○小野哲君 先ず第一に、我が
國経済復興計画の樹立に関する現
内閣の基本的
態度について伺いたいと存じます。我が國の
経済復興が如何なる形において、又如何なる内容を以て
計画されつつあるかということにつきましては、
國民ひとしく関心を寄せ、多大の期待をかけておりますことは多言を要しない
ところでございます。特に我が國が置かれておる内外の
情勢は、文字
通り誠に微妙でありまして、この間に処して速かに
経済復興計画を樹立し、内においては
國民の
復興に対する熱意を高揚し、外に対しては連合諸國の協力援助を要請する機会を積極的に捉えることは、現
内閣の担当する重大な任務の一つと申すべきでございましよう。
吉田総理はその
演説の中において、我が國の
経済の
復興が
世界の繁栄増進の一環を成すことを列國が承認するようにならなければならないと強調し、
國民特に勤労者に対して、我が國
再建復興に愛國的情熱を持
つて協力するよう
要望されておるのであります。又
泉山長官は、
経済復興計画の立案を急がれておるが、この目標として、國際收支の均衡を確保し、
國民経済を自立せしめるためには、我が國の置かれている内外の
情勢から異常の
努力を要する旨を述べられておるのであります。本年五月、
経済復興計画委員会が設置されて以來、多数の人手をかけ又七箇月の時日を費しているにも拘わらず、今日尚成案を得るに至らないことは、この事業が如何に困難であるかを物語
つておると思うのであります。立案の衝に当
つておる
関係者の異常の
努力に対しては深く感謝いたすものでありますが、一日も速かに成案を得て、これを
國民の前に発表されることを切望して止みません。併しながらその立案過程において、人口推計の増大、或いは又安定と
再建の矛盾、輸出振興の見通し難、労働生産性同上の困難等、幾多の問題に制約せられて、
計画策定を困難にいたしておりますことは、察するに難くないのであります。内外における悪條件の下に、これらの問題の解決の見通しを付けつつ我が國
復興への大道を打ち開くことは、未だ曾て経験しない偉大なる
國民的
努力が要請せられておることと存ずるのであります。
経済復興計画委員会としての基本方針は、現在活溌に檢討を加えられつつあり、総司令部よりフアイン博士を團長とする使節團が米國に派遣され陸軍省当局と打合せ中であると報道されておるのみならず、
経済復興計画の初年度たる
昭和二十四年度はすでに目前に迫り、而も初年度の一
計画は、実施
計画的性格を與えることが強く要請されておることに鑑みましても、
政府としてはその
政策の上に具体化すべき任務を持つことに思いをいたすときに、現段階に処するために、
政府は
泉山長官の言われるごとく異常な
努力を傾けるべき時機に直面していると思うのであります。
政府は
経済復興計画の樹立に対し如何なる措置を探るつもりであるか、
政府の基本的
態度を明らかにお示しが願いたいのであります。
計画樹立の困難なる諸事情に関しましても卒直に
國民に公表し、その理解と
努力とを
要望すべきであろうと思うのであります。特に
経済復興計画初年度である
昭和二十四年度
計画は二十四年度
予算編成方針と表裏一体をなさなければ、
経済復興計画の実施
計画的色彩を薄め、その價値を失うに至ると
考えるのでありますが
予算編成の
責任を持ち
計画の執行に当る
政府においては、如何なる方針で
予算の編成をされるおつもりであるか、御
所見を承わりたいと思うのであります。更に
吉田総理は、我が
國経済復興は列國が承認するものであるべきことを述べられているのでありますが、この
目的を速かに達成いたしますためには、我が團の
経済復興の速度を高めることが前提でなければなりません。併しながら現下の
情勢から
考えますときには、我々が希望するように
復興のテンポは容易に早められるとは思われないのでありまして、
経済復興計画の初期において相当多額のガリオア・フアンド、その他の援助外資の供與を懇請し、
経済復興計画の早期実施に資することが望ましく、これと並行して、
吉田総理が
答弁されているごとくに、講和條約締結に先行する何らかの取決めが行われることを熱望するものでありまして極めて重大な時期に当り、
政府の不断の
努力を期待すると共に、國際
経済に参加し、十分な活動をなし得るためには、思想、
経済、
政治等の各部門、特に
経済に重点を置いて、國際的に活躍し得る人材を把握することのために、國際
機関の整備を図る要があると
考えております。取分け
