法律案を出したのでありますが、これはただいま申し上げる、民自党かねての主張の基本的のものの一つというほどのもので実はないのであります。申すまでもなく思想的背景といたしましては、関連はあると御了承願つてよいかと思いますが、この民自党のかねての主張というものが、今回の拂下げ法案として具体化されつつあるということは、少し言い過ぎではないかと、私は提案者として考えております。今回提案をいたします主たる理由のものは、國有鉄道の独立採算制を保持し、しかもその観点から立ちまして、いろいろの財産その他の処分して民営に移して参るのでありますが、國利民福に反しない限りにおいては、これを実施するもまたやむを得ないのではないか。すでに御承知のごとく総理は國会におきましても、この基本的の方針を皆様方に本議場を通じまして宣示されたのであります。今回私どもは、総理のかような施政的な基本的方針もあるのでありまするし、さらに民自党といたしまして個々の鉄道線区についていろいろ考えて参りますると、その線区だけの働きの点から見ますと、あるいは民営に移しても可能だということが、考えられるのではないかというところに、まず目をつけたのであります。しかしながらただ單にかような観点からだけ、長い間の國有方式に修正を加えることは、私どもといたしましても、現段階においてはまだ実は確信が持てないのであります。そこで私どもが取上げました線区といたしましては、本日午前中に前田君からもるる説明しておりましたように、買收方式等が特別の事情下に置かれて強行されたような線区について、まず第一に地方的必要度その他を勘案して、これらの民営いかんを計画してみようというわけで、この案を実は出したのであります。そこでただいまの公共の利益云々というか――ただいま申し上げたことで、おそらく提案に至るまでの経緯なり、私ども提案者としての氣持は一應御了承願えるのではないかと思います。ただそれかと申しまして、鉄道公共の利便を提供しておりますことは、私どももよく承知しておるのでありますので、この経営形態を移すことによりまして、非常な不都合を生ずる、あるいは國家の公益の観点に立ちまして、これは総合的な意味合いでありますが、先ほど來個々の状況をるる御説明になりまして、そのいずれによるかということを言われましたが、私どもは総合的観点に立ちまして、実はこの是非をきめたような次第であります。その観点に立ちまして、いろいろこの案を審議して参りました。そうして成案を得て実は提案、御審議をお願いしておるのであります。それでただいまお示しになりました南武線の川崎地区、その他の方々が、民間拂下げについて反対されておるという事情も、実は承つております。また一面に他の線区等においでは、熱心に民間拂下げを願つておるところのものも伺つております。しかしこれらは、実はただ國会におきまして、この法案が御審議を受けるその間における、一つの参考資料となるものではないかと思うのであります。私どもは各種の條件をこの委員会を通じて公正に御審議願いたい。かように実は考えておるものであります。ただいま御指摘になりました公共の利益云々を、私どもはただ民間の事業が成立つ、あるいは運賃安いとか、あるいは貨車まわりが非常に便利であるとか、ただこれだけの観点ばかりでも実は決しかねるのではないか、ことに一定の前提というか、基礎條件をとられて、民営に移せばかくかくになるのだ。かようにきめられての、もし御議論であつたとすれば、必ずしも私ども賛成しかねるのであります。これらの点は、皆様方がこの委員会を通じて十分御審議を願いたい、かように思うのであります。公共の利益保護につきましては、門司さんの御指摘になりましたような、各方面から見たところの総合的な結論によつて公共の利益に反するやいなやを決せられるものと、かように考えております。
  86. 門司亮

    門司委員 非常に御丁寧な答弁でありますが、なお一應お聞きしておきたいと思いますことは、先ほどお話のように、一つは國の観点からというお話がありましたので、この点は一應当局にお聞きしたいと思います。当局は現状の姿の上において、提案者がけさ程から申されているような事態を承服されるかどうかということであります。いわゆる当局にまかしておけば、國鉄赤字がいつまでたつても消えない。從つて國鉄を救うためにこれを切り離すということになれば、言葉をかえて申し上げますると、少し行き過ぎるかもしれませんが、当局の現在の経営が無能であるということを、明らかに裏書きするものである、こういうふうに私は考える。從つて当局はこれを拂上げしなくても、何らかの改善を施すならば、國鉄赤字克服ができるとお考えになつておるかどうかということであります。この一点はきわめて本問題を決する上に重要でありますので、当局は單におざなりの答弁でなく、もし食料等がございますれば、資料をお出しになつて國鉄をこういう角度において改善すれば、何も民間に拂下げなくてもやつて行けるのだということを、ひとつお示し願えれば非常に本案審議する上に、けつこうだとわれわれは考えるのであります。
  87. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 当局としては、必ずしも現在当局でやつておることが無能であるとは考えておりませんが、しかし当局としては現在の國鉄経営法、やり方について、大いに改善をすべき点は認めております。また全体の大きな機構についても、かような必要が生じました関係上、六月一日からパブリツク・コーポレーシヨンとして再出発いたしまして、あらゆる点で國民の期待に沿うように進んで行くつもりでありますが、この國鉄拂下げ問題は、ただその点でなく、あらゆる條件が勘案され、しんしやくされて、法案提出されたものと当局は推定いたしております。
  88. 門司亮

