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1949-04-28 第5回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年四月二十八日(木曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 稻田 直道君   理事 大澤嘉平治君 理事 岡村利右衞門君    理事 關谷 勝利君 理事 前田  郁君    理事 佐伯 宗義君 理事 佐々木更三君    理事 田中 堯平君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       平澤 長吉君    鈴木 明良君       高橋 定一君    滿尾 君亮君       志賀健次郎君    中垣 國男君       米窪 滿亮君    柄澤登志子君       飯田 義茂君  出席國務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君  出席政府委員         運輸政務次官  坂田 道太君         運輸政務次官  加藤常太郎君         運輸事務次官         (鉄道総局長         官)      加賀山之雄君         運輸事務官         (同総務局長) 三木  正君         運輸事務官         (同業務局長) 藪谷 虎芳君  委員外出席者         專  門  員 岩村  勝君         專  門  員 堤  正威君 四月二十八日  委員橘直治君辞任につき、その補欠として中垣  國男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十七日  水先法案内閣提出第一三一号) 同日  熊野線拂下反対の請願田中堯平君外一名紹  介)(第五四八号)  阪和線拂下反対の請願田中堯平君外一名紹  介)(第五四九号)  千年村を機帆船補油地に指定の請願田中堯平  君外一名紹介)(第五九一号)  奥能登線拂下反対の請願南好雄紹介)(第  六〇六号)  常盤線電化促進に関する請願原彪紹介)(  第六〇七号)  彌彦線拂下請願田中角榮紹介)(第六〇  八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  國政調査承認要求に関する件  國有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)     —————————————
  2. 稻田直道

    稻田委員長 これより会議を開きます。  國有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。
  3. 前田郁

    前田(郁)委員 本案に対する質疑はすでに十分盡されておると思います。よつてこの際ただちに討論に入り、引続き採決せられんことを望みます。
  4. 稻田直道

    稻田委員長 ただいまの前田郁君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。よつてこれより討論に入ります。討論通告順にこれを許します。米窪滿亮君。
  6. 米窪滿亮

    米窪委員 本案旅客運賃現行の六割に上げて、貨物をすえ置くという法案趣旨でありまして、私は日本社会党を代表いたしまして、この点について意見を述べで本案反対したいと思うのであります。旅客運賃だけを六割上げて、貨物をすえ置きにいたすということは、いろいろの意味において不合理があるのでございまして、そういうことになつた趣旨は、貨物を上げると物價影響して、インフレを促進するという一應の常識的な考えですが、旅客運賃を六割上げるということも、必ずしも物價の安定に悪影響を與えないと断定はできないのでありまして、これを廣義に解釈しますと、やはりインフレ促進のおそれがないとは言えないのであります。さらに海陸運賃の調整という点から見まして、現在海運は運賃の点においてほとんど経営不可能の状態に陥つておるのでございまして、これらの点を考えますと、貨物運賃を若干上げることによつて旅客運賃を六割値上げより引下げるということの方が、政治的の考慮ではないかと考えるのであります。さらに独立採算制建前から、こういう引上げが行われることが他の理由でございます。独立採算制から、こういうふうに旅客運賃を六割上げるということも一應はうなずけるのですが、ほかに支出を減らして行く点が考えられるのであります。たとえば経営合理化、すなわち今日傳えられておりますところでは、鉄道関係隠退藏物資相当ある、こういうことも合法的に、あるいは合理的に処置することによつて相当國家収入がそこから出て來るのではないか。また建設及び修理の方面におきまして、今まで鉄道関係で行われておる請負事業等が、実は結局は談合請負になりまして——この競争請負が結局は談合ということに落ちて行きまして、そこにトンネル請負ということもあるやに聞いておるのであります。そういう点を嚴格に将来取締つて、ほんとうの意味競争入札にするならば、この入札費相当軽減される、こういうぐあいになる点を考えますときに、必ずしも旅客運賃を六割上げることによつて独立採算制の形を保つということのみに、力こぶを入れる必要はないのではないか。経営合理化という点もわれわれ大いに考えざるを得ないのでございまして、從つてこの法案については相当幾多の議論の点がございますので、われわれは旅客運賃のみ六割引上げるという本案趣旨に対しては、反対をせざるを得ないのであります。以上が日本社会党反対理由であります。
  7. 稻田直道

