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藪谷政府委員 それでは私から今回の
運賃改正について御
説明を申し上げます。
御承知のように、
運賃を修正いたします際には、まず九原則に基いて
收支均衡、
独立採算制の
立場から見て、
輸送原價の
観点からいかほどにすべきかという観察をいたします。第二には、
國民の
負担力なり、あるいは
物價に対する影響の
観点からこれを檢討いたします。第三には、
経済政策あるいは他の
國策上の見地から、これを檢討いたすのであります。
從つてこれらの三点から総合的に観察して、
結論を出さねばならぬと思うのであります。そこでいろいろとデータがありますが、お
手元に差上げた
運賃関係資料という表のうちで、まずおもだつたものだけ
簡單に御
説明をいたします。お
手元に差上げた表の中で第六表をお開き願いたいと思います。
経済諾指数の表の一番左に、
國民所得がどうな
つているかということがあります。この問題でありますが、
昭和十一年の
指数を一〇〇といたしまして、二十三年十一月現在における
指数の欄をごらんにな
つていただきますと、百四十八倍近くにな
つております。それから
通貨発行高は大体百九十倍
程度、それから
物價指数を見ますと、卸賣においては百九十一、小賣においては二百十、ます平均して二百倍
程度に上
つております。これに対して
給與指数を見てみますと、
官公吏の例として
國鉄を見ますと、大体八十六倍でありますが、
工業勤労者の場合においては、百三十七倍
程度にな
つております。これは二十三年九月現在であります。
第八表をお開き願いますと、
運輸機関別の
運賃指数が載
つております。これによりますと、
國鉄の場合においては
昭和十一年を一〇〇といたしまして、五七六九、すなわち五十八倍
程度、しかしながらこれは一番上の欄に書いてあります
通り、
旅客最初の一キロ当りの
運賃でありまして、平均の
旅客運賃から見ると、約五十倍
程度であります。実質
運賃から言いますと、すなわち
物價の値上りの
指数で割つたものによると、二十五倍
程度のものとなります。これに対して同じ陸上の
関係から言いますと、自動車がトラツクにおいて百五十倍、バスにおいては八十三倍、小運送費が九十五倍、一番右の方の下の欄にございます。まん中の海運と比較いたしてみますと、まず汽船の
運賃は、例を若松
——横浜にと
つて、石炭一トン当りの
運賃を
基準にして計算してみますと、二百十三倍、機帆船は四百五十倍、はしけが百二十七倍
程度にな
つておりまして、各
運輸機関別の
運賃を比較いたしましても、
國鉄の
旅客及び貨物の
運賃は非常に安いということになります。
物價指数の中で、一般には先ほど申し上げたように三百倍近くにな
つておりますが、その中で鉄道の使用いたします資材の値上りは、大体三百六十倍
程度にな
つております。
かような
関係で、鉄道の会計においては、戰時中を通じて、いまだか
つて赤字を見なかつたのでありますが、
物價の値上りに遅れて、しかも低率に
運賃改正が行われて來ました結果、非常な赤字を戰後において見ることになりまして、本年度においても経費の思いきつた節約、あるいは不用品の財産の処理、あるいは増收対策といつたようなものをできるだけ
考えても、なお
現行運賃においては二百三十億の赤字が出るのでございます。この赤字を埋める
方法といたしまして、
運賃値上げ以外にはないのでありまして、まず先ほどお示しいたしました第六表の経済
指数から見まして、
旅客は三倍ないし四倍
程度上げれば、
物價並びに
國民所得とバランスがとれるということが言い得るのであります。
次には第七表をお開き願いたいと思います。第七表の收支予定表でありますが、これは
昭和二十三年の第二・四年期における原價と收入の比率を示す現状の姿でありまして、鉄道の
運賃におきましては、
旅客定期は支出一〇〇に対してわずか二六%の收入しかない。定期外は一三一、これを合計しまして八八%の收入しかないのであります。荷物におきましては三六、郵便車は四七、小口車扱いの貨物におきましては四三、こういつたような原價計算に相
つております。これを見ますと、理想的な形から申しますれば、原價計算の面からのみ見ますと貨物は三倍
程度、定期は四倍
程度、定期外はむしろ下げるべし。こういういろいろな議論が出ると思いますが、これに対してもし六割値上げをした場合には、本年度の
予算面においていかなる收支の予定になるかということが第七表に書いてあります。
それから
あとは第十表、第十一表について御
説明申し上げます。第十表は総理廳統計局において、二十二、二十三の両年にわたりまして調べたものでありますが、東京、名古屋、大阪の三都市における生活費に占める交通費の割合を摘出したものであります。この総理廳の調べによりますと生活費に占むる交通費の割合が、一・二ないし一・三という非常に少い率にな
つております。これを幾分上げましても、生活費の雑費が一四%ないし一六%、こういつた比較的余裕のある部分に吸收し得るのではなかろうかということが看取されるのであります。第十一表について御
説明出し上げますと、
昭和十一年における
