○藤野繁雄君 私は吉田
総理大臣及び
泉山安本長官の施政
演説に対し、以下の諸点につきて
政府の所信を質したいと思うのであります。施政
演説が極めて抽象的な項的を列挙したのに止まり、何ら具体的施策に言及していないということは最も遺憾とするところであります。それで刻下の緊急なる諸問題について今少しく
政府施策の方向を質す必要があることを痛感するものであります。
先ず最初に
経済統制の整理簡素化についてお
伺いしたいのであります。現在の
統制経済が全面的に再檢討の時期に達しており、
國民経済に必要不可欠な
基本的
統制は強化してでも、その必要の度の薄いものは緩和乃至は廃止することが各
方面の強い要望であるのであります。
政府においても亦このことを強調しておられるのでありますが、
政府はいつ何から実行されるお
考えであるか、お
伺いしたいのであります。又戰後
統制経済の
基本法でありまする臨時物資需給調整法が
統制物資の指定を政令に委せておることは、極めて非民主的、非合理的であります。
國民経済に深い
関係を有する
統制物資の指定は
國会において行うべきものであると信ずるのであります。
政府において物調法を改正するところの意思があるかどうか。これについては
総理大臣及び
安本長官に
お尋ねしたいと思うのであります。又配給機構の問題につきましては、食糧であるとか薪炭のごとき、中間経費が
自由経済時代よりも高いために、
生産者も消費者も双方から不評判にな
つておるのであります。
政府はこの
方面について善処せられんことを要望するのであります。
次に私は專ら当面しておりまするところの重要なる農政問題について、
総理大臣、農林
大臣及び
大藏大臣に
質問をいたしたいと思うのであります。その第一番目は、農業
政策当面の緊急課題である農業再
生産の保証の問題であるのであります。戰後我が國農業は極めて重要なる立場に置かれ、
経済復興と
國民生活の安定の基礎條件である食糧確保の重大使命を果しつつあるのであります。然るにその現況を見まするに、農産物價は殆んどすべて嚴格な供出制度の下に安く固定されておるのに反し、
生産物資及び
生活必需物資は逐次高騰の
状況にあ
つて、加うるに租税
負担は過重でありますから、再
生産が漸次困難に陷りつつあるのであります。作付から供出、
價格に至るまで、殆んど
政府の
統制にかかる
現状において、再
生産の保証は正に
政府のみずからの
責任であることを先ず強調したいのであります。米價について見ますれば、
歴代政府はパリテイ計算によ
つて年々幾分ずつ
引上げてはおるのでありまするが、米價がパリテイ計算で決定されましたときには、次の米の
生産資材の値段はすでにそれ以上に高くな
つて再
生産に支障を來しておるのであります。再
生産に支障を來するような米價では到底増産は望まれないのであります。
政府は二十三年産米の第一次
價格決定に当りまして、農相の申入を
了承されておるのでありますが、農家の必需品の最低必要量をマル公で配給しておられないところの
現状であります。マル公で配給ができておらないとするならば、米價決定の
原則は
政府みずからが打ち壞しておるのではないかと思うのであります。麦の元肥が間に合わないために無肥料で作つた農家もあるのであります。
生産費が特に高くかかるところの特殊地帶に対しては、
生産費を逓減するために如何なる
政策を取ろうと
政府は
考えておられるのであるか。又米價のように
國民経済に重大なる影響を及ぼすものは
國会において決議するのが適当と思うのでありますが、これに対する
総理大臣の
意見を
伺いたいと思うのであります。
次は供出問題であります。最近の供出
割当は年々増加せられておりますから、農民はどれだけ増産しましても
割当量を供出することが困難な
状態にあるのであります。超過供出をしますれば米はマル公の三倍で買上げると言われましても、
割当量の供出が困難を感ずるぐらいでありますから、超過供出するような者は殆んどない
状態であるのであります。そこで私は食糧確保臨時措置法が制定せられました本年の七月を以て一つの線を引いて、將來はどれだけ増産いたしましてでも供出量は
昭和二十三年七月現在よりも増さない、それ以上の
生産は超過供出として買上げるというような措置を講ぜられたならば、農家の
生産意欲は増し、一層増産も、供出も確保せられると思うのでありますが、
政府はどう