    稻田委員長 前田(郁)君。
  8. 前田郁

    前田(郁)委員 私から民主自由党を代表いたしまして、不本意ながら原案賛成せざるを得ない理由を明らかにいたしまして、原案賛成意見を申し述べたいと存じます。  本法案國鉄独立採算制を確立し、昭和二十四度に生ずると予想せられますところの収入下足三百三十億円を補填するために、旅客運賃急行料金を約六割一律に引上げようとするものであります。なおこの法案には現われておりませんが、政府説明によりますれば、定期旅客運賃の三箇月、六箇月の割引率を廃止するというのであります。わが党といたしましては、旅客運賃大幅値上げは、すでに切り詰めるところまで切り詰めた國民大衆生活に、直接大きな悪影響を與えるものでありますから、これはやむを得ない最小適度にとどめなければならない。値上げをするといたしましても、私鉄の現行旅客運賃程度まで、すなわち約三割三分の引上げにとどめることが、適当であると考えたのであります。遠距離旅客については現行運賃においてすでに負担力限度に來ておると考えられますので、特にわが國の地形が細長い点から見まして、遠距離逓減制を拡張し、遠距離旅客負担を軽くする必要があると考えたのであります。定期運賃についても、これが急激な大幅値上げは、賃金を押えられておる勤労階級及び学徒にとつて、直接にその生活に重圧を加えるものと考えまするので、定期割引率は漸進的にこれを改めることが適当と考えたのであります。一方貨物運賃については、その輸送原債の点から見まして、現行運賃はわずかにその四三%の低位にあります。また物價に占める貨物運賃割合は〇・七七%の僅少であり、米、石炭等重要物資二十七品目について見ましても、わずかに二・六七%にすぎず、昭和十一年における両者の割合が四・六一%であつたのに比較して、はるかに低いのであります。また貨物謹賀値上げ部分は、企業の合理化によつてある程度物價に吸収せられ得るのでありますから、貨物運賃値上げが、ただちに物價に響くものとは考えられないのであります。そこで値上げ部分が容易に物價に吸收せられ、國民大衆消費生活影響するところが少いと認められる限度において、貨物運賃値上げをすることが、最も運賃原則に合致する妥当なものであると考えたのであります。なおまた貨物運賃引上げは、海陸運賃を調整して、海陸輸送分野を確立する必要からも、ぜひ望ましいのであります。  以上の観点によつて貨物運賃約五割値上げ旅客運賃約三割三分の値上げ遠距離逓減制の五地帶制を採用し、定期三月の割引率の存置によつて予算と合致する二百三十億円を捻出する修正案を持つていたのでありましたが、客観的情勢はこの修正を許さないのであります。経済原則に基く物價水準の維持はそれほど強く要請されておりますし、すでに昭和二十四年度鉄道特別会計予算も成立しておる現段階におきまして、旅客運賃約六割の値上げも不本意ながら認めざるを得ないのでありまして、ここに原案賛成意見を申し述べた次第であります。  なお、この際特に政府に要望してやまないことは、國鉄経営合理化サービスの向上についてであります。今回の運賃値上げ理由は、國鉄独立採算を確保するためというのでありますが、國鉄独立採算の確立は、國鉄経営合理化に徹底することが最大要件であります。かりに経営合理化が徹底せず、その赤字補填を安易な運賃値上げのみに求めるというのでは、國民の納得し得ないところであります。よろしく政府当局は今後一段と國鉄経営合理化に努力せられ、その実効をあげられるよう希望いたす次第であります。また一方サービスの点についても、旅客運賃は大幅に値上げせられることでありますし、サービスの改善について一層の努力を傾けられ、國民に親しまれ、愛せられるところの国鉄となるよう、努力せられんことを希望いたす次第であります。
  9. 稻田直道