官公吏の賃金は大体五十六円七十二銭でありましたが、その当時定期の平均乗車キロが十二キロで、その
運賃が四円七十銭でありますから、
運賃の貸金に占むる割合が八・二九%であります。爾來賃金ベースが上昇いたしまして現在の六千三百七円の場合におきまして
運賃は二百八十円、その比率が四・四四でありますから、戰前のノルマルな状態における八・二九あたりまで上げるといたしますと、まだ約三倍
程度上げ得ることになるわけであります。工業
労働者についても大体同様な比率かと思いますので省略いたします。
ついでに貨物についてやはりこうした
観点から、いかなる
事情にな
つておるかという問題があろうと思いますので、
簡單に御
説明を申し上げます。鉄道にかかります全貨物の一トン当りの價格に占める通賃の割合は、第九表にあります
通り、わずかに〇・七七%、ところがこの総貨物のうちで二十七品目を摘出いたしましたものが十六表でありますが、
昭和十一年のノルマルの時代における價格に占める
運賃の割合は、米について見ますと、当時二百七円二十三銭のうちで二円二十八銭が
運賃である。一・一%が
運賃になるわけであります。かようにしてずつと二十七品目の生活物資あるいは基礎物資、重要物資等の平均をいたしますと、四・六一というのが、價格に占める
運賃の割合でございます。ところがこれに対して二十三年九月においてはどうな
つておるかと申しますと、現在においては、價格に占める
運賃の割合はわずかに二・六七%であります。これを大体七割
程度増加すれば、戰前の姿になるわけでありますが、ここに問題となりますのは、この
運賃の價格に占める割合の大きい石炭石とか、硫化鉄鉱、あるいは石炭、銑鉄、砂利、こういつたものについては、七割ないし倍というような値上げをいたしますと、これらの價格については
改正を要するというのが
ほんとうであります。しかしながら補給金だとか、あるいは一次製品に吸收されずしても、二次製品、三次製品に吸牧されて、
國民の生活の消費償格において上らなければよい、こういう
結論になるわけでありますが、そこが一番論点の中心であろうかと思います。そこで
國民といたしましては貨物において
——生活においてこれを負担するか、
旅客運賃として負担するか、こういう問題になろうかと思いますが、
政府当局といたしましては、今回は
物價を上げない、低
物價政策をとるといつたような建前をとりました
関係上、もつぱら
旅客においてこの二百三十億の收入不足を補填するという
立場に
なつたわけであります。そこで今御
説明申し上げましたような表から見まして、鉄道の
輸送運賃、
國民の
負担力あるいは政策
運賃といつたような総合的な見地からして、
旅客六割、しかも三箇月、大箇月の定期の割引率を廃止して一箇月並にするという
結論に相なりました。
旅客列車で
輸送せられ、かつ従來から
旅客運賃とともに上げて参りました手、小荷物の
運賃においても、この際同様の値上げを試みたいと思うのであります。その内容につきまして、お
手元に差上げました「
旅客及び荷物
運賃、料金
改正要綱」に從いまして、簡単に御
説明申し上げます。
第一、
旅客運賃及び料金につきましては、まず鉄道普通
旅客運賃は現在二地帶制をと
つております。一キロから百五十キロまで三等が九十銭で、百五十一キロ以上は遠距離逓減制を加味いたしまして、單價が六十五銭とな
つております。これをおのおの六割上げることにいたしますと、第一地帶が一円四十五銭、百五十一キロ以上の第二地帶が一円五銭と相なるわけであります。これはもちろん現在と同様通行税が含まれております。一等、二等の
運賃は、三等の六倍、三倍と
現行通りにいたしたいと
考えております。最低
運賃は現在三円でありますが、これを六割上げまして、ラウンド・ナンバーで五円にいたしたいと
考えております。
第二は、航路の
旅客運賃であります。現在省営航路は青函、宇高、仁堀、宮島口、大畠線、関門間、こういつたものを経営しておりますが、これらの
現行運賃をみな六割増にいたしましたのが、お
手元の表の数字にな
つております。ただ一言お断りしなければならないのは、青函の一等現在の八百円が千三百六十円になりますのは、現在の八百円は寝台料金二百円、
運賃六百円であります。それが寝台料金は二倍になりまして四百円、六百円の
運賃は六割増で九百六十円、この四百円と九百六十円とを足して千三百六十円といたしまして、二等の寝台との均衡をとるとともに、また一等の寝台列車をそのまま北海道へ航送いたします料金とのバランスをも、とつたのであります。
第三には、定期
旅客運賃でございますが、普通
旅客運賃との均衡を保つために、一箇月定期
運賃ついては約六〇%の値上げを行いまして、三箇月、六箇月定期は廃止することにいたしたいと思うのであります。その結果、三箇月の分は、場所によりましては二倍一、二分、六箇月定期の分は、場所によりまして二倍五分
程度の値上りを來すのであります。御承知の
通り、現在日本の定期は通学と通勤とありますが、これを概して申し上げますと、六割弱から九割四分という諸外國に例のない大幅な割引をいたしておるのであります。諸外國におきましては、二割
程度のものが普通であります。
輸送コストの面から見まして、定期券の支出に対する收入の割合がわずかに二六である。こういつた