    門司委員 私は非常に答弁は不満足に存じます。一体当局はそれだけの確信で、よくこの大きな國鉄運営ができたものだと思う。少くとも日本の動脈であり、日本の産業のすべて、文化のすべてを背負つておるあなた方が、國鉄経営に対して今の御答弁程度では、われわれは満足するわけに行きません。私の要求しておりますのは、この拂下げをしなければ、國鉄赤字が克服できないのかどうかということであります。これは公益の問題であると同時に、提案理由一つの大きな問題であります。從つて提案理由は一應聞いておりますのでへあなた方当局の御意見を聞くのであります。一体國鉄はこれを拂下げることによつて、黒字ができるようになるかということ、ことに私の考えておりますのは、單にこれは不要な財産、だから拂下げるというのではない。仕事は同じであります。同じ運輸事、業に從事するのであります。仕事がかわらない以上、いずれの形においてこれを経営いたしましようとも、その経営の全きを期しますならば、公共の利便にはなるめであります。國家の利益にも相反することはないのであります。しかしながら提案者の御説明のように、この法案國鉄赤字を救うものであるということになつて参りますと、どうしても私は、当局のそういう観点をはつきり聞いておかなければならぬ。國鉄から切り離してしまつて――これがほかの事業を営むということなら別であります。不用財産、だから、これを拂下げるということであれば別でありますが、日本の國にとつてこれは決して不要ではない、必要なものです。より以上改善されなければならぬものである。しかるにあなた方にその能力があるか。なければ、これは拂下げなければならぬ。しかしあなた方の手によつてこれが改善されるという御確信があれば、何を好んでここでわれわれがあわを飛ばしていろいろな議論をして、いろいろ問題を起す必要があるか。一体あなた方にそれをやられる経営能力があるかないかということを聞いておる。こういう條件のもとに拂下げが行われるということになると、これはきわめて重要な問題であると思う。これを拂下げなければ、國鉄の黒字が出ないということになると、明らかに國鉄は日本の國有事業に対して、ほんとうに自信と自覚と、さらに経営の全きを期することはできないものであるということを、私は暴露しておると思う。ことにこの線が重要なのは、ローカル線とは申しておりますが、都市近郷の路線ばかりであります。二十三線の中には、あるいは都市近郷でない線もあるかと思うが、今回拂下げを受ける路線というものは、ことごとく都市の近郷にあつて、もしこれ、が私鉄でできるならば――拂下げを受けられるならば、何人もやつてみたいというような食指の動く線だけがあげられておる。私はこの点非常に疑問を持つのであります。民間の諸君が食指の動く路線であるものを、現在の当局が経営できないというようなことで、一体どうするか。もしそうなつて参りまするならば、この大きな國鉄全体を、今の当局にはまかせておけないということになる。この点当局は腹をすえて明確に御答弁を願いたい。
  89. 佐藤榮作

    ○佐藤榮作君 実は当局に御答弁を要求しておられるのでありますが、ただいまの当局へのお尋ねは、提案者説明の不十分であつたために、いろいろ疑問が生じておられるようでありますので、提案者責任において、もう少し詳細に私ども考え方を申し上げてみたいと思います。ことに今引用なさいましたものは、提案者はかく言う。赤字克服のだめにということを言つておる。一体当局はそれだけの信念がないのか。こういうお尋ねでございます。実は提案者説明自身がたいへん御批判をいただいておると思いますので、この点もう少し詳細に申し上げてみたいと思います。私が申しましたのは、実は言葉が不足でありまして、國鉄財政の一助にもという意味でございまして、この線を賣却することによつて赤字が克服できるというわけのものでは絶対ないと思いますりこれは別な観点において、國鉄当局考えられることだと思います。私どもがこの買收線区を選びました際には、先ほども申し上げましたように、この國有一体性をそこなわずして、そうして戰時中に特殊の事情で買收した線区であるがゆえに、國鉄財政の一助とも考えて、実はこの際民間に拂下げをしたらどうかということの御審議を願うということで一提案をいたしたということを申しておるのであります。実は御承知のごとく、私は鉄道に長い間奉職いたしておりますので、鉄道の線区をいろいろ小わけしてみますと、いわゆる幹線的な使命を持つものとか、あるいは準地方的な機能を持つものであるとか、いろいろ線区によりましての、それらの使命が考えられるわけであります。この総体の機能に重大な支障があるようなものでありますれば、これは私どもといたしましても、基本的な民営形式というものを考えない限り、民間拂下げの決意は、実はようしないのであります。しかし今回ここに出されました線は、主として準地方的の交通の機能を果すようなものでありますし、御承知のごとく從前はすべてが地方鉄道として経営されておつたものであります。地方鉄道として経営いたしますものは、主して地方交通の用に供するということで、実はやらしておつたのであります。それが戰時中の特別なる環境のもとにおいて買收された。経つてこれが平時的方式において買收されたものならばともかくも、そういうものとは違うのである。從つて線区といたしましても、その機能を見ますと、在來の買收したものとは、その使命も幾分か違つて來ておる。こういう点に実は目をつけまして、これを民営に移したらどうかということを考え、同時にそれが國鉄財政の一助にもなるのではないか。総理が申し上げておりますごとく、いろいろたけのこ生活をやるのだ、こういう考え方も実はあるわけでありまして、本來の機能をそこない、公共の利益に反するようなことでありますならば、いかにたけのこ生活といえども、私ども賛成はいたしかねるのであります。ただいま申し上げるような説明を附加いたしまして、おそらく当局に対する御質疑は、これで御了承願えるんじやないかと私は考えます。
  90. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 今の御質問で、國鉄は経営に対して自信があるかというお尋ねであつたと思いますが、この拂下げ路線はもちろん、全般の國鉄経営に対しましては、最近國鉄の独立採算制を要望せられ、六月一日から公社として発足いたしまして、当局としては國鉄全般に対して独立採算制を堅持する覚悟であります。御質問拂下げ路線の問題でありますが、これも國鉄全般と同様な決心であります。しかしこの拂下げのものは、特に本法案にも書いてありますように、戰時中というような字句もありますし、また今佐藤議員から発言がありましたように、いわゆる國有財産拂下げて、國有財政の一助とするというような観点、また客観的に國鉄として赤字の克服をやる自信があるかないか、または民営の方がよいかということは、議会において皆様の御審議にまつよりほかにないと思います。
  91. 門司亮

