○
國務大臣(吉田茂君) 少し話が遡りますが、この前の吉田
内閣のときに六・三制を制定したのであります。この六・三制については私もその当時
相当無理がある。急速に六・三制を施行するということは、
相当無理があるとこう
考えたのでありますが、その当時の
事情を申しますと、日本の教育にしてもそれから
経済にしても、その他すべての機関が軍國主義、若しくはそれに都合のいい機関にな
つておるのである。すべてを戰中心にし、戰に都合のいい
ような組織であるという
ような誤解を持
つて……当時日本に來た司令部の人の多くはそう
考えてお
つた。殊に教育がいけない。殊に教育が軍國主義的教育である。青年を軍隊に入れて、そうしてそれに軍事教練を與えて、戰に都合のいい
ように非民主主義の教育を施こすものであるから、そこでかくのごとき太平洋戰爭のごとき戰爭が起
つた。そこを非常に司令部の人も
認めておりました。日本の教育の建て直しに非常に力を入れて、そこで六・三制、アメリカの教育流に日本の教育を一度建て直さなければならんという主張、これは誤解と申せば誤解でありますが、これに余り強く反対でもすれば、日本では尚軍國主義を持
つておるとか、或いは又軍隊を再建するつもりであるとかいう
ような誤解を招く虞れがあ
つたものでありますから、多少無理と思いましたが、六・三制の施行を承諾したのみならず、憲法その他も、日本に対する誤解と言いますか、軍國主義的、
國家主義的誤解を去る
ためには、努めて各種の改革を極く勇敢に断行することによ
つて、誤解が解けるという
ような
考えもあ
つて、少しは無理であると思いましたが、又実際無理であるのでありますが、六・三制を採用した。それから又もう
一つは、日本の從來の
考え方が必ずしも惡いとは申されないのでありますが、多少万國に通じない……というとおかしな話ですが、日本一國だけが了解ができて、そうして他國の了解しない
ような教育
方針等もあ
つたような思われるので、今日日本の信用、日本に対する信頼を回復する
ためには、列國から見て了解のできる
ような教育制度を
作つて行くということが大切である、これ亦六・三制に改めた他に
理由でもあ
つたのであります。いずれにしても当時日本に対して、日本の復興なり、敗戰後の日本を建て直して行く
ためには、新らしい教育を喜んで日本
國民が採用するという氣持の現われが必要であ
つたのであります——あ
つたと我々は了解して、六・三制を勇敢に、甚だ無理があるとは思いましたけれども、実行することに
決意をしたわけであります。その後御
承知のごくに、世相は大部惡くなりまして、始終問題になるのは、道徳の高場とか或いは低下とかいうことが問題になるんでありますが、日本の
國民の教育を高揚せしめる、文教を刷新する、その
ためにはこの度もどこかの委員会で申述べましたが、文部、行政については、この吉田
内閣としては一段の注意を拂いたいと
考えて、文部大臣の選任には特に注意をいたした
ようなわけであります。そこで今のマッカーサーの爲替率についての話は、私は多少記憶がありますが、どういうことを当時言われたか存じませんが、はつきりした記憶はありませんが、マッカーサー將軍の始終言われるところから
考えて見ると、日本の復興なり日本の
経済の建て直しというものは、日本人みずからが愛國的熱情を以て当るべきものである、日本自身が復興計画がなくして、そして外國の援助を得
ようとしたところが無理である、無理であるのみならず無益である、日本復興は日本人みずからが、日本
政府みずからが案出すべきものである、その基礎において我々が助け得るものは助けるということを始終申しております。それで今引用せられたマッカーサーの声明なるものも多分その趣意であろうと思います。
爲替レートが百五十円になるか、二百円になるか、三百円になるか、日本の國の復興が盛んになればなる程、爲替レートは安くていいわけであるんだ、併し日本に復興計画がなく、
國民に復興の熱意がなければ何百円でもこれは足りないわけであるということは、將軍も始終申しておる
通りでありまするから、多分その線においての声明できないかと思うのであります。一應の
お答えをいたします。