考えておられるのであるか。又供出を確保するためには
生産資材を適期に必要量を配給することが必要であるのでありますが、本年の「うんか」の発生に当
つては、殺虫油の配給が遅れたために被害を蒙つた
地方が多いのであります。こんな事例を年々繰返さないように、
生産資材の配給機構と行政事務の簡素化を図る
考えはないか。右に関して農林
大臣の
意見を
伺いたいと思うのであります。
次は農民課税の軽減であります。農民課税中最も大きいものは所得税であります。昨年においては総税額に対する所得税の割合は八五%に達しておるのであります。又昨年の例から申しますというと、闇取引をしないところの農家に対しても、闇取引をしたるものとして、税金をかけておるような
状態であります。闇取引しないところの善良な農家は非常なる反感を持
つておるのであります。何故農民の所得税が過重であるかを調べて見ますというと、農産物の
生産費中に自家労力を加算されていないということであります。即ち同じく米を作るにいたしましてでも、まじめな農家は朝早くから晩遅くまで勉励して増産しまするが、増産すればする程所得税が多くなるのであります。一方他人を雇うて
生産すれば、雇人に支拂つたところの賃金だけが
生産費に加算されるのでありますから、所得税は安くなるのであります。即ち現行の所得税算定の
方法によれば、農家の労銀に相当する分は必要経費に計上せられないために、まじめな農家に重く然らざるものに軽いというような矛盾ができておるのであります。そこで
政府は農産物の
生産費中に農家の自家労力を加えて收支計算をして税金をかける
考えはないか。又例えば俸給
生活者と同じように、年間の農業所得から一定率の金額を基礎控除して課税せられる
考えはないか。又農民の代表者である市町村農業協同組合のごとき
團体を十分活用し、これとの
團体的な交渉を認めて課税の公平を期し、農民が喜んで納税する措置をとられる
考えはないか。又早期供出の奬励金、超過供出代金というようなものに対して非課税にされて、より多くの供出をさせるような
方法を
考えておられないか。右について
大藏大臣に
お尋ねしたいのであります。
次は農業金融問題であります。農漁村には一時、資金が集まりましたのでありますが、
生産資材及び
生活必需品の高騰と税金その他の
負担の過重のために、昨年末に至りましては、農業用
生産に絶対的に必要な肥料資金さえも欠乏する
状態になりましたから、先般農業手形によ
つての金融制度が
考えられたのであります。然るに農業手形は供出米麦を見返りとして金融をするのでありますから、これより安全な金融
方法はないのであるにも拘わらず、その手続が非常に繁雜のために農民は困り拔いておるのであります。又農業の再
生産には肥料資金の外に営農資金が必要であります。これを借りることが困難な
状態にあります。一方農業再
生産には、これらの短期資金の外に土地改良その他長期資金が必要であります。と同時に災害復旧のためには、復旧
資材の配給と共に復旧に要する資金を急速に融通することが必要であります。從いましてこれらの必要に應ずる長期金融の特別金融制度を
確立することは、農業及び漁業
関係者の強い要望であります。又聞くところによりますというと、
政府は金融に関する特別法を制定し、農漁村の金融にも適用しようと
考えておられるようであります。農漁村の金融を一般金融と同樣に取扱うことは、農漁村の組合金融制度を
根本的に破壞するところの結果となるのであります。
安本長官は農漁業の金融の円滑化には特別の措置を構ずると述べられたのでありますが、その具体策を
大藏大臣から承わりたいと思うのであります。(
拍手)
次に最近の農業災害頻発に鑑みまして、農業災害補償制度を全面的に活用し、被災農家の復旧と農業再
生産の保証に努めなければならないのでありますが、
〔
議長退席、副
議長著席〕
現行制度には尚不備の点が多いのでありますから、速かにこれを改むると共に、共済
團体事務費の國庫
負担額を増額せられんことを要望するものであります。
次は農地改革の完遂と農業協同組合の育成問題であります。農地制度の改革と農業協同組合
組織の
確立は、農村を
民主化し、農業
生産力の増強と農民の
経済的、社会的地位の向上を図り、眞によき農村を建設するために必要なものであるのであります。この農地改革が順調に進捗を見せて、今日農地の買收が百八十万町歩、賣渡が百五十万町歩に達し、予定
