○古藤
参考人 私の申し上げる問題は、大体今までの皆さんの御
意見にいろいろ出ておりますので、できるだけ
簡單に申し上げたいと思います。
結論といたしましては、
旅客とか、荷物料金というふうなものにつきまして、この際六〇%の
値上げをしなければならぬということにつきましては、大体これは了承するほかはないじやないかと
考えております。それは御
承知のように、
國鉄が今度
独立採算制ということになりまして、
從來の長い間の
國家経営で
一般会計におんぶした
経営を、この際排除して、独立
採算という名のもとに、
サービスも強化して行こうというふうな段階にな
つて参りますと、どうしてもそこに
赤字を自力をも
つて克服しなければならぬという問題が、大幅にクローズ・アツプされて來るのは、やむを得ない問題じやないかと
考えております。今までの
鉄道の
旅客運賃がどういうふうな地位にあ
つたかということは、先ほどからもいろいろ述べられておりますが、大体安定帶物資といわれているのは百十倍の倍率を持
つておりますけれども、
旅客運賃は大体五十六、七倍とかいうふうなことでありまして、これは要するに基礎物資と同じく、これらの重要な
経済要素は、インフレを防止するために、なるべく低位に維持して行こうという
國家政策の今までの犠牲と申しますか、そういう面が非常にはつきりと現われて來ておりました。從いまして、
旅客については五十七倍、
貨物については七十五倍というところまで一
貨物の方は昨年七月の改正によりまして若干は是正されておりますけれども、
旅客の方はそれよりもさらに低い倍率にとどま
つておりました。礎
つてこの際この倍率を若干
引上げることは、
國鉄の
赤字経営をなくすという点からい
つて、やはり一つのやむを得ない問題じやないか。ただ御
承知のように、現在の環境下におきましては、今の均衡
予算を実施して、さらに為替が三百六十円という率できまりまして、産業の
方面は、これによ
つていろいろな合理化を強要されるという段階に來たのであります。從いまして、いろいろな面から、
コストの切下げをしなければならぬという問題に当面しております。先ほども
私鉄の方が申しましたように、本來ならば自立
採算の
経営をやる以上は、
コストに從
つた料金というものをきめるのが、第一の問題であるという点は、私も異議はないのでございます。そういう点から申しますならば、確かに
貨物運賃を
引上げ、そして
旅客運賃の
引上げは低位にとどめるという政策を
考えるべきでありますけれども、しかし現在は先に述べましたように、特に産業の合理化という問題について、非常に
努力しなければならぬ客観情勢にあるわけであります。ところが、
貨物運賃問題につきましては、安定帶物資その他重要な物資に非常な
影響がある。それはここに出ております資料によりますと、
石炭や石灰石というようなものは、
運賃の占める率は、トン当り二〇%以下でございますけれども、一般の物資については一ないし二%という率でございます。しかしこれは單に生産素材として見た場合でございまして、この
運賃というものが、いろいろな面で拘束している。それがいろいろな面で累積されまして、平均
價格というものに反映される場合には、
相当大きな問題になりまして、決してこういう單純な
数字の計算からはその
影響は出て來ない。從
つて相当大きな
コストに対する
影響が
貨物運賃に起
つて來るじやないか、そういうことを
考えざるを得ないのであります。從いまして、この際といたしましては、当面は
旅客運賃は低位でもありますから、これについて
相当な
引上げをするということは、やむを得ないじやないかと
考えております。しかしながら将來安定帶物資というものについても、だんだん
物價を是正するという問題が起る場合に、これと合せて
貨物運賃の方は考慮すべきである。つまり
貨物運賃の問題は、一般
物價政策との関連においてこれをいじるのが、適当ではないかと
考えている次第でございます。
旅客運賃については最低限今六割という問題が出ておりますが、この六割を上げることを了承するにいたしましても、なお問題は残るのでございます。
旅客運賃と申しましても、その中には上げた場合の
影響を吸收できるものと、吸收できないものとある。しかしながらここで問題にな
つております
定期の問題は、吸收が不可能なものである。つまりこれは上げられれば上げられただけ、どうしても通わなければならぬ
通勤者、
労働者の
定期というものが上るわけであります。ですから、それはどうすることもできない要素であります。こういう要素をこの際上げることは非常に問題があるのではないか。特に將來の
割引率を廃止してしまうことについては、
相当問題がありはしないかということが感じられます。その点をもう少し詳しく申し上げますと、
通勤費というものは、先ほどもいろいろな資料を述べられましたけれども、現在大体
会社の
負担しているものが五〇%である。
会社と個人と両方で持
つているのが十七、八パーセント、
あと残りの二十パーセントくらいが純粋に從業者が
負担しているという
関係は、これはある
私鉄の
会社が、五十社ばかりの
会社について調べ上げたところらしいのですが、実際はもつと範囲を廣げて調べますれば、おそらく個人
負担の倍率というものはもう少し大きいのではないかとわれわれは推測しております。こういう場合に、どういう
影響が出るかと申しますと、もちろん
会社の
負担がふえる場合もございますが、われわれとして問題にしなければならない点は、この從業員が
全額負担を持
つているところでありまして、むしろ中小
企業やなんかは、そういう面が多いのではないかということも
考えられるわけであります。そうしますと、中小
企業の從業者諸君に特に大きな
影響を持
つて來やしないか、そういうことを
相当考慮しなければならないと思うのであります。さらに先ほど申し上げましたように、
通勤費の
引上げという問題が、非常に弾力性がないということから申しますと――特に基礎物資に対して現在補給金制度をも