政府機関たる外務省の運営に関しては旧來の慣例を打破し、新らしい構想の下に再檢討を行い、刷新整備をする必要があると思うのでありますが、
政府は如何なる構想並びに準備を持
つておらるるか、伺いたいのであります。以上の諸点について
吉田総理及び
泉山長官の御
答弁を煩わしたいと存じます。
第二に行政整理についてでありますが、この点につきましては、すでに同僚
議員からも
質問がありましたので、私は一言、かかる重要なる問題を実施されるにつきましては、
政府は余程強い決意と
政治力とを持
つておらなければならない。然らざればぺーパー・プランに終り、公約を果すことができない憂いがある。この点に関して
政府の格段なる御留意を促すに止めて、この
質問は省略いたしたいと存じます。
第三点は、海陸輸送力増強施策に関しまして、海運、鉄道、自動車及び
道路について伺いたいと存じます。本年六月、本院において輸送力増強に関する決議を行い、
政府に対し諸施策の実行を強く
要求いたしたのであります。併しながら未だ満足すべき成果を挙げるに至
つていないことは誠に遺憾に思います。先ず海運について伺いたい。
泉山長官は
経済再建の目標として、國際收支の均衡の確保を挙げられております。これが対策はいろいろ
考えられるのでありまするが、海運收入に待たなければならん部分が多いということは、過去の実績に徴するも極めて明白であります。戰前、我が國の國際收支のバランスは主として海運運賃及び保險料金で賄
つて來たのであります。
戰後、國際收支のバランスは非常に逆調とな
つて、日本
経済の自立を達成するために、我が國國際收支の不均衡を是正する方策の
確立が極めて必要であります。
ところが
戰後我が國の貿易尻は遺憾ながら著しい入超を示し、而も年年急増する傾向にあります。
政府がこれに対処して探ろうとしておりまする
諸般の輸出振興策は極めて重要であると思うのでありますが、輸出
産業の
実態と不安定な東亞市場の
現状に鑑み、今直ちにこれに大きな期待をかけにくいのであります。よ
つて貿易面における赤字の大部分は戰前の我が國におけると同樣、海運運賃と海上保險を中心とする貿易外收入によ
つてこれを補償する外に
方法がないのであります。これは日本
経済の
産業構成から由來する必然の帰結であろうと存じます。
從つて保有艦腹の増強を図ると共に、先ず本邦船の外國航路配船を許可して貰い、通商航海條約が成立していると同樣の待遇を本邦船に與えて貰うことが必要であります。
〔
議長退席、副
議長著席〕
併し現在本邦船は総ざらいいたしましても、百七十九万トンに過ぎないのでありまして、そのうち遠洋配船への適船は限られており、又大型船の建造にも鋼材記資金事情等から早急には大きな期待はかけられないのでありまするから、その
不足分は外國船の裸傭船によらなければなりません。勿論外國船は現在余剰船腹を持
つている米國から、そのリバテイ船その他をクレジツトにより貸與せられる外はないのでありますが、その実現のためには船舶回轉基金の設定を懇請することが最も捷径であると存じます。而も船舶回轉基金は、その回轉率の早いこと、外貨取得率の高いこと、外貨取得の、確実なこと等の諸点において、棉花等の回轉基金よりは遙かに効率の高いものであるのであります。日本
経済の自立のためには外貨建て海運收入が不可欠であることは、ストライク
報告、ジヨンストン
報告にも明示されており、ドレーパー陸軍次官は再三繰返しての点を述べておられるのであります。米國内一部には
反対意見もあるようでありますが、日本の自立、
從つて米國納税者の負担軽減という大局的見地からいたしますならば、米國の輿論はリバテイ型を我が國に貸與することに傾きつつあるものと私は存ずるのであります。次に保險に関しましては、本邦保險会社のために司令部貿易資金の利用を懇請し、これにより外貨建て海上保險を再開させることができれば、外貨獲得に資することができるわけでありまして、
かくして國際收支の赤字を克服して、
経済自立のための基礎を
確立し、以て一日も早く米國の納税者の負担を軽減することが我が國に課せられた
最大の責務であると信じます。敍上の
目的を達成するため、海運
再建に関する
政府の所信及び
計画を承わりたい。又造船資材、特に鋼材の來年度以降の見通し及び対策はどうな
つているか。更に優秀船を建造する素地を堅実に培養するためには、総合技術研究
機関等の設置をするにあらざれば、將來國際競爭の落伍者となることは必然であると思いますが、
政府の
所見を伺いたい。
第二は、定期傭船への切替えについてであります。海運の民営還元はすでに