  10. 佐伯宗義

    佐伯委員 今回の旅客運賃値上げによりまして、旧来の赤字を補填し、自力経済に切りかえられましたことは、まことに適当なことであると考えます。ただ運賃制定技術的方法と申しますか、内容におきまして、遠距離逓減方則をこの際是正なされないことと、いま一つは、三箇月と六箇月の定期を廃止なさいましたことについて、賛成しかねるのであります。申し上げるまでもなく、わが國の地理的関係蜿蜒長蛇のごとく、交通中心勢力から非常に不公平に利用者が分布されておる状態でありますから、世界的に見ましても、かかる國情を持ちますところの運賃制定の方式には、少くも遠距離を数段階にわけなければ、國民の公平は保たれないと考えるのでありまする。かような原則をこの際なおおとりにならないということにつきましては、これは反対をせざるを得ないのが第一。第二には、定期運賃におきまして、この際一箇月を存続されて六割の値上げでありまするけれども、三箇月と六箇月は二倍半にも値上けど相なります。しかも三箇月と六箇月を利用いたしまする國民勤労階級にとつて、これは生活の重要な要素を占めておるのであります。特に都市を爆撃せられましたわが國におきましては、通勤ということが相当遠距離に延びておりまするので、この三箇月、六箇月の定期の廃止は、わが國の産業再建をになう勤労者にとつて大きな負担と考えられます。かりにこの三箇月、六箇月の定期相当是正されましても、十数億くらいの金額にしかならないのではないかと考えられます。この際政事府当局におかれましては、いろいろこくふうあつて、この点ぐらいは調整できない理由がないと考えられます。かような意味におきまして、定期運賃の是正を要求したのでありますが、遂にこれが通らないということは、まことに遺憾であります。なお反対理由といたしましては、前々國会におきまして、昨年の六月と覚えておりまするが、物價体系が新しく編成替されまするときに、旅客運賃三倍半の値上げが提案されたのでございます。その節の物價に織り込まれておつたと考えるのでありますが、当時民自党におかれては、徹底的に反対をなさつたのであります。私は当時與党立場理事といたしまして、運賃三倍半の値上げは不適当でないという信念のもとに、民自党の諸公に御了解を得るべくいろいろと努力したのでありまするが、当時徹底的に御反対になつたのであります。しかも今回物價を改正せずして、民自党責任政治建前上、これが提案されるということは、私はいささかふしぎに考えるのであります。この際原則といたしましては、自立経済に立ちかえる立場上、旧來のごとく、最も悪い方法であるところの利用せない國民大衆からの税金というものによつて利用者が恩典に浴するというごとき法則は、われわれの最もとらざる説でありまして、この意味におきまして、今回組み立てられた運賃六割の値上げということは、決して不適当であるとは信じ得ないのでありますけれども、かかる過去の経過と、またかかる運賃制定内容技術的方法において誤つておりまするがために、残念ながら本案賛成しかねるのでございます。
  11. 稻田直道

  12. 飯田義茂

    飯田委員 農民新党といたしましては、旅客運賃値上げに対しましては修正するの意見を持つてつたのでありまするが、大勢の見地からいたしまして、これをとりやめた次第であります。政府といたしましては、鉄道合理化をはかりまするとともに、眞に独立採算制の実をあげられんことを希望いたしまして、原案賛成するものでありまする
  13. 稻田直道