通り本年末で一段落の運びに至
つておることは誠に喜びに堪えません。併しながら將來この創設せられた自作農を
維持育成して、農村の健全なる発達を期することは、決して容易なことではなく、而も
日本の農業にと
つて重要問題であるから、この点につき反省を促したいと思うのであります。即ち現在の農地改革は、
昭和二十年十一月二十三日を基準として、当時耕作しておつた者のみに農地を賣渡すことにな
つておるのでありますが、農家の構成人員は当時と現在とに変動があることは明らかであります。それ故に現在からしますれば、
政府の賣渡
方針は必ずしも農地の公平なる分配ということはできないのであります。それで不平を唱え農地の公平なる再分配を主張する者が多いのであります。又新
憲法によ
つて見ますと均分相続でありますから、現在の自作農地は次第に細分せられまして、適正規模の農家を減少し、現在においても收支償わざるところの農家がますます苦境に陷り、折角の自作農創設も数年ならずして破壞するのではないかと憂えるものであります。(
拍手)
政府は何らの施策も立案せず、放任の
状態にあることは誠に遺憾に堪えないのであります。そこで農地の公平なるところの分配方策及び適正規模の自作農維持に対する
総理大臣の御
意見を
伺いたいのであります。
次は、農地改革が今日の成果を收むるに至りましたのは、
半面には農地委員各位の
努力が與か
つて力あることは忘れることはできないのであります。農地委員が今後とも安んじて最後の仕上げを完遂することができるように
処置を講じなくちやいけないのであります。併しながら多数の農地委員の中には、時節柄面白からぬ噂を聞くことがあるのであります。これらの農地委員には指導監督を十分にして、農地改革に支障を來すことがないよう適切な
処置を講ずることが必要と
考えるのであります。又農地買收賣渡が完了すれば、從來の地主、自作、小作の階層は殆んど解消するのでありますから、農地委員の選任
方法も
根本的に改める必要があると思うのであります。農地委員会に対する補助、農地委員の指導監督、買收賣渡完了後の農地委員選挙等について農林
大臣にお
伺いしたいのであります。
次に地主についてでありますが、土地制度の改革のために地主の拂つた犠牲に対しては、
憲法において
基本的人権及び財産権尊重の
見地から妥当なる措置を講ずるすとが必要であります。而も農地改革が、買收賣渡事務の完了、登記の促進、代金の收納と支拂というような、事務的処理の段階に達しました今日、尚、
政府施策の拙劣、事務の澁滯のために、必要以上の犠牲を余儀なくされておりますことは納得が行かないところであります。改革の趣旨を解して
政府の
方針に從
つておる地主に対しては、現金及び農地証券の支拂を促進し、又農地証券に対する金融の途を講じてやることは、
政府の当然な務めと思うのであります。今日地主は、農地は
政府に買收されても、
政府の代金の支拂は進捗せず、農地証券も殆んど渡らず、又渡されても資金化することができず、而も小作料は法外に安く、全く
收入の途がないのにも拘わらず、
負担は増しても減少しない
状況であるのでありますから、地主は全く行詰ま
つて生活の
方法を見出すことができないような現在の
状況であります。
政府はこの地主の窮状打開の方策を講ずる
考えがあるか、
考えありとしたならば、その具体策はどうであるかということを
総理大臣及び農林
大臣にお
伺いしたいのであります。
次に、都市
計画地内の農地買收に当
つては、都市
計画を考慮し、
関係者間の協調を保
つて買收しなかつたならば、都市
計画を
根本的に破壞することになるのでありますから、將來十分の注意をお願いしたいと思うのであります。尚又未墾地の買收、殊に平坦地の買收に当
つては物議を釀しつつあるところの
地方が多いのでありますから、万遺憾なきように
処置せられたいということを要望するのであります。
次に農業協同組合の育成問題であります。農業協同組合は今日全國各市町村から府縣に至るまで殆んど設立を完了し、その数は相当多きに達しておりますが、一般にいずれも基礎劣弱のために、所によ
つては党派別に濫立せられておるように聞いておる所もあるのであります。而も配給物資の取扱などは片手落の措置を受けておりますため、特に現今のような経営に不利な情勢下におきましては、現在のままに放置すれば、農業協同組合が設立の目的を達成することは覚束ないのであります。又農業協同組合連合会は、