観点をも加味しまして、非常に割引率の多い三固月、六箇月の定期割引を一箇月の
程度にとどめたいというのが、今回の
改正の趣旨であります。定期
旅客運賃の負担は、現在におきましては八〇%
程度までは雇用主が負担している現状で、
あとの二割の方々に、二倍あるいは二倍五分になるような負担をかけることは、
事情察するにあまりあるところでありますけれども、先ほどのいろいろの表から総合いたしまして、まず負担は不可能ではなかろう、つらかろうが、しんぼうしていただきたい、こういうふうにわれわれとしては
考えているのであります。
第四点は料金でありますが、急行料金につきましては、フラツトに六〇%値上げをいたしたいと
考えております。特別急行は今まで規定にはございませんが、この八月から東京、大阪間にできれば運轉いたしたいというので、目下準備を進めております。そのためにあらかじめ御
審議を得たいと存じますので、戰前の例にならいまして、急行料金の倍額といたしたいと
考えております。準急は現在
通りで、急行券は六百キロが最低でありますが、準急は停車駅が多いことと、比較的近距離の
旅客の利用を多くするために、今回百五十キロまでの料金を新設いたしまして、六百キロ地帶の急行料金の半分といたしたいと
考えております。一等の寝台料金及び入場料金等につきましても、六〇%
程度の値上げを行いたいと
考えている次第であります。
小さい問題でありますが、ついでに御
報告申し上げたいのは、始発駅において、着席券というものを今度新設いたしたいと
考えております。と申しますのは、たとえば東京、上野等の始発駅におきまして、急行、準急の座席をとる優先権の券でありますが、十円の安い入場券を賣りますと、やみ行為が非常に行われますので、たとえば十両編成のうち、一等、二等が一両とか、あるいは三等が二両とかいうふうに、車を指定いたしまして、着席券というようなものを設けて、
地方から中央に経済的な所用で來られた者、あるいはそのほかの旅行をされたような方で、発車五分前まで、その着席券さえあれば、十分仕事ができるような便宜なものをつくりたいと
考えておるわけであります。しかしながら全部そうしたものをやるのではなくて、一部の車両に限るわけであります。その料金は大体三等が急行、準急にかかわらず五十円、二等は百円
程度にいたしたいと
考えております。將來設ける特急は、從來の特急と同じように、指定席制度にいたしたいと思いますから、問題はなかろうと思います。
次には荷物
運賃及び料金について御
説明申し上げます。普通小荷物は現在五百キロまでが十キログラムの目方が大体五十円でありますが、その五十円は、分析いたしますと、十五円は配達料でありまして、ネツトの
運賃は三十五円であります。その三十五円の六〇%を上げまして、これを六十円とする。配達料は外にはみ出して十五円としまして七十五円、結果におきましてお客が拂うとすれば、五十円が七十五円になるのでありますから、五〇%増ということになります。しかしながら裸
運賃におきましては六〇%増であります。なお小荷物は、
貨物運賃の小口
運賃とバランスをとらなくてはなりませんので、現在におきまして貴重品は普通の品物の二倍と
つておりますが、動物とか、レントゲン機械、眞空管、家具、空容器等、非常にかさ高品で、しかも
運賃負担力のあるもの、これらをやはり貴重品と同様二倍に値上げいたしまして、貨物の小口
運賃とのバランスをとりたいと存ずるのであります。手荷物は現在七十円でありますが、これはやはり百円にいたしたいと存じます。一時預かり料金が現在七円のを十円、荷物保管料につきましても同様であります。かように小荷物につきましても、
旅客列車で運ばれるものは、從來
旅客運賃とともに上げて來ました経緯にかんがみまして、かつ貨物の小口
運賃、あるいは郵便の小包料金ともにらみ合せまして、この
程度の
改正が適当かと思います。
以上、要綱につきまして御
説明いたしましたが、
最後に國有
鉄道運賃法の
改正はどうなるのかという問題でございます。
運賃法は前回の
國会で
昭和二十三年
法律第十二号として制定されたものでありまして、目下
関係方面と協議を続けておりますが、いまだ所要の手続が相済みませんので、不日正式に本
委員会に
提出しなければならないと
思つておりますが、本日は事前
審査の意味におきまして、御
説明を申し上げたいと存じます。それは今回の
改正は法文としてはしごく
簡單でありまして現在
法律の第三條第一号に、現在営業キロ一メートルごとに百五十キロメートルまでは九十銭、とあるのを一円四十五銭、百五十キロメートルを越える部分は六十五銭、とあるのを一円五銭とするというだけの
改正であります。
第二点は
現行法の六條の見出しに、急行及び準急料金とありますのを、先ほど御
説明申し上げた
通り、特別急行をこの八月から動かすために、その特別急行料金というものを表題の中に加える事だけであります。別表の第一及び第二を次のように改める、この内容は先ほど御
説明した
通りでありまする。これを
予算の
関係から見まして、ぜひ五月一日から実施させていただきたいと
考えておるわけであります。以上
簡單でありますが、要点だけ御
説明申し上げたのであります。