  14. 田中堯平

    田中(堯)委員 旅客運賃値上げ政府説明要旨は、要するに独立採算制建前から、二百三十億の國鉄赤字穴埋めしなければならないということと、これを貨物運賃値上げに求めるならば、結局また物價の値上り、インフレ促進ということになるので、旅客運賃値上げに、この穴埋めを求めるという三点に盡きるのであります。ところでその前者、独立採算制のことはしばらくおきまして、あとまわしにしまして、貨物運賃値上げはやら事ないで、旅客運賃値上げだけをやるという点をまず考えてみますると、貨物運賃の現在の原價に対する比率、並びに旅客運賃のその原價に対する比率を見ますると、貨物の方はわずかに四三%、旅客の方は八八%を價つておるという政府統計であります。また私の方で調べてみますと、昨年の第三・四半期には、貨物運賃の方は五七%、ところが旅客運賃の方は百七%幾らというふうに、すでに七%以上もうかつておる計算になつておるのであります。こういうふうな状況にあるにもかかわらず、貨物運賃はすえ置き、旅客運賃だけを引上げるということは、まことにりくつが合わないと考えるのであります。この旅客運賃の方は、サービスの低下ということによつて、今後も輸送原價は非常に引下げることができると思うのであります。從つてますます輸送原價を上まわるところの、もうかる採算になるわけであります。貨物の方はそういうことはできない。一定のトン数の箱の中へ二倍も三倍もの貨物を積むということはできませんので、貨物の方の欠損は、大体常数であると思いまするが、旅客の方は、積むとなれば、ぎりぎり一ぱい積める。百人乗れるところを二百人も三百人も詰めるということもできるのでありまして、この方はうんとまたもうかつて來ると思うのであります。それにもかかわらず、ただ旅客運賃だけを、しかも六〇%という大巾引上げということは、何としても了承しがたいのであります。  次に独立採算制を維持するためというのでありまするが、これについても私ども反対意見を持つておる。まず第一に、独立採算制という精神から行きまするならば、商費が引合うように、正当なる運賃旅客についても、貨物についてもとるべきであります。ところが、これは公益上の関係で、どうしても國鉄が成立つほどの運賃を請求するわけに行かぬ、公益上、損を見越して独立採算をやろうということであるならば、これは当然國家がその赤字部分を補填しなければならぬのであります。たとえば今日安定帶物資というようなものがあります。その他重要物資に対してはみな價格補給金——安定帶物資のごときには、全部一千百五十億という厖大なる補給金が予定されております。この精神と、交通赤字を補填するという精神とは、何ら異なつておらぬ、同一のものでありまするがゆえに、國家はこの運輸補給金とでも申しましようか、そういうふうな名目の補給金を出してしかるべきでありまして、そうすれば、初めて合理的なる独立採算制ができるわけでありまして、独立採算とは國家の迷惑にならぬというだけの問題ではない。正当なる収入を得て、正当な営業をやつて、どうにか一本立ちできるということが独立採算でありまするので、國家のため、公益のための損失ということは、当然國家がこれを見るべきであります。ことに今日二十数線というような不採算線がある。わずかに支出の二〇%程度しかもうけておらぬような不採算線随所にあるのであります。そういうものをも公益の必要上、国鉄は背負わされておる。この赤字をだれが見るべきか。もちろん公益立場でありまするので、國家がこれを補給しなければならぬ。またバスにいたしましても同様であります。國営バスは大体に赤字でありますが、これも赤字であるがゆえに、すぐにやめるわけに行かぬ。そうすれば、どうしても國家がこれを補給しなければならぬ。そういうふうな國家補給金というものは、当然でありまして、これを受ける建前をとるべきであります。それをやらないで、損をする部分はそのままにしておいて、もうかる部分をもつと大きくもうけをして、それでもつて独立採算制を立てて行こうということは、独立採算の本旨にもとるのであります。また独立採算ということになりまするならば、單に補給金だけではない。現在経営合理化いたしますと、随所にまだまだ黒字が上る点があるのであります。ことに不用品の拂下げとか、あるいは工事の請負、こういうふうな面を調査してみましても、相当額のロスがあることを私ども考えておる。そういうような面からも黒字を出すことができるのであります。また進駐軍用貨物列車や客車がたいへん頻繁に右往左往しておりますが、これがおそらく全経費の何パーセントに当るか、おそらく一〇%か一二%に当るであろうという推算を私どもは立てておりまするが、これに対してはもちろん國鉄が單独で赤字を背負う事べきではない。これは國の目的であり、國家の行為でありまするので、当然國家からそれ相当補給を受けなければならぬ。それもたいへんな開きがあるようであります。これはただ一、二の例を示したのでありまするけれども、こういうふうに合理的な経営をやろうということならば、何も旅客運賃値上げをしなくても、その財源は随所に見出すことができる。