一致した輿論であります。連合軍の好意によ
つて制限附ながら一部許容され、十二月以降実施の予定を以て準備されて來たのでありますが、未だその実現を見ないのは如何なる
理由によるのか。
関係業者の受入態勢の不備によるのか、又は
政府の準備に欠くる
ところがあるのか、現在における
ところの切替準備
状況及び將來完全なる民営還元並びにその運営方式に対する
政府の用意を承わりたい。次に港湾施設の
復旧整備について伺いたいのであります。港湾諸施設の
復旧整備の遅延は輸送力増強に重大なるマイナスとな
つております。貿易
復旧に伴い一層その欠陥を指摘せざるを得ないのであります。港湾の修築及びこれが運営は運輸
計画の上から一元的に遂行する要があると思うのでありますが、
政府は港湾法のごときを制定する等、港湾経営の合理化を図る意図があるかどうか、この点
政府の
所見を伺いたいのであります。
次に特に
質問いたしたいことは最近における海員の爭議についてであります。すでに去る十一月二十九、三十両日に亘り二十四時間の出航拒否のストライキ行爲に出で、更に十二月四日午前零時を期して五日間、百二十時間の第二次出航拒否の挙に出ておるのでありまして、海員組合側の第二次スト最終日の八日の発表によりますれば、参加船舶五百五十三隻、
関係港湾五十一港でありまして、更に昨日の新聞の報ずる
ところに
まりますれば、明十一日より更に七十二時間の第三次ストに入る旨を組合側では通告したということであります。これがため沿岸の國内物資輸送は停頓し、月間百二十万トンといたしましても一旦平均四万トン、而もその半ばは石炭でありますが、すでに一週間に亘る停船によ
つて二十八万トンの輸送遅延を惹起しておるのであります。この結果は一日上三千万円の損失を生ずるばかりでなく、更に進んでは列車運轉の削減、ガス、肥料等の生産減は勿論、熔鉱爐、コークス爐等にも重大な支障を生ずる虞れがあると思うのでありますが、今や一日も遷延を許さず、この際、海員
諸君の協力を願うと共に、
政府は速かに
予算的措置その他早期解決を図るため緊急万全の
方法を採り、以て冬季海上輸送繁忙期における海上輸送を復元し、
経済復興に対する障碍を除去すべきであると思うが、今次海員爭議の経過並びに緊急措置に関する
政府の説明を求めます。
次に鉄道について
質問をいたしたい。本年度一億三千万トン
計画は、近來実績の見るべきものあるは同慶に耐えないのであるけれども、経営は依然として尚赤字続きであります。然るにに國有鉄道は明年四月一日より公共企業体として経営されることになつたことは御
承知の
通りであります。鉄道は一面
経済事業であり、この点においては私
経済の一般原則に準拠すべきものであると共に、他面において
國民共同
経済に重大な
関係を有する公共
機関でありますので、公共の利益を擁護すべき
國家的
責任を持
つておるのであります。故に公共利益の保護と企業自体の存立確保との調和が改組の指標でなければなりません。即ち公共企業体に改組することにより、これに
自主性を與え、独立採算制を援用して、
能率的、機動的運営を行わしめ、その職員にも民間の企業体におけるような國体参交渉権を認める等、從來の純然たる官職経営の欠点を除表し、
経済事業たるの特質を生かすにあると信ずるのであります。日本國有鉄道法は右の
目的を達成するためには尚幾多の欠陷があり、速かにこれを補正して公共企業体としての正常な運営を行い、
國民の
要望に副わなければならないと存じます。國有鉄道運営の自主化、
能率化を実現するため、人事、業務、財務の各般に亘る管理制度を整備する必要があると思うが、
政府自体としてはこれに対して如何なる用意を持
つておられるか。運輸
大臣及び会計及び財務に関しては大藏
大臣の所信を承わりたい。
更に自動車に関してお尋ねをいたしたいと存じます。本年度自動車輸送
計画は、トラツク一億六千万一トン、バス十六億人と決定しておるのであります。然るにタイヤ、燃料その他資材の
不足のため、輸送力は減退の一途を辿り、貨物についてはトラツクに依存する物資の滯貨は約一千万トンと称され、仮に一トン平均一万円として約一千億円の物資がトラツクを待
つておる実情であります。殊にタイヤの
不足は由々しい問題でありまして、
政府は昨年八月十五日閣議において自動車タイヤ緊急増産に関する件を決定し、その冒頭に「今にしてタイヤの緊急増産を図り、小運送力の確保に努めない限り、
経済危機突破も輸送の面より重大な破綻を來す虞れがある」と率直に認めておるのであります。
政府は閣議決定により、自動車タイヤの対策措置として各
