○
原虎一君 公共の福祉及び公共性が強いということのみでこの罷業権が禁止されるということになりますと、今日の日本の経済産業の状態から行きますと、電氣或いは私鉄或いは炭鉱等においても、國鉄はともかくといたしまして、專賣事業の公共性よりかより強いものがあるのであります。これらに及ぼす法の
精神の
影響というものを我々は虞れるのであります。殊に先般公聽会を開いた場合においても、或る私鉄の会社の重役は、國鉄のみにこれを
適用いたして、私鉄に
適用しないのは了解に苦しむという
意味の開陳があつたのであります。
從つて公共性の濃度によりてのみこれが罷業権を禁止するということは、簡單に國鉄と專賣の公共性のみ強調して、その
精神を
納得するというには余り薄弱ではないか、殊に御承知のように、一昨年の十二月六日に
極東委員会の指命で、日本の
労働組合に対する十六
原則、これの中におきましても、
労働大臣に申上げるまでもなく、第一においては、
労働組合を
組織することを奬励しておる。第二は、
組合組織の
権利は
法律によ
つて保護されなければならんということと、
組合の目的を妨げる一切の
法律、規則を即時撤廃しなければならん、そうして罷業その他の作業停止は直接占領軍の目的乃至必要に
不利益を持たらすときのみ禁止さるべきであるということが第五項において明示されておるのであります。これに基くところの
労働組合法の
精神から行きましても、公共性というものが強いということのみにおいて禁止するということは、繰返して申上げますが、これは國民
一般を
納得するゆえんのものではない。殊にすでに今申しますように、
企業主の中には、國鉄、專賣にこれを
適用するならば、私鉄にも
適用されることを希望するというような状態に相成
つておるのであります。そこで私のより一層御
説明を願いたいと思うのは、これらの私
企業と國鉄、專賣との公共性、その他に罷業を禁止する最も必要な條件があるという御
説明がなければならん。私共からいたしますれば、この
労働組合法、
労調法に
規定がありますように、現業以外のものは罷業権を禁止せられており、現業のものは一定の
調停期間を置いて終局における罷業権というものは認められておる。これで尚且つ不合理である、或いは日本の現在において不適当であるというところのものが立証されなければならんと思うのであります。で公聽会等におけるところの学者の
意見におきましても、社会環境によ
つて法律は変
つて行くのでありまするが、改正されて行くのでありまするが、罷業権という
労働者の持つ根本的な
権利を剥奪するというのと、それからこれに制限を加えるというのは労資関係においてこれは重大な問題であります。でありますから公共性に対してはすでに
労働関係法は制限を加えて來ております。尚その制限によ
つて普通ならば
権利を剥奪すべきでなくして、尚制限の強化によ
つて労働運動の抑制を
考えるべきじやないか。それを超えて罷業権を禁止しなければならんということは、繰返して申上げますが、國民全般を
納得させるだけの
理由がなければならない。先程御
説明においては尚私は了解に苦しむと同時に、然らばそれと同時に、同じ國家の事業であるところの通信関係の事業に対しての
法案が今度提出されまして、先般第三
國会において通過になりました郵政省とか、電氣通信省におけるところの
職員に対する
労働組織というものは、公務員法を
適用されるので、できない事情に置かれておりますが……。