かように私どもは確信しておるのであります。  さて独立採算制そのものの問題、これも私ども根本的に反対をしておるのでありまするが、交通事業、ことに鉄道運輸という事業を今日独立採算で行く、あるいは私的な経営に委譲するというような今の考え方に対しては、根本的には私ども反対をする。何故かならば、今日どこの國を探してみましても、アメリカを除くならば、この鉄道による運輸というものが、正当に成立つわけはない。どうしても赤字になる。しかもやめるわけには行かないというので、みな國費をもつて負担する國営國有という形態が、全世界の現状であります。それなのに、これまで國営國有であつたものを、何を好んでいまさら独立採算制に移行し、コーポレーシヨンに移行するか。ここに根本のあやまちがあるのでありまして、この根本のあやまちが非合理なる一つの現われ方をしておるのであります。  さて旅客運賃引上げてどういう結果になるかと申しますと、旅客として賃金を拂う者は、多くは勤労者階級であります。全人口の九割五分といわれておるところの勤労階級、ことに通学、通勤のために鉄道を利用しておるあでありますが、定期は六箇月、三箇月の割引を廃止することになりますために、たとえば東京・千葉間の六箇月の定期を見ましても、今まで千四百七十円だつたものが、三千六百円の高値に飛び上つておるのであります。單に六割の値上げと申しますが、六箇月の定期のごときをとつて見ると、約二倍半にはね上つておる、また遠距離逓減をやつておりませんので、たとえば東京から京都までの例をとつてみますと、三百六十円が六百円、二倍とまで行きませんけれども、これに近いところまではね上つておる。六割どころの騒ぎではないと思うのであります。こういうふうに人民の足に対して足代をうんと引上げるということの結果は、勤労人民家計に大きな影響を及ぼして來るのであります。政府統計によりますと、一・二%ないし一・三%ということであるから、家計費の方も一・二%ないし一・三%程度で、問題ではないという御説明でありますけれども一般労働組合などの報告によりますと、家計費の約一〇%前後を占めるという報告であります。一割前後を占めるほどの交通費であつては、これはたいへんであります。戰争前には六・三〇%を占めておつた。今度値上げをしても六・六五%になるのであるから、たいした問題ではないという政府説明でありますけれども、しかし戰前における六%と、今日の家計における六%というのは、まるで値打が違う。戰前においては食えないといつても、まだ文化費交際費というような幾分のゆとりを持つてつたのでありますが、今日はぎりぎり一ぱい、三度の飯は二度にでも減らして行かなければならぬ。こういう勤労階級状態に持つて行つて、これに六・六五%の位置を占めるような、こういう交通費を支拂えということであれば、まずこれは勤労階級生活は破滅せしめられるという結果になるのであります。また交通費を上げても、何もインフレには影響がないというような御説明でありましたけれども、しかしそれは当らない。貨物運賃値上げということは、これは直接物價に響くことはかわつております。しかし旅客運賃値上げいたしましても、中小商工業者のごときは、これは多くはみな交通費主人持ちのものが多いのであります。これらにおいては、もうてきめんに、労働階級実質賃金を低下せしめるか、あるいは主人経営難となるか、あるいは生産コスト引上げるか、いずれかの値をとる以外にどうしても方法はないのであります。從つてインフレなんかにはならない、結局勤労階級実質賃金を削つてしまうという結果になるのであります。現に、はや今日の交通費でさえも、とても負担はできないというので、二人で一枚のパスを買つて、たらいまわししておつたというようなことがばれて、一万円の罰金を仰せつかつたというような例もありますし、また相当遠距離から通つておる労働者は、とうてい交通費は拂えない。交通費拂つたのでは、賃金はもらつて意味がないというのでどんどんやめて行く。こういう労働者が続出をしておる現状でありますので、これに持つて行つてますます賃金——交通費を上げるということは、まつたくわれわれは心寒き思いをせざるを得ないのであります。当初二千四百四億という予算を編成をして、これによつてまがりなりにも國鉄経営をやつて行こうという方針であつたようであります。これが一千三百億に縮減をしまして、赤字が出ると、その赤字は從業員の首切り、あるいは低賃金、あるいは残つた労働者労働強化というような、一言に言うならば、國鉄従事員犠牲をしいて穴埋めをしようとする。一方では二百三十億の赤字を何とか穴埋めをするというので、勤労階級足代値上げにそれを求める。一言にして言えば、結局すべての負担労働者諸君勤労者犠牲にまつという行き方を、今度の運賃値上げは示しておるのであります。私どもはこのような大衆收奪の一つの政策の現れに対しては、何としても賛成がいたしかねるのであります。ここに日本共産党を代表しまして、今回の運賃値上げに対する反対意見を述べた次第であります。
  15. 稻田直道