責任官職を指定して増産対策を立てたのでありますが、殆んど空文にひとしく、実績として見るべきものがないことは誠に遺憾であります。
かくては閣議決定に対する
國民の信頼を失う結果となることは火を見るより明らかでありまして、特に現
内閣に対してこの点については注意を喚起したいと思うのであります。本年五月十八日策定されました輸送
計画に関しましても、タイヤの
不足を認め、輸送に対する、施策と資材の確保方策を明示しておるのでありますが、満足するだけの成果を得ておらない。タイヤの増産は生ゴムの輸入増加の懇請の措置を採る外、タイヤ
産業については特段の措置を探らなければならんと思うのでありますが、同時に特に生産されたタイヤの配給については、これを自動車運送の主務官廳である運輸省において一元的に担当せしめ、その
責任の所在を明らかにいたしますと共に、実情に即した行政事務の遂行を可能ならしめる要があると思うのでありまするが、
政府はタイヤ対策に関し如何なる措置を採
つて來たか、又配給官廳の一元化に関して如何なる方策を用意しておられるか、
泉山長官の御
答弁を煩わしたいのであります。
次に、自動車と密接な関連のある
道路の整備について承わりたい。最近
政府に対して
道路の
維持修繕に関する
計画につき
関係方面より指示があつた由を聞いて滯るのでありますが、如何なる
計画を立てておられるか、
建設大臣の御所信を承わりたいのであります。又
政府は新たにガソリン税の創設を研究中とのことでありますが、本税は如何なる
目的を持
つておるか。巷間傳えられておるごとく、取引高税の廃止に伴う代り財源その他一般財源に充当するものとするならば、実情を無視し、ガソリン税創設の眞の
目的を全然没却するものでありまして、
関係当局の反省を促したいのであります。特に輸送力増強の重要な一環として
道路整備
計画が探り上げられた今日、
道路の維持補修は、自動車用資材、殊にタイヤの消費、即ちタイヤの耐用命数の延長をもたらすものとして多大の関心を寄すべき問題でありますが現在の自動車使用者は、むしろ
道路のための被害者であ
つて受益者ではありません。最近の東京新聞の社説において、
道路が改善された後の受益者によ
つて支拂われるべきものが被害者によ
つて支拂われる論理はあり得ないことを指摘いたしておりますことは、十分示唆に富むものとして、
政府においても参考とすべき資料ではなかろうかと思うのであります。自動車輸送の
経済復興上重大な使命を有するものなるに深く鑑みまして、併せて
國民の共有財産である
道路の整備が輸送力の増強に対して多大の貢献をなすことに思いをいたし、ガソリン税の創設に関しましては、敍上の
趣旨を採り入れると共に、自動車使用者負担の加重を軽減し、負担の公平を期するため、多岐に亘る自動車に関する税制を整理するの外、本税をして
道路維持修理を
目的とする
目的税たる性格を明確にする等、ガソリン税を創設するに当
つては尚幾多の問題につき解決を図るに非ざれば、俄かに実施をいたしますことは適当でないと
考えるが、
政府の
見解は如何でありますか。これに対する大藏
大臣の御
答弁を願いたいと存じます。
吉田総理は、第一次
吉田内閣の
総理として、進駐軍用トラツクの拂下げにつきましては、みずから率先してなみなみならぬ
努力を拂われたと聞いておるのでございますが、これに対しましては心から感謝をいたし、且つ敬意を表しておる次第であるが、輸送の弱体が生産活動を制約しておる
現状に鑑み、これが増強に関するあらゆる施策を講ぜらるることに多大の期待を持
つておるものでありまするが、この際これら輸送力増強
関係施策を遂行するについての
吉田総理の御決意を承わ
つて置きたいと存ずるのであります。
最後に、観光事業は海運收入と相俟
つてその振興は見えざる輸出として外貨獲得に関する重要使命を持
つておるのであります。欧洲各國は第二次
世界大
戰後、今や観光事業の振興に対して懸命の
努力を傾倒いたしておるのでありまするが、現
内閣は果して観光事業を重要なる
國策の一つとして採り上げる御意思があるかどうか。これがため現在設置されておりまする観光
審議会を更に強化いたしまして、実施官職に対する指示をいたす権能をも與える措置を講じ、又当
審議会の
報告中に盛られてきたいろいろの施設
計画に関しましては、これを
経済復興計画に組み込むお
考えがあるかどうか、適切なる御
答弁をお願いいたす次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