    門司委員 けしからぬ答弁だと思います。私は何も議会に聞いているのではありません。私は当局に聞いておるのであります。それじや、國会がもしこういう案を否決いたしますならば、あなた方は黒字で御経営ができるという御確信がありますか。私が聞いておりますのは、そういうことをお聞きしておるのではありません。今拂下げ理由の中に、先ほど佐藤議員からも申されましたが、國鉄赤字克服の一助としてという、非常にやわらかい言葉にかわつて参りましたが、前は大体赤字の克服ということを言つておいでになりましたが、今度は大分様子がかわつて來ました。かわつて参つたことは別に問題はありませんが、それにいたしましても、これを國鉄赤字を埋めることの一助としても拂下げなければならないほど、当局は一体これの経営ができないものかどうか。私が聞いておじますのは、非常にくどいようですけれども、この事業が不要なものであつて拂下げなければならぬというなら、私は了解するのです。ところが同じような仕事をやはりやろうというのです。違わない仕事をやるのなら、民間でやつても、國営でやつても同じことだと思う。一体國営でこれができないかということなんです。その点を明確にしておいてもらいたい。  それからついでに申し上げておきますが、先ほどから戰時中という言葉も出て参つたようでありますが、戰時中に買收されたものは二十二線である。それなら、どういう角度から本線だけをお選びになつたかということでありまして、この点についても御答弁を願いたいと思います。
  92. 加藤常太郎

    加藤(常)政府委員 先ほど御答弁申し上げた通り当局といたしましては独立採算制の堅持その他から考えまして、独立採算制を堅持する自信があるというのであります。
  93. 佐藤榮作

    ○佐藤榮作君 その点は午前中お話をいたしたかと思つておりますが、この本線は特に会社が存続されて、ことにその存続も、臓時法規によりまして金融によつては株式だけ持つている会社になつております。実は非常に異常な方法で、今会社が存続しているのであります。そういうようなものは、いずれ何らか処置といいますか、会社といたしましても本來の事業形態に、組織もかえるべき筋のものでございます。そういうようなことも一つ考えるわけであります。しかしこの第一條そのものから見ますれば、十八年及び十九年云々となつておりまして、必ずしも線区がそれだけに限定はされない書き方ではないかと私は思つておりますが、いかがでございましよう。
  94. 門司亮

    門司委員 今の御答弁は私にはまだ実は了解ができないのであります。それは限定されていないというようなお言葉でありますが、この條文から見ますと、やはり戰時中という言葉も出て参りますし、戰時中なら、同じように戰時中に買收したものも、やはり同一の形の上においてとることが正しいと思います。同時にまた会社が残つているというお話でございますが、なるほど会社は、あるいは、バスの経営をやるとか、いろいろな形で多少残つているということは事実でありますが、しかしそれのみによつて、これをどうしても縁故拂下げをしなければならないという理由にはならないと私は思います。
  95. 佐藤榮作

    ○佐藤榮作君 第一條に「政府昭和十八年及び昭和十九年に今次の戰爭の必要に基いて」云々とあります。その間に買收いたしましたものが三十一線になつておりまして、そのうち十線が会社が残つておるということを申しておるわけであります。
  96. 稻田直道

    稻田委員長 午前中からで皆さん非常にお疲れであろうと思いますので、爾余の質問は次に讓りまして、本日はこれをもつて散会したらいかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 稻田直道

    稻田委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後六時五十八分散会