法律によれば信用
事業を営む連合会の外は、その他の
事業を兼営することを認めておるにも拘わらず、
政府において
法律に許しておる兼営の自由を認めない
方針で指導しておられますために、連合会は濫立せられておる結果にな
つておるのであります。從いまして農業協同組合は苦しみ、連合会も亦予定の
事業の遂行が不可能な
状態にあるのであります。先般成立しました水
産業協同組合法においては、連合会は信用
事業以外の
事業の兼営を認められ、又過度
経済力集中排除法も相当緩和されておる
現状におきまして、農業協同組合だけが
法律で許されたる兼営を制限せられておるということは、甚だ納得が行かないところであります。(
拍手)それで先ず町村における農業協同組合の強化の
方法を講じ、次いで都道府縣連合会には
法律の許す範囲内の兼営を認めなければ、近く自滅するものが生じて、農業協同組合設立の趣旨と全く相反する結果がもたらされるものではないかと心配するものであります。
安本長官は農業協同組合の育成に努めると、こう述べられたのでありますが、どんな
方法で育成されるのであるか。具体的の案を農林
大臣に
伺いたいのであります。
第三は、土地改良と畜産及び農村工業の將励について
お尋ねしたいのであります。今後の農業
政策の
重点が農業
生産力の増強と農業経営の
合理化にあることは今更申上げるまでもないのであります。そこで先ず
生産力の増強の
方法といつたましては、直ちにその効果を挙ぐる
方法から始めなければならないのであります。それは土地改良と災害復旧が第一であると信ずるのであります。周東農林
大臣は就任に際し、食糧増産のためには土地改良を重視すると抱負を述べておられるのでありますが、これに対する農林
大臣の具体策をお
伺いしたいのであります。次に
総理大臣は、災害復旧については組閣以來腐心しておるが、取敢えず今回の予算中に所要経費の一部を計上し、迅速適切なる
処置を講ずると施政
演説に述べられたのでありますが、從來の経驗からいたしますれば、補助金の支拂が遅れて予定
通りの工事が進捗しないのであります。工事が完了せなかつたならば、農業
生産その他に支障を來して民心を不安に陷れるのであります。
総理大臣が述べられた災害復旧に対する迅速適切な方策を承わりたいと思うのであります。又最近の災害は水害によるものが多いのであります。これは戰時中に治山治水、特に砂防工事を放任せられたからであります。水害があ
つてから復旧するよりも、治山治水、特に砂防工事に拔本塞源的の
計画を立て、これを実行することが得策と
考えるのであります。(
拍手)災害復旧費を出すつもりで治山治水及び特に砂防工事費を思い切
つて支出をすべきものであると思うのであります。この点に関する
総理大臣の御
意見を
伺いたいのであります。
次に、農業経営を
合理化して農民の
経済の改善を図ると共に、行詰
つておるところの農村の
現状を打開し、且つ來るべき農村恐慌に備えるためには、畜産の將励と農村工業の普及発達を期することが肝要であります。畜産の奬励
方法としては、優良なる種畜の導入、飼料供給の確保、家畜衞生施設の完備等を
考えられねばならないのであります。飼料の供給を豊富にする一つの
方法としては、米麦の搗精度を高めて、糠の
生産量を増すことが各
方面から
要求されておるのであります。米麦の搗精度は高めても、米麦を容器で配給すれば配給に支障を來さないのであります。農林
大臣はこれについてどんな
考えを持
つておられるか、お
伺いしたいのであります。
次は農村工業でありますが、一般に農村工業の重要性を認めておりながら、その発達が遅々として振わないのは、これは指導奬励の行政機関が不備であるのと、金融の円滑を欠いておるからであると思うのであります。(
拍手)
政府は農村工業の重要性に鑑み、これを所管するところの部局を設ける
考えはないか。又農村工業に関する金融の具体案を定めて簡易に融達し、農村工業を発達させる
考えはないか。進んで農村工業助長法というような特別法を
考えておられはせないか。これについて農林
大臣の御
意見を
伺いたいのであります。(
拍手)
[
國務大臣泉山三六君
登壇、
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