    稻田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより國有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について採決いたします。原案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 稻田直道

    稻田委員長 起立多数であります。よつて本案原案の通り可決せられました。(拍手)  なおこの際お諮りいたします。衆議院規則第八十六條による本案に対する報告書の作成並びに提出方につきましては、委員長に御一任を願います。     —————————————
  17. 稻田直道

    稻田委員長 この機会にお諮りいたしたいことがあります。目下内閣委員会に付託になつております運輸省設置法案は、この運輸委員会といたしまして、重大な関心を有しておることであります。從いましてこの際運輸省設置法案につきまして、内閣委員会連合審査会を開くことにいたしたいと思いますがこれに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 稻田直道

    稻田委員長 御異議なしと認めます。によりましてさよう決定いたします。なお連合審査会の開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上、後日御通知をいたします。     —————————————
  19. 稻田直道

    稻田委員長 この際運輸大臣より発言を求められました。大屋運輸大臣。
  20. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 本法案の上程以來、委員各位におかれましては愼重御審議を願いまして、本日ここに政府原案の可決を願いましたことは、政府当局といたしましてまことに感謝にたえない次第でございます。本案審議の過程並びに本日の討論を拜聽いたしましても、いろいろ運輸当局といたしまして、なさねばならないことがございますので、これから私たち当局者といたしましては、ますます國有鉄道経営合理化並びにサービスの改善というような点に留意をいたして、運営をいたしたいと思う次第でございます。一言簡單でありますが謝意を申し述べる次第であります。(拍手)     —————————————
  21. 田中堯平

    田中(堯)委員 緊急動議を提出いたします。実は本案運賃値上げの審議に際しまして、昨日來私の申し上げましたように、いろいろ國鉄経営について合理化を要する面があると思うのであります。それでこれを同時に審議をしていただいて、また質疑を続けて行きたいと思つてつたのでありまするが、ぜひとも一日から値上げ関係上、これはちよつとむずかしいということになりまして、差控えておつた次第であります。ところですでにこの委員会においてこの案は決定になりましたので、今度は事後的ではありまするが、國鉄経営面において私ども二、三非常に合点の行かぬ点がありますので、これを列挙いたしまするから、これについて國政調査をしていただくように、委員長においておとりはからいが願いたいのであります。国政調査の提案であります。一つは工事の請負の面についてであります。一つは不用品の拂下げの面についてであります。一つ國鉄にあるところの退藏物資の調査であります。以上三つであります。
  22. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 田中委員の動議は適切なもののように考えられるのでありますが、この種の問題は委員長におかれて各理事と御相談の上で、適当なる方法と適当なる解決をおはかりになるのがしかるべきと存じます。
  23. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 尾崎さんも別に今の動議に反対しておりませんし、大体先ほどの理事会におきまして各理事もそういうような國政調査が必要であつて、これらの国政調査を徹底させることによつて、國有鉄道独立採算制合理的になることを心がけなければなりませんので、この際本委員会においてただちにただいまの動議を採択されることにしていただきたいと思います。
  24. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 このことにつきましては、昨日も私から委員長におとりはからいをお願いしたのでございまして、でき得るならば、國民がほとんど反対しております運賃値上げを決定します前に、ということを御希望申し上げたのでございますが、残念ながら私どもの意思かいれられずに、今日の運びに至つたのでございます。從いまして理事会と仰せられずに、大体理事会としましても賛成のようでございますから、本委員会におきまして國政調査の動議をお取上げくださいまして、ぜひこれを実行していただきたいと思うのでございます。
  25. 前田郁

    前田(郁)委員 ただいま田中君から動議がございまして、柄澤君からも賛成の動議があつたのであります。先ほど理事会でもその話が出まして、私どもも相談を受けたのでありますが、私ども民自党側の理事といたしましては、その三点に限らず、運輸省一般に関してまだいろいろ調査しなければならぬことがありますので、それを含めた調査をやろうということで賛成いたしたい、こういうことで先ほど理事会でも承諾いたしたわけであります。そういう意味において賛成いたしたいのであります。
  26. 田中堯平

    田中(堯)委員 私は全般的を調査たいへん結構ですが、時間と人員と経費の問題もありましようし、私が今提案いたしました点だけでもたいへんな調査になると思います。そこでやはり以上申し上げました二点を中心に、調査をするということにひとつおとりはからい願いたいと思います。
  27. 前田郁

    前田(郁)委員 田中委員の発言はよくわかりますが、一應その問題もなお理事会で御相談をしたらいかがかと思います。理事会に御一任願いたいと思いますが、いかがでしようか。
  28. 米窪滿亮

    米窪委員 この際この問題について政府側の御意見も伺つたらいいと思います。
  29. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 政府といたしましては、御要求の事柄を調査するに異存はないですが、田中君はただいま国政調査という言葉をお使いになつたですが、國政調査というのはどういう程度の調べをいたしますのですか。たとえば隠退藏物資という言葉もお使いになつたですが、運輸省には隠退藏物資は一應ないと思つておるのですけれども、かりにこれをあるという前提で探すということになれば、それこそ方々の日本中の運輸省の倉庫をすみずみまで、しかもその所の連中に調べさせても正確を期せられないということになれば、特別な調査班でも組織して、独立に調べるということをやらねばならない。そういうようなことをする場合を想定しますと、現在の限られた予算ではとうていできないから、エキストラに何か経費を盛らなければならぬということが起きて來るかもしれませんが、どの程度にどういうことをやりたいと仰せられるのか、ちよつとそこがわからないのです。
  30. 田中堯平