つて上げないという
考え方を持
つております。これは
経済上から申しますと、
通勤費というものは、基礎物資と同じに見るべき重要性があるのでありまして、この点から申しましても、
定期の購入に対して
從來與えていた特別の
割引をなくするということは、非常に策を得たものではないのではないかということが特に指摘されなければならないと思います。
さらにまた、この
通勤費を上げた場合に、それがどういう
影響を從業者の
生活に持つか、
國民生活に持つかという問題に若干触れてみたいのですが、この問題につきましては、この資料には大体総理廰の統計で調べたところによると、
生計費の中で
交通費が占める割合が、一%とか一・四%という
数字が出ておりますが、しかしこの
数字では、はつきりと
定期が上
つた場合に、われわれがどういうふうな生計上の
負担を受けるかということを認証し得ないと思います。むしろそれよりは、われわれが俸給をと
つているその俸給の平均ベースについて、今後上げられたところの一箇月の
定期がどのくらいの倍率を示しているかということでありまして、その表がこの中に入
つておりますが、これによりますと、上
つた場合に六%ということにな
つております。しかしこの六%というのは、大体過去のベースの六%と同じわけですから、パーセントから言えばあまり問題がないとお
考えになるかもしれませんけれども、過去の
國民生活が安定してお
つた時代の六%と、現在の六%では、非常にそこに問題があるのではないか。つまり過去の六年の
生活水準の六%を占めてお
つたということは、その当時においては十分に一應最低
生活が営まれた。しかしながら現在の
状況では、御
承知のように現在の実質
生計費というものは六年平均にしまして大体四割と言われております。四割の
生計費水準であ
つた。その六%というものが、固定的にどうしても
定期を購入するために使わなければならない費用にな
つて参りますと、
國民生活に及ぼす
影響は、
簡單な
数字の面から見た以上の
影響がありはしないかと
考えるわけであります。從いまして
旅客運賃を
引上げることは、これはやむを得ない。しかしながらその
引上げるやり方については、できるだけその利用者によ
つて吸收可能な
方法をも
つて対処すべきだ。どうしても弾力性のない面に対して、特に生産、
國民生活というふうなものに強い
影響を與える面の倍率は、できるだけ軽減してかかる必要がある。さらにまたその倍率を適用する場合でも將來にその
割引をやるという問題につきましては、やはり現在や
つておりますような三箇月、六箇月の
割引制度というようなものは、何らかの意味において考慮すべき問題ではないか。特にこの問題につきましては、先ほども
お話がありましたが、まさにその
通りでございまして、この六箇月
定期というものによりますれば、
國鉄は
相当の資金を前も
つて預かるわけであります。その
國民から預か
つた資金は
相当巨額になると思います。この巨額なフアンドを動かすことによ
つて、金利を
相当かせぐという問題が出て來るわけでありまして、これは
國鉄のような厖大な組織になると
相当ばかにならない
数字になるのではないか。私どもは内部の
事情を存じませんけれども、大体そういうふうに推察されます。從
つて少くともその金利に見合う面、あるいは紙とか、いろいろな手数料を軽減するという面から勘定いたしまして、少くとも
経済的に見まして、
相当の
割引をすることは当然なことではないか。特に
國鉄が
独立採算制をいたしまして、
経営としての自立性をとるという以上は、
サービスをやらなければならない。その
サービスの基本
方針に反するような
運賃のきめ方をすることは少し問題じやないか。むしろ
サービスをすることから言えば、今まで
割引がなか
つたものを、今後は
割引をするということくらい
考えるのが、
國民に対して納得をさせるゆえんではないか、そういうふうに
考えております。
なおこの問題につきましては、代案として
國鉄の合理化をや
つていただくほかないわけでございますが、その合理化については、われわれはあまりに機構が厖大であ
つて、どういう点に、どういう合理化がされているかということを把握するのが、困難な
状態でございます。從いましてこういう
運賃引上げをやる場合には、少くとも
國鉄に一種の合理化
委員会というようなものを設けられまして、それに官廳とか、おるいは
民間の方も入られまして、絶えず
國鉄の合理化の
状況を
國民にわからせるような
方法をと
つていただくことも、一つの希望として提言されるのではないかと思います。
さらにまたなぜ
國鉄は
赤字であ
つて、なぜ
運賃を上げなければならないかという問題は、省線電車の中とか、あるいはまた汽車の中とかいうふうに、十分利用する場所があるのでございますから、そういうところに廣告して、
國鉄は
経営の合理化に
努力したけれども、どうしても上げなければならないのだという問題を、もつとわかりやすく納得の行くように、
國民に話をするという態度が望ましいのではないか。そういうようなことをなされて、初めて
國民は
運賃の
引上げ、特に
旅客運賃を大幅に
引上げすることについて、納得をするのじやないかとわれわれは感じております。
要するにそういうふうなことをや
つていただくと同時に、さらにまた先ほども問題になりました
無賃パスの
整理でありますが、この問題についてはわれわれ局外者からも、割合に
簡單に問題を発見できるのではないかと存じております。それは
無賃パスという問題でも、従業者自身が仕事の上で
パスを與えられることは、何ら問題はないわけでありますが、これを利用するという特権を與ることは、特に
國民に耐乏をしいて、
旅客運賃の
引上げをやろうという際には、卒先してこれをはずすことが
前提にならなければ、
國民はとうていこういう問題を了承しないのであります。そういうふうにわれわれも感じておる次第でございます。今まで述べられた方と論点が重複しますので、ごく
簡單に結論だけ申し上げまして私の
発言を終ります。