    田中(堯)委員 運輸大臣が聞き間違いをされましたが、私は隠退藏とは申しておりません。退藏物資と申しております。ことに特殊物件というものを調べたいのであります。これはそれほど困難なる調査ではないと思います。
  31. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 動議を出された田中委員その他ほかの方の趣旨はよくわかるのでありますが、私どもも長らく議員をいたしておるのでありますけれども、この種の問題は、御要求になつたような賃料等についても、一應運輸当局の方から出してもらうべきものは出してもらつて——どもも大体その調査の範囲とか、方法とかいうことのいわゆる御提案の実体は、よく了承いたしておりますから、そうやるのが最も適当である、こういうふうに考えるのであります。でありますから、さつき私が申し上げましたように、一應この問題はあらためて理事会で十分御相談になつて、その結果をまた一應委員のわれわれにもお諮りを願いたい。それから御決定になるのが一番適当だと思うのであります。ただ突然の間に、わかつたとか、わからぬとかいつても、私どもまだ御提案の眞相がよくのみこめないのでありまして、私らがこれをのみこめないで、にわかに賛成するということも困難でありますから、もう少し眞相をのみこんでからお願いしたい。從つて最初に申し上げたように、もう一ぺん理事会を開いて、よく御相談をなさつたあとにしてもいい。きようあすにやらなければならぬ問題ではないから、そういうふうに希望いたします。
  32. 田中堯平

    田中(堯)委員 私の提案理由がよくわからぬというお話であります。それではもう一ぺん申し上げます。このたびの運賃値上げについては、民間では喧々囂々の非難の声があります。その理由一つには、鉄道は実に杜撰なる経営をしておる、かつて赤字を出しておる、そうしてそのしりぬぐいをわれわれの足代値上げに持つて行く。これは誤解もまじつておりましようけれども、こういう点を十分に調査をして、國民の納得するようにすることが、やはりわれわれの任務であると思うのであります。それで國民の疑惑を晴らすという意味で、そういうことがないならばけつこうなことだし、あればあるで、それ相当の処置をしなければならぬという考え方から、私は提案をしているのであります。もう一ぺん繰返しますと、不用品の拂下げの面と、工事の請負の面、もう一つは退藏物資についてであります。
  33. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私も田中委員の御提案にまつこうから反対するわけではないのでありますが、物事を決するには、緩急の度をはかつて行くことが必要だと思うのであります。その緩急の度をはかつて行くという建前から、先般私は二回か三回かにわたつて運輸大臣並びに当局に対して、一体これはどの値上げをするならば、値上げをしたことに対して、国民の納得を得るようなサービスその他の経営合理化、そういう点について具体的の案をおつくりになることが急務だ、こういうことを極力申し上げたのであります。從つて田中委員の御要求のことが決して無用だと申し上げるのではありませんが、國民に納得をさせるには、やはり運輸当局でさつき申しましたようなサービスその他の点について、値上げをするならばかくのごとく運輸当局も努力をするのだ、こういうことを國民に早く知らしめることが先決問題である。こういうふうに私は考えるのであります。でありますから、あえて反対するのではないが、そうした一連の問題を取入れて御判断になつた上に、御決定なさることが、最も妥当だというのが、私の趣意なのであります。
  34. 稻田直道

    稻田委員長 この際委員長よりこの動議に対してひとつお諮りいたしたいと思います。田中君の調査をしたいという御趣旨は、大体において委員会委員各位におかれても了承賛成のようでありますから、田中君の調査をするという動議に対しては賛成をいたしまして、この調査の方法、その他調査事項については、委員長理事に一任をされて、その方法を講ずるということにいたしまして、田中君の動議を決したいと思いますが、いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 稻田直道

    稻田委員長 多数と認めます。それではさよう決定いたしまして、議長の承認を求めることにいたします。  本日はこれをもつて散会をいたします。     午前十一時五十六分散会